説明

フグ類用配合飼料

【課題】魚粉の一部が植物性タンパク質で代替されながらも、トラフグに代表されるフグ類の養殖に適した配合飼料を得る。従来廃棄物として処分されているムラサキイガイを有効利用する。
【解決手段】本発明のフグ類用配合飼料は、魚粉と魚粉代替原料としての植物性タンパク質含有原料とムラサキイガイ軟体部とを少なくとも配合してなり、魚粉由来タンパク質が植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質によって20重量%超〜53重量%代替され、ムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を植物性タンパク質の重量の少なくとも0.74倍とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フグ類用配合飼料に関する。さらに詳述すると、本発明は、魚粉の一部が大豆粕等の植物性タンパク質含有原料で代替されているフグ類用配合飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
養魚用配合飼料のタンパク質源としては、従来、真鰯やスケトウダラといった多獲性魚類を原料とした魚粉が用いられていた。しかし、近年、多獲性魚類の漁獲量の減少と養殖業の拡大による配合飼料の需要の増加により、魚粉の供給が逼迫するとともにその価格も高騰し、魚粉のみでは養魚用配合飼料の需要がまかなえなくなってきている。そこで、魚粉の一部を安価なタンパク質源である植物性タンパク質で代替することが検討されている。
【0003】
植物性タンパク質を含む原料としては、大豆粕やコーングルテンミール、菜種油滓等といったものが挙げられ、これらは、生産量も豊富で価格も安定していることから魚粉の代替材料として有望視されている。
【0004】
しかし、魚粉の一部を植物性タンパク質で代替した配合飼料を使用して養殖を行うと、ある特有の問題が生じる。即ち、魚粉の一部を植物性タンパク質で代替した配合飼料は、嗜好性が低く、養殖魚の摂餌量が低下して成長低下を招く。このことは多くの魚種で明らかとなっている。したがって、配合飼料中の魚粉の一部を植物性タンパク質で代替する場合、養殖魚の成長低下を抑えるために何らかの手段を講じる必要性が生じる。
【0005】
例えば、特許文献1では、キク科植物であるステビアの葉から抽出されるステビア抽出物を養魚用の配合飼料に添加し、養殖魚の摂餌量の低下を抑制して成長低下を抑えるようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−186848
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ステビア抽出物の原料となるステビアは、人工甘味料の原料であることから、養魚用の配合飼料の原料として安定且つ安価に供給できるものではない。したがって、ステビア抽出物を原料とする配合飼料は安定且つ安価に供給できるものとは言い難い。
【0008】
ところで、海岸の堤防や発電所の取水口、復水器などに付着した多量のムラサキイガイは、これらの設備の機能を低下させるものであることから、除去・回収する必要があり、その年間処理量は2万トン(殻付き新鮮重量)以上と大量である(火力原子力発電技術協会 環境対策技術調査委員会(2003):火力発電所における海洋生物対策実態調査報告書、158pp.)。従来、ムラサキイガイは廃棄物として埋め立てや焼却によって処分されているが、処分場の不足や悪臭の発生といった深刻な問題を抱えており、また、埋め立てや焼却自体にかかる費用や手間も多大なものとなっている。そこで、ムラサキイガイを有効利用する方法を見出してムラサキイガイに付加価値を与え、ムラサキイガイの処分上の問題を解決することが望まれている。
【0009】
また、トラフグに代表されるフグ類は市場価値の高い所謂高級魚であり、漁獲量が不安定なことから、市場への安定供給が可能な養殖業への期待が大きい。しかしながら、上記の通り、近年、魚粉のみでは養魚用配合飼料の需要がまかなえなくなってきていることから、今後、タンパク質源を全て魚粉としている従来の配合飼料は安定且つ安価には供給できなくなる虞がある。したがって、魚粉の一部を植物性タンパク質で代替しながらも、フグ類の成長低下を抑えることのできる新たな配合飼料の開発が望まれている。
【0010】
本発明は、かかる要望に鑑みてなされたものであって、魚粉の一部を植物性タンパク質で代替しながらも、トラフグに代表されるフグ類の成長低下を抑えることのできる新たな配合飼料を提供することを目的とする。また、本発明は、従来廃棄物として処分されているムラサキイガイを有効利用する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため、本願発明者が鋭意検討したところ、植物性タンパク質の配合量に対し、ある一定量以上のムラサキイガイ軟体部あるいはムラサキイガイエキス抽出物を配合することにより、魚粉の一部を植物性タンパク質で代替しながらも、トラフグに代表されるフグ類の成長低下を抑えることのできる配合飼料が得られることを知見し、本願発明に至った。
【0012】
かかる知見に基づく本発明のフグ類用配合飼料は、魚粉と魚粉代替原料としての植物性タンパク質含有原料とムラサキイガイ軟体部とを少なくとも配合してなり、魚粉由来タンパク質が植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質によって20重量%超〜53重量%代替され、且つムラサキイガイ軟体部の乾燥重量が植物性タンパク質の重量の少なくとも0.74倍としているものである。
【0013】
また、かかる知見に基づく本発明のフグ類用配合飼料は、魚粉と魚粉代替原料としての植物性タンパク質含有原料とムラサキイガイエキス抽出物とを少なくとも配合してなり、
魚粉由来タンパク質が植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質によって20重量%超〜40重量%代替され、且つムラサキイガイエキス抽出物の重量を植物性タンパク質の重量の少なくとも7.4/A倍(Aはムラサキイガイエキス抽出物のBrix値(%))としているものである。
【0014】
このように、植物性タンパク質に対し一定量以上のムラサキイガイ軟体部あるいはムラサキイガイエキス抽出物を配合することによって、フグ類の成長低下を抑えることができ、タンパク質源を全て魚粉としている従来の配合飼料と同等の成長状態をフグ類に付与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフグ類用配合飼料によれば、タンパク質源を全て魚粉としている従来の配合飼料と同等の成長状態をフグ類に付与することが可能となる。
【0016】
また、本発明のフグ類用配合飼料によれば、魚粉の一部が植物性タンパク質含有原料で代替されているので、魚粉の使用量を抑えることができ、近年における魚粉価格の高騰並びに魚粉供給の逼迫の問題に対応することが可能となる。したがって、安定且つ安価に配合飼料を供給することが可能となる。
【0017】
さらに、本発明のフグ類用配合飼料によれば、従来廃棄物とされていたムラサキイガイを有効利用することが可能となり、ムラサキイガイの処分上の問題の解決に寄与することができる。しかも、従来廃棄物とされていたムラサキイガイを原料としていることから、配合飼料にかかる原料費を抑えることができる。また、上記の通り、ムラサキイガイの年間処理量は2万トン(殻付き新鮮重量)と大量であることから、原料を長期に亘って安定供給することもできる。したがって、安定且つ安価に配合飼料を供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0019】
本発明のフグ類用配合飼料は、魚粉と魚粉代替原料としての植物性タンパク質含有原料とムラサキイガイとを少なくとも配合してなるものである。そして、ムラサキイガイは軟体部あるいはエキス抽出物の形態で配合される。
【0020】
本発明のフグ類配合飼料において、ムラサキイガイ軟体部を配合する場合、魚粉由来タンパク質が植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質によって20重量%超〜53重量%代替され、且つムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を植物性タンパク質の重量の少なくとも0.74倍としている。
【0021】
また、本発明のフグ類配合飼料において、ムラサキイガイエキス抽出物を配合する場合、魚粉由来タンパク質が植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質によって20重量%超〜53重量%代替され、且つムラサキイガイエキス抽出物の重量を植物性タンパク質の重量の少なくとも7.4/A倍(Aはムラサキイガイエキス抽出物のBrix値(%))としている。
【0022】
つまり、本発明のフグ類配合飼料によれば、魚粉を一定量の植物性タンパク質含有原料により代替することによって、魚粉由来のタンパク質の一部を植物性タンパク質で代替している。したがって、魚粉の使用量を抑えることができる。
【0023】
そして、本発明のフグ類配合飼料によれば、ムラサキイガイを植物性タンパク質に対して一定量以上配合することによって、魚粉の一部を植物性タンパク質で代替した配合飼料を用いた場合に特有の問題であるフグ類の成長低下を抑制する効果が得られる。したがって、タンパク質源を全て魚粉としている従来の配合飼料と同等の成長状態をフグ類に付与することが可能となる。
【0024】
以下、本発明のフグ類配合飼料の配合成分及び配合割合に関し、詳細に説明する。
【0025】
本発明の配合飼料に使用される魚粉としては、従来の配合飼料において一般的に使用されている魚粉、例えば、スケトウダラ等を主原料とした北洋魚粉や真鰯等を主原料とした沿岸魚粉等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本発明の配合飼料に使用される植物性タンパク質含有原料としては、例えば、脱皮大豆粕、コーングルテンミール、菜種油滓、綿実粕、ヒマワリ粕といった植物油滓系原料が挙げられる。これらは、生産量も豊富で価格も安定しており、配合飼料に使用するのに好適であるが、植物性タンパク質含有原料はこれらに限定されるものではない。
【0027】
本発明の配合飼料に使用されるムラサキイガイ軟体部は、ムラサキイガイ軟体部を粉砕したものとしてもよいが、加工性等の観点からは、乾燥粉末を用いることが好適である。
【0028】
本発明の配合飼料に使用されるムラサキイガイエキス抽出物は、ムラサキイガイエキスが溶け込んだ水であり、例えば、殻付きムラサキイガイあるいはムラサキイガイ可食部を一定期間水に浸けることによって、あるいは熱水でエキスを煮出すことによって得ることができる。また、加工性等の観点から、ムラサキイガイエキス抽出物は濃縮してから使用することが好適であり、例えば、Brix値を20%以上とすることが好適である。
【0029】
本発明の配合飼料において、ムラサキイガイ軟体部を配合する場合、ムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を植物性タンパク質の重量の少なくとも0.74倍とすることが好ましい。0.74倍未満とすると、フグ類の成長低下を招く虞がある。ここで、フグ類の成長低下をより確実に抑えるためには、ムラサキイガイ軟体部の配合量を高めることが好ましいが、高めすぎてもフグ類の成長低下を抑える効果が飽和してしまい、無駄となる。本発明者の実験によると、ムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を植物性タンパク質の重量の2.2倍とすれば、フグ類の成長低下を抑制する効果が十分に発揮された。したがって、植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイ軟体部の乾燥重量は、少なくとも0.74倍とすることが好ましく、0.74〜2.2倍とすることがより好ましく、1.5〜2.2倍とすることがさらに好ましく、2.2倍とすることが特に好ましい。
【0030】
植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を上記範囲とすることで、魚粉由来タンパク質を植物性タンパク質含有物質由来の植物性タンパク質によって最大で53重量%代替することができる。
【0031】
ここで、魚粉由来タンパク質を植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質によって53重量%を超える割合で代替すると、ムラサキイガイ軟体部を配合してもフグ類の成長低下を抑えられなく虞がある。尚、植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量が20重量%以下の場合には、ムラサキイガイ軟体部を配合せずとも、フグ類の成長は有意には低下しない。したがって、魚粉の使用量を抑える観点からも、植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量は20重量%超〜53重量%とすることが好ましい。
【0032】
また、フグ類の成長低下の抑制をより確実なものとするためには、植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量は20重量%超〜33重量%とすることが好ましく、20重量%超〜25重量%とすることがより好ましい。
【0033】
本発明の配合飼料において、ムラサキイガイエキス抽出物を配合する場合、ムラサキイガイエキス抽出物の重量を植物性タンパク質の重量の少なくとも7.4/A倍(Aはムラサキイガイエキス抽出物のBrix値(%))とすることが好ましい。7.4/A倍未満とすると、フグ類の成長低下を招く虞がある。ここで、フグ類の成長低下をより確実に抑えるためには、ムラサキイガイエキス抽出物の配合量を高めることが好ましいが、高めすぎてもフグ類の成長低下を抑える効果が飽和してしまい、無駄となる。本発明者の実験によると、ムラサキイガイエキス抽出物の重量を植物性タンパク質の重量の15/A倍とすれば、フグ類の成長低下を抑制する効果が十分に発揮され、22/A倍とすると、その効果が飽和することが確認された。したがって、植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイエキス抽出物の重量は、少なくとも7.4/A倍とすればよいが、7.4/A〜22/A倍未満とすることが好ましく、7.4/A〜15/A倍とすることがより好ましく、11/A〜15/Aとすることがさらに好ましく、15/A倍とすることが特に好ましい。例えば、ムラサキイガイエキス抽出物のBrix値が20%(A=20)の場合、植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイエキス抽出物の重量は、少なくとも0.37倍とすればよいが、0.37〜1.1倍未満とすることが好ましく、0.37〜0.74倍とすることがより好ましく、0.56〜0.74倍とすることがさらに好ましく、0.74倍とすることが特に好ましい。
【0034】
植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイエキス抽出物の重量を上記範囲とすることで、魚粉由来タンパク質を植物性タンパク質含有物質由来の植物性タンパク質によって最大で40重量%代替することができる。
【0035】
ここで、魚粉由来タンパク質を植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質によって40重量%を超える割合で代替すると、ムラサキイガイエキス抽出物を配合してもフグ類の成長低下を抑えられなく虞がある。尚、植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量が20重量%以下の場合には、ムラサキイガイエキス抽出物を配合せずとも、フグ類の成長は有意には低下しない。したがって、魚粉の使用量を抑える観点からも、植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量は20重量%超〜40重量%とすることが好ましい。
【0036】
また、フグ類の成長低下の抑制をより確実なものとするためには、植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量は20重量%超〜30重量%とすることが好ましい。
【0037】
本発明の配合飼料において、配合飼料中のタンパク質含有量は、従来のフグ類用配合飼料と同程度、例えば40〜50重量%とすればよいが、この範囲に限定されるものではない。
【0038】
ここで、本発明の配合飼料において、特にムラサキイガイ軟体部を配合する場合には、ムラサキイガイ軟体部に含まれるタンパク質を配合飼料中のタンパク質源として利用することができる。したがって、配合飼料中のタンパク質含量をムラサキイガイ軟体部を配合することによって高めることができ、これにより、配合飼料中の魚粉の配合量をさらに低減して、魚粉の使用量をさらに抑えることができる。
【0039】
配合飼料に添加されるその他の成分としては特に限定されるものではなく、従来の配合飼料とほぼ同様の成分を配合することができる。例示すると、馬鈴薯デンプン、フィードオイル、無機化合物、ビタミン化合物、α化馬鈴薯デンプン、デキストリン等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0040】
ここで、本発明の配合飼料における魚粉と植物性タンパク質とムラサキイガイ軟体部の配合量について、植物性タンパク質源として脱皮大豆粕を用いた場合の具体例を挙げると、魚粉28.5重量%〜57重量%未満、脱皮大豆粕18重量%超〜40重量%(植物性タンパク質9重量%超〜20重量%)、ムラサキイガイ軟体部(乾燥重量)10重量%〜30重量%で、且つ脱皮大豆粕の重量に対するムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を少なくとも0.37倍(植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を少なくとも0.74倍)とし、配合飼料中のタンパク質量が40〜50重量%である。
【0041】
また、本発明の配合飼料における魚粉と植物性タンパク質とムラサキイガイエキス抽出物の配合量について、植物性タンパク質源として脱皮大豆粕を用い、ムラサキイガイエキス抽出物のBrix値を20%とした場合の具体例を挙げると、魚粉43重量%〜57重量%未満、脱皮大豆粕18重量%超〜36重量%(植物性タンパク質9重量%超〜18重量%)、ムラサキイガイエキス抽出物5重量%〜20重量%で、且つ脱皮大豆粕の重量に対するムラサキイガイエキス抽出物の重量が少なくとも0.18倍(植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイエキス抽出物の重量が少なくとも0.37倍)である。但し、ムラサキイガイエキス抽出物の配合量(重量%)は、魚粉と脱皮大豆粕とその他の成分(馬鈴薯デンプン、フィードオイル、無機化合物、ビタミン化合物、α化馬鈴薯デンプン、デキストリン)の合計量を100重量%としたときの値である。配合飼料中のタンパク質量は40〜50重量%である。
【0042】
本発明の配合飼料の製造法は特に限定されるものでなく、ミートチョッパー、エクストルダーなどを用い、常法により行うことができる。また、配合飼料の形状はペレット状やクランブル状として、フグ類が摂餌しやすい大きさとすればよい。
【0043】
本発明の配合飼料は、トラフグ、マフグ、ショウサイフグ、ヒガンフグ、クサフグ、サバフグ等のフグ類全般の養殖において使用することができ、特にトラフグに適した配合飼料である。
【0044】
上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【実施例】
【0045】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限られるものではない。
【0046】
(実施例1)
魚粉と植物性タンパク質含有原料とムラサキイガイ軟体部とを原料とした各種配合飼料をトラフグに与え、その成長状態について観察した。
【0047】
(1−1 配合飼料の組成)
実験に使用した配合飼料の組成を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
本実施例では、植物性タンパク質含有原料として脱皮大豆粕を使用した。また、ムラサキイガイ軟体部は、生鮮ムラサキイガイから殻を取り除いた後、洗浄することなしに凍結乾燥、粉砕して乾燥粉末としてから使用した。魚粉(トロールミル)と脱皮大豆粕とムラサキイガイ軟体部以外の配合成分は、馬鈴薯デンプン、フィードオイル(理研ビタミン製)、無機混合物(日本配合飼料株式会社製)、ビタミン混合物(日本配合飼料株式会社製)、α化馬鈴薯デンプン及びデキストリンを用いた。飼料の作製はフィードオイルを除く各原料を粉砕し、十分に混合した後、ミートチョッパーを用い成形した。作製した飼料は乾燥後、所定の量のフィードオイルを浸透させ、再度乾燥した。
【0050】
表1における飼料区1の飼料は、魚粉を単独のタンパク質源とし、ムラサキイガイ軟体部を含まない対照区の飼料である。
【0051】
また、表1における飼料区2,3及び6の飼料は、魚粉由来タンパク質の一部が脱皮大豆粕由来タンパク質で代替され、ムラサキイガイ軟体部を含まない飼料である。飼料区2は魚粉由来タンパク質の20重量%を脱皮大豆粕由来タンパク質で代替し、飼料区3は魚粉由来タンパク質の40重量%を脱皮大豆粕由来タンパク質で代替し、飼料区6は魚粉由来タンパク質の60重量%を脱皮大豆粕由来タンパク質で代替した。
【0052】
さらに、表1における飼料区4,5,7及び8は、ムラサキイガイ軟体部を含む実験区の飼料であり、脱皮大豆粕由来タンパク質重量に対するムラサキイガイ軟体部乾燥重量は、それぞれ、0.74倍,2.2倍,0.75倍,2.2倍とした。また、飼料区4の飼料は魚粉由来タンパク質の33重量%を脱皮大豆粕由来タンパク質で代替し、飼料区5の飼料は魚粉由来タンパク質の25重量%を脱皮大豆粕由来タンパク質で代替し、飼料区7の飼料は魚粉由来タンパク質の53重量%を脱皮大豆粕由来タンパク質で代替し、飼料区8の飼料は魚粉由来タンパク質の43重量%を脱皮大豆粕由来タンパク質で代替した。
【0053】
(1−2 飼育実験)
実験には総水量約2000リットルの天然海水を収容した循環濾過水槽を用い、水温は20℃に調節した。飼育水槽内に浮かべた容量約35リットルの網生けすに、15尾/生けす、3連/飼料区でトラフグを収容し、所定の飼料を1日2回、各飽食量を週6日で与えて8週間給餌した。
【0054】
(1−3 実験結果)
飼育実験の結果を表2に示す。尚、実験結果は、3連の実験結果の平均と標準偏差で示した。
【0055】
【表2】

【0056】
「増重率」は、以下に示す数式1により計算した。
(数式1) 増重率(%)= (増重量)/(実験開始時体重)× 100
【0057】
「比成長率」は、以下に示す数式2により計算した。
(数式2) 比成長率 = (lnW−lnW)/56 × 100
ここで、Wは実験終了時体重であり、Wは実験開始時体重である。また、数式2中の「56」という数字は、実験期間を日数で表した値である。
【0058】
「飼料効率」は、以下に示す数式3により計算した。
(数式3) 飼料効率(%)=(増重量)/(摂餌量)× 100
【0059】
「タンパク質効率」は、以下に示す数式4により計算した。
(数式4) タンパク質効率 =(増重量)/(タンパク質摂取量)
【0060】
「日間摂取率」は、以下に示す数式5により計算した。
(数式5) 日間摂取率(%)= {(W−W)/2×給餌日数}× 100
【0061】
「生残率」は、以下に示す数式6により計算した。
(数式6) 生残率(%)=(実験終了後生残数)/(実験開始時個体数)× 100
【0062】
また、表2に示す値の右上に示す記号(アルファベット)は、Tukeyの多重比較(p<0.05)により対照区である配合飼料1の実験結果との有意差についての判定結果を示すものである。同列で同じ記号の場合には、実験結果が統計学的に同一と判断される(例えば、記号aが付された実験結果どうしは統計学的に同一の実験結果であると判断される。)。また、同列で同じ記号を有する場合には、実験結果に統計学的な有意差が無いと判断される(例えば、記号aが付された実験結果と記号abが付された実験結果とは統計学的に有意差が無いと判断される)。
【0063】
表2に示される結果から、増重率、比成長率、飼料効率、タンパク質効率及び日間摂餌率について、飼料区5の実験結果は飼料区1の実験結果と統計学的に同一であると判断され、飼料区2,4,7,8の実験結果は飼料区1の実験結果と統計学的に同一ではないが有意差は無いと判断された。一方、飼料区3及び6の実験結果は飼料区1の実験結果と統計学的に有意差があると判断された。
【0064】
これらの実験結果から、以下の結論が導かれた。
【0065】
ムラサキイガイ軟体部を配合していない飼料区2の実験結果は、飼料区1の実験結果と統計学的に同一ではなかったものの、有意差無しと判断される程度の差であったことから、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量が20重量%以下の場合には、ムラサキイガイ軟体部を配合せずとも、トラフグの成長を大幅に低下させることは無いことが明らかとなった。これに対し、ムラサキイガイ軟体部を配合していない飼料区3及び6の実験結果は、飼料区1の実験結果と統計学的に有意差があったことから、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量が40重量%以上の場合には、ムラサキイガイ軟体部を配合しないと、確実にトラフグの成長低下を引き起こすことが明らかとなった。また、後述するように、実施例2において、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量が30重量%以上の場合には、ムラサキイガイ軟体部を配合しないと、確実にトラフグの成長低下を引き起こすことが明らかとなった。したがって、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量が20重量%を超えるとトラフグの成長低下を招く虞があり、30重量%以上になると確実にトラフグの成長低下を招くことが分かった。このことから、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量を20重量%超とする場合には、トラフグの成長低下を抑えるためにムラサキイガイ軟体部を配合する必要があることがわかった。
【0066】
次に、飼料区4,7及び8の実験結果は、飼料区1の実験結果と統計学的に同一ではなかったものの、有意差無しと判断される程度の差であったことから、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量を53重量%以下とし、且つムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を植物性タンパク質の重量の少なくとも0.74倍とすることで、トラフグの成長低下がほとんど起こらないことが明らかとなった。
【0067】
ここで、飼料区5の実験結果は、飼料区1の実験結果と統計学的に同一であったことから、飼料区5の配合条件に近づけることによって、より確実にトラフグの成長低下を抑えることができることが明らかとなった。つまり、トラフグの成長低下をより確実に抑える上では、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量を33重量%以下とすることが好ましく、25重量%以下とすることがより好ましいことがわかった。また、トラフグの成長低下をより確実に抑える上では、ムラサキイガイ軟体部の植物性タンパク質に対する配合量を高めることが有効であることが明らかとなった。
【0068】
しかしながら、ムラサキイガイ軟体部の植物性タンパク質に対する配合量を高めすぎてもトラフグの成長低下を抑える効果が飽和してしまい、無駄となると考えられる。したがって、植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイ軟体部の乾燥重量は、少なくとも0.74倍とすればよいが、0.74〜2.2倍とすることが好ましく、1.5〜2.2倍とすることがより好ましく、2.2倍とすることが特に好ましいと考えられる。
【0069】
以上より、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量は、20重量%超〜53重量%とすることが好ましく、20重量%超〜33重量%とすることがより好ましく、20重量%超〜25重量%とすることがさらに好ましいと考えられる。
【0070】
そして、植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイ軟体部の乾燥重量は、少なくとも0.74倍とすればよいが、0.74〜2.2倍とすることが好ましく、1.5〜2.2倍とすることがより好ましく、2.2倍とすることが特に好ましいと考えられる。
【0071】
また、飼料効率及びタンパク質効率について、飼料区5の実験結果は飼料区1の実験結果と統計学的に同一であると判断され、飼料区2,4,7,8の実験結果は飼料区1の実験結果と統計学的に同一ではないが有意差は無いと判断され、飼料区3及び6の実験結果は飼料区1の実験結果と統計学的に有意差があると判断されたことから、魚粉の一部を植物性タンパク質で代替することで生じる栄養性の低下が、ムラサキイガイ軟体部を配合することで抑えられることが明らかとなった。即ち、ムラサキイガイ軟体部を配合することによって、配合飼料の栄養性も改善されることが明らかとなった。したがって、ムラサキイガイ軟体部を配合した本発明の配合飼料によれば、タンパク質源を全て魚粉としている従来の配合飼料と同じ量で、ほぼ同等の栄養をトラフグに与えることができることが明らかとなった
【0072】
次に、トラフグの血液成分を検査し、本発明の配合飼料がトラフグの健康状態に与える影響について調べた結果を表3及び表4に示す。表3は、血液のヘモグロビン含有量、ヘマトクリット値、総赤血球数、タンパク質含有量、トリグリセリド含有量及びグルコース含有量を調べた結果であり、表4は、血液の無機リン含有量、カルシウム含有量、マグネシウム含有量、塩素含有量及びカリウム含有量を調べた結果である。尚、実験結果は、網生けすあたり7〜8尾(体重25.3〜63.6g)から血液を採取して網生けす毎にプールして検査し、その平均と標準偏差で示した。
【0073】
【表3】

【0074】
【表4】

【0075】
表3及び表4に示される結果から、飼料区1〜8において、実験結果に有意差は殆ど見られないことが明らかとなった。このことから、本発明の配合飼料である飼料区4,5,7,8の配合飼料よって、トラフグの健康状態に悪影響が及ぼされないことが明らかとなった。
【0076】
以上の実験結果から、本発明の配合飼料のトラフグに対する有効性が明らかとなった。また、トラフグ以外のフグ類について、本発明の配合飼料が有効でないとの積極的な理由が存在しないことから、フグ類全般について、本発明の配合飼料が有効であるものと推定される。
【0077】
(実施例2)
魚粉と植物性タンパク質含有原料とムラサキイガイエキス抽出物とを原料とした各種配合飼料をトラフグに与え、その成長状態について観察した。
【0078】
(2−1 配合飼料の組成)
実験に使用した配合飼料の組成を表5に示す。
【0079】
【表5】

【0080】
本実施例においても、実施例1と同様、植物性タンパク質含有原料として脱皮大豆粕を使用した。また、ムラサキイガイエキス抽出物は以下の手順で得た。
1)ムラサキイガイ剥き身冷凍ブロックをフローズンカッターで粉砕。
2)粉砕物に対し4倍量(重量)の水を添加。
3)50℃で30分加熱した後、さらに90℃で30分加熱してエキスを熱水抽出。
4)抽出液を濾過分離して得られた濾液をBrix値が20%になるまで濃縮。
【0081】
魚粉と脱皮大豆粕とムラサキイガイエキス抽出物以外の配合成分は、馬鈴薯デンプン、(理研ビタミン製)、無機混合物(日本配合飼料株式会社製)、ビタミン混合物(日本配合飼料株式会社製)、α化馬鈴薯デンプン及びデキストリンを用いた。飼料の作製はフィードオイルを除く各原料を粉砕し、十分に混合した後、ミートチョッパーを用い成形した。作製した飼料は乾燥後、所定の量のフィードオイルを浸透させ、再度乾燥した。
【0082】
表5における飼料区1の飼料は、魚粉(トロールミル)を単独のタンパク質源とし、ムラサキイガイエキス抽出物を含まない対照区の飼料である。
【0083】
また、表4における飼料区2の飼料は、魚粉由来タンパク質の一部が脱皮大豆粕由来タンパク質で代替され、ムラサキイガイエキス抽出物を含まない飼料であり、魚粉由来タンパク質の30重量%が脱皮大豆粕由来タンパク質で代替されている。
【0084】
さらに、表4における飼料区3,4,5,6及び7の飼料は、ムラサキイガイエキス抽出物を含む実験区の飼料であり、脱皮大豆粕由来タンパク質重量に対するムラサキイガイエキス抽出物(Brix値20%)の重量は、それぞれ、0.37倍,0.74倍,0.28倍,0.56倍,1.1倍とした。
【0085】
(2−2 飼育実験)
12尾/生けすとしたことと、飼育期間を7週間としたこと以外は、実施例1と同様とした。
【0086】
(2−3 実験結果)
飼育実験の結果を表6に示す。尚、実験結果は、3連の実験結果の平均と標準偏差で示した。
【0087】
【表6】

【0088】
表6に示される結果から、増重率及び比成長率について、飼料区3,4,6,7の実験結果は飼料区1の実験結果と統計学的な有意差が無いと判断された。一方、飼料区2及び5の実験結果は飼料区1の実験結果と統計学的に有意差があると判断された。
【0089】
これらの実験結果から、以下の結論が導かれた。
【0090】
ムラサキイガイエキス抽出物を配合していない飼料区2の実験結果は、飼料区1の実験結果と統計学的に有意差があると判断されたことから、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量が30重量%の場合には、ムラサキイガイエキス抽出物を配合しないと、確実にトラフグの成長低下を引き起こすことが明らかとなった。また、上述したように、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量が20重量%を超えるとトラフグの成長低下を招く虞がある。したがって、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量が20重量%を超えるとトラフグの成長低下を招く虞があり、30重量%以上になると確実にトラフグの成長低下を招くことが分かった。このことから、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量を20重量%超とする場合には、トラフグの成長低下を抑えるためにムラサキイガイエキス抽出物を配合する必要があることがわかった。
【0091】
ここで、ムラサキイガイエキス抽出物を配合した飼料区5の実験結果もまた、飼料区1の実験結果と比較して統計学的に有意差があると判断されたことから、ムラサキイガイエキス抽出物(Brix値20%)の重量が植物性タンパク質重量の0.28倍以下の場合には、ムラサキイガイエキス抽出物を配合したとしても、トラフグの成長低下を招く虞があることが明らかとなった。
【0092】
これに対し、飼料区3,4,6及び7において、飼料区1の実験結果と統計学的に同一ではなかったものの、有意差無しと判断される程度の差であったことから、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量を40重量%以下とし、且つ且つムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を植物性タンパク質の重量の少なくとも0.37倍とすることで、トラフグの成長低下がほとんど起こらないことが明らかとなった。
【0093】
ここで、飼料区4の実験結果は、飼料区1の実験結果と統計学的に同一とは言えないものの、飼料区1の実験結果と最も近い値であったことから、飼料区4の配合条件に近づけることによって、より確実にトラフグの成長低下を抑えることができることが明らかとなった。つまり、トラフグの成長低下をより確実に抑える上では、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量を30重量%以下とすることが好ましいことがわかった。また、トラフグの成長低下をより確実に抑える上では、ムラサキイガイエキス抽出物の植物性タンパク質に対する配合量を高めることが有効であることが明らかとなった。
【0094】
しかしながら、ムラサキイガイエキス抽出物の植物性タンパク質に対する配合量を高めすぎてもトラフグの成長低下を抑える効果が飽和してしまい、無駄となる。実際、本実施例では飼料区4の実験結果において最も優れた成長低下抑制効果が得られ、飼料区7の実験結果では、その効果が飽和してしまうことが確認された。したがって、植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイエキス抽出物の重量は、少なくとも0.37倍とすればよいが、0.37〜1.1倍未満とすることが好ましく、0.37〜0.74倍とすることがより好ましく、0.56〜0.74倍とすることがさらに好ましく、0.74倍とすることが特に好ましいと考えられる。
【0095】
以上より、脱皮大豆粕由来の植物性タンパク質による魚粉由来タンパク質の代替量は、20重量%超〜40重量%とすることが好ましく、20重量%超〜30重量%とすることがより好ましいと考えられる。
【0096】
そして、植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイエキス抽出物の重量は、少なくとも0.37倍とすればよいが、0.37〜1.1倍未満とすることが好ましく、0.37〜0.74倍とすることがより好ましく、0.56〜0.74倍とすることがさらに好ましく、0.74倍とすることが特に好ましいと考えられる。
【0097】
ここで、本実施例で使用したムラサキイガイエキス抽出物は、Brix値が20%のものであるが、Brix値が20%以外のエキス抽出物を用いることもできる。その場合、エキス抽出物に含まれるエキス成分に着目して以下のように換算することで、ムラサキイガイエキス抽出物の最適な重量を求めることができる。
【0098】
即ち、Brix値20%の場合のエキス抽出物の重量をX(g)とすると、エキス抽出物に含まれるエキス成分の重量は、20X/100(g)となる。次に、Brix値A%の場合のエキス抽出物の重量をY(g)とすると、エキス抽出物に含まれるエキス成分の重量は、AY/100(g)となる。ここで、Brix値20%の場合もBrix値A%の場合も、配合飼料に配合すべきエキス成分の重量は同量であるから、以下の式(1)が成立する。
20X/100=AY/100・・・・・・(1)
この式をBrix値A%の場合のエキス抽出物の重量Yについて解くと、以下の式が得られる。
Y=20X/A・・・・・・(2)
したがって、Brix値20%の場合のエキス抽出物の重量Xに20/Aを掛けることによって、Brix値A%の場合に必要なエキス抽出物の重量Yが得られる。この考え方の基づいて計算した結果、Brix値がA%の場合、植物性タンパク質の重量に対するムラサキイガイエキス抽出物の重量は、少なくとも7.4/A倍とすればよいが、7.4/A〜22/A倍未満とすることが好ましく、7.4/A〜15/A倍とすることがより好ましく、11/A〜15/A倍とすることがさらに好ましく、15/A倍とすることが特に好ましいことがわかった。
【0099】
尚、実施例2においては、タンパク質効率、飼料効率及び日間摂餌率については、ムラサキイガイエキス抽出物の添加の有無による実験結果の差異が明確とはならず、ムラサキイガイエキス抽出物の添加による効果が明らかとはならなかった。しかしながら、ムラサキイガイエキス抽出物の配合によってタンパク質効率、飼料効率及び日間摂餌率が飼料区1よりも大幅に低下するような傾向は少なくとも見られなかった。このことから、ムラサキイガイエキス抽出物を配合した本発明の配合飼料の栄養性は、タンパク質源を全て魚粉としている配合飼料の栄養性と大きく相違するものではないことが明らかとなった。
【0100】
次に、トラフグの血液成分を検査し、本発明の配合飼料がトラフグの健康状態に与える影響について調べた結果を表7及び表8に示す。表7は、血液のヘモグロビン含有量、ヘマトクリット値、総赤血球数、タンパク質含有量、トリグリセリド含有量及びグルコース含有量を調べた結果であり、表8は、血液の無機リン含有量、カルシウム含有量、マグネシウム含有量、塩素含有量及びカリウム含有量を調べた結果である。尚、実験結果は、網生けす中の全個体から血液を採取したもの網生けす毎にプールして検査し、その平均と標準偏差で示した。
【0101】
【表7】

【0102】
【表8】

【0103】
表7及び表8に示される結果から、飼料区2〜7において、飼料区1よりもトリグリセリド含有量が低下する傾向が見られたものの、トラフグの健康状態に悪影響を及ぼすレベルではなく、また、その他の成分については飼料区1〜7における実験結果に有意差は殆ど見られないことが明らかとなった。このことから、本発明の配合飼料である飼料区3,4,7,8の配合飼料よって、トラフグの健康状態に悪影響が及ぼされないことが明らかとなった。
【0104】
以上の実験結果から、本発明の配合飼料のトラフグに対する有効性が明らかとなった。また、トラフグ以外のフグ類について、本発明の配合飼料が有効でないとの積極的な理由が存在しないことから、フグ類全般について、本発明の配合飼料が有効であるものと推定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚粉と魚粉代替原料としての植物性タンパク質含有原料とムラサキイガイ軟体部とを少なくとも配合してなり、
前記魚粉由来タンパク質が前記植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質によって20重量%超〜53重量%代替され、
且つ前記ムラサキイガイ軟体部の乾燥重量を前記植物性タンパク質の重量の少なくとも0.74倍としていることを特徴とするフグ類用配合飼料。
【請求項2】
魚粉と魚粉代替原料としての植物性タンパク質含有原料とムラサキイガイエキス抽出物とを少なくとも配合してなり、
前記魚粉由来タンパク質が前記植物性タンパク質含有原料由来の植物性タンパク質によって20重量%超〜40重量%代替され、
且つ前記ムラサキイガイエキス抽出物の重量を前記植物性タンパク質の重量の少なくとも7.4/A倍(Aは前記ムラサキイガイエキス抽出物のBrix値(%))としていることを特徴とするフグ類用配合飼料。