説明

ナノインプリント用の膜形成組成物およびパターン形成方法

【課題】 酸素ガスに対するエッチング耐性に優れるとともに、転写パターンの剥離を防止し、基板上における保持時間についての問題を解消し、転写性にも優れるナノインプリント用の膜形成組成物及び感光性レジスト、ナノ構造体、これらを用いたパターン形成方法、並びにこのパターン形成方法を実現するためのプログラムを提供する。
【解決手段】光硬化反応を生じる機能を有する高分子ケイ素化合物を含むナノインプリント用の膜形成組成物。高分子ケイ素化合物は、電磁波に感応して開裂する官能基を有し、電磁波照射によって硬化反応を生じるものであることが好ましく、シロキサン系高分子化合物、シリコンカーバイド系高分子化合物、ポリシラン系高分子化合物、およびシラザン系高分子化合物またはこれらの任意の混合物であることがさらに好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用の膜形成組成物および当該組成物を用いたパターン形成方法に関する。より詳しくは、光硬化反応を生じる機能を備えるナノインプリント用の膜形成組成物および感光性レジスト、ナノ構造体、これらを用いたパターン形成方法、並びにこのパターン形成方法を実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ技術は、半導体デバイスプロセスのコアテクノロジーであり、近年の半導体集積回路(IC)の高集積化に伴い、さらなる配線の微細化が進行している。とりわけ、素子の集積度が1000万個を超える超LSIと呼ばれる半導体集積回路(IC)においては、微細加工リソグラフィ技術は必須である。
【0003】
ここで、超LSIを実現するための微細加工リソグラフィ技術としては、これまで、KrFレーザー、ArFレーザー、Fレーザー、X線、遠紫外線等による光露光リソグラフィが用いられてきた。そして、これらの光露光リソグラフィ技術により、数十nmオーダーまでのパターンの形成が可能となった。
【0004】
しかしながら、光露光リソグラフィ技術に使用される装置は高価であるため、微細化の高度化に伴い、露光装置自身の初期コストが増大していた。また、これら光露光リソグラフィには、光波長と同程度の高解像度を得るためのマスクが必要であり、そのような微細形状を有するマスクは、価格が高価なものであった。更に、高集積化の要求は尽きることなく、更なる微細化が求められている。
【0005】
このような状況のもと、1995年にPrinceton大学のChouらによって、ナノインプリントリソグラフィが提案された(特許文献1参照)。ナノインプリントリソグラフィは、所定の回路パターンを形成したモールドを、表面にレジストが塗布された基板に対して押し付け、モールドのパターンをレジストに転写する技術である。
【0006】
Chouらによって最初に提案されたナノインプリントリソグラフィは、レジストとして熱可塑性樹脂であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)が用いられ、レジストを変形させる前に加熱によりレジストを軟化させておき、次いで、モールドを押し付けてレジストを変形させ、その後、レジストを冷却して固化させる工程を経ることから、「熱サイクルナノインプリントリソグラフィ」と呼ばれている。熱サイクリナノインプリントリソグラフィによって、これまでの光露光リソグラフィでは到達が困難であった10nm以下の転写が可能となり、その解像度は、モールドの作成精度によって決まることが実証された。すなわち、モールドさえ入手できれば、光露光リソグラフィより簡便に、また、安価な装置によって、ナノメートルオーダーの微細構造の形成ができるようになった。
【0007】
しかしながら、熱サイクルナノインプリントリソグラフィは、レジストの昇温、冷却にかかる時間によるスループットの低下、温度差による寸法変化、転写パターンの精度の低下、および熱膨張によるアライメントの低下などの問題を抱えていた。
【0008】
そこで、熱可塑性樹脂によるレジストの代わりに、紫外線で形状が硬化する光硬化樹脂を用いたナノインプリントリソグラフィが提案された。このプロセスは、光硬化樹脂からなるレジストにモールドを押し付け、次いで、紫外線を照射して樹脂を硬化させ、その後、モールドを離すことによりパターンを得る。この手法は、光を利用してレジストを硬化させることから、「光ナノインプリントリソグラフィ」と呼ばれている。
【0009】
光ナノインプリントリソグラフィは、紫外線等の光照射のみでパターンを得ることができ、加熱・冷却を実施する必要がないことから、熱サイクルナノインプリントリソグラフィにおける上記の問題を解決することができた。併せて、石英、サファイア等の光透過する透明材料によってモールドが形成されるため、モールドを透過しての位置合わせを容易に行うことが可能となった。
【0010】
別のナノインプリントリソグラフィとして、レジストとしてスピンオングラス(SOG)等の高粘性材料を使用するものが提案されている(特許文献2参照)。このプロセスは、高粘性材料からなるレジストを基板に塗布し、次いで、モールドを押し付け、その後、モールドを剥離することによりパターンを得る。高粘性を有する材料であるため、場合によっては、熱や光を加える必要なく、レジストの形状を保持することができる。室温にてパターンを得ることから、「室温ナノインプリントリソグラフィ」と呼ばれている。
【0011】
室温ナノインプリントリソグラフィは、材料の選択によっては、レジストの加熱・冷却時間、および光硬化させるための光照射時間が必要ないため、高いスループットを実現することが可能となった。
【特許文献1】米国特許第5772905号明細書
【特許文献2】特開2003−100609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、ナノインプリントリソグラフィにおいては、一般的に、レジストによるパターン形状が形成された後、レジストの凹部となる薄い残膜を、ドライエッチングにより除去する工程が実施される。レジストの薄い残膜をエッチング除去することにより、基板の表面が露出する。引き続き、レジストをマスクとして、露出した基板部分に対して更なるエッチングを実施することにより、基板にパターンを形成する。基板へのパターン形成が完了した後、マスクとして使用されたレジストは、溶解処理等により基板上から除去され、最終的に、パターンが刻まれた基板を得る。
【0013】
このような基板のエッチング工程においては、マスクとなるレジストに対する基板のエッチング率を高くするという選択性が必要となる。すなわち、マスクとなるレジストにはエッチング耐性を持たせ、選択比を大きくすることが必要となる。
【0014】
ところで、光ナノインプリントリソグラフィにおいて用いられている紫外線硬化能を有するレジスト材料というのは、一般に、エポキシ系、ウレタン系、イミド系等の有機系樹脂である。このような有機系樹脂は、酸素(O)ガスを用いたエッチングにおいては、レジストに含まれる炭素がエッチングガスに含まれる酸素と反応することから、レジストの分解が促進し、その結果、エッチング耐性は劣り、選択比が小さくなってしまっていた。このため、これら有機系樹脂をレジストとしてエッチングする際には、選択比の大きくなるフッ素(F)等のガスが採用されることが多く、昨今の環境問題の点からすれば望ましいものではない。
【0015】
更に、光ナノインプリントリソグラフィにおいては、モールドと光硬化樹脂の付着力が強い。このため、基板に形成された転写パターンの剥離が生じてしまい、更なる改善が求められていた。
【0016】
この一方で、高粘性材料をレジストとして使用する室温ナノインプリントリソグラフィにおいては、基板上のレジストに転写されたパターン形状の保持時間、また、モールドに形成されたパターンのレジストへの転写性の点において、更なる改善が求められていた。
【0017】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、酸素ガスに対するエッチング耐性に優れるとともに、転写パターンの剥離を防止し、基板上における保持時間についての問題を解消し、転写性にも優れるナノインプリント用の膜形成組成物および感光性レジスト、ナノ構造体、これらを用いたパターン形成方法、並びにこのパターン形成方法を実現するためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは上記課題を解決するため、光ナノインプリントリソグラフィと室温ナノインプリントリソグラフィの両者の利点を損なうことなく、両者の問題点を補う必要があることに着目して、鋭意研究を重ねた。その結果、光硬化反応を生じる機能を備える高分子ケイ素化合物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0019】
(1) 光硬化反応を生じる機能を有する高分子ケイ素化合物を含むことを特徴とするナノインプリント用の膜形成組成物。
【0020】
(1)のナノインプリント用の膜形成組成物は、光硬化反応を生じる機能を備える高分子ケイ素化合物を含む。このため、光ナノインプリントリソグラフィと室温ナノインプリントリソグラフィの利点を維持しつつ、それぞれの問題点を克服することができる。すなわち、レジストパターン形成における高いスループットを維持し、得られたレジストパターンの形状保持時間を気にすることなく、また、環境問題に適応可能な酸素ガスによるエッチング耐性を有する、数ナノメートル以下の微細構造のレジストパターンを実現することができる。
【0021】
(2) 前記高分子ケイ素化合物は、電磁波に感応して開裂する官能基を有し、電磁波照射によって硬化反応を生じることを特徴とする(1)に記載の膜形成組成物。
【0022】
ここで、「電磁波に感応して開裂する官能基」とは、電磁波の照射を受けて開裂し、重合可能となる官能基をいう。(2)の膜形成組成物は、電磁波に感応して開裂する官能基を有することから、電磁波の照射により開裂した官能基が重合することにより、硬化反応を生じる機能を有する。この概念には、他の光感応性の物質(例えば、後述の光重合開始剤、光酸発生剤、光アルカリ発生剤等の物質)により発生するラジカル、酸、アルカリにより開裂し、重合可能な基も含むものとする。
【0023】
(3) 前記高分子ケイ素化合物は、シロキサン系高分子化合物、シリコンカーバイド系高分子化合物、ポリシラン系高分子化合物、およびシラザン系高分子化合物より選ばれる1種以上である(1)または(2)記載の膜形成組成物。
【0024】
(4) 前記高分子ケイ素化合物は、重量平均分子量が1000以上50000以下であることを特徴とする(1)から(3)いずれか記載の膜形成組成物。
【0025】
(4)の膜形成組成物は、高分子ケイ素化合物の重量平均分子量が1000以上50000以下の範囲のものである。1000以上にすることにより膜形成能を向上させることができ、一方で50000以下にすることにより平坦性を向上させることができる。さらに、1000以上50000以下の範囲であれば、本発明に必要となる光硬化反応を適度に備えさせることができる。重量平均分子量は、1000以上10000以下がより好ましく、1200以上5000以下が更に好ましい。
【0026】
(5) 前記高分子ケイ素化合物は、下記化学式(A)で示されるアルコキシシランから選択される少なくとも1種を出発原料として含む化合物の縮重合物であることを特徴とする(1)から(4)いずれか記載の膜形成組成物。
【化1】

(式中、
は、水素、炭素数1から20のアルキル基またはアリール基であり、そのうちの少なくとも1つは、電磁波に感応して開裂する官能基を有しており、
は、炭素数1から5のアルキル基であり、
nは、1〜3の整数を示す。)
【0027】
(5)の膜形成組成物は、アルコキシシランの少なくとも1種を出発原料とした縮重合物を、光硬化反応を生じる機能を有する高分子ケイ素化合物として含有するものである。アルコキシシランを出発原料とした縮重合物は、主鎖にシロキサン結合(Si−O結合)を有するシロキサン系高分子化合物となる。このシロキサン結合を有する縮重合物は、基板との密着性が良好であることから、モールドリリース時のレジストパターンの剥離を防止することができる。更に、シロキサン結合を有する縮重合物は、酸素ガス以外のガスに対するエッチング耐性にも優れることから、エッチングガスの選択幅が広がり、特定のガスの種類によらず基板へのパターンの形成が可能となる。
【0028】
(6) 前記電磁波に感応して開裂する官能基は、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、およびオキセタニル基からなる群より選ばれる1種以上である(2)から(5)記載の膜形成組成物。
【0029】
(7) 前記電磁波は、紫外線または紫外線より短波長の光線もしくは粒子線である(2)から(6)いずれか記載の膜形成組成物。
【0030】
(8) 前記電磁波に感応する炭化水素系樹脂をさらに含む(2)から(7)いずれか記載の膜形成組成物。
【0031】
ここで、「電磁波に感応する炭化水素系樹脂」とは、電磁波の照射を受けて、炭化水素系樹脂自身が重合し、または、前記高分子ケイ素化合物と共重合し、これにより硬化する反応を生じる機能を有する樹脂である。(8)の膜形成組成物によれば、電磁波に感応して硬化する炭化水素系樹脂を含むことから、電磁波への感応がより敏感になり、より容易に硬化させることができる。また、有機系樹脂を配合することにより、得られるレジストの選択比を調整することが可能となる。
【0032】
(9) 光重合開始剤をさらに含む(1)から(8)いずれか記載の膜形成組成物。
【0033】
光重合開始剤は、「電磁波に感応して開裂する官能基」を開裂させて、重合を促進させる機能を有するものである。したがって、(9)の膜形成組成物によれば、光重合開始剤を含むことにより、電磁波への感応がより敏感になり、より容易に硬化させることができる。
【0034】
(10) 酸発生剤および/またはアルカリ発生剤をさらに含む(1)から(9)いずれか記載の膜形成組成物。
【0035】
酸発生剤および/またはアルカリ発生剤は、「電磁波に感応して開裂する官能基」を開裂させて、重合を促進させる機能を有するものである。したがって、(10)の膜形成組成物によれば、酸発生剤および/またはアルカリ発生剤を含むことにより、電磁波への感応がより敏感になり、より容易に硬化させることができる。
【0036】
また、酸発生剤および/またはアルカリ発生剤は、アルコキシシランのアルコキシ基における加水分解を促進するための、触媒としての機能を有する。アルコキシシランは、ゾルゲル反応によりシロキサン結合(Si−O結合)のネットワークを形成する。このため、膜形成組成物にアルコキシシランが含まれる場合には、酸発生剤および/またはアルカリ発生剤の存在により、アルコキシシランの加水分解が促進され、このため、引き続き起こる縮重合反応が進行しやすくなる。その結果、膜の硬化反応をより容易におこなうことが可能となる。
【0037】
(11) 界面活性剤をさらに含む(1)から(10)いずれか記載の膜形成組成物。
【0038】
(11)の膜形成組成物によれば、界面活性剤を含有することから、基板への塗布性を向上させることができる。界面活性剤が存在することにより、例えば、膜形成組成物が高粘度である場合であっても、基板上への膜形成組成物の展開性を向上させることができる。
【0039】
(12) ナノインプリントリソグラフィにおいて用いられる感光性レジストであって、(1)から(11)いずれか記載の膜形成組成物を硬化させることにより得られる感光性レジスト。
【0040】
(12)の感光性レジストによれば、電磁波によって硬化していることから、レジストパターンの形状保持時間を気にする必要がない。また、高分子ケイ素化合物の硬化物は、基板との密着性が良好であるため、モールドリリース時に転写パターンが剥離されることを回避でき、したがって、パターンの不良率が低下したレジストを得ることができる。更に、高分子ケイ素化合物の硬化物によるレジストは、酸素のみならず、種々のエッチングガスに対する耐性が高いことから、エッチングガスの種類を選ぶことなく基板のエッチングが可能となる。
【0041】
(13) ナノインプリントリソグラフィによるパターン形成方法であって、基板に、(1)から(11)いずれか記載の膜形成組成物を、積層する積層工程と、前記膜形成組成物が積層された基板に、凹凸構造のパターンが形成されたモールドを、前記膜形成組成物層に対向して押し付け、前記膜形成組成物層を前記モールドの前記凹凸構造のパターンに変形させる変形工程と、前記モールドと前記膜形成組成物層が当接した状態で、前記膜形成組成物層に電磁波を照射してレジストを形成するとともに、前記モールドの前記凹凸構造のパターンを前記レジストに転写する転写工程と、を含むパターン形成方法。
【0042】
(14) 前記転写工程は、減圧下または真空下にて行われる(13)記載のパターン形成方法。
【0043】
(14)のパターン形成方法によれば、転写工程が減圧下または真空下にて行われるため、モールドと基板の接触時に、大気中の泡が取り込まれることを防止できる。このため、気泡混入によるレジストパターンの不良および劣化を回避することが可能となる。
【0044】
(15) 前記凹凸構造のパターンが転写されたレジストを焼成する焼成工程をさらに含む(13)または(14)記載のパターン形成方法。
【0045】
(15)のパターン形成方法によれば、転写されたレジストを焼成する工程を有することにより、膜形成組成物から形成されるレジストの硬化を補助することができる。
【0046】
(16) 前記転写工程の後に、前記モールドを前記レジストからリリースするリリース工程と、プラズマおよび/または反応性イオンの照射により、前記レジストの少なくとも一部を除去するエッチング工程と、を含む(13)から(15)いずれか記載のパターン形成方法。
【0047】
(16)のパターン形成方法によれば、モールドをリリースした後の基板上のレジストに対し、プラズマおよび/または反応性イオンを照射して、レジストの少なくとも一部をエッチングにより除去するものである。
【0048】
ここで、「レジストの少なくとも一部」とは、レジストの凹部(すなわちモールドの凸部が接触して形成された部分)の薄膜を、プラズマおよび/または反応性イオンによるドライエッチングにより除去して、基板の表面を露出させることを意味する。
【0049】
(17) 前記エッチング工程は、前記レジストの少なくとも一部と同時にまたは逐次、前記基板のエッチングを行うものである(16)記載のパターン形成方法。
【0050】
(18) (13)から(17)いずれか記載のパターン形成方法により得られるナノ構造体。
【0051】
(18)のナノ構造体は、使用されるモールドの精度に依って、数ナノメートル以下の微細構造を有する構造体とすることができる。このため、(18)のナノ構造体は、超微細構造が必要とされる分野において、好ましく使用することができる。
【0052】
(19) 前記ナノ構造体は、半導体デバイス、配線基板、光学素子、および分析デバイスのいずれかである(18)記載のナノ構造体。
【0053】
(20) (1)から(11)いずれか記載の膜形成組成物が積層された基板に、凹凸構造のパターンが形成されたモールドを、前記膜形成組成物層に対向して、所望の形状になるように押し付け、加圧させる加圧ステップと、前記モールドと前記膜形成組成物層を当接させた状態で、前記膜形成組成物層に電磁波を照射して、レジストを形成させるとともに前記モールドの前記凹凸構造のパターンを前記レジストに転写させる転写ステップと、前記モールドを前記レジストからリリースさせるリリースステップと、を含むナノインプリントリソグラフィによるパターン形成のためのプログラムであって、前記加圧ステップにおける荷重を制御し、前記転写ステップにおける荷重、温度、および時間を制御することにより、ナノインプリントリソグラフィによるパターン形成をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0054】
(20)のプログラムによれば、加圧ステップによる荷重とともに、転写ステップにおける荷重、温度、および時間を制御することが可能となる。このため、(20)のプログラムを実行することにより、基板、使用する膜形成組成物、および対象となる微細パターン等の条件により、予め加圧ステップと転写ステップを制御し、所望のパターン形成を自動化することが可能となる。
【発明の効果】
【0055】
本発明のナノインプリント用の膜形成組成物によれば、光ナノインプリントリソグラフィと室温ナノインプリントリソグラフィの両者の利点を発揮しつつ、両者の問題点を解消したナノインプリントリソグラフィを実現することができる。すなわち、本発明の膜形成組成物によれば、酸素ガスに対するエッチング耐性に優れるとともに転写パターンの剥離を防止し、基板上における保持時間についての問題を解消し、転写性にも優れたレジストを得ることができる。更に、本発明の膜形成組成物から形成されるレジストは、酸素以外のガスに対するエッチング耐性にも優れることから、エッチングガスの選択幅が広がり、特定のガスの種類によらず基板へのパターンの形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の一実施形態としてのナノインプリントリソグラフィによるパターン形成方法について、図面を参照しながら説明する。ここでは、本発明の組成物から形成される構造体をレジストとして用いる例を挙げるが、これに限らず、形成された構造体をそのまま、あるいはエッチング等により形状を整えることによりその他の用途に使用することができる。
【0057】
<ナノインプリントリソグラフィによるパターン形成方法>
図1は、本発明の実施形態であるナノインプリントリソグラフィの工程図である。本実施形態においては、積層工程(図1(a))、変形工程(図1(b))、転写工程(図1(c))、リリース工程(図1(d))、エッチング工程(図1(e))、レジスト除去工程(図1(f))が存在する。以下、それぞれの工程を説明する。
【0058】
[積層工程]
図1(a)は、積層工程を示す図である。積層工程とは、基板1に、本発明の膜形成組成物2を積層する工程である。
【0059】
本実施形態において用いられる本発明の膜形成組成物2は、一般に高粘度の組成物であることが好ましい。また、レジストは、その後実施される基板のエッチング工程において、マスクとして機能するものであるため、厚みを均一として基板からの距離を均一にしておくことが好ましい。このため、膜形成組成物2を基板1上に積層する際には、通常、スピンコートが実施される。スピンナーによるスピンコートによれば、高粘度の膜形成組成物であっても、均一に積層することが可能となる。
【0060】
[変形工程]
図1(b)は、変形工程を示す図である。変形工程とは、積層工程により膜形成組成物2が積層された基板1に、凹凸構造のパターンが形成されたモールド3を、膜形成組成物層2に対向して押し付け、膜形成組成物層2をモールド3の凹凸構造のパターンに変形させる工程である。
【0061】
本実施形態の変形工程においては、ナノインプリントリソグラフィで通常実施されているのと同様に、モールド3を、基板1の膜形成組成物層2に押し付ける。モールド3には、凹凸構造のパターンが形成されているため、膜形成組成物層2は、モールド3の形状に変形される。
【0062】
変形工程においては、後に実施するエッチング工程の精度を向上させるために、モールド3の凹部(すなわちレジストの凸部)の角部にまで膜形成組成物2が充填されることが好ましい。また、後に実施するエッチング工程において、レジストの凹部(すなわちモールド3の凸部が接触する部分)のレジスト膜厚は、薄くなることが好ましい。したがって、変形工程においては、モールド3の押し付け荷重を制御することが好ましい。
【0063】
[転写工程]
図1(c)は、転写工程を示す図である。転写工程とは、モールド3と膜形成組成物層2が当接した状態で、膜形成組成物層2に電磁波(矢印で図示)を照射してレジストを形成するとともに、モールド3の凹凸構造のパターンをレジストに転写する工程である。
【0064】
転写工程においては、本発明の膜形成組成物2が有する光硬化反応を生じる機能を使用することにより、モールド3の凹凸構造のパターンを、膜形成組成物2から形成されるレジストに転写する。光硬化反応は、電磁波を照射することにより生じさせることができる。
【0065】
また、転写工程は、減圧下または真空下にて行われることが好ましい。減圧下または真空下にて行うことにより、モールド3と基板1(膜形成組成物層2)との接触時に、大気中の泡が取り込まれることを防止することができ、気泡混入によるレジストパターンの不良および劣化を回避することが可能となる。
【0066】
転写工程においては、得られるレジストの精度に影響することから、荷重、温度、時間を制御することが好ましい。具体的には、モールドの押し付け荷重、基板の温度、電磁波照射の時間等を制御する。
【0067】
[焼成工程]
焼成工程とは、転写工程によりモールドのパターンが転写されたレジストを、加熱により焼成する工程である。本発明においては、電磁波の照射により膜形成組成物2を硬化させるものであるが、焼成工程をさらに含むことにより、膜形成組成物2の硬化を補助することができる。
【0068】
例えば、膜形成組成物2がアルコキシシランの縮合物を含む場合には、焼成工程の存在によりガラス状となる。尚、本発明における焼成工程は、電磁波の照射による転写工程の補助的工程であることから、短時間の加熱であればよい。
【0069】
[リリース工程]
図1(d)は、リリース工程を示す図である。リリース工程とは、転写工程の後に、モールド3をレジスト(膜2)から剥離する工程である。リリース工程により、レジストパターンが形成された基板1を得ることができる。
【0070】
[エッチング工程]
図1(e)は、エッチング工程を示す図である。エッチング工程とは、リリース工程によってモールド3が剥離された基板1に対し、プラズマおよび/または反応性イオン(矢印で図示)を照射して、レジスト(膜形成組成物2の硬化物)の少なくとも一部をエッチングにより除去する工程である。
【0071】
エッチング工程においては、少なくとも、レジストの凹部(すなわちモールド3の凸部が接触して形成された部分)の薄膜4を除去する。薄膜4をエッチング除去することにより、基板1の表面が露出する。さらに、同時に、または逐次、基板1のエッチング工程を実施してもよい。
【0072】
エッチング工程において使用されるプラズマおよび/または反応性イオンのガスは、ドライエッチング分野で通常用いられているガスであれば、特に限定されるものではない。基板とレジストの選択比により、好適なガスを適宜選択することが可能である。
【0073】
特に、本発明においてレジストとなる高分子ケイ素化合物を含む組成物の硬化物は、各種ガスに対するエッチング耐性が高い。このため、ガスの選択幅が広がり、使用する基板の種類によって、エッチングガスを選択することが可能となる。例えば、Si−C系基板の場合には、酸素ガスによるエッチング、また、Si−O系基板の場合には、フッ素ガスによるエッチングを採用することができる。
【0074】
[レジスト除去工程]
図1(f)は、レジスト除去工程を示す図である。レジスト除去工程とは、基板1のエッチングが完了した後に、基板上に存在するレジスト(膜形成組成物2の硬化物)を除去する工程である。
【0075】
レジスト除去工程は、特に限定されるものではなく、基板1から不要となったレジスト(膜形成組成物2の硬化物)を除去する処理を行うものであればよい。例えば、レジスト(膜形成組成物2の硬化物)を溶解できる溶液を用いて、基板を洗浄する処理等を挙げることができる。
【0076】
<膜形成組成物>
以下に、本発明のナノインプリント用の膜形成組成物について説明する。本発明の膜形成組成物は、光硬化反応を生じる機能を備える組成物であり、光硬化反応を生じる機能を有する高分子ケイ素化合物を含むものである。
【0077】
[光硬化反応を生じる機能を有する高分子ケイ素化合物]
本発明の膜形成組成物において、光硬化反応を生じる機能を有する高分子ケイ素化合物は、電磁波に感応して開裂する官能基を有し、電磁波照射よって硬化反応を生じる高分子ケイ素化合物であることが好ましい。ここでいう電磁波としては、特に紫外線(UV光)が取り扱い易さの面で好ましい。
【0078】
電磁波に感応して開裂する官能基としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、オキセタニル基等を挙げることができる。これらの官能基は、1種のみであってもよいし、複数種が混在していてもよい。上記官能基は、エステル結合、エーテル結合、アミド結合で中断されてもよい、炭素数1〜20のアルキル基またはアリール基で高分子ケイ素化合物に結合されている。特に、高分子ケイ素化合物におけるSi原子に結合していることが好ましい。
【0079】
高分子ケイ素化合物1分子における電磁波に感応して開裂する官能基の含有個数は、1個以上3個以下が好ましく、さらに好ましくは1個以上2個以下である。電磁波に感応して開裂する官能基の含有個数が1個未満の場合には、本発明の膜形成組成物に光硬化反応を付与することができず、一方で、3個より多く含まれると、シロキサン結合が減少するため好ましくない場合がある。
【0080】
高分子ケイ素化合物としては、特に限定されるものではないが、本発明においては、例えば、主鎖にSi−O結合を有するシロキサン系高分子化合物、主鎖にSi−C結合を有するシリコンカーバイド系高分子化合物、主鎖にSi−Si結合を有するポリシラン系高分子化合物、および主鎖にSi−N結合を有するシラザン系高分子化合物よりなる群から選ばれる1種以上である。また、これらの任意の混合物を用いることもできる。用いられる基板との選択比が大きくなるよう、適宜、化合物を選択することが可能である。
【0081】
本発明において用いられる光硬化反応を生じる機能を有する高分子ケイ素化合物の重量平均分子量は、1000以上50000以下の範囲が好ましい。1000以上にすることにより膜形成能を向上させることができ、一方で50000以下にすることにより平坦性を向上させることができる。さらに、1000以上50000以下の範囲であれば、本発明に必要となる光硬化反応を適度に備えさせることができるとともに、十分な膜の強度を持たせることができる。重量平均分子量は、1000以上10000以下がより好ましく、1200以上5000以下が更に好ましい。
【0082】
(シロキサン系高分子化合物)
本発明の膜形成組成物における、光硬化反応を生じる機能を有する高分子ケイ素化合物としてのシロキサン系高分子化合物は、下記化学式(A)で示されるアルコキシシランのうちの少なくとも1種を出発原料とする縮重合物であることが好ましい。
【化2】

(式中、
は、水素、炭素数1から20のアルキル基またはアリール基であり、そのうちの少なくとも1つは、電磁波に感応して開裂する官能基を有しており、
は、炭素数1から5のアルキル基であり、
nは、1〜3の整数を示す。)
【0083】
上記Rにおける上記電磁波に感応して開裂する官能基としては、上記の通り、例えば、アクリル基、メタクリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基、エポキシ基、オキセタニル基を有する官能基が挙げられる。このRは、エーテル結合、エステル結合、アミド結合で中断されていてもよい。
【0084】
上記(A)で表される化合物の具体例としては、
(a1)n=1の場合、モノアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、モノメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、モノグリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、モノビニルトリメトキシシラン、モノアクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、モノメタクリロキシプロピルトリエトキシシシラン、モノグリシジロキシプロピルトリエトキシシシラン、モノビニルトリエトキシシラン、モノアクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、モノメタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、モノグリシジロキシプロピルトリプロポキシシラン、モノビニルトリプロポキシシラン、モノアクリロキシプロピルトリブトキシシラン、モノメタクリロキシプロピルトリブトキシシラン、モノグリシジロキシプロピルトリブトキシシラン、モノビニルトリブトキシシラン等を挙げることができ、
(a2)n=2の場合、ジアクリロキシプロピルジメトキシシラン、ジメタクリロキシプロピルジメトキシシラン、ジグリシジロキシプロピルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジアクリロキシプロピルジプロポキシシラン、ジメタクリロキシプロピルジプロポキシシラン、ジグリシジロキシプロピルジプロポキシシラン、ジビニルジプロポキシシラン、ジアクリロキシプロピルジブトキシシラン、ジメタクリロキシプロピルジブトキシシラン、ジグリシジロキシプロピルジブトキシシラン、ジビニルジブトキシシラン等を挙げることができ、
(a3)n=3の場合、トリアクリロキシプロピルモノメトキシシラン、トリメタクリロキシプロピルモノメトキシシラン、トリグリシジロキシプロピルモノメトキシシラン、トリビニルモノメトキシシラン、ジアクリロキシプロピルジエトキシシラン、ジメタクリロキシプロピルジエトキシシラン、ジグリシジロキシプロピルジエトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリアクリロキシプロピルモノエトキシシラン、トリメタクリロキシプロピルトリモノエトキシシラン、トリグリシジロキシプロピルモノエトキシシラン、トリビニルモノエトキシシラン、トリアクリロキシプロピルモノプロポキシシラン、トリメタクリロキシプロピルモノプロポキシシラン、トリグリシジロキシプロピルモノプロポキシシラン、トリビニルモノプロポキシシラン、トリアクリロキシプロピルモノブトキシシラン、トリメタクリロキシプロピルモノブトキシシラン、トリグリシジロキシプロピルモノブトキシシラン、トリビニルモノブトキシシラン等を挙げることができる。
【0085】
また、上記(A)の化合物と、上記(A)以外のアルコキシシランとの混合物の加水分解縮合物も、好ましいシロキサン系高分子化合物として挙げられる。
【0086】
上記(A)以外のアルコキシシランとしては、下記化学式(B)で示されるアルコキシシランが挙げられる。
【化3】

(式中、
は、水素、炭素数1から20のアルキル基またはアリール基であり、
は、炭素数1から5のアルキル基であり、
mは、0〜3の整数を示す。)
【0087】
上記一般式(B)で表される化合物の具体例としては、
(b1)m=0の場合、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等を挙げることができ、
(b2)m=1の場合、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン、モノメチルトリプロポキシシラン、モノエチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン、モノエチルトリプロポキシシラン、モノプロピルトリメトキシシラン、モノプロピルトリエトキシシランなどのモノアルキルトリアルコキシシラン
、モノフェニルトリメトキシシラン、モノフェニルトリエトキシシランなどのモノフェニルトリアルコキシシラン等を挙げることができ、
(b3)m=2の場合、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジプロピルジジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシランなどのジアルキルジアルコキシシラン
、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジフェニルジアルコキシシラン等を挙げることができ、
(b4)m=3の場合、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルプロポキシシラン、トリプロピルメトキシシラン、トリプロピルエトキシシランなどのトリアルキルアルコキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどのトリフェニルアルコキシシラン等を挙げることができる。
【0088】
上記一般式(A)および/または(B)で示されるアルコキシシランは、加水分解によりアルコキシ基が水酸基となり、アルコールが生成する。その後、アルコールの2分子が縮合することにより、Si−O−Siのネットワークが形成され、主鎖にシロキサン結合(Si−O結合)を有するシロキサン系高分子化合物となる。
【0089】
化学式(A)および/または(B)で示されるアルコキシシランの縮重合は、重合モノマーとなるアルコキシシランを、有機溶媒中、酸触媒の存在下で反応させることにより得られる。重合モノマーとなる化学式(A)および/または(B)で示されるアルコキシシランは、1種のみの使用でも、また複数種を組み合わせて縮重合してもよい。
【0090】
縮重合の前提となるアルコキシシランの加水分解の度合いは、添加する水の量により調整することができるが、一般的には、前記化学式(A)および/または(B)で示されるアルコキシシランの合計モル数に対して、1.0〜10.0倍モル、好ましくは1.5〜8.0倍モルの割合で添加する。水の添加量が1.0倍モル以上にすることにより加水分解度を高めることができ、被膜形成を容易にすることができる。一方で、10.0倍モル以下にすることによりゲル化を抑制し、保存安定性を向上させることができる。
【0091】
また、化学式(A)および/または(B)で示されるアルコキシシランの縮重合において用いられる酸触媒としては、特に限定されるものではなく、従来慣用的に使用されている有機酸、無機酸いずれも使用することができる。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機カルボン酸を挙げることができ、無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等が挙げられる。酸触媒は、アルコキシシランと水との混合物に直接添加するか、または、アルコキシシランに添加すべき水とともに酸性水溶液として添加してもよい。
【0092】
加水分解反応は、通常5〜100時間程度で完了する。また、室温から80℃を超えない加熱温度において、化学式(A)および/または(B)で示される1種以上のアルコキシシランを含む有機溶剤に酸触媒水溶液を滴下して反応させることにより、短い反応時間で反応を完了させることも可能である。加水分解されたアルコキシシランは、その後、縮合反応を起こし、その結果、Si−O−Siのネットワークを形成する。
【0093】
上記化学式(A)のアルコキシシランと化学式(B)のアルコキシシランとを混合する場合には、光硬化性を有する範囲で化学式(B)のアルコキシシランを混合すればよいが、化学式(A)のアルコキシシランが10モル%以上であることが好ましい。
【0094】
{電磁波}
本発明に使用される電磁波は、上記の電磁波に感応して開裂する官能基に作用して、膜形成組成物を硬化させるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、紫外線や遠紫外線等の可視光よりも短波長の光線、X線やγ線等の放射線、電子線等の粒子線を挙げることができる。これらの中では、紫外線を好ましく使用することができる。
【0095】
[その他成分]
{電磁波に感応する炭化水素系化合物}
本発明の膜形成組成物には、任意成分として、電磁波に感応する炭化水素系化合物を配合することが好ましい。電磁波に感応して硬化する炭化水素系化合物とは、電磁波の照射を受けて、炭化水素系化合物自身が重合し、または、前記高分子ケイ素化合物と共重合し、これにより硬化する反応を生じる機能を有する化合物である。本発明においては、このような機能を有する炭化水素系化合物であれば、特に限定されるものではなく、公知の化合物を使用することが可能である。炭化水素系化合物における電磁波に感応する機能は、例えば、上記の電磁波に感応して開裂する官能基を炭化水素系化合物に導入することにより得ることができる。
【0096】
この炭化水素系化合物としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合、エポキシ基、オキセタニル基を有する化合物が挙げられる。このエチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、付加重合硬化するようなエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物であって、前記のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体又は側鎖若しくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体である。また、前記単量体はいわゆる高分子物質に相対する差違化した概念であって、狭義の「単量体」にとどまらず、二量体、三量体、オリゴマーを含有する。
【0097】
前記単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸、脂肪族(ポリ)ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸および前述の脂肪族(ポリ)ヒドロキシ化合物、芳香族(ポリ)ヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸ニトリル等が挙げられる。
【0098】
具体的にはメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、エチレングリコールモノエチルエーテルメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、カルドエポキシジアクリレート、カルドエポキシジメタクリレート、これら例示化合物のアクリレート、メタクリレートを、フマレート、マレエート、クロトネート、イタコネートに代えたものや、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、ヒドロキノンモノアクリレート、ヒドロキノンモノメタクリレート、ヒドロキノンジアクリレート、ヒドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、ピロガロールジアクリレート、ピロガロールトリアクリレート、アクリル酸とフタル酸およびジエチレングリコールとの縮合物、アクリル酸とマレイン酸およびジエチレングリコールとの縮合物、メタクリル酸とテレフタル酸およびペンタエリスリトールとの縮合物、アクリル酸とアジピン酸およびブタンジオールとグリセリンとの縮合物、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタクリルアミド、フタル酸ジアリルのアリルエステル、ジビニルフタレートなどが挙げられる。
【0099】
また、側鎖もしくは主鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体としては、例えば、不飽和二価カルボン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル、不飽和二価カルボン酸とジアミンとの重縮合反応により得られるポリアミド、イタコン酸、プロピリデンコハク酸、エチリデンマロン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合反応により得られるポリエステル、イタコン酸、プロピリデンコハク酸、エチリデンマロン酸とジアミンとの重縮合反応により得られるポリアミド、フェノールノボラック型エポキシアクリレート、フェノールノボラック型エポキシメタクリレート、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、クレゾールノボラック型エポキシメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ビスフェノールS型エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートオリゴマー、ウレタンメタクリレートオリゴマーなどが挙げられる。前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂にさらに多塩基酸無水物を反応させたものであってもよい。また、側鎖にヒドロキシ基やハロゲン化アルキル基のごとき反応活性を有する官能基を有する重合体、例えばポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリエピクロルヒドリンなどとアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との高分子反応により得られる重合体なども使用できる。中でも、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの単量体を特に好ましく用いることができる。
【0100】
これらの炭化水素系化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
この炭化水素系化合物の量は、特に限定されるものではないが、上記高分子ケイ素化合物100重量部に対して、1〜50重量部含まれることが好ましく、10〜30重量部含まれることがより好ましい。上記の下限値以上にすることにより、光硬化性を向上させることができる。また、上記の上限値以下にすることにより、フッ素ガスへの耐性の低下を抑制することができる。
【0102】
{光重合開始剤}
光重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、膜形成組成物に含まれる樹脂の種類、または官能基の種類によって、適宜選択することができる。光カチオン開始剤、光ラジカル開始剤、光アニオン開始剤等、膜形成組成物の状況に併せて、必要な光重合開始剤を選択すればよい。
【0103】
上記光重合開始剤としては、例えば、2,2−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’、5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(以下、B−CIM(保土ヶ谷化学社製))、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(以下、ミヒラーズケトン)、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(以下、EAB−F(保土ヶ谷化学社製))、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−イソアミルエステル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、p−ジメチルアミノアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシ)スチリル−s−トリアジン等のトリアジン化合物などを挙げることができる。
【0104】
また、上記の他に、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン等のイオウ化合物や、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類や、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物や、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物等を用いることもできる。
【0105】
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。 この光重合開始剤の量は、特に限定されるものではないが、上記高分子ケイ素化合物100重量部に対して、0.1〜30重量部含まれることが好ましく、1〜15重量部含まれることがより好ましい。上記の下限値以上にすることにより、光硬化性を向上させることができる。また、上記の上限値以下にすることにより、形成されたパターン表面における平滑性が良好になる傾向があり、好ましい。
【0106】
{酸発生剤および/またはアルカリ発生剤}
本発明の膜形成組成物は、酸発生剤および/またはアルカリ発生剤を配合することが好ましい。本発明において好ましく用いられる酸発生剤および/またはアルカリ発生剤は、特に限定されるものではなく、膜形成組成物の組成等によって、公知の化合物から適宜選択することが可能である。特に、本発明においては、電磁波に感応して酸および/またはアルカリを発生する化合物(光酸発生剤および/または光アルカリ発生剤)を配合することが好ましい。
【0107】
この光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、ビススルホン誘導体、β−ケトスルホン誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体などの公知の酸発生剤を用いることができる。
【0108】
前記オニウム塩としては、具体的には、トリフロオロメタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラn−ブチルアンモニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸テトラフェニルアンモニウム、p−トルエンスルホン酸テトラメチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸ジフェニルヨードニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルヨードニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ビス(p−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、ブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリメチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジメチルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、エチレンビス[メチル(2−オキソシクロペンチル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート]、1,2’−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレート等が挙げられる。
【0109】
前記ジアゾメタン誘導体としては、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシレンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロペンチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−プロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(イソアミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(sec−アミルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、1−シクロヘキシルスルホニル−1−(tert−アミルスルホニル)ジアゾメタン、1−tert−アミルスルホニル−1−(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
【0110】
前記グリオキシム誘導体としては、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−O−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(シクロヘキサンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等が挙げられる。
【0111】
前記ビススルホン誘導体としては、ビスナフチルスルホニルメタン、ビストリフルオロメチルスルホニルメタン、ビスメチルスルホニルメタン、ビスエチルスルホニルメタン、ビスプロピルスルホニルメタン、ビスイソプロピルスルホニルメタン、ビス−p−トルエンスルホニルメタン、ビスベンゼンスルホニルメタン等が挙げられる。
【0112】
前記β−ケトスルホン誘導体としては、2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2−イソプロピルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン等が挙げられる。
【0113】
ジスルホン誘導体としては、ジフェニルジスルホン誘導体、ジシクロヘキシルジスルホン誘導体等のジスルホン誘導体を挙げることができる。
【0114】
前記ニトロベンジルスルホネート誘導体としては、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート誘導体を挙げることができる。
【0115】
前記スルホン酸エステル誘導体としては、1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン等のスルホン酸エステル誘導体を挙げることができる。
【0116】
前記N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体としては、N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ペンタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−オクタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドp−メトキシベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−クロロエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド2−ナフタレンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシマレイミドエタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−2−フェニルマレイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシグルタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシフタルイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドp−トルエンスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0117】
また、光アルカリ発生剤としては、例えば、トリフェニルメタノール、ベンジルカルバメートおよびベンゾインカルバメート等の光活性なカルバメート;O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、アロマティックスルホンアミド、アルファーラクタムおよびN−(2−アリルエチニル)アミド等のアミドならびにその他のアミド;オキシムエステル、α−アミノアセトフェノン、コバルト錯体等を挙げることができる。このうち、2−ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、o−カルバモイルヒドロキシルアミド、o−カルバモイルオキシム、[[(2,6−ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6−ジアミン、4−(メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、N−(2−ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等が好ましいものとして挙げられる。
【0118】
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0119】
この酸発生剤および/またはアルカリ発生剤の量は、特に限定されるものではないが、上記高分子ケイ素化合物100重量部に対して、0.1〜30重量部含まれることが好ましく、1〜15重量部含まれることがより好ましい。上記の下限値以上にすることにより、光硬化性を向上させることができる。また、上記の上限値以下にすることにより、形成されたパターン表面における平滑性が良好になる傾向があり、好ましい。
【0120】
{界面活性剤}
本発明の膜形成組成物には、界面活性剤を配合することが好ましい。界面活性剤の存在により、基板に対する塗布性、展開性を向上させることが可能となる。
【0121】
{溶剤}
本発明の膜形成組成物は、塗布性および膜厚均一性を向上させる目的で、溶剤を含むことが好ましい。この溶剤としては、従来より一般的に使用されている有機溶剤が使用できる。具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノールのような一価アルコール;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネートのようなアルキルカルボン酸エステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールのような多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートのような多価アルコール誘導体;酢酸、プロピオン酸のような脂肪酸;アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノンのようなケトンなどを挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0122】
この溶剤の量は、特に限定されるものではないが、上記高分子ケイ素化合物、光重合開始剤、酸発生剤および/またはアルカリ発生剤等の溶剤以外の成分(固形分)の濃度が5〜100質量%になるようにすることが好ましく、20〜50質量%になるようにすることがより好ましい。この範囲にすることにより塗布性を向上させることができる。
【0123】
{その他}
また、本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の樹脂、添加剤等を配合することが可能である。その他の配合成分は、レジストに付与したい機能等によって、適宜選択することが可能である。
【実施例】
【0124】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0125】
<実施例1>
テトラエトキシシラン1モル、モノアクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5モル、およびモノビニルトリメトキシシラン0.5モルを、イソプロピルアルコール170gに溶解した。次いで、純水190gと、濃硝酸0.02gを加え、室温で6時間撹拌した。得られた組成物を、SiO換算固形分値が7%となるように、イソプロピルアルコールにより希釈した。引き続き、得られた液100gに対して、光重合開始剤として、イルガキュア−369(チバスペシャルティーケミカルズ社製:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン)を1g加え、塗布液を調製した。
【0126】
<比較例1>
メチルトリメトキシシラン29.5g、テトラメトキシシラン33.0g、およびアセトン:イソプロピルアルコール=2:1の混合溶媒83.0gを混合し、撹拌した。ここに、水54.6g、および60%硝酸4.7μLを加え、更に3時間撹拌した。その後、26℃で2日間熟成させた。得られた組成物を、SiO換算固形分値が7%となるように、アセトン:イソプロピルアルコール=2:1の混合溶媒で希釈し、塗布液を得た。
【0127】
<紫外線照射>
実施例1および比較例1により得られた塗布液を、シリコンウェハー上に、スピンナーを用いて、2000rpmで塗布した後、乾燥させた。引き続き、紫外光光源として日本電池社製UV装置を用いて、紫外線を照射した。実施例1において得られた塗布液は、光硬化したが、比較例1で得られた塗布液は、光硬化しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明により得られるナノ構造体は、使用されるモールドの精度に依って、数ナノメートル以下の微細構造を有する構造体となる。このため、半導体デバイス、配線基板、回折格子、偏光素子等の光学素子、あるいはキャピラリーカラム等の分析デバイス等の超微細構造が必要とされる分野において、好ましく使用される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】ナノインプリントリソグラフィの工程を示す図である。
【符号の説明】
【0130】
1 基板
2 膜形成組成物
3 モールド
4 膜形成組成物の硬化物の薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化反応を生じる機能を有する高分子ケイ素化合物を含むことを特徴とするナノインプリント用の膜形成組成物。
【請求項2】
前記高分子ケイ素化合物は、電磁波に感応して開裂する官能基を有し、電磁波照射によって硬化反応を生じることを特徴とする請求項1に記載の膜形成組成物。
【請求項3】
前記高分子ケイ素化合物は、シロキサン系高分子化合物、シリコンカーバイド系高分子化合物、ポリシラン系高分子化合物、およびシラザン系高分子化合物からなる群より選ばれる1種以上である請求項1または2記載の膜形成組成物。
【請求項4】
前記高分子ケイ素化合物は、重量平均分子量が1000以上50000以下であることを特徴とする請求項1から3いずれか記載の膜形成組成物。
【請求項5】
前記高分子ケイ素化合物は、下記化学式(A)で示されるアルコキシシランから選択される少なくとも1種を出発原料として含む化合物の縮重合物であることを特徴とする請求項1から4いずれか記載の膜形成組成物。
【化1】

(式中、
は、水素、炭素数1から20のアルキル基またはアリール基であり、そのうちの少なくとも1つは、電磁波に感応して開裂する官能基を有しており、
は、炭素数1から5のアルキル基であり、
nは、1〜3の整数を示す。)
【請求項6】
前記電磁波に感応して開裂する官能基は、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、およびオキセタニル基からなる群より選ばれる1種以上である請求項2から5いずれか記載の膜形成組成物。
【請求項7】
前記電磁波は、紫外線または紫外線より短波長の光線もしくは粒子線である請求項2から6いずれか記載の膜形成組成物。
【請求項8】
前記電磁波に感応する炭化水素系樹脂をさらに含む請求項2から7いずれか記載の膜形成組成物。
【請求項9】
光重合開始剤をさらに含む請求項1から8いずれか記載の膜形成組成物。
【請求項10】
酸発生剤および/またはアルカリ発生剤をさらに含む請求項1から9いずれか記載の膜形成組成物。
【請求項11】
界面活性剤をさらに含む請求項1から10いずれか記載の膜形成組成物。
【請求項12】
ナノインプリントリソグラフィにおいて用いられる感光性レジストであって、
請求項1から11いずれか記載の膜形成組成物を硬化させることにより得られる感光性レジスト。
【請求項13】
ナノインプリントリソグラフィによるパターン形成方法であって、
基板に、請求項1から11いずれか記載の膜形成組成物を、積層する積層工程と、
前記膜形成組成物が積層された基板に、凹凸構造のパターンが形成されたモールドを、前記膜形成組成物層に対向して押し付け、前記膜形成組成物層を前記モールドの前記凹凸構造のパターンに変形させる変形工程と、
前記モールドと前記膜形成組成物層が当接した状態で、前記膜形成組成物層に電磁波を照射してレジストを形成するとともに、前記モールドの前記凹凸構造のパターンを前記レジストに転写する転写工程と、を含むパターン形成方法。
【請求項14】
前記転写工程は、減圧下または真空下にて行われる請求項13記載のパターン形成方法。
【請求項15】
前記凹凸構造のパターンが転写されたレジストを焼成する焼成工程をさらに含む請求項13または14記載のパターン形成方法。
【請求項16】
前記転写工程の後に、前記モールドを前記レジストからリリースするリリース工程と、
プラズマおよび/または反応性イオンの照射により、前記レジストの少なくとも一部を除去するエッチング工程と、を含む請求項13から15いずれか記載のパターン形成方法。
【請求項17】
前記エッチング工程は、前記レジストの少なくとも一部と同時にまたは逐次、前記基板のエッチングを行うものである請求項16記載のパターン形成方法。
【請求項18】
請求項13から17いずれか記載のパターン形成方法により得られるナノ構造体。
【請求項19】
前記ナノ構造体は、半導体デバイス、配線基板、光学素子、および分析デバイスのいずれかである請求項18記載のナノ構造体。
【請求項20】
請求項1から11いずれか記載の膜形成組成物が積層された基板に、凹凸構造のパターンが形成されたモールドを、前記膜形成組成物層に対向して、所望の形状になるように押し付け、加圧させる加圧ステップと、
前記モールドと前記膜形成組成物層を当接させた状態で、前記膜形成組成物層に電磁波を照射して、レジストを形成させるとともに前記モールドの前記凹凸構造のパターンを前記レジストに転写させる転写ステップと、
前記モールドを前記レジストからリリースさせるリリースステップと、を含むナノインプリントリソグラフィによるパターン形成のためのプログラムであって、
前記加圧ステップにおける荷重を制御し、
前記転写ステップにおける荷重、温度、および時間を制御することにより、
ナノインプリントリソグラフィによるパターン形成をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−72374(P2007−72374A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262009(P2005−262009)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】