説明

パワーウインドモータ、パワーウインド装置、及びウインドガラス割れ検出方法

【課題】ウインドガラス割れを適切に検出する手段を備え、車両への組付性を向上することができるパワーウインドモータを提供する。
【解決手段】モータ11の出力ギヤ28にかかる荷重にて捩れて弾性力が蓄積されるトーションバー25を用い、ウインドガラス割れ時の出力ギヤ28の荷重変化に伴ってトーションバー25が原状復帰するその時のウォーム軸26の挙動をセンサマグネット29及び回転検出センサ31にて検出し、ウインドガラス割れを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両自身や車載品等の盗難防止を図るべく、その盗難時のウインドガラス割れを検出する機能を有するパワーウインドモータ、そのモータを駆動源とするパワーウインド装置、及びそのウインドガラス割れ検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両自身や車載品等、車両の盗難防止システムとして種々のものが提案されている。例えば特許文献1にて示されているものは、車両の各ウインドガラスに超音波振動子を備えてガラスを伝播する超音波信号を受信する回路が構成され、ウインドガラスが割られた際にその超音波信号が受信できなることを利用して、盗難時のウインドガラス割れを検出するシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−262818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1にて示される構成では、車両の各ウインドガラスにそれぞれ超音波振動子を含む回路を備える必要があるため、各ウインドガラスでの回路の配置や各回路までの配線等が必要となり、車両に対する組み付けが煩雑となる。そのため、車両の組付工数の増加等を招くことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ウインドガラス割れを適切に検出する手段を備え、車両への組付性を向上することができるパワーウインドモータ、そのモータを駆動源とするパワーウインド装置、及びそのウインドガラス割れ検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、モータ本体の回転駆動を減速部を介して出力部材に伝達し、該出力部材の駆動に基づいてウインドガラスの開閉を行うパワーウインドモータであって、前記モータの非駆動状態において、前記モータ本体の駆動力を前記出力部材まで伝達する駆動伝達部材の前記ウインドガラス割れ時の挙動を検出する検出手段を備えたことをその要旨とする。
【0007】
この発明では、モータの非駆動状態に、モータ内の駆動伝達部材のウインドガラス割れ時の挙動を検出する検出手段が備えられる。即ち、ウインドガラスに割れが生じると、ウインドガラスが全閉状態で機械的拘束を受けている状態から解放されたり、ウインドガラスの自重が変化したりする等、モータの出力部材にかかる荷重が変化し、駆動伝達部材に挙動が生じる。これに着目し、モータ内にある駆動伝達部材のその挙動を検出することで、適切にウインドガラス割れの検出が可能である。従って、車両にはウインドガラス割れを検出するための手段を別途搭載する必要がなくなるため、車両への組付性を向上できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパワーウインドモータにおいて、前記出力部材にかかる荷重にて弾性力が蓄積される弾性力蓄積部材を備え、前記検出手段は、前記ウインドガラス割れ時の前記出力部材の荷重変化に伴う前記弾性力蓄積部材の原状復帰に基づいた前記駆動伝達部材の挙動を検出することをその要旨とする。
【0009】
この発明では、モータの出力部材にかかる荷重にて弾性力が蓄積される弾性力蓄積部材が備えられ、ウインドガラス割れ時の出力部材の荷重変化に伴って弾性力蓄積部材が原状復帰するその時の駆動伝達部材の挙動が検出手段により検出される。これにより、弾性力蓄積部材を用いることでウインドガラス割れ時にてより確実に駆動伝達部材に挙動を生じさせることができるため、そのウインドガラス割れ検出をより確実に行うことが可能となる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のパワーウインドモータにおいて、前記モータ本体側からの回転駆動を前記出力部材側に伝達する一方、前記出力部材側からの回転を阻止するクラッチを備え、前記弾性力蓄積部材は、前記クラッチよりも出力側に配置したことをその要旨とする。
【0011】
この発明では、モータ本体側からの回転駆動を出力部材側に伝達する一方、出力部材側からの回転を阻止、即ちモータの駆動によるウインドガラスの開閉と、ウインドガラスの不意な下降(開作動)とを防止するクラッチが備えられるものにおいて、弾性力蓄積部材はそのクラッチよりも出力側に配置される。つまり、クラッチと弾性力蓄積部材との配置を適切としたことで、出力部材にかかる荷重にて弾性力蓄積部材で弾性力を蓄積させる際、弾性力蓄積部材の原状復帰に伴う駆動伝達部材の回転がクラッチにて阻止されるため、より確実に弾性力蓄積部材に弾性力を蓄積できる。これにより、ウインドガラス割れ時の駆動伝達部材の挙動を一層確実に生じさせることができるため、そのウインドガラス割れ検出を一層確実に行うことが可能となる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のパワーウインドモータにおいて、前記弾性力蓄積部材は、トーションバーよりなることをその要旨とする。
この発明では、弾性力蓄積部材にとして用いられるトーションバーは自身の捩れにて弾性力を蓄積する部材であるため、モータの回転伝達経路に組み込み易い。そのため、モータの構成が複雑化するのを防止できる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパワーウインドモータにおいて、前記検出手段は、検出対象の前記駆動伝達部材の回転挙動を検出することをその要旨とする。
【0014】
この発明では、検出手段は検出対象の駆動伝達部材の回転挙動を検出するため、回転検出センサ等を用いてその挙動、即ちウインドガラス割れを容易かつ適切に検出できる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のパワーウインドモータにおいて、前記検出手段は、前記駆動伝達部材の回転情報検出と兼用するものであることをその要旨とする。
【0015】
この発明では、検出手段は駆動伝達部材の回転情報検出と兼用しているため、部品数の低減が図られる。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパワーウインドモータにおいて、前記駆動伝達部材は、前記減速部内に収容されるウォームホイールと噛合するウォーム軸であり、前記検出手段は、前記ウォーム軸の軸方向挙動を検出することをその要旨とする。
【0016】
この発明では、駆動伝達部材はウォームホイールと噛合するウォーム軸であり、検出手段にてそのウォーム軸の軸方向挙動が検出される。つまり、ウインドガラス割れ時の出力部材の荷重変化にて、ウォームホイールと噛合するウォーム軸が容易に軸方向に移動するため、ウインドガラス割れを容易かつ適切に検出できる。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のパワーウインドモータにおいて、前記検出手段は、前記ウォーム軸の軸方向挙動に基づく接点の接離を電気的に検出することをその要旨とする。
【0018】
この発明では、検出手段はウォーム軸の軸方向挙動に基づく接点の接離を電気的に検出する構成としたため、簡素な構成でその挙動、即ちウインドガラス割れを検出できる。
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のパワーウインドモータにおいて、前記駆動伝達部材の挙動検出に基づいて前記ウインドガラス割れが生じたか否かを判断する判断手段を備え、前記判断手段は、前記ウインドガラスが所定閉領域内にあるとき、若しくは車両の停車状態にあるときに前記ウインドガラス割れの判断を実行することをその要旨とする。
【0019】
この発明では、駆動伝達部材の挙動検出に基づくウインドガラス割れの判断は、ウインドガラスが所定閉領域内にあるとき、若しくは車両の停車状態にあるときに実行される。つまり、盗難を意識して車両を離れる場合、ウインドガラスは全閉状態か若しくは僅かに開けた状態であるため、ウインドガラス割れの判断を所定閉状態と限定することで、その他の開状態、例えば中程度の開状態(盗難を意識していない状態)で搭乗者等がウインドガラスに荷重をかけること等による誤検出を適切に防止できる。また、ウインドガラス割れの判断を車両の停車状態と限定することで、車両走行中の振動がウインドガラスに作用すること等による誤検出を適切に防止できる。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載のモータを駆動源とし、該モータの出力部材の駆動にてウインドレギュレータを作動させて、ウインドガラスの開閉を行うように構成されたパワーウインド装置である。
【0021】
この発明では、ウインドガラス割れを適切に検出する手段をモータ内に備えて、車両への組付性を向上させたパワーウインド装置を提供できる。
請求項11に記載の発明は、モータ本体の回転駆動を減速部を介して出力部材に伝達し、該出力部材を駆動させるパワーウインドモータにて開閉が行われるウインドガラスのその割れ検出方法であって、前記モータの非駆動状態において、前記モータ本体の駆動力を前記出力部材まで伝達する駆動伝達部材の前記ウインドガラス割れ時の挙動を検出し、該ウインドガラス割れを検出するようにしたことをその要旨とする。
【0022】
この発明では、モータ内にある駆動伝達部材の挙動を検出することで、適切にウインドガラス割れを検出できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ウインドガラス割れを適切に検出する手段を備え、車両への組付性を向上することができるパワーウインドモータ、そのモータを駆動源とするパワーウインド装置、及びそのウインドガラス割れ検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態におけるパワーウインド装置の構成図である。
【図2】パワーウインドモータの構成図である。
【図3】パワーウインド装置の電気ブロック図である。
【図4】モータ内の概略構成図である。
【図5】別例におけるモータ内の概略構成図である。
【図6】(a)(b)は別例におけるウインドガラス割れ検出を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態のパワーウインド装置10を示す。パワーウインド装置10は、ウインドガラスWGを開閉させるべく車両ドアDに取り付けられるものであり、モータ11と、該モータ11の回転駆動によりウインドガラスWGを開閉作動させるXアーム式のウインドレギュレータ12とを備えている。
【0026】
図2に示すように、モータ11は、モータ本体21と減速部22とが一体に組み付けられたギヤードモータにて構成されている。モータ本体21は、直流モータよりなり、通電による電機子(図示略)の回転に伴い回転軸23を回転させる。図2及び図4に示すように、回転軸23は、減速部22内に収容されるクラッチ24及びトーションバー25を介してウォーム軸26と連結され、該ウォーム軸26は同じく減速部22内に収容されるウォームホイール27と噛合されている。ウォームホイール27は出力ギヤ28を回転させ、該出力ギヤ28はレギュレータ12(図1参照)の一方のアーム13のセクタギヤ14と噛合されている。
【0027】
ここで、回転軸23とウォーム軸26との間に介在されるクラッチ24は、モータ本体21の駆動に基づく回転軸23の回転をウォーム軸26側に伝達する一方、出力ギヤ28側からウォーム軸26を回転させようとするとロックするように作動するものである。つまり、モータ本体21の駆動により回転軸23が回転すると、クラッチ24、トーションバー25及びウォーム軸26を介してウォームホイール27が回転して出力ギヤ28が回転し、セクタギヤ14を通じてレギュレータ12が作動してウインドガラスWGが開閉作動する。一方、負荷側から出力ギヤ28に回転力が作用すると、クラッチ24にてウォーム軸26の回転がロック、即ち出力ギヤ28がロックされるため、作動停止中のウインドガラスWGの不意な下降(開作動)が防止されるようになっている。
【0028】
また、ウォーム軸26にはセンサマグネット29が固定されている。これに対し、減速部22内に収容される回路基板30には、そのセンサマグネット29の外周面に対向するようにホールICよりなる回転検出センサ31が実装されている。回転検出センサ31は、周方向に多極着磁されたセンサマグネット29の回転に伴う磁界変化を検出してウォーム軸26(回転軸23)の回転数や回転位置等の回転情報を検出するものであり、ウインドガラスWGの開閉位置検出等に用いられる。
【0029】
図3に示すように、パワーウインド装置10には、モータ11を制御してウインドガラスWGの作動を制御するウインドECU40が備えられ、該ウインドECU40はモータ11と別体若しくはモータ11内に一体に備えられる。ウインドECU40は制御回路41と駆動回路42とを備え、駆動回路42は制御回路41の制御に基づいて車載バッテリ43からモータ11に対して電源供給を行う。そして、制御回路41は、前記回転検出センサ31からの検出信号に基づいてウインドガラスWGの開閉位置を認識するとともに、ドアDに備えられるウインドSW44の操作に基づくウインドガラスWGの開閉制御を行っている。
【0030】
また、制御回路41は、ウインドガラスWGとドアDのフレームとの間での挟み込みを防止する機能を有している。この挟み込み防止機能は、前記回転情報から算出されるウォーム軸26(回転軸23)の回転速度の変動推移等から閉作動中のウインドガラスWGによる異物挟持の検出を行い、異物挟持が検出されるとウインドガラスWGを開方向に反転作動させて挟持物の解放を図るものである。
【0031】
また、制御回路41は、ウインドガラスWGの割れを検出する機能も有している。ここで、ウインドガラスWGを全閉位置P0まで作動させる際、ウインドガラスWGが機械的限界位置に到達してもモータ11の駆動停止までには若干時間を要するため、モータ11の駆動が若干継続してから後に停止する。そのため、このウインドガラスWGの全閉状態にあっては、ウォーム軸26側からの回転をロックさせるクラッチ24の作動により該クラッチ24とウォーム軸26との間に介在させたトーションバー25が捩れた状態で保持されるようになっている。従って、ウインドガラスWGに割れが生じると、該ウインドガラスWGによる機械的拘束からの解放や自重が軽減される等から出力ギヤ28にかかる荷重が軽減するため、捩れた状態(弾性力を蓄積した状態)にあるトーションバー25が原状態に復帰しようとする。これに伴い、ウォーム軸26が回転し、回転検出センサ31にてその回転の検出が可能である。
【0032】
これを踏まえ、制御回路41は、車両の停車状態(例えば車速ゼロ)、モータ11の非駆動状態でかつウインドガラスWGが全閉位置P0にある場合に、ウインドガラスWGの割れに基づいたトーションバー25の原状復帰に伴うウォーム軸26の所定量以上の回転を検出することで、ウインドガラスWGに割れが生じたと判断する。そして、制御回路41は、第三者がウインドガラスWGを割って盗難していると判断し、上位ECU45に対して例えば警報装置を作動させたり、また車両を動作不能やその動作を制限させたりする要求を出力し、盗難を抑止するように動作する。
【0033】
因みに、本実施形態のウインドガラスWGの割れ検出において、車両の停車状態を条件としていることで、車両走行中の振動がウインドガラスWGに作用すること等による誤検出が適切に防止されている。また、ウインドガラスWGの全閉位置P0を条件としていることで、ウインドガラスWGを例えば中程度の開状態(盗難を意識していない状態)としている場合に搭乗者等がウインドガラスWGにかかる荷重を変化させた時等においての誤検出も適切に防止されている。
【0034】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)本実施形態では、モータ11内の駆動伝達部材であるウォーム軸26のウインドガラスWGの割れ時の挙動がセンサマグネット29及び回転検出センサ31にて検出され、制御回路41にてウインドガラスWGに割れが生じたか否かが判断される。即ち、ウインドガラスWGに割れが生じると、ウインドガラスWGが全閉状態で機械的拘束を受けている状態から解放されたり、ウインドガラスWGの自重が変化したりする等、モータ11の出力ギヤ28にかかる荷重が変化し、ウォーム軸26に挙動が生じる。これに着目し、モータ11の非駆動状態にてウォーム軸26のその挙動を検出することで、適切にウインドガラスWGの割れを検出することができる。また、本実施形態のウインドガラスWGの割れ検出は、ウインドガラスWGが全閉状態で車両の停車状態にあるときに実行されるようにしているため、誤動作の発生が適切に防止されている。このように本実施形態では、モータ11内のウォーム軸26の挙動検出にてウインドガラスWGの割れを検出するようにしたため、車両に対してその割れ検出を行うための手段を別途搭載する必要がなくなり、車両への組付性を向上することができる。
【0035】
(2)本実施形態では、モータ11の出力ギヤ28にかかる荷重にて捩れて弾性力が蓄積されるトーションバー25が用いられ、ウインドガラスWGの割れ時の出力ギヤ28の荷重変化に伴ってトーションバー25が原状復帰するその時のウォーム軸26の挙動が検出される。これにより、弾性力を蓄積できるトーションバー25を用いることでウインドガラスWGの割れ時にてより確実にウォーム軸26に挙動を生じさせることができるため、そのウインドガラスWGの割れ検出をより確実に行うことができる。また、このトーションバー25は自身の捩れにて弾性力を蓄積する部材であるため、モータ11の回転伝達経路に組み込み易く、モータ11の構成の複雑化を防止することができる。
【0036】
(3)本実施形態では、モータ本体21側からの回転駆動を出力ギヤ28側に伝達する一方、出力ギヤ28側からの回転を阻止、即ちモータ11の駆動によるウインドガラスWGの開閉と、ウインドガラスWGの不意な下降(開作動)とを防止するクラッチ24が備えられる。ウインドガラスWGの割れ検出に用いるトーションバー25は、そのクラッチ24よりも出力側に配置される。つまり、クラッチ24とトーションバー25との配置を適切としたことで、出力ギヤ28にかかる荷重にてトーションバー25で捩れ(弾性力)を蓄積させる際、トーションバー25の原状復帰に伴うウォーム軸26の回転がクラッチ24にて阻止されるため、より確実にトーションバー25に弾性力を蓄積することができる。これにより、ウインドガラスWGの割れ時のウォーム軸26の挙動を一層確実に生じさせることができるため、そのウインドガラスWGの割れ検出を一層確実に行うことができる。
【0037】
(4)本実施形態では、ウインドガラスWGの割れ検出の検出対象がウォーム軸26とされ、そのウォーム軸26の回転挙動が検出される。そのため、回転検出センサ31等を用いてその挙動、即ちウインドガラスWGの割れを容易かつ適切に検出することができる。また、回転検出センサ31はウォーム軸26の回転情報検出と兼用しているため、部品数の低減を図ることができる。
【0038】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、ウインドガラスWGが全閉位置P0に配置されている場合にウインドガラスWGの割れ検出を行う構成としたが、盗難を意識して車両を離れる場合、ウインドガラスWGは全閉状態か若しくは僅かに開けた状態であるため、ウインドガラスWGが全閉位置P0から若干開いた所定位置P1までの間の所定閉領域A1内にある場合に割れ検出を行うようにしてもよい。この場合、ウインドガラスWGが割れる前と割れた後の自重変化を十分考慮して検出できるように設定する必要があるが、このようにすれば、ウインドガラスWGを僅かに開けていた場合でも割れ検出が可能となる。
【0039】
・上記実施形態では、ウインドガラスWGの割れ検出に該ガラスWGの位置及び車両の停車状態を条件としたが、いずれか一方を条件としたり、これらを条件から外したり、また他の条件を加味して割れ検出を行うようにしてもよい。
【0040】
・上記実施形態では、ウインドガラスWGの割れ検出にトーションバー25の捩れを利用したが、ウインドガラスWGの割れ時に原状復帰するようなスプリングやゴム等、他の弾性力蓄積部材に置き換え、モータ11内の駆動伝達経路上に適宜配置した構成としてもよい。尚、上記実施形態のようにクラッチ24を用いるものにおいては、出力側からの回転をロックするクラッチ24の機能からその出力側に配置するのが望ましい。
【0041】
・上記実施形態では、ウインドガラスWGの割れ時のウォーム軸26の挙動からその割れ検出を行うようにしたが、モータ11内の他の駆動伝達部材をその割れ検出の検出対象としてもよい。またこの場合、検出対象の駆動伝達部材の回転挙動のみならず、軸方向挙動を検出するようにしてもよい。
【0042】
例えば図5及び図6(a)(b)では、ウォーム軸26の軸方向挙動を検出するように構成したものである。即ち、ウインドガラスWGの割れ時の出力ギヤ28の荷重変化にて、ウォームホイール27と噛合するウォーム軸26が容易に軸方向に移動するため、ウインドガラスWGの割れを容易かつ適切に検出可能である。具体的には、ウォーム軸26の先端に装着されるボール35と、減速部22のハウジングに固定されるプレート36とが接点となり、ウインドガラスWGの割れ時のウォーム軸26の軸方向挙動にてその接点が接離する構成(例えば通常閉切り時に接触、割れ時に離間する構成)である。そして、ウォーム軸26とプレート36との間の電位差を検出し、ウォーム軸26の先端のボール35とプレート36とが接離する際の電位差に基づいてウォーム軸26の軸方向の挙動が検出される。このようにすれば、ウォーム軸26の軸方向の挙動、即ちウインドガラスWGの割れを簡素な構成で検出することができる。
【0043】
・上記実施形態では、クラッチ24を備えるモータ11に適用したが、クラッチ24の無いモータに適用してもよい。この場合、トーションバー25等の弾性力蓄積部材を使用した場合に、モータ内部のロスや保持トルク等で弾性力を蓄積できる設定とする。
【0044】
・上記実施形態では、Xアーム式のウインドレギュレータ12を用いたパワーウインド装置10に適用したが、ワイヤ式のウインドレギュレータを用いるパワーウインド装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…パワーウインド装置、11…モータ(パワーウインドモータ)、12…ウインドレギュレータ、21…モータ本体、22…減速部、24…クラッチ、25…トーションバー(弾性力蓄積部材)、26…ウォーム軸(駆動伝達部材)、27…ウォームホイール、28…出力ギヤ(出力部材)、29…センサマグネット(検出手段)、31…回転検出センサ(検出手段)、41…制御回路(判断手段)、WG…ウインドガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体の回転駆動を減速部を介して出力部材に伝達し、該出力部材の駆動に基づいてウインドガラスの開閉を行うパワーウインドモータであって、
前記モータの非駆動状態において、前記モータ本体の駆動力を前記出力部材まで伝達する駆動伝達部材の前記ウインドガラス割れ時の挙動を検出する検出手段を備えたことを特徴とするパワーウインドモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーウインドモータにおいて、
前記出力部材にかかる荷重にて弾性力が蓄積される弾性力蓄積部材を備え、
前記検出手段は、前記ウインドガラス割れ時の前記出力部材の荷重変化に伴う前記弾性力蓄積部材の原状復帰に基づいた前記駆動伝達部材の挙動を検出することを特徴とするパワーウインドモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のパワーウインドモータにおいて、
前記モータ本体側からの回転駆動を前記出力部材側に伝達する一方、前記出力部材側からの回転を阻止するクラッチを備え、
前記弾性力蓄積部材は、前記クラッチよりも出力側に配置したことを特徴とするパワーウインドモータ。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のパワーウインドモータにおいて、
前記弾性力蓄積部材は、トーションバーよりなることを特徴とするパワーウインドモータ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパワーウインドモータにおいて、
前記検出手段は、検出対象の前記駆動伝達部材の回転挙動を検出することを特徴とするパワーウインドモータ。
【請求項6】
請求項5に記載のパワーウインドモータにおいて、
前記検出手段は、前記駆動伝達部材の回転情報検出と兼用するものであることを特徴とするパワーウインドモータ。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のパワーウインドモータにおいて、
前記駆動伝達部材は、前記減速部内に収容されるウォームホイールと噛合するウォーム軸であり、
前記検出手段は、前記ウォーム軸の軸方向挙動を検出することを特徴とするパワーウインドモータ。
【請求項8】
請求項7に記載のパワーウインドモータにおいて、
前記検出手段は、前記ウォーム軸の軸方向挙動に基づく接点の接離を電気的に検出することを特徴とするパワーウインドモータ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のパワーウインドモータにおいて、
前記駆動伝達部材の挙動検出に基づいて前記ウインドガラス割れが生じたか否かを判断する判断手段を備え、
前記判断手段は、前記ウインドガラスが所定閉領域内にあるとき、若しくは車両の停車状態にあるときに前記ウインドガラス割れの判断を実行することを特徴とするパワーウインドモータ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のモータを駆動源とし、該モータの出力部材の駆動にてウインドレギュレータを作動させて、ウインドガラスの開閉を行うように構成されたことを特徴とするパワーウインド装置。
【請求項11】
モータ本体の回転駆動を減速部を介して出力部材に伝達し、該出力部材を駆動させるパワーウインドモータにて開閉が行われるウインドガラスのその割れ検出方法であって、
前記モータの非駆動状態において、前記モータ本体の駆動力を前記出力部材まで伝達する駆動伝達部材の前記ウインドガラス割れ時の挙動を検出し、該ウインドガラス割れを検出するようにしたことを特徴とするウインドガラス割れ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157753(P2011−157753A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21276(P2010−21276)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】