説明

バイポーラ電池の製造装置

【課題】気泡の混入を抑制でき、電池性能の優れたバイポーラ電池を製造できる製造装置を提供する。
【解決手段】バイポーラ電池10の製造装置200は、集電体111の一方の面に正極113が形成され他方の面に負極112が形成されたバイポーラ電極110に対し、電解質が浸透するよう通気性を有したセパレータ121を含む電解質層120(121,124)を設け、これらを複数積層したバイポーラ電池の製造装置であって、前記バイポーラ電極に対して電解質層を設ける際、前記電解質層内の気泡Nをセパレータを通して排出する気泡排出機構(セパレータ配置装置240)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラ電池の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイポーラ電池は、集電体の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極に電解質層を設け、これらを複数積層した構造を有しており、例えば特許文献1には、前述のバイポーラ電極を電解質が含浸されたセパレータを介して複数積層した構造が開示されている。
【0003】
このバイポーラ電極を積層する際には、正極と負極を有する集電体、電解質層(電解質が浸透し且つ正極と負極を区分けするセパレータの層、及び正極または負極とセパレータ間の電解質の層)を設けるのであるが、電解質を設ける際に、正極または負極とセパレータの間の電解質に気泡が混入して残留することがある。
【0004】
これは、正極または負極に付与された電解質の層にセパレータを重ねる際に、セパレータに皺が生じて電解質の層に微少隙間が生じたり、或いは重ね動作によっても電解質の層に気泡を混入させてしまうことがあるからである。
【0005】
このように積層した部位に気泡が残ると、その部位ではイオン透過および電子の移動ができないデッドスペースが発生し、出力低下の要因にもなるので、出力密度を向上させる際の課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−204136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、気泡の混入を抑制することにより出力密度を向上させ、電池性能の優れたバイポーラ電池を製造できる製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明に係るバイポーラ電池の製造装置は、集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極に対し、電解質が浸透するよう通気性を有したセパレータを含む電解質層を設け、これらを複数積層したバイポーラ電池の製造装置であって、前記バイポーラ電極に対して電解質層を設ける際、前記電解質層内の気泡をセパレータを通して排出する気泡排出機構を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明に係るバイポーラ電池の製造装置は、セパレータの電極側に混入した気泡を通気性を有するセパレータを通して排出させる気泡排出機構を有するため、気泡の混入を抑制して出力密度が向上し、電池性能の優れたバイポーラ電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るバイポーラ電池の製造工程において、セパレータと電解質層の間の気泡Nを排出する際を説明するための断面図である。
【図2】本発明に係るバイポーラ電池の製造方法により製造されるバイポーラ電池を説明するための斜視図である。
【図3】同バイポーラ電池を説明するための断面図である。
【図4】図2に示されるバイポーラ電池を利用する組電池を説明するための斜視図である。
【図5】図4に示される組電池が搭載されている車両の概略図である。
【図6】バイポーラ電池の製造方法を説明するための全体工程図である。
【図7】図6に示される集成体形成工程を説明するための工程図である。
【図8】図7に示される電極形成工程を説明するための平面図である。
【図9】図7に示される電極形成工程を説明するための断面図である。
【図10】図7に示される電解質配置工程を説明するための断面図である。
【図11】図7に示される第1シール材配置工程を説明するための平面図である。
【図12】図7に示される第1シール材配置工程を説明するための断面図である。
【図13】図7に示されるセパレータ材配置工程を説明するための断面図である。
【図14】図7に示される第2シール材配置工程を説明するための断面図である。
【図15】図6に示される接合体形成工程を説明するための工程図である。
【図16】図15に示される集成体セット工程を説明するための断面図である。
【図17】図15に示される積層工程およびプレス工程を説明するための概略図である。
【図18】図15に示されるシール層形成工程を説明するための概略図である。
【図19】図15に示される界面形成工程を説明するための概略図である。
【図20】図15に示される初充電工程を説明するための概略図である。
【図21】集成体の変形例を説明するための断面図である。
【図22】集成体の他の変形例を説明するための断面図である。
【図23】集成体の他の変形例を積層する際を説明するための断面図である。
【図24】バイポーラ電極を載置するパレットを示す斜視図である。
【図25】同パレットの分解斜視図である。
【図26】図24のA−A線に沿う断面図である。
【図27】第1実施形態における反転装置を示す斜視図である。
【図28】第1実施形態におけるセパレータ供給装置を示す上面図である。
【図29】同セパレータ供給装置を示す側面図である。
【図30】第1実施形態におけるセパレータ配置装置を示す斜視図である。
【図31】同セパレータ配置装置を示す正面図である。
【図32】同セパレータ配置装置を示す側面図である。
【図33】図32のB−B線に沿う吸引本体部を示す正面図である。
【図34】図32のC−C線に沿うセパレータ吸引部を示す正面図である。
【図35】セパレータ吸引部を模式的に示す概念図である。
【図36】セパレータ配置装置のセパレータ吸引部近傍を示す拡大側面図である。
【図37】プランジャーバルブを示す断面図であり、(A)はバルブが開いている際を示し、(B)はバルブが外部に開放されている際を示す。
【図38】プランジャーバルブが全て開いている際のセパレータ吸引部を示す部分側面図である。
【図39】プランジャーバルブの一部が開いている際のセパレータ吸引部を示す部分側面図である。
【図40】プランジャーバルブの全てが外部に開放されている際のセパレータ吸引部を示す部分側面図である。
【図41】セパレータを設置する際のセパレータ吸引部を示す側面図である。
【図42】セパレータ供給装置の他の例を示す正面図である。
【図43】セパレータ供給装置の他の例を示す側面図である。
【図44】第2実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置のセパレータ配置装置を示す正面図である。
【図45】同セパレータ配置装置を示す側面図である。
【図46】図45のD−D線に沿う吸引ローラの断面図である。
【図47】第3実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置のセパレータ配置装置を示す側面図である。
【図48】図47のE−E線に沿う断面図である。
【図49】図47のF−F線に沿う断面図である。
【図50】図47のG−G線に沿う断面図である。
【図51】第4実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置のセパレータ配置装置を示す側面図である。
【図52】図51のH−H線に沿う断面図である。
【図53】図51のI−I線に沿う断面図である。
【図54】第4実施形態におけるセパレータ保持板の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明に係るバイポーラ電池の製造工程において、電解質層内の気泡をセパレータを通して排出することを説明するための断面図、図2は、本発明に係るバイポーラ電池の製造方法により製造されるバイポーラ電池を説明するための斜視図、図3は、同バイポーラ電池を説明するための断面図、図4は、図2に示されるバイポーラ電池を利用する組電池を説明するための斜視図、図5は、図4に示される組電池が搭載されている車両の概略図である。
【0013】
本発明に係るバイポーラ電池の製造方法により製造されるバイポーラ電池10は、例えばリチウム二次電池であり、図3に示すように、正極113、負極112および集電体111を有するバイポーラ電極110、電解質層120、第1シール層(充填部)115および第2シール層(充填部)117を有する。正極113および負極112は、集電体111の一方および他方の面に形成されている。つまり、集電体111は、正極113および負極112の間に位置している。
【0014】
第1シール層115は、集電体111の一方の面に配置されかつ正極113の周囲を取り囲むように延長している。電解質層120は、正極113および第1シール層115を覆うように配置されている。第2シール層117は、第1シール層115と位置合せされて、集電体111の他方の面に配置されかつ負極112の周囲を取り囲むように延長している。
【0015】
図3に示す電解質層120は、図1に示すように正極と負極を区分けする通気性を有したポーラス状のセパレータ121内にゲルポリマー系電解質を浸透させた層と、セパレータ121と正極113または負極112との間でイオンを伝導する電解質124の層を有する。
【0016】
なお、集電体111は、ステンレススチール箔であるが、特に制限されない。例えば、アルミニウム箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材を、利用することも可能である。
【0017】
負極112の負極活物質は、ハードカーボン(難黒鉛化炭素材料)であるが、特に制限されない。例えば、黒鉛系炭素材料や、リチウム−遷移金属複合酸化物を利用することも可能である。また、カーボンおよびリチウム−遷移金属複合酸化物からなる負極活物質は、容量および出力特性の観点から好ましい。
【0018】
正極113の正極活物質は、LiMn2O4であるが、特に制限されない。しかし、容量および出力特性の観点から、リチウム−遷移金属複合酸化物を適用することが好ましい。
【0019】
正極113および負極112の厚さは、特に限定されず、電池の使用目的(例えば、出力重視、エネルギー重視)や、イオン伝導性を考慮して設定される。
【0020】
図3に示す第1シール層115および第2シール層117を構成するシール材は、1液性未硬化エポキシ樹脂であるが、特に制限されない。例えば、その他の熱硬化型樹脂(ポリプロピレンやポリエチレン等)や、熱可塑型樹脂を適用することが可能である。しかし、例えば、使用環境下において良好なシール効果を発揮するものを、用途に応じて適宜選択することが好ましい。
【0021】
電解質層120の一部であるセパレータ121の素材は、多孔性(通気性)を有するPE(ポリエチレン)であるが、特に制限されない。例えば、PP(ポリプロピレン)などの他のポリオレフィン、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、不織布を、利用することも可能である。不織布は、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステルである。このセパレータ121は正極と負極を区分けする絶縁体であるが、セパレータ121の多孔内部に電解質が浸透することで、イオン及び電流が流れることになる。
【0022】
電解質の電解液は、PC(プロピレンカーボネート)およびEC(エチレンカーボネート)からなる有機溶媒、支持塩としてのリチウム塩(LiPF6)を含んでいる。有機溶媒は、PCおよびECに特に限定されず、例えば、その他の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を適用することが可能である。リチウム塩は、LiPF6に特に限定されず、例えば、その他の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3等の有機酸陰イオン塩を、適用することが可能である。
【0023】
電解質のホストポリマーは、HFP(ヘキサフルオロプロピレン)コポリマーを10%含むPVDF−HFP(ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)であるが、特に制限されない。例えば、その他のリチウムイオン伝導性を持たない高分子や、イオン伝導性を有する高分子(固体高分子電解質)を適用することも可能である。その他のリチウムイオン伝導性を持たない高分子は、例えば、PAN(ポリアクリロニトリル)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)である。イオン伝導性を有する高分子は、例えば、PEO(ポリエチレンオキシド)やPPO(ポリプロピレンオキシド)である。
【0024】
図2に示すバイポーラ電池10は、図3に示すように複数の単電池(電池要素)の積層体100の形態で、外部からの衝撃や環境劣化を防止するための外装ケース104に収容される。積層体100の最外層(最上位および最下位)には、端子プレート101,102が配置される。なお、端子プレート101,102の更に外側に、補強板を配置することもできる。
【0025】
端子プレート101,102は、高導電性部材からなり、積層体100の最外層の電極投影面の全てを、少なくとも覆うように構成されている。したがって、最外層の電流取り出し部は、低抵抗化され、面方向の電流取り出しにおける低抵抗化を図ることで、電池の高出力化が可能になる。高導電性部材は、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス、これらの合金である。
【0026】
端子プレート101,102は、外装ケース104の外部に延長しており、積層体100から電流を引き出すための電極タブを兼用している。なお、独立した別体の電極タブを配置し、直接的あるいはリードを利用して、端子プレート101,102と接続することで、積層体100から電流を引き出すことも可能である。また、積層体100の最外層に位置する集電体111によって、端子プレート101,102を構成することも可能である。
【0027】
外装ケース104は、軽量化および熱伝導性の観点から、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)をポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムなどのシート材からなり、その外周部の一部または全部が、熱融着により接合さることで形成される。
【0028】
外装ケース104は、単独で使用することが可能であるが、例えば、組電池130の形態で利用することが可能である(図4参照)。組電池130は、外装ケース104を直列化および/又は並列化し、複数接続して構成されており、導電バー132,134を有する。導電バー132,134は、各外装ケース104の内部から延長する端子プレート101,102に接続されている。
【0029】
外装ケース104を接続して構成する際に、適宜、直列あるいは並列化することで、容量および電圧を自由に調整することができる。接続方法は、例えば、超音波溶接、熱溶接、レーザー溶接、リベット、かしめ、電子ビームである。
【0030】
図4に示す組電池130自体を、直列化および/又は並列化し、複数接続することで組電池モジュール(大型の組電池)136として提供することも可能である。
【0031】
組電池モジュール136は、大出力を確保し得るため、例えば、車両138のモータ駆動用電源として搭載することが可能である(図5参照)。車両は、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、電車である。
【0032】
組電池モジュール136は、例えば、内蔵する外装ケース104毎あるいは組電池130毎の充電制御を行うなど、非常にきめ細かい制御ができるため、1回の充電あたりの走行距離の延長、車載電池としての寿命の長期化などの性能の向上を図ることが可能である。
【0033】
図6は、バイポーラ電池の製造方法を説明するための全体工程図である。
【0034】
第1実施形態に係るバイポーラ電池の製造方法は、バイポーラ電極110の両面に電解質を塗布し、バイポーラ電極100のいずれか一方側に前記電解質を介して通気性を有するセパレータを重ねたサブアッシーユニットとしての集成体を形成する集成体形成工程、集成体(サブアッシーユニット)が積層されて積層体(接合体)を形成するアッシー工程としての接合体形成工程、および、積層体を外装ケースに収容するため組立工程を有する。
【0035】
図7は、図6に示される集成体形成工程を説明するための工程図、図8は、図7に示される電極形成工程を説明するための平面図、図9は、図7に示される電極形成工程を説明するための断面図、図10は、図7に示される電解質配置工程を説明するための断面図、図11は、図7に示される第1シール材配置工程を説明するための平面図、図12は、図7に示される第1シール材配置工程を説明するための断面図、図13は、図7に示されるセパレータ材配置工程を説明するための断面図、図14は、図7に示される第2シール材配置工程を説明するための断面図である。
【0036】
集成体形成工程は、図7に示すように、電極形成工程、電解質配置工程、第1シール材配置工程、セパレータ材配置工程および第2シール材配置工程を有する。
【0037】
電極形成工程においては、まず、正極スラリーが調整される。正極スラリーは、正極活物質[85重量%]、導電助剤[5重量%]およびバインダ[10重量%]を有し、粘度調整溶媒を添加することで、所定の粘度にされる。正極活物質は、LiMn2O4である。導電助剤は、アセチレンブラックである。バインダは、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)である。粘度調整溶媒は、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)である。正極スラリーは、ステンレススチール箔からなる集電体111の一方の面に塗布される。
【0038】
なお、導電助剤は、例えば、カーボンブラックやグラファイトを利用することも可能である。また、バインダおよび粘度調整溶媒は、PVDFおよびNMPに限定されない。
【0039】
次に、負極スラリーが、調整される。負極スラリーは、負極活物質[90重量%]およびバインダ[10重量%]を有し、粘度調整溶媒を添加することで、所定の粘度にされる。負極スラリーは、集電体111の他方の面に、塗布される。負極活物質は、ハードカーボンである。バインダおよび粘度調整溶媒は、PVDFおよびNMPである。負極スラリーは、集電体111の他方の面に、塗布される。
【0040】
正極スラリーの塗膜および負極スラリーの塗膜は、例えば、真空オーブンを利用して、乾燥させられ、正極活物質層からなる正極113および負極活物質層からなる負極112を形成する(図9参照)。この際、NMPは、揮発することで除去される。
【0041】
なお、正極113および負極112の厚さは、特に限定されず、電池の使用目的(例えば、出力重視、エネルギー重視)や、イオン伝導性を考慮して設定される。
【0042】
電解質配置工程においては、電解質124,125が、正極113および負極112の電極部にそれぞれ塗布される(図10参照)。
【0043】
電解質124,125は、電解液[90重量%]およびホストポリマー[10重量%]を有し、粘度調整溶媒を添加することで、塗布に適した粘度にされている。
【0044】
電解液は、PC(プロピレンカーボネート)およびEC(エチレンカーボネート)からなる有機溶媒、支持塩としてのリチウム塩(LiPF6)を含んでいる。リチウム塩濃度は、1Mである。
【0045】
ホストポリマーは、HFP(ヘキサフルオロプロピレン)コポリマーを10%含むPVDF−HFP(ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)である。粘度調製溶媒は、DMC(ジメチルカーボネート)である。粘度調製溶媒は、DMCに限定されない。
【0046】
電解質124,125を塗布するには、まず、正極113および負極112が形成された集電体111の一方面である負極112側を上面として載置台に設置し、負極112に電解質125を塗布する。この後、塗布された電解質125の上に保護フィルムを貼り付け、バイポーラ電極110の表裏を反転させる。この反転は、後述する反転装置210を用いることにより、容易に実施することが可能となる。この保護フィルムが設けられることで、バイポーラ電極110を反転しても、電解質が塗布された面を下面として載置台に設置することができる。この保護フィルムは、ポリエチレン等の樹脂により作製される。
【0047】
この後、上面となった他方面の正極113にも電解質を塗布する。
【0048】
第1シール材配置工程においては、まず、集電体111が露出している正極側外周部かつ正極113の周囲を延長するように、充填材料としての第1シール材(1液性未硬化エポキシ樹脂)114が、付与される(図11,12参照)。第1シール材114の付与は、例えば、ディスペンサを用いる塗布が適用される。
【0049】
セパレータ材配置工程においては、セパレータ121が、集電体111の正極側面の全てを覆うように配置する(図13参照)。これにより、セパレータ121が、電解質および第1シール材114に重ねられる。このセパレータ121の配置においては、後述するセパレータ配置装置240,340が使用される(図30,図44参照)。
【0050】
第2シール材配置工程においては、セパレータ材配置工程において集電体111の正極側面の全てを覆うように配置されたセパレータ121の第1シール材114と接する側と反対側に、充填材料としての第2シール材(1液性未硬化エポキシ樹脂)116が付与される(図14参照)。この際、第2シール材116は、第1シール材114の付与部位と相対するように(重なるように)位置決めされる。第2シール材116の付与は、例えば、ディスペンサを用いる塗布が適用される。
【0051】
これにより、バイポーラ電極110の一方には電解質125が設けられ、他方には電解質124、第1、第2シール材114,116およびセパレータ121が順次設けられた集成体108(サブアッシーユニット)が形成される。
【0052】
なお、第1、第2シール材配置工程において、第1シール材114の厚みは、正極113および電解質124の合計厚み未満であり、かつ、第2シール材116の厚みは、負極112および電解質125の合計厚み未満であるように、設定されることが好ましい。この場合、セパレータ121が、外周部に位置する第1シール材114および第2シール材116に接触する前に、電解質124,125が設けられる中央部位と接触するため、第1シール材114および第2シール材116により囲まれた内部に、ガスを残留することを抑制することが可能である。
【0053】
図15は、図6に示される接合体形成工程を説明するための工程図、図16は、図15に示される集成体セット工程を説明するための断面図、図17は、図15に示される積層工程およびプレス工程を説明するための概略図、図18は、図15に示されるシール層形成工程を説明するための概略図、図19は、図15に示される電解質浸透工程を説明するための概略図、図20は、図15に示される初充電工程を説明するための概略図である。
【0054】
接合体形成工程(アッシー工程)は、集成体セット工程、積層工程、プレス工程、シール層形成工程、界面形成工程、初充電工程およびガス抜き工程を有する。
【0055】
集成体セット工程においては、図16に示すマガジン150に、複数の集成体108が順次セットされる。この際には、集成体108から保護フィルムが取り除かれる。なお、本実施形態で用いられる集成体108は上下が非対称構造であるため、最上部の集成体108Aはバイポーラ電極110に第1シール材114のみが設けられ、最下部の集成体108Bは、集成体108の構成に加えて負極112側にもシール材が設けられる。また、集成体108Aの上には端子プレート102が配置され、集成体108Bの下には端子プレート101が配置される。
【0056】
マガジン150は、集成体108のセットの際の干渉を避けるため、フレーム形状であり、集成体108の外周部の把持自在であるクランプ機構152を有する。
【0057】
クランプ機構152は、集成体108が互いに接触しないように、積層方向に間隔をあけて配置される。積層方向は、集成体108の面方向に対して垂直な方向である。
【0058】
クランプ機構152は、例えば、バネからなる弾性部材を有しており、弾性力に基づいて、皺などが生じないように、集成体108に張力を付与した状態で保持自在に構成されている。
【0059】
積層工程においては、図17に示すマガジン150が真空処理装置160の内部に配置され、真空下で、集成体108の積層体100が形成される。真空度は、例えば、0.2〜0.5×105Paである。
【0060】
また、真空下であるため、電極および電解質層の積層界面に対するガスの混入が抑制される。そのため、使用時のイオンの移動は、害されず、電池抵抗は増大しないため、高出力密度を達成することができる。つまり、ガスの混入が抑制されたバイポーラ電池が得られるため、使用時におけるイオンの移動は、害されず、電池抵抗は増大しないため、高出力密度を達成することができる。
【0061】
積層体100の形成方法は、特に限定されず、例えば、受け台に向かってマガジン150を移動させながら、集成体108を把持するクランプ機構152を制御し、受け台に接触するタイミングで、集成体108の把持を順次解消することで、積層体100を形成することが可能である。
【0062】
真空処理装置160は、真空手段162、プレス手段170および制御部178を有する。
【0063】
真空手段162は、真空チャンバ163、真空ポンプ164および配管系165を有する。真空チャンバ163は、着脱自在(開放自在)の蓋部と、マガジン150およびプレス手段170が配置される固定式の基部を有する。真空ポンプ164は、例えば、遠心式であり、真空チャンバ163の内部を真空状態にするために使用される。配管系165は、真空ポンプ164と真空チャンバ163と連結するために使用され、リークバルブ(不図示)が配置されている。
【0064】
プレス手段170は、基部プレート171および基部プレート171に対して近接離間自在に配置されるプレスプレート173を有する。制御部178は、プレスプレート173の移動や押圧力を制御するために使用される。基部プレート171およびプレスプレート173に、シート状の弾性体を配置することも可能である。
【0065】
プレス工程においては、積層体100は、真空状態を保持した状態で、プレスプレートおよび基部プレート171によって加圧される(図17参照)。これにより、第1および第2シール材114,116は、所定の厚みを有することなる。加圧条件は、例えば、1〜2×106Paである。
【0066】
シール層形成工程においては、図18に示す積層体100がオーブン190に配置され、加熱されることで、図3に示す積層体100に含まれる第1および第2シール材114,116が熱硬化して、第1および第2シール層115,117を形成する。加熱条件は、例えば、80℃である。積層体100の加熱方法は、オーブンを使用する形態に、特に限定されない。
【0067】
リチウム二次電池は、水分を嫌うが、第1および第2シール層115,117が樹脂から構成されるため、水分の混入は、避けられない。そのため、プレス工程における第1および第2シール材114,116の前記所定の厚みは、第1および第2シール層115,117の外気に触れる厚さの寸法を極小にして、侵入する水分を減らす見地から設定されている。
【0068】
第1および第2シール材114,116は、熱可塑性樹脂を適用することも可能である。この場合、第1および第2シール材114,116は、加熱することによって塑性変形し、第1および第2シール層115,117を形成することとなる。
【0069】
界面形成工程においては、積層体100が、プレス手段180に配置され、加熱下で加圧されることで、積層体100に含まれるセパレータ121に、電解質124,125が浸透させられ、ゲル界面が形成される(図19参照)。加熱温度および加圧条件は、例えば、80℃および1〜2×106Paである。これにより、集成体108が積層されて一体化された積層体(接合体)100が得られる。
【0070】
プレス手段180は、基部プレート181、基部プレート181に対して近接離間自在に配置されるプレスプレート183、下部加熱手段185、上部加熱手段187および制御部188を有する。下部加熱手段185および上部加熱手段187は、例えば、抵抗発熱体を有しており、基部プレート181およびプレスプレート183の内部に配置され、基部プレート181およびプレスプレート183の温度を上昇させるために使用される。制御部188は、プレスプレート183の移動や押圧力、下部加熱手段185および上部加熱手段187の温度を制御するために使用される。
【0071】
下部加熱手段185および上部加熱手段187の一方を省略したり、下部加熱手段185および上部加熱手段187を、基部プレート181およびプレスプレート183の外部に配置したりすることも可能である。基部プレート181およびプレスプレート183に、シート状の弾性体を配置することも可能である。
【0072】
初充電工程においては、積層体100と電気的に接続された充放電装置192によって、初回充電が行われ、ガスが発生させさられる(図20参照)。初充電条件は、例えば、正極の塗布重量から概算された容量ベースで、21V−0.5Cで4時間である。
【0073】
ガス抜き工程においては、例えば、ローラを積層体100の表面に押圧することにより、積層体100の中央部に位置するガスが、外周部に移動させられて取り除かれる。したがって、電池の出力密度を向上させることが可能である。
【0074】
ケーシング工程においては、一体化された積層体(接合体)100が、外装ケース104(図3参照)に収容され、バイポーラ電池10が製造される(図2および図3参照)。外装ケース104は、積層体100を2枚のシート状の外装材の間に配置し、外装材の外周部を、接合することで形成される。外装材は、ポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムであり、その接合は、熱融着が適用される。
【0075】
なお、一体化された積層体100を、さらに複数積層した後に、外装ケース104に収容することで、バイポーラ電池のさらなる大容量および/又は高出力を、図ることも可能である。積層工程およびプレス工程を、大気下で実施したり、シール層形成工程および界面形成工程を真空下で実施したりすることも可能である。
【0076】
電解質124,125、第1および第2シール材114,116を適宜選択することにより、シール層形成工程および界面形成工程を一体化し、第1および第2シール材114,116の硬化および電解質層の完成を同時に実施することで、製造工程の短縮を図ることも可能である。シール層形成工程と界面形成工程の間に、積層体100の各層(バイポーラ単電池)の電位をモニタするためのタブ(リード線)を、取り付けるための工程を追加することも可能である。
【0077】
図21は、集成体の変形例を説明するための断面図である。
【0078】
第1および第2シール材114,116は、集電体111とセパレータ121の間に配置され、正極113および負極112の周囲を延長しているが、シール構造は、この形態に限定されない。例えば、正極113、集電体111および負極112の周囲を延長するようにシール材118を配置することも可能である。
【0079】
また、ゲルポリマー系電解質は、ポリマー骨格に電解液を保持した熱可塑型であるため、漏液が防止され、液絡を防ぎ信頼性の高いバイポーラ電池を構成することが可能である。ゲルポリマー系電解質は、熱可塑型に限定されず、熱硬化型を適用することも可能である。この場合も、加熱下での加圧により、電解質層を硬化させることで漏液が防止され、液絡を防ぐことが可能である。
【0080】
なお、プレス工程および電解質浸透工程における面圧は、1〜2×106Paに限定されず、積層体100の構成材料の強度等の物性を考慮し、適宜設定することが可能である。シール層形成工程における加熱温度は、80℃に限定されず、電解液の耐熱性や、第1シール材114(第1シール層115)および第2シール材116(第2シール層117)の硬化温度などの物性を考慮し、例えば、60℃〜150℃であることが好ましい。
【0081】
また、電解質124,125は、ゲルポリマー系に限定されず、電解液系を適用することも可能である。この場合、電解質配置工程において、例えば、マイクロピペットを用いて、電解液が、正極113および負極112の電極部にそれぞれ塗布され、滲み込まされる(図10参照)。
【0082】
電解液は、PC(プロピレンカーボネート)およびEC(エチレンカーボネート)からなる有機溶媒、支持塩としてのリチウム塩(LiPF6)および少量の界面活性剤を含んでいる。なお、リチウム塩濃度は、1Mである。
【0083】
有機溶媒は、PCおよびECに特に限定されず、例えば、その他の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を適用することが可能である。リチウム塩は、LiPF6に特に限定されず、例えば、その他の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3等の有機酸陰イオン塩を、適用することが可能である。
【0084】
図22は、サブアッシーユニットとしての集成体の他の変形例を説明するための断面図、図23は、集成体の他の変形例を積層してアッシーユニットとしての積層体を形成する際の説明をするための断面図である。なお、本明細書中の図面において、特徴をより説明し易くするために、場合によって寸法を誇張して表しており、例えば、セパレータ121やバイポーラ電極110は、実際よりも厚く表示されているが、セパレータ121は、実際には自重によって端部が垂れ下がっている。
【0085】
図22に示すように、バイポーラ電極110のセパレータ121が設けられる正極113側にのみ電解質124を設け、反対の負極112側には電解質を設けない構成とすることもできる。
【0086】
このような集成体360を使用する場合には、積層工程(図23に示す装置を用いて積層する)において、電解質124を通気性を有するセパレータ121に浸透させるとともに、セパレータ121の反対面にまで電解質124を透過させることにより、電解質が設けられていない負極112に電解質124を浸透させる。このような構成によれば、積層工程において集成体360同士を積層する際に、バイポーラ電極110の負極112側と、隣接する他の集成体360のセパレータ121とが接するときに、負極112に電解質が設けられていないためにセパレータ121と負極112の間に気泡Nが発生し難く、電池性能の優れたバイポーラ電池10を製造することができる。この積層工程における真空容器内の気圧は、1kPa以下であることが好ましい。
【0087】
なお、負極112に電解質を全く設けないのではなく、負極112の表面に電解質の層が形成されない程度に、負極112に電解質125を浸透させておいてもよい。この場合でも、セパレータ121と負極112の間の気泡Nの発生を抑制できる。
【0088】
次に、第1実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置200について説明する。
【0089】
図24は、バイポーラ電極を載置するパレットを示す斜視図、図24は、同パレットの分解斜視図、図25は、図24のA−A線に沿う断面図、図27は、第1実施形態における反転装置を示す斜視図である。
【0090】
バイポーラ電池の製造装置200は、電解質配置工程において用いられる反転装置210と、セパレータ材配置工程において用いられるセパレータ供給装置230およびセパレータ配置装置240とを備えている。
【0091】
集成体形成工程においてバイポーラ電極110へ電解質124,125、シール材114,116およびセパレータ121を配置する工程(電解質配置工程、第1シール材配置工程、セパレータ材配置工程および第2シール材配置工程)は、バイポーラ電極110毎に準備されるパレット270上で実施される(図24〜26参照)。図30に示すパレット270は、コンベア280上に設けられる位置決め機構281に保持され、それぞれの工程毎に移動される。このようにコンベア280上で作業することにより、複数の集成体108を効率よく順次作製することが可能である。
【0092】
パレット270は、図24〜図26を参照し、特に図25に示すように、空気を吸引する通路となる空気抜き溝271が形成されたパレット本体部272と、パレット本体部272の空気抜き溝271が形成される面に、ネジ273により固定される多孔質板279とを有している。パレット本体部272には、空気抜き溝271に連通する真空引き込み孔274が側面に設けられている。真空引き込み孔274には、図30に示すエアチューブホース275の先端に設けられた吸引継手276が嵌合可能となっており、このエアチューブホース275は、図外の真空ポンプ(吸引装置)に接続されている。
【0093】
多孔質板には、複数の孔が設けられたパンチングメタル、発泡多孔質樹脂または発泡多孔質金属等を適用することができる。
【0094】
図30に示すパレット270がコンベア280により移動する際には、吸引継手276がエアチューブホース275の先端に設けられているために、パレット270に吸引継手276を連結した状態のまま移動させることが可能である。
【0095】
または、吸引継手276をアクチュエータ等の駆動源(不図示)に連結し、パレット270において負圧の付与が必要な工程において、パレット270の真空引き込み孔274に対して進退して連結可能とすることも可能である。
【0096】
パレット270には、集電体111に電極113,112が設けられたバイポーラ電極110を配置して吸引継手276を真空引き込み孔274に連結し、真空引き込み孔274を図外の真空ポンプに連通させる。これによりパレット270の多孔質板279にバイポーラ電極110が吸引されて位置決めされる。この後、バイポーラ電極110の一方面にゲル電解質を塗布し、さらに保護フィルムを貼り付けた後に、バイポーラ電極110の表裏を反転させる。この反転には後述する反転装置210が適用されることが好ましい(図27参照)。
【0097】
反転装置210は、パレット270上のバイポーラ電極110を吸引してパレット270からバイポーラ電極110を受け取る第1吸引部211と、第1吸引部211に保持されたバイポーラ電極110を受け取る第2吸引部212とを有している。
【0098】
第1吸引部211は、湾曲した第1吸引面213を有しており、第1吸引面213が、パレット270に保持されたバイポーラ電極110をパレット270との間に所定幅の線形状の範囲で挟みつつ、回転して移動する構造となっている。第1吸引面213には、複数の第1吸引孔(不図示)が設けられ、この第1吸引孔が真空ポンプ(不図示)に連通可能となっており、パレット270に配置されたバイポーラ電極110を吸引することができる。この吸引においては、バルブの調整等によりパレット270の吸引力に対して第1吸引部211の吸引力を大きくすることにより、パレット270にバイポーラ電極110を吸引しつつ第1吸引部211にバイポーラ電極110を移動させる(図27(A)参照)。このように第1吸引部211とパレット270の両方から吸引しつつ吸引力の差によってバイポーラ電極110を移動させることにより、バイポーラ電極110の皺等の発生を防止できる。
【0099】
第2吸引部212は、第1吸引部211と同様に複数の第2吸引孔が設けられて湾曲した第2吸引面215を有しており、第2吸引孔が真空ポンプ(不図示)に連通可能となっている。
第2吸引部212は、第1吸引面213との間で第2吸引面215バイポーラ電極110を所定幅の線形状の範囲で挟みつつ回転する構造となっている(図27(B)参照)。
【0100】
この第2吸引部212の吸引力を、バルブ等の調整により第1吸引部211の吸引力よりも大きくすることができる。このように第1吸引部211よりも第2吸引部212の吸引力を大きくし、第1吸引部211に保持されたバイポーラ電極110に第2吸引部212を接触させつつ第1吸引部211と第2吸引部212をそれぞれ反対方向へ回転させることにより、第1吸引部211に保持されたバイポーラ電極110を第2吸引部212へ移動させることができる。
【0101】
また、第2吸引部212は、バイポーラ電極110を保持してパレット270に対して回転しつつ移動することにより、バイポーラ電極110をパレット270に移動させることができる(図27(C)参照)。なお、この際には、第2吸引部212の吸引力よりもパレット270の吸引力を大きく設定する。
【0102】
このように、吸引される側よりも大きい吸引力により吸引しつつバイポーラ電極110を移動させることにより、非常に薄いバイポーラ電極110に皺等を発生させることなく、表裏を反転させることができる。
【0103】
図28は、第1実施形態におけるセパレータ供給装置を示す上面図、図29は、同セパレータ供給装置を示す側面図である。
【0104】
セパレータ供給装置230は、図28,29に示すように、セパレータ121がロール状に巻かれたセパレータロール231と、セパレータロール231から引き出されたセパレータ121を導くガイドローラ232と、引き出されたセパレータ121が載置されるセパレータ載置台233と、引き出されたセパレータ121に対して進退動してセパレータ121を所定の長さで切断する切断刃234と、セパレータ121を掴んで引き出すセパレータ引き出し部(不図示)とを有している。
【0105】
セパレータロール231は、固定的に設けられるロール保持部235に回転可能に取り付けられている。また、セパレータロール231には、サーボモータ236が減速機237を介して連結されており、制御装置(不図示)により回転が制御される。
【0106】
セパレータ121は、把持したり吸引したりすることによってセパレータ121を掴むことが可能なセパレータ引き出し部(不図示)により掴まれて、セパレータ載置台233に引き出される。この後、切断刃234がセパレータ121に対して進退動し、セパレータ121を所定の長さで切断する。切断されたセパレータ121は、後述するセパレータ配置装置240により吸引されて保持される。
【0107】
図30は、第1実施形態におけるセパレータ配置装置を示す斜視図、図31は、同セパレータ配置装置を示す正面図、図32は、同セパレータ配置装置を示す側面図、図33は、図32のB−B線に沿う吸引本体部を示す正面図、図34は、図32のC−C線に沿うセパレータ吸引部を示す正面図、図35は、セパレータ吸引部を模式的に示す概念図、図36は、セパレータ配置装置のセパレータ吸引部近傍を示す拡大側面図、図37は、プランジャーバルブを示す断面図であり、(A)はバルブが開いている際を示し、(B)はバルブが外部に開放されている際を示し、図38は、プランジャーバルブが全て開いている際のセパレータ吸引部を示す部分側面図、図39は、プランジャーバルブの一部が開いている際のセパレータ吸引部を示す部分側面図、図40は、プランジャーバルブの全てが外部に開放されている際のセパレータ吸引部を示す部分側面図、図41は、セパレータを設置する際のセパレータ吸引部を示す側面図である。
【0108】
セパレータ配置装置240は、電解質が塗布されたバイポーラ電極110に、セパレータ121を配置する装置である。
【0109】
セパレータ配置装置240は、図30〜32に示すように、コンベア280上のパレット270に向かって突出するように湾曲したセパレータ吸引面241が形成されてセパレータ121を吸引できるセパレータ吸引部242と、セパレータ吸引部242を3次元方向に移動させる移動機構243と、セパレータ吸引部242を回転させる回転機構244とを有している。セパレータ配置装置240は、気泡排出機構としての機能を備えている。
【0110】
図30,31に示す移動機構243は、コンベア280上を差し渡すように固定的に設けられるフレーム本体245と、フレーム本体245においてコンベア280と交差する水平方向へ伸びて設けられるガイドレール246に移動可能に設置される水平方向移動部材247と、水平方向移動部材247に設けられるガイド付きシリンダ248により昇降可能な昇降部材249と、昇降部材249に設けられるサーボリニアアクチュエーター250によりコンベア280の進行方向に沿って移動可能な吸引部保持部材251とを備えている。この吸引部保持部材251には、コンベア280と交差する水平方向に延びる回転軸により回転可能にセパレータ吸引部242が取り付けられる。この移動機構243を制御装置(不図示)により制御することにより、セパレータ吸引部242を3次元方向に自在に移動させることが可能である。
【0111】
回転機構244は、吸引部保持部材251に取り付けられ、セパレータ吸引部242と減速機252を介して連結されるサーボモータ253を有している。この回転機構244を制御装置(不図示)により制御することにより、回転軸を中心にセパレータ吸引部242を自在に回転させることができる。
【0112】
セパレータ吸引部242は、図33に示す空気を吸引する通路となる空気流路溝254が形成された流路形成面255を有する吸引本体部256と、吸引本体部256の流路形成面255に取り付けられ、かつ流路形成面255と接する面の反対面にセパレータ吸引面241が形成される湾曲部257(図32,34参照)を備えている。吸引本体部256の流路形成面255に形成される空気流路溝254は、図35に示すように1方向に並ぶ複数の吸引領域(R1〜R4)に分割され、図36に示すように、それぞれの吸引領域(R1〜R4)における空気流路溝254が、それぞれ別個のプランジャーバルブ258A,258B,258Cおよび258Dに連結チューブ268A,268B,268Cおよび268Dを介して連結されている。したがって、それぞれの吸引領域(R1〜R4)の空気流路溝254は、それぞれ別個に吸引が可能である。なお、本実施形態では吸引領域(R1〜R4)は4つであるが、2つ以上であればよく、多いほど後述の真空破壊する領域をより細かく設定できる。
【0113】
湾曲部257は、吸引領域(R1〜R4)の並ぶ方向の両端側において反って湾曲した形状を有しており、図33に示す流路形成面255から図32に示すセパレータ吸引面241まで貫通する複数のセパレータ吸引孔259(図34参照)が形成されている。セパレータ吸引孔259は、本実施形態では直径3mm、ピッチ約20mmでセパレータ吸引面241の略全面に亘って形成されており、それぞれが図33に示す吸引本体部256の空気流路溝254に連通している。なお、湾曲部257にセパレータ吸引孔259を設けるのではなく、湾曲部257を発泡多孔質樹脂や発泡多孔質金属等の通気性のある材料で作製することも可能である。また、流路形成面255を湾曲して形成することで、その面に設ける湾曲部257として一定の板厚を有する湾曲させたパンチングメタルを適用することもできる。
【0114】
セパレータ吸引部242の吸引領域(R1〜R4)の並ぶ方向に沿う側面には、図36に示すように、バルブが形成される円柱形状のバルブ形成部260が固定されており、このバルブ形成部260とともに、セパレータ吸引部242が吸引部保持部材251へ回転可能に連結されている。
【0115】
バルブ形成部260には、図37に示すように、径方向へ進退動可能であってばね261で付勢された摺動部262が設けられている。摺動部262が突出した状態では、バルブを開いて真空ポンプ269に連通する流路263がセパレータ吸引孔259に連通する流路264に接続され(図37(A)参照)、摺動部262が押し込まれた状態では、外気に開放される流路265が流路264に接続される(図37(B)参照)。
【0116】
プランジャーバルブ258A〜258Dは、吸引領域(R1〜R4)の数だけ設けられる。それぞれのプランジャーバルブ258A〜258Dは、吸引領域(R1〜R4)の並ぶ順番と同様の順番で周方向に並んで配置されている。
【0117】
図36に示す吸引部保持部材251には、図38,39に示すようにバルブ形成部260の外周において周方向の所定角度範囲を覆う押込み部266が設けられる。押込み部266は、セパレータ吸引部242が回転することにより、バルブ形成部260に設けられる摺動部262を端部に形成されるテーパ部267によって押込み、さらにセパレータ吸引部242が回転することにより、摺動部262を縮んだ状態のまま保持する構造となっている。
【0118】
セパレータ121を設置する際には、まずセパレータ供給装置230により供給されたセパレータ121をセパレータ吸引部242に生じる負圧により吸引して保持する。このとき、全てのプランジャーバルブ258が開いており、全て吸引領域(R1〜R4)によりセパレータ121を吸引している。
【0119】
湾曲部257は、図41に示すように、パレット270に配置されたバイポーラ電極110上を、吸引領域(R1〜R4)の並ぶ方向(図41中の白抜き矢印方向)に沿って回転しつつ移動する。このとき、パレット270と所定の離隔距離L離れた離隔面Sとセパレータ吸引面241とが、線接触しつつ吸引領域(R1〜R4)の並ぶ方向へ移動する。このとき、離隔面Sにおける線接触位置Pの吸引領域(R1〜R4)の並ぶ方向に沿って移動する接触移動距離X1が、セパレータ吸引面241の線接触した領域の、吸引領域(R1〜R4)の並ぶ方向に沿うセパレータ接触長さX2に一致する。これにより、セパレータ吸引面241とパレット270に挟まれる部材は、パレット270と垂直方向の力(挟み込む力)を受けるが、水平方向の力を受けず、セパレータ121のずれが生じない。
【0120】
ここで、パレット270とセパレータ吸引面241の間の所定の離隔距離Lは、セパレータ吸引面241に保持されているセパレータ121が、パレット270に設置されているバイポーラ電極110に塗布された電解質と接するように設定されている。したがって、セパレータ吸引部242に保持されたセパレータ121は、セパレータ吸引面241の最下部(パレット270と最も近い部位)において電解質と所定幅の線形状で接触する。
【0121】
また、セパレータ121を設置する際には、図38〜40に示すように、セパレータ吸引部242を回転させるとともに押込み部266によりプランジャーバルブ258A〜258Dの摺動部262が1つずつ押し込まれ、セパレータ121の電解質124と接触した部位を吸引する吸引領域から順番に吸引が停止され、真空(負圧)が解除される。これにより、セパレータ121の電解質124と接触した部位がバイポーラ電極110側に移動することとなる。このように、セパレータ吸引面241の最下部においてセパレータ121が電解質124と所定幅の線形状で接触しつつ接触範囲を移動させるため、セパレータ121と電解質の間の気泡Nが排出できる。また、セパレータ121と電解質124の間に気泡Nが混入しても、セパレータ121がセパレータ吸引部242により吸引されており、かつセパレータ121が通気性を有するため、セパレータ121の一方側M1から他方側M2に向かう吸引力が作用し、セパレータ121を通って気泡Nが排出される(図1参照)。またこの際に、セパレータ121と接触していた電解質124が、吸引力によってセパレータ121内に密に浸透される。このようにセパレータ121と電解質124の間の気泡Nの混入が抑制できることにより、電池性能の優れたバイポーラ電池10を製造することができる。また、気泡Nを排出する際に、この実施形態ではセパレータ121を手でしごく等して気泡Nを除去しないので、セパレータ121に傷が付く虞が無く電解質がセパレータ121に密に浸透し、電池作動時のイオン及び電流が効率よく流れ、出力密度を向上させることができる。なお、本実施形態では、このセパレータ121を設置する工程においてパレット270によりバイポーラ電極110を吸引して保持するが、条件よっては必ずしも吸引しなくてもよい。
【0122】
図42は、セパレータ供給装置の他の例を示す正面図、図43はセパレータ供給装置の他の例を示す側面図である。なお、前述のセパレータ吸引装置と同様の機能を有する部材には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0123】
セパレータ供給装置230の他の例は、図28,29に示すように、セパレータ載置台233を設けずに、セパレータ吸引面241を上面として保持したセパレータ吸引部242に、セパレータ121を直接載置する構造を有している。
【0124】
セパレータ吸引部242は、セパレータ吸引部固定部材290に保持されて固定される。この後、セパレータ吸引部242の吸引領域(図35に示すR1〜R4)の全てから吸引し、セパレータ121をセパレータ吸引面241に保持する。この後、セパレータ吸引部242の上下を反転させて、セパレータ吸引部242を移動機構243に固定し、セパレータ材設置工程に移行する。
【0125】
次に、第2実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置300について説明する。
【0126】
図44は、第2実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置のセパレータ配置装置を示す正面図、図45は、同セパレータ配置装置を示す側面図、図46は、図45のD−D線に沿う吸引ローラの断面図である。
【0127】
第2実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置300は、セパレータ材配置工程において用いられるセパレータ配置装置340が第1実施形態と異なる。なお、第1実施形態と同様の機能を有する部材には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0128】
第2実施形態におけるセパレータ配置装置340は、図44,45に示すように、パレット270に対して回転軸が平行に設置される筒形状の吸引ローラ342(セパレータ吸引部)と、吸引ローラ342にセパレータ121を供給するセパレータロール331と、吸引ローラ342を2次元方向に移動させる移動機構343と、を有している。セパレータ配置装置340は、気泡排出機構としての機能を備えている。
【0129】
移動機構343は、コンベア280上をコンベア280の流れる方向に沿って延びるフレーム本体345と、フレーム本体345においてコンベア280の流れる方向へ伸びて設けられるガイドレール346に移動可能に設置される水平方向移動部材347と、水平方向移動部材347に設けられる面圧制御シリンダ348により昇降可能な昇降部材349とを有しており、この昇降部材349に吸引部保持部材351が固定されている。吸引部保持部材351には、セパレータロール331および吸引ローラ342が連結されており、したがって、この移動機構343を制御装置(不図示)により制御することにより、セパレータロール331および吸引ローラ342を上下方向およびコンベア280の進行方向の2方向へ自在に移動させることができる。
【0130】
セパレータロール331は、吸引部保持部材351に対して、コンベア280と交差する水平方向に延びる回転軸により回転可能に取り付けられている。このセパレータロール331には、サーボモータ336が減速機337を介して連結されており、サーボモータ336を制御装置(不図示)により制御することにより、セパレータロール331を回転させることができる。
【0131】
また、吸引部保持部材351には、吸引部保持部材351に固定されるセパレータ押さえ駆動シリンダ332によって吸引ローラ342に対して近接離間しつつ、吸引ローラ342との間にセパレータ121を挟持するセパレータ押さえ部333が設けられており、セパレータロール331からセパレータ121が供給される場合にはセパレータ押さえ部333が離れてセパレータ121が移動可能となり、セパレータ121が供給されない間はセパレータ121が吸引ローラ342とセパレータ押さえ部333の間に挟持して保持される。
【0132】
吸引ローラ342は、吸引部保持部材351に対して、コンベア280と交差する水平方向に延びる回転軸344A,344Bにより回転可能に取り付けられている。この吸引ローラ342には、サーボモータ353が減速機352を介して連結されており、サーボモータ353を制御装置(不図示)により制御することにより、吸引ローラ342を回転させることができる。
【0133】
吸引ローラ342は、図46に示すように、吸引部保持部材351に固定される2つの回転軸344A,344Bに対してベアリング354を介して連結される。一方の回転軸344Aは、中空となっており、一端側が吸引ローラ342の内部に連通し、他端側が、真空ポンプ(吸引装置)へバルブ(不図示)を介して連通する空気吸引チューブ355に連結されている。
【0134】
吸引ローラ342は、内面から外面まで貫通する複数のセパレータ吸引孔359が形成されており、吸引ローラ342の外側の空気をセパレータ吸引孔359から内部に吸引することができる。
【0135】
吸引ローラ342は、外周面とパレット270との間に所定の離隔間隔L2を保ちつつ、平行に移動することができる(図45参照)。
【0136】
セパレータ121を設置する際には、まずセパレータ121の先端をバイポーラ電極110の端部に設置してクランプ等により固定し、その上に吸引ローラ342を配置する。この後、吸引ローラ342により吸引しつつ吸引ローラ342を回転させて移動させる。このとき、吸引ローラ342の移動距離と、回転した吸引ローラ342の全周長が一致する。
【0137】
ここで、パレット270と吸引ローラ342の外周面の間の所定距離L2は、吸引ローラ342に保持されているセパレータ121が、パレット270に設置されているバイポーラ電極110に塗布された電解質と接するように設定されている。したがって、吸引ローラ342に保持されたセパレータ121は、吸引ローラ342の最下部(パレット270と最も近い部位)において電解質と所定幅を有する線形状の範囲で接触する。
【0138】
これにより、セパレータ121の電解質124と接触した部位がバイポーラ電極110側に移動することとなる。このように、セパレータ吸引面241の最下部においてセパレータ121が電解質124と所定幅の線形状で接触しつつ接触面積が広がるため、セパレータ121と電解質124の間の気泡Nの混入を抑制できる。また、セパレータ121と電解質の間に気泡Nが混入しても、セパレータ121が吸引ローラ342により吸引されており、セパレータ121が通気性を有するため、セパレータ121の一方側M1から他方側M2に向かう吸引力が作用し、セパレータ121を通って気泡Nが排出される(図1参照)。またこの際に、セパレータ121と接触していた電解質124が、吸引力によってセパレータ121内に密に浸透される。このようにセパレータ121と電解質124の気泡Nの混入が防止できることにより、電池性能の優れたバイポーラ電池10を製造することができる。また、気泡Nを除去する際に、セパレータ121を手でしごく等して気泡Nを除去する必要がないため、セパレータ121に傷が付く虞が無く電解質がセパレータ121に密に浸透し、電池作動時のイオン及び電流が効率よく流れ、出力密度を向上させることができる。
【0139】
第2実施形態では、セパレータ配置装置340にセパレータロール331が設けられるため、第1実施形態において設けられたセパレータ供給装置230は不要である。
【0140】
次に、第3実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置400について説明する。
【0141】
図47は、第3実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置のセパレータ配置装置を示す側面図、図48は、図47のE−E線に沿う断面図、図49は、図47のF−F線に沿う断面図、図50は、図47のG−G線に沿う断面図である。
【0142】
第1,第2実施形態におけるセパレータ材配置工程では、パレット270に配置されたバイポーラ電極110に対して、セパレータ121を設置したが、第3実施形態におけるセパレータ材配置工程では、セパレータ121をセパレータ保持板402に配置し、このセパレータ121に対してバイポーラ電極110を設置する。したがって、第1,第2実施形態では、電解質配置工程、第1シール材配置工程、セパレータ材配置工程および第2シール材配置工程が、バイポーラ電極110毎に準備されるパレット270上で実施されたが、第3実施形態では、セパレータ材配置工程を、他のセパレータ保持板402において実施することとなる。なお、第1,第2実施形態と同様の機能を有する部材には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0143】
第3実施形態におけるセパレータ配置装置401は、図47〜50に示すように、セパレータ121を保持するセパレータ保持板402と、セパレータ保持板402を載せて搬送するコンベア403と、コンベア403の所定位置において上方に設けられ、コンベア403に載せられたセパレータ保持板402に対して近接離隔可能な押圧部404とを有している。セパレータ配置装置401は、気泡排出機構としての機能を備えている。
【0144】
セパレータ保持板402は、通気性を有する平板であり、パンチングメタル、発泡多孔質樹脂または発泡多孔質金属等から形成される。
【0145】
コンベア403は、モータ等に連結されて回転可能な複数の搬送ローラ405が設けられており、この搬送ローラ405を回転させることにより、セパレータ保持板402を搬送できる。
【0146】
押圧部404は、コンベア403に載せられたセパレータ保持板402に対して近接離隔可能となっている。
【0147】
次に、第3実施形態におけるセパレータ配置装置401の使用方法について説明する。まず、図47に示すように、コンベア403に配置されたセパレータ保持板402にセパレータ121を設置した後、両極に電解質124,125が塗布されて一方面に第1シール材114が塗布されたバイポーラ電極110を、第1シール材114が設けられる側がセパレータ121と接するように、セパレータ121に重ねる。なお、セパレータ121およびバイポーラ電極110の配置は、ロボットや手作業によって行われる。
【0148】
次に、搬送ローラ405を駆動させて、セパレータ保持板402を押圧部404が設けられる位置まで移動させた後、搬送ローラ405を停止させる。この後、押圧部404を駆動して、図50に示すようにセパレータ保持板402に載置されたバイポーラ電極110をセパレータ121に対して押圧する。これにより、セパレータ121の一方側M1から他方側M2に向かって気泡Nが押し出されるよう作用し、かつセパレータ保持板402およびセパレータ121が通気性を有しているために、電解質124とセパレータ121内の気泡Nが、セパレータ121を介して反対側のセパレータ保持板402の細孔内へ排出される(図1参照)。またこの際に、セパレータ121と接触していた電解質124が、押圧力によってセパレータ121内に浸透される。
【0149】
押圧部404により押圧する際には、バイポーラ電極110の押圧部404と接する側においても電解質125が塗布されているため、バイポーラ電極110の電解質125に例えばPETフィルムを貼り付けることが好ましい。また、押圧の際に、バイポーラ電極110の押圧部404と接する側に、電解質125が塗布されていなくてもよい。この際には、PETフィルムは不要である。
【0150】
押圧部404の駆動は、シリンダ、モータ、または手動等で行われ、加圧力は約400Paであるが、特に限定されない。
【0151】
この後、押圧部404を後退させてバイポーラ電極110を押圧力から開放し、搬送ローラ405を駆動させて、次工程である第2シール材配置工程へ搬出する。
【0152】
このように、第3実施形態におけるセパレータ配置装置401では、吸引するのではなく、加圧することによりセパレータ121の一方側M1から他方側M2に向かって、気泡Nを押し出す作用が生じ、気泡Nをセパレータ121を通して排出することができる(図1参照)。したがって、セパレータ121と電解質124の間の気泡Nの混入が防止でき、電池性能の優れたバイポーラ電池10を製造することができる。また、気泡Nを除去する際に、セパレータ121を手でしごく等して気泡Nを除去する必要がないため、セパレータ121に傷が付く虞が無く、電解質がセパレータ121内に密に浸透し、電池作動時のイオン及び電流が効率よく流れ、出力密度を向上させることができる。また、ハンドリング性の悪いセパレータ121を予めセパレータ保持板402に配置して、ハンドリングの容易なバイポーラ電極110をセパレータ121に対して設置するため、位置決め作業性が良い。また、第1,第2実施形態と異なり、吸引装置を必要としないため、設備が大掛かりとならず、設備コストを低減できる。また、吸引装置を用いないために、セパレータ121保持板に吸引用ホース等の脱着コネクタ等が設けられず、故障が減少して設備の信頼性が向上する。
【0153】
次に、第4実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置500について説明する。
【0154】
図51は、第4実施形態に係るバイポーラ電池の製造装置のセパレータ配置装置を示す側面図、図52は、図51のH−H線に沿う断面図、図53は、図51のI−I線に沿う断面図、図54は、第4実施形態におけるセパレータ保持板の側面図である。
【0155】
第1,第2実施形態におけるセパレータ材配置工程では、パレット270に配置されたバイポーラ電極110に対して、セパレータ121を設置したが、第4実施形態におけるセパレータ材配置工程では、第3実施形態と同様に、セパレータ121をセパレータ保持板502に配置し、このセパレータ121に対してバイポーラ電極110を設置する。なお、第1〜3実施形態と同様の機能を有する部材には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0156】
第4実施形態におけるセパレータ配置装置501は、図51〜54に示すように、セパレータ121を保持するセパレータ保持板502と、セパレータ保持板502を載せて搬送するコンベア403と、セパレータ保持板502に対して負圧を供給する2つの第1,第2負圧供給部503A,503Bとを有している。セパレータ配置装置501は、気泡排出機構としての機能を備えている。
【0157】
セパレータ保持板502は、平板の中央部に通気性を有する通気部504が設けられ、セパレータ保持板502の一方面側には、通気部504の外周においてセパレータ保持板502と連結して通気部504との間に吸引空間505を形成する外郭部506が形成される。外郭部506には、通気部504と対向する位置に、貫通孔部507が形成される。通気部504は、パンチングメタル、発泡多孔質樹脂または発泡多孔質金属等から形成される。
【0158】
第1,第2負圧供給部503A,503Bは、真空ポンプ(不図示)に3方弁(不図示)を介して接続されており、コンベア403に設置されたセパレータ保持板502の下面に近接して設けられる負圧供給孔508から、負圧を供給できる。
【0159】
また、セパレータ保持板502として、第1,第2実施形態において使用したパレット270を用いてもよい。
【0160】
また、通気性を有するベルトを用いたベルトコンベアを使用し、このベルトをセパレータ保持板502として適用することも可能である。
【0161】
次に、第4実施形態におけるセパレータ配置装置501の使用方法について説明する。まず、図51に示すように、コンベア403に配置されたセパレータ保持板502にセパレータ121を設置する。この際、セパレータ保持板502の貫通孔部507が、第1負圧供給部503Aの負圧供給孔508に一致している。この後、第1負圧供給部503Aにより吸引空間505に負圧を供給することにより、通気部504の外側(セパレータ121側)に負圧が生じ、セパレータ121が通気部504に吸着される。これにより、セパレータ121の皺を伸ばすことができる。
【0162】
次に、両極に電解質124,125が塗布されて一方面に第1シール材114が塗布されたバイポーラ電極110を、第1シール材114が設けられる側がセパレータ121と接するように、セパレータ121に接触させる。なお、上述のセパレータ121およびバイポーラ電極110の配置は、ロボットや手作業によって行われる。
【0163】
この後、第2負圧供給部503Bにより貫通孔部507を介して吸引空間505に負圧を供給する。このとき、セパレータ保持板502およびセパレータ121が通気性を有しているために、電解質124とセパレータ121内の気泡Nが、セパレータ121および通気部504を通して吸引されて排出される(図1参照)。またこの際に、セパレータ121と接触していた電解質124が、セパレータ121内に密に浸透される。このとき、バイポーラ電極側からローラ掛けを行ったり、または第3実施形態における加圧部を更に設けてバイポーラ電極110をセパレータ121に押し付けることも、確実に気泡Nを排出するために有効である。
【0164】
この後、搬送ローラ405を駆動させて、次工程である第2シール材配置工程へ搬出する。
【0165】
このように、第4実施形態におけるセパレータ配置装置501では、第3実施形態のように加圧するのではなく、セパレータ121を吸引することによりセパレータ121の一方側M1から他方側M2に向けて吸引力が作用し、気泡Nをセパレータ121を通して排出することができる。したがって、セパレータ121内と電解質124の気泡Nの混入が防止でき、電池性能の優れたバイポーラ電池10を製造することができる。また、気泡Nを排出する際に、セパレータ121を手でしごく等して気泡Nを除去する必要がないため、セパレータ121に傷が付く虞が無く電解質がセパレータ121に密に浸透し、電池作動時のイオン及び電流が効率よく流れ、出力密度を向上させることができる。
【0166】
また、通気性を有し、内周側に吸引空間が形成されたベルトを用いたベルトコンベアを使用することにより、このベルトをセパレータ保持板として適用することも可能である。
【0167】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、本実施形態では、図14に示すような集成体108を作成するために、第1および第2シール材114,116やセパレータ121を積層する順番が決められているが、必ずしも積層する順番や構成は限定されず、電解質124,125が塗布された正極113または負極112にセパレータ121を配置する工程であれば実施可能である。
【符号の説明】
【0168】
10 バイポーラ電池、
108 集成体(サブアッシーユニット)、
110 バイポーラ電極、
111 集電体、
112 負極、
113 正極、
114 第1シール材(充填材)、
115 第1シール層(充填部)、
116 第2シール材(充填材)、
117 第2シール層(充填部)、
120 電解質層、
121 セパレータ、
124,125 電解質、
200,300,400,500 バイポーラ電池の製造装置、
210 反転装置、
230 セパレータ供給装置、
240,340,401,501 セパレータ配置装置(気泡排出機構)、
241 セパレータ吸引面、
242,342 セパレータ吸引部、
243,343 移動機構、
244 回転機構、
254 空気流路溝、
255 流路形成面、
256 吸引本体部、
257 湾曲部、
R1,R2,R3,R4 吸引領域、
258A,258B,258C,258D プランジャーバルブ、
259,359 セパレータ吸引孔、
260 バルブ形成部、
270 パレット、
402,502 セパレータ保持板、
404 押圧部、
503 負圧供給部、
504 通気部、
L,L2 離隔距離、
M1 一方側、
M2 他方側、
S 離隔面、
X1 接触移動距離、
X2 セパレータ接触長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極に対し、電解質が浸透するよう通気性を有したセパレータを含む電解質層を設け、これらを複数積層したバイポーラ電池の製造装置であって、
前記バイポーラ電極に対して電解質層を設ける際、前記電解質層内の気泡をセパレータを通して排出する気泡排出機構を有することを特徴とするバイポーラ電池の製造装置。
【請求項2】
前記気泡排出機構は、前記セパレータを保持し、かつセパレータを通して排出された空気を外部に排出し得るように、通気性を有したセパレータ保持板を有することを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池の製造装置。
【請求項3】
前記気泡排出機構は、前記セパレータ保持板上のセパレータに重ねられたバイポーラ電極を前記セパレータに対して押圧する押圧部を有することを特徴とする請求項2に記載のバイポーラ電池の製造装置。
【請求項4】
前記気泡排出機構は、前記セパレータを保持したセパレータ保持板の裏側より負圧を作用させる負圧供給部を有することを特徴とする請求項3に記載のバイポーラ電池の製造装置。
【請求項5】
前記バイポーラ電極に対して電解質層を設ける際、前記セパレータの一方側の面を吸引保持し、予め前記正極または負極に付与された電解質の層に、前記吸引保持されたセパレータの他方側の面を重ね、更に電解質層内の気泡を前記セパレータを通して吸引排出するセパレータ吸引部を有することを特徴とする請求項1に記載のバイポーラ電池の製造装置。
【請求項6】
前記セパレータ吸引部は、当該セパレータ吸引部に吸引保持されたセパレータを前記電解質に重ねる際、前記電解質との間に所定の領域を有する線形状の領域で挟むとともに、当該挟んだ領域をセパレータの面に沿う方向に移動させる機構に連結されることを特徴とする請求項5に記載のバイポーラ電池の製造装置。
【請求項7】
前記セパレータ吸引部は、空気を吸引する吸引装置に連通される複数のセパレータ吸引孔が設けられるとともに前記線形状で挟む領域の移動方向に対して反るように湾曲したセパレータ吸引面を有し、当該セパレータ吸引部を回転可能に保持する機構に連結されることを特徴とする請求項6に記載のバイポーラ電池の製造装置。
【請求項8】
前記複数のセパレータ吸引孔は、前記線形状で挟む領域の移動方向に沿って複数の吸引領域に分割して設けられ、前記セパレータ吸引部の回転角度に応じて吸引領域毎にセパレータ吸引孔の吸引を停止させるバルブを介して吸引装置に連通されることを特徴とする請求項7に記載のバイポーラ電池の製造装置。
【請求項9】
前記バルブは、前記セパレータ吸引部に連結されてセパレータ吸引部とともに回転可能な円柱形状のバルブ形成部に前記吸引領域に対応して複数設けられるプランジャーバルブであり、
前記複数のプランジャーバルブは、バルブ形成部の周方向に並んで配置され、かつ径方向に摺動可能であって、摺動方向の位置によってバルブの切り替えを行う摺動部を有し、
前記バルブ形成部の外周には、当該バルブ形成部の周方向所定角度範囲を覆い、前記バルブ形成部との相対的な回転角度に応じて前記摺動部を押し込む押込み部が設けられることを特徴とする請求項8に記載のバイポーラ電池の製造装置。
【請求項10】
前記セパレータ吸引部は、中空の筒形状である吸引ローラであり、内部の空間が空気を吸引する吸引装置に連通され、外周部には、内部の空間に連通する複数のセパレータ吸引孔が設けられることを特徴とする請求項5に記載のバイポーラ電池の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【公開番号】特開2012−256619(P2012−256619A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219250(P2012−219250)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2007−201171(P2007−201171)の分割
【原出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】