説明

フロントフォーク

【課題】 ダンパを内蔵せず、ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚を有してなるフロントフォークにおいて、油溜室の油に及ぶ流路抵抗を可及的に一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を回避したスムースな圧縮ストロークを確保すること。
【解決手段】 スプリング脚110を有するフロントフォークAであって、ガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134の下端面に、ガイドシリンダ121の外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダ121の内部に流入できる通孔138を開設してなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動二輪車等に用いて好適なフロントフォークに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フロントフォークとして、特許文献1に記載の如く、懸架スプリングを内蔵したスプリング脚と、ダンパユニットを内蔵したダンパ脚とを平行に配置したものがある。ダンパ脚において懸架スプリングを省略し、スプリング脚においてダンパユニットを省略することにより、重量を軽量化し、コスト低減を図ろうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-270743
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のフロントフォークにおけるスプリング脚は、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブと車軸側チューブの一方の内部の中央に設け、車体側チューブと車軸側チューブの他方の内部の中央に設けたガイドロッドをガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面からガイドシリンダに挿入し、ガイドロッドのガイドをガイドシリンダに摺動自在に挿入してなり、ガイドシリンダの外側に、油室と空気室からなる油溜室を形成している。
【0005】
そして、特許文献1に記載のフロントフォークの圧側行程では、スプリング脚においてガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドが油溜室の空気室内を下方に移動し、油溜室の油面に突入するとき、ロッドガイドの下端面が油溜室の油面に衝突し、油溜室の油がガイドシリンダと車軸側チューブの間の狭い環状流路に突然押し入る如くになる。これにより、圧縮ストロークの途中で、油溜室の油に及ぶ流路抵抗が急変し、この流路抵抗の急変に基づく衝撃や、ロッドガイドの下端面が油溜室の油面に衝突することによる衝撃を生ずるものになる。フロントフォークのスムースな圧縮ストロークを阻害するものである。
【0006】
尚、特許文献1に記載のフロントフォークにおけるスプリング脚では、圧側行程で、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドが油溜室の油面に突入した後、油溜室の油は、ガイドシリンダと車軸側チューブの間の上述の環状流路を上昇する。この環状流路を上昇する油は、ガイドシリンダの外周に設けたばね受部まわりの絞り流路等を通過して減衰力を発生させた後、ガイドシリンダの外周壁に設けてあるポートからガイドシリンダの内部に流入する。油溜室の油が、圧側行程の当初段階から何らの減衰力を発生させずに、ガイドシリンダの外周壁に設けてあるポートからガイドシリンダの内部に流入するものではない。
【0007】
本発明の課題は、ダンパを内蔵せず、ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚を有してなるフロントフォークにおいて、油溜室の油に及ぶ流路抵抗を可及的に一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を回避したスムースな圧縮ストロークを確保することにある。
【0008】
本発明の他の課題は、フロントフォークにおいて、ロッドガイドの下端面が油溜室の油面に当接することによる衝撃を回避し、スムースな圧縮ストロークを確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ダンパを内蔵せず、ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚を有するフロントフォークであって、スプリング脚が、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブと車軸側チューブの一方の内部の中央に設け、車体側チューブと車軸側チューブの他方の内部の中央に設けたガイドロッドをガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面からガイドシリンダに挿入し、ガイドロッドのガイドをガイドシリンダに摺動自在に挿入してなり、ガイドシリンダの外側に、油室と空気室からなる油溜室を形成し、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面に、ガイドシリンダの外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダの内部に流入できる通孔を開設してなるようにしたものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、ダンパを内蔵せず、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚と、ダンパを内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚とを平行配置したフロントフォークであって、スプリング脚が、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブと車軸側チューブの一方の内部の中央に設け、車体側チューブと車軸側チューブの他方の内部の中央に設けたガイドロッドをガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面からガイドシリンダに挿入し、ガイドロッドのガイドをガイドシリンダに摺動自在に挿入してなり、ガイドシリンダの外側に、油室と空気室からなる油溜室を形成し、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面に、ガイドシリンダの外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダの内部に流入できる通孔を開設し、車体側チューブの内部でガイドシリンダの周囲に設けたばね受と、車軸側チューブとの間に、懸架スプリングを介装してなるようにしたものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、ダンパと金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵せず、空気ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚と、ダンパを内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚とを平行配置したフロントフォークであって、スプリング脚が、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブと車軸側チューブの一方の内部の中央に設け、車体側チューブと車軸側チューブの他方の内部の中央に設けたガイドロッドをガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面からガイドシリンダに挿入し、ガイドロッドのガイドをガイドシリンダに摺動自在に挿入してなり、ガイドシリンダの外側に、油室と空気室からなる油溜室を形成し、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面に、ガイドシリンダの外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダの内部に流入できる通孔を開設し、ガイドシリンダの内部にガイドロッドのガイドが区画する内側空気ばね室と、車体側チューブと車軸側チューブがガイドシリンダにおける少なくとも上記内側空気ばね室の外側に区画する外側空気ばね室とを有してなるようにしたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、前記圧側行程の当初段階で、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面が、前記油溜室の油面より上方の空気室内に位置するようにしたものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに係る発明において更に、前記ロッドガイドに開設される通孔が、ガイドシリンダの軸方向に延在されてなるようにしたものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれかに係る発明において更に、前記ガイドシリンダの内部が、ガイドロッドのガイドにより、ガイドロッドを収容するロッド側室と、ガイドロッドを収容しないガイド側室に区画され、ガイド側室とロッド側室を非連通としてなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
(請求項1〜3)
(a)スプリング脚において、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面に、ガイドシリンダの外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダの内部に流入できる通孔を開設した。従って、圧側行程で、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドが油溜室内を下方に移動するとき、油溜室の油はガイドシリンダと車軸側チューブの間の環状流路だけでなく、ロッドガイドの下端面に開設された通孔から減衰力を発生させずにガイドシリンダの内部に流入する。環状流路と通孔が油に及ぼす流路抵抗は、通孔がない場合に比して小さくなる。これにより、油溜室の油に及ぶ流路抵抗を可及的に一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を回避し、フロントフォークのスムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0016】
(請求項4)
(b)上述(a)の圧側行程の当初段階で、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面が、前記油溜室の油面より上方の空気室内に位置するスプリング脚は油溜室内の油量が少なくて軽量化でき、或いは空気室の容積を調整して空気ばね力特性をセッティングできるメリットを有する。反面、圧側行程で、ガイドシリンダ及びロッドガイドが油溜室内を下方に移動するとき、ロッドガイドが必ず油溜室の空気室を経由してから油溜室の油面に突入するものになるから、ロッドガイドの下端面が油溜室の油面に衝突することによる衝撃も生じ、フロントフォークのスムースな圧縮ストロークを阻害するものになる。本発明では、ロッドガイドの下端面が油溜室の油面に突入したとき、油溜室の油面がロッドガイドの通孔から直ちにガイドシリンダの内部に流入し、上述の衝突を緩和して衝撃を回避し、フロントフォークのスムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0017】
(請求項5)
(c)上述(a)、(b)のロッドガイドに開設される通孔が、ガイドシリンダの軸方向に延在される。圧側行程で、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドが油溜室内を下方に移動するとき、油溜室の油は、ガイドシリンダ及びロッドガイドの移動方向であるガイドシリンダの軸方向に延在されている該ロッドガイドの通孔にスムースに流入し、ひいては減衰力を発生させずに直ちにガイドシリンダの内部に流入する。
【0018】
これにより、油溜室の油に及ぶ流路抵抗を一層一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を一層回避し、フロントフォークの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0019】
また、ロッドガイドの下端面が油溜室の油面に衝突することによる衝撃を一層回避し、フロントフォークの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0020】
(請求項6)
(d)上述(a)、(b)のガイドシリンダの内部が、ガイドロッドのガイドにより、ガイドロッドを収容するロッド側室と、ガイドロッドを収容しないガイド側室に区画され、ガイド側室とロッド側室を非連通としている。圧側行程で、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドが油溜室内を下方に移動するとき、相対的には、ガイドロッドのガイドがガイドシリンダの内部に進入するものになる。このとき、ガイドロッドのガイドは、ガイドシリンダの内部のロッド側室をガイド側室と非連通にしながら、該ロッド側室を拡張して負圧化するものになる結果、油溜室内の油はロッドガイドの通孔から負圧化されたガイドシリンダの内部のロッド側室に吸引されて一層確実に流入するものになる。
【0021】
これにより、油溜室の油に及ぶ流路抵抗を一層一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を一層回避し、フロントフォークの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0022】
また、ロッドガイドの下端面が油溜室の油面に衝突することによる衝撃を一層回避し、フロントフォークの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1はフロントフォークを示す断面図である。
【図2】図2はダンパ脚を示す断面図である。
【図3】図3は図2の下部断面図である。
【図4】図4は図2の上部断面図である。
【図5】図5はスプリング脚を示す断面図である。
【図6】図6は図5の下部断面図である。
【図7】図7は図5の上部断面図である。
【図8】図8はスプリング脚の圧縮ストロークを示す断面図である。
【図9】図9は実施例2のフロントフォークを示す断面図である。
【図10】図10はスプリング脚を示す断面図である。
【図11】図11は図10の下部断面図である。
【図12】図12は図10の上部断面図である。
【図13】図13はスプリング脚の圧縮ストロークを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施例1)(図1〜図8)
フロントフォークAは、ダンパ20を内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚10と、ダンパを内蔵せず、金属ばねからなる懸架スプリング150を内蔵するスプリング脚110とを平行配置した。
【0025】
(ダンパ脚10)(図1、図2〜図4)
ダンパ脚10は、図1、図2〜図4に示す如く、車体側チューブ(アウタチューブ)11に、車軸側チューブ(インナチューブ)12をブッシュ13A、13B、シール部材13Cを介し密封して摺動自在に挿入し、車体側チューブ11と車軸側チューブ12の内部に単筒型ダンパ20を配置している。ダンパ20は、ダンパシリンダ21を車体側チューブ11の内部の中央に吊下げ、車軸側チューブ12の内部の中央に立設したピストンロッド22のピストン23をダンパシリンダ21に挿入し、ダンパ20(ダンパシリンダ21及びピストンロッド22)の外側を油溜室24としている。油溜室24では、油室25と空気室26が自由界面を介して接している。
【0026】
車体側チューブ11は車体側に支持され、車軸側チューブ12は車軸に結合される。車体側チューブ11の上端部にはダンパシリンダ21の上端部が螺着、密封され、ダンパシリンダ21の上部開口端はフォークボルト31により閉塞、密封される。
【0027】
車軸側チューブ12の下端部には車軸ブラケット32が螺着、密封され、車軸側チューブ12の内部の車軸ブラケット32上にはピストンロッド22の下端部が立設され、このピストンロッド22まわりの車軸ブラケット32上にはオイルロックカラー33Aが固定されている。ピストンロッド22の下端部が、車軸ブラケット32の底部に外側から係入、密封されるボトムボルト32Aに螺着されるとともに、ロックナット32Bで固定される。オイルロックカラー33Aは、車軸側チューブ12の下端面と車軸ブラケット32の底部との間に挟み止めされる。ピストンロッド22はダンパシリンダ21の下部開口端に螺着したロッドガイド34のブッシュ35、シール部材36に密封して摺動自在に支持され、ダンパシリンダ21の内部に挿入されている。尚、ロッドガイド34の外周部にはオイルロックピース33Bが設けられている。
【0028】
ダンパ20は、メインバルブ装置(伸側減衰力発生装置)40と、サブバルブ装置(圧側減衰力発生装置)50とを有している。ダンパ20は、メインバルブ装置40とサブバルブ装置50が発生する減衰力により、スプリング脚110の懸架スプリング150と空気ばねによる衝撃力の吸収に伴う車体側チューブ111と車軸側チューブ112の伸縮振動を制振する。
【0029】
(メインバルブ装置40)
メインバルブ装置40は、ピストンロッド22の上端部のピストン23により、ダンパシリンダ21の内部をピストンロッド22を収容しないピストン側油室41Aと、ピストンロッド22を収容するロッド側油室41Bに区画する。ピストン23は、伸側減衰バルブ42Aを備えてピストン側油室41Aとロッド側油室41Bを連絡する伸側流路42と、圧側減衰バルブ(チェックバルブ)43Aを備えてピストン側油室41Aとロッド側油室41Bを連絡する圧側流路43とを備える。
【0030】
(サブバルブ装置50)
サブバルブ装置50は、ダンパシリンダ21の上部開口端に設けたフォークボルト31の中央にガイドパイプ51を吊下げ、ガイドパイプ51の下端部のサブピストン52をダンパシリンダ21の内部でピストン23に相対配置し、ピストン側油室41Aの上方にサブタンク室53を区画形成する。サブピストン52は、圧側減衰バルブ54Aを備えてピストン側油室41Aとサブタンク室53を連絡する圧側流路54と、伸側減衰バルブ(チェックバルブ)55Aを備えてピストン側油室41Aとサブタンク室53を連絡する伸側流路55とを備える。
【0031】
サブバルブ装置50は、ダンパシリンダ21の内部のガイドパイプ51まわりにフリーピストン56を移動可能に設けるとともに、フリーピストン56とフォークボルト31との間に介装される圧縮コイルばねからなる加圧スプリング57によりフリーピストン56をサブピストン52の側に向けて付勢する。
【0032】
サブバルブ装置50は、ピストンロッド22の外周に付着した油溜室24の油をシール部材36からダンパシリンダ21の内部に持ち込み、油室41A、41B、サブタンク室53の油圧を高圧化する。この高圧化した油圧によりフリーピストン56が上昇端まで移動すると、ダンパシリンダ21に設けてある油孔58がサブタンク室53を油溜室24の空気室26に連通し、サブタンク室53の高圧油を油溜室24の側に戻す。
【0033】
(スプリング脚110)(図1、図5〜図8)
スプリング脚110は、図1、図5〜図7に示す如く、車体側チューブ(アウタチューブ)111に、車軸側チューブ(インナチューブ)112をブッシュ113A、113B、シール部材113Cを介し密封して摺動自在に挿入する。スプリング脚110は、ガイドシリンダ121を車体側チューブ111の内部の中央に吊下げ、車軸側チューブ112の内部の中央に立設したガイドロッド122の先端ガイド123を、ガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134の下端面に設けてあるブッシュ135の内径からガイドシリンダ121に挿入し、ガイドロッド122の先端ガイド123をガイドシリンダ121に摺動自在に挿入している。
【0034】
スプリング脚110は、ガイドシリンダ121及びガイドロッド122の外側を油溜室124としている。油溜室124では、油室125と空気室126が自由界面を介して接している。また、ガイドシリンダ121の内部を、ガイドロッド122の先端ガイド123により、ガイドロッド122を収容するロッド側室127Aと、ガイドロッド122を収容しないガイド側室127Bに区画している。本実施例では、油溜室124とロッド側室127Aをガイドシリンダ121の側壁に設けた孔121Aにより連通し、ロッド側室127Aとガイド側室127Bを先端ガイド123に設けた孔123Aにより連通している。
【0035】
車体側チューブ111は車体側に支持され、車軸側チューブ112は車軸に結合される。車体側チューブ111の上部開口端にキャップ130及びフォークボルト131により閉塞、密封される。キャップ130は車体側チューブ111に螺着され、フォークボルト131はキャップ130に螺着される。キャップ130の下端部にはガイドシリンダ121が連結されて吊下げられる。
【0036】
車軸側チューブ112の下端部には車軸ブラケット132が螺着、密封され、車軸側チューブ112の内部の車軸ブラケット132上にはガイドロッド122の下端部が立設されている。ガイドロッド122の下端部が、車軸ブラケット132の底部に外側から係入、密封されるボトムボルト132Aに螺着されるとともに、ロックナット132Bで固定される。ガイドロッド122はガイドシリンダ121の下部開口端に螺着したロッドガイド134のブッシュ135に摺動自在に支持され、ガイドシリンダ121の内部に挿入されている。ガイドシリンダ121の内部に挿入されたガイドロッド122の先端部にガイド123が螺着され、ガイド123とロッドガイド134の間にリバウンドスプリング136が介装されている。ガイドシリンダ121に螺着されるロッドガイド134の上端面と、ガイドシリンダ121の内周段差部との間に、リバウンドスプリング136のためのばね受137が挟持されている。
【0037】
スプリング脚110は、フォークボルト131及びガイドシリンダ121の周囲にばね荷重調整装置140を装備している。ばね荷重調整装置140は、車体側チューブ111の上部開口端のフォークボルト131に外部から操作部141を挿入、密封して枢支し、車体側チューブ111の内部に挿入された操作部141の外周に沿う軸方向に抜け止めプレート142、アジャスタボルト143を設ける。操作部141はアジャスタボルト143を固定的に螺着され、抜け止めプレート142を介してフォークボルト131から抜け止めされる。アジャスタボルト143には筒状アジャスタナット144が螺着され、アジャスタナット144の下端側の周方向複数位置には下向き爪144Aが設けられ、アジャスタナット144の下向き爪144Aはキャップ130に設けた回り止め孔を通って、キャップ130に吊下げられているガイドシリンダ121の周囲に突出している。操作部141がフォークボルト131への挿入部に設けたクリック機構145により一定回転角毎の節度感をもって外部から回転操作されるとき、アジャスタボルト143に対して螺動するアジャスタナット144が回り止めされて上下動する。アジャスタナット144の下向き爪144Aは、ガイドシリンダ121の周囲に設けられているスプリングシート146、スプリングカラー147を介して、上ばね受148を支持している。
【0038】
スプリング脚110は、車体側チューブ111と車軸側チューブ112の内周と、ガイドシリンダ121とガイドロッド122の外周の環状間隙(油溜室124)をばね収容室151とし、金属ばねからなる懸架スプリング150をこのばね収容室151に配置している。懸架スプリング150は、ばね荷重調整装置140の上ばね受148と、車軸ブラケット132上に設けてある下ばね受149の間に介装される。懸架スプリング150は、ガイドシリンダ121の外周にガイドされ、車軸側チューブ112の内周に沿って伸縮する。ばね荷重調整装置140の操作部141によるアジャスタナット144の位置調整により、懸架スプリング150の初期荷重を調整できる。
【0039】
スプリング脚110は、懸架スプリング150のばね収容室151における上部を空気室126とするとともに、ガイドシリンダ121の内部のロッド側室127A、ガイド側室127Bを空気室126に連通する空気室128としている。操作部141は、空気室126、128の封入空気圧を調整する空気バルブ129を備える。そして、スプリング脚110の圧側行程で圧縮される空気室126と空気室128により、空気ばねを形成する。ガイドシリンダ121の空気室128を上下動するガイド123は、上下の空気室127A、127Bを連絡する空気流路123Aを備える。
【0040】
スプリング脚110は、油溜室124(ばね収容室151)の油室125に潤滑オイルを装填している。車体側チューブ111と車軸側チューブ112の摺動部、ガイドシリンダ121とガイドロッド122の摺動部、懸架スプリング150と車軸側チューブ112、ガイドシリンダ121との摺動部を潤滑する。
【0041】
従って、フロントフォークAにあっては、ダンパ脚10のダンパ20における伸側減衰力発生装置40の伸側減衰バルブ42Aと圧側減衰力発生装置50の圧側減衰バルブ54Aが発生する減衰力により、スプリング脚110の懸架スプリング150、空気ばね(空気室126、128)による衝撃力の吸収に伴う車体側チューブ111と車軸側チューブ112の伸縮振動を制振する。
【0042】
尚、フロントフォークAにあっては、ダンパ脚10、スプリング脚110の軽量化のため、ダンパ脚10のピストンロッド22、スプリング脚110のガイドロッド122を中空にしている。ガイドロッド122(ピストンロッド22も同一構造)は、図6に示す如く、中空部の両端部をプラグ122Aで密封している。
【0043】
また、フロントフォークAにあっては、ダンパ脚10とスプリング脚110の剛性のバランスを図るため、ダンパ脚10の車体側チューブ11とスプリング脚110の車体側チューブ111を同一長、同一径(同一肉厚)にするとともに、ダンパ脚10のピストンロッド12とスプリング脚110のガイドロッド122を同一長、同一径(同一肉厚)にしている。また、ダンパ脚10のダンパシリンダ21とスプリング脚110のガイドシリンダ121を同一長、同一径(同一肉厚)にするとともに、ダンパ脚10のピストンロッド22とスプリング脚110のガイドロッド122を同一長、同一径(同一肉厚)にしている。
【0044】
また、フロントフォークAにあっては、ダンパ脚10とスプリング脚110の剛性のバランスを図るため、フロントフォークAの正面視(図1)で、ダンパ脚10のダンパシリンダ21に設けられてピストンロッド22を挿入かつ支持するロッドガイド34のブッシュ35と、スプリング脚110のガイドシリンダ121に設けられてガイドロッド122を挿入かつ支持するロッドガイド134のブッシュ135を、同一高さ位置に位置付けている。また、ダンパ脚10の車体側チューブ11に設けられて車軸側チューブ12を挿入かつ支持するブッシュ13Aと、スプリング脚110の車体側チューブ111に設けられて車軸側チューブ112を挿入かつ支持するブッシュ113Aを、同一高さ位置に位置付けている。
【0045】
しかるに、スプリング脚110にあっては、ガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134の下端面に、ガイドシリンダ121の外側の油溜室124(油室125)の油が、圧側行程で、減衰力を発生させずにガイドシリンダ121の内部のロッド側室127A、ガイド側室127Bに流入できる通孔138を開設している。
【0046】
本実施例の通孔138は、ロッドガイド134におけるブッシュ135の周囲の複数位置で、ガイドシリンダ121及びロッドガイド134の軸方向に穿設されて延在されている。尚、前述のばね受137の内周面はガイドロッド122の周囲に環状流路139を形成している。通孔138、環状流路139は、油溜室124(油室125)の油が減衰力を発生させずにガイドシリンダ121の内部に流入するに足る大流路面積を確保している。
【0047】
スプリング脚110は、圧縮行程の当初段階で、ガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134の下端面が、図8(A)に示す如く、油溜室124の油室125の油面Lより上方の空気室126内に位置する。このとき、ガイドシリンダ121の内部のロッド側室127A、ガイド側室127Bの全部が、ロッドガイド134の通孔138、ガイドシリンダ121の孔121Aを介して油溜室124の空気室126に連通する空気室128になっている。
【0048】
スプリング脚110は、圧側行程の進行により、ロッドガイド134の下端面が、図8(B)に示す如く、油溜室124の油室125の油面Lに突入していくものになる。このとき、ガイドシリンダ121の内部の少なくともロッド側室127Aの下部はロッドガイド134の通孔138、ガイドシリンダ121の孔121Aを介して油溜室124の油室125に連通する油室になり、ガイドシリンダ121の内部の少なくともガイド側室127Bの上部は空気室128を維持する。
【0049】
尚、本実施例において、ガイドシリンダ121の孔121Aは必ずしも設けなくて良い。
【0050】
従って、スプリング脚110にあっては、圧側行程で、車体側チューブ111が車軸側チューブ112に対して収縮するとき、車体側チューブ111に支持されているガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134が油溜室124の空気室126内を下方に移動し、油溜室124の油室125の油面Lに突入するとともに、前述の如くに圧縮される懸架スプリング150、空気ばね(空気室126、128)により衝撃力を吸収する。
【0051】
フロントフォークAによれば以下の作用効果を奏する。
(a)スプリング脚110において、ガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134の下端面に、ガイドシリンダ121の外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダ121の内部に流入できる通孔138を開設した。従って、圧側行程で、ガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134が油溜室124内を下方に移動するとき、油溜室124の油はガイドシリンダ121と車軸側チューブ112の間の環状流路124Aだけでなく、ロッドガイド134の下端面に開設された通孔138から減衰力を発生させずにガイドシリンダ121の内部に流入する。環状流路124Aと通孔138が油に及ぼす流路抵抗は、通孔138がない場合に比して小さくなる。これにより、油溜室124の油に及ぶ流路抵抗を可及的に一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を回避し、フロントフォークAのスムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0052】
(b)上述(a)の圧側行程の当初段階で、ガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134の下端面が、前記油溜室124の油面より上方の空気室126内に位置するスプリング脚110は油溜室124内の油量が少なくて軽量化でき、或いは空気室126の容積を調整して空気ばね力特性をセッティングできるメリットを有する。反面、圧側行程で、ガイドシリンダ121及びロッドガイド134が油溜室124内を下方に移動するとき、ロッドガイド134が必ず油溜室124の空気室126を経由してから油溜室124の油面に突入するものになるから、ロッドガイド134の下端面が油溜室124の油面に衝突することによる衝撃も生じ、フロントフォークAのスムースな圧縮ストロークを阻害するものになる。本発明では、ロッドガイド134の下端面が油溜室124の油面に突入したとき、油溜室124の油面がロッドガイド134の通孔138から直ちにガイドシリンダ121の内部に流入し、上述の衝突を緩和して衝撃を回避し、フロントフォークAのスムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0053】
(c)上述(a)、(b)のロッドガイド134に開設される通孔138が、ガイドシリンダ121の軸方向に延在される。圧側行程で、ガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134が油溜室124内を下方に移動するとき、油溜室124の油は、ガイドシリンダ121及びロッドガイド134の移動方向であるガイドシリンダ121の軸方向に延在されている該ロッドガイド134の通孔138にスムースに流入し、ひいては減衰力を発生させずに直ちにガイドシリンダ121の内部に流入する。
【0054】
これにより、油溜室124の油に及ぶ流路抵抗を一層一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を一層回避し、フロントフォークAの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0055】
また、ロッドガイド134の下端面が油溜室124の油面に衝突することによる衝撃を一層回避し、フロントフォークAの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0056】
尚、フロントフォークAは以下の作用効果も奏する。
(i)スプリング脚110が、車体側チューブ111と車軸側チューブ112を互いに挿入し、ガイドシリンダ121を車体側チューブ111の内部の中央に設け、車軸側チューブ112の内部の中央に設けたガイドロッド122のガイド123をガイドシリンダ121に挿入してなり、車体側チューブ111の内部でガイドシリンダ121の周囲に設けたばね受148と、車軸側チューブ112との間に、懸架スプリング150を介装してなる。従って、ガイドシリンダ121とばね受148が軸方向で対向配置されて相対移動するものでなく、ガイドシリンダ121とばね受148の軸方向の対向間隔に、スプリング脚110の伸縮ストロークの最大値を超える長さを確保する必要がなくなり、設計の自由度が向上する。特に、スプリング脚110の全長が小さくなり、懸架スプリング150のばね長さも必要以上に長くする必要がなくなる。
【0057】
また、懸架スプリング150の上端はガイドシリンダ121の外周によりガイドされて胴曲りを抑制される。懸架スプリング150の上端が仮に車軸側チューブ112の先端よりも上方に飛び出ることがあっても、胴曲りを抑制されている懸架スプリング150の外周が車軸側チューブ112の先端に干渉する機会は少ない。車軸側チューブ112と懸架スプリング150のフリクション、損傷、摩耗粉の発生、異音を防止できる。
【0058】
(ii)スプリング脚110において、車体側チューブ111の内部の中央に設けられるガイドシリンダ121は、減衰力発生装置等を内蔵するものでない。従って、ガイドシリンダ121の周囲にばね荷重調整装置140を設け、このばね荷重調整装置140の操作部141を車体側チューブ111の外部に設けることができる。スプリング脚110にばね荷重調整装置140を装備できる。
【0059】
(iii)フロントフォークAの正面視で、スプリング脚110のガイドシリンダ121に設けられてガイドロッド122を挿入かつ支持するロッドガイド134のブッシュ135と、ダンパ脚10のダンパシリンダ21に設けられてピストンロッド22を挿入かつ支持するロッドガイド34のブッシュ35とが、同一高さ位置に位置付けられる。ダンパ脚10とスプリング脚110の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0060】
(iv)スプリング脚110の車体側チューブ111とダンパ脚10の車体側チューブ11を同一径にするとともに、スプリング脚110の車軸側チューブ112とダンパ脚10の車軸側チューブ12を同一径にし、スプリング脚110のガイドシリンダ121とダンパ脚10のダンパシリンダ21を同一径にするとともに、スプリング脚110のガイドロッド122とダンパ脚10のピストンロッド22を同一径にする。ダンパ脚10とスプリング脚110の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0061】
尚、フロントフォークAのスプリング脚110において、圧側行程の当初段階から、ガイドシリンダ121の下端に設けたロッドガイド134(通孔138が設けられている)の下端面は、油溜室124の油室125の油面Lの下に没入していても良い。
【0062】
(実施例2)(図9〜図13)
フロントフォークBは、ダンパ20を内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚10と、ダンパと金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵せず、空気ばね(内側空気ばね室250の空気ばねと外側空気ばね室260の空気ばね)からなる懸架スプリング240を内蔵するスプリング脚210とを平行配置した。
【0063】
ダンパ脚10は、実施例1のフロントフォークAのダンパ脚10(図2〜図4)と同一であり、説明を省略する。
【0064】
(スプリング脚210)(図9〜図13)
スプリング脚210は、図9〜図12に示す如く、車体側チューブ(アウタチューブ)211に、車軸側チューブ(インナチューブ)212をブッシュ213A、213B、シール部材213Cを介し密封して摺動自在に挿入する。スプリング脚210は、ガイドシリンダ221を車体側チューブ211の内部の中央に吊下げ、車軸側チューブ212の内部の中央に立設したガイドロッド222の先端ガイド223をガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236の下端面に設けてあるブッシュ237の内径からガイドシリンダ221に挿入し、ガイドロッド222の先端ガイド223をガイドシリンダ221に摺動自在に挿入している。
【0065】
スプリング脚210は、ガイドシリンダ221及びガイドロッド222の外側を油溜室224としている。油溜室224では、油室225と空気室226が自由界面を介して接している。また、ガイドシリンダ221の内部を、ガイドロッド222の先端ガイド223により、ガイドロッド222を収容するロッド側室227Aと、ガイドロッド222を収容しないガイド側室227Bに区画している。本実施例では、ロッド側室227Aとガイド側室227Bを先端ガイド223に設けた後述のシール部材251により非連通としている。
【0066】
車体側チューブ211は車体側に支持され、車軸側チューブ212は車軸に結合される。車体側チューブ211の上部開口端はキャップ230及びフォークボルト231により閉塞、密封される。キャップ230は車体側チューブ211に螺着され、フォークボルト231はキャップ230に螺着される。キャップ230の下端部にはガイドシリンダ221が連結されて吊下げられる。ガイドシリンダ221の下端側外周部には、車軸側チューブ212の内周と環状間隙を介する振れ止めカラー221Aが取着されている。
【0067】
車軸側チューブ212の下端部には車軸ブラケット232が螺着、密封され、車軸側チューブ212の下端面は車軸ブラケット232の底面との間にボトムピース233を挟み止めしている。そして、車軸側チューブ212の内部で車軸ブラケット232の中央部にはガイドロッド222の下端部が立設されている。ガイドロッド222の下端部が、車軸ブラケット232の底部に外側から係入、密封されるボトムボルト234に螺着されるとともに、ロックナット235で固定されている。ガイドロッド222はガイドシリンダ221の下部開口端に螺着したロッドガイド236のブッシュ237に摺動自在に支持され、ガイドシリンダ221の内部に挿入されている。ガイドシリンダ221の内部に挿入されたガイドロッド222の先端部にガイド223が螺着されている。
【0068】
スプリング脚210は、ガイドシリンダ221の内部にガイドロッド222の先端ガイド223が区画する内側空気ばね室250と、車体側チューブ211と車軸側チューブ212がガイドシリンダ221における少なくとも内側空気ばね室250の外側に区画する外側空気ばね室260とを有する。これにより、スプリング脚210は、内側空気ばね室250の空気ばねと外側空気ばね室260の空気ばねにより懸架スプリング240を構成するものである。
【0069】
内側空気ばね室250は、ガイドシリンダ221においてガイドロッド222が存在しない側の内部に、フォークボルト231と、ガイドロッド222の先端ガイド223とに挟まれて区画され、前述のガイド側室227Bからなる。内側空気ばね室250は、先端ガイド223がガイドシリンダ221の内周に対して設けたシール部材251と、フォークボルト231がキャップ230の内周に対して設けたシール部材252により気密に封止される。
【0070】
内側空気ばね室250の空気圧は内側空気圧調整部253により調整される。内側空気圧調整部253は、フォークボルト231の外界に臨む位置に取着された空気バルブからなり、フォークボルト231に穿設した孔254により内側空気ばね室250に連通し、内側空気ばね室250の封入空気圧を調整する。内側空気圧調整部253は、空気圧注入器の注射針が刺通できるゴム膜からなるものでも良い。フォークボルト231に外部から着脱されるカバー255が内側空気圧調整部253を覆っている。
【0071】
外側空気ばね室260は、車体側チューブ211と車軸側チューブ212がガイドシリンダ221の外側に区画する空間261と、ガイドシリンダ221においてガイドロッド222が存在する側の内部で、ガイドロッド222を挿入かつ支持するロッドガイド236と、ガイドロッド222の先端ガイド223とに挟まれて区画され、ガイドシリンダ221に設けた孔262Aにより空間261に連通される空間262とからなる。空間261は、本実施例では前述の油溜室224の空気室226からなる。空間262は、本実施例では、前述のロッド側室227Aからなり、ガイドロッド222の中空部222Aも含んでいる。車体側チューブ211と車軸側チューブ212はそれらの摺動部に前述のシール部材213Cを介して気密に摺動する。空間261(後述する孔268、269を含む)の上部は、キャップ230が車体側チューブ211の内周に対して設けたシール部材263Aと、フォークボルト231がキャップ230の内周に対して設けたシール部材263Bにより気密に封止される。空間261の下部はボトムピース233が車軸側チューブ212の内周、車軸ブラケット232の底面に対して設けたシール部材264A、264Bと、ボトムボルト234が車軸ブラケット232の内周に対して設けたシール部材265により気密に封止される。また、空間262は先端ガイド223がガイドシリンダ221の内周に対して設けたシール部材266により気密に封止される。
【0072】
尚、外側空気ばね室260は空間261のみからなるものでも良い。このとき、空間262は空間261と非連通とされる。
【0073】
外側空気ばね室260の空気圧は外側空気圧調整部267により調整される。外側空気圧調整部267は、フォークボルト231の外界に臨む位置に取着された空気バルブからなり、フォークボルト231に設けた孔268と、キャップ230とフォークボルト231の間の環状間隙と、キャップ230に設けた孔269により空間261、ひいては空間262に連通し、外側空気ばね室260(空間261、262)の封入空気圧を調整する。外側空気圧調整部267は、空気圧注入器の注射針が刺通できるゴム膜からなるものでも良い。フォークボルト231に外部から着脱される前述のカバー255が外側空気圧調整部267を覆っている。
【0074】
スプリング脚210は、圧側行程で圧縮される内側空気ばね室250と外側空気ばね室260のそれぞれにより、空気ばねを形成する。内側空気ばね室250の空気ばねのばね力F1と外側空気ばね室260の空気ばねのばね力F2は車体側チューブ211と車軸側チューブ212を伸長させる方向に付勢する。
【0075】
スプリング脚210は、油溜室224の油室225、換言すれば外側空気ばね室260を形成している空気室226の下部に潤滑オイルを装填している。車体側チューブ211と車軸側チューブ212の摺動部、ガイドシリンダ221とガイドロッド222の摺動部を潤滑する。
【0076】
スプリング脚210は、ガイドシリンダ221の外部で、ガイドシリンダ221の外周に設けたばね受271と、ガイドロッド222を立設した車軸側チューブ212の上端開口部に設けたばね受272との間にバランススプリング270を介装している。バランススプリング270は金属コイルばねからなる。バランススプリング270の金属ばねのばね力Fbは、車体側チューブ211と車軸側チューブ212が内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気ばねのばね力F1、F2により付勢される伸切側で圧縮され、内側空気ばね室250の空気ばねのばね力F1と、外側空気ばね室260の空気ばねのばね力F2に抗して車体側チューブ211と車軸側チューブ212を収縮させる方向に付勢する。
【0077】
スプリング脚210は、ガイドシリンダ221の内部で、ガイドシリンダ221に設けられてガイドロッド222を挿入かつ支持するロッドガイド236の内側端面に設けたばね受281と、ガイドシリンダ221に挿入されたガイドロッド222の先端ガイド223との間(前述の空間262)にリバウンドスプリング280を介装している。リバウンドスプリング280は金属コイルばねからなる。リバウンドスプリング280の金属ばねのばね力Frは、車体側チューブ211と車軸側チューブ212が内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気ばねのばね力F1、F2により付勢される伸切側で圧縮され、内側空気ばね室250の空気ばねのばね力F1と、外側空気ばね室260の空気ばねのばね力F2に抗して車体側チューブ211と車軸側チューブ212を収縮させる方向に付勢する。
【0078】
従って、フロントフォークBにあっては、スプリング脚210の伸縮ストロークに対し、車体側チューブ211と車軸側チューブ212を伸長させる方向に付勢する内側空気ばね室250の空気ばねのばね力F1及び外側空気ばね室260の空気ばねのばね力F2と、車体側チューブ211と車軸側チューブ212を伸切側で収縮させる方向に付勢するバランススプリング270の金属ばねのばね力Fb及びリバウンドスプリング280の金属ばねのばね力Frが生じ、それらの総和となる合成ばね力Fを生ずる。合成ばね力Fは、伸縮ストロークの初期〜中間域のばね力を上げずに、後半のばね力を大きくするものになる。
【0079】
そして、フロントフォークBにあっては、スプリング脚210の上述の合成ばね力Fによる衝撃力の吸収に伴う車体側チューブ211と車体側チューブ212の伸縮振動を、ダンパ脚10のダンパ20における伸側減衰力発生装置40の伸側減衰バルブ42Aと圧側減衰力発生装置50の圧側減衰バルブ54Aが発生する減衰力により制振する。
【0080】
尚、フロントフォークBにあっては、ダンパ脚10、スプリング脚210の軽量化のため、ダンパ脚10のピストンロッド22、スプリング脚210のガイドロッド222を中空にしている。
【0081】
また、フロントフォークBにあっては、ダンパ脚10とスプリング脚210の剛性のバランスを図るため、ダンパ脚10の車体側チューブ11とスプリング脚210の車体側チューブ211を同一長、同一径(同一肉厚)にするとともに、ダンパ脚10のピストンロッド22とスプリング脚210のガイドロッド222を同一長、同一径(同一肉厚)にしている。また、ダンパ脚10のダンパシリンダ21とスプリング脚210のガイドシリンダ221を同一長、同一径(同一肉厚)にするとともに、ダンパ脚10のピストンロッド22とスプリング脚210のガイドロッド222を同一長、同一径(同一肉厚)にしている。
【0082】
また、フロントフォークBにあっては、ダンパ脚10とスプリング脚210の剛性のバランスを図るため、フロントフォークBの正面視(図9)で、ダンパ脚10のダンパシリンダ21に設けられてピストンロッド22を挿入かつ支持するロッドガイド34のブッシュ35と、スプリング脚210のガイドシリンダ221に設けられてガイドロッド222を挿入かつ支持するロッドガイド236のブッシュ237を、同一高さ位置に位置付けている。また、ダンパ脚10の車体側チューブ11に設けられて車軸側チューブ12を挿入かつ支持するブッシュ13Aと、スプリング脚210の車体側チューブ211に設けられて車軸側チューブ212を挿入かつ支持するブッシュ213Aを、同一高さ位置に位置付けている。
【0083】
しかるに、スプリング脚210にあっては、ガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236の下端面に、ガイドシリンダ221の外側の油溜室224(油室225)の油が、圧側行程で、減衰力を発生させずにガイドシリンダ221の内部のロッド側室227Aに流入できる通孔238を開設している。
【0084】
本実施例の通孔238は、ロッドガイド236におけるブッシュ237の周囲の複数位置で、ガイドシリンダ221及びロッドガイド236の軸方向に穿設されて延在されている。尚、前述のばね受281の内周面はガイドロッド222の周囲に環状流路282を形成している。通孔238、環状流路282は、油溜室224(油室225)の油が減衰力を発生させずにガイドシリンダ221の内部に流入するに足る大流路面積を確保している。
【0085】
スプリング脚210は、圧側行程の当初段階で、ガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236の下端面が、図13(A)に示す如く、油溜室224の油室225の油面Lより上方の空気室226内に位置する。このとき、ガイドシリンダ221の内部のロッド側室227Aが、ロッドガイド236の通孔238、ガイドシリンダ221の孔262Aを介して油溜室224の空気室226に連通する空間262になっている。
【0086】
スプリング脚210は、圧側行程の進行により、ロッドガイド236の下端面が、図13(B)に示す如く、油溜室224の油室225の油面Lに突入していくものになる。このとき、ガイドシリンダ221の内部のロッド側室227Aはロッドガイド236の通孔238、ガイドシリンダ221の孔262Aを介して油溜室224の油室225に連通する油室になる。
【0087】
尚、本実施例において、ガイドシリンダ221の孔262Aは必ずしも設けなくて良い。
【0088】
従って、スプリング脚210にあっては、圧側行程で、車体側チューブ211が車軸側チューブ212に対して収縮するとき、車体側チューブ211に支持されているガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236が油溜室224の空気室226内を下方に移動し、油溜室224の油室225の油面Lに突入するとともに、前述の如くに圧縮される懸架スプリング140(内側空気ばね室150、外側空気ばね室160)により衝撃力を吸収する。
【0089】
フロントフォークBによれば以下の作用効果を奏する。
(a)スプリング脚210において、ガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236の下端面に、ガイドシリンダ221の外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダ221の内部に流入できる通孔238を開設した。従って、圧側行程で、ガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236が油溜室224内を下方に移動するとき、油溜室224の油はガイドシリンダ221と車軸側チューブ212の間の環状流路224Aだけでなく、ロッドガイド236の下端面に開設された通孔238から減衰力を発生させずにガイドシリンダ221の内部に流入する。環状流路224Aと通孔238が油に及ぼす流路抵抗は、通孔238がない場合に比して小さくなる。これにより、油溜室224の油に及ぶ流路抵抗を可及的に一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を回避し、フロントフォークBのスムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0090】
(b)上述(a)の圧側行程の当初段階で、ガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236の下端面が、前記油溜室224の油面Lより上方の空気室226内に位置するスプリング脚210は油溜室224内の油量が少なくて軽量化でき、或いは空気室226の容積を調整して空気ばね力特性をセッティングできるメリットを有する。反面、圧側行程で、ガイドシリンダ221及びロッドガイド236が油溜室224内を下方に移動するとき、ロッドガイド236が必ず油溜室224の空気室226を経由してから油溜室224の油面Lに突入するものになるから、ロッドガイド236の下端面が油溜室224の油面Lに衝突することによる衝撃も生じ、フロントフォークBのスムースな圧縮ストロークを阻害するものになる。本発明では、ロッドガイド236の下端面が油溜室224の油面Lに突入したとき、油溜室224の油面Lがロッドガイド236の通孔238から直ちにガイドシリンダ221の内部に流入し、上述の衝突を緩和して衝撃を回避し、フロントフォークBのスムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0091】
(c)上述(a)、(b)のロッドガイド236に開設される通孔238が、ガイドシリンダ221の軸方向に延在される。圧側行程で、ガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236が油溜室224内を下方に移動するとき、油溜室224の油は、ガイドシリンダ221及びロッドガイド236の移動方向であるガイドシリンダ221の軸方向に延在されている該ロッドガイド236の通孔238にスムースに流入し、ひいては減衰力を発生させずに直ちにガイドシリンダ221の内部に流入する。
【0092】
これにより、油溜室224の油に及ぶ流路抵抗を一層一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を一層回避し、フロントフォークBの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0093】
また、ロッドガイド236の下端面が油溜室224の油面Lに衝突することによる衝撃を一層回避し、フロントフォークBの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0094】
(d)上述(a)、(b)のガイドシリンダ221の内部が、ガイドロッド222の先端ガイド223により、ガイドロッド222を収容するロッド側室227Aと、ガイドロッド222を収容しないガイド側室227Bに区画され、ガイド側室227Bとロッド側室227Aを非連通としている。圧側行程で、ガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236が油溜室224内を下方に移動するとき、相対的には、ガイドロッド222の先端ガイド223がガイドシリンダ221の内部に進入するものになる。このとき、ガイドロッド222の先端ガイド223は、ガイドシリンダ221の内部のロッド側室227Aをガイド側室227Bと非連通にしながら、該ロッド側室227Aを拡張して負圧化するものになる結果、油溜室224内の油はロッドガイド236の通孔238から負圧化されたガイドシリンダ221の内部のロッド側室227Aに吸引されて一層確実に流入するものになる。
【0095】
これにより、油溜室224の油に及ぶ流路抵抗を一層一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を一層回避し、フロントフォークBの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0096】
また、ロッドガイド236の下端面が油溜室224の油面Lに衝突することによる衝撃を一層回避し、フロントフォークBの一層スムースな圧縮ストロークを確保できる。
【0097】
尚、フロントフォークBは以下の作用効果も奏する。
(i)スプリング脚210に内蔵する懸架スプリング240が、金属ばねでなく、空気ばね(内側空気ばね室250及び外側空気ばね室260)からなる。金属ばねの不採用により大幅に軽量化できる。また、車体側チューブ211や車軸側チューブ212に対する金属ばねの摺接がないから、それらのチューブ211、212と金属ばねとのフリクション、損傷、磨耗粉の発生、異音を生ずることがなく、作動性を向上できる。
【0098】
(ii)スプリング脚210が、ガイドシリンダ221の内部にガイドロッド222のガイド223が区画する内側空気ばね室250と、車体側チューブ211と車軸側チューブ212がガイドシリンダ221における少なくとも上記内側空気ばね室250の外側に区画する外側空気ばね室260とを有する。スプリング脚210における車体側チューブ211と車軸側チューブ212に囲まれる内部空間に設けられる空気室を、ガイドシリンダ221の内外の内側空気ばね室250と外側空気ばね室260に2分した。内側空気ばね室250と外側空気ばね室260のそれぞれは、2分化された分だけ小スペースになって高圧縮比になり、内側空気ばね室250の空気ばねのばね力F1と、外側空気ばね室260の空気ばねのばね力F2が大きくなり、スプリング脚210の全体の空気ばね力(F1+F2)を大きくできる。
【0099】
内側空気ばね室250と外側空気ばね室260が互いに独立しており、それらの各ばね室250、260の空気ばねのばね力F1、F2を変更することで、初期ばね荷重を調整できるし、フロントフォークBの自由長を調整して車体姿勢を設定替えできる。
【0100】
(iii)スプリング脚210の全体の空気ばね力(F1+F2)を、内側空気ばね室250のばね力F1と外側空気ばね室260のばね力F2に分担する分だけ、内側空気ばね室250の空気圧と外側空気ばね室260の空気圧を低減しながら全体の空気ばね力(F1+F2)を大きくとれる。これにより、内側空気ばね室250のシール部材251、252と外側空気ばね室260のシール部材213C、263、264、265、266に及ぼすシール負荷を低減しながら、一定の空気ばね力特性を確保できる。
【0101】
(iv)内側空気ばね室250と外側空気ばね室260が互いに独立しているから、万が一、車体側チューブ211又は車軸側チューブ212に石が当たるチッピング等によりチューブ傷を生じ、ひいては外側空気ばね室260のシール部材213Cが損傷し、外側空気ばね室260の空気圧が抜けても、1名乗車分程度の荷重は内側空気ばね室250のばね力により支持でき、走行継続できる。
【0102】
(v)スプリング脚210が、内側空気ばね室250の空気圧を調整するための内側空気圧調整部253と、外側空気ばね室260の空気圧を調整するための外側空気圧調整部267とを有する。内側空気ばね室250の空気圧と外側空気ばねの空気圧を調整することにより、スプリング脚210の全体の空気ばね力特性を多様に変更できる。
【0103】
(vi)スプリング脚210が、ガイドシリンダ221の外部で、ガイドシリンダ221の外周に設けたばね受271と、車体側チューブ211又は車軸側チューブ212であってガイドロッド222を設けたチューブとの間に介装される金属ばねからなり、外側空気ばね室260の空気ばねと内側空気ばね室250の空気ばねのばね力に抗して車体側チューブ211と車軸側チューブ212を収縮させる方向に付勢するバランススプリング270を有する。スプリング脚210は、内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の全体の空気ばね力(F1+F2)と、バランススプリング270のばね力Fbとがつり合う位置で、伸縮両方向に自由長をなす初期状態になる。これにより、伸縮ストロークの初期〜中間域のばね力を上げずに、乗り心地の良いばね特性を得ることができる。そして、伸縮ストロークの後半のばね力を内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気ばねのばね力の立上りにより大きくし、踏ん張りのあるばね力特性を得ることができる。
【0104】
(vii)スプリング脚210が、ガイドシリンダ221の内部で、ガイドシリンダ221に設けられてガイドロッド222を挿入かつ支持するロッドガイド236と、ガイドシリンダ221に挿入されたガイドロッド222のガイド223との間に介装される金属ばねからなり、車体側チューブ211と車軸側チューブ212の伸切側で圧縮されて車体側チューブ211と車軸側チューブ212を収縮させる方向に付勢するリバウンドスプリング280を有する。スプリング脚210は、内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の全体の空気ばね力(F1+F2)と、リバウンドスプリング280のばね力Fr(又は上述(f)のFbとFrの合計ばね力Fb+Fr)とがつり合う位置で、伸縮両方向に自由長をなす初期状態になる。これにより、伸縮ストロークの初期〜中間域のばね力を上げずに、乗り心地の良いばね特性を得ることができる。そして、伸縮ストロークの後半のばね力を内側空気ばね室250と外側空気ばね室260の空気ばねのばね力の立上りにより大きくし、踏ん張りのあるばね力特性を得ることができる。
【0105】
(viii)フロントフォークBの正面視で、スプリング脚210のガイドシリンダ221に設けられてガイドロッド222を挿入かつ支持するロッドガイド236のブッシュ237と、ダンパ脚10のダンパシリンダ21に設けられてピストンロッド22を挿入かつ支持するロッドガイド34のブッシュ35とが、同一高さ位置に位置付けられる。ダンパ脚10とスプリング脚210の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0106】
(ix)スプリング脚210の車体側チューブ211とダンパ脚10の車体側チューブ11を同一径にするとともに、スプリング脚210の車軸側チューブ212とダンパ脚10の車軸側チューブ12を同一径にし、スプリング脚210のガイドシリンダ221とダンパ脚10のダンパシリンダ21を同一径にするとともに、スプリング脚210のガイドロッド222とダンパ脚10のピストンロッド22を同一径にする。ダンパ脚10とスプリング脚210の剛性のバランスをとり、外乱入力時のハンドルの振られ(ヨー方向)を抑制できる。
【0107】
尚、フロントフォークBのスプリング脚210において、圧側行程の当初段階から、ガイドシリンダ221の下端に設けたロッドガイド236(通孔238が設けられている)の下端面が、油溜室224の油室225の油面Lの下に位置していても良い。
【0108】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、ダンパ脚において、車体側チューブをインナチューブとし、車軸側チューブをアウタチューブとしても良いし、ダンパシリンダを車軸側チューブに設け、ピストンロッドを車体側チューブに設けても良い。
【0109】
また、スプリング脚において、車体側チューブをインナチューブとし、車軸側チューブをアウタチューブとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、ダンパを内蔵せず、ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚を有するフロントフォークであって、スプリング脚が、車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブと車軸側チューブの一方の内部の中央に設け、車体側チューブと車軸側チューブの他方の内部の中央に設けたガイドロッドをガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面からガイドシリンダに挿入し、ガイドロッドのガイドをガイドシリンダに摺動自在に挿入してなり、ガイドシリンダの外側に、油室と空気室からなる油溜室を形成し、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面に、ガイドシリンダの外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダの内部に流入できる通孔を開設した。これにより、ダンパを内蔵せず、ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚を有してなるフロントフォークにおいて、油溜室の油に及ぶ流路抵抗を可及的に一様にし、流路抵抗の急変に基づく衝撃を回避したスムースな圧縮ストロークを確保するができる。
【符号の説明】
【0111】
A フロントフォーク
10 ダンパ脚
11 車体側チューブ
12 車軸側チューブ
20 ダンパ
110 スプリング脚
111 車体側チューブ
112 車軸側チューブ
121 ガイドシリンダ
122 ガイドロッド
123 ガイド
124 油溜室
125 油室
126 空気室
134 ロッドガイド
138 通孔
148 ばね受
150 懸架スプリング
B フロントフォーク
210 スプリング脚
211 車体側チューブ
212 車軸側チューブ
221 ガイドシリンダ
222 ガイドロッド
223 ガイド
224 油溜室
225 油室
226 空気室
227A ロッド側室
227B ガイド側室
236 ロッドガイド
238 通孔
240 懸架スプリング
250 内側空気ばね室
260 外側空気ばね室
270 バランススプリング
280 リバウンドスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパを内蔵せず、ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚を有するフロントフォークであって、
スプリング脚が、
車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブと車軸側チューブの一方の内部の中央に設け、車体側チューブと車軸側チューブの他方の内部の中央に設けたガイドロッドをガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面からガイドシリンダに挿入し、ガイドロッドのガイドをガイドシリンダに摺動自在に挿入してなり、
ガイドシリンダの外側に、油室と空気室からなる油溜室を形成し、
ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面に、ガイドシリンダの外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダの内部に流入できる通孔を開設してなるフロントフォーク。
【請求項2】
ダンパを内蔵せず、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚と、ダンパを内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚とを平行配置したフロントフォークであって、
スプリング脚が、
車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブと車軸側チューブの一方の内部の中央に設け、車体側チューブと車軸側チューブの他方の内部の中央に設けたガイドロッドをガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面からガイドシリンダに挿入し、ガイドロッドのガイドをガイドシリンダに摺動自在に挿入してなり、
ガイドシリンダの外側に、油室と空気室からなる油溜室を形成し、
ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面に、ガイドシリンダの外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダの内部に流入できる通孔を開設し、
車体側チューブの内部でガイドシリンダの周囲に設けたばね受と、車軸側チューブとの間に、懸架スプリングを介装してなるフロントフォーク。
【請求項3】
ダンパと金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵せず、空気ばねからなる懸架スプリングを内蔵するスプリング脚と、ダンパを内蔵し、金属ばねからなる懸架スプリングを内蔵しないダンパ脚とを平行配置したフロントフォークであって、
スプリング脚が、
車体側チューブと車軸側チューブを互いに挿入し、ガイドシリンダを車体側チューブと車軸側チューブの一方の内部の中央に設け、車体側チューブと車軸側チューブの他方の内部の中央に設けたガイドロッドをガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面からガイドシリンダに挿入し、ガイドロッドのガイドをガイドシリンダに摺動自在に挿入してなり、
ガイドシリンダの外側に、油室と空気室からなる油溜室を形成し、
ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面に、ガイドシリンダの外側の油が、圧側行程で減衰力を発生させずにガイドシリンダの内部に流入できる通孔を開設し、
ガイドシリンダの内部にガイドロッドのガイドが区画する内側空気ばね室と、車体側チューブと車軸側チューブがガイドシリンダにおける少なくとも上記内側空気ばね室の外側に区画する外側空気ばね室とを有してなるフロントフォーク。
【請求項4】
前記圧側行程の当初段階で、ガイドシリンダの下端に設けたロッドガイドの下端面が、前記油溜室の油面より上方の空気室内に位置する請求項1〜3のいずれかに記載のフロントフォーク。
【請求項5】
前記ロッドガイドに開設される通孔が、ガイドシリンダの軸方向に延在されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のフロントフォーク。
【請求項6】
前記ガイドシリンダの内部が、ガイドロッドのガイドにより、ガイドロッドを収容するロッド側室と、ガイドロッドを収容しないガイド側室に区画され、ガイド側室とロッド側室を非連通としてなる請求項1〜5のいずれかに記載のフロントフォーク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−117586(P2012−117586A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266414(P2010−266414)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】