説明

フレキシブル配線基板、電気光学装置の駆動回路構造体

【課題】電気的な接続時の長さを調整可能であって、コネクターなどに対して適正な位置に位置決め可能なフレキシブル配線基板、電気光学装置の駆動構造体を提供すること。
【解決手段】フレキシブル配線基板50は、可撓性を有すると絶縁性の基材1と、基材1の長手方向に延在する複数の配線10と、複数の配線10の両端側にそれぞれ設けられた接続用ランドからなる第1接続用ランド群TG1および第2接続用ランド群TG2と、複数の配線10の長手方向において第1接続用ランド群TG1と第2接続用ランド群TG2との間に設けられた第3接続用ランド群TG3と、基材1の短手方向の両端側に第1から第3接続用ランド群TG1,TG2,TG3に対応して、それぞれ設けられた一対の外形基準としての切り欠き部C1,C2,C3,C4と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板、これを備えた電気光学装置の駆動回路構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル配線基板(FPC;Flexible Printed Circuits)は、可撓性と絶縁性とを兼ね備えた例えばポリイミド樹脂などからなる基材と、当該基材上に貼り合わされた銅箔をパターニングして得られた複数本の配線とを有しており、液晶装置や有機EL装置などの電気光学装置と外部駆動回路とを電気的に接続するためによく用いられている。
【0003】
一方で外部駆動回路と電気光学装置とを電気的に接続するには、電気光学装置の仕様に合致したFPCが必要であったので、電気光学装置の種類が増えるとFPCの種類も増えてしまうといった課題があった。
上記課題に対して、例えば特許文献1には、FPCと電線とを接続可能な接続用コネクターが開示されている。
上記接続用コネクターは、電線が基端部に接続され、先端側に爪部を有する複数本のブスバーを有し、当該複数本のブスバーの爪部がFPCの導体部の間隔と同じ寸法で前後にずらされた状態で本体部に設けられている。各導体部に各爪部を突き刺した状態で本体部とカバー部とでFPCを挟持固定する構成となっている。
つまり、FPCの任意の位置で接続用コネクターを介して電線と電気的に接続が可能となり、FPCの長さ方向における自由度が向上して、例えば電気光学装置の仕様によってFPCの長さを変える必要性が回避されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−118621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の接続用コネクターを用いればFPCの長さを任意に調整可能であるが、爪部によってFPCの導体部に傷が付き、例えば脱着を繰り返すとFPCに応力が加わって傷口からFPCが裂けてしまうなどの不具合が生ずるおそれがある。
また、FPCの導体部の間隔(ピッチ)が狭くなるとブスバーの爪部に対して精度よく位置決めすることが難しいという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例のフレキシブル配線基板は、可撓性を有する絶縁性の基材と、前記基材の長手方向に延在する複数の配線と、前記複数の配線の前記長手方向の両端側にそれぞれ設けられた接続用ランドからなる第1接続用ランド群および第2接続用ランド群と、前記複数の配線の前記長手方向において前記第1接続用ランド群と前記第2接続用ランド群との間に設けられた第3接続用ランド群と、前記基材の短手方向の両端側に少なくとも前記第3接続用ランド群に対応して設けられた一対の外形基準と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、例えば回路基板にフレキシブル配線基板を電気的に接続させるときに、第1接続用ランド群を基準として、長手方向の端部に設けられた第2接続用ランド群と、第2接続用ランド群との間に設けられた第3接続用ランド群とのうちいずれかを選択して接続が可能となる。それゆえに、所望の長さに対応してフレキシブル配線基板を用意する場合に比べて、1つのフレキシブル配線基板を共有することができ、在庫管理などが簡略化され、かかるコストを削減できる。
また、少なくとも第3接続用ランド群に対応して一対の外形基準が設けられているので、第3接続用ランド群を用いるときには、一対の外形基準を利用して、例えば不要な接続用ランド群を切断して削除し、確実な接続を図ることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例のフレキシブル配線基板において、前記一対の外形基準が前記基材を切り欠いた切り欠き部であることを特徴とする。
これによれば、例えば、切り欠き部を利用してコネクターなどの接続部材に位置決めしたり、また、一対の切り欠き部に跨って切断して不要な接続用ランド群を削除し、所望の接続用ランド群だけを残すことができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例のフレキシブル配線基板において、前記一対の外形基準が前記第1接続用ランド群、前記第2接続用ランド群、前記第3接続用ランド群のそれぞれに対して設けられていることが好ましい。
これによれば、第1〜第3接続用ランド群うちの2つを選択して、長手方向の長さを調整しつつコネクターなどの接続部材に位置決めして、電気的な接続を図ることができる。
【0011】
[適用例4]本適用例の電気光学装置の駆動回路構造体は、上記適用例のフレキシブル配線基板と、電気光学装置の駆動回路が搭載され、前記駆動回路と前記フレキシブル配線基板とを電気的に接続させる第1コネクターを有する第1基板と、前記電気光学装置と前記フレキシブル配線基板とを電気的に接続させる第2コネクターと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、例えば、第1コネクターと第2コネクターとにフレキシブル配線基板を接続させて電気光学装置を駆動させる場合、動作環境状態に応じて、フレキシブル配線基板の長さを調整可能な電気光学装置の駆動回路構造体を提供できる。
言い換えれば、電気光学装置と駆動回路との接続を図るフレキシブル配線基板の長さを動作環境に応じて変えたい場合にも、1つのフレキシブル配線基板で対応が可能となり、異なる機種の電気光学装置間で駆動回路構造体を共有化できる。
【0013】
[適用例5]本適用例の他の電気光学装置の駆動回路構造体は、上記適用例のフレキシブル配線基板と、電気光学装置の駆動回路が搭載され、前記駆動回路と前記フレキシブル配線基板とを電気的に接続させる第1コネクターを有する第1基板と、前記電気光学装置と前記フレキシブル配線基板とを電気的に接続させる第2コネクターと、を備え、前記第1コネクターおよび前記第2コネクターは、それぞれ前記フレキシブル配線基板の前記一対の外形基準に対する位置決め基準を有することを特徴とする。
この構成によれば、動作環境状態に応じて、フレキシブル配線基板の長さを調整可能であると共に、フレキシブル配線基板の一対の外形基準を利用して第1コネクターおよび第2コネクターに確実に接続可能な電気光学装置の駆動回路構造体を提供できる。
【0014】
[適用例6]上記適用例の電気光学装置の駆動回路構造体において、前記フレキシブル配線基板の前記一対の外形基準が前記基材を切り欠いた切り欠き部であって、前記第1および第2コネクターの前記位置決め基準が前記切り欠き部に嵌合する突起部であることを特徴とする。
これによれば、接続用ランドの配置ピッチが精細になっても、第1および第2コネクターの突起部を所望の長さのフレキシブル配線基板の切り欠き部に嵌合させて位置決めし、フレキシブル配線基板と第1および第2コネクターとを確実に接続することができる。
【0015】
[適用例7]上記適用例の電気光学装置の駆動回路構造体において、前記第2コネクターが搭載された第2基板を有し、前記第2基板は、前記第2コネクターに配線を介して接続され、前記電気光学装置が電気的に接続される第3コネクターを有するとしてもよい。
これによれば、電気光学装置側に接続された中継基板の端子数や端子配列に応じた第3コネクターを第2基板に設け、電気光学装置を第3コネクターおよび第2コネクターを介してフレキシブル配線基板と接続させることができる。つまり、第2コネクターにより電気光学装置の中継基板とフレキシブル配線基板とを直接に接続させる必要がないので、第2コネクターの構造を簡略化できる。また、異なる端子仕様を有するより多くの電気光学装置に対して駆動回路構造体を共有化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)はフレキシブル配線基板の構成を示す概略平面図、(b)は概略断面図。
【図2】電気光学装置の駆動構造体の構成を示す概略斜視図。
【図3】(a)はコネクターにフレキシブル配線基板が接続された状態を示す概略平面図、(b)は概略断面図。
【図4】(a)は電気光学装置の一例としての液晶ライトバルブの構成を示す概略平面図、(b)は電気光学装置の他の一例としてのエレクトロビューファインダーの構成を示す概略平面図。
【図5】液晶ライトバルブを用いた投射型表示装置の動作環境を示す概略図。
【図6】エレクトロビューファインダーの動作環境を示す概略図。
【図7】変形例1のFPCの構成を示す概略平面図。
【図8】変形例2のFPCの構成を示す概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0018】
なお、以下の形態において、例えば「基材上に」と記載された場合、基材の上に接するように配置される場合、または基材の上に他の構成物を介して配置される場合、または基材の上に一部が接するように配置され、一部が他の構成物を介して配置される場合を表すものとする。
【0019】
<フレキシブル配線基板>
まず、本実施形態のフレキシブル配線基板について、図1を参照して説明する。図1(a)はフレキシブル配線基板の構成を示す概略平面図、同図(b)は概略断面図である。
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態のフレキシブル配線基板50(以降、FPC50と称す)は、可撓性(フレキシビリティー)を有する絶縁性の基材1と、基材1上に間隔を置いて設けられ、基材1の長手方向に延在する複数の配線10と、複数の配線10を挟んで長手方向において部分的に基材1に積層されたカバーレイ2と、を有している。
【0020】
基材1は、例えば、厚みが20μm〜30μmのポリイミドフィルムであり、可撓性と絶縁性とに加えて、難燃性を有している。
【0021】
複数の配線10は、基材1に積層された圧延銅箔を所望の形状にパターニングされたものである。銅箔の厚みは例えばおよそ35μmである。そして、複数の配線10は、長手方向の一方の端側にそれぞれ設けられた接続用ランド11からなる第1接続用ランド群TG1と、長手方向の他方の端側にそれぞれ設けられた接続用ランド12からなる第2接続用ランド群TG2と、長手方向において第1接続用ランド群TG1と第2接続用ランド群TG2との間に、それぞれ設けられた接続用ランド13からなる第3接続用ランド群TG3と、を有している。
各接続用ランド群TG1,TG2,TG3には、銅箔よりも接触抵抗を小さくするために、表面にNiを下地とした金(Au)メッキ処理が施されている。例えば、下地のNiのメッキ厚は1μm、Auのメッキ厚は0.1μmである。
【0022】
配線10ごとに設けられた接続用ランド11,12,13は、隣り合う配線10間において長手方向にずらされて前後(千鳥状)に配置されている。これにより、接続用ランド11,12,13を配線10よりも幅広に設けたとしても、互いに短絡することがなく、後述するコネクターとの接続においても接触面積を確保して電気的に安定な接続を図ることができる構成となっている。
【0023】
第1接続用ランド群TG1は、基材1の一方の端から長さL1の範囲内に設けられている。第2接続用ランド群TG2は、基材1の他方の端から長さL5の範囲内に設けられている。
一方で、第2接続用ランド群TG2よりも内側に設けられた第3接続用ランド群TG3は、基材1の一方の端から長さL1に長さL2を加えた位置から長さL3の範囲に設けられている。長さL1と長さL3および長さL5は同じである。
【0024】
本実施形態の基材1における長手方向の第3接続用ランド群TG3の位置は、任意に設定することができる。つまり、第1接続用ランド群TG1と第3接続用ランド群TG3との間の長さL2や、基材1の他方の端から第3接続用ランド群TG3までの長さL4は任意に設定することができる。この場合、長さL2が最も長く設定されている。
【0025】
また、基材1の一方の端から長手方向における長さL1および長さL2の位置と、基材1の他方の端から長さL4および長さL5の位置の短手方向の両端には、それぞれ半円状に基材1が切り欠かれた一対の切り欠き部C1,C2,C3,C4が設けられている。一対の切り欠き部C1,C2,C3,C4は、第1接続用ランド群TG1、第2接続用ランド群TG2、第3接続用ランド群TG3に対応して、それぞれを区分可能な一対の外形基準として設けられている。
【0026】
カバーレイ2は、例えば基材1と同様なポリイミドフィルムを用いることができ、接着剤により基材1の第1接続用ランド群TG1と第3接続用ランド群TG3との間に貼り付けられている。カバーレイ2は、FPC50の繰り返しの屈曲などに対して、複数の配線10が断裂することがないように、これを補強する目的で用いられている。また、第1〜第3接続用ランド群TG1,TG2,TG3以外に複数の配線10が露出する部分を覆うことで、例えば配線10がキズついたり、結露などにより配線10間の絶縁性が失われないように、複数の配線10を保護している。このような保護の役割を果たすためには、カバーレイ2のようなフィルム材料を用いること望ましいが、絶縁性の樹脂(レジスト)を塗布して保護してもよい。また、このような保護の役割を果たすカバーレイ2などを必ず設けなくてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、各接続用ランド11,12,13の平面的な形状を略四角形としたが、これに限定されるものではない。例えば、千鳥状に配置された一方の接続用ランドの形状を他方の接続用ランドに比べて長手方向において長く形成してもよい。言い換えれば、後述するコネクターにおける接続部の形状に対応させた形状とすることが望ましい。
【0028】
本実施形態のFPC50によれば、第1接続用ランド群TG1を基準として、長手方向における第2接続用ランド群TG2または第3接続用ランド群TG3のいずれかを選択してコネクターと接続させることができる。つまり、1つのFPC50により接続時の長さを変えた接続が可能である。例えば、第3接続用ランド群TG3を用いるときには、一対の切り欠き部C3を横断するように切断して、不要な第2接続用ランド群TG2を除去する。
言い換えれば、接続時の長さに応じて個々に設計されたFPCを用意する必要がなく、1つのFPC50を用いて種々の接続時の長さを実現できる。それゆえに、部品として共有化することで、在庫管理の手間や、かかるコストの低減を図ることができる。
【0029】
<電気光学装置の駆動回路構造体>
次に、本実施形態の電気光学装置の駆動構造体について、図2および図3を参照して説明する。図2は電気光学装置の駆動構造体の構成を示す概略斜視図である。
【0030】
図2に示すように、本実施形態の電気光学装置の駆動構造体としてのオペレーションユニット(OPU)100は、電気光学装置の駆動回路102や、駆動回路に電源を供給する電源回路103などが搭載された第1基板101と、電気光学装置が接続される第2基板110と、第1基板101と第2基板110との電気的な接続を図るフレキシブル配線基板(FPC)50とを備えている。
【0031】
第1基板101は、例えばガラスエポキシなどを基材とするリジットな回路基板である。第1基板101には、駆動回路102とFPC50とを接続する第1コネクター104が設けられている。
【0032】
第2基板110も、同じく例えばガラスエポキシなどを基材とするリジットな回路基板である。第2基板110には、FPC50と第2基板110とを接続する第2コネクター111と、電気光学装置と第2基板110とを接続する第3コネクター112とが設けられている。また、第2コネクター111と第3コネクター112とを電気的に接続する配線が設けられている。つまり、電気光学装置は、第1コネクター104、FPC50、第2コネクター111、第3コネクター112を介して駆動回路102と電気的に接続される。この場合、第1コネクター104と第2コネクター111の構造は基本的に同じだが、第3コネクター112は、電気光学装置側の中継基板の接続端子仕様に応じて適合するものが選択されて用いられる。
【0033】
図3(a)は、コネクターにフレキシブル配線基板が接続された状態を示す概略平面図、同図(b)はコネクターにフレキシブル配線基板が接続された状態を示す概略断面図である。
【0034】
図3(a)および(b)に示すように、第1コネクター104は、導体部106が設けられたベース部105と、樹脂製の押圧部109との間にFPC50を挟んで、FPC50の例えば複数の接続用ランド11からなる第1接続用ランド群TG1と導体部106とを電気的に接続させるものである。
【0035】
ベース部105に設けられた導体部106は、FPC50の接続用ランド11に対応して千鳥状にかつ平面的に複数配置されており、ベース部105を貫通して反対側に露出した部分を有している。これにより、第1基板101の表面に例えばベース部105をハンダ付けによって平面実装することができる構造となっている。
【0036】
また、ベース部105には、FPC50を位置決めするための位置決め基準としての一対の位置決めピン107と、FPC50の端部が当接する位置に配置された一対の止当りピン108とが、所定の長さでベース部105の表面から突出するように設けられている。
【0037】
一対の位置決めピン107は、FPC50の切り欠き部C1に嵌合する突起部としてベース部105に配置されている。
【0038】
押圧部109は、一対の位置決めピン107や一対の止当りピン108に対応する位置に孔109aと孔109bとを有すると共に、FPC50を基材側から押圧するための凸部109cとを有している。
【0039】
一対の位置決めピン107や一対の止当りピン108の先端側には、それぞれピンの外周に沿って膨らんだ凸部107a,108aが設けられている。当該凸部107a,108aに対応して、押圧部109の各孔109a,109bにも凹部109dが設けられている。
【0040】
FPC50の端部をベース部105の止当りピン108に当接させた状態で、FPC50の切り欠き部C1と位置決めピン107とを嵌合させることによって、第1接続用ランド群TG1と導体部106とを対向させて正確に位置決めできる。また、押圧部109をベース部105に設けられた位置決めピン107および止当りピン108に嵌合させて押し込むことにとより、凸部109cがFPC50を基材側から押圧して、第1接続用ランド群TG1と導体部106とを十分に接触させた状態で押圧部109をベース部105に対して固定することができる構造となっている。
【0041】
なお、第2基板110に設けられた第2コネクター111も第1コネクター104と同様な構造を有しており、FPC50の第2接続用ランド群TG2や第3接続用ランド群TG3との接続が可能となっている。
【0042】
本実施形態のOPU100によれば、FPC50を用いているので、第1基板101と第2基板110とにおいて接続時の長さを少なくとも2段階に変えて電気的に接続させることができる。結果的に、電気光学装置と駆動回路102との電気的な接続を長さを変えて実現することが可能となる。
【0043】
では、より具体的な電気光学装置の例を挙げて、電気光学装置の動作環境について説明する。図4(a)は電気光学装置の一例としての液晶ライトバルブの構成を示す概略平面図、同図(b)は電気光学装置の他の一例としてのエレクトロビューファインダーの構成を示す概略平面図である。図5は液晶ライトバルブを用いた投射型表示装置の動作環境を示す概略図、図6はエレクトロビューファインダーの動作環境を示す概略図である。
【0044】
図4(a)に示すように、電気光学装置としての液晶ライトバルブ200は、透過型の液晶パネル210と、四隅に固定用の孔202を有し、液晶パネル210が保持される金属製の第1フレーム201と、第1フレーム201に液晶パネル210を挟んで嵌合する同じく金属製の第2フレーム203と、を有している。液晶パネル210には、中継基板としてのフレキシブル配線基板(FPC)204が接続されている。FPC204には、外部の駆動回路102との接続を図る複数の接続端子207が配列した端子部206が設けられている。また、外部の駆動回路102からの制御信号を受けて液晶パネル210に駆動信号を送出するドライバーIC205が実装されている。
【0045】
液晶パネル210は、略正方形の画素211がマトリックス状に配置された表示領域を有している。第1フレーム201と第2フレーム203とにはそれぞれ液晶パネル210の表示領域に対応して開口した開口部を有している。
【0046】
図4(b)に示すように、電気光学装置としてのエレクトロビューファインダー(EVF)300は、透過型の液晶パネル310と、LEDを光源とするバックライト(図示省略)と、これらを収納するプラスチックフレーム301と、を有している。液晶パネル310には、中継基板としてのフレキシブル配線基板(FPC)304が接続されている。FPC304には、外部の駆動回路102との接続を図る複数の接続端子306が配列した端子部305が設けられている。
【0047】
液晶パネル310は、赤(R),緑(G),青(B)の色光が得られる矩形状のサブ画素311(R,G,B)がマトリックス状に配置された表示領域を有している。プラスチックフレーム301の一方の面には、上記表示領域に対向して開口した開口部を有している。
【0048】
次に、液晶ライトバルブ200を用いた投射型表示装置の動作環境について説明する。
図5に示すように、投射型表示装置500は、例えば光源(図示省略)と、光源から発した光を赤(R)、緑(G)、青(B)の各色光に分離する例えばダイクロイックミラーなどの光学系と、各色光に対応して設けられた液晶ライトバルブ200R,200G,200Bと、ダイクロイックプリズム501と、投射レンズ502とを少なくとも有して構成されている。
【0049】
赤の液晶ライトバルブ200Rと、青の液晶ライトバルブ200Bとは、ダイクロイックプリズム501において対向する光の入射面に対して、表示面が平行となるように隙間をおいて配置されている。緑の液晶ライトバルブ200Gは、上記光の入射面と隣り合って交差する光の入射面に対して、表示面が平行となるように同じく隙間を置いて配置されている。
【0050】
液晶ライトバルブ200R,200G,200Bの各FPC204は、それぞれに対応して用意されたOPU100の第2基板110に設けられた第3コネクター112と接続されている。もちろん、第2基板110の第2コネクター111にはFPC50が接続されており、駆動回路102との電気的な接続が図られている。
【0051】
投射型表示装置500は、画像情報に基づいて液晶ライトバルブ200R,200G,200Bに入射した色光の透過状態をそれぞれ制御し、色光ごとの表示光としてダイクロイックプリズム501に入射させる。色光ごとの表示光は、ダイクロイックプリズム501によって合成され、投射レンズ502に向けて射出されると共に、投射レンズ502によってスクリーン505に拡大投射されてフルカラーの表示を行うことができる。
【0052】
このような投射型表示装置500によれば、ダイクロイックプリズム501とOPU100との相対的な位置関係によって、OPU100と各液晶ライトバルブ200R,200G,200Bとの接続時の距離を適宜調整することが可能となる。例えば、ダイクロイックプリズム501に対向配置された2つの液晶ライトバルブ200R,200BとOPU100とを接続させるFPC50の長さと、液晶ライトバルブ200GとOPU100とを接続させるFPC50の長さとを異ならせることができる。
【0053】
このようなOPU100におけるFPC50の構成は、投射型表示装置500の各構成を限られたスペースの筐体内に効率的に配置することを実現できる。また、投射型表示装置500が完成された実機ではなく、試作機の段階である場合に各構成との位置関係によってFPC50の長さを適宜調整でき、最終的な完成品に反映できる。さらには、投射型表示装置500を液晶ライトバルブ200R,200G,200Bの駆動状態を検査する検査装置として用いる場合にも有効である。例えば、液晶ライトバルブの機種により、中継基板の長さが一定でなくても、FPC50の長さを調整して、ダイクロイックプリズム501に対して適正な位置に検査対象の液晶ライトバルブを配置することが可能となる。
【0054】
次に、EVF300の動作環境について説明する。EVF300は、ビデオカメラやデジタルカメラなどに用いられ、撮像された動画や静止画をフルカラー表示させ、観察者によって直視されるものである。近年は撮像素子の進化に伴い記録容量が増加しているため、それに見合ったEVF300の表示機能が求められ、液晶パネル310におけるサブ画素311が高精細になっている。本実施形態のEVF300の動作環境の一例は、このような高精細なサブ画素311を有するEVF300の検査環境に関するものである。
【0055】
図6に示すように、EVF300の中継基板であるFPC304はOPU100の第2基板110に設けられた第3コネクター112に接続される。もちろん、第2基板110の第2コネクター111にはFPC50が接続され、駆動回路102と電気的に接続されている。駆動されたEVF300の表示面を臨む位置に、液晶パネル310を拡大して観察可能な例えば顕微鏡やカメラなどの光学系600が配置される。
【0056】
例えば、光学系600とOPU100との相対的な位置が検査者の作業に適するように固定され、EVF300のFPC304の長さが、機種によって異なっていたとしても、第2基板110に接続されるFPC50の長さを適宜調整することによって、光学系600に対して適正な位置にEVF300を配置することができる。
【0057】
上記のように、OPU100において接続時の長さを調整可能なFPC50を有していることは、OPU100によって駆動可能な電気光学装置の種類を増やし、より共通化が高められる。
【0058】
なお、電気光学装置に設けられる中継基板(FPC)は、機種によってその仕様が異なるので、第2基板110における第3コネクター112には機種に対応したものが必要となる。言い換えれば、機種に対応した第2基板110を用意する必要がある。
【0059】
また、本実施形態では、電気光学装置とFPC50とを電気的に接続させるために、第2基板110を用いたが、これに限定されず、電気光学装置側の中継基板とFPC50とを電気的に繋ぐ手段として、例えば中継コネクターなどを用いてもよい。
【0060】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0061】
(変形例1)上記実施形態のFPC50における一対の外形基準の構成は、これに限定されない。図7は変形例1のFPCの構成を示す概略平面図である。例えば、図7に示すように、FPC60は、上記実施形態のFPC50に対して異なる形状の外形基準を有するものである。具体的には、基材1の一方の端から長手方向における長さL1および長さL2の位置と、基材1の他方の端から長さL4および長さL5の位置の短手方向の両端には、それぞれ円形に基材1が切り抜かれた一対の孔H1,H2,H3,H4が設けられている。
これら一対の孔H1,H2,H3,H4の短手方向における間隔は、どれも同じである。
また、第1接続用ランド群TG1、第2接続用ランド群TG2、第3接続用ランド群TG3に対応して、それぞれを区分可能な一対の外形基準は、基材1の切り欠き部や孔に限らず、コネクターとの位置決めが目視で可能ならば、基材1上に印刷されたアライメントマークや、短手方向の両端側に位置する接続用ランドの形状を他の接続用ランドと異なる形状として、その特徴部分をアライメントマークとして利用してもよい。
さらには、接続用ランドごとにコンタクトホールを設けて、コンタクトホールに嵌合する導電性の突起部を備えたコネクターと接続させるようにしてもよい。これによれば、アライメントと電気的な接続とを両立させることができる。
加えて、一対の外形基準である上記切り欠き部や変形例の切り欠き孔は、すべての接続用ランド群に対応して設けることに限定されない。例えば、第3接続用ランド群TG3を利用するときに、不要な第2接続用ランド群TG2を精度よく切断して削除できればよいので、第3接続用ランド群TG3に対応して、少なくとも切り欠き部C3または切り欠き孔H3を設ける構成としてもよい。
【0062】
(変形例2)上記実施形態のFPC50における接続用ランド群の構成は、これに限定されない。図8は変形例2のFPCの構成を示す概略平面図である。例えば、図8に示すように、FPC70は、上記実施形態のFPC50に対して、接続用ランド群の数と配置とを異ならせたものである。具体的には、基材1の長手方向の一方の端に第1接続用ランド群TG1と、これに並列して配置された複数の接続用ランド15からなる第5接続用ランド群TG5および複数の接続用ランド16からなる第6接続用ランド群TG6とが設けられている。基材1の長手方向の他方の端に第2接続用ランド群TG2と、これに並列して配置された複数の接続用ランド13からなる第3接続用ランド群TG3および複数の接続用ランド14からなる第4接続用ランド群TG4とが設けられている。すなわち、合計6つの接続用ランド群が基材1の長手方向において対象に配置されている。これによれば、FPC70の長手方向の両端において接続時の長さを調整することができる。
【0063】
(変形例3)上記実施形態のFPC50の構成は、これに限定されない。例えば、第1コネクター104や第2コネクター111に接続される、第1接続用ランド群TG1、第2接続用ランド群TG2、第3接続用ランド群TG3に対応する基材1の背面側に基材1よりも厚みが厚い補強部材を設けてもよい。これにより、コネクターへの脱着の繰り返しに対して、接続部の機械的な強度を向上させることができる。
また、基材1の形状は、図1に示すように細長い矩形状に限定されず。例えば、図1の長さL2の範囲において、平面的に屈曲した形状としてもよい。当該屈曲部分における配線10も基材1の形状に対応して屈曲した部分を有する。これによれば、基材1の長手方向の両端側において接続されるコネクターの位置が長手方向と交差する方向にずれていたとしても基材1に曲げなどのストレスを与えることなく、接続が可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1…基材、2…カバーレイ、10…配線、11,12,13,14,15,16…接続用ランド、50,60,70…フレキシブル配線基板(FPC)、100…電気光学装置の駆動構造体としてのオペレーションユニット(OPU)、101…第1基板、102…駆動回路、104…第1コネクター、110…第2基板、111…第2コネクター、112…第3コネクター、200…電気光学装置としての液晶ライトバルブ、300…電気光学装置としてのエレクトロビューファインダー(EVF)、500…投射型表示装置、C1,C2,C3,C4…切り欠き部、TG1…第1接続用ランド群、TG2…第2接続用ランド群、TG3…第3接続用ランド群。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する絶縁性の基材と、
前記基材の長手方向に延在する複数の配線と、
前記複数の配線の前記長手方向の両端側にそれぞれ設けられた接続用ランドからなる第1接続用ランド群および第2接続用ランド群と、
前記複数の配線の前記長手方向において前記第1接続用ランド群と前記第2接続用ランド群との間に設けられた第3接続用ランド群と、
前記基材の短手方向の両端側に少なくとも前記第3接続用ランド群に対応して設けられた一対の外形基準と、を有することを特徴とするフレキシブル配線基板。
【請求項2】
前記一対の外形基準が前記基材を切り欠いた切り欠き部であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル配線基板。
【請求項3】
前記一対の外形基準が前記第1接続用ランド群、前記第2接続用ランド群、前記第3接続用ランド群のそれぞれに対して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル配線基板。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のフレキシブル配線基板と、
電気光学装置の駆動回路が搭載され、前記駆動回路と前記フレキシブル配線基板とを電気的に接続させる第1コネクターを有する第1基板と、
前記電気光学装置と前記フレキシブル配線基板とを電気的に接続させる第2コネクターと、を備えたことを特徴とする電気光学装置の駆動回路構造体。
【請求項5】
請求項3に記載のフレキシブル配線基板と、
電気光学装置の駆動回路が搭載され、前記駆動回路と前記フレキシブル配線基板とを電気的に接続させる第1コネクターを有する第1基板と、
前記電気光学装置と前記フレキシブル配線基板とを電気的に接続させる第2コネクターと、を備え、
前記第1コネクターおよび前記第2コネクターは、それぞれ前記フレキシブル配線基板の前記一対の外形基準に対する位置決め基準を有することを特徴とする電気光学装置の駆動回路構造体。
【請求項6】
前記フレキシブル配線基板の前記一対の外形基準が前記基材を切り欠いた切り欠き部であって、前記第1および第2コネクターの前記位置決め基準が前記切り欠き部に嵌合する突起部であることを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置の駆動回路構造体。
【請求項7】
前記第2コネクターが搭載された第2基板を有し、
前記第2基板は、前記第2コネクターに配線を介して接続され、前記電気光学装置が電気的に接続される第3コネクターを有することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の電気光学装置の駆動回路構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−182409(P2012−182409A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45993(P2011−45993)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】