説明

デジタル復調装置、その制御方法、プログラム、そのプログラムを記録した記録媒体、及び、デジタル受信装置。

【課題】受信状態の変動に応じた適切な供給電力の制御をチューナ等に施す。
【解決手段】制御部300は、復調器200からのMER計測値に基づいて受信状態を検出し、その検出結果に応じてチューナ100の回路部品への供給電力を調整する。復調器200には周波数導出部207が設けられている。周波数導出部207は、チューナ100が受信した信号に発生したドップラーシフトの周波数を導出し、制御部300へと出力する。制御部300は、復調器200からのドップラー周波数に基づいて、チューナ100内の回路部品に供給する電力を制御する条件を調整する。例えば、ドップラー周波数が所定の基準値を超えた場合には回路部品への電力を調整する回数を増加し、ドップラー周波数が所定の基準値を下回った場合には回路部品への電力を調整する回数を減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル復調装置、特に供給電力を調整する手段を有するデジタル復調装置、その制御方法、プログラム、そのプログラムを記録した記録媒体、及び、デジタル受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル復調装置において、正確な復調動作のために必要な供給電力の大きさは、受信状態において異なり、一般的には最悪の受信状態を想定してある程度のマージンをとった大きさの電力を供給するようになっている。しかし、受信状態が良好な場合には供給電力をそれほど大きくする必要はない。そこで、消費電力を低減するために、信号の受信状態に応じて回路部品への供給電力を調整することが考えられる。
【0003】
例えば、受信状態を判断しながら供給電力を制御する技術として、特許文献1のような技術がある。特許文献1は、信号の誤りを訂正する誤り訂正部を有しており、誤り訂正部における誤り率を検出する。そして、検出した誤り率に基づいて、受信状態が良好である場合には、高周波部への供給電力を低減する。これによって、消費電力を低減することができる。このとき、高周波部への供給電力を低減することで受信感度が低下したとしても、誤り率が基準値以下である間は良好な受信状態を維持することができる。一方、誤り率が基準値を上回る場合には受信状態が不良であると判定し、高周波部への供給電力の低減を解除する。これによって、高周波部の受信感度の向上を図り、良好な受信状態を確保している。
【0004】
【特許文献1】特開2005−109912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、受信状態の変動の度合いと電力を制御する諸条件とが適合しないことがある。例えば、受信状態の変動と制御条件とが適合していないと、受信状態の変動が緩やかであるにも拘らず単に受信状態が一時的に変動した場合でも電力制御を実行するおそれがある。このときは、受信状態が一時的に悪化することですぐに供給電力が増加されたりするため、電力制御の効率が全体として低下する。また、受信状態が激しく変動する場合、その変動に適切に追随した電力制御を確保できなくなるおそれもある。このように、受信状態の変動に応じた電力制御が適切になされないおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、受信状態の変動に応じた適切な電力制御が可能なデジタル復調装置、その制御方法、プログラム、及び、そのプログラムを記録した記録媒体、デジタル受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のデジタル復調装置は、受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段と、前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出手段と、前記受信状態検出手段が検出した結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整手段と、前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定手段と、前記フェージング環境推定手段が推定した結果に基づいて、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数がフェージング環境の変化しやすさに応じて変化するように、前記電力調整手段を制御する電力制御手段とを備えている。
【0008】
また、本発明のデジタル復調装置の制御方法は、受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段とを備えているデジタル復調装置の制御方法であって、前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出ステップと、前記受信状態検出ステップにおいて検出された結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整ステップと、前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定ステップと、前記フェージング環境推定ステップにおいて推定された結果に基づいて、前記電力が調整される単位時間当たりの回数がフェージング環境の変化しやすさに応じて変化するように前記電力調整ステップにおける電力の調整を制御する制御ステップとを備えている。
【0009】
また、本発明のプログラムは、受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段とを備えているデジタル復調装置用のプログラムであって、前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出ステップ、前記受信状態検出ステップにおいて検出された結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整ステップ、前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定ステップ、及び、前記フェージング環境推定ステップにおいて推定された結果に基づいて、前記電力が調整される単位時間当たりの回数がフェージング環境の変化しやすさに応じて変化するように前記電力調整ステップにおける電力の調整を制御する制御ステップを前記デジタル復調装置に実行させる。
【0010】
本発明のデジタル復調装置、その制御方法及びプログラムによると、フェージング環境を推定すると共に、その推定結果に基づいて、フェージング環境の変化しやすさに応じた頻度で電力を調整する。フェージング環境の変化しやすさは受信状態の変動の度合いに対応している。したがって、フェージング環境の変化しやすさに応じて、受信状態の変動が激しいときには電力を頻繁に調整し、受信状態の変動が緩やかなときには電力調整を控える、といった制御が可能である。このように、本発明によると、受信状態の変動に応じた適切な電力制御が可能となる。
【0011】
また、本発明においては前記フェージング環境推定手段が、前記チューナが受信した信号において発生したドップラーシフトのドップラー周波数を導出する周波数導出手段を有していることが好ましい。この構成によると、ドップラー周波数を導出することによってフェージング環境を推定する。ドップラー周波数はフェージング環境の変化しやすさに対応するので、フェージング環境を適切に推定することができる。
【0012】
また、本発明においては、前記電力制御手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を超えた場合に、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数が大きくなるように、前記電力調整手段を制御することが好ましい。この構成によると、ドップラー周波数が比較的大きいときには電力を頻繁に調整することにより、受信状態の変動が比較的激しいフェージング環境に合わせた適切な頻度の電力制御を確保することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記電力制御手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を下回った場合に、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数が小さくなるように、前記電力調整手段を制御することが好ましい。ドップラー周波数が比較的小さいときに電力を頻繁に調整すると、受信状態の長期的な変動が少ないにも関わらず受信状態の一時的な変動に従って電力を変更してしまい、電力制御の効率が全体として低下するおそれがある。これに対して上記の構成によると、ドップラー周波数が比較的小さいときには電力を調整する頻度を抑えて電力制御を少なくすることにより、受信状態の緩やかな変動に合わせた適切な頻度の電力制御を確保することができる。
【0014】
また、本発明においては、信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを導出する評価値導出手段をさらに備えており、前記受信状態検出手段が、前記評価値導出手段が所定の期間に亘って導出した結果に基づいて前記受信状態を検出し、前記電力制御手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を超えた場合に前記所定の期間が短くなるように、前記受信状態検出手段を制御することが好ましい。この構成によると、ドップラー周波数が比較的大きいときには受信状態を検出するための期間を短くする。これによって、受信状態の変動が激しい場合を適切に反映した検出結果が得られるため、受信状態の変動に適切に対応した電力制御が可能となる。
【0015】
また、本発明においては、信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを導出する評価値導出手段をさらに備えており、前記受信状態検出手段が、前記評価値導出手段が所定の期間に亘って導出した結果に基づいて前記受信状態を検出し、前記電力制御手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を下回った場合に前記所定の期間が長くなるように、前記受信状態検出手段を制御することが好ましい。ドップラー周波数が比較的小さいときに受信状態の検出期間が短いと、受信状態の長期的な変動が少ないにも関わらず受信状態の一時的な変動が検出結果に反映されてしまい、電力制御の効率が全体として低下するおそれがある。一方で、上記の構成によると、検出期間を長いものに変更して単なる一時的な変動が検出結果に反映されにくくすることにより、受信状態の緩やかな変動に合わせた適切な電力制御を確保することができる。
【0016】
また、本発明においては、前記電力制御手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が第1の周波数基準値を超えた場合に、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数が多くなると共に、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が前記第1の周波数基準値以下の第2の周波数基準値を下回った場合に、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数が少なくなるように、前記電力調整手段を制御することが好ましい。この構成によると、ドップラー周波数が比較的大きいときには電力を頻繁に調整すると共に、ドップラー周波数が比較的小さいときには電力の調整を少なくする。これによって、受信状態の変動が激しいときと緩やかなときとの両方に合わせた適切な頻度の電力制御を確保することができる。
【0017】
また、本発明においては、信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを導出する評価値導出手段をさらに備えており、前記受信状態検出手段が、前記評価値導出手段が所定の期間に亘って導出した結果に基づいて前記受信状態を検出し、前記電力制御手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が第1の周波数基準値を超えた場合に前記所定の期間が長くなると共に、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が前記第1の周波数基準値以下の第2の周波数基準値を下回った場合に前記所定の期間が短くなるように、前記受信状態検出手段を制御することが好ましい。この構成によると、ドップラー周波数が比較的大きいときには受信状態の検出期間を短くして、受信状態の変動が激しい場合を適切に反映した検出結果が得られるようにすると共に、ドップラー周波数が比較的小さいときには検出期間を長いものに変更して、単なる一時的な変動が検出結果に反映されにくくする。これによって、受信状態の変動が激しいときと緩やかなときとの両方に合わせた適切な電力制御を確保することができる。
【0018】
また、本発明においては、前記電力制御手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が、前記回路部品への電力を削減可能な範囲内である場合にのみ、前記電力調整手段に前記電力を調整させることが好ましい。この構成によると、電力を削減できないようなドップラー周波数の場合には電力調整を実行しないため、受信状態に適切に応じた制御がなされる。
【0019】
また、本発明の別の観点によると、本発明のデジタル復調装置は、受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段と、信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを評価値として導出する評価値導出手段と、前記評価値導出手段が導出した結果と前記評価値に関する基準値とを比較すると共に、その比較結果を前記チューナが信号を受信した際の受信状態の検出結果として出力する受信状態検出手段と、前記受信状態検出手段が検出した結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整手段と、前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定手段と、前記フェージング環境推定手段が推定した結果に基づいて、前記評価値に関する基準値をフェージング環境の変化しやすさに応じた値に変更する基準値変更手段とを備えている。
【0020】
また、本発明のデジタル復調装置の制御方法は、受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段とを備えているデジタル復調装置の制御方法であって、信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを評価値として導出する評価値導出ステップと、前記評価値導出ステップにおいて導出された結果と前記評価値に関する基準値とを比較する比較ステップと、前記比較ステップにおいて比較された結果に基づいて前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出ステップと、前記受信状態検出ステップにおいて検出された結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整ステップと、前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定ステップと、前記フェージング環境推定ステップにおいて推定された結果に基づいて、前記評価値に関する基準値をフェージング環境の変化しやすさに応じた値に変更する基準値変更ステップとを備えている。
【0021】
また、本発明のプログラムは、受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段とを備えているデジタル復調装置用のプログラムであって、信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを評価値として導出する評価値導出ステップと、前記評価値導出ステップにおいて導出された結果と前記評価値に関する基準値とを比較する比較ステップと、前記比較ステップにおいて比較された結果に基づいて前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出ステップと、前記受信状態検出ステップにおいて検出された結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整ステップと、前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定ステップと、前記フェージング環境推定ステップにおいて推定された結果に基づいて、前記評価値に関する基準値をフェージング環境の変化しやすさに応じた値に変更する基準値変更ステップとを前記デジタル復調装置に実行させる。
【0022】
本発明のデジタル復調装置、その制御方法及びプログラムによると、MER値又はBER値に関する基準値に基づいて電力を調整する。つまり、例えばMER値が基準値を超えており、受信状態が比較的悪いと判定できる場合には、回路部品に供給する電力を増加させるといった制御を行う。そして、フェージング環境の変化しやすさに応じて上記の基準値を変更する。したがって、例えば、受信状態の変動が激しいフェージング環境の場合には基準値を小さくして電力を変更しやすくし、受信状態の変動が緩やかなフェージング環境の場合には基準値を大きくして電力を変更しにくくするといった制御が可能となる。これによって、受信状態の変動に応じた適切な電力制御が可能となる。なお、上記と同様に、ドップラー周波数を導出することによってフェージング環境が推定されてもよい。
【0023】
また、本発明においては、前記基準値変更手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を超えた場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しにくくなるように前記評価値に関する基準値を変更することが好ましい。この構成によると、ドップラー周波数が比較的大きいときには、受信状態が良好でないと検出される傾向になるように、受信状態を検出する際の基準値を変更する。これによって、受信状態の変動が激しいフェージング環境の場合には受信状態が良好でないと検出されやすくなるため、受信状態が変動しやすく頻繁に悪化する状況に適切に対応可能な電力制御を確保することができる。
【0024】
また、本発明においては、前記基準値変更手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を下回った場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しやすくなるように前記評価値に関する基準値を変更することが好ましい。ドップラー周波数が比較的小さいときに受信状態が良好でないと検出されやすいと、例えば受信状態の長期的な変動が少ないにも関わらず受信状態の一時的な変動に従って電力を増加させてしまい、電力制御の効率が低下するおそれがある。これに対して上記の構成によると、ドップラー周波数が比較的小さいときには、受信状態が良好であると検出される傾向になるように、受信状態を検出する際の基準値を変更する。受信状態が良好であると検出されやすくすることにより、例えば電力が増加されやすくなるのを抑制し、電力制御の効率が低下するのを抑制することができる。
【0025】
また、本発明においては、前記基準値変更手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が第1の周波数基準値を超えた場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しにくくなるように前記評価値に関する基準値を変更すると共に、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が前記第1の周波数基準値以下の第2の周波数基準値を下回った場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しやすくなるように前記評価値に関する基準値を変更することが好ましい。この構成によると、受信状態の変動が激しいフェージング環境の場合には受信状態が不良であると検出されやすくする共に、受信状態の変動が緩やかなフェージング環境の場合には受信状態が良好であると検出されすくする。したがって、受信状態の変動が激しいときと緩やかなときとの両方に合わせた適切な電力制御を確保することができる。
【0026】
また、本発明においては、前記基準値変更手段が、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が、前記第2の周波数基準値よりも小さい第3の周波数基準値よりさらに下回った場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しにくくなるように前記評価値に関する基準値を変更することが好ましい。ドップラー周波数が非常に小さくなると、周期の非常に遅い突発的な変動が受信状態に発生することがある。上記の構成によると、ドップラー周波数が特に小さい場合に受信状態が不良であると検出されやすくすることで、上記の突発的な変動に適切に対処することが可能となる。
【0027】
また、本発明においては、前記電力調整手段が、前記受信状態検出手段の検出結果が示した受信状態が良好であるほど前記回路部品に供給される電力が減少するように前記電力を調整することが好ましい。この構成によると、受信状態が良好である場合には回路部品に供給される電力が減少するので、受信状態に合わせて回路部品の消費電力を適切に抑制することができる。
【0028】
また、本発明は、文字データ、画像データ、プログラムデータ、及び音声データの少なくとも1つの再現処理を実行する携帯電話やデジタルテレビジョン等の様々なデジタル受信装置に採用されてもよい。ここで、デジタル受信装置は、本発明のデジタル復調装置によって復調処理が施された受信信号から文字データなどのデータの再現処理を実行するものである。
【0029】
また、上記の本発明のデジタル復調装置用プログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)ディスク、フレキシブルディスク(FD)、MO(Magneto Optical)ディスクなどのリムーバブル型記録媒体や、ハードディスクなどの固定型記録媒体のようなコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配布可能である他、有線又は無線の電気通信手段によってインターネットなどの通信ネットワークを介して配布可能である。このプログラムは、デジタル復調装置専用のものでなくてもよく、選局処理やデジタル復調処理に係るプログラムと組み合わせて使用されることにより汎用型のプロセッサなどを有する汎用の装置をデジタル復調装置として機能させるプログラムであってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下は、本発明の好適な実施形態の一例についての説明である。図1は、第1の実施形態に係る携帯通話装置1000及び携帯通話装置1000に搭載されたデジタル復調装置1の全体の概略構成を示している。
【0031】
本実施形態の携帯通話装置1000はデジタル復調装置1を有している。携帯通話装置1000がアンテナから受信した信号Srはデジタル復調装置1によって復調される。そして、デジタル復調装置1から出力された復調信号から文字や画像や音声やプログラムなどのデータに係る情報が取り出され、これらの文字や画像や音声やプログラムなどのデータが再現される。これらの文字、画像等は、携帯通話装置1000に設けられた図示されていないディスプレイやスピーカなどを通じて携帯通話装置1000の使用者に提供される。なお、デジタル復調装置1は、携帯通話装置の他、デジタルテレビジョン、無線LAN(Local Area Network)装置、無線LANを搭載したパーソナルコンピュータ等に採用されてもよい。
【0032】
デジタル復調装置1はチューナ100、復調器200及び制御部300を有している。
チューナ100は復調器200と電気的に接続されている。また、チューナ100は、アンテナと電気的に接続されており、アンテナからの信号Srに選局処理を施す。つまり、アンテナからの信号Srに含まれる複数のチャンネルから1つのチャンネルを選択的に受信する。そして、選択的に受信したチャンネルに係る信号をIF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号に変換し、復調器200へと送信する。復調器200はチューナ100から送信されるIF信号を受信し、IF信号から復調信号、例えばいわゆるTS(Transport Stream)信号を生成して出力する。制御部300は、各種の制御指令をチューナ100や復調器200へと送信することによって、これらの動作を制御する。
【0033】
なお、デジタル復調装置1は複数の回路部品から構成されている。下記において特に断りがない限り、各回路部品は、それぞれ独立した機能を果たすように特化された回路素子の集合であってもよいし、汎用のプロセッサ回路等と下記の各機能を果たすようにプロセッサ回路などのハードウェアを機能させるプログラムとからなるものでもよい。後者の場合には、ハードウェア及びプログラムが組み合わされることによって回路部品が構築される。
【0034】
<受信信号>
以下は、携帯通話装置1000が受信する受信信号についての説明である。携帯通話装置1000が受信する受信信号は、複数の副搬送波によって搬送されたものである。以下においては、本実施形態の一例として、携帯通話装置1000が受信する受信信号の伝送方式にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が採用されているものが示されている。
【0035】
OFDM方式による信号は、規定の長さを有する多数のシンボルが連なった受信信号からなり、1つのシンボルには複数の単位信号が重なり合って含まれている。これらの単位信号は、互いに異なる周波数の副搬送波が所定のデータ長のデータに応じて変調されたものである。また、各シンボルには、データが含まれている有効な部分以外に、ガードインターバルが含まれている。ガードインターバルは、有効部分の後端の一部分と同じ信号成分を有しており、シンボルの先端に挿入されている。ガードインターバルは、受信信号を送信する送信局から携帯通話装置1000までの伝送経路に発生する複数のマルチパス波の影響を受信信号から取り除くために用いられる。なお、1つのシンボルに含まれる有効部分の長さは有効シンボル長と呼ばれる。
【0036】
さらに、OFDM方式による信号には、複数のスキャッタードパイロット信号が含まれている。OFDM方式による信号に含まれるスキャッタードパイロット信号は、受信信号に含まれる単位信号を時間方向及び周波数方向からなる平面に配置した場合に、周波数方向及び時間方向のそれぞれに関して等間隔に配列される。また、スキャッタードパイロット信号は、規定の符号法などで表される数列が所定の配置順で受信信号内に挿入されたものである。具体的には、受信信号内の所定の配置順にスキャッタードパイロット信号が示す数値を取っていくと規定の符号法で表される数列が再現されるように、受信信号内に配置されている。なお、本実施形態において、同一周波数の副搬送波には、同一のI値及びQ値を有する少なくとも2つのスキャッタードパイロット信号が所定数のシンボルを間に挟んで含まれている。
【0037】
この他、本実施形態において想定される受信信号には、受信信号に発生する誤りを訂正する誤り訂正処理を施すためのインターリーブや各種の符号化が施されている。例えば、符号化には、リードソロモン符号(以下、「RS符号」と呼称)やビタビ符号が用いられる。また、インターリーブには、ビットインターリーブ、バイトインターリーブ及び時間インターリーブや周波数インターリーブがある。これらは、伝送信号に含まれる信号に対応するデータを時間的に並べ替えたり周波数的に並べ替えたりするものである。各種の符号化やインターリーブが施された受信信号に、携帯通話装置1000において後述の復号処理やデインターリーブ処理が施されると、受信信号に含まれる誤りが訂正され得る。
【0038】
なお、本実施形態において想定されている受信信号は、例えば、日本の地上デジタル放送に適用され得るものである。日本の地上デジタル放送に係る信号の伝送方式には、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式が採用されている。
【0039】
<チューナ>
図2は、チューナ100の構成を示すブロック図である。チューナ100は複数の回路部品を有している。これら複数の回路部品には、RFアンプ部101、ミキサ部102、VCO・PLL部103、フィルタ部104及びIFアンプ部105が含まれている。チューナ100に入力された信号Srは、RFアンプ部101によって増幅されて、ミキサ部102へと出力される。一方、VCO・PLL部103は、特定のチャンネルに相当する周波数に基づくミキシング信号を生成する(選局処理)。VCO・PLL部103が生成したミキシング信号はミキサ部102へと出力される。そして、ミキサ部102は、RFアンプ部101からの出力信号SrとVCO・PLL部103からのミキシング信号とから、IF周波数に応じたIF信号Siを生成する。
【0040】
ミキサ部102が生成したIF信号Siはフィルタ部104へと出力される。フィルタ部104はミキサ部102からの出力信号Siから不要な信号成分を除去する。不要な信号成分が除去された信号SiはIFアンプ部105へと主力される。IFアンプ部105はフィルタ部104からの出力信号Siを増幅すると共に、増幅した信号Siを復調器200へと出力する。
【0041】
<復調器>
以下は、復調器200についての説明である。図3は復調器200の構成を示すブロック図である。図3に示されているように、復調器200は、下記に示されるADC部201等の複数の回路部品から構成されている。
【0042】
復調器200は、ADC部201、AFC・シンボル同期部202、FFT部203、フレーム同期部204、波形等化部205及び誤り訂正部206を有している。チューナ100から出力されたIF信号SiはADC部201に入力される。ADC部201は、アナログ信号である入力された信号Siをデジタル信号に変換する共に、変換したデジタル信号をAFC・シンボル同期部202へと出力する。
【0043】
AFC・シンボル同期部202は、ADC部201からのデジタル信号に対してフィルタ処理などを行う。そして、AFC・シンボル同期部202は、後述のFFT部203によるフーリエ変換の開始点、つまり、シンボル同期点を決定してシンボル同期を取ると共に、デジタル信号をFFT部203へと出力する。なお、AFC・シンボル同期部202がシンボル同期点に係る情報を制御部300へと送信したり、AFC・シンボル同期部202が、有効シンボル長を示すモードに係る情報を導出し、その情報を制御部300へと送信してもよい。
【0044】
なお、ISDB−T方式において、有効シンボル長を示すモードには、モード1(有効シンボル長252μs)、モード2(有効シンボル長504μs)及びモード3(有効シンボル長1008μs)がある。シンボル同期点の決定においては、マルチパス波の影響が最も少ない最適な受信が可能な点が同期点として設定される。このような同期点の決定方法として、信号の相関を参照する方法や、スキャッタードパイロット信号などのパイロット信号を用いて位相のずれを補正する方法等が用いられる。
【0045】
FFT(Fast Fourier Transform)部203は、AFC・シンボル同期部202からのデジタル信号をフーリエ(時間−周波数)変換する。このフーリエ変換には、いわゆる高速フーリエ変換(FFT)が一般的に用いられる。FFT部203は、フーリエ変換を施したデジタル信号をフレーム同期部204へと順次出力する。
【0046】
フレーム同期部204は、FFT部203から送られたデジタル信号におけるフレーム単位での同期をとる。1フレームは例えば204のシンボルからなり、1フレームの信号からひとまとまりのTMCC情報が取得される。フレーム同期部204によって同期が取られたデジタル信号は波形等化部205へと出力する。
【0047】
波形等化部205は、デジタル信号に含まれるスキャッタードパイロット信号に基づき、フレーム同期部204によって同期が取られたデジタル信号に波形等化処理を施す。波形等化処理は、単位信号に生じたコンスタレーションの基準値からのずれを補正する、信号の補正処理の一種である。このようなコンスタレーションの基準値からのずれは、信号の伝送経路上で発生するノイズ等に起因して発生する。
【0048】
波形等化処理は以下のような手順でなされる。まず、波形等化部205は、フレーム同期部204からの信号からスキャッタードパイロット信号を抽出する。一方で、波形等化部205は、スキャッタードパイロット信号に用いられている規定の符号法に基づく数列を示す信号を、基準信号として順に生成する。そして、生成した基準信号で抽出したスキャッタードパイロット信号を順に除算する。
【0049】
次に、波形等化部205は、上記の除算結果を時間方向及び周波数方向の両方向に関して補間する。かかる補間には、線形補間や最尤法などが用いられる。そして、波形等化部205は、フレーム同期部204からの信号に含まれる各単位信号を、補間した数値で除算する。これによって、信号に波形等化処理が施される。波形等化処理が施された単位信号は、所定のデータ長を有する各データにデマップされる。
【0050】
デマップは、波形等化処理が施された単位信号が示すI値及びQ値を、コンスタレーションの基準値に基づいて導出する処理である。ここで、波形等化後の単位信号に誤差が含まれている場合には、単位信号から直接取得されるI値及びQ値には、コンスタレーションの基準値からのずれが発生している。したがって、波形等化部205は、波形等化後の単位信号から直接取得されるI値及びQ値をコンスタレーションの基準値と比較し、その誤差から、MER(Modulation Error Ratio)を算出する(評価値導出手段)。波形等化部205が計測した単位信号ごとのMER計測値は、波形等化処理が施された順に制御部300へと出力される。
【0051】
MERは、波形等化後の単位信号から直接取得されるI値及びQ値とコンスタレーションの基準値とのずれ度合いを示している。また、MERは搬送波の電力とノイズの電力との比(CN比)に対応している。本実施形態においてMERは、その値が大きいほど受信信号の強度に対してノイズの量が小さいことを示すように算出されている。したがって、MER値が大きいことはCN比が大きいことに相当し、受信状態が良好であることに相当する。また、MER値が小さいことはCN比が小さいことに相当し、受信状態が良好でないことに相当する。制御部300は、後述のように、復調器200からのMER計測値に基づいて受信状態の良好度を判定し、その判定結果に応じて種々の制御を実行する。
【0052】
誤り訂正部206は波形等化部205からの信号に誤り訂正処理を施す。誤り訂正処理は、送信元において信号に施されたインターリーブ及び符号化に対応するデインターリーブ処理及び復号処理からなる。種々のインターリーブが施されたデジタル信号が、デインターリーブ処理によりインターリーブ前のデジタル信号に戻されると共に、符号化が施されたデジタル信号が、復号処理により符号化前のデジタル信号に戻される。これによって、伝送経路において信号に含まれることとなった各種の誤りが訂正される。また、誤り訂正部206は、デジタル信号に誤り訂正処理を施した際の誤りの訂正量を計測し、BER(Bit Error Rate;ビット誤り率)を算出してもよい(評価値導出手段)。そして、算出されたBERが、制御部300へと出力されてもよい。
【0053】
以上のように復調器200によって復調処理が施されたデジタル信号がTS信号として復調器200から出力される。
【0054】
<電力供給制御>
チューナ100が有するRFアンプ部101等の回路部品への入力信号に対して非線形な信号成分が出力信号に生じることがある。例えば、あるアナログ回路の出力信号に含まれる非線形な信号成分は、そのアナログ回路への入力信号に所望波成分以外の妨害波成分が含まれることによって生じる。そして、妨害波成分の強度が大きいほど出力信号に含まれる非線形な信号成分の強度が大きくなる。かかる妨害波は、信号の送信元から携帯通話装置1000までの伝送経路が複数存在する場合や、所望波に隣接した周波数領域に他の信号が存在する場合などに発生する。チューナ100からの信号Siに含まれる非線形性分は信号のノイズ成分となり、かかるノイズ成分が大きくなりすぎると、復調器200の復調処理後の信号に基づく画像データ等の再現が正確になされなくなるおそれもある。
【0055】
一方で、回路部品に供給される電力に応じてその回路部品の線形性が変動する場合がある。例えば、あるアナログ回路においては、その回路部品に供給される電力が大きいほど入力信号に対する出力信号の線形性が向上する。
【0056】
したがって、携帯通話装置1000の受信状態が良好ではなく、チューナ100の受信信号に所望波以外の妨害波が含まれている場合には、ある回路部品に供給される電力を増加することによって回路部品の線形性を向上する。これによって、チューナ100からの信号Siに非線形成分が含まれるのを抑制することができる。その一方で、携帯通話装置1000の受信状態が良好である場合には、携帯通話装置1000が受信する信号に含まれる妨害波が小さく、回路部品の線形性をそれほど向上しなくても非線形性分が問題になるほど大きくならないことがある。このような場合にも回路部品に供給される電力が大きいと、チューナ100の消費電力が過大なものとなるおそれがある。
【0057】
そこで、本実施形態のチューナ100には電力供給部110が設けられている(図2参照)。電力供給部110は、RFアンプ部101、ミキサ部102、フィルタ部104及びIFアンプ部105のそれぞれに電力を供給する(電力供給手段)。RFアンプ部101等は、電力供給部110からの供給電力によって動作する。電力供給部110には、回路部品に供給すべき電力の大きさ等を示す電力供給制御信号が制御部300から入力される。電力供給部110は、電力供給制御信号が示す大きさの電力をRFアンプ部101等に供給する。
【0058】
そして、制御部300は、復調器200からのMER計測値に基づいて電力供給制御信号を生成し、チューナ100へと出力する。具体的には、制御部300は、MER計測値に基づいて携帯通話装置1000の受信状態を検出する。そして、その検出結果に基づいて、回路部品に供給される電力ができるだけ小さくなるように制御信号を生成する。
【0059】
より具体的には、制御部300は、受信状態が良好であるか否かを検出する基準となる検出基準値を保持している。かかる検出基準値は、電力を減少する際の基準となる電力減少基準値と、電力を増加する際の基準となる電力増加基準値とを含んでいる。制御部300は、電力減少基準値とMER計測値とを比較し、MER計測値が電力減少基準値を超えた場合には受信状態がより良好になったと判定する。また、電力増加基準値とMER計測値とを比較し、MER計測値が電力増加基準値を下回った場合には受信状態がより良好でなくなったと判定する。制御部300は、受信状態が良好になったと判定した場合に回路部品への電力を減少させるように電力供給制御信号を生成すると共に、受信状態が良好でなくなったと判定した場合に回路部品への電力を増加させるように電力供給制御信号を生成する。電力増加基準値は、復調処理後の信号から画像データ等を再現可能なMER値の下限値より所定値だけ大きく設定されており、電力減少基準値は電力増加基準値よりも大きいMER値に設定されている。
【0060】
<フェージング環境に基づく制御>
ところで、携帯通話装置1000における受信状態は、時間の経過に伴って変動する場合がある。このように受信状態が変動する一因としてフェージングの発生が挙げられる。フェージングは、送信元から携帯通話装置1000までの伝送経路の状況の違いによって発生する。例えば、伝送経路が異なる2つの信号が重複して携帯通話装置1000に受信される場合にフェージングが発生する。2つの信号の位相ずれによって信号の強度が甚だしく低下するなどの理由によるものである。携帯通話装置1000が移動している場合には、フェージングをもたらす伝送経路の状況が変動する。これによって、受信状態も変動することとなる。以下、フェージングをもたらす伝送経路の環境をフェージング環境と呼称する。
【0061】
このようにフェージング環境が変動して受信状態が変動すると、上記のような回路部品への供給電力の制御が適切になされなくなるおそれがある。例えば、フェージング環境の変動が激しいと受信状態も激しく変動するため、供給電力の制御が受信状態の変動に追いつかなくなるおそれがある。また、フェージング環境の変動が緩やかであると受信状態も緩やかに変動する。このような場合に供給電力を頻繁に制御すると、電力制御の効率が全体として低下するおそれがある。例えば単に受信状態が一時的に悪化しただけであるのに、すぐに供給電力が増加されたりするからである。
【0062】
一方で、フェージング環境下において、携帯通話装置1000に到達する信号には、携帯通話装置1000の移動の速さに応じたドップラーシフトが発生する。例えば、複数の伝送経路が存在するマルチパス環境においては、各伝送経路を介して到達する信号は、ドップラー周波数だけ周波数がずれた信号が携帯通話装置1000に到達する。ドップラー周波数は、携帯通話装置1000の移動の速さに比例する。したがって、ドップラー周波数を取得することによって、携帯通話装置1000が信号を受信する際のフェージング環境の変化しやすさを推定することができる。
【0063】
そこで、本実施形態の復調器200には、携帯通話装置1000が受信する信号に発生するドップラーシフトのドップラー周波数を導出する周波数導出部207(周波数導出手段)が設けられている(図3参照)。周波数導出部207には、FFT部203が高速フーリエ変換処理を施した信号が入力される。周波数導出部207は、FFT部203からの信号に基づいてドップラー周波数を導出し、制御部300へと出力する。
【0064】
周波数導出部207がドップラー周波数を導出する処理は、具体的には以下のとおりである。ドップラーシフトが発生すると副搬送波の周波数がドップラー周波数だけずれるため、FFT部203が高速フーリエ変換を施した信号には所望の周波数以外の周波数成分が含まれることとなる。所望の周波数以外の周波数成分は、ドップラー周波数が大きいほど多く含まれる。
【0065】
周波数導出部207は、同じ副搬送波の異なるシンボルに属する2つの単位信号同士で相関値を算出する。かかる2つの単位信号は、あらかじめ同じI値及びQ値を有するものが選択されている。相関値は、それぞれの単位信号のI値同士及びQ値同士を掛け合わせたものの和の絶対値として算出される。上記の通り、同じ副搬送波には同じI値及びQ値を有する2つのスキャッタードパイロット信号が含まれており、これらのスキャッタードパイロット信号が相関値の算出に用いられてよい。算出された相関値は、高速フーリエ変換処理後の2つのスキャッタードパイロット信号に所望の周波数以外の成分が含まれているほど小さくなる。したがって、周波数導出部207は、相関値が小さいほどドップラー周波数を大きく、相関値が大きいほどドップラー周波数を小さく導出する。ここで、ドップラー周波数は、相関値とドップラー周波数との関連付けを示すテーブルから導出されてもよいし、相関値とドップラー周波数との関係を示す計算式を用いて算出されてもよい。
【0066】
制御部300は、復調器200からのMER計測値のみならず、ドップラー周波数にも基づいて電力供給信号を生成する処理を実行する。以下、制御部300についてより詳細に説明する。制御部300は、図4に示すように、受信状態検出部301等の機能ブロックを有しており、汎用のプロセッサ回路やメモリを含むハードウェアとそのハードウェアを各機能ブロックとして機能させるプログラムとから構成されている。
【0067】
受信状態検出部301は、復調器200からのMER計測値に基づいて、現時点での受信状態を検出する。条件記憶部306には受信状態を検出するための検出期間の長さを示す検出期間データが格納されている。受信状態検出部301は、条件記憶部306に格納された検出期間データが示す長さの検出期間に亘って復調器200からのMER計測値を蓄積し、蓄積したMER計測値の平均を算出する。条件記憶部306には、上述の電力減少基準値及び電力増加基準値を示す検出基準データが格納されている。受信状態検出部301は、これらの基準値とMER計測値の平均値とを比較することにより、受信状態の良好度を検出する。
【0068】
制御周期決定部302は、復調器200からのドップラー周波数に基づいて、回路部品への供給電力を制御する周期を決定する。条件記憶部306にはドップラー周波数に関する周波数基準値が格納されている。また、チューナ100において電力を制御する周期を示す制御周期データも格納されている。制御周期決定部302は、復調器200からのドップラー周波数と条件記憶部306に格納された周波数基準値とを比較する。そして、その比較結果に基づいて、ドップラー周波数が大きいときには制御を実行する頻度が増加するように制御周期を決定し、ドップラー周波数が小さいときには制御を実行する頻度が減少するように制御周期を決定する。そして、条件記憶部306の制御周期データを決定後の値に更新する。これによって、フェージングの影響により受信状態が変化しやすいときには、電力制御の頻度が増し、フェージングの影響により受信状態が変化しにくいときには、電力制御の頻度が減少する。
【0069】
基準値決定部303は、復調器200からのドップラー周波数に基づいてMER計測値に関する基準値を決定する。具体的には、基準値決定部303は、復調器200からのドップラー周波数と条件記憶部306に格納された周波数基準値とを比較する。そして、その比較結果に基づいて、ドップラー周波数が大きいときには条件記憶部306の検出基準データを、電力増加基準値及び電力減少基準値がより大きいものに更新する。ドップラー周波数が小さいときには条件記憶部306の検出基準データを、電力増加基準値及び電力減少基準値がより小さいものに更新する。これによって、フェージングの影響により受信状態が変化しやすいときには、受信状態が良好でなくなったと受信状態検出部301が検出しやすくなり、フェージングの影響により受信状態が変化しにくいときには、受信状態が良好になったと受信状態検出部301が検出しやすくなる。
【0070】
検出期間決定部304は、復調器200からのドップラー周波数に基づいて、受信状態を検出するための検出期間の長さを決定する。具体的には、検出期間決定部304は、復調器200からのドップラー周波数と条件記憶部306に格納された周波数基準値とを比較する。そして、その比較結果に基づいて、ドップラー周波数が大きいときには条件記憶部306の検出期間データをより短い検出期間に更新し、ドップラー周波数が小さいときには条件記憶部306の検出期間データをより長い検出期間に更新する。これによって、フェージングの影響により受信状態が変化しやすいときには、受信状態検出部301の検出結果が、短期間での受信状態の変動を反映しやすくなる。また、フェージングの影響により受信状態が変化しにくいときには、受信状態検出部301の検出結果が、短期間での受信状態の変動を反映しにくくなり、長期間での緩やかな変動を反映するようになる。
【0071】
電力調整部305は、受信状態検出部301が検出した結果に基づいて電力供給制御信号を生成し、チューナ100へと出力する。条件記憶部306には、チューナ100において各回路部品に供給する電力を示す電力データが格納されている。電力調整部305は、受信状態が良好であると受信状態検出部301が検出した場合に、条件記憶部306が格納している電力データをより小さいものに更新する。また、電力調整部305は、受信状態が良好でないと受信状態検出部301が検出した場合に、条件記憶部306が格納している電力データをより大きいものに更新する。そして、条件記憶部306が格納している電力データに対応する電力供給制御信号を生成すると共に、チューナ100へと出力する。電力調整部305は、以上のような電力供給制御信号の生成及び出力を、条件記憶部306に格納された制御周期データが示す制御周期に相当する頻度で実行する。つまり、制御周期データが示す制御周期に相当するようなタイミングで電力供給制御信号を生成し、チューナ100へと出力する。
【0072】
より具体的には、制御周期、検出基準範囲及び検出期間が、例えば以下のように決定されてもよい。条件記憶部306には下記の表1を示すデータが格納されている。表1は、ドップラー周波数の範囲と電力制御の各条件との関連付けを示すものである。表1中の変数はそれぞれ周波数値、時間値、MER値を示すものであり、f<f<…<f、T>T>…>Tn−1、及び、P>P>…>Pn+1(n:2以上の自然数)を満たしている。また、各Mは、図5に示す数直線上の範囲に相当し、Mの電力減少基準値<Mの電力減少基準値<…<Mn−1の電力減少基準値、及び、Mの電力増加基準値<Mの電力増加基準値<…<Mn−1の電力増加基準値を満たしている。
【0073】
【表1】

【0074】
また、条件記憶部306には、1〜n+1のいずれかの値を示す条件番号データが格納されており、その数値は電力制御の条件が現時点で表1においていずれに設定されているかを示している。制御周期決定部302、基準値決定部303、及び検出期間決定部304は、復調器200からのドップラー周波数が、表1の1〜n+1のいずれの条件に相当するかを判定する。そして、条件記憶部306の条件番号データを更新すると共に、その条件値データが示す制御周期等に制御条件を決定する。
【0075】
例えば、復調器200からのドップラー周波数がf〜fの範囲内であるとする。このとき、条件番号データは3に設定され、制御周期、検出基準範囲及び検出期間はそれぞれP3、M2及びT2に設定されている。そして、復調器200からのドップラー周波数がfを超えた場合(第1の周波数基準値を超えた場合に相当する)には、制御周期決定部302、基準値決定部303、及び検出期間決定部304は、表1を参照して条件番号データを4に更新し、制御周期、検出基準範囲及び検出期間をそれぞれP4、M3及びT3に決定する。一方、復調器200からのドップラー周波数がfを下回った場合(第2の周波数基準値を下回った場合に相当する)には、制御周期決定部302、基準値決定部303、及び検出期間決定部304は、表1を参照して条件番号データを2に更新し、制御周期、検出基準範囲及び検出期間をそれぞれP3、M2及びT2に決定する。
【0076】
このように表1に従って制御周期、検出基準範囲及び検出期間が決定されることにより、ドップラー周波数が大きくなり受信状態が変化しやすくなるに従って、条件番号データが増加される。これに伴って、制御周期及び検出期間が短くなり、受信状態が良好でないと検出されやすくなるような検出基準範囲が設定される。また、ドップラー周波数が小さくなり受信状態が変化しにくくなるに従って、条件番号データが減少される。これに伴って、制御周期及び検出期間が長くなり、受信状態が良好であると検出されやすくなるような検出基準範囲が設定される。
【0077】
また、表1においては、ドップラー周波数がfを超えた場合には、電力の制御そのものを停止することが想定されている。最大の基準値fをドップラー周波数が超えた場合には、フェージング環境の変動が著しく、受信状態の変動も甚だしいため、電力を減少するような制御自体が不可能になると想定されるからである。さらに、ドップラー周波数がf未満である場合にも、電力の制御を停止することが想定されている。ドップラー周波数がf未満である場合には、フェージング環境が非常に緩やかに変動することとなる。しかし、ドップラー周波数が非常に小さくなると、周期が非常に長い突発的な受信状態の変動が発生することがある。このような場合、逆に受信が困難になるため、この場合にも電力を減少させるような制御自体が不可能になると想定されるからである。
【0078】
なお、ドップラー周波数がf未満である場合に、電力制御を停止せず継続してもよい。この場合、検出基準範囲がMであるときよりも受信状態が良好でないと検出されやすくなるような検出基準範囲で制御することが好ましく、例えばMnー1と等しい基準範囲で制御してもよい。また、このとき、PはPより小さいものに設定することが好ましく、例えば、Pn+1と等しいものであってもよい。これによって、上記のような周期が非常に長い突発的な受信状態の変動が発生しても、受信状態の変動に追随した適切な電力制御が実行され得る。
【0079】
<電力制御フロー>
以下、図6のフローチャートを参照して、制御部300が実行する処理の流れをより詳細に説明する。
【0080】
まず、制御部300は、チューナ100において各回路部品に供給される電力をデフォルト値に設定し、条件記憶部306に格納する。そして、電力調整部305は、デフォルト値に相当する電力供給制御信号を生成し、チューナ100へと出力する(S1)。かかるデフォルト値は、最悪の受信状態を想定してある程度のマージンをとった大きさに設定されている。
【0081】
次に、制御部300は一定時間待機する(S2)。ここで、待機時間は、条件記憶部306に格納された制御周期データに応じて設定される。つまり、制御周期が長ければ長いほど待機時間も長く、制御周期が短ければ短いほど待機時間も短く設定される。
【0082】
次に、周波数導出部207がドップラー周波数を導出する(S3)。そして、周波数導出部207が導出したドップラー周波数に基づいて、制御周期決定部302が制御周期を、基準値決定部303が検出基準範囲を、検出期間決定部304が検出期間の長さをそれぞれ決定する(S4〜S6)。決定された制御周期、検出基準範囲及び検出期間を示すデータは、条件記憶部306に格納される。
【0083】
次に、制御部300は、電力を削減する制御を停止するべきか否かをドップラー周波数に基づいて判定する(S7)。具体的には、電力を削減する制御を実行できる範囲内にドップラー周波数が収まっているか否かを判定する。例えば、表1を利用する場合、ドップラー周波数がf未満である場合やfを超えた場合に、電力制御が可能な範囲を超えたと判定する。ドップラー周波数が電力を削減する制御が可能である範囲内にないと判定すると(S7、YES)、制御部300は、条件記憶部306に格納された電力値をデフォルト値に戻し(S13)、S2からの処理を実行する。
【0084】
ドップラー周波数が電力を削減する制御が可能である範囲内であると制御部300が判定すると(S7、NO)、受信状態検出部301は、条件記憶部306に格納された検出期間データ値の期間に亘って復調器200からのMER計測値を蓄積する(S8)。そして、蓄積したMER計測値の平均値を算出し、その平均値から受信状態を検出する(S9)。より詳細には、受信状態検出部301は、MER計測値に応じて、受信状態がより良好になった、受信状態がより良好でなくなった、及び、電力制御をリセットするべき、の3状態のいずれかを検出する。受信状態検出部301は、条件記憶部306に格納された電力減少基準値を平均値が超えた場合には、受信状態が良好になったと判定する。また、電力増加基準値より小さい所定のリセット基準値より平均値が小さい場合には、電力制御をリセットすべきであると判定する。平均値がリセット基準値より大きいが、条件記憶部306に格納された電力増加基準値を平均値が下回った場合には、受信状態が良好でなくなったと判定する。
【0085】
次に、制御部300は、S9の受信状態検出に基づいて図7のフローチャートに示す電力調整処理を実行する(S10)。そして、電力制御を終了するか否かを判定する(S11)。例えば、チューナ100による信号の受信が終了したか否かに基づいて、電力制御を終了するか否かを判定する。電力制御を終了すると判定した場合には(S11、YES)、制御部300は、条件記憶部306に格納された電力値をデフォルト値に設定し(S12)、電力制御処理を終了する。一方、電力制御を継続すると判定した場合には(S11、NO)、S2からの処理を実行する。
【0086】
以下、図7の電力調整処理について説明する。図6のS9において受信状態が良好になったと受信状態検出部301が判定した場合(S21)、電力調整部305は、条件記憶部306に格納された電力値を減少すると共に、減少後の電力に対応する電力供給制御信号を生成してチューナ100へと出力する(S24)。また、S9において電力制御をリセットすべきと受信状態検出部301が判定した場合(S21でNO且つS22でYES)、電力調整部305は、条件記憶部306に格納された電力値をデフォルト値に設定すると共に、デフォルト値に相当する電力供給制御信号を生成してチューナ100へと出力する(S25)。さらに、S9において受信状態が良好でなくなったと受信状態検出部301が判定した場合(S22でNO且つS23でYES)、電力調整部305は、条件記憶部306に格納された電力値を増加すると共に、増加後の電力に対応する電力供給制御信号を生成してチューナ100へと出力する(S26)。そして、図6のS11からの処理に戻る。
【0087】
<作用効果>
以上の実施形態によると、電力増加基準値及び電力減少基準値とMER計測値とを比較し、その比較結果に基づいて回路部品に供給する電力を調整している。これによって、受信状態の良好度に合わせた適切な電力制御が実行される。
【0088】
また、ドップラー周波数と周波数基準値とを比較し、その比較結果に基づいて、フェージング環境が変化しやすいときには時間当たりの電力制御の回数を増加し、フェージング環境が変化しにくいときには時間当たりの電力制御の回数を減少している。したがって、受信状態が激しく変動するときは制御回数が増えるので受信状態の変動に制御が追随しやすくなり、受信状態が緩やかに変動するときは制御回数が減るので制御効率の低下が抑制される。
【0089】
また、ドップラー周波数と周波数基準値とを比較し、その比較結果に基づいて受信状態の検出基準を調整している。つまり、フェージング環境が変化しやすいときには受信状態が良好であると検出されにくくなるように検出基準を変更し、フェージング環境が変化しにくいときには受信状態が良好であると検出されやすくなるように検出基準を変更している。したがって、受信状態が激しく変動するときは回路部品への供給電力が減少しにくいような制御が実行され、受信状態が緩やかに変動するときは回路部品への供給電力が減少しやすいような制御が実行される。
【0090】
また、ドップラー周波数と周波数基準値とを比較し、その比較結果に基づいて、フェージング環境が変化しやすいときには受信状態の検出期間を短くし、フェージング環境が変化しにくいときには受信状態の検出期間を長くしている。したがって、受信状態が激しく変動するときは短期間の変動が受信状態の検出結果に反映されやすくなり、受信状態が緩やかに変動するときは短期間の変動が受信状態の検出結果に反映されにくく、長期間の変動がより反映されやすくなる。
【0091】
このように、本実施形態によると、受信状態の変動に適切に対応した電力制御が実行される。
【0092】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0093】
例えば、上述の実施形態においては、携帯通話装置1000が受信した信号に発生するドップラーシフトの周波数を導出することによって、携帯通話装置1000が信号を受信する際のフェージング環境を推定している。しかし、受信信号から取得される情報以外の情報に基づいてフェージング環境を推定してもよい。例えば、本発明のデジタル復調装置が移動車両などに搭載されている場合に、移動車両の速度計から移動車両の速さを直接取得し、その速さからフェージング環境の変化しやすさを推定してもよい。
【0094】
また、上述の実施形態においては、所定の検出期間に亘って蓄積されたMER計測値の平均値を算出し、その算出値に基づいて受信状態が検出されている。しかし、所定の検出期間に亘って蓄積されたMER計測値の分布状況に基づいて受信状態が検出されてもよい。例えば、蓄積されたMER計測値の分散を算出し、その分散に基づいてMER計測値の分布状況を把握する。そして、その分布状況に基づいて受信状態を検出してもよい。
【0095】
また、上述の実施形態においては、ドップラー周波数に基づいて制御周期、受信状態の検出基準値及び検出期間の全てを調整している。しかし、これらのいずれかのみが調整されてもよいし、これらのうち2つを調整してもよい。
【0096】
また、上述の実施形態においては、復調器200からのMER計測値に基づいて制御部300が受信状態を検出しているが、復調器200からのBER値に基づいて受信状態を検出してもよい。あるいは、MER及びBERの両方を用いて受信状態を検出してもよい。BERを用いる場合には、例えば復調器200からのBER値とBERに関する検出基準値との比較結果に基づいて受信状態が良好か否か等が検出される。
【0097】
また、上述の実施形態においては、2つのスキャッタードパイロット信号の相関に基づいてドップラー周波数を導出することが想定されている。しかし、スキャッタードパイロット信号ではなく、TMCC信号に基づいてドップラー周波数が導出されてもよい。また、2つの信号の相関に基づいて導出するのではなく、FFT部203からの信号に基づいて、ドップラーシフトに起因して高速フーリエ変換処理後の信号に含まれることとなった所望の周波数成分以外の他の周波数成分の分布状況から導出してもよい。
【0098】
また、上述の実施形態によると、MER計測値と検出基準値との比較結果から受信状態を判定し、その判定結果に基づいて電力値を調整している。このとき、MER計測値と各回路部品への電力値との関連付けを示すテーブルや計算式をあらかじめ用意し、かかるテーブルや計算式に基づいて電力値を決定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係る携帯通話装置の平面図である。図1(b)は、携帯通話装置に搭載されたデジタル復調装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1(b)のチューナの構成を示すブロック図である。
【図3】図1(b)の復調器の構成を示すブロック図である。
【図4】図1(b)の制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】図4の制御部が受信状態を検出するのに用いる検出基準値の範囲を示すグラフである。
【図6】図4の制御部が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6の一ステップにおいて実行される電力調整処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0100】
1 デジタル復調装置
100 チューナ
110 電力供給部
200 復調器
207 周波数導出部
300 制御部
301 受信状態検出部
302 制御周期決定部
303 基準値決定部
304 検出期間決定部
305 電力調整部
306 条件記憶部
1000 携帯通話装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、
前記回路部品に電力を供給する電力供給手段と、
前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出手段と、
前記受信状態検出手段が検出した結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整手段と、
前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定手段と、
前記フェージング環境推定手段が推定した結果に基づいて、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数がフェージング環境の変化しやすさに応じて変化するように、前記電力調整手段を制御する電力制御手段とを備えていることを特徴とするデジタル復調装置。
【請求項2】
前記フェージング環境推定手段が、前記チューナが受信した信号において発生したドップラーシフトのドップラー周波数を導出する周波数導出手段を有していることを特徴とする請求項1に記載のデジタル復調装置。
【請求項3】
前記電力制御手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を超えた場合に、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数が大きくなるように、前記電力調整手段を制御することを特徴とする請求項2に記載のデジタル復調装置。
【請求項4】
前記電力制御手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を下回った場合に、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数が小さくなるように、前記電力調整手段を制御することを特徴とする請求項2に記載のデジタル復調装置。
【請求項5】
信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを導出する評価値導出手段をさらに備えており、
前記受信状態検出手段が、
前記評価値導出手段が所定の期間に亘って導出した結果に基づいて前記受信状態を検出し、
前記電力制御手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を超えた場合に前記所定の期間が短くなるように、前記受信状態検出手段を制御することを特徴とする請求項2に記載のデジタル復調装置。
【請求項6】
信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを導出する評価値導出手段をさらに備えており、
前記受信状態検出手段が、
前記評価値導出手段が所定の期間に亘って導出した結果に基づいて前記受信状態を検出し、
前記電力制御手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を下回った場合に前記所定の期間が長くなるように、前記受信状態検出手段を制御することを特徴とする請求項2に記載のデジタル復調装置。
【請求項7】
前記電力制御手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が第1の周波数基準値を超えた場合に、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数が多くなると共に、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が前記第1の周波数基準値以下の第2の周波数基準値を下回った場合に、前記電力調整手段が前記電力を調整する単位時間当たりの回数が少なくなるように、前記電力調整手段を制御することを特徴とする請求項2に記載のデジタル復調装置。
【請求項8】
信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを導出する評価値導出手段をさらに備えており、
前記受信状態検出手段が、
前記評価値導出手段が所定の期間に亘って導出した結果に基づいて前記受信状態を検出し、
前記電力制御手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が第1の周波数基準値を超えた場合に前記所定の期間が短くなると共に、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が前記第1の周波数基準値以下の第2の周波数基準値を下回った場合に前記所定の期間が長くなるように、前記受信状態検出手段を制御することを特徴とする請求項2〜4及び7のいずれか1項に記載のデジタル復調装置。
【請求項9】
前記電力制御手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が、前記回路部品への電力を削減可能な範囲内である場合にのみ、前記電力調整手段に前記電力を調整させることを特徴とする請求項2〜8のいずれか1項に記載のデジタル復調装置。
【請求項10】
受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、
前記回路部品に電力を供給する電力供給手段と、
信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを評価値として導出する評価値導出手段と、
前記評価値導出手段が導出した結果と前記評価値に関する基準値とを比較すると共に、その比較結果を前記チューナが信号を受信した際の受信状態の検出結果として出力する受信状態検出手段と、
前記受信状態検出手段が検出した結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整手段と、
前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定手段と、
前記フェージング環境推定手段が推定した結果に基づいて、前記評価値に関する基準値をフェージング環境の変化しやすさに応じた値に変更する基準値変更手段とを備えていることを特徴とするデジタル復調装置。
【請求項11】
前記フェージング環境推定手段が、前記チューナが受信した信号において発生したドップラーシフトのドップラー周波数を導出する周波数導出手段を有していることを特徴とする請求項10に記載のデジタル復調装置。
【請求項12】
前記基準値変更手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を超えた場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しにくくなるように前記評価値に関する基準値を変更することを特徴とする請求項11に記載のデジタル復調装置。
【請求項13】
前記基準値変更手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が所定の周波数基準値を下回った場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しやすくなるように前記評価値に関する基準値を変更することを特徴とする請求項11に記載のデジタル復調装置。
【請求項14】
前記基準値変更手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が第1の周波数基準値を超えた場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しにくくなるように前記評価値に関する基準値を変更すると共に、前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が前記第1の周波数基準値以下の第2の周波数基準値を下回った場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しやすくなるように前記評価値に関する基準値を変更することを特徴とする請求項11に記載のデジタル復調装置。
【請求項15】
前記基準値変更手段が、
前記周波数導出手段が導出したドップラー周波数が、前記第2の周波数基準値よりも小さい第3の周波数基準値よりさらに下回った場合に、前記比較手段の比較結果が受信状態が良好であることを示しにくくなるように前記評価値に関する基準値を変更することを特徴とする請求項14に記載のデジタル復調装置。
【請求項16】
前記電力調整手段が、
前記受信状態検出手段の検出結果が示した受信状態が良好であるほど前記回路部品に供給される電力が減少するように前記電力を調整することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載のデジタル復調装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項のデジタル復調装置を備えており、
前記デジタル復調装置からの信号に基づいて、文字データ、画像データ、プログラムデータ、及び音声データの少なくともいずれかの再現処理を実行することを特徴とするデジタル受信装置。
【請求項18】
受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段とを備えているデジタル復調装置の制御方法であって、
前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出ステップと、
前記受信状態検出ステップにおいて検出された結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整ステップと、
前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定ステップと、
前記フェージング環境推定ステップにおいて推定された結果に基づいて、前記電力が調整される単位時間当たりの回数がフェージング環境の変化しやすさに応じて変化するように前記電力調整ステップにおける電力の調整を制御する制御ステップとを備えていることを特徴とするデジタル復調装置の制御方法。
【請求項19】
受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段とを備えているデジタル復調装置の制御方法であって、
信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを評価値として導出する評価値導出ステップと、
前記評価値導出ステップにおいて導出された結果と前記評価値に関する基準値とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて比較された結果に基づいて前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出ステップと、
前記受信状態検出ステップにおいて検出された結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整ステップと、
前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定ステップと、
前記フェージング環境推定ステップにおいて推定された結果に基づいて、前記評価値に関する基準値をフェージング環境の変化しやすさに応じた値に変更する基準値変更ステップとを備えていることを特徴とするデジタル復調装置の制御方法。
【請求項20】
受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段とを備えているデジタル復調装置用のプログラムであって、
前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出ステップ、
前記受信状態検出ステップにおいて検出された結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整ステップ、
前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定ステップ、及び、
前記フェージング環境推定ステップにおいて推定された結果に基づいて、前記電力が調整される単位時間当たりの回数がフェージング環境の変化しやすさに応じて変化するように前記電力調整ステップにおける電力の調整を制御する制御ステップを前記デジタル復調装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項21】
受信信号に選局処理を施すチューナと前記チューナが選局処理を施した信号に復調処理を施す復調器とを構成する回路部品と、前記回路部品に電力を供給する電力供給手段とを備えているデジタル復調装置用のプログラムであって、
信号に復調処理を施す際にMER(Modulation Error Ratio)値及びBER(Bit Error Rate)値の少なくともいずれかを評価値として導出する評価値導出ステップと、
前記評価値導出ステップにおいて導出された結果と前記評価値に関する基準値とを比較する比較ステップと、
前記比較ステップにおいて比較された結果に基づいて前記チューナが信号を受信した際の受信状態を検出する受信状態検出ステップと、
前記受信状態検出ステップにおいて検出された結果に基づいて、前記電力供給手段が前記回路部品に供給する電力を調整する電力調整ステップと、
前記チューナが信号を受信する際のフェージング環境を推定するフェージング環境推定ステップと、
前記フェージング環境推定ステップにおいて推定された結果に基づいて、前記評価値に関する基準値をフェージング環境の変化しやすさに応じた値に変更する基準値変更ステップとを前記デジタル復調装置に実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項22】
請求項20又は21のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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