説明

ドアミラー装置

【課題】モータによらずに、しかも自動的にドアミラーを回動させることのできるドアミラー装置を提供する。
【解決手段】運転席2の側のサイドドア3の車室外側部分に設けられたアウトサイドハンドル4と、左右のドアミラー11,11Aとを第1のワイヤ20,20Aによって連結し、同じく運転席側のサイドドア3の車室内側部分に設けられたインサイドハンドル5と、左右のドアミラー11,11Aとを第2のワイヤ26,26Aによって連結し、車室外からアウトサイドハンドル4を回動操作することにより、第1のワイヤ20,20Aを引いて、ドアミラー11,11Aを使用位置に回動させ、車室内からインサイドハンドル5を回動操作することにより、第2のワイヤ26,26Aを引いて、ドアミラー11,11Aを格納位置に回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後方を視認可能な使用位置と折り畳まれた格納位置との間を回動可能にサイドドアに支持されたドアミラーを備えたドアミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車又はその他の車両、或いは小型船舶などの乗物には、運転席側のサイドドアと、助手席側のサイドドアの各サイドドアに、上述した使用位置と格納位置との間を回動可能なドアミラーを有するドアミラー装置が設けられている(特許文献1参照)。ここで、運転席側のサイドドアに支持されたドアミラーを第1のドアミラーと称し、助手席側のサイドドアに支持されたドアミラーを第2のドアミラーと称することにすると、従来のドアミラー装置は、第1のドアミラーも第2のドアミラーもモータによって使用位置と格納位置との間を回動されるように構成されていた。ところが、第1及び第2のドアミラーをそれぞれ駆動するためのモータを設ければ、それだけドアミラー装置のコストが高くなる。そこで、第1及び第2のドアミラーを、手操作によって使用位置と格納位置との間を回動させるように構成することが考えられる。このようにすれば、第1及び第2のドアミラーを駆動するモータが不要であるため、ドアミラー装置のコストを低く抑えることができる。ところが、その都度、第1及び第2のドアミラーを手で掴んで、これを使用位置と格納位置との間を回動させることは大変煩わしい。特に、ドライバが室内で運転席に着座したまま助手席側の第2のドアミラーを手操作で回動させることは不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−52862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した新規な認識に基づきなされたものであり、その目的とするところは、モータを用いずに、しかも自動的に、第1及び第2のドアミラーを、格納位置と使用位置との間を回動させることのできるドアミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するため、後方を視認可能な使用位置と折り畳まれた格納位置との間を回動可能に運転席側のサイドドアと助手席側のサイドドアの室外の部分にそれぞれに支持された第1及び第2のドアミラーと、前記運転席側のサイドドアの室外の部分に設けられたアウトサイドハンドルを回動操作することにより、前記第1及び第2のドアミラーがそれぞれ前記格納位置から使用位置に回動するように、該第1及び第2のドアミラーと前記アウトサイドハンドルとをそれぞれ連結する第1の連結手段と、前記運転席側のサイドドアの室内の部分に設けられたインサイドハンドルを回動操作することにより、前記第1及び第2のドアミラーが前記使用位置から格納位置に回動するように、該第1及び第2のドアミラーと前記インサイドハンドルとをそれぞれ連結する第2の連結手段と、前記第1及び第2のドアミラーが前記使用位置を占めたとき、該第1及び第2のドアミラーをそれぞれその使用位置にロックする錠止位置と該ロックを解除する解錠位置との間を移動可能に前記運転席側のサイドドアと助手席側のサイドドアとにそれぞれ設けられた第1及び第2のロック部材と、エンジンを始動させるべく、室内に設けられたキーシリンダを第1の方向に回転させたとき、前記第1及び第2のロック部材がそれぞれ前記解錠位置から錠止位置に移動し、エンジンを停止させるべく、前記キーシリンダを前記第1の方向と反対の第2の方向に回転させたとき、前記第1及び第2のロック部材がそれぞれ前記錠止位置から解錠位置に移動するように、該第1及び第2のロック部材と前記キーシリンダとをそれぞれ連結する第3の連結手段とを具備するドアミラー装置を提案する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ドライバが、室内に入るべく、アウトサイドハンドルを回動操作すれば、第1及び第2のドアミラーを格納位置から使用位置に自動的に回動させることができ、逆にドライバが室内から室外に出るべく、インサイドハンドルを回動操作すれば、ドアミラーを使用位置から格納位置に自動的に回動させることができる。また、乗物の走行中には、第1及び第2のロック部材によって第1及び第2のドアミラーを使用位置にロックすることができるので、乗物の走行中の振動によって、第1及び第2のドアミラーが使用位置から回動してしまうことはない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1及び第2のドアミラーを有する自動車の一部を示す斜視図である。
【図2】第1のドアミラーを図1の矢印II方向に見た拡大図である。
【図3】第1のドアミラーの回転軸とブラケットの上壁の関係を示す斜視図である。
【図4】アウトサイドハンドルとインサイドハンドルを示す部分断面平面図である。
【図5】キーシリンダと、第1のロック部材の動作を説明する図である。
【図6】第1のドアミラーが使用位置を占めたときの平面図であって、ブラケットを省略すると共に、第1のドアミラーのミラー支持体を二点鎖線で示して、ミラー支持体以外の部分の状態をより明らかに示した図である。
【図7】第1のドアミラーが格納位置を占めたときの、図6と同様な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を自動車のドアミラー装置に適用した実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明に係るドアミラー装置を搭載した自動車の一例を示す斜視図である。各図における矢印Frは自動車の前進方向を示し、矢印Wは自動車の車幅方向を示している。
【0010】
図1に示すように、自動車の車室内には、運転席2と助手席2Aが、それぞれ車幅方向Wに並んで配置され、車体1の各側部には運転席側のサイドドア3と、助手席側のサイドドア3Aが、それぞれ回動開閉可能に支持されている。
【0011】
運転席側のサイドドア3の車室外側の部分には、図4の(a)にも示したアウトサイドハンドル4が設けられ、このアウトサイドハンドル4は、図4の(a)に示したように、枢ピン34を介してサイドドア3に回動可能に支持されている。かかるアウトサイドハンドル4を車室外Oの側から操作して、該アウトサイドハンドル4を図4の(a)に実線で示した位置から二点鎖線で示した位置に回動することにより、サイドドア3に対するロックを解除して、該サイドドア3を開くことができる。
【0012】
同様に、運転席側のサイドドア3の車室内側の部分には、図4の(b)にも示したように、枢ピン35を介してサイドドア3に回動可能に支持されたインサイドハンドル5が設けられ、車室内Iにおいて、そのインサイドハンドル5を操作して、該インサイドハンドル5を図4の(b)に実線で示した位置から二点鎖線で示した位置に回動することにより、サイドドア3のロックを解除して、該サイドドア3を開くことができる。
【0013】
全く同様にして、助手席側のサイドドア3Aの車室外側の部分と車室内側の部分にも、図示していないアウトサイドハンドルと、図1に示したインサイドハンドル5Aがそれぞれ設けられ、これらのハンドルを回動操作することによって、助手席側のサイドドア3Aのロックを解除して、そのサイドドア3Aを開くことができる。
【0014】
さらに、図1に示したように、車室内の運転席2の前方に配置されたインストルメントパネル6には、図5の(a)にも示したキーシリンダ7が回転可能に設けられ、運転席2に着座した図示していないドライバが、キーシリンダ7のキー穴にキー8を差し込んで、そのキー8をキーシリンダ7と共に、図5の(a)に矢印Aで示した第1の方向に回転させることにより、自動車のエンジン(図示せず)を始動させることができる。逆にそのキー8をキーシリンダ7と共に、図5の(a)に矢印Bで示した第2の方向に回転させることにより、エンジンを停止させることができる。
【0015】
また、図1に示すように、運転席側のサイドドア3と助手席側のサイドドア3Aのフロントコーナ部9,9Aの車室外側の部分には、ブラケット10,10Aがそれぞれ一体に突設され、その各ブラケット10,10Aに、ドアミラー装置の第1のミラー11と第2のミラー11Aがそれぞれ支持されている。
【0016】
第1及び第2のドアミラー11,11Aは、それぞれミラー(反射鏡)12,12Aと、そのミラー12,12Aを支持するミラー支持体13,13Aとを有している。かかる第1及び第2のミラー11,11Aは、運転席2に着座したドライバが、各ミラー12,12Aに映し出された後方視界を視認できる使用位置と、折り畳まれた格納位置との間を回動可能に各サイドドア3,3Aの車外側部分に支持されている。図1は、第1及び第2のドアミラー11,11Aが、共に使用位置を占めたときの様子を示しており、第1のドアミラー11が格納位置を占めたときの様子は図7に示してある。図6も、第1のドアミラー11が使用位置を占めたときの状態を示している。
【0017】
上述のように、本例のドアミラー装置は、後方を視認可能な使用位置と折り畳まれた格納位置との間を回動可能に運転席側のサイドドア3と助手席側のサイドドア3Aの室外の部分(図示した例では車室外側の部分)にそれぞれ支持された第1及び第2のドアミラー11,11Aを有している。
【0018】
図2は、使用位置を占めた第1のドアミラー11を図1の矢印II方向に見た図である。この図に示すように、第1のドアミラー11のミラー支持体13の下部には、回転軸14が一体に固定されている。また、図2から判るように、前述のブラケット10は、内部が中空に形成され、そのブラケット10の上壁15に形成された取付孔16に、上述した回転軸14に取り付けられた軸受17が嵌合している。かかる構成により、運転席側のサイドドア3に設けられたドアミラー11は、その回転軸14の中心軸線のまわりに回動可能にブラケット10に支持される。助手席側のサイドドア3Aに支持された第2のドアミラー11Aも、上述したところと全く同様にして、ブラケット10Aに回動可能に支持されている。
【0019】
図3は、運転席側のサイドドア3に支持された第1のドアミラー11の回転軸14と、そのサイドドア3のブラケット10の上壁15との配置状態を示す斜視図であって、ドアミラー11のミラーとミラー支持体の図示を省略した図である。図2及び図3に示すように、ブラケット10の上壁15に回転可能に支持された回転軸14の外周面には、その半径方向に突出した第1及び第2のアーム18,19が一体に突設されている。
【0020】
上述した第1のアーム18には、第1のワイヤ20の一端が係止され、この第1のワイヤ20は、図1に概略を示すように、運転席側のサイドドア3のアウタパネル21[図4の(a)も参照]とインナパネル22[図4の(b)参照]の間の空間内に入り込んで、その空間内を延びている。そして、この第1のワイヤ20の他端は、図4の(a)に示すように、運転席側のサイドドア3の車室外側の部分に設けられたアウトサイドハンドル4に係止されている。図4の(a)に示すように、第1のワイヤ20の他端は、アウトサイドハンドル4の枢ピン34よりも該アウトサイドハンドル4の自由端側の部分に係止されている。なお、第1のワイヤ20は、弾性材より成るアウタチューブ25によって覆われており、そのアウタチューブ25内を自由に摺動することができる。
【0021】
一方、図2及び図3に示した第2のアーム19には、第2のワイヤ26の一端が係止され、その第2のワイヤ26も、図1に概略を示したように、運転席側のサイドドア3のアウタパネル21とインナパネル22の間の空間内を延び、その第2のワイヤ26の他端は、図4の(b)に示すように、運転席側のサイドドア3の車室内側の部分に設けられたインサイドハンドル5に係止されている。図4の(b)に示すように、第2のワイヤ26の他端は、インサイドハンドル5の枢ピン35よりもインサイドハンドル5の自由端側の部分に係止されている。図3及び図4に示すように、第2のワイヤ26もアウタチューブ28によって覆われ、そのアウタチューブ28内を自由に摺動することができる。
【0022】
図1に示した助手席側のサイドドア3Aに設けられた第2のドアミラー11Aのミラー支持体13Aの下部にも、図示していない回転軸が固定され、その回転軸がサイドドア3Aのブラケット10Aに回転可能に支持されている。しかも、その回転軸にも、図3に示したところと同様に、第1及び第2のアーム(図示せず)が突設され、その各アームには、図3に示した第1及び第2のワイヤ20,26とは別の第1及び第2のワイヤ20A、26A(図1及び図4参照)の一端がそれぞれ係止され、その第1及び第2のワイヤ20A,26Aは、図1に概略を示したように、車室内のインストルメントパネル6の内部を延び、次いで運転席側のサイドドア3のアウタパネル21とインナパネル22の間の空間内を延びている。そして、図4の(a),(b)に示すように、その第1及び第2のワイヤ20A,26Aの他端は、運転席側のサイドドア3に設けられたアウトサイドハンドル4とインサイドハンドル5とに、前述の第1及び第2のワイヤ20,26と全く同様にそれぞれ係止されている。これらの第1及び第2ワイヤ20A,26Aも、アウタチューブ25A,28Aによって覆われ、その各チューブ25A,28A内を自由に摺動することができる。
【0023】
図6及び図7は、運転席側のサイドドア3に固定されたブラケット10の図示を省略し、かつそのブラケットに支持された第1のドアミラー11のミラー支持体13を二点鎖線で略示すると共に、回転軸14と、その回転軸14に突設された第1及び第2のアーム18,19と、その各アーム18,19に係止された第1及び第2のワイヤ20,26などを実線で示して、これらの要素の状態を明らかにした説明平面図である。
【0024】
ここで、図1に示したように、運転席側と助手席側のサイドドア3,3Aが共に閉じられ、しかも第1及び第2のドアミラー11,11Aが、共に図7に示した格納位置を占めた状態で、ドライバが車室外から、アウトサイドハンドル4を掴んで、これを図4の(a)に実線で示した位置から二点鎖線で示した位置に回動操作した場合を考える。
【0025】
ドライバが上述のようにアウトサイドハンドル4を回動操作すると、前述のように、サイドドア3のロックが解除されるが、これと同時に、第1のワイヤ20が、図4の(a)及び図7に矢印Cで示した方向に引かれる。これによって、図7に示した第1のアーム18が図7における反時計方向に回動して、第1のドアミラー11の全体が、図7に示した格納位置から、図6及び図1に示した使用位置に回動する。第1のドアミラー11が図6に示した使用位置に回動したとき、その第1のドアミラー11は図示していないストッパに当るので、第1のドアミラー11がこれ以上、反時計方向に回動することはなく、その使用位置に停止する。このように、第1のドアミラー11が使用位置に回動すると共に、図4の(a)に示した別の第1のワイヤ20Aも、矢印CA方向に引かれるので、それまで格納位置を占めていた第2のドアミラー11Aも、図1に示した使用位置に回動する。このとき、その第2のドアミラー11Aも、図示していないストッパに当って、使用位置に停止する。このようにして、ドライバがサイドドア3を引いて車室内に入り、運転席2に着座したとき、既に第1及び第2のドアミラー11,11Aは使用位置を占めている。従って、ドライバはこの状態でサイドドア3を閉じて、後方を視認しながら、自動車を走行させることができる。
【0026】
上述のように、本発明に係るドアミラー装置は、運転席側のサイドドア3の室外の部分(図示した例では車室外側の部分)に設けられたアウトサイドハンドル4を回動操作することにより、第1及び第2のドアミラー11,11Aがそれぞれ格納位置から使用位置に回動するように、その第1及び第2のドアミラー11,11Aと上記アウトサイドハンドル4とをそれぞれ連結する第1の連結手段を有し、図示した例においては、運転席側の第1のドアミラー11とアウトサイドハンドル4とを連結する第1のワイヤ20と、同様に第2のドアミラー11Aとアウトサイドハンドル4とを連結するもう1つの第2のワイヤ20Aとによって、上述した第1の連結手段が構成されている。
【0027】
一方、運転席2に着座したドライバが自動車を停止させて、インサイドハンドル5を掴んで、これを図4の(b)に実線で示した位置から二点鎖線で示した位置に回動させると、前述のように、サイドドア3のロックが解除される。これと同時に、第2のワイヤ26が、図4の(b)及び図6に矢印Dで示した方向に引かれる。これによって、図6に示した第2のアーム19が図6における時計方向に回動して、第1のドアミラー11の全体が図6に示した使用位置から図7に示した格納位置に回動する。このとき、第1のドアミラー11は、図示していないストッパに当って、これ以上、図7における時計方向に回動することはなく、その格納位置に停止する。これと共に、図4の(b)に示した別の第2のワイヤ26Aも、図4の(b)に矢印DAで示した方向に引かれるので、それまで使用位置を占めていた第2のドアミラー11Aも、折り畳まれた格納位置に回動し、図示していないストッパに当って、その格納位置に停止する。ドライバは、このまま車室外に出て、自動車を離れることができる。
【0028】
上述のように、本発明に係るドアミラー装置は、運転席側のサイドドア3の室内の部分(図示した例では車室内側の部分)に設けられたインサイドハンドル5を回動操作することにより、第1及び第2のドアミラー11,11Aが使用位置から格納位置に回動するように、その第1及び第2のドアミラー11,11Aとインサイドハンドル5とをそれぞれ連結する第2の連結手段を有しており、図示した例では、第1のミラー11とインサイドハンドル5とを連結する第2のワイヤ26と、同様に第2のドアミラー11Aとインサイドハンドル5とを連結するもう1つの第2のワイヤ26Aとによって、上述の第2の連結手段が構成されている。
【0029】
上述したドアミラー装置の構成によれば、第1及び第2のドアミラー11,11Aを回動させるモータは設けられていないが、ドライバが、車室内に乗車すべく、アウトサイドハンドル4を回動操作すると、第1及び第2のドアミラー11,11Aが格納位置から使用位置に自動的に回動し、逆にドライバが車室内から車室外に出るべく、インサイドハンドル5を回動操作すると、第1及び第2のドアミラー11,11Aが使用位置から格納位置に自動的に回動する。このように、ドアミラー装置のコストを低く抑え、しかも第1及び第2のドアミラー11,11Aを必要とするときは、これらを自動的に使用位置に回動させ、逆に第1及び第2のドアミラー11,11Aが不要となったときは、これらを自動的に格納位置に回動させることができるのである。
【0030】
また、第1及び第2のドアミラー11,11Aには、これらを使用位置又は格納位置に回動付勢するばねは設けられていないので、アウトサイドハンドル4又はインサイドハンドル5に対して、特に大きな力を加えずとも、軽く第1及び第2のドアミラー11,11Aを格納位置から使用位置へ回動させ、逆に使用位置から格納位置へと回動させることができる。
【0031】
但し、前述した構成だけであると、自動車の走行中に発生する振動によって、使用位置を占めていた第1及び第2のドアミラー11,11Aが、格納位置の側に揺動してしまうおそれがある。そこで、本例のドアミラー装置には、次の構成が採用されている。
【0032】
図3に示すように、運転席側のブラケット10の上壁15に形成された貫通孔29には、第1のロック部材30が上下動可能に嵌合し、その第1のロック部材30の下端には、第3のワイヤ31が係止されている。第1のロック部材30は、図5の(b)に示したように、第1のアーム18よりも下方の位置と、図5の(c)に示したように、第1のアーム18に当接する位置との間を上下動することができる。
【0033】
第1のロック部材30が、図5の(b)に示した位置を占めたとき、第1のアーム18は、第1のロック部材30に邪魔されることなく自由に回動することができる。このときの第1のロック部材30の位置を、第1のドアミラー11のロックを解除する解錠位置とする。
【0034】
また、第1のドアミラー11が図6に示した使用位置を占めた状態で、第1のロック部材30が図5の(c)に示した位置に上昇すると、図6にも示したように、その第1のロック部材30が第1のアーム18に当接するので、第1のアーム18、すなわち第1のドアミラー11が、その使用位置から格納位置に向けて回動することが禁止される。このときの第1のロック部材30の位置を、第1のドアミラー11をロックする錠止位置とする。
【0035】
上述のように、第1のロック部材30の下端に係止された第3のワイヤ31は、ブラケット10の内部空間を延び、次いで図1に概略を示したように、ブラケット10から出た後、車室内のインストルメントパネル6の内部を延び、図5の(a)に示したように、前述のキーシリンダ7の周面に設けられた突起32に係止されている。第3のワイヤ31も、アウタチューブ33によって覆われていて、そのチューブ33の内部を自由に摺動することができる。
【0036】
自動車のエンジンが停止し、従ってキーシリンダ7が図5の(a)に示した位置を占めているとき、第1のロック部材30は、図5の(b)に示した解錠位置を占めている。この状態で、前述のように、ドライバが車室外からアウトサイドハンドル4を回動操作して、第1及び第2のドアミラー11,11Aを図1及び図6に示した使用位置に回動させた後、ドライバが運転席側のサイドドア3を開いて車室内の運転席2に着座し、次いでエンジンを始動させるために、前述の如く図5の(a)に示したキーシリンダ7のキー穴にキー8を差し込んで、そのキー8を、キーシリンダ7と共に図5の(a)に矢印Aで示した第1の方向に回転させると、第3のワイヤ31が矢印E方向に押し出される。このため、第1のロック部材30は、図5の(c)に示した錠止位置に突出する。これにより、図6から明らかなように、自動車の走行時に生じる振動によって、ドアミラー11が使用位置から格納位置に向けて回動しようとしても、第1のアーム18が、錠止位置に突出した第1のロック部材30に当って、第1のドアミラー11が格納位置に向けて回動してしまうことはない。このように、第1のロック部材30は、使用位置を占めた第1のドアミラー11を、その使用位置にロックする用をなす。
【0037】
次に、運転席2に着座したドライバがエンジンを停止させるべく、図5の(a)に示したキー8とキーシリンダ7を、矢印Bで示した第2の方向に回転させると、第3のワイヤ31が、第5図の(a)に矢印Fで示した方向に引かれるので、それまで錠止位置を占めていた第1のロック部材が、図5の(b)に示した解錠位置に移動する。このため、第1のロック部材30が、第1のドアミラー11をその使用位置にロックすることはなく、第1のドアミラー11はその格納位置へ向けて自由に回動できる状態となる。そこで、前述のように、ドライバが図4の(b)に示したインサイドハンドル5を回動操作することによって、第1のドアミラー11をその格納位置に回動させることができる。
【0038】
図1に示した助手席側の第2のドアミラー11Aを支持したブラケット10Aの上壁に形成された貫通孔にも、図3に示した第1のロック部材30と全く同様に構成された第2のロック部材(図示せず)が上下動可能に設けられ、その第2のロック部材の下端には、別の第3のワイヤ31A[図1及び図5の(a)参照]の一端が係止されている。この第3のワイヤ31Aは、ブラケット10Aを出た後、図1に示すように、車室内のインストルメントパネル6の内部を延びていて、その第3のワイヤ31Aの他端は、図5の(a)に示すように、キーシリンダ7に突設された突起32に係止されている。この第3のワイヤ31Aも、軟質なアウタチューブ33Aによって覆われ、そのアウタチューブ33A内を自由に摺動することができる。
【0039】
前述のように、第2のドアミラー11Aが使用位置を占めた状態で、ドライバがエンジンを始動させるべく、キー8とキーシリンダ7を図5の(a)に矢印Aで示した第1の方向に回転させたとき、別の第3のワイヤ31Aも矢印EA方向に押し出され、これによって図示していない第2のロック部材が、図5の(b)及び(c)に示したところと全く同様にして、解錠位置から錠止位置に移動し、第2のドアミラー11Aの図示していない第1のアームに当接して、第2のドアミラー11Aが使用位置から格納位置へと回動することを禁止する。
【0040】
また、ドライバが、エンジンを停止させるべく、図5の(a)に示したキー8とキーシリンダ7を前述のように、矢印Bで示した第2の方向に回転させると、別の第3のワイヤ31Aも矢印FA方向に引かれるので、図示していない第2のロック部材が、図5の(c)及び(b)に示したところと全く同様にして、錠止位置から解錠位置に移動して、第2のドアミラー11Aの第1のアームよりも下方の位置を占める。このため、ドライバが前述の如く図4の(b)に示したインサイドハンドル5を回動操作することによって、第1のドアミラー11と共に、第2のドアミラー11Aも、支障なくその格納位置に回動させることができる。
【0041】
上述のように、本発明に係るドアミラー装置は、第1及び第2のドアミラーが使用位置を占めたとき、該第1及び第2のドアミラーをそれぞれその使用位置にロックする錠止位置と該ロックを解除する解錠位置との間を移動可能に運転席側のサイドドアと助手席側のサイドドアとにそれぞれ設けられた第1及び第2のロック部材と、エンジンを始動させるべく、室内(図示した例では車室内)に設けられたキーシリンダを第1の方向に回転させたとき、第1及び第2のロック部材がそれぞれ解錠位置から錠止位置に移動し、エンジンを停止させるべく、キーシリンダを第1の方向と反対の第2の方向に回転させたさせたとき、第1及び第2のロック部材がそれぞれ錠止位置から解錠位置に移動するように、該第1及び第2のロック部材とキーシリンダとをそれぞれ連結する第3の連結手段とを具備している。そして、図示した例では、第1のロック部材30とキーシリンダ7とを連結する第3のワイヤ31と、図示していない第2のロック部材とキーシリンダ7とを連結するもう1つの第3のワイヤ31Aとによって、上述した第3の連結手段が構成されている。
【0042】
上述した構成によれば、自動車の走行中には、第1及び第2のロック部材によって第1及び第2のドアミラー11,11Aを使用位置にロックすることができるので、自動車走行中に生じる振動によって、第1及び第2のドアミラー11,11Aが使用位置から格納位置の側に回動してしまうことはない。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、各種改変して構成できるものである。また、本発明は、自動車以外の車両や小型船舶などの乗物のドアミラー装置にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0044】
2 運転席
2A 助手席
3,3A サイドドア
4 アウトサイドハンドル
5 インサイドハンドル
7 キーシリンダ
11 第1のドアミラー
11A 第2のドアミラー
30 第1のロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方を視認可能な使用位置と折り畳まれた格納位置との間を回動可能に運転席側のサイドドアと助手席側のサイドドアの室外の部分にそれぞれに支持された第1及び第2のドアミラーと、前記運転席側のサイドドアの室外の部分に設けられたアウトサイドハンドルを回動操作することにより、前記第1及び第2のドアミラーがそれぞれ前記格納位置から使用位置に回動するように、該第1及び第2のドアミラーと前記アウトサイドハンドルとをそれぞれ連結する第1の連結手段と、前記運転席側のサイドドアの室内の部分に設けられたインサイドハンドルを回動操作することにより、前記第1及び第2のドアミラーが前記使用位置から格納位置に回動するように、該第1及び第2のドアミラーと前記インサイドハンドルとをそれぞれ連結する第2の連結手段と、前記第1及び第2のドアミラーが前記使用位置を占めたとき、該第1及び第2のドアミラーをそれぞれその使用位置にロックする錠止位置と該ロックを解除する解錠位置との間を移動可能に前記運転席側のサイドドアと助手席側のサイドドアとにそれぞれ設けられた第1及び第2のロック部材と、エンジンを始動させるべく、室内に設けられたキーシリンダを第1の方向に回転させたとき、前記第1及び第2のロック部材がそれぞれ前記解錠位置から錠止位置に移動し、エンジンを停止させるべく、前記キーシリンダを前記第1の方向と反対の第2の方向に回転させたとき、前記第1及び第2のロック部材がそれぞれ前記錠止位置から解錠位置に移動するように、該第1及び第2のロック部材と前記キーシリンダとをそれぞれ連結する第3の連結手段とを具備するドアミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−218593(P2012−218593A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86743(P2011−86743)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】