バッテリテスタ、バッテリおよびバッテリ状態監視装置
【課題】発熱が少なく小型で高精度のバッテリテスタを提供する。
【解決手段】テスタ1は、抵抗R1とスイッチSW1とを有する第1の通電回路と、抵抗R2とスイッチSW2とを有する第2の通電回路と、バッテリ10の開回路電圧、R1、R2の両端電圧を測定する電圧測定回路3と、R1、R2に流れる電流を測定する電流測定回路41、42と、SW1、SW2のオン、オフを制御し電圧測定回路3で測定された電圧と電流測定回路41、42で測定された電流からバッテリ状態を推定するプロセッサ2を備えている。SW1とSW2とを、0.5msの短いパルス幅と、0.5sの長いパルス幅との2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御し、開回路電圧と、SW1をオン状態に制御したときのR1の両端電圧、R1に流れる電流、SW2をオン状態に制御したときのR2の両端電圧、R2に流れる電流でバッテリ状態を推定する。
【解決手段】テスタ1は、抵抗R1とスイッチSW1とを有する第1の通電回路と、抵抗R2とスイッチSW2とを有する第2の通電回路と、バッテリ10の開回路電圧、R1、R2の両端電圧を測定する電圧測定回路3と、R1、R2に流れる電流を測定する電流測定回路41、42と、SW1、SW2のオン、オフを制御し電圧測定回路3で測定された電圧と電流測定回路41、42で測定された電流からバッテリ状態を推定するプロセッサ2を備えている。SW1とSW2とを、0.5msの短いパルス幅と、0.5sの長いパルス幅との2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御し、開回路電圧と、SW1をオン状態に制御したときのR1の両端電圧、R1に流れる電流、SW2をオン状態に制御したときのR2の両端電圧、R2に流れる電流でバッテリ状態を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリテスタ、バッテリおよびバッテリ状態監視装置に係り、特に、バッテリ放電機能を有するバッテリテスタ、該バッテリテスタを備えたバッテリおよびバッテリの状態を監視するバッテリ状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
UPS、非常灯、非常放送設備、電話交換機、通信機器基地局など、非常時のバックアップを想定した機器や、自動車、電動車などでバッテリが使用されている。これらの機器はバッテリの劣化や放電などにより機能を発揮できなくなる。これを避けるため、バッテリの性能が低下しているかを確認する装置がある。このような装置として、例えば、バッテリ放電機能を持たないバッテリ監視装置やバッテリ放電機能を持つバッテリテスタが知られている。
【0003】
バッテリテスタは、バッテリをパルス放電させ、その時の電圧、電流から求めた内部抵抗や電導度(内部抵抗の逆数)の値を表示したり、コールドクランキングアンペア(CCA)に換算し表示したりする。また、バッテリテスタは、バッテリの充電状態(SOC)についても検出可能であり、電流が流れていない状態かごくわすがしか電流が流れていない状態でのバッテリ電圧から推定し表示したりしている。
【0004】
劣化バッテリでの健康度(SOH)や容量は、複素インピーダンスの周波数分散データへのカーブフィッティングにより等価回路のパラメータを測定することから求めることができるが、印加波形が正弦波となるため、装置が高コストであり一般的ではない。
【0005】
一般的なバッテリテスタは、定抵抗放電によるものであり(例えば、特許文献1参照)、大きく分けて、100Aの大電流で5秒程度バッテリを放電させるものと、1A〜100Aで1ms〜10msの放電させるものがある。前者はエンジン始動時の電流を模擬したものであり、エンジン始動用バッテリの試験方法としては妥当性がある。後者は、単発パルス時間幅が充分短いので、複数回放電するのが一般的であり、得られた複数のデータは平均化処理など精度向上のための処理に利用する。後者は一般に装置が小さく、近年普及してきている。定抵抗放電の場合は単発パルスの形状は矩形波であり、複数回放電する場合は、パルス間隔t1は以下の式(1)で表される。
【0006】
【数1】
【0007】
複数回放電するタイプの既存の製品では放電パルス幅と休止時間を同一とするのが一般的であり、この場合、パルス幅t2(s)と周波数f(Hz)は以下の式(2)で表される関係となる。
【0008】
【数2】
【0009】
例えば、パルス幅10msは周波数50Hzに相当する。バッテリテスタでパルス幅t2の単一直流パルス波を印加した場合と、周波数fの交流波を印加した場合とでは、直流と交流の違いはあるが、同一の時間スケールなので、得られる情報は基本的に同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4414757号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の定抵抗放電によるバッテリテスタのうち100A5秒程度でバッテリを放電させるものは、放電電流が大きく通電時間も長いため、発熱の問題を回避するため巨大なホーロー抵抗が使われ、装置が大型化することが問題であり、また、何回も連続して測定した場合にバッテリテスタの温度が非常に高くなることも誤差増大や安全性の面で問題である。一方、従来の定抵抗放電によるバッテリテスタのうち1A〜100Aで1ms〜10msの放電させるものは、精度に劣るという問題がある。すなわち、1ms〜10ms(500Hz〜50Hz)の範囲では電気二重層の充放電が充分行われないためオーミックな抵抗成分が主となり、オーミックな抵抗は格子腐食の劣化情報を含むが、SOHや容量はこのオーミックな抵抗と対応する性質のものではないため、一般的に、不特定の劣化モードのバッテリ、または不特定の型式のバッテリのオーミックな抵抗からSOHや容量を推定することはできない。
【0012】
本発明は上記事案に鑑み、発熱が少なく小型で高精度のバッテリテスタ、該バッテリテスタを備えたバッテリおよびバッテリ状態監視装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、バッテリテスタであって、第1の抵抗と第1のスイッチとを有し、バッテリに並列接続される第1の通電回路と、第2の抵抗と第2のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第2の通電回路と、前記バッテリの開回路電圧、前記第1および第2の抵抗の両端電圧を測定する電圧測定手段と、前記第1および第2の抵抗に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記第1および第2のスイッチのオン、オフを制御し、前記電圧測定手段で測定された電圧値および前記電流測定手段で測定された電流値から前記バッテリの状態を推定する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1のスイッチと第2のスイッチとを、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御し、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記第1のスイッチをオン状態に制御したときの前記電圧測定手段で測定された前記第1の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された前記第1の抵抗に流れる電流値と、前記第2のスイッチをオン状態に制御したときの前記電圧測定手段で測定された前記第2の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された前記第2の抵抗に流れる電流値とから前記バッテリのオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値を算出し、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と前記算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とから前記バッテリの状態を推定する、ことを特徴とする。
【0014】
第1の態様では、制御手段により、第1のスイッチと第2のスイッチとが、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御され、電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、第1のスイッチをオン状態に制御したときの電圧測定手段で測定された第1の抵抗の両端電圧値および電流測定手段で測定された第1の抵抗に流れる電流値と、第2のスイッチをオン状態に制御したときの電圧測定手段で測定された第2の抵抗の両端電圧値および電流測定手段で測定された第2の抵抗に流れる電流値とからバッテリのオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値が算出され、電圧測定手段で測定された開回路電圧値と算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とからバッテリの状態が推定される。本態様によれば、制御手段が、バッテリの開回路電圧値と、第1のスイッチを所定範囲の短いパルス幅でオン状態に制御した状態で測定した第1の抵抗の両端電圧値および第1の抵抗に流れる電流値とからバッテリのオーミックな抵抗成分を適正に検出でき、このオーミックな抵抗成分と、バッテリの開回路電圧値と、第2のスイッチを所定範囲の長いパルス幅でオン状態に制御した状態で測定した第2の抵抗の両端電圧値および第2の抵抗に流れる電流値とからバッテリの電荷移動抵抗成分を適正に検出できるため、この2つの抵抗値および開回路電圧値を用いてバッテリの状態を精度よく推定することができるとともに、通電パルスが長いパルス幅でも1s以下であり通電電流もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し通電抵抗(第1、第2の抵抗)を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる。
【0015】
第1の態様において、コールドクランキングアンペア、開回路電圧およびバッテリの状態の関係を定めた第1の関係マップを予め記憶した記憶手段をさらに備え、制御手段は、電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とからコールドクランキングアンペア値を算出し、該算出したコールドクランキングアンペア値と電圧測定手段で測定された開回路電圧値とを記憶手段に記憶された第1の関係マップに当てはめてバッテリの状態を推定するようにしてもよい。また、制御手段は、第2のスイッチをオフ状態とし第1のスイッチを短いパルス幅でオン状態に制御した後直ちに、第1のスイッチをオフ状態とし第2のスイッチを長いパルス幅でオン状態に制御するようにしてもよい。
【0016】
また、記憶手段は予めバッテリの電荷移動抵抗と健康度との関係を定めた第2の関係マップをさらに記憶しており、制御手段は、算出した電荷移動抵抗値を第2の関係マップに当てはめてバッテリの健康度を推定するようにしてもよい。さらに、記憶手段は予めバッテリの開回路電圧と充電状態との関係を定めた第3の関係マップをさらに記憶しており、制御手段は、開回路電圧値を第3の関係マップに当てはめてバッテリの充電状態を推定するようにしてもよい。また、バッテリの外部端子に接続するためのクリップを備え、クリップは温度センサを有しており、制御手段は、温度センサで測定された温度値によりコールドクランキングアンペア値を予め定められた温度のコールドクランキングアンペア値に温度補正するようにしてもよい。
【0017】
さらに、バッテリの異常状態を報知するための異常状態報知手段を備え、制御手段は、第1の関係マップに当てはめて推定したバッテリの状態が異常か否かをさらに判断し、該判断が肯定のときに異常状態報知手段がバッテリの異常状態を報知するように、異常状態報知手段に予め定められた信号を出力するようにしてもよい。このとき、異常状態報知手段は、ブザー、または、電波若しくは光を媒体とする無線信号発信機であってもよい。
【0018】
このようなバッテリテスタは、バッテリの蓋に固定されていることが好ましい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、第1の態様のバッテリテスタを備えたバッテリである。本態様でも上述した第1の態様と同様の作用効果を奏する。
【0020】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の第3の態様は、バッテリ状態監視装置であって、第1の抵抗と第1のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第1の通電回路と、第2の抵抗と第2のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第2の通電回路と、前記バッテリの開回路電圧、前記第1および第2の抵抗の両端電圧を測定する電圧測定手段と、前記第1および第2の抵抗に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記第1および第2のスイッチのオン、オフを制御する制御手段と、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記制御手段により前記第1のスイッチがオン状態に制御されたときの前記電圧測定手段で測定された第1の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された第1の抵抗に流れる電流値と、前記制御手段により前記第2のスイッチがオン状態に制御されたときの前記電圧測定手段で測定された第2の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された第2の抵抗に流れる電流値とを出力する出力手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1のスイッチと第2のスイッチとを、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御することを特徴とする。
【0021】
第1の態様のバッテリテスタがバッテリの状態を推定するのに対し、本態様のバッテリ状態監視装置は必ずしもバッテリの状態を推定する必要はなく、そのような推定は、例えば、バッテリ状態監視装置外の外部装置で行われる。このため、外部装置がバッテリの状態を推定できるように、バッテリのオーミックな抵抗成分およびバッテリの電荷移動抵抗成分を検出するためのパラメータ(バッテリの開回路電圧値、第1の抵抗の両端電圧値、第1の抵抗に流れる電流値、第2の抵抗の両端電圧値、第2の抵抗に流れる電流値)を外部装置に対して伝達するための出力手段を備えている。本態様のバッテリ状態監視装置によれば、出力手段がバッテリのオーミックな抵抗成分およびバッテリの電荷移動抵抗成分を検出するためのパラメータを出力するので、外部装置はこのパラメータによりバッテリの状態を精度よく推定できるとともに、通電パルスが長いパルス幅でも1s以下であり通電電流もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し通電抵抗を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる。
【0022】
第3の態様において、出力手段による出力が、ディスプレイ若しくはプリンタによりなさるか、または、電波若しくは光を媒体とする無線信号発信機による送信によりなされるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1および第2の態様によれば、制御手段が、バッテリの開回路電圧値と、第1のスイッチを所定範囲の短いパルス幅でオン状態に制御した状態で測定した第1の抵抗の両端電圧値および第1の抵抗に流れる電流値とからバッテリのオーミックな抵抗成分を適正に検出でき、このオーミックな抵抗成分と、バッテリの開回路電圧値と、第2のスイッチを所定範囲の長いパルス幅でオン状態に制御した状態で測定した第2の抵抗の両端電圧値および第2の抵抗に流れる電流値とからバッテリの電荷移動抵抗成分を適正に検出できるため、この2つの抵抗値および開回路電圧値を用いてバッテリの状態を精度よく推定することができるとともに、通電パルスが長いパルス幅でも1s以下であり通電電流もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し通電抵抗を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる、という効果を得ることができる。
【0024】
また、本発明の第3の態様によれば、出力手段がバッテリのオーミックな抵抗成分およびバッテリの電荷移動抵抗成分を検出するためのパラメータを出力するので、外部装置によりバッテリの状態を精度よく推定できるとともに、通電パルスが長いパルス幅でも1s以下であり通電電流もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し通電抵抗を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用可能な第1実施形態のバッテリテスタのブロック回路図である。
【図2】第1実施形態のバッテリテスタのマイクロプロセッサのCPUが実行するバッテリ状態推定ルーチンのフローチャートである。
【図3】バッテリに通電する電流の印加波形を示す説明図である。
【図4】スイッチをオン状態に制御する周波数のナイキストプロットである。
【図5】周波数の誤差に起因する内部抵抗の誤差を示す説明図である。
【図6】第1実施形態のバッテリテスタのマイクロプロセッサのROMに格納されたコールドクランキングアンペア、開回路電圧およびバッテリ状態の関係を表す第1の関係マップの説明図である。
【図7】第1実施形態のバッテリテスタのマイクロプロセッサのROMに格納されたバッテリの内部抵抗と健康度との関係を表す第2の関係マップの説明図である。
【図8】第1実施形態のバッテリテスタのマイクロプロセッサのROMに格納されたバッテリの開回路電圧と充電状態との関係を表す第3の関係マップの説明図である。
【図9】本発明が適用可能な第2実施形態のバッテリ状態監視装置のブロック回路図である。
【図10】第2実施形態のバッテリ状態監視装置のマイクロプロセッサのCPUが実行するバッテリ状態監視ルーチンのフローチャートである。
【図11】バッテリ診断システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明を、自動車用バッテリの状態を推定するバッテリテスタに適用した実施の形態について説明する。
【0027】
<構成>
図1に示すように、バッテリテスタ1は、自動車用バッテリ(例えば、JIS−D5301記載の80D26形電池、以下、単にバッテリという。)10の正極外部端子および負極外部端子にそれぞれ正負極クリップを介して接続される。図1では、ユーザにより正負極クリップを介してバッテリテスタ1がバッテリ10の正負極外部端子にそれぞれ接続された状態を示している。
【0028】
バッテリテスタ1の本体はバッテリ10の上蓋に固定されており、その固定方法としては、例えば、上蓋の表面に両面テープで固定したり、上蓋の表面の凹凸にバッテリテスタ1を嵌合させたり、上蓋の窪みにバッテリテスタ1を入れて接着剤や熱溶着(ホットメルト)などで固定することができる。上蓋の表面からバッテリテスタ1の本体が飛び出ていると、バッテリ10の収納部内の他の部品と干渉するおそれがあるため、上蓋の窪みにバッテリテスタ1を収容し、上蓋の表面のツラから飛び出さないようにバッテリテスタ1を固定することが望ましい。
【0029】
正負極クリップは、正極外部端子と負極外部端子とに接続される際の誤接続を防ぐために、クリップを覆うカバーの色が異なっている。また、本例では、正極外部端子に接続される正極クリップには、サーミスタTH等の温度センサが固着している。
【0030】
正負極クリップには、第1のスイッチSW1と第1の抵抗R1とが直列に接続された第1の通電回路と、第2のスイッチSW2と第2の抵抗R2とが直列に接続された第2の通電回路とがそれぞれ並列に接続されている。第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2は、例えば、FET等のスイッチング素子で構成することができる。
【0031】
正負極クリップには、バッテリ10の開回路電圧値(OCV)を測定する電圧測定回路3が接続されている。電圧測定回路3は、さらに、第1のスイッチSW1を閉じたとき(オン状態としたとき)の第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)、および、第2のスイッチSW2を閉じたときの第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)を測定するために、第1の抵抗R1の両端および第2の抵抗R2の両端にも接続されている。電圧測定回路3は、インピーダンス等による影響を低減させる差動増幅回路およびデジタル電圧値を出力するためのA/Dコンバータを含んで構成されている。電圧測定回路3の出力側はマイクロプロセッサ2に接続されている。
【0032】
本例では、電圧測定回路3を構成するA/Dコンバータに、自動車用12Vモノブロック電池のJIS規格電池で一番大きな245H52形電池(公称容量:176Ah)でも、2Aで10LSB以上の値として分極が測定できる20Vフルスケール16ビットA/Dコンバータを使用した。10LSB以上を基準とした理由は、通常A/Dコンバータは3LSB程度の誤差を含むため、有意な電圧測定値であるためには、測定値が3LSBより充分大きな値である必要があるからである。なお、本例ではA/Dコンバータは10μsのサンプリング速度で作動する。
【0033】
また、バッテリテスタ1は、ホール素子HS等の電流センサを介して第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)および第2の抵抗R2に流れる電流値(I2)を測定する第1電流測定回路41および第2電流測定回路42を有しており、これらの電流測定回路の出力側はそれぞれマイクロプロセッサ2に接続されている。また、上述した温度センサTHは温度測定回路5に接続されており、温度測定回路5の出力側はマイクロプロセッサ2に接続されている。第1電流測定回路41、第2電流測定回路42および温度測定回路5はそれぞれA/Dコンバータを含んで構成されている。なお、本例では、第1電流測定回路41および第2電流測定回路42のA/Dコンバータは、電圧測定回路3のA/Dコンバータと同じく10μsのサンプリング速度で作動する。
【0034】
このように第1の抵抗R1、第2の抵抗R2の両端電圧を測定するのは、FET等で構成される第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2のオン状態での抵抗の影響による誤差を低減させるためであり、また、これらの抵抗に流れる電流を別々の電流測定回路で測定するのは、後述するように2つの抵抗に流れる電流値が1桁異なるため測定電流値に即した電流測定回路で測定することで誤差を低減させるためであり、ひいては、後述するバッテリ10のオーミックな抵抗成分および電荷移動抵抗成分を精度よく測定するためである。
【0035】
また、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2はマイクロプロセッサ2に接続されており、マイクロプロセッサ2から出力される信号に従ってオン、オフが制御される。
【0036】
さらに、マイクロプロセッサ2には、マイクロプロセッサ2による測定、演算結果を液晶表示するとともに、入力装置としても機能するミニタッチパネル7、マイクロプロセッサ2による測定、演算結果を所定用紙に印刷するためのミニプリンタ8およびバッテリ10の異常状態を報知するための異常報知回路6が接続されている。異常報知回路6は、例えば、ブザーおよびブザー作動回路を含んで構成することができ、または、電波や光を媒体とする無線信号発信回路(発信機)であってもよい。光を媒体とする場合には、例えば、複数個のLEDによる点滅で測定、演算結果等のデータを外部装置にシリアル送信するようにしてもよい。
【0037】
マイクロプロセッサ2は、中央演算処理装置として機能するCPU、CPUのワークエリアとして働くRAM、CPUのプログラムや後述する関係マップ、式、第1の抵抗R1および第2の抵抗R2の抵抗値等が格納されたROMを含んで構成されている。
【0038】
<第1、第2通電回路>
ここで、第1、第2通電回路を構成する第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2のマイクロプロセッサ2によるオン制御時間および第1、第2の通電回路の抵抗の抵抗値について本発明に至った経緯も含めて説明する。
【0039】
1.スイッチのオン制御時間
図3に示すように、0.5ms30Aと0.5s2Aのパルスを組み合わせた波形を、JIS−D5301の自動車用鉛蓄電池80D26に印加した。30A、2Aとした理由については後述する(「2.第1、第2の通電回路の抵抗の抵抗値」参照)。電気化学セルの抵抗は一般に時間依存性があり、複素インピーダンスの周波数分散解析がバッテリの特性評価に用いられる。図4に示すように、80D26の虚数部−実数部インピーダンス応答は、円弧とその右側に伸びる直線からなっており、1Hzで虚数部が極小値をとり、1kHzで虚数部がゼロとなる。これは、一般に知られるランドレス(Randles)等価回路と呼ばれる、電気化学システム等価回路モデルに対応するものであり、高周波側の虚数部がゼロのときの実数部の抵抗がオーミックな抵抗Rohmで、より低周波数側での虚数部が極小値をとっている周波数での実数部の値が、オーミックな抵抗Rohmと電荷移動抵抗Retの和である。
【0040】
オーミックな抵抗Rohm、電荷移動抵抗Retは、Rohm=1kHz抵抗、Ret=1Hz抵抗−1kHz抵抗と表すことができる。上述した式(2)を用いて直流パルスの場合に換算すると、Rohm=パルス幅0.5ms抵抗=(パルス前電圧−0.5ms電圧)/0.5ms電流と表すことができる。0.5ms電流はバッテリテスタ1の内部を流れる電流として扱う。これは、負荷放電中や充電用電源で充電中に試験しないことを想定しているためである。負荷放電中や充電用電源で充電中に試験する場合はクランプメータなど、それらの充放電電流も測定し0.5ms電流に加える必要があり、コストの制約がなければそのようにしてもよい。ただし、負荷放電中や充電用電源で充電中に試験しないよう手順を明記すれば済むことなので、クランプメータを省いてコストを下げるほうが望ましい。また、Ret=パルス幅0.5s抵抗−パルス幅0.5ms抵抗と表すことができる。なお、本実施形態における具体的なオーミックな抵抗Rohm、電荷移動抵抗Retの算出式については後述する。
【0041】
図4を参照すると、極小値近辺は曲線の傾きが大きいので、周波数がずれて測定点が多少ずれても測定されるインピーダンスの実数成分はあまり変わらないように思われる。本発明の特徴の1つは、バッテリでのオーミックな抵抗Rohmと電荷移動抵抗Retを測定するのに適した周波数を見い出し、それらの周波数で測定した電圧値および電流値を用いてバッテリの劣化を推定することを明らかにしたところにある。測定する周波数がばらついたり、バッテリのばらつきのために周波数とインピーダンスとの対応がずれたりした場合の誤差が小さくなる周波数を選ぶことを考えた。
【0042】
周波数に起因するR実数成分測定誤差の指標を−dR実数成分/dln(周波数f)と表し、各周波数でこの値を図4の実験データを元に計算したところ、図5が得られた。例えば、図4を測定した周波数が35個の場合、f(1),f(2),・・・,f(35)で表すと、f(1)=0.01、f(2)=f(1)×1.4678、f(3)=f(2)×1.4678、f(35)=f(34)×1.4678で計算し周波数を決め、周波数f(n)で実測されたR実数成分をR(n)と表すと、−dR実数成分/dln(周波数f)≒−(R(n)−R(n−1))/(ln(f(n))−ln(f(n−1)))として図5を計算できる。図5を参照すると、0.5〜2Hz(パルス幅換算1s〜0.25ms)の低周波と300Hz〜3kHz(パルス幅換算1.7ms〜0.17ms)の高周波領域で誤差が小さくなっていることが分かった。
【0043】
バッテリテスタとして利用する場合は、これらの2つの領域の周波数に相当する短いパルス幅1.7ms〜0.17msと、長いパルス幅1s〜0.25msとで通電し、その際の電圧値、電流値からバッテリのオーミックな抵抗Rohmおよび電荷移動抵抗Retを算出すればよい。
【0044】
このため、本実施形態では、マイクロプロセッサ2のCPUによる第1のスイッチSW1のオン時間を短いパルス幅内の0.5ms、第2のスイッチSW2のオン時間を長いパルス幅内の0.5sに設定し、異なる時間にこれら2つのスイッチをオン状態に制御、より具体的には、第2のスイッチSW2をオフ状態とし第1のスイッチSW1を短いパルス幅(0.5ms)でオン状態に制御した後直ちに、第1のスイッチSW1をオフ状態とし第2のスイッチSW2を長いパルス幅(0.5s)でオン状態に制御する構成とした。なお、バッテリ10のオーミックな抵抗Rohmおよび電荷移動抵抗Retを算出するには、バッテリ10の開回路電圧も測定する必要があり、その測定タイミングはバッテリテスタ1による通電の前後いずれかに限られるが、第1、第2の通電回路の通電による分極の影響を避けるため、第1、第2の通電回路の通電前が好ましい。また、第1のスイッチSW1をオン状態に制御した直後に、第2のスイッチSW2をオン状態に制御するのは、逆の場合やその間にインターバルを設ける場合と比べバッテリの残存容量の変化による影響が小さいと考えたからであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0045】
2.第1、第2の通電回路の抵抗の抵抗値
バッテリ10に通電する電流は複数回連続でも単発でも構わないが、時間を短くするという意図と、バッテリテスタ1の温度が上昇することによる制御・測定系への悪影響を除くため、温度上昇が5K以下になるよう波形連続印加回数を設定することが望ましい。また、短時間でユーザが多数のバッテリを連続テストする可能性もあるので、その場合でも温度が異常に高くならないように余裕をもった設計とする必要がある。温度上昇を抑制するため、バッテリテスタ1の内部は熱伝導率および熱容量が比較的大きな材料で充填されていることが望ましい。このような材料には、例えば、シリコン粒子をフィラーに使ったエポキシ樹脂が挙げられる。以下の式(3)によって、1回のテストでの波形連続印加回数nの上限が概算できる。
【0046】
【数3】
【0047】
例えば、波形が100Hz0A〜1A矩形波(0A5ms+1A5ms)の場合、単発波形電気量=5mCとなる。短時間ユーザ連続テスト回数を50回とし、テスタ内部は酸化ケイ素などセラミックのフィラーを使った樹脂が充填され、バッテリテスタ熱容量を80J/Kとすると、n=133回となる。これを時間に直すと、133回/100Hz=1.3秒となる。これは1回のテストの時間として十分短い時間である。このため、例えば、133回波形を印加して平均化処理を行うことで推定精度を上げるようにしてもよい。
【0048】
発熱が大きいと抵抗の抵抗値が変動して電流測定精度が悪くなったり、ひどい場合には部品が壊れたり、テスタ表面まで熱くなり手で持てなくなる可能性がある。このため、発熱の問題を避ける点も考慮し、上述したように、長いパルス幅のパルスでは電流を小さくし2Aとした。
【0049】
一方、1.7ms〜0.17msの短いパルス幅の電流は、JIS−D5301に規定された各種電池型式のバッテリにおいて劣化バッテリの検出に適した電流を調べたところ30Aとなったので、30Aとした。劣化バッテリの検出に適しているかどうかは、同一規格の新品バッテリと劣化バッテリで各種電流で放電して内部抵抗を測定し、新品バッテリと劣化バッテリで内部抵抗の違いが大きい電流を劣化バッテリの検出に適していると判断した。1.7ms〜0.17ms30Aでは発熱の問題は起き難いので、短いパルスでは発熱を理由に電流を制限する必要なかった。
【0050】
以上を前提に、本実施形態では、第1の抵抗R1に巻き線型の0.4Ω(誤差精度5%)の定抵抗、第2の抵抗R2に巻き線型の6Ω(誤差精度5%)の定抵抗を用いた。なお、これらの抵抗値では、図3に示すV1が約300mV、V2が約100mVとなる。
【0051】
<動作>
次に、マイクロプロセッサ2のCPU(以下、単にCPUという。)が実行するバッテリ状態推定ルーチンについて説明する。なお、ユーザは正負極クリップをそれぞれ正負極端子に接続し、タッチパネル7の所定箇所にタッチすることでバッテリ状態推定ルーチンが開始される。
【0052】
図2に示すように、ステップ104において、CPUは電圧測定回路3から出力されたバッテリ10の開回路電圧値(OCV)を取り込む。なお、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2はオフ状態のままである。また、ステップ104では、温度測定回路5から出力された温度値を取り込む。
【0053】
次にステップ106では、第1のスイッチSW1を0.5msの間オン状態に制御し、次のステップ108において、第1のスイッチSW1がオン状態に制御されている間に、電圧測定回路3から出力された第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)および第1電流測定回路41から出力された第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)を取り込む。なお、この状態で、第2のスイッチSW2はオフ状態のままである。
【0054】
次いでステップ110では、第1のスイッチSW1をオフ状態、第2のスイッチSW2を0.5sの間オン状態に制御し、次のステップ112において、第2のスイッチSW2がオン状態に制御されている間に、電圧測定回路3から出力された第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)および第2電流測定回路42から出力された第2の抵抗に流れる電流値(I2)を取り込む。この取り込みが終了すると、第2のスイッチSW2をオフ状態に制御する。
【0055】
次に、ステップ114において、測定した開回路電圧値(OCV)、第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)、第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)、第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)、第2の抵抗R2に流れる電流値(I2)から、下式(4)により、コールドクランキングアンペア(CCA)値を演算する。上述したように、OCV、V1、I1、V2、I2は、10μs毎に測定されるので、測定したそれぞれの平均値をOCV、V1、I1、V2、I2としてもよい。なお、CPUは、CCAを演算する際に、ROMに格納されRAMに展開されたRohmからRohm*への変換マップおよびRetからRet*への変換マップを参照する。
【0056】
【数4】
【0057】
次に、ステップ116において、測定したOCVと演算したCCAとを、図6に示すように、CCA、OCVおよびバッテリの状態の関係を定めた第1の関係マップに当てはめてバッテリ10の状態を推定する。なお、第1の関係マップは、予めROMに格納されRAMに展開されている。
【0058】
この第1の関係マップでは、新品バッテリでは理想的には図6の縦軸100%の位置(符号a参照)になるはずであるが、劣化するに従い下がり75%の位置(符号b参照)を良好/要交換判定のしきい値に設定したが、これに限るものではない。また、第1の関係マップには、バッテリの状態として、「劣化セル交換」、「良好要充電」、「良好」、「充電後再テスト」および「劣化交換」の5つに分類されているが、より多くまたは少なく分類するようにしてもよい。本例では、バッテリの状態推定結果として、タッチパネル7に5つに分類のうちのいずれかを表示する。
【0059】
また、ステップ116では、第1の関係マップにおいて、「劣化セル交換」または「劣化交換」の位置に該当する場合(バッテリが異常の場合)には、異常報知回路6に所定の信号(例えば、2値のハイレベル信号)を送出し、ブザー作動回路を作動させブザーによる警告音を発生させたり、異常報知回路6が無線信号発信回路で構成される場合には、外部装置による警告が可能なように、無線信号発信回路が外部装置に無線信号を発信させたりするようにしてもよい。
【0060】
次のステップ118では、バッテリ10の健康度(SOH)や充電状態(SOC)を推定し、タッチパネルに表示する。すなわち、図7に示すように、ROMには電荷移動抵抗Retと健康度(SOH)との関係を定めた第2の関係マップに実測したRetを当てはめてバッテリ10の健康度(SOH)を推定する。オーミックな抵抗とSOHは一般に対応する性質のものではないが、一方、電荷移動抵抗は電極の有効表面積や電解液中の電極反応種(硫酸)濃度に依存するので、鉛電池のような充電状態(SOC)によって有効表面積や電極反応種(硫酸)濃度が変わる電池系において電荷移動抵抗はSOHと対応する。残容量はSOHと1対1に対応する量なので、残容量を推定することもできる。また、図8に示すように、開回路電圧(OCV)と充電状態(SOC)との関係を定めた第3の関係マップにステップ104で測定した開回路電圧値(OCV)を当てはめてバッテリ10の充電状態(SOC)を推定する。なお、これらSOH、SOCを推定するにあたり、所定の温度でのSOH、SOCに温度補正することが好ましい。また、タッチパネル7を介して、測定結果や推定結果についてプリンタ8への出力指示がある場合には、指示に従い出力(印刷)する。ステップ118での処理が終了すると、バッテリ状態推定ルーチンは終了する。
【0061】
(作用効果等)
次に、本実施形態のバッテリテスタ1の作用効果等について説明する。
【0062】
本実施形態のバッテリテスタ1によれば、マイクロプロセッサ2は、バッテリ10のオーミックな抵抗Rohmと電荷移動抵抗Retとを算出する際の、周波数誤差がほぼ最小となるパルス幅内で第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2をオン状態に制御する。このため、マイクロプロセッサ2は、バッテリ10の開回路電圧値(OCV)と、第1のスイッチSW1を短いパルス幅(0.5ms)でオン状態に制御した状態で測定した第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)および第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)とからバッテリ10のオーミックな抵抗成分Rohmを適正に検出でき(式(4)参照)、このオーミックな抵抗成分Rohmと、バッテリ10の開回路電圧値(OCV)と、第2のスイッチSW2を長いパルス幅(0.5s)でオン状態に制御した状態で測定した第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)および第2の抵抗に流れる電流値(I2)とからバッテリ10の電荷移動抵抗Retを適正に検出できるため(式(4)参照)、バッテリ10の状態を精度よく推定することができる。
【0063】
また、本実施形態のバッテリテスタ1によれば、第1および第2の通電回路に流れる通電パルスが長いパルス幅(0.5s)でも1s以下であり、通電電流(30A)もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し、第1の抵抗R1、第2の抵抗R2を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる。
【0064】
さらに、本実施形態のバッテリテスタ1によれば、マイクロプロセッサ2は、第2のスイッチSW2をオフ状態とし第1のスイッチSW1を短いパルス幅(0.5ms)でオン状態に制御した後直ちに、第1のスイッチSW1をオフ状態とし第2のスイッチSW2を長いパルス幅(0.5s)でオン状態に制御するため、バッテリ10の残存容量の変化による影響を低減でき、バッテリ10の状態を精度よく推定することができる。
【0065】
また、本実施形態のバッテリテスタ1によれば、マイクロプロセッサ2は、開回路電圧値(OCV)、第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)および第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)と、第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)および第2の抵抗R2に流れる電流値(I2)とからバッテリ10の電荷移動抵抗値Retを算出し、算出した電荷移動抵抗値Retを、ROMに予め格納されたバッテリ10の電荷移動抵抗値Retと健康度との関係を定めた第2の関係マップに当てはめてバッテリ10の健康度(SOH)を推定するとともに、開回路電圧値(OCV)を、開回路電圧と充電状態との関係を定めた第3の関係マップに当てはめてバッテリ10の充電状態(SOC)を推定するので、バッテリ10の状態を詳しく検出することができる。
【0066】
さらに、本実施形態のバッテリテスタ1によれば、温度センサを有する温度測定回路5で測定された温度値により、算出したオーミックな抵抗Rohmおよび電荷移動抵抗Retを−18℃での値に温度補正するので、コールドクランキングアンペア値を精度よく算出することができ、その結果、バッテリ10の状態を適正に推定することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、コストの点を考慮し、電圧測定回路3を単一のものとしたが、本発明はこれに限らず、バッテリ10の開回路電圧を測定する開回路電圧測定部、第1の抵抗R1の両端電圧を測定する第1電圧測定部および第2の抵抗R2の両端電圧を測定する第2電圧測定部の3つの電圧測定部で構成するようにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、電流測定精度を高めるために、第1の抵抗R1に流れる電流を測定する第1電流測定回路41と、第2の抵抗R2に流れる電流を測定する第2電流測定回路42との2つの電流測定回路を例示したが、例えば、正極クリップと第2のスイッチSW2との間に電流センサを設け、第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2を閉じたときのバッテリ10に流れる電流を1つの電流測定回路で測定するようにしてもよい。この場合には、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2のオン状態時の抵抗を考慮して第1の抵抗R1や第2の抵抗R2に流れる電流値を算出するようにすればよい。
【0069】
さらに、本実施形態では、バッテリ10の温度を測定するために、正極クリップに温度センサを固着しバッテリ10の正極外部端子の温度をバッテリ10の温度として測定した例を示したが、温度センサをバッテリ10に固定することでバッテリ10の温度を測定するようにしてもよい。
【0070】
(第2実施形態)
次に、本発明を、自動車用バッテリの状態を監視するバッテリ状態監視装置に適用した第2の実施の形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態のバッテリテスタ1がバッテリの状態を推定するのに対し、そのような推定はバッテリ状態監視装置外の外部装置で行われ、バッテリ状態監視装置はそのためのパラメータ(OCV、V1、I1、V2、I2)を測定するものである。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一の部材およびルーチンには同一の符号を付してその説明を省略し、以下、異なる箇所のみ説明する。
【0071】
図9に示すように、第2実施形態のバッテリ状態監視装置20は、第1実施形態のバッテリテスタ1とほぼ同様の構成を有している。図1と比較して異なっている点は、図1のタッチパネル7に対し液晶表示装置(LCD)11と操作スイッチ12とを有する点、図1の異常報知回路6に代えて無線信号発信回路13を有する点である。無線信号送信回路13は、外部装置がバッテリ10の状態を推定できるように、バッテリ10のオーミックな抵抗Rohmおよびバッテリの電荷移動抵抗Retを算出するためのパラメータ(OCV、V1、I1、V2、I2)を外部装置に対して送信する。無線信号送信回路13による信号送信は、電波若しくは光を媒体とするものを用いることができる。光を媒体とする場合には、例えば、複数個のLEDによる点滅でデータを外部装置にシリアル送信するようにしてもよい。
【0072】
バッテリ状態監視装置20のマイクロプロセッサ2のCPUは、図10に示すバッテリ状態監視ルーチンを実行する。図2に示したバッテリ状態推定ルーチンとの相違点は、ステップ120〜ステップ124である。
【0073】
すなわち、ステップ120において、パラメータ、すなわち、測定したバッテリ10の開回路電圧値(OCV)、第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)、第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)、第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)および第2の抵抗R2に流れる電流値(I2)を液晶表示装置11に表示し、次のステップ122において、操作スイッチ12からプリンタ8への出力または無線信号送信回路13によるパラメータ送信の指示の入力がなされるまで待機し、指示の入力がなされると、ステップ124において、プリンタ8への出力または無線信号送信回路13によるパラメータ送信を行って、バッテリ状態監視ルーチンを終了する。
【0074】
図11は、バッテリ診断システムの説明図である。このようなバッテリ診断システムには、バッテリ状態監視装置20の使用者または使用する組織が必要であり、図11では協力会社と表されている。協力会社としては、バッテリチェックやバッテリ販売を事業とする会社が想定される。バッテリ状態監視装置20を使用する組織が自らバッテリ状態監視装置20を管理する場合は、その組織も図11の協力会社として位置づけられる。本例では、協力会社はバッテリメーカである新神戸電機(株)の100%子会社のバッテリ販売会社である日立バッテリー販売サービス(株)である。
【0075】
協力会社は、バッテリ状態監視装置20でバッテリ10の状態を監視し、無線信号発信回路13を介して無線で協力会社内PC60に上述したパラメータ(OCV、V1、I1、V2、I2)のデータを送信する。PC60が図1に示すステップ114〜ステップ118のバッテリ状態推定ルーチンを実行するように構成されていれば、協力会社はその場でバッテリ10の状態をユーザに知らせることができる。一方、そのような機能を有していなくても、PC60からインターネットを介して情報サービス事業者のデータベースサーバ73にバッテリ10の測定結果、すなわち、上述したパラメータが記憶される。このため、バッテリ状態監視装置20による監視は定期的でも不定期的でも構わない。
【0076】
情報サービス事業者は、バッテリメーカやバッテリ販売会社、バックアップ用バッテリを有するビルの管理会社などバッテリのメンテナンスに関わりのある会社であり、バッテリの管理に関する情報サービスを1事業として行っていることを想定している。本例では、情報サービス事業者はバッテリメーカである新神戸電機(株)である。インターネットで通信する際はSSLなどによる暗号化が望ましい。PC60とバッテリ状態監視装置20との間の通信は配線の簡略化やシステム開発の簡単さなどの理由により無線LANが望ましいが、無線LAN以外の無線や、有線であっても構わない。なお、無線は無線LANに使われる小電力データ通信システムか、リモコンなどで使われる特定省電力無線を使うと無線免許が不要なため、簡単にシステムを組むことができる。
【0077】
バッテリ状態監視装置20とインターネットの接続には既存のインターネットに接続可能なPCを利用する方が接続費用の追加発生金額が少なくて済むので望ましいが、必ずしもPCを介する必要は無く、PCを介さずに携帯電話回線でインターネットに接続してもよい。このような場合に、ユーザが参照可能なようにプリンタ8からの出力が有効である。バッテリ10を管理するユーザはバッテリ状態監視装置20の検知結果を、バッテリ状態監視装置20を操作することで情報提供してもらうことも可能であり、情報サービス事業者からバッテリの履歴情報詳細を情報提供してもらうこともできる。例えば、バッテリ10の内部抵抗が急に大きくなり始めたなどの異常を検知すると、ユーザに情報サービス事業者が電話やEメールなどで情報提供する。情報サービス業者からの情報提供のため、電話、郵送、Eメール、ホームページ登録フォームによるユーザ登録などにより情報提供先を登録可能となっている。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
第1実施形態に従って実施例1のバッテリテスタを作製した。
【0079】
(比較例1)
低電流の段続放電で内部抵抗を評価し、抵抗とCCAの換算表を参照してCCAを推定し表示するバッテリテスタがある。例えば、5ms1A放電5ms休止を繰り返す100Hz断続放電を約4秒間行うが、周波数が不適切なので、ばらつきが大きい。インピーダンスの周波数依存性は電池設計と関わってくるので、特定のメーカの電池で誤判定が出るなどの問題が出やすい。また、通電時間が長いので、電流が小さくても発熱が無視できない程度に大きく、連続して使っているとバッテリテスタが熱くなり、誤差が大きくなる、発火事故の原因となる等の可能性がある。
【0080】
(比較例2)
100A5秒など、大電流を数秒の比較的長い時間流して、その時の電圧から電池の劣化状態の良否を判定する方法がある。拡散抵抗が影響する時間スケールなので、比較的精度がよいが、発熱が大きいため、温度上昇を抑えるため熱容量の大きい巨大な抵抗を使用し装置が大きくなる、連続して試験ができないなどの問題がある。
【0081】
以上を纏めると、下表1のようになり、実施例1のバッテリテスタが優れていることが分かる。
【0082】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は発熱が少なく小型で高精度のバッテリテスタ、該バッテリテスタを備えたバッテリおよびバッテリ状態監視装置を提供するものであるため、バッテリテスタ、バッテリおよびバッテリ状態監視装置の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0084】
1 バッテリテスタ
2 マイクロプロセッサ(制御手段、記憶手段)
3 電圧測定回路(電圧測定手段の一部)
6 異常報知回路(異常状態報知手段)
8 プリンタ(出力手段の一部)
10 バッテリ
11 液晶表示装置(出力手段の一部、ディスプレイ)
13 無線信号発信回路(無線信号発信機、出力手段の一部)
20 バッテリ状態監視装置
41 第1電流測定回路(電流測定手段の一部)
42 第2電流測定回路(電流測定手段の一部)
R1 第1の抵抗
R2 第2の抵抗
SW1 第1のスイッチ
SW2 第2のスイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリテスタ、バッテリおよびバッテリ状態監視装置に係り、特に、バッテリ放電機能を有するバッテリテスタ、該バッテリテスタを備えたバッテリおよびバッテリの状態を監視するバッテリ状態監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
UPS、非常灯、非常放送設備、電話交換機、通信機器基地局など、非常時のバックアップを想定した機器や、自動車、電動車などでバッテリが使用されている。これらの機器はバッテリの劣化や放電などにより機能を発揮できなくなる。これを避けるため、バッテリの性能が低下しているかを確認する装置がある。このような装置として、例えば、バッテリ放電機能を持たないバッテリ監視装置やバッテリ放電機能を持つバッテリテスタが知られている。
【0003】
バッテリテスタは、バッテリをパルス放電させ、その時の電圧、電流から求めた内部抵抗や電導度(内部抵抗の逆数)の値を表示したり、コールドクランキングアンペア(CCA)に換算し表示したりする。また、バッテリテスタは、バッテリの充電状態(SOC)についても検出可能であり、電流が流れていない状態かごくわすがしか電流が流れていない状態でのバッテリ電圧から推定し表示したりしている。
【0004】
劣化バッテリでの健康度(SOH)や容量は、複素インピーダンスの周波数分散データへのカーブフィッティングにより等価回路のパラメータを測定することから求めることができるが、印加波形が正弦波となるため、装置が高コストであり一般的ではない。
【0005】
一般的なバッテリテスタは、定抵抗放電によるものであり(例えば、特許文献1参照)、大きく分けて、100Aの大電流で5秒程度バッテリを放電させるものと、1A〜100Aで1ms〜10msの放電させるものがある。前者はエンジン始動時の電流を模擬したものであり、エンジン始動用バッテリの試験方法としては妥当性がある。後者は、単発パルス時間幅が充分短いので、複数回放電するのが一般的であり、得られた複数のデータは平均化処理など精度向上のための処理に利用する。後者は一般に装置が小さく、近年普及してきている。定抵抗放電の場合は単発パルスの形状は矩形波であり、複数回放電する場合は、パルス間隔t1は以下の式(1)で表される。
【0006】
【数1】
【0007】
複数回放電するタイプの既存の製品では放電パルス幅と休止時間を同一とするのが一般的であり、この場合、パルス幅t2(s)と周波数f(Hz)は以下の式(2)で表される関係となる。
【0008】
【数2】
【0009】
例えば、パルス幅10msは周波数50Hzに相当する。バッテリテスタでパルス幅t2の単一直流パルス波を印加した場合と、周波数fの交流波を印加した場合とでは、直流と交流の違いはあるが、同一の時間スケールなので、得られる情報は基本的に同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4414757号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の定抵抗放電によるバッテリテスタのうち100A5秒程度でバッテリを放電させるものは、放電電流が大きく通電時間も長いため、発熱の問題を回避するため巨大なホーロー抵抗が使われ、装置が大型化することが問題であり、また、何回も連続して測定した場合にバッテリテスタの温度が非常に高くなることも誤差増大や安全性の面で問題である。一方、従来の定抵抗放電によるバッテリテスタのうち1A〜100Aで1ms〜10msの放電させるものは、精度に劣るという問題がある。すなわち、1ms〜10ms(500Hz〜50Hz)の範囲では電気二重層の充放電が充分行われないためオーミックな抵抗成分が主となり、オーミックな抵抗は格子腐食の劣化情報を含むが、SOHや容量はこのオーミックな抵抗と対応する性質のものではないため、一般的に、不特定の劣化モードのバッテリ、または不特定の型式のバッテリのオーミックな抵抗からSOHや容量を推定することはできない。
【0012】
本発明は上記事案に鑑み、発熱が少なく小型で高精度のバッテリテスタ、該バッテリテスタを備えたバッテリおよびバッテリ状態監視装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、バッテリテスタであって、第1の抵抗と第1のスイッチとを有し、バッテリに並列接続される第1の通電回路と、第2の抵抗と第2のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第2の通電回路と、前記バッテリの開回路電圧、前記第1および第2の抵抗の両端電圧を測定する電圧測定手段と、前記第1および第2の抵抗に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記第1および第2のスイッチのオン、オフを制御し、前記電圧測定手段で測定された電圧値および前記電流測定手段で測定された電流値から前記バッテリの状態を推定する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1のスイッチと第2のスイッチとを、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御し、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記第1のスイッチをオン状態に制御したときの前記電圧測定手段で測定された前記第1の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された前記第1の抵抗に流れる電流値と、前記第2のスイッチをオン状態に制御したときの前記電圧測定手段で測定された前記第2の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された前記第2の抵抗に流れる電流値とから前記バッテリのオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値を算出し、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と前記算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とから前記バッテリの状態を推定する、ことを特徴とする。
【0014】
第1の態様では、制御手段により、第1のスイッチと第2のスイッチとが、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御され、電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、第1のスイッチをオン状態に制御したときの電圧測定手段で測定された第1の抵抗の両端電圧値および電流測定手段で測定された第1の抵抗に流れる電流値と、第2のスイッチをオン状態に制御したときの電圧測定手段で測定された第2の抵抗の両端電圧値および電流測定手段で測定された第2の抵抗に流れる電流値とからバッテリのオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値が算出され、電圧測定手段で測定された開回路電圧値と算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とからバッテリの状態が推定される。本態様によれば、制御手段が、バッテリの開回路電圧値と、第1のスイッチを所定範囲の短いパルス幅でオン状態に制御した状態で測定した第1の抵抗の両端電圧値および第1の抵抗に流れる電流値とからバッテリのオーミックな抵抗成分を適正に検出でき、このオーミックな抵抗成分と、バッテリの開回路電圧値と、第2のスイッチを所定範囲の長いパルス幅でオン状態に制御した状態で測定した第2の抵抗の両端電圧値および第2の抵抗に流れる電流値とからバッテリの電荷移動抵抗成分を適正に検出できるため、この2つの抵抗値および開回路電圧値を用いてバッテリの状態を精度よく推定することができるとともに、通電パルスが長いパルス幅でも1s以下であり通電電流もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し通電抵抗(第1、第2の抵抗)を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる。
【0015】
第1の態様において、コールドクランキングアンペア、開回路電圧およびバッテリの状態の関係を定めた第1の関係マップを予め記憶した記憶手段をさらに備え、制御手段は、電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とからコールドクランキングアンペア値を算出し、該算出したコールドクランキングアンペア値と電圧測定手段で測定された開回路電圧値とを記憶手段に記憶された第1の関係マップに当てはめてバッテリの状態を推定するようにしてもよい。また、制御手段は、第2のスイッチをオフ状態とし第1のスイッチを短いパルス幅でオン状態に制御した後直ちに、第1のスイッチをオフ状態とし第2のスイッチを長いパルス幅でオン状態に制御するようにしてもよい。
【0016】
また、記憶手段は予めバッテリの電荷移動抵抗と健康度との関係を定めた第2の関係マップをさらに記憶しており、制御手段は、算出した電荷移動抵抗値を第2の関係マップに当てはめてバッテリの健康度を推定するようにしてもよい。さらに、記憶手段は予めバッテリの開回路電圧と充電状態との関係を定めた第3の関係マップをさらに記憶しており、制御手段は、開回路電圧値を第3の関係マップに当てはめてバッテリの充電状態を推定するようにしてもよい。また、バッテリの外部端子に接続するためのクリップを備え、クリップは温度センサを有しており、制御手段は、温度センサで測定された温度値によりコールドクランキングアンペア値を予め定められた温度のコールドクランキングアンペア値に温度補正するようにしてもよい。
【0017】
さらに、バッテリの異常状態を報知するための異常状態報知手段を備え、制御手段は、第1の関係マップに当てはめて推定したバッテリの状態が異常か否かをさらに判断し、該判断が肯定のときに異常状態報知手段がバッテリの異常状態を報知するように、異常状態報知手段に予め定められた信号を出力するようにしてもよい。このとき、異常状態報知手段は、ブザー、または、電波若しくは光を媒体とする無線信号発信機であってもよい。
【0018】
このようなバッテリテスタは、バッテリの蓋に固定されていることが好ましい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の態様は、第1の態様のバッテリテスタを備えたバッテリである。本態様でも上述した第1の態様と同様の作用効果を奏する。
【0020】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の第3の態様は、バッテリ状態監視装置であって、第1の抵抗と第1のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第1の通電回路と、第2の抵抗と第2のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第2の通電回路と、前記バッテリの開回路電圧、前記第1および第2の抵抗の両端電圧を測定する電圧測定手段と、前記第1および第2の抵抗に流れる電流を測定する電流測定手段と、前記第1および第2のスイッチのオン、オフを制御する制御手段と、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記制御手段により前記第1のスイッチがオン状態に制御されたときの前記電圧測定手段で測定された第1の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された第1の抵抗に流れる電流値と、前記制御手段により前記第2のスイッチがオン状態に制御されたときの前記電圧測定手段で測定された第2の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された第2の抵抗に流れる電流値とを出力する出力手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1のスイッチと第2のスイッチとを、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御することを特徴とする。
【0021】
第1の態様のバッテリテスタがバッテリの状態を推定するのに対し、本態様のバッテリ状態監視装置は必ずしもバッテリの状態を推定する必要はなく、そのような推定は、例えば、バッテリ状態監視装置外の外部装置で行われる。このため、外部装置がバッテリの状態を推定できるように、バッテリのオーミックな抵抗成分およびバッテリの電荷移動抵抗成分を検出するためのパラメータ(バッテリの開回路電圧値、第1の抵抗の両端電圧値、第1の抵抗に流れる電流値、第2の抵抗の両端電圧値、第2の抵抗に流れる電流値)を外部装置に対して伝達するための出力手段を備えている。本態様のバッテリ状態監視装置によれば、出力手段がバッテリのオーミックな抵抗成分およびバッテリの電荷移動抵抗成分を検出するためのパラメータを出力するので、外部装置はこのパラメータによりバッテリの状態を精度よく推定できるとともに、通電パルスが長いパルス幅でも1s以下であり通電電流もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し通電抵抗を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる。
【0022】
第3の態様において、出力手段による出力が、ディスプレイ若しくはプリンタによりなさるか、または、電波若しくは光を媒体とする無線信号発信機による送信によりなされるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第1および第2の態様によれば、制御手段が、バッテリの開回路電圧値と、第1のスイッチを所定範囲の短いパルス幅でオン状態に制御した状態で測定した第1の抵抗の両端電圧値および第1の抵抗に流れる電流値とからバッテリのオーミックな抵抗成分を適正に検出でき、このオーミックな抵抗成分と、バッテリの開回路電圧値と、第2のスイッチを所定範囲の長いパルス幅でオン状態に制御した状態で測定した第2の抵抗の両端電圧値および第2の抵抗に流れる電流値とからバッテリの電荷移動抵抗成分を適正に検出できるため、この2つの抵抗値および開回路電圧値を用いてバッテリの状態を精度よく推定することができるとともに、通電パルスが長いパルス幅でも1s以下であり通電電流もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し通電抵抗を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる、という効果を得ることができる。
【0024】
また、本発明の第3の態様によれば、出力手段がバッテリのオーミックな抵抗成分およびバッテリの電荷移動抵抗成分を検出するためのパラメータを出力するので、外部装置によりバッテリの状態を精度よく推定できるとともに、通電パルスが長いパルス幅でも1s以下であり通電電流もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し通電抵抗を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる、という効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明が適用可能な第1実施形態のバッテリテスタのブロック回路図である。
【図2】第1実施形態のバッテリテスタのマイクロプロセッサのCPUが実行するバッテリ状態推定ルーチンのフローチャートである。
【図3】バッテリに通電する電流の印加波形を示す説明図である。
【図4】スイッチをオン状態に制御する周波数のナイキストプロットである。
【図5】周波数の誤差に起因する内部抵抗の誤差を示す説明図である。
【図6】第1実施形態のバッテリテスタのマイクロプロセッサのROMに格納されたコールドクランキングアンペア、開回路電圧およびバッテリ状態の関係を表す第1の関係マップの説明図である。
【図7】第1実施形態のバッテリテスタのマイクロプロセッサのROMに格納されたバッテリの内部抵抗と健康度との関係を表す第2の関係マップの説明図である。
【図8】第1実施形態のバッテリテスタのマイクロプロセッサのROMに格納されたバッテリの開回路電圧と充電状態との関係を表す第3の関係マップの説明図である。
【図9】本発明が適用可能な第2実施形態のバッテリ状態監視装置のブロック回路図である。
【図10】第2実施形態のバッテリ状態監視装置のマイクロプロセッサのCPUが実行するバッテリ状態監視ルーチンのフローチャートである。
【図11】バッテリ診断システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明を、自動車用バッテリの状態を推定するバッテリテスタに適用した実施の形態について説明する。
【0027】
<構成>
図1に示すように、バッテリテスタ1は、自動車用バッテリ(例えば、JIS−D5301記載の80D26形電池、以下、単にバッテリという。)10の正極外部端子および負極外部端子にそれぞれ正負極クリップを介して接続される。図1では、ユーザにより正負極クリップを介してバッテリテスタ1がバッテリ10の正負極外部端子にそれぞれ接続された状態を示している。
【0028】
バッテリテスタ1の本体はバッテリ10の上蓋に固定されており、その固定方法としては、例えば、上蓋の表面に両面テープで固定したり、上蓋の表面の凹凸にバッテリテスタ1を嵌合させたり、上蓋の窪みにバッテリテスタ1を入れて接着剤や熱溶着(ホットメルト)などで固定することができる。上蓋の表面からバッテリテスタ1の本体が飛び出ていると、バッテリ10の収納部内の他の部品と干渉するおそれがあるため、上蓋の窪みにバッテリテスタ1を収容し、上蓋の表面のツラから飛び出さないようにバッテリテスタ1を固定することが望ましい。
【0029】
正負極クリップは、正極外部端子と負極外部端子とに接続される際の誤接続を防ぐために、クリップを覆うカバーの色が異なっている。また、本例では、正極外部端子に接続される正極クリップには、サーミスタTH等の温度センサが固着している。
【0030】
正負極クリップには、第1のスイッチSW1と第1の抵抗R1とが直列に接続された第1の通電回路と、第2のスイッチSW2と第2の抵抗R2とが直列に接続された第2の通電回路とがそれぞれ並列に接続されている。第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2は、例えば、FET等のスイッチング素子で構成することができる。
【0031】
正負極クリップには、バッテリ10の開回路電圧値(OCV)を測定する電圧測定回路3が接続されている。電圧測定回路3は、さらに、第1のスイッチSW1を閉じたとき(オン状態としたとき)の第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)、および、第2のスイッチSW2を閉じたときの第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)を測定するために、第1の抵抗R1の両端および第2の抵抗R2の両端にも接続されている。電圧測定回路3は、インピーダンス等による影響を低減させる差動増幅回路およびデジタル電圧値を出力するためのA/Dコンバータを含んで構成されている。電圧測定回路3の出力側はマイクロプロセッサ2に接続されている。
【0032】
本例では、電圧測定回路3を構成するA/Dコンバータに、自動車用12Vモノブロック電池のJIS規格電池で一番大きな245H52形電池(公称容量:176Ah)でも、2Aで10LSB以上の値として分極が測定できる20Vフルスケール16ビットA/Dコンバータを使用した。10LSB以上を基準とした理由は、通常A/Dコンバータは3LSB程度の誤差を含むため、有意な電圧測定値であるためには、測定値が3LSBより充分大きな値である必要があるからである。なお、本例ではA/Dコンバータは10μsのサンプリング速度で作動する。
【0033】
また、バッテリテスタ1は、ホール素子HS等の電流センサを介して第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)および第2の抵抗R2に流れる電流値(I2)を測定する第1電流測定回路41および第2電流測定回路42を有しており、これらの電流測定回路の出力側はそれぞれマイクロプロセッサ2に接続されている。また、上述した温度センサTHは温度測定回路5に接続されており、温度測定回路5の出力側はマイクロプロセッサ2に接続されている。第1電流測定回路41、第2電流測定回路42および温度測定回路5はそれぞれA/Dコンバータを含んで構成されている。なお、本例では、第1電流測定回路41および第2電流測定回路42のA/Dコンバータは、電圧測定回路3のA/Dコンバータと同じく10μsのサンプリング速度で作動する。
【0034】
このように第1の抵抗R1、第2の抵抗R2の両端電圧を測定するのは、FET等で構成される第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2のオン状態での抵抗の影響による誤差を低減させるためであり、また、これらの抵抗に流れる電流を別々の電流測定回路で測定するのは、後述するように2つの抵抗に流れる電流値が1桁異なるため測定電流値に即した電流測定回路で測定することで誤差を低減させるためであり、ひいては、後述するバッテリ10のオーミックな抵抗成分および電荷移動抵抗成分を精度よく測定するためである。
【0035】
また、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2はマイクロプロセッサ2に接続されており、マイクロプロセッサ2から出力される信号に従ってオン、オフが制御される。
【0036】
さらに、マイクロプロセッサ2には、マイクロプロセッサ2による測定、演算結果を液晶表示するとともに、入力装置としても機能するミニタッチパネル7、マイクロプロセッサ2による測定、演算結果を所定用紙に印刷するためのミニプリンタ8およびバッテリ10の異常状態を報知するための異常報知回路6が接続されている。異常報知回路6は、例えば、ブザーおよびブザー作動回路を含んで構成することができ、または、電波や光を媒体とする無線信号発信回路(発信機)であってもよい。光を媒体とする場合には、例えば、複数個のLEDによる点滅で測定、演算結果等のデータを外部装置にシリアル送信するようにしてもよい。
【0037】
マイクロプロセッサ2は、中央演算処理装置として機能するCPU、CPUのワークエリアとして働くRAM、CPUのプログラムや後述する関係マップ、式、第1の抵抗R1および第2の抵抗R2の抵抗値等が格納されたROMを含んで構成されている。
【0038】
<第1、第2通電回路>
ここで、第1、第2通電回路を構成する第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2のマイクロプロセッサ2によるオン制御時間および第1、第2の通電回路の抵抗の抵抗値について本発明に至った経緯も含めて説明する。
【0039】
1.スイッチのオン制御時間
図3に示すように、0.5ms30Aと0.5s2Aのパルスを組み合わせた波形を、JIS−D5301の自動車用鉛蓄電池80D26に印加した。30A、2Aとした理由については後述する(「2.第1、第2の通電回路の抵抗の抵抗値」参照)。電気化学セルの抵抗は一般に時間依存性があり、複素インピーダンスの周波数分散解析がバッテリの特性評価に用いられる。図4に示すように、80D26の虚数部−実数部インピーダンス応答は、円弧とその右側に伸びる直線からなっており、1Hzで虚数部が極小値をとり、1kHzで虚数部がゼロとなる。これは、一般に知られるランドレス(Randles)等価回路と呼ばれる、電気化学システム等価回路モデルに対応するものであり、高周波側の虚数部がゼロのときの実数部の抵抗がオーミックな抵抗Rohmで、より低周波数側での虚数部が極小値をとっている周波数での実数部の値が、オーミックな抵抗Rohmと電荷移動抵抗Retの和である。
【0040】
オーミックな抵抗Rohm、電荷移動抵抗Retは、Rohm=1kHz抵抗、Ret=1Hz抵抗−1kHz抵抗と表すことができる。上述した式(2)を用いて直流パルスの場合に換算すると、Rohm=パルス幅0.5ms抵抗=(パルス前電圧−0.5ms電圧)/0.5ms電流と表すことができる。0.5ms電流はバッテリテスタ1の内部を流れる電流として扱う。これは、負荷放電中や充電用電源で充電中に試験しないことを想定しているためである。負荷放電中や充電用電源で充電中に試験する場合はクランプメータなど、それらの充放電電流も測定し0.5ms電流に加える必要があり、コストの制約がなければそのようにしてもよい。ただし、負荷放電中や充電用電源で充電中に試験しないよう手順を明記すれば済むことなので、クランプメータを省いてコストを下げるほうが望ましい。また、Ret=パルス幅0.5s抵抗−パルス幅0.5ms抵抗と表すことができる。なお、本実施形態における具体的なオーミックな抵抗Rohm、電荷移動抵抗Retの算出式については後述する。
【0041】
図4を参照すると、極小値近辺は曲線の傾きが大きいので、周波数がずれて測定点が多少ずれても測定されるインピーダンスの実数成分はあまり変わらないように思われる。本発明の特徴の1つは、バッテリでのオーミックな抵抗Rohmと電荷移動抵抗Retを測定するのに適した周波数を見い出し、それらの周波数で測定した電圧値および電流値を用いてバッテリの劣化を推定することを明らかにしたところにある。測定する周波数がばらついたり、バッテリのばらつきのために周波数とインピーダンスとの対応がずれたりした場合の誤差が小さくなる周波数を選ぶことを考えた。
【0042】
周波数に起因するR実数成分測定誤差の指標を−dR実数成分/dln(周波数f)と表し、各周波数でこの値を図4の実験データを元に計算したところ、図5が得られた。例えば、図4を測定した周波数が35個の場合、f(1),f(2),・・・,f(35)で表すと、f(1)=0.01、f(2)=f(1)×1.4678、f(3)=f(2)×1.4678、f(35)=f(34)×1.4678で計算し周波数を決め、周波数f(n)で実測されたR実数成分をR(n)と表すと、−dR実数成分/dln(周波数f)≒−(R(n)−R(n−1))/(ln(f(n))−ln(f(n−1)))として図5を計算できる。図5を参照すると、0.5〜2Hz(パルス幅換算1s〜0.25ms)の低周波と300Hz〜3kHz(パルス幅換算1.7ms〜0.17ms)の高周波領域で誤差が小さくなっていることが分かった。
【0043】
バッテリテスタとして利用する場合は、これらの2つの領域の周波数に相当する短いパルス幅1.7ms〜0.17msと、長いパルス幅1s〜0.25msとで通電し、その際の電圧値、電流値からバッテリのオーミックな抵抗Rohmおよび電荷移動抵抗Retを算出すればよい。
【0044】
このため、本実施形態では、マイクロプロセッサ2のCPUによる第1のスイッチSW1のオン時間を短いパルス幅内の0.5ms、第2のスイッチSW2のオン時間を長いパルス幅内の0.5sに設定し、異なる時間にこれら2つのスイッチをオン状態に制御、より具体的には、第2のスイッチSW2をオフ状態とし第1のスイッチSW1を短いパルス幅(0.5ms)でオン状態に制御した後直ちに、第1のスイッチSW1をオフ状態とし第2のスイッチSW2を長いパルス幅(0.5s)でオン状態に制御する構成とした。なお、バッテリ10のオーミックな抵抗Rohmおよび電荷移動抵抗Retを算出するには、バッテリ10の開回路電圧も測定する必要があり、その測定タイミングはバッテリテスタ1による通電の前後いずれかに限られるが、第1、第2の通電回路の通電による分極の影響を避けるため、第1、第2の通電回路の通電前が好ましい。また、第1のスイッチSW1をオン状態に制御した直後に、第2のスイッチSW2をオン状態に制御するのは、逆の場合やその間にインターバルを設ける場合と比べバッテリの残存容量の変化による影響が小さいと考えたからであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0045】
2.第1、第2の通電回路の抵抗の抵抗値
バッテリ10に通電する電流は複数回連続でも単発でも構わないが、時間を短くするという意図と、バッテリテスタ1の温度が上昇することによる制御・測定系への悪影響を除くため、温度上昇が5K以下になるよう波形連続印加回数を設定することが望ましい。また、短時間でユーザが多数のバッテリを連続テストする可能性もあるので、その場合でも温度が異常に高くならないように余裕をもった設計とする必要がある。温度上昇を抑制するため、バッテリテスタ1の内部は熱伝導率および熱容量が比較的大きな材料で充填されていることが望ましい。このような材料には、例えば、シリコン粒子をフィラーに使ったエポキシ樹脂が挙げられる。以下の式(3)によって、1回のテストでの波形連続印加回数nの上限が概算できる。
【0046】
【数3】
【0047】
例えば、波形が100Hz0A〜1A矩形波(0A5ms+1A5ms)の場合、単発波形電気量=5mCとなる。短時間ユーザ連続テスト回数を50回とし、テスタ内部は酸化ケイ素などセラミックのフィラーを使った樹脂が充填され、バッテリテスタ熱容量を80J/Kとすると、n=133回となる。これを時間に直すと、133回/100Hz=1.3秒となる。これは1回のテストの時間として十分短い時間である。このため、例えば、133回波形を印加して平均化処理を行うことで推定精度を上げるようにしてもよい。
【0048】
発熱が大きいと抵抗の抵抗値が変動して電流測定精度が悪くなったり、ひどい場合には部品が壊れたり、テスタ表面まで熱くなり手で持てなくなる可能性がある。このため、発熱の問題を避ける点も考慮し、上述したように、長いパルス幅のパルスでは電流を小さくし2Aとした。
【0049】
一方、1.7ms〜0.17msの短いパルス幅の電流は、JIS−D5301に規定された各種電池型式のバッテリにおいて劣化バッテリの検出に適した電流を調べたところ30Aとなったので、30Aとした。劣化バッテリの検出に適しているかどうかは、同一規格の新品バッテリと劣化バッテリで各種電流で放電して内部抵抗を測定し、新品バッテリと劣化バッテリで内部抵抗の違いが大きい電流を劣化バッテリの検出に適していると判断した。1.7ms〜0.17ms30Aでは発熱の問題は起き難いので、短いパルスでは発熱を理由に電流を制限する必要なかった。
【0050】
以上を前提に、本実施形態では、第1の抵抗R1に巻き線型の0.4Ω(誤差精度5%)の定抵抗、第2の抵抗R2に巻き線型の6Ω(誤差精度5%)の定抵抗を用いた。なお、これらの抵抗値では、図3に示すV1が約300mV、V2が約100mVとなる。
【0051】
<動作>
次に、マイクロプロセッサ2のCPU(以下、単にCPUという。)が実行するバッテリ状態推定ルーチンについて説明する。なお、ユーザは正負極クリップをそれぞれ正負極端子に接続し、タッチパネル7の所定箇所にタッチすることでバッテリ状態推定ルーチンが開始される。
【0052】
図2に示すように、ステップ104において、CPUは電圧測定回路3から出力されたバッテリ10の開回路電圧値(OCV)を取り込む。なお、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2はオフ状態のままである。また、ステップ104では、温度測定回路5から出力された温度値を取り込む。
【0053】
次にステップ106では、第1のスイッチSW1を0.5msの間オン状態に制御し、次のステップ108において、第1のスイッチSW1がオン状態に制御されている間に、電圧測定回路3から出力された第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)および第1電流測定回路41から出力された第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)を取り込む。なお、この状態で、第2のスイッチSW2はオフ状態のままである。
【0054】
次いでステップ110では、第1のスイッチSW1をオフ状態、第2のスイッチSW2を0.5sの間オン状態に制御し、次のステップ112において、第2のスイッチSW2がオン状態に制御されている間に、電圧測定回路3から出力された第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)および第2電流測定回路42から出力された第2の抵抗に流れる電流値(I2)を取り込む。この取り込みが終了すると、第2のスイッチSW2をオフ状態に制御する。
【0055】
次に、ステップ114において、測定した開回路電圧値(OCV)、第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)、第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)、第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)、第2の抵抗R2に流れる電流値(I2)から、下式(4)により、コールドクランキングアンペア(CCA)値を演算する。上述したように、OCV、V1、I1、V2、I2は、10μs毎に測定されるので、測定したそれぞれの平均値をOCV、V1、I1、V2、I2としてもよい。なお、CPUは、CCAを演算する際に、ROMに格納されRAMに展開されたRohmからRohm*への変換マップおよびRetからRet*への変換マップを参照する。
【0056】
【数4】
【0057】
次に、ステップ116において、測定したOCVと演算したCCAとを、図6に示すように、CCA、OCVおよびバッテリの状態の関係を定めた第1の関係マップに当てはめてバッテリ10の状態を推定する。なお、第1の関係マップは、予めROMに格納されRAMに展開されている。
【0058】
この第1の関係マップでは、新品バッテリでは理想的には図6の縦軸100%の位置(符号a参照)になるはずであるが、劣化するに従い下がり75%の位置(符号b参照)を良好/要交換判定のしきい値に設定したが、これに限るものではない。また、第1の関係マップには、バッテリの状態として、「劣化セル交換」、「良好要充電」、「良好」、「充電後再テスト」および「劣化交換」の5つに分類されているが、より多くまたは少なく分類するようにしてもよい。本例では、バッテリの状態推定結果として、タッチパネル7に5つに分類のうちのいずれかを表示する。
【0059】
また、ステップ116では、第1の関係マップにおいて、「劣化セル交換」または「劣化交換」の位置に該当する場合(バッテリが異常の場合)には、異常報知回路6に所定の信号(例えば、2値のハイレベル信号)を送出し、ブザー作動回路を作動させブザーによる警告音を発生させたり、異常報知回路6が無線信号発信回路で構成される場合には、外部装置による警告が可能なように、無線信号発信回路が外部装置に無線信号を発信させたりするようにしてもよい。
【0060】
次のステップ118では、バッテリ10の健康度(SOH)や充電状態(SOC)を推定し、タッチパネルに表示する。すなわち、図7に示すように、ROMには電荷移動抵抗Retと健康度(SOH)との関係を定めた第2の関係マップに実測したRetを当てはめてバッテリ10の健康度(SOH)を推定する。オーミックな抵抗とSOHは一般に対応する性質のものではないが、一方、電荷移動抵抗は電極の有効表面積や電解液中の電極反応種(硫酸)濃度に依存するので、鉛電池のような充電状態(SOC)によって有効表面積や電極反応種(硫酸)濃度が変わる電池系において電荷移動抵抗はSOHと対応する。残容量はSOHと1対1に対応する量なので、残容量を推定することもできる。また、図8に示すように、開回路電圧(OCV)と充電状態(SOC)との関係を定めた第3の関係マップにステップ104で測定した開回路電圧値(OCV)を当てはめてバッテリ10の充電状態(SOC)を推定する。なお、これらSOH、SOCを推定するにあたり、所定の温度でのSOH、SOCに温度補正することが好ましい。また、タッチパネル7を介して、測定結果や推定結果についてプリンタ8への出力指示がある場合には、指示に従い出力(印刷)する。ステップ118での処理が終了すると、バッテリ状態推定ルーチンは終了する。
【0061】
(作用効果等)
次に、本実施形態のバッテリテスタ1の作用効果等について説明する。
【0062】
本実施形態のバッテリテスタ1によれば、マイクロプロセッサ2は、バッテリ10のオーミックな抵抗Rohmと電荷移動抵抗Retとを算出する際の、周波数誤差がほぼ最小となるパルス幅内で第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2をオン状態に制御する。このため、マイクロプロセッサ2は、バッテリ10の開回路電圧値(OCV)と、第1のスイッチSW1を短いパルス幅(0.5ms)でオン状態に制御した状態で測定した第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)および第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)とからバッテリ10のオーミックな抵抗成分Rohmを適正に検出でき(式(4)参照)、このオーミックな抵抗成分Rohmと、バッテリ10の開回路電圧値(OCV)と、第2のスイッチSW2を長いパルス幅(0.5s)でオン状態に制御した状態で測定した第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)および第2の抵抗に流れる電流値(I2)とからバッテリ10の電荷移動抵抗Retを適正に検出できるため(式(4)参照)、バッテリ10の状態を精度よく推定することができる。
【0063】
また、本実施形態のバッテリテスタ1によれば、第1および第2の通電回路に流れる通電パルスが長いパルス幅(0.5s)でも1s以下であり、通電電流(30A)もエンジン始動を模擬する程の大電流とする必要がないため、発熱を抑制し、第1の抵抗R1、第2の抵抗R2を小さくでき装置全体の小型化を図ることができる。
【0064】
さらに、本実施形態のバッテリテスタ1によれば、マイクロプロセッサ2は、第2のスイッチSW2をオフ状態とし第1のスイッチSW1を短いパルス幅(0.5ms)でオン状態に制御した後直ちに、第1のスイッチSW1をオフ状態とし第2のスイッチSW2を長いパルス幅(0.5s)でオン状態に制御するため、バッテリ10の残存容量の変化による影響を低減でき、バッテリ10の状態を精度よく推定することができる。
【0065】
また、本実施形態のバッテリテスタ1によれば、マイクロプロセッサ2は、開回路電圧値(OCV)、第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)および第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)と、第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)および第2の抵抗R2に流れる電流値(I2)とからバッテリ10の電荷移動抵抗値Retを算出し、算出した電荷移動抵抗値Retを、ROMに予め格納されたバッテリ10の電荷移動抵抗値Retと健康度との関係を定めた第2の関係マップに当てはめてバッテリ10の健康度(SOH)を推定するとともに、開回路電圧値(OCV)を、開回路電圧と充電状態との関係を定めた第3の関係マップに当てはめてバッテリ10の充電状態(SOC)を推定するので、バッテリ10の状態を詳しく検出することができる。
【0066】
さらに、本実施形態のバッテリテスタ1によれば、温度センサを有する温度測定回路5で測定された温度値により、算出したオーミックな抵抗Rohmおよび電荷移動抵抗Retを−18℃での値に温度補正するので、コールドクランキングアンペア値を精度よく算出することができ、その結果、バッテリ10の状態を適正に推定することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、コストの点を考慮し、電圧測定回路3を単一のものとしたが、本発明はこれに限らず、バッテリ10の開回路電圧を測定する開回路電圧測定部、第1の抵抗R1の両端電圧を測定する第1電圧測定部および第2の抵抗R2の両端電圧を測定する第2電圧測定部の3つの電圧測定部で構成するようにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、電流測定精度を高めるために、第1の抵抗R1に流れる電流を測定する第1電流測定回路41と、第2の抵抗R2に流れる電流を測定する第2電流測定回路42との2つの電流測定回路を例示したが、例えば、正極クリップと第2のスイッチSW2との間に電流センサを設け、第1のスイッチSW1および第2のスイッチSW2を閉じたときのバッテリ10に流れる電流を1つの電流測定回路で測定するようにしてもよい。この場合には、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2のオン状態時の抵抗を考慮して第1の抵抗R1や第2の抵抗R2に流れる電流値を算出するようにすればよい。
【0069】
さらに、本実施形態では、バッテリ10の温度を測定するために、正極クリップに温度センサを固着しバッテリ10の正極外部端子の温度をバッテリ10の温度として測定した例を示したが、温度センサをバッテリ10に固定することでバッテリ10の温度を測定するようにしてもよい。
【0070】
(第2実施形態)
次に、本発明を、自動車用バッテリの状態を監視するバッテリ状態監視装置に適用した第2の実施の形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態のバッテリテスタ1がバッテリの状態を推定するのに対し、そのような推定はバッテリ状態監視装置外の外部装置で行われ、バッテリ状態監視装置はそのためのパラメータ(OCV、V1、I1、V2、I2)を測定するものである。なお、本実施形態において、第1実施形態と同一の部材およびルーチンには同一の符号を付してその説明を省略し、以下、異なる箇所のみ説明する。
【0071】
図9に示すように、第2実施形態のバッテリ状態監視装置20は、第1実施形態のバッテリテスタ1とほぼ同様の構成を有している。図1と比較して異なっている点は、図1のタッチパネル7に対し液晶表示装置(LCD)11と操作スイッチ12とを有する点、図1の異常報知回路6に代えて無線信号発信回路13を有する点である。無線信号送信回路13は、外部装置がバッテリ10の状態を推定できるように、バッテリ10のオーミックな抵抗Rohmおよびバッテリの電荷移動抵抗Retを算出するためのパラメータ(OCV、V1、I1、V2、I2)を外部装置に対して送信する。無線信号送信回路13による信号送信は、電波若しくは光を媒体とするものを用いることができる。光を媒体とする場合には、例えば、複数個のLEDによる点滅でデータを外部装置にシリアル送信するようにしてもよい。
【0072】
バッテリ状態監視装置20のマイクロプロセッサ2のCPUは、図10に示すバッテリ状態監視ルーチンを実行する。図2に示したバッテリ状態推定ルーチンとの相違点は、ステップ120〜ステップ124である。
【0073】
すなわち、ステップ120において、パラメータ、すなわち、測定したバッテリ10の開回路電圧値(OCV)、第1の抵抗R1の両端電圧値(V1)、第1の抵抗R1に流れる電流値(I1)、第2の抵抗R2の両端電圧値(V2)および第2の抵抗R2に流れる電流値(I2)を液晶表示装置11に表示し、次のステップ122において、操作スイッチ12からプリンタ8への出力または無線信号送信回路13によるパラメータ送信の指示の入力がなされるまで待機し、指示の入力がなされると、ステップ124において、プリンタ8への出力または無線信号送信回路13によるパラメータ送信を行って、バッテリ状態監視ルーチンを終了する。
【0074】
図11は、バッテリ診断システムの説明図である。このようなバッテリ診断システムには、バッテリ状態監視装置20の使用者または使用する組織が必要であり、図11では協力会社と表されている。協力会社としては、バッテリチェックやバッテリ販売を事業とする会社が想定される。バッテリ状態監視装置20を使用する組織が自らバッテリ状態監視装置20を管理する場合は、その組織も図11の協力会社として位置づけられる。本例では、協力会社はバッテリメーカである新神戸電機(株)の100%子会社のバッテリ販売会社である日立バッテリー販売サービス(株)である。
【0075】
協力会社は、バッテリ状態監視装置20でバッテリ10の状態を監視し、無線信号発信回路13を介して無線で協力会社内PC60に上述したパラメータ(OCV、V1、I1、V2、I2)のデータを送信する。PC60が図1に示すステップ114〜ステップ118のバッテリ状態推定ルーチンを実行するように構成されていれば、協力会社はその場でバッテリ10の状態をユーザに知らせることができる。一方、そのような機能を有していなくても、PC60からインターネットを介して情報サービス事業者のデータベースサーバ73にバッテリ10の測定結果、すなわち、上述したパラメータが記憶される。このため、バッテリ状態監視装置20による監視は定期的でも不定期的でも構わない。
【0076】
情報サービス事業者は、バッテリメーカやバッテリ販売会社、バックアップ用バッテリを有するビルの管理会社などバッテリのメンテナンスに関わりのある会社であり、バッテリの管理に関する情報サービスを1事業として行っていることを想定している。本例では、情報サービス事業者はバッテリメーカである新神戸電機(株)である。インターネットで通信する際はSSLなどによる暗号化が望ましい。PC60とバッテリ状態監視装置20との間の通信は配線の簡略化やシステム開発の簡単さなどの理由により無線LANが望ましいが、無線LAN以外の無線や、有線であっても構わない。なお、無線は無線LANに使われる小電力データ通信システムか、リモコンなどで使われる特定省電力無線を使うと無線免許が不要なため、簡単にシステムを組むことができる。
【0077】
バッテリ状態監視装置20とインターネットの接続には既存のインターネットに接続可能なPCを利用する方が接続費用の追加発生金額が少なくて済むので望ましいが、必ずしもPCを介する必要は無く、PCを介さずに携帯電話回線でインターネットに接続してもよい。このような場合に、ユーザが参照可能なようにプリンタ8からの出力が有効である。バッテリ10を管理するユーザはバッテリ状態監視装置20の検知結果を、バッテリ状態監視装置20を操作することで情報提供してもらうことも可能であり、情報サービス事業者からバッテリの履歴情報詳細を情報提供してもらうこともできる。例えば、バッテリ10の内部抵抗が急に大きくなり始めたなどの異常を検知すると、ユーザに情報サービス事業者が電話やEメールなどで情報提供する。情報サービス業者からの情報提供のため、電話、郵送、Eメール、ホームページ登録フォームによるユーザ登録などにより情報提供先を登録可能となっている。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
第1実施形態に従って実施例1のバッテリテスタを作製した。
【0079】
(比較例1)
低電流の段続放電で内部抵抗を評価し、抵抗とCCAの換算表を参照してCCAを推定し表示するバッテリテスタがある。例えば、5ms1A放電5ms休止を繰り返す100Hz断続放電を約4秒間行うが、周波数が不適切なので、ばらつきが大きい。インピーダンスの周波数依存性は電池設計と関わってくるので、特定のメーカの電池で誤判定が出るなどの問題が出やすい。また、通電時間が長いので、電流が小さくても発熱が無視できない程度に大きく、連続して使っているとバッテリテスタが熱くなり、誤差が大きくなる、発火事故の原因となる等の可能性がある。
【0080】
(比較例2)
100A5秒など、大電流を数秒の比較的長い時間流して、その時の電圧から電池の劣化状態の良否を判定する方法がある。拡散抵抗が影響する時間スケールなので、比較的精度がよいが、発熱が大きいため、温度上昇を抑えるため熱容量の大きい巨大な抵抗を使用し装置が大きくなる、連続して試験ができないなどの問題がある。
【0081】
以上を纏めると、下表1のようになり、実施例1のバッテリテスタが優れていることが分かる。
【0082】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は発熱が少なく小型で高精度のバッテリテスタ、該バッテリテスタを備えたバッテリおよびバッテリ状態監視装置を提供するものであるため、バッテリテスタ、バッテリおよびバッテリ状態監視装置の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0084】
1 バッテリテスタ
2 マイクロプロセッサ(制御手段、記憶手段)
3 電圧測定回路(電圧測定手段の一部)
6 異常報知回路(異常状態報知手段)
8 プリンタ(出力手段の一部)
10 バッテリ
11 液晶表示装置(出力手段の一部、ディスプレイ)
13 無線信号発信回路(無線信号発信機、出力手段の一部)
20 バッテリ状態監視装置
41 第1電流測定回路(電流測定手段の一部)
42 第2電流測定回路(電流測定手段の一部)
R1 第1の抵抗
R2 第2の抵抗
SW1 第1のスイッチ
SW2 第2のスイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の抵抗と第1のスイッチとを有し、バッテリに並列接続される第1の通電回路と、
第2の抵抗と第2のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第2の通電回路と、
前記バッテリの開回路電圧、前記第1および第2の抵抗の両端電圧を測定する電圧測定手段と、
前記第1および第2の抵抗に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記第1および第2のスイッチのオン、オフを制御し、前記電圧測定手段で測定された電圧値および前記電流測定手段で測定された電流値から前記バッテリの状態を推定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記第1のスイッチと第2のスイッチとを、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御し、
前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記第1のスイッチをオン状態に制御したときの前記電圧測定手段で測定された前記第1の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された前記第1の抵抗に流れる電流値と、前記第2のスイッチをオン状態に制御したときの前記電圧測定手段で測定された前記第2の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された前記第2の抵抗に流れる電流値とから前記バッテリのオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値を算出し、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と前記算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とから前記バッテリの状態を推定する、
ことを特徴とするバッテリテスタ。
【請求項2】
コールドクランキングアンペア、開回路電圧および前記バッテリの状態の関係を定めた第1の関係マップを予め記憶した記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とからコールドクランキングアンペア値を算出し、該算出したコールドクランキングアンペア値と前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値とを前記記憶手段に記憶された第1の関係マップに当てはめて前記バッテリの状態を推定することを特徴とする請求項1に記載のバッテリテスタ。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2のスイッチをオフ状態とし前記第1のスイッチを前記短いパルス幅でオン状態に制御した後直ちに、前記第1のスイッチをオフ状態とし前記第2のスイッチを前記長いパルス幅でオン状態に制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項4】
前記記憶手段は予め前記バッテリの電荷移動抵抗と健康度との関係を定めた第2の関係マップをさらに記憶しており、前記制御手段は、前記算出した電荷移動抵抗値を前記第2の関係マップに当てはめて前記バッテリの健康度を推定することを特徴とする請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項5】
前記記憶手段は予め前記バッテリの開回路電圧と充電状態との関係を定めた第3の関係マップをさらに記憶しており、前記制御手段は、前記開回路電圧値を前記第3の関係マップに当てはめて前記バッテリの充電状態を推定することを特徴とする請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項6】
前記バッテリの外部端子に接続するためのクリップをさらに備え、前記クリップは温度センサを有しており、前記制御手段は、前記温度センサで測定された温度値により前記コールドクランキングアンペア値を予め定められた温度のコールドクランキングアンペア値に温度補正することを特徴とする請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項7】
前記バッテリの異常状態を報知するための異常状態報知手段をさらに備え、前記制御手段は、前記第1の関係マップに当てはめて推定したバッテリの状態が異常か否かを判断し、該判断が肯定のときに前記異常状態報知手段が前記バッテリの異常状態を報知するように、前記異常状態報知手段に予め定められた信号を出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項8】
前記異常状態報知手段は、ブザー、または、電波若しくは光を媒体とする無線信号発信機であることを特徴とする請求項7に記載のバッテリテスタ。
【請求項9】
前記バッテリの蓋に固定されたことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のバッテリテスタ。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のバッテリテスタを備えたバッテリ。
【請求項11】
第1の抵抗と第1のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第1の通電回路と、
第2の抵抗と第2のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第2の通電回路と、
前記バッテリの開回路電圧、前記第1および第2の抵抗の両端電圧を測定する電圧測定手段と、
前記第1および第2の抵抗に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記第1および第2のスイッチのオン、オフを制御する制御手段と、
前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記制御手段により前記第1のスイッチがオン状態に制御されたときの前記電圧測定手段で測定された第1の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された第1の抵抗に流れる電流値と、前記制御手段により前記第2のスイッチがオン状態に制御されたときの前記電圧測定手段で測定された第2の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された第2の抵抗に流れる電流値とを出力する出力手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1のスイッチと第2のスイッチとを、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御することを特徴とするバッテリ状態監視装置。
【請求項12】
前記出力手段による出力が、ディスプレイ若しくはプリンタによりなさるか、または、電波若しくは光を媒体とする無線信号発信機による送信によりなされることを特徴とする請求項11に記載のバッテリ状態監視装置。
【請求項1】
第1の抵抗と第1のスイッチとを有し、バッテリに並列接続される第1の通電回路と、
第2の抵抗と第2のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第2の通電回路と、
前記バッテリの開回路電圧、前記第1および第2の抵抗の両端電圧を測定する電圧測定手段と、
前記第1および第2の抵抗に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記第1および第2のスイッチのオン、オフを制御し、前記電圧測定手段で測定された電圧値および前記電流測定手段で測定された電流値から前記バッテリの状態を推定する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記第1のスイッチと第2のスイッチとを、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御し、
前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記第1のスイッチをオン状態に制御したときの前記電圧測定手段で測定された前記第1の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された前記第1の抵抗に流れる電流値と、前記第2のスイッチをオン状態に制御したときの前記電圧測定手段で測定された前記第2の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された前記第2の抵抗に流れる電流値とから前記バッテリのオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値を算出し、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と前記算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とから前記バッテリの状態を推定する、
ことを特徴とするバッテリテスタ。
【請求項2】
コールドクランキングアンペア、開回路電圧および前記バッテリの状態の関係を定めた第1の関係マップを予め記憶した記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記算出したオーミックな抵抗値および電荷移動抵抗値とからコールドクランキングアンペア値を算出し、該算出したコールドクランキングアンペア値と前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値とを前記記憶手段に記憶された第1の関係マップに当てはめて前記バッテリの状態を推定することを特徴とする請求項1に記載のバッテリテスタ。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2のスイッチをオフ状態とし前記第1のスイッチを前記短いパルス幅でオン状態に制御した後直ちに、前記第1のスイッチをオフ状態とし前記第2のスイッチを前記長いパルス幅でオン状態に制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項4】
前記記憶手段は予め前記バッテリの電荷移動抵抗と健康度との関係を定めた第2の関係マップをさらに記憶しており、前記制御手段は、前記算出した電荷移動抵抗値を前記第2の関係マップに当てはめて前記バッテリの健康度を推定することを特徴とする請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項5】
前記記憶手段は予め前記バッテリの開回路電圧と充電状態との関係を定めた第3の関係マップをさらに記憶しており、前記制御手段は、前記開回路電圧値を前記第3の関係マップに当てはめて前記バッテリの充電状態を推定することを特徴とする請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項6】
前記バッテリの外部端子に接続するためのクリップをさらに備え、前記クリップは温度センサを有しており、前記制御手段は、前記温度センサで測定された温度値により前記コールドクランキングアンペア値を予め定められた温度のコールドクランキングアンペア値に温度補正することを特徴とする請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項7】
前記バッテリの異常状態を報知するための異常状態報知手段をさらに備え、前記制御手段は、前記第1の関係マップに当てはめて推定したバッテリの状態が異常か否かを判断し、該判断が肯定のときに前記異常状態報知手段が前記バッテリの異常状態を報知するように、前記異常状態報知手段に予め定められた信号を出力することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバッテリテスタ。
【請求項8】
前記異常状態報知手段は、ブザー、または、電波若しくは光を媒体とする無線信号発信機であることを特徴とする請求項7に記載のバッテリテスタ。
【請求項9】
前記バッテリの蓋に固定されたことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のバッテリテスタ。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のバッテリテスタを備えたバッテリ。
【請求項11】
第1の抵抗と第1のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第1の通電回路と、
第2の抵抗と第2のスイッチとを有し、前記バッテリに並列接続される第2の通電回路と、
前記バッテリの開回路電圧、前記第1および第2の抵抗の両端電圧を測定する電圧測定手段と、
前記第1および第2の抵抗に流れる電流を測定する電流測定手段と、
前記第1および第2のスイッチのオン、オフを制御する制御手段と、
前記電圧測定手段で測定された開回路電圧値と、前記制御手段により前記第1のスイッチがオン状態に制御されたときの前記電圧測定手段で測定された第1の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された第1の抵抗に流れる電流値と、前記制御手段により前記第2のスイッチがオン状態に制御されたときの前記電圧測定手段で測定された第2の抵抗の両端電圧値および前記電流測定手段で測定された第2の抵抗に流れる電流値とを出力する出力手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記第1のスイッチと第2のスイッチとを、1.7ms〜0.17msの範囲の短いパルス幅と、1s〜0.25msの範囲の長いパルス幅との異なる2つのパルス幅で異なる時間にオン状態に制御することを特徴とするバッテリ状態監視装置。
【請求項12】
前記出力手段による出力が、ディスプレイ若しくはプリンタによりなさるか、または、電波若しくは光を媒体とする無線信号発信機による送信によりなされることを特徴とする請求項11に記載のバッテリ状態監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−237660(P2012−237660A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107065(P2011−107065)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]