説明

ネットワーク適応型データ送受信方法並びに携帯端末及びサーバ

【課題】
多種多様な通信手段やサービスの種類に対応できるようなデータ送受信の基盤技術を提供する。
【解決手段】
多種多様な端末が備える通信手段と、送受信されるデータの性質とをそれぞれパラメータ化し、データの送受信に先立って相手に通知することとし、パラメータ同士の組み合わせに応じた最適な通信手段を導出する。このため、サービスや相手の通信手段に応じ、より効率のよく、安全な送受信方式を選択することができる。また、この仕組みは、携帯端末等を用いた電子チケットシステム等にも適用可能であり、プログラムの開発・修正コストを軽減することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末と他の機器間におけるデータの送受信方法、及び、これに用いる機器に関し、特に、携帯端末と他の機器それぞれに備えられた通信手段の性質(容量、速度、安全性等)を考慮して行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末(携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)、多機能ICカード等)を用いて、EC(ElectronicCommerce)サービスを提供するには、インターネット等のバーチャルな場、或いは、店舗等のリアルな場いずれの場面においても、コマースに関わる様々な情報(顧客ID、各種の鍵、認証データ、電子マネー、チケット、クーポン等)をユーザの携帯情報端末と事業者のサーバとの間でやりとりする必要がある。
【0003】
特に、上記ユーザが現場に居合わせるリアルな場では、コマースの行為者を確定するために指向性の高い近距離無線通信が単体で或いは指向性の低い別の通信手段と併用して用いられることが多い。例えば、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)、無線ICカード等による非接触型通信、無線LAN(Local Area Network)等の店舗等の端末と直接通信する(利用者が取引現場に居合わせることを要する)通信手段を利用した方式が盛んに研究されており、更に、公衆網インターネットや移動体通信会社独自のネットワーク(利用者が取引現場に居合わせることを要しない)を併用する方式も提案されている。
【0004】
非特許文献1及び2は、携帯電話に搭載された赤外線通信機能を用いて映画チケットシステムを実現する例である。赤外線通信機能を有する携帯電話が紙のチケットの代わりとして用いられている。携帯電話のメモリ上に保存されたチケット情報を、同じく赤外線通信機能を有する映画チケット認証端末に送信することが紙チケットを差し出すのと同じ行為として認識され、正しいチケット認証が行われる。この例においては、赤外線を通じて、チケットのIDやチケットの券面情報(映画館の席番号、上映されるプログラムの名前等)が送受信される。
【0005】
非特許文献3、4は、非接触ICカードを鉄道の切符として用いる例である。鉄道駅の改札機と非接触ICカードとは、互いに無線通信可能である。改札を通過する時に非接触ICカードと改札機が相互通信することで、非接触ICカードの所有者が改札を通過可能かどうかの判断を行ったり、非接触ICカードに記憶された電子マネーから鉄道の利用料の引き落としを行ったりする。この例においては、電子マネーの減額情報や通過した駅の駅番号が無線通信を通じてやりとりされる。
【0006】
特許文献1,2は、携帯端末が自動販売機などのリアルな場に置かれた端末と、インターネット上のサーバの両方と通信を行うことでECサービスが実行される。これらの文献では携帯端末が近距離通信手段と、公衆網を利用したインターネット通信の両方の通信手段を利用している点に特徴がある。
【0007】
【特許文献1】特開2001−118124号公報
【特許文献2】特開2001−134684号公報
【非特許文献1】M. Iguchi, M. Terada, Y. Nakamura, and K. Fujimura. "Voucher-integrated C2B and C2C Trading Model". [online]. The Eleventh International World Wide Web Conference. [retrieved on 2004-11-19]. <URL:http://www2002.org/CDROM/poster/134/>
【非特許文献2】"FlexTicket". [online]. NTT information Sharing Platform Laboratories. [retrieved on 2004-11-19]. <URL:http://info.isl.ntt.co.jp/flexticket/index_j.html>
【非特許文献3】"JR東日本:Suica". [online]. JR東日本. [retrieved on 2004-11-19]. <URL:http://www.jreast.co.jp/suica/>
【非特許文献4】"www.jayacard.org". ISO 14443 Proximity Card ISO14443-1,ISO14443-2,ISO14443-3,ISO14443-4. [online]. [retrieved on 2004-11-19]. <URL:http://www.jayacard.org/14443/>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術の第1の問題点は、多種多様な通信手段やサービスの種類に対応できる通信プログラムやアプリケーションプログラムの開発が困難であることである。例えば、ECサービスには、上述したように赤外線通信、非接触IC通信等の様々な近距離無線通信技術が用いられる。これらの近距離無線通信は、インターネット等で用いられる通信技術とは異なり、通信速度、指向性、セキュリティ強度、通信コスト、通信帯域、通信結果を格納するメモリ容量等の性質に大きな違いがある。例えば、赤外線通信の代表的な規格であるIrDAでは、通信速度は10〜100Kbps程度と高速であるが、接続を確立するのに1.5〜2秒程度の時間がかかる。また例えば、非接触ICカードを用いた通信では、通信速度は速いもののICカードに搭載されたICチップの制限から、一回の通信で送ることが出来るデータは高々数百バイトである。また例えば、無線LAN通信は高速であるが指向性が低く、リアルな場でのECサービスを行うには別の指向性の高い手段と組み合わせる必要がある。同様に、様々なECサービスがあるところ、各サービスでやり取りするデータにもそれぞれの性質であり、容量、必要なセキュリティ強度、通信完了までにかけられる時間等の要求条件も多様である。
【0009】
また上述した従来技術の第2の問題点は、サービスを提供可能なユーザ(携帯端末)や店舗等のサービスを提供する側の機器に制限があったことである。従来技術に基づくコマースサービスでは、端末、扱うデータ、実施するサービスの種類を固定し、アプリケーションを構築していたが、これには、多種多様な通信手段を備える端末をサービスの対象とした場合等には、アプリケーションプログラムが非常に複雑になるという事情があった。またこの問題点と関連して、新方式の通信手段を備える端末をサービス対応機種に加える場合や、サービスの追加や変更に伴い取り扱うデータの種類が増えた場合には、アプリケーションプログラムを全面的に組み替える必要が生じていた。
【0010】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、多種多様な通信手段やサービスの種類に対応できるようなデータ送受信の基盤技術を提供すること、そして、各種サービスの提供に用いるアプリケーションプログラムの開発・修正に要する負担を低減することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段を提供する本発明の第1の視点によれば、それぞれ2以上の通信手段を備えた端末間のデータ送受信方法であって、互いの条件から最適な通信手段を導出し、データ送受信を行う方法が提供される。まず、第1の端末が、第2の端末との通信に先立って、自機に備えられた通信手段とその性質に関する情報を第2の端末に対して通知する。続いて、前記第1の端末から通知を受けた第2の端末が、前記第1の端末から受信した情報と、第2の端末に備えられた通信手段とその性質に関する情報とを照合するとともに、所定の接続条件に従って、前記第1の端末と第2の端末間でデータ送受信を行う際の通信手段を導出する。そして、前記導出された通信手段を用いて、前記第1の端末と第2の端末間でデータの送受信を行う。
【0012】
また、本発明の第2の視点によれば、各種サービスに適用可能な形態で上記したデータ送受信方法を実施可能な携帯端末及び送受信方式導出装置(サーバ)が提供される。この携帯端末は、データの通信を行う通信部と、送受信するデータの格納及び取り出しを行うデータ格納部と、に加えて、他の装置との通信に先立って、自機に備えられた通信手段と各通信手段の性質に関する情報を所定の送受信方式導出装置(サーバ)に対して通知する通信種別情報通知部と、前記送受信方式導出装置(サーバ)からの応答に基づいて前記自機に備えられた通信手段を選択し、前記データ格納部及び通信部を制御する送受信方式制御部と、を備える。
【0013】
また、送受信方式導出装置(サーバ)は、データの通信を行う通信部と、送受信するデータの格納及び取り出しを行うデータ格納部と、提供するサービス毎に定めた要件情報を保持するサービス要件管理部と、自機に備えられた通信手段と各通信手段の性質に関する情報を保持する通信種別情報保持部と、前記サービス要件管理部に管理される内容と、前記携帯端末の通信種別情報通知部から受信した情報と、前記通信種別情報保持部に保持された情報とから、前記携帯端末への各サービスを提供する際に選択されるべき通信手段の組合せを導出する送受信方式導出部と、を備え、前記携帯端末に対して送受信方式導出装置として動作する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各機器に備えられた機能や利用場面に応じ、より好ましい状態を構成してデータの送受信を行うことが可能になる。また、本発明を用いることでアプリケーションプログラムの開発・修正における負担も解消することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について、様々な想定ケースとともに説明する。始めに、本実施の形態の全体構成について説明する。図1を参照すると、携帯端末10と、サーバ20、30とからなるシステム構成が示されている。携帯端末はユーザ数だけ存在し、サーバはそのサービスを構成する役割によって一つ又は複数存在するが、本発明の理解を容易にするため、図1においては携帯端末10、サーバ20、30のみを表している。
【0016】
携帯端末10は、携帯電話、PDA、ノートパソコン、ICカード等、一般利用者が携帯して利用する情報処理装置であって近距離通信手段と公衆網通信手段を備えたものである。(第1の)サーバ20は、店舗や映画館等に設置されて一般利用者にサービスを提供する情報処理装置である。(第2の)サーバ30は、Webサーバなどインターネット上に配置されて、サーバ20の補助的な役割を果たしながらサービスを提供する情報処理装置である。
【0017】
携帯端末10は、通信種別情報通知部100、送受信方式制御部101、データ格納部102、通信部103を備えている。通信種別情報通知部100は、サービスを受ける際にサーバ20の通信種別情報保持部200に対して携帯端末10に備えられた通信手段とその性質とを通信種別情報として送信する。通信種別情報には、例えば、転送速度、セキュリティ強度、転送コスト、一回の通信で送受信可能なデータサイズ、指向性の有無等の項目についての情報が含まれている。
【0018】
送受信方式制御部101は、サーバ20の送受信方式導出部205からの指示に基づいて通信部203及びデータ格納部202を制御しデータの送受信を行うとともに、必要な場合には認証と暗号化を行い、セキュリティ強度を高める。サーバ20の送受信方式導出部205からの指示は、送受信の対象となるデータの種類毎に、利用する通信手段、送受信方式制御部101で認証と暗号化を行うかどうか等が含まれている。
【0019】
データ格納部102は、サービスで用いるチケットなどのデータを格納し、送受信方式制御部101の要求に応じてデータを送受信方式制御部101に渡す機能、及び、送受信方式制御部101から受け取ったデータを格納する機能を有する。通信部103は、送受信方式制御部101からの指示を受けて、携帯端末10が備える各種通信手段を用いたデータの送受信を行う。
【0020】
サーバ20は、通信種別情報保持部200、サービス要件管理部206、送受信方式導出部205、送受信方式制御部201、データ格納部202、通信部203、データ同期部204を備えている。通信種別情報保持部200は、サービスを提供する際に携帯端末10から携帯端末側の通信手段とその性質とを受信し保持するとともに、サーバ20及び関連するサーバ(例えばサーバ30)の通信種別情報も保持している。通信種別情報保持部200は、これらの情報を送受信方式導出部205に送信する。サービス要件管理部206は、サービスの提供に求められる要件をパラメータで表現したサービス要件(要件情報)を格納し、送受信方式導出部205に渡す。このサービス要件(要件情報)は、サービスを実施する際に送受信が必要なデータの種類毎に、データの転送方向がサーバから携帯端末へ、携帯端末からサーバへ、双方向のどれであるか、データのサイズを示すパラメータ、データ転送の際に要求されるセキュリティレベル、データ送受信の際に指向性を持つ通信手段が必要であるか、といった項目を各サービスのデータ毎に指定可能となっている。
【0021】
送受信方式導出部205は、携帯端末10の持つ通信手段と、サーバ20やサーバ30等の通信先の通信手段と、サービス要件管理部206から提供されたサービス要件とから、最適なデータの送受信方法を導出し、サーバ20の送受信方式制御部201、及び、必要であれば携帯端末10の送受信方式制御部101、サーバ30の送受信方式制御部301に指示を行う。
【0022】
データ格納部202は、サービスで用いるチケット等のデータを格納し、送受信方式制御部201の要求に応じてデータを送受信方式制御部201に渡す機能、及び、送受信方式制御部201から受け取ったデータを格納する機能を有する。送受信方式制御部201は、送受信方式導出部205からの指示に基づいて通信部203及びデータ格納部202を制御して携帯端末10とのデータの送受信を行う。通信部203は、送受信方式制御部201からの指示を受けて、サーバ20が備える各種通信手段を用いたデータの送受信を行う。
【0023】
データ同期部204は、送受信方式導出部205が複数のサーバが協調してサービスを行うような指示を導出した場合に、当該指示とデータ格納部202に格納されているデータを他のサーバ(例えばサーバ30)に渡して同期を行う。
【0024】
サーバ30は、送受信方式制御部301、データ格納部302、通信部303、データ同期部304を備えている。データ格納部302はサービスで用いるチケット等のデータを格納し、送受信方式制御部301の要求に応じてデータを送受信方式制御部301に渡す機能、及び、送受信方式制御部301から受け取ったデータを格納する機能を有する。
【0025】
データ同期部304は、データ格納部202に格納されているデータをサーバ20から受け取り同期を行う。送受信方式制御部301は、データ同期部304を介してサーバ20のデータ同期部204から受け取った指示に基づき、通信部303及びデータ格納部302を制御して携帯端末10と通信を行う。
【0026】
図2に示したフロー図を用いて本実施の形態の全体の動作概要を説明する。まず、サービスの提供を受けるに先立って、携帯端末10の通信種別情報通知部100が自身の持つ通信手段の種類と性質を記述した通信種別情報をサーバ20の通信種別情報保持部200へと送信する(ステップS1)。なお、ここでの通信方式は、通信種別情報を通知可能であれば足り、無線、有線、バーコード等を認識させるもの等を任意の方式を採用可能である。
【0027】
サーバ20の通信種別情報保持部200は受信した通信種別情報とサーバ20と関連するサーバ(例えばサーバ30)の通信種別情報を送受信方式導出部205に伝え、送受信方式導出部205はこれら情報を一時的に記憶する(ステップS2−1)。続いて、送受信方式導出部205は、サービス要件管理部より、本サービスで携帯端末との間で送受信が必要なデータの種類とその授受の際の要件を取得する(ステップS2−2)。なお、本ステップは、データの種類の個数だけ繰り返される。続いて、送受信方式導出部205は、後述する方式に従って本サービスにおけるデータの送受信方式を決定する(ステップS3)。
【0028】
上記ステップS3で、サービスを実行する上でサーバ20以外のサーバ(ここでは、サーバ30とする)が必要となった場合は、送受信方式導出部205は、サーバ30に対して送受信方式を通知する(ステップS4)。更にこの場合において、サーバ20とサーバ30の両方がサービスの実施に必要である場合、サーバ20とサーバ30の間のデータ同期を行い、サービスに矛盾が起こらないようにする(ステップS5)。
【0029】
続いて、サーバ20と携帯端末10の間でデータの送受信が行われる(ステップS6−1)。この時、サーバ20と携帯端末10との間の通信は送受信方式導出部205がステップS3で導出し指示したものが用いられる。
【0030】
また、ステップS4、S5を行った場合、即ち、サーバ20、サーバ30の両方で携帯端末10に対するサービスを遂行する場合は、携帯端末10とサーバ20との通信と(ステップS6−1)、携帯端末10とサーバ30との通信と(ステップS6−2)がそれぞれ行われる。
【0031】
なお、上記のステップS1では、通信を用いて通信種別情報を通知するものとしているが、店員等がユーザの所有する携帯端末の種類等を目視確認し、サーバ20(店舗端末)に対して入力するステップを付加しても良い。
【0032】
続いて、上記ステップS3における送受信方式導出部205が送受信方式を導出する動作を図3から図7に示す例を用いて説明する。図3は、携帯端末に備えられた通信手段とその性質に関する情報をわかり易く表現したものである(実際には、送受信方式導出部205での比較対照に適するよう適当なフォーマットに収められ各値は符号化されていることになる)。図3を参照すると例えば、携帯端末10−Aは、通信手段1、通信手段2の2つの通信手段を備え、携帯端末10−Bは、通信手段3、通信手段2の2つの通信手段を備えていることが示されている。
【0033】
例えば、通信手段1について見ると、転送速度は1秒間あたり38Kバイトであり、セキュリティは弱く、通信に要する転送コストは0円であり、一回の通信で扱うことの出来るデータサイズは100Kバイトであり、通信に指向性がある、といった性質に関する情報が所定のフォーマットで記述されている。
【0034】
図4は、サーバに備えられた通信手段とその性質に関する情報をわかり易く表現したものである(実際には、送受信方式導出部205での比較対照に適するよう適当なフォーマットに収められ各値は符号化されていることになる)。図5は、サービス要件管理部206で管理されるサービス要件をわかり易く表現したものである(実際には、送受信方式導出部205での比較対照に適するよう適当なフォーマットに収められ各値は符号化されていることになる)。例えば、サービスBを提供するには二種類のデータを利用する。一つ目のデータ1は、データサイズは10バイト、データの転送方向はサーバから携帯端末への一方向、セキュリティは強い必要がある、指向性のある通信手段が必要、といった要件が示されている。二つ目のデータ2は、データサイズは10バイト、データの転送方向はサーバから携帯端末への一方向、セキュリティは弱くても構わない、指向性のある通信手段は不要、といった要件が示されている。更に、複数の通信手段が競合する場合は、サーバ数(関与するサーバ数の少ない通信手段を優先する)、コスト(コストの少ない通信手段を優先する)、セキュリティ(セキュリティの高い通信手段を優先する)、速度(速度の高い通信手段を優先する)の順に重視する、といった優先基準(属性優先度)が設定されている。
【0035】
続いて、上記図3乃至図5の情報が設定されているものとして、図1のステップS3における送受信方式導出部205の動作を説明する。図6は、図3、図4、図5から一つずつ抽出したものであり、携帯端末10−Aを持った利用者がサーバ20−Aを備えた店舗に来店し、サーバ20−AがサービスAを提供するケースの状況を表している。また、サーバ20のバックエンドにはサーバ30があり、協調して動作可能となっている。このケースでは、送受信方式導出部205は以下のようにして送受信方式を導出する。まず、サービスAのデータ1は、指向性=要と指定されているため、通信手段の組合せは、携帯端末10−Aとサーバ20−Aの間で通信手段1を用いる方法のみとなる。このため、データ1の通信には通信手段1を用いることになる。
【0036】
一方、サービスAのデータ2は、指向性=不要と指定されているため、指向性=あり、なしいずれの通信手段も選択可能である。従って、データ2を転送する際の通信手段の組合せとしては、携帯端末10−Aとサーバ20−Aの間で通信手段1を用いる方法、携帯端末10−Aとサーバ30の間で通信手段2を用いる方法の二つが選択可能である。しかしながら、サービスAでは属性優先度が規定され、まず、関与するサーバ数の多寡が筆頭に挙げられている。通信手段1と通信手段2を比較すると、通信手段1はサーバ20のみでデータ送受信可能であるところ、通信手段2はサーバ20に加えてサーバ30の通信手段2を用いなければならない、従って、通信手段1の方が関与する(データの送受信経路となる)サーバ数が少ないという理由から選択される。
【0037】
以上の結果、図6の例では図7に示すような方式でデータの送受信が行われる。即ち、サーバ20−Aから携帯端末10−Aに対するサービスAの提供に際して、データ1を送信する場合もデータ2を送信する場合も、通信手段1が用いられることになる。
【0038】
また、図6の状況で、サービスAの代わりにサービスBを実施するケースでは、通信手段1は、データ1の「セキュリティ=強い」という要件を満たさない、しかし送受信方式制御部101,201にセキュリティを高める機能があるため、図7と同様のデータ送受信方式が選択されることになる。
【0039】
続いて、別の例で送受信方式導出部205の動作を説明する。図8は、図3、図4、図5から一つずつ抽出したものであり、携帯端末10−Bを持った利用者がサーバ20−Bを備えた店舗に来店し、サーバ20−BがサービスAを提供するケースの状況を表している。先の例と同様、また、サーバ20のバックエンドにはサーバ30があり、協調して動作可能となっている。このケースでは、送受信方式導出部205は以下のようにして送受信方式を導出する。まず、サービスAのデータ1は、指向性=要と指定されているため、通信手段の組合せは、携帯端末10−Bとサーバ20−Bの間で通信手段3を用いる方法のみと
なる。このため、データ1の通信には通信手段3を用いることになる。
【0040】
一方、サービスAのデータ2は、指向性=不要と指定されているため、指向性=あり、なしいずれの通信手段も選択可能であり、通信手段3と通信手段2が候補となるが、データ2はデータサイズ=10Kバイトであるため、データ容量の観点からすると通信手段2が選択される。このように、一つの携帯端末に対するサービスにおいて2つのサーバがサービスを提供することになる場合、データ2を2つのサーバ間で同期させる必要がある。
【0041】
以上の結果、図8の例では図9に示すような方式でデータの送受信が行われる。即ち、サーバ20−Bから携帯端末10−Bに対するサービスAの提供に際して、データ1を送信する場合は通信手段3が用いられ、データ2を送信する場合はデータ2を同期させた上で通信手段2が用いられることになる。
【実施例】
【0042】
続いて、本発明の具体的な効用を説明すべく、本発明を映画館の入場の際に用いる電子チケットシステムに適用した実施例を説明する。映画チケットは、通常、映画館に入る権利そのものを表すチケットIDと、チケットIDに付帯する情報であって映画館の場所情報、席の情報、上映プログラム情報などを表す券面データ等から構成される。図10は、本実施例におけるサービス要件である、それぞれのデータの持つ性質をわかり易く表現したものである(実際には、「セキュリティ=強い」は、セキュリティフラグ=1の如く、送受信方式導出部205での比較対照に適するよう符号化されていることになる)。
【0043】
この電子チケットサービスを、図11に示したような具体の通信手段を有する機器で実現することを考える。上述した実施の形態のサーバ20、30に相当するサーバ機器として映画館に設置されてチケットの発行や認証を行う「チケット端末」と、インターネット上に設置されてチケット端末の補助的な役割を果たす「チケットWebサーバ」の二種類が用意される。また、上述した実施の形態の携帯端末10に相当する携帯端末として赤外線通信機能付きの携帯電話、非接触IC機能付きの携帯電話の2つが利用可能となっている。
【0044】
上記したケースにおいて、赤外線通信機能付き携帯電話を用いた場合の動作について、図1を用いて説明する。まず、赤外線通信機能付き携帯電話(図1の10)の通信種別情報通知部100が、チケット端末(図1の20)の通信種別情報保持部200に、赤外線通信を用いて携帯電話が備える通信手段である赤外線通信と公衆網通信の性質に関する情報を送信する。
【0045】
続いて、チケット端末(図1の20)の送受信方式導出部205は、赤外線通信機能付き携帯電話(図1の10)とチケット端末(図1の20)及びチケットWebサーバ(図1の30)の通信種別情報をセットするとともに、サービス要件管理部206より、図10に示された内容(本サービスで転送すべきデータの種類がチケットIDと券面データの二種類であること、及び、各データを送受信する際の条件や属性優先度)を取得する。続いて、チケット端末(図1の20)の送受信方式導出部205は、チケットIDと券面データの両方を赤外線通信で送受信するという方式を導出し、赤外線通信機能付き携帯電話(図1の10)の送受信方式制御部101とチケット端末(図1の20)の送受信方式制御部201にそれぞれ伝える。そして、赤外線通信機能付き携帯電話(図1の10)の送受信方式制御部101とチケット端末(図1の20)の送受信方式制御部201は、それぞれの通信部103と通信部203を用いて赤外線通信でチケットIDと券面データを送受信する。
【0046】
続いて、非接触IC機能付き携帯電話を用いた場合の動作について図1を用いて説明する。まず、非接触IC機能付き携帯電話(図1の10)の通信種別情報通知部100が、チケット端末(図1の20)の通信種別情報保持部200に、非接触IC通信を用いて携帯電話が備える通信手段である非接触IC通信と公衆網通信の性質に関する情報を送信する。
【0047】
続いて、チケット端末(図1の20)の送受信方式導出部205は、非接触IC機能付き携帯電話(図1の10)とチケット端末(図1の20)及びチケットWebサーバ(図1の30)の通信種別情報をセットするとともに、サービス要件管理部206より、図10に示された内容(本サービスで転送すべきデータの種類がチケットIDと券面データの二種類であること、及び、各データを送受信する際の条件や属性優先度)を取得する。続いて、チケット端末(図1の20)の送受信方式導出部205は、チケットIDを非接触IC通信で送受信し、券面データは公衆網通信で送受信するという方式を導出し、非接触IC機能付き携帯電話(図1の10)の送受信方式制御部101、チケット端末(図1の20)の送受信方式制御部201、チケットWebサーバ(図1の30)の送受信方式制御部301にそれぞれ伝える。また、チケット端末(図1の20)は、データ同期部204を用いて、チケットWebサーバ(図1の30)のデータ同期部304にチケット券面データを送信する。
【0048】
そして、非接触IC機能付き携帯電話(図1の10)の送受信方式制御部101とチケット端末(図1の20)の送受信方式制御部201は、それぞれの通信部103、通信部203を用いて非接触IC通信でチケットIDを送受信する。更に、非接触IC機能付き携帯電話(図1の10)の送受信方式制御部101とチケットWebサーバ(図1の30)の送受信方式制御部301は通信部103と通信部303を用いて公衆網通信でチケット券面データを送受信する。
【0049】
以上を整理すると、図12に示すように、赤外線通信機能付き携帯電話ではチケットID、券面データの両方が赤外線通信で送信される(図12上段)。これに対し、非接触IC機能付きの携帯電話では、チケットIDは非接触IC通信で送信され、券面データは非接触IC通信の容量制限をオーバーするために、公衆網通信を介して行われる(図12下段)。
【0050】
以上の例からも明らかなとおり、多機能化が目覚ましい携帯端末、店舗コンピュータ、とWebサーバ等を用いて電子チケットや電子クーポンを実現するためのプログラムといった用途に好ましく適用できる。
【0051】
また、本発明によれば、それぞれが備える複数の通信手段を最大限に活用することが可能となり、サービスのレベルを向上することもできる。また、各用途に応じた暗号方式を導入することも可能であるし、これまで存在しなかった新たな通信手段を備える端末が登場した場合も通信種別情報に記述するためのコード等を用意すれば対応可能である。これらによって、アプリケーションプログラムの開発・修正コストを著しく軽減することが可能となっている。
【0052】
また、上記したサーバと同等の機能を備えた携帯端末を用いれば、それぞれ複数の通信手段を有する携帯端末同士を接続しデータの送受信を行う構成に変形することができる。
【0053】
また、上記した実施の形態、実施例で例示した通信機能とその性質を表すための項目、及び、サービス要件の項目、優先基準(属性優先度)は、あくまで、その一例を示したに過ぎず、いずれかを省いてもよいし、また、その他の項目を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を説明するための図である。
【図2】本発明の一実施の形態の構成の動作を説明するための図である。
【図3】携帯端末側の通信手段とその性質に関する情報(通信種別情報)の例を示した図である。
【図4】サーバ側の通信手段とその性質に関する情報(通信種別情報)の例を示した図である。
【図5】サービス要件(要件情報)として定義される情報の例を示した図である。
【図6】送受信方式導出部の動作を説明するための図である。
【図7】送受信方式導出部の動作を説明するための別図である。
【図8】送受信方式導出部の動作を説明するための図である。
【図9】送受信方式導出部の動作を説明するための別図である。
【図10】本発明の実施例におけるサービス要件(要件情報)の具体例を示した図である。
【図11】本発明の一実施例における送受信方式導出部の動作を説明するための図である。
【図12】本発明の一実施例における送受信方式導出部の動作を説明するための別図である。
【符号の説明】
【0055】
10 携帯端末
20、30 サーバ
100 通信種別情報通知部
101、201、301 送受信方式制御部
102、202、302 データ格納部
103、203、303 通信部
200 通信種別情報保持部
204、304 データ同期部
205 送受信方式導出部
206 サービス要件管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データの通信を行う通信部と、送受信するデータの格納及び取り出しを行うデータ格納部と、を備える携帯端末において、
他の装置との通信に先立って、自機に備えられた通信手段とその性質に関する情報を所定の送受信方式導出装置に対して通知する通信種別情報通知部と、
前記送受信方式導出装置からの応答に基づいて前記自機に備えられた通信手段を選択し、前記データ格納部及び通信部を制御する送受信方式制御部と、を備えること、
を特徴とする携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末において、
前記通信種別情報通知部が通知する通信手段の性質に関する情報には、少なくともデータ転送速度、セキュリティ強度、通信コストに関する情報のいずれか一が含まれていること、
を特徴とする携帯端末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯端末において、
前記通信種別情報通知部が通知する通信手段の性質に関する情報には、
指向性の有無に関する情報が含まれていること、
を特徴とする携帯端末。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一に記載の携帯端末において、
前記通信種別情報通知部が通知する通信手段の性質に関する情報には、
一回のデータ転送で転送可能なデータサイズに関する情報が含まれていること、
を特徴とする携帯端末。
【請求項5】
データの通信を行う通信部と、送受信するデータの格納及び取り出しを行うデータ格納部を備え、請求項1乃至4いずれか一に記載の他の携帯端末と通信可能な携帯端末であって、
前記他の携帯端末と通信サービスを行う際に、望まれる要件を保持するサービス要件管理部と、
自機に備えられた通信手段とその性質に関する情報を保持する通信種別情報保持部と、
前記サービス要件管理部に管理される内容と、前記他の携帯端末の通信種別情報通知部から受信した情報と、前記通信種別情報保持部に保持された情報とから、前記他の携帯端末と通信する際に用いる通信手段の組み合わせを導出する送受信方式導出部と、を備えて、
送受信方式導出装置として動作し、他の携帯端末と前記導出された通信手段を用いてデータを送受信すること、
を特徴とする携帯端末。
【請求項6】
データの通信を行う通信部と、送受信するデータの格納及び取り出しを行うデータ格納部を備え、請求項1乃至4いずれか一に記載の携帯端末と通信可能なサーバであって、
提供するサービス毎に定めた要件情報を保持するサービス要件管理部と、
自機に備えられた通信手段とその性質に関する情報を保持する通信種別情報保持部と、
前記サービス要件管理部に管理される内容と、前記携帯端末の通信種別情報通知部から受信した情報と、前記通信種別情報保持部に保持された情報とから、前記携帯端末への各サービスを提供する際に前記携帯端末とサーバとで選択されるべき通信手段の組み合わせを導出する送受信方式導出部と、を備えて前記携帯端末に対して送受信方式導出装置として動作すること、
を特徴とするサーバ。
【請求項7】
請求項6に記載のサーバにおいて、
前記要件情報には、各サービスが送受信するデータの種類とデータサイズに関する情報が含まれ、前記送受信方式導出部は、各サービスが送受信するデータの種類毎に、前記データサイズを上回る転送容量を有する通信手段の組み合わせを導出すること、
を特徴とするサーバ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のサーバにおいて、
前記要件情報には、各サービスが送受信するデータの種類とセキュリティ強度に関する情報が含まれ、前記送受信方式導出部は、各サービスが送受信するデータの種類毎に、前記セキュリティ強度を満たす通信手段の組み合わせを導出すること、
を特徴とするサーバ。
【請求項9】
請求項6乃至8いずれか一に記載のサーバにおいて、
前記要件情報には、各サービスが送受信するデータの種類と指向性の要否に関する情報が含まれ、前記送受信方式導出部は、各サービスが送受信するデータの種類毎に、送受信されるデータが指向性が求められているか否かによって通信手段の組み合わせを導出すること、
を特徴とするサーバ。
【請求項10】
請求項6乃至9いずれか一に記載のサーバにおいて、
前記サービス要件管理部は、更に、複数の通信手段が競合する場合の優先基準を保持し、
前記送受信方式導出部は、前記優先基準に従って競合する通信手段の中から一の通信手段を選択し、通信手段の組み合わせを導出すること、
を特徴とするサーバ。
【請求項11】
請求項6乃至10いずれか一に記載のサーバにおいて、
更に、前記送受信方式導出部からの指示に基づいて前記自機に備えられた通信手段を選択し、前記データ格納部及び通信部を制御する送受信方式制御部と、を備えること、
を特徴とするサーバ。
【請求項12】
請求項6乃至11いずれか一に記載のサーバにおいて、
前記送受信方式導出部は、
転送するデータの種類毎に、連繋したサービスを行うための対象サーバと、前記各サーバと携帯端末間で選択されるべき通信手段の組み合わせと、を導出すること、
を特徴とするサーバ。
【請求項13】
請求項12に記載のサーバにおいて、更に、
特定の携帯端末に対するサービスに用いるデータを、自機と連繋して動作すべき他のサーバに対して送信するデータ同期部を備え、
前記所定のサーバと前記データを共有して、携帯端末に対するサービスを実行可能としたこと、
を特徴とするサーバ。
【請求項14】
データの通信を行う通信部と、送受信するデータの格納及び取り出しを行うデータ格納部を備え、請求項1乃至4いずれか一に記載の携帯端末及び請求項13に記載の第1のサーバと通信可能な第2のサーバであって、
前記第1のサーバから特定の携帯端末との通信に用いるデータを受信するデータ同期部と、
前記第1のサーバの送受信方式導出部から与えられた指示に基づいて前記自機に備えられた通信手段を選択し、前記データ格納部及び通信部を制御する送受信方式制御部と、を備えること、
を特徴とするサーバ。
【請求項15】
それぞれ2以上の通信手段を備えた端末間のデータ送受信方法であって、
第1の端末が、第2の端末との通信に先立って、自機に備えられた通信手段とその性質に関する情報を第2の端末に対して通知するステップと、
前記第1の端末から通知を受けた第2の端末が、前記第1の端末から受信した情報と、第2の端末に備えられた通信手段とその性質に関する情報とを照合するとともに、所定の接続条件に従って、前記第1の端末と第2の端末間でデータ送受信を行う際の通信手段を導出するステップと、
前記導出された通信手段を用いて、前記第1の端末と第2の端末間でデータの送受信を行うステップと、を含むこと、
を特徴とするデータ送受信方法。
【請求項16】
請求項15に記載のデータ送受信方法において、更に、
前記第2の端末が、前記第1の端末に対するサービスに用いるデータを、連繋して動作すべき第3の端末に対して送信するステップと、
前記第3の端末が、前記データを用いて前記第1の端末との通信を実行するステップと、を含むこと、
を特徴とするデータ送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−148697(P2006−148697A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−337857(P2004−337857)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】