説明

トランスミッションロック装置

【課題】安全面で向上したトランスミッション用ロック構造体を提供する。
【解決手段】トランスミッション(12)用のロック構造体(10)、特にオートマチックトランスミッション用の駐車ロック構造体が提案され、このロック構造体(10)は、第1のスプリングアキュムレータ(38)によって、トランスミッションがロックされるロック位置(S)を取るよう第1のスプリングアキュムレータ(38)によってあらかじめ力が加えられ、ロック構造体(10)は、アクチュエータ(32)によってロック位置(S)からトランスミッションが解除される解除位置(F)にシフト可能である。この場合、ロック構造体(10)は、ロック構造体(10)をロック位置(S)に機械的に拘束するよう設計された電子作動式拘束装置(50)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッション(変速装置)用のロック構造体、特にオートマチックトランスミッション(自動変速装置)用の駐車ロック構造体に関し、ロック構造体は、トランスミッションがロックされるロック位置を取るよう第1のスプリングアキュムレータによってあらかじめ力が加えられ、ロック構造体は、アクチュエータによってロック位置からトランスミッションがロック解除される解除位置にシフト可能である。
【0002】
オートマチックトランスミッション用のこの種の駐車ロック構造体が知られており、かかるオートマチックトランスミッションとしては、オートマチックコンバータ、自動シフト式トランスミッション、ダブルクラッチ形トランスミッション等が挙げられる。
【0003】
本発明は、更に、かかるロック構造体を作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
独国特許第4127991号明細書は、オートマチックトランスミッション用の駐車ロック装置を開示しており、ロック装置は、一般にこのロック装置をロック位置に押圧するばねアキュムレータ及び駐車ロック装置を解除位置に押すことができる電気油圧アクチュエータを有している。解除位置を保持するため、圧力媒体アキュムレータが設けられる場合がある。変形例として、駐車ロック装置を機械的に両方の位置に保持する機械的双安定フリップフロップが設けられる。この場合、圧力媒体は、位置の変化のためにのみ必要である。位置センサが、駐車ロック装置の位置を検出する。
【0005】
独国特許出願公開第102004021981号明細書は、ロック位置を設定するばねアキュムレータ及び解除位置を設定する解除装置を備えた駐車ロック装置を開示している。電磁保持装置が、駐車ロック装置を解除位置に保持する。解除装置は、トランスミッションアクチュエータによって作動可能である。
【0006】
また、駐車ロック装置を解除位置に保持する保持装置を備えた駐車ロック装置が、独国特許出願公開第19834156号明細書、同第10212038号明細書、及び同第10037565号から知られている。保持装置の電子作動によって、保持装置は、解除され、駐車ロック装置は、ばねアキュムレータによってロック位置に移される。この場合、この位置をセンサによりモニタする手段が設けられる場合がある。
【0007】
独国特許出願公開第19834156号明細書及び同第10037565号明細書は、この場合、流体アクチュエータによって駐車ロック装置をロック位置に移す解決策を開示している。この目的で、独国特許出願公開第10212038号明細書の駐車ロック装置は、電気モータを用いている。
【0008】
さらに、独国特許出願公開第19804640号明細書も又、位置が電子的にチェックされる駐車ロック装置を開示している。異常が検出されると、アクチュエータにより作動可能な駐車ブレーキが作動される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この背景技術を考慮して、本発明の目的は、特に安全面において向上したトランスミッションロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、本明細書の導入部で言及したロック構造体において、ロック構造体がロック構造体をロック位置に機械的に拘束するよう設計された電子作動式拘束装置を有するという特徴によって達成される。
【0011】
拘束装置により、駐車ロック装置の解除を、高い信頼性で阻止することが可能である。特に自動車を坂道で停車させたとき、これにより、特に運転手が駐車ブレーキを作動させるのを忘れた場合、先行技術においては安全上の問題が生じる場合がある。
【0012】
拘束装置によってこの点に関し追加の安全性を得ることができる。アクチュエータを万一不用意に(例えば、制御エラー等の理由で)作動させてロック構造体を解除位置にシフトさせようとしても、これは、拘束装置によって阻止される。
【0013】
ロック構造体をロック位置から解除位置にシフトさせるアクチュエータは、流体アクチュエータ、特に電気油圧シリンダであるのがよい。ただし、アクチュエータを、電気モータ又は電磁石等によって形成してもよい。
【0014】
電子的に作動可能な拘束装置によって、ロック構造体は、従来設計と比較して簡単な構造を有し、本質的には改造は不要である。
【0015】
また、本発明の拘束装置は、好ましくは、ロック構造体を解除位置に機械的に拘束するために使用することもできる。この場合、拘束装置は、ロック構造体を第1のばねアキュムレータの力に抗して解除位置に保持する保持装置としても働く。その結果、アクチュエータを作動させるエネルギー、特に、流体アクチュエータの圧力エネルギーを節約することができる。というのは、第1のばねアキュムレータを張力付与状態に保持するために解除位置においてアクチュエータにエネルギーを常時供給する必要がないからである。
【0016】
好ましくは、拘束装置は、電子作動式作動部材によって拘束位置と非拘束位置との間でシフトできる拘束部材を有し、拘束部材は、ロック構造体を拘束位置に確実に拘束する。
【0017】
確実な拘束の結果として、アクチュエータを比較的大きな力で作動させた場合であっても、解除位置へのロック構造体のシフトは、不可能である。
【0018】
この場合、拘束部材が非拘束位置を取るよう第2のばねアキュムレータによりあらかじめ力を拘束部材に加えるようにすれば、特に好ましい。
【0019】
この構成により、駐車ロック装置をドライブトレインの自動インターロックがロック構造体又は拘束装置の作動が行われない場合であっても可能であるように設計することができる。これは、特に拘束装置がロック構造体を解除位置に機械的に拘束するためにも用いられる場合に当てはまる。
【0020】
また、変形例として、拘束部材が拘束位置を取るよう第2のばねアキュムレータによってあらかじめ力が拘束部材に加えられるようにすることが可能である。
【0021】
この実施形態では、ロック構造体をいずれの場合においても、エネルギーを供給する必要なく、ロック位置又は解除位置に保持し又は拘束することが可能である。エネルギー供給は、拘束部材を非拘束位置にシフトさせるために、位置を変える場合にのみ必要である。
【0022】
拘束部材をシフトさせる作動部材は、例えば、電気機械式の能動的機構体、例えば、可動コイル、比例磁石、作動又はステッピング駆動装置等によって具体化できる。
【0023】
別の好ましい実施形態によれば、拘束部材は、拘束部材を低摩擦状態で拘束位置から非拘束位置にシフトさせる手段を有する。
【0024】
その結果、拘束作用を打ち消すのに必要な力を必要最小限度に減少させることができる。
【0025】
この手段は、この場合、一方が拘束部材側にあり、他方がロック構造体側にある、相互に接触する表面は、低摩擦設計のものである(対応の表面処理により、例えば、金属又は非金属被膜により)ように構成されるのがよい。
【0026】
しかしながら、拘束部材は、拘束部材を低摩擦状態で拘束位置から非拘束位置にシフトさせるために回転可能に設けられた転動体を有すると、特に好ましい。
【0027】
別の好ましい実施形態によれば、ロック構造体は、トランスミッションの動力取出し部にしっかりと連結された第1のロック部材と、トランスミッションのハウジングのところで可動的に支持された第2のロック部材とを有する。
【0028】
第1のロック部材は、この場合、例えば歯を備えた(例えば、外周部に、しかしながら軸方向表面等上にも)従来型駐車ロックホイールであってよい。第2のロック部材は、例えば、第3のばねアキュムレータによって解除位置になるようにあらかじめ力が加えられた駐車ロック爪であってよい。
【0029】
一般に、第1のロック部材と第2のロック部材をロック位置において互いに摩擦係合させることが可能である。
【0030】
しかしながら、第1のロック部材と第2のロック部材は、動力取出し部をハウジングに連結し、その結果としてトランスミッションをロックするために、ロック位置るおいて互いに確実に係合することが好ましい。これに対応して、第1のロック部材と第2のロック部材は、動力取出し部を解除するために、解除位置において互いに解除される。
【0031】
一実施形態によれば、拘束装置は、ロック構造体を機械的に拘束するために、第2のロック部材に係合することが全体として好ましい。
【0032】
この手だてにより拘束装置を構造的に簡単な仕方で既存の駐車ロック構造体に組み込むことができる。さらに、一般に、追加のコンポーネントは不要である。
【0033】
さらに、第2のロック部材への係合により、拘束装置は、ロックコンポーネントのうちの一方に直接作用し、したがって、安全性の向上が得られるようになる。
【0034】
しかしながら、変形例として、拘束装置は、ロック構造体を機械的に拘束するために、アクチュエータの作動部材に係合することも又可能である。
【0035】
この場合においても、構造的に簡単な仕方で拘束装置を組み込むことが可能である。さらに、拘束装置をロック位置への拘束と解除位置への保持の両方に用いることは、比較的簡単である。
【0036】
さらに、ロック構造体がロック位置にあるか又は解除位置にあるかを検出する第1の位置センサを設けると、有利である。
【0037】
位置センサにより、制御装置において拘束装置を作動させるべきであるか否かに関する決定をロック構造体の位置に関連させることができる。また、ロック構造体がロック位置にも解除位置にも無い場合、拘束装置の作動を阻止することが可能である。
【0038】
特に好ましいこととして、制御装置を設け、この制御装置は、ロック位置へのロック構造体のシフト後、流体をアクチュエータに供給する流体供給装置が依然として動作中であるかどうかを確かめるための問合せ手段を有し、もしそうであれば、制御装置は、拘束装置を作動させてロック構造体を拘束するようにする。
【0039】
この実施形態では、流体供給装置の作動のために、一般に、流体アクチュエータを作動させてロック構造体を再び解除する恐れが依然としてある場合に拘束装置を用いることが可能である。
【0040】
例えば、エンジンが作動している状態で車両を停車させると、流体供給システムの故障が生じる場合があり、その結果、駐車ロック装置が解除され、その結果、車両が動いていく恐れがある。
【0041】
流体アクチュエータは電磁的に作動される場合が多いので、それ故に、流体アクチュエータ内の圧力を上昇させるほど小さなパルスで十分であり、したがって、ロック構造体が不用意に解除されるようになる。
【0042】
これは、拘束装置によって阻止することができる。というのは、これは、ロック構造体がロック位置にシフトされたときに、かかる流体供給装置が依然として動作中である場合に作動されるからである。
【0043】
かかる技術的思想は、問合せ手段が一般に、アクチュエータが不用意に作動される(例えば、対応の電気供給回路が依然として働いている場合)恐れが依然としてあるかどうかを確かめるので、他のアクチュエータ(例えば、電磁石又は電気モータ)においても採用できる。
【0044】
別の好ましい実施形態によれば、ロック位置へのロック構造体のシフト後、問合せ手段は、流体をアクチュエータに供給する流体供給装置が動作中でないことを確認し、制御装置は、ロック構造体を拘束するような拘束装置の作動を行わず、又は拘束装置を作動させて非拘束位置に移す。
【0045】
それにより、達成されることは、拘束装置が供給装置が稼働しないので、アクチュエータが第1のばねアキュムレータのばねの予備力に抗して作動させる恐れが存在しない場合、作動状態になることはなく又は非作動状態にされる。この状況に関し、ロック構造体をロック位置に保持するために、第1のばねアキュムレータの作用が発揮される。
【0046】
本発明のロック構造体を作動させる方法では、ロック位置へのロック構造体のシフト後、流体をアクチュエータに供給する供給装置が動作中であるかどうかを確かめるステップ、もしそうであれば、拘束装置を作動させてロック構造体を拘束するステップ、ロック位置へのロック構造体のシフト後、流体をアクチュエータに供給する供給装置が動作中でないことが確認されると、ロック構造体を拘束するようなロック装置の作動を行わず、又は拘束装置を作動させてロック構造体を拘束しないようにするステップが実施される。
【0047】
全体として、本発明のロック構造体は、好ましくは、例えば油圧又は空気圧制御装置と連係して非作動状態では噛み合っていない始動又はシフトクラッチを備えたオートマチックトランスミッション又は自動車両変速装置に利用できる。
【0048】
本発明によれば、拘束装置は、特に、エンジンが作動しているとき又はロック構造体を解除位置に作動させるためのアクチュエータ用の供給装置が依然として稼働しているときにロック構造体を固定するために用いられる。ロック構造体を解除位置に保持するため、例えば、本明細書の導入部において言及した先行技術で提案されている別個の保持装置を提供するのがよい。しかしながら、好ましくは、拘束装置を保持機能を実行するためにも使用することも又、可能である。
【0049】
さらに、運転手がロック装置をシフトさせてロック位置から離脱させて解除位置にすることができるようにする機械的非拘束装置を提供することが可能である。かかる形式の非常時ロック解除は、例えば、搭載している電圧供給源等の故障の場合に、制御が作動可能な状態にない場合に車両を牽引して行かなければならないに有利である。
【0050】
上述した特徴及び更に以下に説明する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、各場合に特定される組合せの状態だけでなく、他の組合せ又は単独で利用することができるということは理解されよう。
【0051】
本発明の例示の実施形態は、添付の図面に記載されており、これらにつき以下の説明において詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明の駐車ロック構造体の第1の実施形態が、図1に全体を符号10で示されている。
【0053】
ロック構造体10は、オートマチックトランスミッション(自動変速装置)12用の駐車ロック構造体として設計されている。オートマチックトランスミッション12は、図示の場合、例えば、カウンタシャフト式トランスミッションとして設計されており、このカウンタシャフト式トランスミッションにより、例えば、2つ又は3つ以上の歯車セットをそれぞれのシフトクラッチ組立体によって力の流れ系の中に交互にシフトさせることができる。
【0054】
トランスミッションは、入力シャフト14及び出力シャフト16を有している。入力シャフト14は、例えば、始動クラッチ又はダブルクラッチ組立体を介してエンジン、例えば内燃エンジンに連結されている。出力シャフト16は、一般に、自動車の駆動輪にしっかりと連結され、動力取出し部を構成している。
【0055】
シフトクラッチ組立体をシフトアクチュエータ18によって各場合に作動させることができる。シフトアクチュエータ18は、オーバーライディング制御装置20に連結され、この制御装置は、例えば、歯車ステップを選択したり選択解除し、始動クラッチを作動させる等の役割を担っている。
【0056】
制御装置20は又、駐車ロック構造体10を作動させるの機能も有する。
【0057】
駐車ロック構造体10は、外歯付きの駐車ロックホイールの形態をした第1のロック部材22を有している。駐車ロックホイール22は、回転しないように出力シャフト16に固定連結されている。
【0058】
さらに、駐車ロック構造体10は、ロック爪の形態をした第2のロック部材24を有している。ロック爪24は、図1においては、ロック爪の突起がロックホイール22の外歯に嵌まり込んだロック位置“S”にある状態で示されている。第2のロック部材24は、ロック位置Sでは、出力シャフト16がトランスミッション12のハウジングに対して確実にロックされるようにハウジングのところで支持されている。
【0059】
第1のロック部材22の外歯は、図1において符号26で示されている。第2のロック部材24の突起又は歯は、図1では符号28で示されている。
【0060】
駐車ロック構造体10を全体が符号30で示されたアクチュエータ構造体によって作動可能である。
【0061】
アクチュエータ構造体30は、油圧又は空気圧の単動シリンダの形態をした流体アクチュエータ32を有している。流体アクチュエータ32は、制御装置20に連結された流体供給装置34によって作動可能である。
【0062】
流体アクチュエータ32は、ピストン及びピストンロッドを収容した作動部材36を有している。作動部材36には、第1のばねアキュムレータ38によってロック位置Sになるようにあらかじめ力が加えられている。
【0063】
作動部材には、ロックコーン40が取り付けられており、このロックコーンは、ロック位置Sにおいて、第2のロック部材24とトランスミッション12のハウジング42との間に押し込まれ、そして、この位置において、第2のロック部材24が第1のロック部材22の外側26から緩んで外れることがないようにする。
【0064】
制御装置20に接続された第1の位置センサが、符号44で示されている。第1の位置センサ44は、具体的には、第2のロック部材24に設けられた延長部45によって第2のロック部材24の位置を検出する。しかしながら、位置センサ44を任意所望の場所に設けてもよいことがわかる。ただし、この位置センサが、第2のロック部材の位置を検出できること、即ち、第2のロック部材がロック位置Sにあるか以下に説明する解除位置Fにあるかどうかを判定できることを条件とする。
【0065】
流体アクチュエータ32は、圧力空間46を有し、作動部材36を第1のばねアキュムレータ38の力に抗してロック位置Sから以下に説明する解除位置Fに移すために、流体供給装置34により圧力媒体をこの圧力空間内に導入することができる。
【0066】
駐車ロック構造体10を例えば自動車のエンジンが作動しているときにロック位置Sにシフトさせる限り、一般に、圧力空間46が制御装置20又は流体供給装置34における異常等のために圧力媒体で不用意に満たされる恐れがある。これにより、駐車ロック構造体10は不用意にロック位置Sから解除位置Fにシフトし、車両が自動的に動いて坂道を下って行くようになる場合がある。
【0067】
これは、本発明の場合、拘束装置50によって阻止される。
【0068】
拘束装置50は、制御装置20に連結された作動部材52を有する。さらに、拘束装置50は、拘束位置(図1に示されている)と非拘束位置との間で作動部材52によってシフトさせることができる拘束部材54を有する。
【0069】
図示の拘束位置では、拘束部材54は、第2のロック部材24の延長部の後ろにしっかりと係合して、たとえ流体アクチュエータ32が不用意に作動されてロックコーン40が第2のロック部材24を解除した場合であっても、ロック位置Sが維持されるようになっている。
【0070】
さらに、図1は、拘束装置50が拘束部材54に一般にあらかじめ力を加えてこれを非拘束位置にする第2のばねアキュムレータ56を有するオプションを示している。非拘束位置では、拘束装置は、ロック構造体に影響を及ぼさない。したがって、拘束部材52を図示の拘束位置にシフトさせるためには、作動部材52を制御装置20により作動させる必要がある。
【0071】
さらに、図1は、拘束部材54の位置をモニタするオプションとしての第2の位置センサ58を示している。理解されるべきこととして、第2の位置センサ58も又、制御装置20に接続されている。
【0072】
さらに、図1は、第2のロック部材24を一般に図2に示すような解除位置“F”に押圧する第3のばねアキュムレータ60を示している。
【0073】
第3のばねアキュムレータ60は、これが第1のばねアキュムレータ38及び第4のばねアキュムレータ62のそれぞれの力よりも小さい力を第2のロック部材24に及ぼすように寸法決めされている。
【0074】
第4のばねアキュムレータ62は、作動部材36がシフトされる(第1のエネルギーアキュムレータ38によって)が、外歯の対応の窪みの上には突起28が位置せず、したがって、第2のロック部材24がロック位置Sに動くことができないような状況の場合にエネルギーを吸収するのに役立つ。その結果、第4のばねアキュムレータ62は、第1のばねアキュムレータ38の作用を助ける。
【0075】
出力シャフト16が幾分動くやいなや、第4のばねアキュムレータ62は、この場合、ロックコーン40を特に第3のばねアキュムレータ64の力に抗してロック位置に押圧する。
【0076】
本発明の駐車ロック構造体10では、第2のロック部材24は、拘束装置50によって拘束位置Sに拘束される。圧力空間46がたとえ異常のために充填されても、ロック位置Sは、解除されることはない。
【0077】
エネルギー供給がオフに切り換えられるやいなや、又、流体供給装置からの圧力も又もはや増大させることができない(即ち、不用意な作動の恐れが無くなる)程度まで、拘束装置50の作動も又、無効にすることができる。この場合、拘束部材54を第2のばねアキュムレータ56により自動的に非拘束位置にシフトさせる。次に、第2のロック部材24を第1のばねアキュムレータ38によってのみロック位置に保持する。エネルギー供給が再びオンに切り換えられた場合にのみ、解除位置を選択するための制御装置からの適切な指令が得られるまで拘束部材54を拘束位置に再びシフトさせる。この場合、まず最初に、拘束装置50をオフに切り換え、次いで、圧力空間46を満たしてロックコーン40を解除位置にシフトさせ、この解除位置では、第3のばねアキュムレータ60は、第2のロック部材24をロック位置Sから解除することができ、したがって、図2に示す解除位置“F”が確立されるようにする。
【0078】
圧力空間46を作動中常時稼働させるのを阻止するため、拘束装置50は又、第2のロック部材24を図示の解除位置Fに保持するために使用できる。というのは、拘束部材54が拘束位置にシフトされて再び第2のロック部材24の突起の後ろに係合する(しかしながら、この場合、他方の側から)からである。
【0079】
図3は、本発明の傾斜ロック構造体の変形実施形態10′を示している。
【0080】
一般に、機能及び構造の面において、図3の駐車ロック構造体10′は、図1及び図2の駐車ロック構造体10と同一である。したがって、同一の要素は、同一の参照符号で示されている。以下には相違点のみを説明する。
【0081】
図3は、駐車ロック構造体10′を、拘束装置50′が解除位置を保持するために使用されている解除位置で示している。この場合、作動部材36には、半径方向円周方向溝66が設けられており、拘束装置50′の拘束部材が、この溝に嵌まり込む。別の軸方向にオフセットした半径方向溝64が、作動部材36をロック位置に保持するのに役立つ。
【0082】
図4は、本発明の改造例としての駐車ロック構造体10″を示している。
【0083】
一般に、機能及び構造の面において、駐車ロック構造体10″は、図1の駐車ロック構造体10と同一である。以下には相違点のみを説明する。
【0084】
例えば、駐車ロック構造体10″の拘束装置50″の拘束部材54″は、転動体70を有している。
【0085】
転動体70は、拘束位置において、第2のロック部材24に係合する。拘束部材54″が非拘束位置にシフトされる限り、これは、転動体70が第2のロック部材24上で転動するので低摩擦状態で起こり得る。
【0086】
拘束部材54″がロック位置を拘束する場合、生じる摩擦力は比較的低いので、支持のために転動体を更に設ける必要はない。
【0087】
さらに、上記実施形態の各々の変形例として、拘束部材54、及びカウンタ(相手)部材のそれぞれの接触面が、低摩擦被膜(金属又は非金属製)を備えるのがよい。
【0088】
図5において、本発明のロック構造体を作動させる本発明の方法の実施形態が全体を符号80で示されている。この方法は、フローチャートの形態で記載されており、個々のステップに関して以下に説明する。
【0089】
この方法は、例えば、連続ループでランする電子プログラムの形態で制御装置20に具体化されるのがよい。
【0090】
開始時、ステップS1において、駐車ロックが選択されるべきであるかどうかについて問い合わせる。そうでない(NO)場合、ステップS2において、駐車ロック構造体が解除位置にあるかどうかについてチェックを行う。もしそう(YES)であれば、プログラムは、開始点に戻る。駐車ロック構造体10が解除位置に無い場合、ステップS3において、駐車ロック構造体をロック位置Sから解除位置Fにシフトさせる。
【0091】
この目的のため、ステップS4において、例えば、流体アクチュエータ32を作動させて圧力空間46が満たされて作動部材36が解除位置にシフトされるようにする。
【0092】
ステップS5において、解除位置に達したかどうかをモニタする。このモニタは、実際にそうなるまで行われる。
【0093】
ステップS6において、解除位置Fに達した状態で、拘束装置50を作動させ(インターロックを閉じ)、圧力が常に圧力空間46内に維持される必要がないようにする。
【0094】
ステップS1において、駐車ロックが望ましい場合、ステップS7において、駐車ロック構造体がロック位置にあるかどうかについて問合せを行う。もしそうであれば、プロセスは、開始点に戻る。
【0095】
ロック位置Sに達していない限り、まず最初に、拘束装置を特にステップS8において非拘束位置(インターロックが開かれる)にする。
【0096】
次に、ステップS9において、駐車ロックがロック位置にあるかどうかについての問合せを行い、具体的には、実際にそうなるまで問合せを行う。
【0097】
次に、ステップS10において、自動車のエンジンが依然として作動中であるかについて問合せをする。流体をアクチュエータに供給する供給装置は、エンジンが作動中でないときは不作動状態であるので、これは、供給装置が依然として稼働しているかどうかを問い合わせることである。もしそうでなければ、拘束装置50は、作動されておらず、プロセスは、開始点に戻る。変形例として、ステップS10において、流体をアクチュエータに供給する供給装置が依然として稼働状態にあるかどうかを直接問い合わせてもよい。
【0098】
しかしながら、エンジン(供給装置)が依然として作動中の場合、特にステップS11において、拘束装置50を拘束位置(インターロックが閉じられる)にシフトする。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の駐車ロック構造体がロック位置にある状態の自動車トランスミッションの略図である。
【図2】図1の駐車ロック構造体が解除位置にある状態を示す図である。
【図3】図2に対応した図であり、本発明の駐車ロック構造体の変形実施形態を示す図である。
【図4】本発明の駐車ロック構造体の改造例を示す図である。
【図5】トランスミッション用のロック構造体を作動させる本発明の方法の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッション(12)用のロック構造体(10)、特にオートマチックトランスミッション用の駐車ロック構造体であって、前記ロック構造体(10)は、前記トランスミッション(12)がロックされるロック位置(S)を取るよう第1のスプリングアキュムレータ(38)によってあらかじめ力が加えられ、前記ロック構造体(10)は、アクチュエータ(32)によってロック位置(S)から前記トランスミッションが解除される解除位置(F)にシフト可能であるロック構造体において、
前記ロック構造体(10)は、前記ロック構造体(10)をロック位置(S)に機械的に拘束するよう設計された電子作動式拘束装置(50)を有する、
ことを特徴とするロック構造体。
【請求項2】
前記拘束装置(50)は、電子作動式作動部材(52)によって拘束位置と非拘束位置との間でシフトできる拘束部材(54)を有し、前記拘束部材(54)は、前記ロック構造体(10)を前記拘束位置に確実に拘束する、
請求項1に記載のロック構造体。
【請求項3】
前記拘束部材(54)は、第2のばねアキュムレータによって前記非拘束位置を取るようあらかじめ力が加えられている、
請求項2に記載のロック構造体。
【請求項4】
前記拘束部材(54)は、第2のばねアキュムレータによって前記拘束位置を取るようあらかじめ力が加えられている、
請求項2に記載のロック構造体。
【請求項5】
前記拘束部材(54)は、前記拘束部材(54)を低摩擦状態で前記拘束位置から前記非拘束位置にシフトさせる手段(70,72)を有する、
請求項2ないし4のいずれか1項に記載のロック構造体。
【請求項6】
前記拘束部材(54)は、前記拘束部材を低摩擦状態で前記拘束位置から前記非拘束位置にシフトさせるために回転可能に設けられた転動体(70)を有する、
請求項5に記載のロック構造体。
【請求項7】
前記ロック構造体(10)は、前記トランスミッション(12)の動力取出し部にしっかりと連結された第1のロック部材(22)と、前記トランスミッション(12)のハウジング(42)のところで可動的に支持された第2のロック部材(24)とを有する、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載にロック構造体。
【請求項8】
前記第1のロック部材(22)と前記第2のロック部材(24)は、前記動力取出し部(16)を前記ハウジング(12)に連結し、その結果として前記トランスミッション(12)をロックするために、前記ロック位置(S)において互いに確実に係合する、
請求項7に記載のロック構造体。
【請求項9】
前記第1のロック部材(22)と前記第2のロック部材(24)は、前記動力取出し部(16)を解除するために、前記解除位置(F)において互いに解除される、
請求項7又は8に記載のロック構造体。
【請求項10】
前記拘束装置(50)は、前記ロック構造体(10)を機械的に拘束するために、前記第2のロック部材(24)に係合する、
請求項7ないし9のいずれか1項に記載のロック構造体。
【請求項11】
前記拘束装置(50)は、前記ロック構造体(10)を機械的に拘束するために、前記アクチュエータ(32)の作動部材(36)に係合する、
請求項7ないし10のいずれか1項に記載のロック構造体。
【請求項12】
前記ロック構造体(10)が前記ロック位置(S)にあるか又は前記解除位置(F)にあるかを検出する第1の位置センサ(44)を有する、
請求項1ないし11のいずれか1項に記載のロック構造体。
【請求項13】
制御装置(20)を有し、前記制御装置は、前記ロック位置(S)への前記ロック構造体(10)のシフト後、流体を前記アクチュエータ(32)に供給する流体供給装置(34)が依然として動作中であるかどうかを確かめるための問合せ手段を有し、もしそうであれば、前記制御装置は、前記拘束装置(50)を作動させて前記ロック構造体(10)を拘束する、
請求項1ないし12のいずれか1項に記載のロック構造体。
【請求項14】
前記ロック位置(S)への前記ロック構造体(10)のシフト後、前記問合せ手段は、流体を前記アクチュエータ(32)に供給する前記流体供給装置(34)が動作中でないことを確認し、前記制御装置(20)は、前記ロック構造体を拘束するような前記拘束装置(50)の作動を行わない、
請求項13に記載のロック構造体。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれ1項に記載のロック構造体(10)を作動させる方法であって、
前記ロック位置(S)への前記ロック構造体(10)のシフト後、流体を前記アクチュエータ(32)に供給する供給装置(34)が動作中であるかどうかを確かめるステップと、
もしそうであれば、前記拘束装置(50)を作動させて前記ロック構造体(10)を拘束するステップと、
次に、前記ロック位置(S)への前記ロック構造体(10)のシフト後、流体を前記アクチュエータ(32)に供給する前記供給装置(34)が動作中でないことが確認されると、前記ロック構造体(10)を拘束するような前記ロック装置の作動を行わないようにするステップと、を有する、
ことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−303680(P2007−303680A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−152096(P2007−152096)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(505152284)ゲットラーク ゲットリーベ ウント ツァーンラトファブリーク ヘルマン ハーゲンマイアー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (21)
【Fターム(参考)】