説明

フリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法および画像形成装置の定着装置

【課題】
交流電源の周波数が変動してもフリッカを有効に抑制することができ、しかも構成が簡単なフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法を提供する。
【解決手段】
定着装置20のハロゲンランプ21を流れる電流を電流検出回路19により検出し、ハロゲンランプ21の温度を温度検出センサ22により検出し、電流検出回路19の出力に基づき交流AC電源1の周波数および位相を周波数/位相認識部31で認識し、温度検出センサ22の出力および周波数/位相認識部31で認識した周波数および位相に基づきハロゲンランプ21に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子10のスイッチングタイミングを定着装置制御部33により部補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する画像形成装置等の機器のフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法に関し、詳しくは、波数制御を用いてフリッカ抑制を行うフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する画像形成装置等の機器においては、発熱部のインピーダンス特性により、大きな突入電流が発生し、これに伴いこの機器が設置されたオフィス等においては、蛍光灯がちらついてしまうフリッカ問題が発生する。
【0003】
例えば、オフィス等に配設されるプリンタ、複写機等においては、交流電源の出力を加えることにより発熱する定着部を有するものがある。
【0004】
この定着部のハロゲンランプの発熱は、このハロゲンランプに交流電源の出力を加えることにより行われるが、このハロゲンランプのインピーダンス特性により、大きな突入電流が発生すると、これに伴い、この画像形成装置が設置されたオフィス等の蛍光灯がちらつくフリッカ現象が発生する。
【0005】
このフリッカ現象に対する対策として、従来、特許文献1、特許文献2に示すような波数制御が知られている。この波数制御は、定着装置のハロゲンランプへの商用電源のAC(交流)電圧供給時に、半サイクルONと1サイクルOFFの繰返し制御を行うことで、フリッカ値を抑制する制御である。
【0006】
この波数制御技術には、特許文献1に示されるような商用電源のAC電圧の位相を検出するゼロクロス検出方式と特許文献2に示されるようなゼロクロス検出を行わない方式が知られている。
【特許文献1】特公昭60−46711号
【特許文献2】特開平11052782号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示されたようなゼロクロス検出方式を採用する構成では、ゼロクロス検出が必要になるので、このためのコストアップ、部品点増加によるサイズアップ等が問題になる。
【0008】
また、特許文献2に示されたようなゼロクロス検出を行わない方式においては、商用電源の周波数の影響を受け、フリッカ値を安定に制御できないという問題がある。
【0009】
また、上記従来の構成においては、商用電源ラインインピーダンスが大きな設置環境においては、この商用電源ラインインピーダンスバラツキによりフリッカ値を有効に抑制することができないという問題があった。
【0010】
そこで、この発明は、交流電源の周波数が変動してもフリッカを有効に抑制することができ、しかも構成が簡単なフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法および画像形成装置の定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する機器のフリッカ抑制装置において、前記交流電源から前記発熱部に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子と、前記発熱部を流れる電流を検出する電流検出手段と、前記発熱部の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出出力および前記電流検出手段の検出出力に基づき前記スイッチング素子のスイッチングタイミングを制御する波数制御手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記波数制御手段は、前記電流検出手段の検出出力に基づき前記交流電源の周波数および位相を認識する認識手段と、前記スイッチング素子に加えるスイッチング制御信号を生成するスイッチング制御信号生成手段と、前記交流電源の周波数および位相に対応した前記スイッチング制御信号のスイッチングタイミング補正のための目標値を記憶する目標値テーブルと、前記認識手段で認識した前記交流電源の周波数および位相に基づき前記目標値テーブルに記憶された前記目標値を参照して前記スイッチング制御信号を補正する信号補正手段とを具備することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記波数制御手段は、前記電流検出手段の検出出力に基づき前記波数制御手段による前記波数制御の状態を認識し、該認識した前記波数制御の状態に基づき前記波数制御の制御期間を制御することを特徴とする。
【0014】
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記交流電源の出力電圧を検出する電圧検出手段を更に具備し、前記波数制御手段は、前記電圧検出手段の検出出力に基づき前記交流電源の電圧および周波数および位相を認識して、該認識した前記交流電源の電圧および周波数および位相に基づき前記スイッチング制御信号を補正することを特徴とする。
【0015】
また、請求項5の発明は、前記電圧検出手段は、前記交流電源の出力電圧を変換する電源回路の一次回路若しくは2次回路から前記交流電源の出力電圧を間接的に検出することを特徴とする。
【0016】
また、請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記電圧検出手段は、前記スイッチング素子を流れる電流による電圧降下に基づき前記交流電源の出力電圧を検出することを特徴とする。
【0017】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかの発明において、前記交流電源のラインインピーダンスを検出するラインインピーダンス検出手段を更に具備し、前記波数制御手段は、前記ラインインピーダンス検出手段の検出出力に基づき前記波数制御の制御期間を制御することを特徴とする。
【0018】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記ラインインピーダンス検出手段は、前記機器に対する前記交流電源からの入力電圧、前記機器の内部インピーダンス、前記スイッチング素子のオンインピーダンス、前記発熱部のインピーダンスに基づき前記ラインインピーダンスを算出することにより検出することを特徴とする。
【0019】
また、請求項9の発明は、交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する画像形成装置の定着装置において、前記交流電源から前記発熱部に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子と、前記発熱部を流れる電流を検出する電流検出手段と、前記発熱部の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出出力および前記電流検出手段の検出出力に基づき前記スイッチング素子のスイッチングタイミングを制御する波数制御手段とを具備するフリッカ抑制装置を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項10の発明は、交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する機器のフリッカ抑制方法において、前記発熱部を流れる電流を電流検出手段により検出し、前記発熱部の温度を温度検出手段により検出し、前記電流検出手段の検出出力に基づき前記交流電源の周波数および位相を認識手段により認識し、前記温度検出手段の検出出力および前記認識手段で認識した前記交流電源の周波数および位相に基づき前記発熱部に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子のスイッチングタイミングを波数制御手段により補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する機器において、発熱部を流れる電流を電流検出手段により検出し、発熱部の温度を温度検出手段により検出し、電流検出手段の検出出力に基づき交流電源の周波数および位相を認識手段により認識し、温度検出手段の検出出力および認識手段で認識した交流電源の周波数および位相に基づき発熱部に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子のスイッチングタイミングを補正するように構成したので、簡単な構成によりフリッカを有効に抑制できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、この発明に係わるフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法および画像形成装置の定着装置の実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、この発明に係わるフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法を適用して構成した画像形成装置の実施例1の要部を示すブロック図である。
【0024】
図1において、この画像形成装置は、商用AC電源1が加えられる電源装置10、定着装置20、制御部30、駆動装置40を具備して構成される。
【0025】
ここで、定着装置20は、画像形成装置から印字出力される用紙にトナー像を定着するために用いられるもので、ハロゲンランプ21およびこのハロゲンランプ21の温度を検出する温度検出センサ22を具備している。
【0026】
駆動装置40は、この画像形成装置の用紙搬送、光学的読み取りを行うキャリッジの移動、感光体ドラムの回動等を制御するモータを含む装置である。
【0027】
電源装置10は、インピーダンス素子11、定着装置20のハロゲンランプ21に流れる電流をオン、オフするスイッチング素子12、省電力モードにおいてオフされるスイッチ13および14、制御部30を駆動する電源を生成するトランス15および平滑回路16、駆動装置40を駆動する電源を生成するトランス17および平滑回路18、定着装置20のハロゲンランプ21に流れる電流を検出する電流検出回路19を具備して構成される。
【0028】
制御部30は、周波数/位相認識部31、目標値テーブル32、定着装置制御部33、省電力制御部34を具備して構成される。
【0029】
ここで、周波数/位相認識部31は、電流検出回路18の出力に基づき商用AC電源1の周波数および位相を認識する。
【0030】
目標値テーブル32は、周波数/位相認識部31で認識された商用AC電源1の周波数および位相に対応して定着装置制御部31で生成されるスイッチング制御信号の補正のための目標値が格納される。
【0031】
ここで、目標値テーブル32に記憶される目標値の一例としては、具体的には、ハロゲンランプ21のON時間、OFF時間、ハロゲンランプ21のOFF温度、ON温度等である。
【0032】
なお、目標値テーブル32に記憶される目標値は、この画像形成装置の動作モード、例えば、ウオームアップモード、ランモード、スタンバイモード、ローパワーモード、スリープモード等に対応して夫々のモードに最適な値を格納するように構成してもよい。
【0033】
定着装置制御部31は、スイッチング素子12をオン、オフ制御するスイッチング制御信号の生成および商用AC電源1周波数、位相の変動に対応するための上記スイッチング制御信号の補正制御を行う。
【0034】
このスイッチング制御信号によるスイッチング素子12のオン、オフ制御により、定着装置20のハロゲンランプ21の温度制御、フリッカを抑制するための波数制御が実現される。
【0035】
省電力制御部34は、スイッチ12および13若しくはその一方にスイッチオフ信号を送信することによりこの画像形成装置の省電力モード(ローパワーモード、スリープモード)を実現する。
【0036】
さて、この実施例1の画像形成装置においては、ハロゲンランプ21に対する商用AC電源1の印加時に発生する突入電流によるフリッカを抑制するために波数制御を行う。
【0037】
この波数制御は、商用AC電源1の印加時の所定の波数制御期間において、図2に示すように、商用AC電源1の半サイクルONと1サイクルOFFの繰返し制御を行うことで実現される。
【0038】
ここで、スイッチング制御信号のパルス信号仕様を、例えば、ON時間:10ms、OFF時間:20ms、ON/OFF周期:30msに固定すると、商用周波数が50Hzでは、図2に示すように、ほぼ所望とする「半サイクルON、1サイクルOFF」の繰返し波形の波数制御を実現できるが、商用周波数60Hzでは所望とする波数制御を実現できず、「半サイクルON、1.5サイクルOFF」と「半サイクルON、1サイクルOFF」などの不安定な波形状態となりフリッカレベルが悪化してしまう。
【0039】
すなわち、スイッチング制御信号として商用AC電圧波形とは非同期な固定パルス信号を用いると、商用AC電源の周波数変動には対応できないことになる。
【0040】
そこで、この実施例1においては、周波数/位相認識部31で、電流検出回路19の出力に基づき商用AC電源1の周波数および位相を認識し、予め目標値テーブル32に記憶されているこの周波数および位相に対応するスイッチング制御信号の補正のための目標値を参照して定着装置制御部31で生成されるスイッチング制御信号の補正を動的に行うことにより商用AC電源1の周波数が変動しても、良好なフリッカ抑制ができるように構成されている。
【0041】
図3は、図1に示した定着装置制御部33による定着装置20の制御の一例を示す図である。
【0042】
定着装置制御部33は、温度検出センサ22の出力に基づき、ハロゲンランプ21の温度がON温度目標値より低下したことが検出されると、ハロゲンランプON/OFF信号によりハロゲンランプのONを指示し、まず、スイッチング制御信号を「半サイクルON、1サイクルOFF」に制御して、スイッチング素子12を「半サイクルON、1サイクルOFF」する波数制御を行う。
【0043】
この場合の波数制御においては、周波数/位相認識部31で認識した商用AC電源1の周波数および位相に同期するように、目標値テーブル32に記憶されているこの周波数および位相に対応するスイッチング制御信号の補正のための目標値を参照してスイッチング素子12をオン、オフ制御するスイッチング制御信号の補正を動的に行う。
【0044】
これにより、商用AC電源1の周波数、位相が変動しても、突入電流を有効に抑制して良好なフリッカ抑制を行うことができる。
【0045】
この波数制御により、温度検出センサ22の出力に基づき、突入電流が安定したことが検出されると、スイッチング制御信号を連続ONに制御して、波数制御を終了する。
【0046】
そして、ハロゲンランプ21の温度がOFF温度目標値を越えると、スイッチング制御信号を連続OFFして、ハロゲンランプのOFFを指示する。
【0047】
なお、ハロゲンランプ21のハロゲンランプ21のON時間、OFF時間、OFF温度、ON温度等に加えて、波数制御期間も商用AC電源1の周波数および位相に応じて異なるので、この波数制御期間の目標値も目標値テーブル32に予め格納し、定着装置制御部31では、この波数制御期間も目標値テーブル32に格納された波数制御期間の目標値を参照して制御するように構成してもよい。
【0048】
ところで、上記実施例1においては、商用AC電源1の周波数および位相変動には対応できるが、商用AC電源1の電圧変動には対応できない。そこで、次に、商用AC電源1の電圧変動も考慮した実施例2について次に説明する。
【実施例2】
【0049】
図4は、電源装置10の平滑回路17の1次側から商用AC電源1の電圧変動を検出して、定着装置制御部33の波数制御におけるスイッチング制御信号の補正をこの商用AC電源1の電圧変動をも考慮して行うようにしたこの発明に係わる画像形成装置の実施例2の要部を示すブロック図である。
【0050】
なお、図4においては、説明を簡略化するために、図1に示した画像形成装置と同様の機能を果たす部分には図1で用いたと同一の符号を付する。
【0051】
この実施例2においては、電源装置10の平滑回路17の1次側に電圧検出回路102を接続して、制御部30の電圧/周波数/位相認識部301では、電流検出回路19の出力に基づく商用AC電源1の周波数および位相の認識に加えて、電圧検出回路102の検出出力に基づく商用AC電源1の電圧変動を認識する。
【0052】
また、目標値テーブル302には、商用AC電源1の電圧、周波数、位相に対応してハロゲンランプ21のON時間、OFF時間、OFF温度、ON温度、波数制御期間等の目標値等が予め格納される。
【0053】
そして、定着装置制御部33は、温度検出センサ22により検出されたハロゲンランプ21の温度および電圧/周波数/位相認識部301で認識された商用AC電源1の電圧および周波数および位相に基づき、目標値テーブル302に記憶された各目標値を参照して、スイッチング制御信号の補正を動的に行う。他の構成は、図1に示した実施例1と同様である。
【0054】
このような構成によると、商用AC電源1の電圧変動にも対応したスイッチング制御信号の補正制御が可能になる。
【0055】
なお、上記実施例2では、電圧検出回路102を電源装置10の平滑回路17の1次側に接続して商用AC電源1の電圧変動を検出するように構成したが、電圧検出回路102を平滑回路17の2次側に接続して商用AC電源1の電圧変動を間接的に検出するように構成してもよい。
【0056】
また、商用AC電源1の電圧および周波数および位相に加えて省電力制御34による省電力制御状態により、ハロゲンランプ21のON時間、OFF時間、OFF温度、ON温度、波数制御期間等が異なるので、省電力制御34により制御されるスイッチ13、14が接続されるトランス15、17の1次側電圧若しくは2次側電圧を検出して、これら電圧に対応して上記目標値を目標値テーブル302に格納すれば、更に木目の細かい波数制御が可能になる。
【0057】
なお、実施例1および実施例2では、電流検出回路19の出力に基づき商用AC電源1の周波数および位相を認識してスイッチング信号の補正を行うように構成したが、スイッチング素子12のON、OFFにより制御される電流による電圧降下から商用AC電源1の電圧および周波数および位相を認識してスイッチング信号の補正を行うように構成してもよい。
【0058】
また、電源装置10の1次側回路の部品、例えば、スイッチング素子12の温度を検出して、この検出出力に基づきスイッチング素子12の温度の温度上昇率および上昇温度を認識して、スイッチング信号の補正を行うように構成してもよい。次に、スイッチング素子12の温度の温度上昇率および上昇温度も考慮した実施例3について次に説明する。
【実施例3】
【0059】
図5は、電源装置10の1次回路100のインピーダンス素子11の電圧降下に基づき電源装置10の電圧変動を検出するとともに、スイッチング素子12の温度変動を温度検出回路103で検出して、定着装置制御部33の波数制御におけるスイッチング制御信号の補正を行うように構成したこの発明に係わる画像形成装置の実施例3の要部を示すブロック図である。
【0060】
なお、図5においても、説明を簡略化するために、図1に示した画像形成装置と同様の機能を果たす部分には図1で用いたと同一の符号を付する。
【0061】
この実施例3においては、電源装置10の1次回路100のインピーダンス素子11に電圧検出回路102を接続し、この電圧検出回路102により電源装置10の電圧変動を検出し、また、電源装置10の1次側回路100のスイッチング素子12に温度検出回路102を接続し、この温度検出回路102により、スイッチング素子12の温度を検出する。
【0062】
この場合、認識部303では、電圧検出回路102の出力に基づき商用AC電源1の電圧および周波数および位相を認識し、温度検出回路102の出力に基づきスイッチング素子12の温度上昇率および上昇値を認識する。
【0063】
また、目標値テーブル304には、商用AC電源1の電圧、周波数、位相およびスイッチング素子12の温度上昇率、上昇値に対応してハロゲンランプ21のON時間、OFF時間、OFF温度、ON温度、波数制御期間等の目標値が予め格納される。
【0064】
そして、定着装置制御部33は、温度検出センサ22の出力に基づき検出されたハロゲンランプ21の温度および認識部303で認識した商用AC電源1の電圧、周波数、位相およびスイッチング素子12の温度上昇率、上昇値に基づき、目標値テーブル302に記憶された各目標値を参照して、スイッチング素子12をオン、オフ制御するスイッチング制御信号の補正を動的に行う。他の構成は、図1に示した実施例1と同様である。
【0065】
図6は、図5に示した定着装置制御部33による定着装置20の制御の一例を示す図である。
【0066】
定着装置制御部33は、温度検出センサ22の出力に基づき、ハロゲンランプ21の温度がON温度目標値より低下したことが検出されると、ハロゲンランプON/OFF信号によりハロゲンランプのONを指示し、まず、スイッチング制御信号を「半サイクルON、1サイクルOFF」に制御して、スイッチング素子12を「半サイクルON、1サイクルOFF」する波数制御を行う。
【0067】
この場合の波数制御においては、認識部303で認識した商用AC電源1の電圧、周波数、位相およびスイッチング素子12の温度上昇率、上昇値電圧に基づき、目標値テーブル304に記憶されている商用AC電源1の電圧、周波数、位相およびスイッチング素子12の温度上昇率、上昇値に対応してハロゲンランプ21のON時間、OFF時間、OFF温度、ON温度、波数制御期間等の目標値を参照してスイッチング素子12をオン、オフ制御するスイッチング制御信号の補正を動的に行う。
【0068】
なお、スイッチング素子12の温度上昇率、上昇値は、認識部303において温度検出回路102の出力を微分若しくは積分することにより認識することができる。
【0069】
このような構成によると、商用AC電源1の電圧、周波数、位相およびスイッチング素子12の温度上昇率、上昇値が変動しても、突入電流を有効に抑制して良好なフリッカ抑制を行うことができる。
【0070】
この波数制御により、突入電流が安定したことが検出されると、スイッチング制御信号を連続ONに制御して、波数制御を終了する。
【0071】
そして、ハロゲンランプ21の温度がOFF温度目標値を越えると、スイッチング制御信号を連続OFFして、ハロゲンランプのOFFを指示する。
【0072】
なお、上記実施例3においては、スイッチング素子12の温度を温度検出回路103で検出して、このスイッチング素子12の温度上昇率、上昇値を考慮した波数制御を行うように構成したが、電源装置10の1次回路100のインピーダンス素子11の温度を検出して、このインピーダンス素子11の温度上昇率、上昇値を考慮した波数制御を行うように構成してもよい。
【0073】
さて、この種の画像形成装置においては、この画像形成装置が設置される設置環境における商用電源のラインインピーダンスが大きいと、この画像形成装置のフリッカ値はこのラインインピーダンスの影響も受ける。次に、この画像形成装置が設置される設置環境における商用電源のラインインピーダンスも考慮した実施例4について次に説明する。
【実施例4】
【0074】
図7は、この画像形成装置が設置される設置環境における商用電源のラインインピーダンスも考慮して定着装置制御部33の波数制御におけるスイッチング制御信号の補正を行うように構成したこの発明に係わる画像形成装置の実施例3の要部を示すブロック図である。
【0075】
なお、図7においても、説明を簡略化するために、図1に示した画像形成装置と同様の機能を果たす部分には図1で用いたと同一の符号を付する。
【0076】
この実施例3においては、まず、この画像形成装置が設置される設置環境における商用AC電源1のラインインピーダンス50を検出する。
【0077】
このラインインピーダンス50は、図8に示す等価回路から算出することができる。
【0078】
図8において、商用AC電源1の電圧をV0、商用AC電源1のラインインピーダンス50をR1、両端電圧をV1、この画像形成装置の入力電圧をVin、内部インピーダンスをR2、両端電圧をV2、スイッチング素子12のオン電流係数をα、両端電圧をV3、ハロゲンランプ21のインピーダンスをR4、両端電圧をV4、ハロゲンランプ21を流れる電流をI1とすると、下記関係式が得られる。
【0079】
V0=V1+V2+V3+V4 ・・・・・(1)
V1=I1×R1,V2=I1×R2,V3=I1×α,V4=I1×R4
・・・・・(2)
V0=I1×(R1+R2+α+R4) ・・・・・(3)
Vin=V2+V3+V4 ・・・・・(4)
ここで、内部インピーダンスR2は固定値、V2およびI1は検出可能である。また、αは、スイッチング素子12の素子特性より固定値となる。また、R4は、検出可能である。
【0080】
そこで、V2、V3、V4の検出手段を設け、ハロゲンランプ21に電流が流れていないI1=0の状態での入力電圧Vinの計算結果を商用AC電源1の電圧V0と認識し、ハロゲンランプ21に電流が流れている状態での入力電圧Vinの計算結果に基づき、この画像形成装置が設置される設置環境における商用AC電源1のラインインピーダンス50の値R1を予測することができる。
【0081】
そして、このラインインピーダンス50の値R1を目標値テーブル304に記憶することで、この画像形成装置が設置される設置環境における商用電源のラインインピーダンス50も考慮したフリッカ抑制制御が可能になる。
【0082】
なお、この実施例4においては、実施理1に示した商用AC電源1の周波数および位相変動に対応したフリッカ抑制制御に加えて、ラインインピーダンス50も考慮したフリッカ抑制制御が可能になるが、この実施例4のフリッカ抑制制御に加えて、上述した実施例2の商用AC電源1の電圧変動も考慮したフリッカ抑制制御、実施例3のスイッチング素子12の温度の温度上昇率および上昇温度も考慮したフリッカ抑制制御を組み合わせて実施してもよい。
【0083】
このように実施例1乃至3によると、商用AC電源の周波数および位相を検出する手段を設けずに、所望とする波数制御を安定的に行うことができ、これにより、商用AC周波数変動の影響を受けずに確実にフリッカレベルを抑制できる。また、低コスト化と小型化を実現できる。
【0084】
また、実施例4によると、商用AC電源のラインインピーダンスのバラツキに対応した適正かつ十分なフリッカ抑制制御が可能になり、また不必要なまでのフリッカ抑制制御を行うこともなくなるので、より定着性性能が向上し、定着装置のウオームアップ時間の短縮も可能となる。
【0085】
また、装置内インピーダンスによるハロゲンランプの電流検出に基づき商用AC電源の周波数および位相を認識しているので、ゼロクロス検出手段を設けなくとも、商用電源周波数バラツキに対応した有効なフリッカ抑制制御が可能になる。
【0086】
なお、上記実施例では、この発明に係わるフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法を商用AC電源で駆動される定着装置を有する画像形成装置に適用した場合を示したが、この発明は、交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する機器であれば、画像形成装置以外の他の機器にも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
この発明のフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法は、交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する画像形成装置等に適用することができる。
【0088】
この発明によれば、交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する機器において、発熱部を流れる電流を電流検出手段により検出し、発熱部の温度を温度検出手段により検出し、温度検出手段の検出出力および電流検出手段の検出出力に基づき電流検出手段の検出出力に基づき前記交流電源の周波数および位相を認識手段により認識し、温度検出手段の検出出力および認識手段で認識した交流電源の周波数および位相に基づき発熱部に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子のスイッチングタイミングを補正するように構成したので、簡単な構成によりフリッカを有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】この発明に係わるフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法を適用して構成した画像形成装置の実施例1の要部を示すブロック図である。
【図2】波数制御によるフリッカ抑制を説明する図である。
【図3】図1に示した定着装置制御部による定着装置の制御の一例を示す図である。
【図4】この発明に係わるフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法を適用して構成した画像形成装置の実施例2の要部を示すブロック図である。
【図5】この発明に係わるフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法を適用して構成した画像形成装置の実施例3の要部を示すブロック図である。
【図6】図5に示した定着装置制御部による定着装置の制御の一例を示す図である。
【図7】この発明に係わるフリッカ抑制装置およびフリッカ抑制方法を適用して構成した画像形成装置の実施例4の要部を示すブロック図である。
【図8】実施例4におけるラインインピーダンス検出の原理を示す等価回路である。
【符号の説明】
【0090】
1 商用AC電源
10 電源装置
11 インピーダンス素子
12 スイッチング素子
13、14 スイッチ
15 トランス
16 平滑回路
17 トランス
18 平滑回路
19 電流検出回路
20 定着装置
21 ハロゲンランプ
22 温度検出センサ
30 制御部
31 周波数/位相認識部
32 目標値テーブル
33 定着装置制御部
34 省電力制御部
40 駆動装置
50 ラインインピーダンス
100 1次側回路
101 電圧検出回路
102 電圧検出回路
103 温度検出回路
301 電圧/周波数/位相認識部
302 目標値テーブル
303 認識部
304 目標値テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する機器のフリッカ抑制装置において、
前記交流電源から前記発熱部に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子と、
前記発熱部を流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記発熱部の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出出力および前記電流検出手段の検出出力に基づき前記スイッチング素子のスイッチングタイミングを制御する波数制御手段と
を具備することを特徴とするフリッカ抑制装置。
【請求項2】
前記波数制御手段は、
前記電流検出手段の検出出力に基づき前記交流電源の周波数および位相を認識する認識手段と、
前記スイッチング素子に加えるスイッチング制御信号を生成するスイッチング制御信号生成手段と、
前記交流電源の周波数および位相に対応した前記スイッチング制御信号のスイッチングタイミング補正のための目標値を記憶する目標値テーブルと、
前記認識手段で認識した前記交流電源の周波数および位相に基づき前記目標値テーブルに記憶された前記目標値を参照して前記スイッチング制御信号を補正する信号補正手段と
を具備することを特徴とする請求項1記載のフリッカ抑制装置。
【請求項3】
前記波数制御手段は、
前記電流検出手段の検出出力に基づき前記波数制御手段による前記波数制御の状態を認識し、該認識した前記波数制御の状態に基づき前記波数制御の制御期間を制御する
ことを特徴とする請求項1または2記載のフリッカ抑制装置。
【請求項4】
前記交流電源の出力電圧を検出する電圧検出手段
を更に具備し、
前記波数制御手段は、
前記電圧検出手段の検出出力に基づき前記交流電源の電圧および周波数および位相を認識して、該認識した前記交流電源の電圧および周波数および位相に基づき前記スイッチング制御信号を補正する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフリッカ抑制装置。
【請求項5】
前記電圧検出手段は、
前記交流電源の出力電圧を変換する電源回路の一次回路若しくは2次回路から前記交流電源の出力電圧を間接的に検出する
ことを特徴とする請求項4記載のフリッカ抑制装置。
【請求項6】
前記電圧検出手段は、
前記スイッチング素子を流れる電流による電圧降下に基づき前記交流電源の出力電圧を検出する
ことを特徴とする請求項4記載のフリッカ抑制装置。
【請求項7】
前記交流電源のラインインピーダンスを検出するラインインピーダンス検出手段
を更に具備し、
前記波数制御手段は、
前記ラインインピーダンス検出手段の検出出力に基づき前記波数制御の制御期間を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のフリッカ抑制装置。
【請求項8】
前記ラインインピーダンス検出手段は、
前記機器に対する前記交流電源からの入力電圧、前記機器の内部インピーダンス、前記スイッチング素子のオンインピーダンス、前記発熱部のインピーダンスに基づき前記ラインインピーダンスを算出することにより検出する
ことを特徴とする請求項7記載のフリッカ抑制装置。
【請求項9】
交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する画像形成装置の定着装置において、
前記交流電源から前記発熱部に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子と、
前記発熱部を流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記発熱部の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出出力および前記電流検出手段の検出出力に基づき前記スイッチング素子のスイッチングタイミングを制御する波数制御手段と
を具備するフリッカ抑制装置を備えたことを特徴とする画像形成装置の定着装置。
【請求項10】
交流電源の出力を加えることにより発熱する発熱部を有する機器のフリッカ抑制方法において、
前記発熱部を流れる電流を電流検出手段により検出し、
前記発熱部の温度を温度検出手段により検出し、
前記電流検出手段の検出出力に基づき前記交流電源の周波数および位相を認識手段により認識し、
前記温度検出手段の検出出力および前記認識手段で認識した前記交流電源の周波数および位相に基づき前記発熱部に流れる電流をスイッチングするスイッチング素子のスイッチングタイミングを波数制御手段により補正する
ことを特徴とするフリッカ抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−268680(P2006−268680A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88750(P2005−88750)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】