説明

ハニカム構造体及び排ガス浄化装置

【課題】本発明は、電極が断線しにくく、中心部と外周部の発熱量を個別に調整することが可能なハニカム構造体及び該ハニカム構造体を有する排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ハニカム構造体10は、複数の貫通孔が長手方向に並設されていると共に、導電性セラミックスを含むハニカムユニット11が接着層12を介して4個接着されている、円柱状のハニカム構造体10であって、ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面が扇形状であり、ハニカムユニット11の接着層12と対向しない外周面には、一対の電極13が形成されており、電極13は、ハニカムユニット11と接着層12の間に延設されている、及び、ハニカムユニット11の外周面と接着層12の間には、一対の電極13が形成されており、一対の電極13は、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の扇形状の中心を含む領域に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及び排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガスには、炭化水素化合物、一酸化炭素、窒素酸化物等の物質が含まれており、このような排ガスを浄化するために、コージェライトから構成されているハニカム構造体が用いられている。このようなハニカム構造体は、複数の貫通孔を隔てる隔壁の表面にアルミナからなる触媒担持層が形成されており、触媒担持層には、白金、ロジウム、パラジウム等の触媒が担持されている。
【0003】
しかしながら、排ガスの温度が低下すると、触媒担持層に担持されている触媒の機能(活性)が十分に発揮されなくなり、排ガス浄化能が低下するという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、ハニカムユニットの基材に炭化珪素質材等の発熱材を用いて、単一のハニカムユニットからなる一体構造とした触媒体を排気通路に接続された触媒容器内に絶縁体を介して内装し、前記触媒体の外周部に端子が接合され、前記触媒体が所定温度境遇内の条件のときのみ電源より端子を経て通電して基材を発熱させ、触媒体を加熱するようにした内燃機関における触媒式排気ガス浄化装置が開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、内燃機関の排気ガスを浄化するための多孔質セラミックス製のフィルタを複数個組み合わせてなり、両端部に一対の自己発熱用電極を設けた排気ガスフィルタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭49−124412号公報
【特許文献2】特開平7−80226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、引用文献1に記載されている単一のハニカムユニットからなる一体構造とした従来の触媒体の両端部に一対の自己発熱用電極を形成すると、触媒体の中心部の温度が低下し、排ガス浄化能が低下しやすいという問題がある。また、触媒体の外周部の断熱性能が不十分な場合には、触媒体の外周部の温度が低下し、クラックが発生しやすいという問題がある。
【0008】
引用文献2の図6に記載されている従来の排気ガスフィルタは、断面が略正方形状のフィルタと、断面が略二等辺三角形状のフィルタを組み合わせてなり、各フィルタの両端部に一対の自己発熱用電極を設けられているため、排気ガスフィルタの外周部に保持シール材を配置した状態で、金属管にキャニングすると、フィルタの角部の面圧が大きくなって、自己発熱用電極が断線しやすくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、電極が断線しにくく、中心部と外周部の発熱量を個別に調整することが可能なハニカム構造体及び該ハニカム構造体を有する排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のハニカム構造体は、複数の貫通孔が長手方向に並設されていると共に、導電性セラミックスを含むハニカムユニットが接着層を介して複数個接着されている、円柱状又は楕円柱状のハニカム構造体であって、前記ハニカムユニットは、前記長手方向に垂直な断面が扇形状又は楕円扇形状であり、前記ハニカムユニットの前記接着層と対向しない外周面には、一対の電極が形成されており、該一対の電極は、前記ハニカムユニットと前記接着層の間に延設されている、及び/又は、前記ハニカムユニットの外周面と前記接着層の間には、一対の電極が形成されており、該一対の電極は、前記ハニカムユニットの前記長手方向に垂直な断面の扇形状又は楕円扇形状の中心を含む領域に形成されている。
【0011】
前記一対の電極は、前記ハニカムユニットの外周の全域に形成されていることが望ましい。
【0012】
前記一対の電極は、前記ハニカムユニットの前記長手方向の両端部の外周面に形成されていることが望ましい。
【0013】
前記扇形状又は楕円扇形状の中心に近い程、前記一対の電極間の距離が小さいことが望ましい。
【0014】
前記扇形状又は楕円扇形状の中心角が90°以下であることが望ましい。
【0015】
前記電極は、幅が3mm以上30mm以下の帯状電極であることが望ましく、前記帯状電極間の抵抗が略同一となるように、前記帯状電極間の距離が調整されていることが望ましい。
【0016】
前記電極は、溶射又はスパッタにより形成されていることが望ましい。
【0017】
前記複数の貫通孔を隔てる隔壁に触媒が担持されていることが望ましく、前記触媒は、白金、ロジウム及びパラジウムからなる群より選択される一種以上であることが望ましい。
【0018】
前記導電性セラミックスは、炭化ケイ素を含むことが望ましい。
【0019】
本発明の排ガス浄化装置は、本発明のハニカム構造体を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電極が断線しにくく、中心部と外周部の発熱量を個別に調整することが可能なハニカム構造体及び該ハニカム構造体を有する排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のハニカム構造体の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のハニカムユニットを示す斜視図である。
【図3】図1のハニカムユニットの接着層が形成されている面を示す図である。
【図4】図3のハニカムユニットの変形例を示す図である。
【図5】図3のハニカムユニットの変形例を示す図である。
【図6】図1のハニカム構造体の変形例を示す斜視図である。
【図7】図1のハニカム構造体の変形例を示す斜視図である。
【図8】本発明の排ガス浄化装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0023】
図1に、本発明のハニカム構造体の一例を示す。ハニカム構造体10は、複数の四角柱状の貫通孔11aが隔壁11bを隔てて長手方向に並設されているハニカムユニット11(図2参照)が接着層12を介して4個接着されており、円柱状である。また、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面は、中心角が90°の扇形状であり、ハニカムユニット11は、導電性セラミックスを含む。さらに、各ハニカムユニット11の長手方向の両端部の外周の全域に一対の帯状電極13が形成されている。
【0024】
なお、本願明細書及び特許請求の範囲において、ハニカムユニット11の端部は、ハニカムユニット11の端部の近傍を含むこととする。また、ハニカムユニット11の端部の近傍は、ハニカムユニット11の端面からの距離が30mm以下であることを意味する。さらに、外周面は、端面を含まないこととする。
【0025】
一対の帯状電極13は、各ハニカムユニット11の接着層12と対向しない外周面に、形成されていると共に、ハニカムユニット11と接着層12の間に延設されていることに加え、ハニカムユニット11の外周面と接着層12の間に形成されていると共に、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の扇形状の中心を含む領域に形成されている。このため、例えば、4個の一対の帯状電極13と電気的に接続されている一対の円環状の導電部材を経て、自動車用バッテリーから帯状電極13間に電圧を印加すると、ハニカムユニット11の中心部と外周部に流れる電流の電流密度を均一にすることができる。その結果、ハニカムユニット11の中心部と外周部の発熱量が均一となり、ハニカムユニット11の中心部と外周部の温度を均一にすることができる。また、4個のハニカムユニット11に同一の電圧が印加されるため、ハニカム構造体10の温度を均一にすることができる。
【0026】
なお、ハニカムユニット11の中心部と外周部は、それぞれハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の扇形状の中心と外周までの距離を二等分した場合の中心側及び外周側の領域を意味する。
【0027】
また、ハニカム構造体10が円柱状であるため、ハニカム構造体10の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属管30にキャニングしても、各ハニカムユニット11の外周部の面圧が均一になるため、帯状電極13が断線しにくい(図8参照)。
【0028】
導電性セラミックスとしては、ハニカムユニット11に所定の電流を流した時に十分に発熱することが可能であれば、特に限定されないが、窒化アルミニウム、アルミニウム等でドープされている炭化ケイ素等が挙げられる。
【0029】
ハニカムユニット11は、帯状電極13間の抵抗が1〜1×10Ωであることが好ましい。ハニカムユニット11の帯状電極13間の抵抗が1Ω未満であると、ジュールの法則により、ハニカムユニット11に通電しても十分に発熱しなくなる。一方、ハニカムユニット11の帯状電極13間の抵抗が1×10Ωを超えると、例えば、ハイブリッド車に搭載されているような高容量バッテリーを用いて帯状電極13間に電圧を印加しても、ハニカムユニット11に流れる電流が小さくなり、ハニカムユニット11を十分に発熱させることが困難になる。
【0030】
なお、4個のハニカムユニット11の抵抗にバラツキがある場合は、帯状電極13間の抵抗が略同一となるように、帯状電極13間の距離が調整されていることが好ましい。これにより、4個のハニカムユニット11に通電した場合に、4個のハニカムユニット11の発熱量を略同一とすることができる。
【0031】
ハニカムユニット11は、気孔率が25〜50%であることが好ましい。ハニカムユニット11の気孔率が25%未満であると、ハニカムユニット11の熱容量が増大して発熱しにくくなる。一方、ハニカムユニット11の気孔率が50%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分になる。
【0032】
なお、ハニカムユニット11の気孔率は、水銀圧入法を用いて測定することができる。
【0033】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の断面積が5〜50cmであることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の断面積が5cm未満であると、ハニカム構造体10の圧力損失が増大する。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の断面積が50cmを超えると、ハニカムユニット11に発生する熱応力に対する強度が不十分になる。
【0034】
ハニカムユニット11は、長手方向に垂直な断面の開口率が50〜85%であることが好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が50%未満であると、ハニカムユニット11の熱容量が増大して発熱しにくくなる。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の開口率が85%を超えると、ハニカムユニット11の強度が不十分となる。
【0035】
ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度は、15.5〜186個/cmであることが好ましく、31〜155個/cmがより好ましく、46.5〜124個/cmがさらに好ましい。ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が15.5個/cm未満であると、ハニカムユニット11の隔壁11bに触媒が担持されている場合に、排ガスと触媒が接触しにくくなって、排ガスの浄化率が低下する。一方、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の貫通孔11aの密度が186個/cmを超えると、ハニカム構造体10の圧力損失が増大する。
【0036】
ハニカムユニット11の隔壁11bの厚さは、0.05〜0.30mmであることが好ましい。隔壁11bの厚さが0.05mm未満であると、ハニカムユニット11の強度が低下する。一方、隔壁11bの厚さが0.30mmを超えると、ハニカムユニット11の熱容量が増大して発熱しにくくなる。
【0037】
ハニカムユニット11の隔壁11bに触媒が担持されていてもよい。
【0038】
隔壁11bに担持されている触媒としては、排ガスを浄化することが可能であれば、特に限定されないが、白金、ロジウム、パラジウム等が挙げられる。
【0039】
また、隔壁11bの表面にγ−アルミナからなる触媒担持層が形成されており、触媒担持層に触媒が担持されていることが好ましい。
【0040】
窒化アルミニウムでドープされた炭化ケイ素から構成されるハニカムユニット11を作製する方法としては、特に限定されないが、炭化ケイ素及び窒化アルミニウムを含む原料ペーストを用いて成形した成形体を焼成する方法等が挙げられる。
【0041】
原料ペースト中の窒化アルミニウムの含有量は、0.1〜30質量%であることが好ましい。
【0042】
原料ペーストは、必要に応じて、有機バインダ、分散媒、成形助剤等をさらに含んでもよい。
【0043】
原料ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0044】
原料ペースト中の有機バインダの含有量は、炭化ケイ素に対して、1〜10質量%であることが好ましい。
【0045】
原料ペーストに含まれる分散媒としては、特に限定されないが、水、メタノール等の水性溶媒;ベンゼン等の有機溶媒が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0046】
原料ペーストに含まれる成形助剤としては、特に限定されないが、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等が挙げられる。
【0047】
原料ペーストを調製する方法としては、特に限定されないが、ミキサー及びアトライターを用いて混合する方法、ニーダーを用いて混練する方法等が挙げられる。
【0048】
原料ペーストを用いて成形する方法としては、特に限定されないが、押出成形等が挙げられる。
【0049】
成形体を乾燥する際に用いる乾燥機としては、特に限定されないが、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機等が挙げられる。
【0050】
また、乾燥された成形体は、例えば、400℃で2時間脱脂することが好ましい。
【0051】
さらに、脱脂された成形体は、例えば、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気において、2200℃で3時間焼成することが好ましい。
【0052】
なお、焼成時に窒素を導入して、炭化ケイ素を窒素でドープしてもよい。
【0053】
ハニカムユニット11の代わりに、基材(骨材)に存在する気孔に導電材料を含むハニカムユニットを用いてもよい。
【0054】
ハニカムユニットの基材を構成する材料としては、特に限定されないが、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、コージェライト、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ゼオライト等が挙げられる。
【0055】
炭化ケイ素から構成されるハニカムユニットの基材を作製する方法としては、特に限定されないが、前述のハニカムユニット11を作製する方法において、窒化アルミニウムを含まない原料ペーストを用いる方法等が挙げられる。
【0056】
ハニカムユニットの基材に存在する気孔に含まれる導電材料としては、通電した時に十分に発熱することが可能であれば、特に限定されないが、シリコン;ニッケルシリサイド、クロムシリサイド、鉄シリサイド等の珪化物等が挙げられる。
【0057】
導電材料として、シリコンを含む導電層を形成する方法としては、特に限定されないが、溶融シリコン又はシリコン若しくはシリコンの前駆体を含むスラリーをハニカムユニットの基材の表面に含浸させる方法等が挙げられる。
【0058】
なお、ハニカム構造体の中心部を発熱しやすくするためには、ハニカムユニット長手方向に垂直な断面の扇形状の中心角は、90°以下であれば、特に限定されず、75°以下が好ましく、60°以下がさらに好ましい。
【0059】
また、四角柱状の貫通孔11aの代わりに、三角柱状、六角柱状等の貫通孔が並設されていてもよい。
【0060】
ハニカムユニット11を接着する接着層12は、厚さが0.5〜2mmであることが好ましい。接着層12の厚さが0.5mm未満であると、ハニカムユニット11の接着強度が不十分になる。一方、接着層12の厚さが2mmを超えると、ハニカム構造体10の圧力損失が増大する。
【0061】
ハニカムユニット11を接着させる方法としては、特に限定されないが、接着層用ペーストを塗布した後、乾燥固化する方法が挙げられる。
【0062】
接着層用ペーストとしては、特に限定されないが、無機バインダ及び無機粒子の混合物、無機バインダ及び無機繊維の混合物、無機バインダ、無機粒子及び無機繊維の混合物等が挙げられる。
【0063】
接着層用ペーストに含まれる無機繊維としては、特に限定されないが、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、シリカアルミナ、ガラス、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、シリカアルミナが好ましい。
【0064】
接着層用ペーストに含まれる無機バインダとしては、特に限定されないが、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラスの無機系ゾル、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の粘土鉱物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾルが好ましい。
【0065】
接着層用ペーストに含まれる無機粒子としては、特に限定されないが、炭化ケイ素、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、ムライト等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、炭化ケイ素が好ましい。
【0066】
また、接着層用ペーストは、有機バインダを含有してもよい。
【0067】
接着層用ペーストに含まれる有機バインダとしては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0068】
なお、円柱状のハニカム構造体10を作製する代わりに、楕円柱状のハニカム構造体を作製してもよい。このとき、楕円柱状のハニカム構造体を構成するハニカムユニットは、長手方向に垂直な断面が楕円扇形状である。また、例えば、一対の帯状電極と電気的に接続されている一対の楕円環状の導電部材を経て、自動車用バッテリーから帯状電極間に電圧を印加することができる。
【0069】
なお、本願明細書及び特許請求の範囲において、楕円及び楕円扇形における楕円は、長さが同一の2本の線分で2個の半円を接続したトラック形状を含むこととする。
【0070】
帯状電極13は、金属から構成されることが好ましい。
【0071】
帯状電極13の幅は、3〜30mmであることが好ましい。帯状電極13の幅が3mm未満であると、帯状電極13間に電圧を印加すると、帯状電極13が破損しやすくなる。一方、帯状電極13の幅が30mmを超えると、帯状電極13間に電圧を印加した時に発熱するハニカムユニット11の体積が小さくなり、ハニカム構造体10が排ガスを十分に浄化できなくなる。
【0072】
帯状電極13を形成する方法としては、特に限定されないが、溶射、スパッタ等が挙げられる。
【0073】
なお、ハニカムユニット11と接着層12の間に形成されている帯状電極13は、ハニカム構造体10の径方向に対して、一対の帯状電極13間の距離が一定であるように形成されているが(図3参照)、ハニカム構造体10の中心に近い程、一対の帯状電極13間の距離が小さくなるように形成されていてもよい(図4及び図5参照)。これにより、ハニカム構造体10の中心部がさらに発熱しやすくなる。なお、図4及び図5は、それぞれハニカム構造体10の中心に近い程、帯状電極13の幅が大きい場合及びハニカム構造体10の径方向に対して、帯状電極13の幅が一定である場合である。
【0074】
また、帯状電極13の代わりに、波状電極、ジグザグ電極が形成されていてもよい。
【0075】
図6に、ハニカム構造体10の変形例を示す。ハニカム構造体10'は、帯状電極13の代わりに、ハニカムユニット11の接着層12と対向しない外周面からハニカムユニット11と接着層12の間に延設されている帯状電極13'が形成されている以外は、ハニカム構造体10と同一の構成である。
【0076】
一対の帯状電極13'は、各ハニカムユニット11の接着層12と対向しない外周面に、形成されていると共に、ハニカムユニット11と接着層12の間に延設されている。このため、例えば、4個の一対の帯状電極13'と電気的に接続されている一対の円環状の導電部材を経て、自動車用バッテリーから帯状電極13'間に電圧を印加すると、ハニカムユニット11の外周部に流れる電流の電流密度を中心部に流れる電流の電流密度よりも大きくすることができる。その結果、ハニカムユニット11の外周部の発熱量を中心部の発熱量よりも大きくすることができ、ハニカムユニット11の外周部の温度を中心部の温度よりも高くすることができる。このため、ハニカム構造体10'の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属管30にキャニングして排ガス浄化装置として用いる場合に、保持シール材20の断熱性能が不十分であっても、ハニカム構造体10'の外周部の温度の低下を抑制することができる。また、4個のハニカムユニット11に同一の電圧が印加されるため、ハニカム構造体10'を排ガス浄化装置として用いる場合に、保持シール材20の断熱性能が不十分であっても、ハニカム構造体10'の外周部の温度の低下を抑制することができることから、ハニカム構造体10'の温度を均一にすることができ、クラックの発生を抑制することができる。
【0077】
なお、帯状電極13'は、形状を除いて、帯状電極13と同一の構成である。
【0078】
図7に、ハニカム構造体10の変形例を示す。ハニカム構造体10"は、帯状電極13の代わりに、ハニカムユニット11の外周面と接着層12の間のハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の扇形状の中心を含む領域に形成されている帯状電極13"が形成されている以外は、ハニカム構造体10と同一の構成である。
【0079】
一対の帯状電極13"は、ハニカムユニット11の外周面と接着層12の間に形成されていると共に、ハニカムユニット11の長手方向に垂直な断面の扇形状の中心を含む領域に形成されている。このため、例えば、4個の一対の帯状電極13"と電気的に接続されている一対の円環状の導電部材を経て、自動車用バッテリーから帯状電極13"間に電圧を印加すると、ハニカムユニット11の中心部に流れる電流の電流密度を外周部に流れる電流の電流密度よりも大きくすることができる。その結果、ハニカムユニット11の中心部の発熱量を外周部の発熱量よりも大きくすることができ、ハニカムユニット11の中心部の温度を外周部の温度よりも高くすることができる。ハニカム構造体10"の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属管30にキャニングして排ガス浄化装置として用いる場合に、慣性の法則に従い、ハニカム構造体10"の中心部に近い程、排ガスの流速が大きくなるので、温度が低下しやすいが、ハニカム構造体10"の中心部の温度の低下を抑制することができる。また、4個のハニカムユニット11に同一の電圧が印加されるため、ハニカム構造体10"を排ガス浄化装置として用いる場合に、ハニカム構造体10"の中心部の温度の低下を抑制することができることから、ハニカム構造体10"の温度を均一にすることができ、排ガス浄化能の低下を抑制することができる。
【0080】
なお、帯状電極13"は、形状を除いて、帯状電極13と同一の構成である。
【0081】
また、帯状電極13"は、各ハニカムユニット11の接着層12と対向しない外周面に延設されていてもよい。これにより、円環状の導電部材と電気的に接続されやすくなる。
【0082】
図8に、本発明の排ガス浄化装置の一例を示す。排ガス浄化装置100は、前述のハニカム構造体10の外周部に保持シール材20を配置した状態で、金属管30にキャニングすることにより得られる。また、ハニカム構造体10の帯状電極13には、自動車用のバッテリー(不図示)が接続されている。このため、自動車用のバッテリーを用いて、4個の帯状電極13間に電圧を印加すると、ハニカム構造体10を発熱させることができる。
【0083】
以上のように、本発明のハニカム構造体は、円柱状又は楕円柱状であるため、電極が断線しにくい。また、本発明のハニカム構造体は、ハニカムユニットは、長手方向に垂直な断面が扇形状又は楕円扇形状であり、一対の帯状電極が、ハニカムユニットの接着層と対向しない外周面に、形成されていると共に、ハニカムユニットと接着層の間に延設されている、及び/又は、ハニカムユニットの外周面と接着層の間に形成されていると共に、ハニカムユニットの長手方向に垂直な断面の扇形状の中心を含む領域に形成されているため、中心部と外周部の発熱量を個別に調整することができる。
【符号の説明】
【0084】
10、10'、10" ハニカム構造体
11 ハニカムユニット
11a 貫通孔
11b 隔壁
12 接着層
13、13'、13" 帯状電極
20 保持シール材
30 金属管
100 排ガス浄化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が長手方向に並設されていると共に、導電性セラミックスを含むハニカムユニットが接着層を介して複数個接着されている、円柱状又は楕円柱状のハニカム構造体であって、
前記ハニカムユニットは、前記長手方向に垂直な断面が扇形状又は楕円扇形状であり、
前記ハニカムユニットの前記接着層と対向しない外周面には、一対の電極が形成されており、該一対の電極は、前記ハニカムユニットと前記接着層の間に延設されている、及び/又は、前記ハニカムユニットの外周面と前記接着層の間には、一対の電極が形成されており、該一対の電極は、前記ハニカムユニットの前記長手方向に垂直な断面の扇形状又は楕円扇形状の中心を含む領域に形成されていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記一対の電極は、前記ハニカムユニットの外周の全域に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記一対の電極は、前記ハニカムユニットの前記長手方向の両端部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記扇形状又は楕円扇形状の中心に近い程、前記一対の電極間の距離が小さいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記扇形状又は楕円扇形状の中心角が90°以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記電極は、幅が3mm以上30mm以下の帯状電極であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記帯状電極間の抵抗が略同一となるように、前記帯状電極間の距離が調整されていることを特徴とする請求項6に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記電極は、溶射又はスパッタにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記複数の貫通孔を隔てる隔壁に触媒が担持されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記触媒は、白金、ロジウム及びパラジウムからなる群より選択される一種以上であることを特徴とする請求項9に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記導電性セラミックスは、炭化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のハニカム構造体を有することを特徴とする排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−230116(P2011−230116A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57049(P2011−57049)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】