説明

ヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器

【課題】 開放回動する第二部材が延設方向にスライド移動する構成であり、回動位置がクリック保持されると共にこの開放回動途中ではトルクが生じ、手を放した回動位置で停止するいわゆるフリーストップが実現されるヒンジ装置。
【解決手段】 第一部材1と第二部材2とを枢着し、開放状態とした際に第一部材1と第二部材2とが連なる延設方向に沿ってラック歯3とこのラック歯3に噛合する歯車4を第一部材1と前記第二部材2に設けて、前記第二部材2を開放回動した際、前記第一部材1に対して前記第二部材2が前記連なる延設方向に移動するように構成したヒンジ装置において、前記歯車4の前記ラック歯3に沿っての移動に伴って移動する若しくは前記歯車4の回動に伴って回動する一方の係合部が、少なくとも前記閉塞状態及び前記開放状態で係合方向への押圧付勢によって他方の係合部7に凹凸係合若しくは係合途中となるクリック機構8を設けたヒンジ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話,モバイル,ノート型パソコン,デジタルカメラ等の電子機器の枢着部に設けるヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた電子機器に係るものである。
【背景技術】
【0002】
二つの部材の端部同志を枢着し、互いに重合した閉塞状態から一方の部材に対して他方の部材を起伏回動して互いの伏面が露出する開放状態となるように構成する場合、例えば閉塞状態に一方の部材の一部に他方の部材が重合しない部分を設けて常に露出する部分を設けても開放状態とするとこの常に露出させたい部分の上方に他方の部材が覆いかぶさるための非露出状態となってしまう。
【0003】
即ち、常に露出させたい部分を一方の部材の上面の基端側に設け、他方の部材の基端部を一方の端部の基端部ではなく、前記部分を避けた先端側寄りに枢着することでこの部分には重合しないように構成しても、この他方の部材を開放回動すればこの重合していなかった部分の上面に他方の部材がきてしまう。
【0004】
また、一方この開閉する部材の基端側をコ字状に切欠しこれを窓部として露出したい部分を避けて重合する形状に設定すれば、開放回動してもこの部分は、露出した状態に維持できるが、この切欠部が開放状態で空いてしまうことになってしまう。
【0005】
そこで開放回動時に枢着部がスライド移動するように構成することで重合状態でも露出し、開放状態でも開閉部がこの部分の上部にこないようにするヒンジ装置を開発した。
【0006】
具体的には例えば携帯電話において、二画面方式が好評であるが、従来の二画面方式では、例えばメイン画面(第一画面)は開閉部の伏面側に設けて開放露出自在に設け、重合した閉塞状態ではこの開閉部の伏面側と反対側の背面側に設けたサブ画面(第二画面)が上面にくるため重合閉塞状態でもこのサブ画面を利用できるようにしているが、メイン画面とサブ画面は表裏反対にあるため同時には視認できない。
【0007】
しかし、前述のように開閉部の枢着部が開放回動に伴ってスライド移動するように構成することで、本体部上面の操作部基端側に第二画面を設けて、開閉部は重合状態では操作部は重合隠蔽するがこの第二画面には重合せず、開放回動した場合は、開閉部の枢着部がスライド移動することで、この第二画面の上方に開閉部はこずに開放回動して、開閉部伏面側の第一画面が露出すると共に第二画面もこれに連なって露出するように構成することが実現できる。
【0008】
即ち、本体部に常に露出する第二画面を設け、重合閉塞状態でも常にこの第二画面が利用可能で、しかも開放状態においては、露出する開閉部の第一画面と連設状態に配設されているため開放状態でも二画面が利用可能で例えばテレビ電話を行う場合に極めて便利な画期的な携帯電話を実現できることとなる。
【0009】
【特許文献1】特開2004−112056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、単に枢着部をスライド移動するようにしただけでは、開閉部の開閉回動はふらつき、重合閉塞状態においても開放状態においても位置決め保持できない。
【0011】
本発明は、更に前記構成に改良を加え、常に露出したい部分を閉塞状態でも開放状態でも露出させることができ、この部分に例えば第二画面を配設して前記二画面方式を容易に実現できる構成でありながら、簡易な構成にして適格に所定位置でのクリック保持と回動途中での回動トルクを生じさせて手を放した回動位置で開閉部を停止させるいわゆるフリーストップを実現できる極めて実用性に秀れたヒンジ装置及びこれを一層容易に実現可能な画期的な構成のヒンジ装置並びにこのヒンジ装置を用いた電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0013】
第一部材1と第二部材2とを枢着し、第一部材1と第二部材2とを互いに重合した閉塞状態から開放回動して重合面が露出する開放状態となるように構成したヒンジ装置であって、開放状態とした際に第一部材1と第二部材2とが連なる延設方向に沿ってラック歯3を前記第一部材1若しくは前記第二部材2に設け、このラック歯3に噛合し且つ前記開放回動に伴って回動する前記第二部材2若しくは前記第一部材1に伴って回動する歯車4を前記第二部材2若しくは前記第一部材1に設け、この歯車4の前記ラック歯3に沿っての移動をガイドするガイド部5を前記第一部材1若しくは前記第二部材2に設けて、前記第一部材1に対して前記第二部材2を開放回動した際、この開放回動に伴って前記第一部材1に対して前記第二部材2が前記連なる延設方向に移動するように構成したヒンジ装置において、前記歯車4の前記ラック歯3に沿っての移動に伴って移動する若しくは前記歯車4の回動に伴って回動する一方の係合部6が、少なくとも前記閉塞状態及び前記開放状態で係合方向への押圧付勢によって他方の係合部7に凹凸係合若しくは係合途中となるクリック機構8を設けて、少なくとも前記閉塞状態及び前記開放状態で前記第一部材1に対する前記第二部材2の回動位置がクリック保持されると共に開放回動途中では前記クリック機構8の前記係合方向への押圧付勢によって回動抵抗を生じるように構成したことを特徴とするヒンジ装置に係るものである。
【0014】
また、前記第一部材1に対して前記第二部材2を相対的に起伏回動自在に設けてこの第一部材1に前記第二部材2を重合状態とした前記閉塞状態から互いに伏面が露出する前記開放状態となるように開閉自在に構成し、前記開放状態の際前記第一部材1と前記第二部材2とが連なる延設方向に沿って前記ラック歯3を前記第一部材1に設け、このラック歯3に噛合し且つ前記第二部材2の開放回動に伴って前記ラック歯3上を回動する前記歯車4をこの第二部材2に設け、このラック歯3に沿って移動する歯車4を回動自在に設けるスライド部9が抜け止め係合しこのスライド部9をスライドガイドすることで前記歯車4の移動をガイドする前記ガイド部5を前記第一部材1に設けた構成とし、前記スライド部9と前記ガイド部5とに前記クリック機構8を若しくは前記歯車4を前記スライド部9に回動自在に軸着する回動軸部分に前記クリック機構8を設けたことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置に係るものである。
【0015】
また、前記ラック歯3と同方向に配設した前記ガイド部5のガイド溝5Aにスライド部9を抜け止め状態にしてスライド移動自在に設け、このスライド部9に前記ラック歯3に噛合する前記歯車4を回動自在に軸着する構成とし、前記スライド部9若しくは前記ガイド溝5Aに前記一方の係合部6を設けると共に、前記ガイド溝5A若しくは前記スライド部9に前記閉塞状態及び前記開放状態で前記係合部6と互いに凹凸係合若しくは凹凸係合途中となる前記他方の係合部7を設け、この凹凸係合を付勢するバネ材を配設若しくはバネ材で前記一方の係合部6若しくは前記他方の係合部7を形成して前記クリック機構8を構成したことを特徴とする請求項1,2いずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0016】
また、前記ラック歯3と同方向に配設した前記ガイド部5のガイド溝5Aにスライド部9を抜け止め状態にしてスライド移動自在に設け、このスライド部9に前記ラック歯3に噛合する前記歯車4を回動自在に軸着する構成とし、前記スライド部9若しくは前記歯車4に前記一方の係合部6を一体に若しくは回動方向に回り止め状態に設けると共に、前記歯車4若しくは前記スライド部9に前記閉塞状態及び前記開放状態で前記係合部6と互いに凹凸係合若しくは凹凸係合途中となる前記他方の係合部7を一体に若しくは回動方向に回り止め状態に設け、この凹凸係合を付勢するバネ材を配設して前記クリック機構8を構成したことを特徴とする請求項1,2いずれか1項に記載のヒンジ装置に係るものである。
【0017】
また、本体部を前記第一部材1若しくは前記第二部材2とし、開閉部を前記第二部材2若しくは前記第一部材1とし、この本体部1と開閉部2とを前記請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器に係るものである。
【0018】
また、前記本体部1の上面に操作部11を設け、前記開閉部2の伏面にディスプレイ部12を設け、前記本体部1の前記開閉部2側の上面に第二ディスプレイ13を設け、閉塞時に前記開閉部2は前記操作部11を重合隠蔽するが前記第二ディスプレイ13は重合隠蔽しない形状に設定し、前記第二部材2を前記本体部1に重合した前記閉塞状態から開放回動することで前記開閉部2が前記本体部1から離れる方向に移動して前記操作部11を覆っていた開閉部2が前記第二ディスプレイ13の上方に位置せずに第二ディスプレイ13をも露出させる位置で開放状態となり、閉塞状態でも開放状態でも常に第二ディスプレイ13が露出されているように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器に係るものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上述のように構成したから、第一部材に対して第二部材を重合状態から開放回動することで、この開放回動に伴って第一部材に対して第二部材はこの延設方向に回動軸ごとスライド移動することになり、例えば第一部材の所定部分を避けて重合していた状態からこの避けている部分と連なるように第二部材の伏面を露出させることができるように設計することが可能となる。従って、例えば二画面方式の開閉自在な携帯電話を容易に実現できることとなる。
【0020】
例えば第一部材の上面に常に露出させたい第二画面を設け、この第二画面を避ける形状に設計し、第一画面を伏面に設けた第二部材を重合状態に枢着し、この重合閉塞した状態から第二部材を開放回動すると、回動軸部ごと延設方向にスライド移動して開放状態では前記第二画面と第二部材の伏面側に設けた第一画面とが共に延設方向に露出するように設計できる。
【0021】
しかも、本発明では、このように開放回動する第二部材が延設方向にスライド移動する構成であるが、閉塞状態と開放状態とで凹凸係合若しくは係合途中となってこの回動位置がクリック保持されると共にこの開放回動途中ではトルク(回動抵抗)が生じ、このトルクの調整によっては手を放した回動位置で停止するいわゆるフリーストップが実現される極めて実用性に秀れた画期的なヒンジ装置となる。
【0022】
特に請求項2記載の発明においては、簡易な構成にして前記作用・効果が確実に発揮されるヒンジ装置となり、請求項3及び請求項4記載の発明においては、一層簡易な構成で容易に実現できる極めて実用性に秀れたヒンジ装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0024】
例えば、第一部材1の上面基端側に常に露出させたい部分を設け、この常に露出させたい部分を避けて重合する形状に設定した第二部材2の基端部を第一部材1の少し先端側寄りに枢着して重合開放自在に設ける。従って、第一部材1と第二部材2とを重合させた閉塞状態では常に露出させたい部分には重合されず、閉塞状態でも露出させることができる。
【0025】
この閉塞状態から第一部材1に対して第二部材2を開放回動すると、ラック歯3に噛合した状態で歯車4がこのラック歯3及びガイド部5に沿って第一部材1と第二部材2の延設方向にスライド移動しつつ開放回動する。
【0026】
従って、開放状態では枢着軸となる歯車4ごと移動して開放回動する第二部材2が移動するため、この移動量の設定によって第二部材2が前記常に露出させたい部分の上方に位置することなく、枢着軸が第一部材1の基端部に移動して開放状態となるため、常に露出させたい部分にかぶることなく、第二部材2の伏面と延設状態となるように露出開放できることとなる。
【0027】
しかも本発明では、クリック機構8を備えており、このクリック機構8によって、この開放回動に伴っての歯車4のラック歯3に沿っての移動若しくは歯車4の回動に伴って一方の係合部6が移動若しくは回動して、少なくとも閉塞状態若しくは開放状態でこの一方の係合部6が他方の係合部7にバネ付勢することによって凹凸係合若しくは凹凸係合途中となって(吸い込み力による閉じ付勢や開放位置での係合位置決め保持などが生じて)クリック保持されることとなる。
【0028】
また、このバネ付勢による回動抵抗が生じ、この回動抵抗の設定により、手を放した回動位置で停止するいわゆるフリーストップを容易に実現できる。
【0029】
しかも、具体的には、この歯車4を回動自在に設けるスライド部9をガイド部5に沿って移動自在に設け、このスライド部9とガイド部5とに前記クリック機構8を設けるか、この歯車4とスライド部9との軸着部分にクリック機構8を設けることで、一層容易な構成で前記作用・効果を発揮するクリック機構8を容易に構成することができることとなる。
【実施例】
【0030】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0031】
図示した本実施例は、本発明を理解し易い一実施例であって重合コンパクト化の図れる携帯電話に本発明を適用したもので、回路基板,電源等の電子部品をケースに内装した第一部材1としての板状の本体部1の上面側に数字キーやファンクションキーなどを配列したキーボード機能を果たす操作部11を設け、この本体部1に重合して操作部11を覆うが常に露出させたい部分は覆わない短い長さで略同形の第二部材2としての板状の開閉部2を起伏回動自在にヒンジ装置Hにより軸着連結した構成としている。
【0032】
また、本実施例では表示ディスプレイを二画面有する二画面方式を実現させる構成で、第一画面12(ディスプレイ12)を第二部材2の伏面側に設けて第二部材2を開放回動した際露出開放する構成とし、第二画面13(第二ディスプレイ)は第一部材1の上面基端部の常に露出させる部分にやや上方に突出状態に設け、開放状態において、この第一画面12、第二画面13が延設方向に開放露出し、重合閉塞状態においても、第二画面13は重合隠蔽されず、常に露出されるように構成する。
【0033】
即ち、第一部材1と第二部材2との端部同志を枢着せず、第二部材2の端部は前記少し隆起している第二画面13を避けて起伏回動できるように凹状に切欠し、この凹状基端部を前記第二画面13を避けるようにして第一部材1のやや先端部よりに枢着して互いに重合した状態から起伏回動に設けて、この第一部材1に前記第二部材2を重合状態とした前記閉塞状態から互いに伏面が露出する前記開放状態となるように開閉自在に構成し、前記開放状態の際前記第一部材1と前記第二部材2とが連なる延設方向に沿って前記ラック歯3を前記第一部材1の上面基端部の側部に設け、このラック歯3に噛合し且つ前記第二部材2の開放回動に伴って前記ラック歯3上を回動する前記歯車4をこの第二部材2の凹状基端部に設けた剛性のあるフレーム15に設け、このラック歯3に沿って移動する歯車4を回動自在に設けるスライド部9が抜け止め係合しこのスライド部9をスライドガイドすることで前記歯車4の移動をガイドする前記ガイド部5を、前記第一部材1の前記第二画面13を隆起部側面に設けた構成としている。本実施例(第一実施例)では前記スライド部9と前記ガイド部5とに前記クリック機構8を設けた構成とし、後述する第二実施例では、前記歯車4を前記スライド部9に回動自在に軸着する回動軸部分に前記クリック機構8を設けた構成としている。
【0034】
即ち、本実施例では、前記本体部1の上面に操作部11を設け、前記開閉部2の伏面にディスプレイ部12を設け、前記本体部1の前記開閉部2側の上面に第二ディスプレイ13を設け、前記開閉部2は前記操作部11を重合隠蔽するが前記第二ディスプレイ13は重合隠蔽しない短い長さに設定し、前記第二部材2を前記本体部1に重合した前記閉塞状態から開放回動することで前記開閉部2が前記本体部1から離れる方向にスライド移動して前記操作部11を覆っていた開閉部2が前記第二ディスプレイ13の上方に位置せずに第二ディスプレイ13をも露出させる位置で開放状態となって、この二画面が開放時に延設方向に並設する構成とし、閉塞状態でも開放状態でも常に第二ディスプレイ13は露出されているように構成している。
【0035】
更に具体的には図1〜図9に示す第一実施例では、前記ラック歯3と並設配設したレール材を前記ガイド部5とし、このガイド部5のガイド溝5Aにスライド部9を抜け止め状態にしてスライド移動自在に設け、前記ラック歯3に噛合する前記歯車4であって、前記フレーム15に設ける歯車4を前記スライド部9に回動自在に軸着する構成とし、このスライド部9にバネ材14で凸状に形成した前記一方の係合部6を設けると共に、前記ガイド溝5Aの溝底に前記閉塞状態及び前記開放状態で前記係合部6がスライド移動することで落ち込み凹凸係合若しくは凹凸係合途中となる前記他方の係合部7を設けている。
【0036】
本実施例ではバネ材を別に介在させず前述のように係合部6(凸部)をバネ材14で形成し、これをガイド溝5Aの溝底に配設したスライド路面に圧接し、この圧接によって押圧付勢を生じさせており、これによりガイド部5のガイド溝5Aに対して歯車4と共にスライド部9がスライド移動する際の抵抗を生じさせて第二部材2の回動抵抗を生じさせている。
【0037】
また、ガイド溝5Aの溝底に配設してスライド路面を形成する板材を凹設折曲して開放状態の位置とほぼ閉塞状態となる位置の前記ガイド溝5Aの溝底のスライド路面に凹状の他方の係合部7を形成し、開放状態では前記一方の係合部6がこの係合部7に落ち込み凹凸係合して開放状態が位置決め保持され、閉塞状態では係合途中となってこの吸い込み力とバネ付勢によって閉じ付勢が生じるように構成している。
【0038】
従って、本実施例では、歯車4が回動自在に設けられるスライド部9をガイド部5に抜け止め自在にしてスライド移動自在に設け、このスライド部9によってラック歯3に沿って回動する歯車4をスライドガイドするが、このスライドガイドするスライド部9とガイド部5のガイド溝5Aとに所定スライド位置で凹凸係合するクリック機構8を設けている。
【0039】
しかも、少なくともこの凹凸係合するいずれかを、即ち本実施例ではスライド部9に設ける一方の係合部6を、板バネを折曲して凸状に形成してこれをスライド部9に付設し、このバネ作用を有する係合部6をガイド溝5Aのスライド路面に押圧付勢する構成とし、このバネ付勢の調整即ちバネ材の選定や折曲度合によって適度なスライド抵抗を生じさせており、また、スライド路面を形成する部材を凹設折曲して他方の係合部7を形成し、この凹部(係合部7)に係合部6を凹凸係合させることで、係合途中にあってはバネ付勢と共に吸い込み力が生じ、閉じ付勢が良好に生じるようにしている。
【0040】
また、この凹部(係合部7)の周辺では傾斜面(底から隆起している部分)を形成し、これを乗り超えた後、凹部(係合部7)に凸部(係合部6)が落ち込み係合することでクリック保持が一層良好となるようにしている。
【0041】
このように本実施例では、スライドガイド機構のスライド部9とガイド部5のガイド溝5Aとに押圧付勢状態で凹凸係合する係合部6,7を形成するだけで良く、特に本実施例のようにガイド溝5Aの適所に係合部7(凹部)を形成し、スライド部9に板バネを曲げて形成した凸状の係合部6を設けるだけで良いため、組み付けが容易で量産性も劣化せずにクリック機構8を組み付けることができる。
【0042】
また、図10〜図13に示す第二実施例では、前記歯車4を前記スライド部9に回動自在に軸着する回動軸部分に前記クリック機構8を設けた構成としたもので、開閉部2の開放回動に伴って回動する歯車4のこの回動と共に回動する前記一方の係合部6を、歯車4を設ける前記フレーム15の内側に設け、前記スライド部9に前記閉塞状態及び前記開放状態で前記係合部6に互いに凹凸係合若しくは凹凸係合途中となる前記他方の係合部7を回動方向に回り止め状態に設け、この凹凸係合を付勢するバネ材14を配設して前記クリック機構8を構成している。
【0043】
即ち、前記フレーム15に歯車4とスライド部9とを軸着する部分の構造において、フレーム15に歯車4を回り止め状態に設けると共に回転軸部10を回り止め状態に設け、この回転軸部10にスライド部9を回動自在に設ける構成としているもので、外側に歯車4を回り止め状態に設けたフレーム15の内側に回動軸部10に対して回り止め状態に前記一方の係合部6として凹凸カム面を設けたカム係合部6を設け、一方スライド部9に対して回り止め状態にして軸方向にバネ材14に抗して離反移動自在に前記カム係合部6に凹凸係合する他方の係合部7としてのカム係合部7を設けた構成とし、開放位置でこの係合部6と係合部7とがカム凹凸係合することでクリック保持され、回動途中では係合部6に対して係合部7がバネ材14に抗して回転軸部10に沿って離反して凹凸係合を脱して回動自在となり、このバネ付勢によって回動抵抗が生じ、また、閉塞状態では再びカム凹凸係合途中となり、このカム係合途中の吸い込み力とバネ付勢によって閉じ付勢が生じるように構成している。
【0044】
従って、本実施例では、歯車4が回動自在に設けられるスライド部9をガイド部5に抜け止め自在にしてスライド移動自在に設け、このスライド部9によってラック歯3に沿って回動する歯車4をスライドガイドするが、このスライドガイドするスライド部9に歯車4を回動自在に軸着する部分にこの回転軸部10を用いてクリック機構8を設けている。
【0045】
前記第一実施例もこの第二実施例もいずれもスペースをとらずにフレーム15の内側に体裁も損なうことなく適格なクリック作動を行なえるクリック機構8を組み込むことができ、この組み付けも容易で部品点数も少なく、設計レイアウトの変更もほとんど要せず実現でき、極めて実用性に秀れたヒンジ装置となる。
【0046】
特に本実施例では、前述のようにスライド部9にカムケースを設けてガイド部5に沿ってスライド移動自在に設け、このカムケースに回り止め状態に前記係合部7を回転軸部10に沿って且つバネ材14に抗してスライド移動自在に設け、この係合部7に凹凸係合する係合部6を歯車4(フレーム15)に回り止め状態に設けており、いわばスライド部材をカムケースとして機能させ、このスライド部9にカムロック機構を組み付けた構成で、前述のように、極めて組み付けが容易で量産性が劣ることなく、クリック機構8を組み付けることができる。
【0047】
尚、本実施例ではこのスライド部9に回転軸部10を回動自在に設けるため、スライド部9はガイド部5の底に接触しない状態でガイド部5にスライド自在に係合する構成としている。
【0048】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第一実施例の閉塞状態での説明斜視図である。
【図2】第一実施例の開放状態での説明斜視図である。
【図3】第一実施例及び第二実施例の作動説明図である。
【図4】第一実施例の要部の説明分解斜視図である。
【図5】第一実施例の閉塞状態の要部の説明斜視図である。
【図6】第一実施例の開放状態の要部の説明斜視図である。
【図7】第一実施例の要部の作動説明側断面図である。
【図8】第一実施例の要部の作動説明正断面図である。
【図9】第二実施例の開放状態での説明斜視図である。
【図10】第二実施例の要部の説明分解斜視図である。
【図11】第二実施例の閉塞状態の要部の説明斜視図である。
【図12】第二実施例の開放状態の要部の説明斜視図である。
【図13】第二実施例の要部の作動説明正断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 第一部材(本体部)
2 第二部材(開閉部)
3 ラック歯
4 歯車
5 ガイド部
5A ガイド溝部
6 一方の係合部
7 他方の係合部
8 クリック機構
9 スライド部
11 操作部
12 ディスプレイ部
13 第二ディスプレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材とを枢着し、第一部材と第二部材とを互いに重合した閉塞状態から開放回動して重合面が露出する開放状態となるように構成したヒンジ装置であって、開放状態とした際に第一部材と第二部材とが連なる延設方向に沿ってラック歯を前記第一部材若しくは前記第二部材に設け、このラック歯に噛合し且つ前記開放回動に伴って回動する前記第二部材若しくは前記第一部材に伴って回動する歯車を前記第二部材若しくは前記第一部材に設け、この歯車の前記ラック歯に沿っての移動をガイドするガイド部を前記第一部材若しくは前記第二部材に設けて、前記第一部材に対して前記第二部材を開放回動した際、この開放回動に伴って前記第一部材に対して前記第二部材が前記連なる延設方向に移動するように構成したヒンジ装置において、前記歯車の前記ラック歯に沿っての移動に伴って移動する若しくは前記歯車の回動に伴って回動する一方の係合部が、少なくとも前記閉塞状態及び前記開放状態で係合方向への押圧付勢によって他方の係合部に凹凸係合若しくは係合途中となるクリック機構を設けて、少なくとも前記閉塞状態及び前記開放状態で前記第一部材に対する前記第二部材の回動位置がクリック保持されると共に開放回動途中では前記クリック機構の前記係合方向への押圧付勢によって回動抵抗を生じるように構成したことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
前記第一部材に対して前記第二部材を相対的に起伏回動自在に設けてこの第一部材に前記第二部材を重合状態とした前記閉塞状態から互いに伏面が露出する前記開放状態となるように開閉自在に構成し、前記開放状態の際前記第一部材と前記第二部材とが連なる延設方向に沿って前記ラック歯を前記第一部材に設け、このラック歯に噛合し且つ前記第二部材の開放回動に伴って前記ラック歯上を回動する前記歯車をこの第二部材に設け、このラック歯に沿って移動する歯車を回動自在に設けるスライド部が抜け止め係合しこのスライド部をスライドガイドすることで前記歯車の移動をガイドする前記ガイド部を前記第一部材に設けた構成とし、前記スライド部と前記ガイド部とに前記クリック機構を若しくは前記歯車を前記スライド部に回動自在に軸着する回動軸部分に前記クリック機構を設けたことを特徴とする請求項1記載のヒンジ装置。
【請求項3】
前記ラック歯と同方向に配設した前記ガイド部のガイド溝にスライド部を抜け止め状態にしてスライド移動自在に設け、このスライド部に前記ラック歯に噛合する前記歯車を回動自在に軸着する構成とし、前記スライド部若しくは前記ガイド溝に前記一方の係合部を設けると共に、前記ガイド溝若しくは前記スライド部に前記閉塞状態及び前記開放状態で前記係合部と互いに凹凸係合若しくは凹凸係合途中となる前記他方の係合部を設け、この凹凸係合を付勢するバネ材を配設若しくはバネ材で前記一方の係合部若しくは前記他方の係合部を形成して前記クリック機構を構成したことを特徴とする請求項1,2いずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項4】
前記ラック歯と同方向に配設した前記ガイド部のガイド溝にスライド部を抜け止め状態にしてスライド移動自在に設け、このスライド部に前記ラック歯に噛合する前記歯車を回動自在に軸着する構成とし、前記スライド部若しくは前記歯車に前記一方の係合部を一体に若しくは回動方向に回り止め状態に設けると共に、前記歯車若しくは前記スライド部に前記閉塞状態及び前記開放状態で前記係合部と互いに凹凸係合若しくは凹凸係合途中となる前記他方の係合部を一体に若しくは回動方向に回り止め状態に設け、この凹凸係合を付勢するバネ材を配設して前記クリック機構を構成したことを特徴とする請求項1,2いずれか1項に記載のヒンジ装置。
【請求項5】
本体部を前記第一部材若しくは前記第二部材とし、開閉部を前記第二部材若しくは前記第一部材とし、この本体部と開閉部とを前記請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置によって枢着連結したことを特徴とするヒンジ装置を用いた電子機器。
【請求項6】
前記本体部の上面に操作部を設け、前記開閉部の伏面にディスプレイ部を設け、前記本体部の前記開閉部側の上面に第二ディスプレイを設け、閉塞時に前記開閉部は前記操作部を重合隠蔽するが前記第二ディスプレイは重合隠蔽しない形状に設定し、前記第二部材を前記本体部に重合した前記閉塞状態から開放回動することで前記開閉部が前記本体部から離れる方向に移動して前記操作部を覆っていた開閉部が前記第二ディスプレイの上方に位置せずに第二ディスプレイをも露出させる位置で開放状態となり、閉塞状態でも開放状態でも常に第二ディスプレイが露出されているように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のヒンジ装置並びにヒンジ装置を用いた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−105271(P2006−105271A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292814(P2004−292814)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(396019022)株式会社ストロベリーコーポレーション (88)
【Fターム(参考)】