説明

ブレーキ開放センサ支持構造

【課題】 ブレーキ開放センサの位置調整を簡便に行い、常に検知精度を確保し、ブレーキの引摺りや焼付きを未然に防止できるブレーキ開放センサ支持構造を提供する。
【解決手段】 軸方向に作動するピストン部材12により回転するブレーキロータ11がパッド10を介して押圧されてブレーキ動作を行う産業用ディスクブレーキであって、前記パッド10の開放位置を検出するリミットセンサ2を静止部1にて支持するブレーキ開放センサ支持構造において、前記リミットセンサ2を静止部1に対してピストン部材12の動作方向に位置調整可能に支持・固定されたことにより、リミットセンサ2の位置をブレーキ開放位置に対応させて調整できるので、センサのオン・オフや不感帯の調整を含めて常に精度よくブレーキ開放を確実に検知して外部の制御装置に信号を送ることができ、ブレーキ制御が適正に行われて、ブレーキの引摺りや焼付きを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸方向に作動するピストン部材により回転するブレーキロータがパッドを介して押圧されてブレーキ動作を行う産業用ディスクブレーキであって、前記パッドの開放位置を検知するリミットセンサを静止部にて支持するブレーキ開放センサ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、風力発電機等の産業用ディスクブレーキにおいては、制御上の必要性から、ブレーキの開放信号に合わせてブレーキが開放されたことを機械的に検知する場合がある。風力発電機では、何らかの異常による緊急停止、または点検整備時の安全性から、ブレーキによって羽根の回転等を停止させてロックし、非発電状態にする必要がある。異常への対処や点検整備が終了した場合には、ブレーキを開放して、羽根の回転等により発電状態に復帰するが、ブレーキが完全に開放されていないと引摺りや焼付きを発生する虞れがあった。
【0003】
そのようなことから、ブレーキの開放を確実にする技術や、ブレーキの開放を正確に検知するブレーキ開放センサが求められている。前者の技術として下記特許文献1に記載された巻上機用の制動装置が提案され、後者のブレーキ開放センサとして下記特許文献2に記載された旋回構造が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4009286号公報(特許請求の範囲参照)
【特許文献2】特開2004−364370号公報(公報要約書参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に開示された第1従来例の巻上機用の制動装置は、図示はしないが、揺動する手動開放レバーを設けた軸動する作動杆の先端の球面によって、球面座を有する求心継手および押圧部を介して、ブレーキシューを回転被制動体の円筒外周面に押圧を行うようにして、ブレーキシューの回転被制動体外周面への片当たりを抑制したり、異常磨耗を抑制して、安定して大きな制動力を発生させることを可能にするとともに、前記手動開放レバーの揺動によって、作動杆を後退・軸動させることで、ブレーキシューを回転被制動体の円筒外周面から開放して安定したブレーキ開放を行うことができるようにしたものである。
【0006】
また、前記特許文献2に開示された第2従来例の旋回構造を、図6を用いて簡単に説明すると、図示外の駆動ピニオンが大径歯車110の内周面を自転しながら回転駆動することによって、可動部105は固定部111に対して旋回する。図6の図示部分はブレーキ手段Bを示すもので、大径歯車110の内周面に噛合する制動ピニオン101は、シャフト102を介して上部に配設されたパッドブレード106に連結されている。パッドブレード106はその上下に介設された摩擦部材108、108間に配置され、上方の固定本体部127内の円周上に複数個配設された図示外のスプリングによって、下方へ付勢された可動押圧部128により制動ロックされる。
【0007】
固定本体部127内における電磁的開放手段113を構成するコイル132を励磁すると、前記図示外のスプリングの下方への付勢力に抗して、可動押圧部128を上方へ吸引する。それによって、パッドブレード106が開放されて制動ピニオン101が大径歯車110の内周面に噛合・自転することになり、可動部105は固定部111に対して旋回する。符号134は、可動押圧部128の位置を検知して、ブレーキ状態またはブレーキ開放状態を外部制御部へ信号として発信するリミットスイッチである。本体部103の受圧フランジ124には、パッドブレード106と摩擦部材108との隙間を調整するボルト・ナットからなる調整機構135が配設される。
【0008】
このような従来の制動装置にあって、前記第1の従来例のものでは、安定したブレーキ開放が可能となり、作動杆を支持するベース部に開放検知用のリミットスイッチが取り付けられて、ブレーキシューによる回転被制動体の円筒外周面への押圧状態を確認できるように構成されているものの、該リミットスイッチの位置調整は、リミットスイッチの固定螺子のみで行わなくてはならないため、常時の検知精度の確保に問題があった。また、前記第2の従来例のものでは、パッドブレード106と摩擦部材108との隙間を直接に調整するボルト・ナットからなる調整機構135が配設されるものの、固定本体部127の上部に設置されるリミットスイッチ134については、前記第1の従来例のものと同様に、位置調整をするようには構成されておらず、矢張り、開放位置の常時の検知精度の確保は困難であった。したがって、従来のこれらの制動装置にあっては、完全なブレーキ開放の検知が困難であり、ブレーキの引摺りや焼付きを引き起こす虞れがあった。
【0009】
そこで本発明では、前記従来のブレーキ開放センサ支持構造の諸課題を解決して、ブレーキ開放センサの位置調整を簡便に行うことを可能にして、常に検知精度を確保し、ブレーキの引摺りや焼付きを未然に防止することを可能にしたブレーキ開放センサ支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため本発明は、軸方向に作動するピストン部材により回転するブレーキロータがパッドを介して押圧されてブレーキ動作を行う産業用ディスクブレーキであって、前記パッドの開放位置を検出するリミットセンサを静止部にて支持するブレーキ開放センサ支持構造において、前記リミットセンサを静止部に対してピストン部材動作方向に位置調整可能に支持・固定されたことを特徴とする。また本発明は、前記位置調整が、静止部に螺合された調整螺子によってなされるように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記位置調整が、調整螺子とリミットセンサとの間に介在されたウェッジ部材を介してなされるように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記位置調整が、調整螺子とリミットセンサとの間に介在されたラック・ピニオンギヤを介してなされるように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記位置調整の後のリミットスイッチの静止部への固定が、固定螺子によりなされることを特徴とする。また本発明は、前記位置調整の後のリミットスイッチの静止部への固定が、リミットスイッチの静止部へのワンタッチ式のクランプによりなされることを特徴とする。また本発明は、前記リミットセンサが、静止部内において前記調整螺子側にばね付勢されたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸方向に作動するピストン部材により回転するブレーキロータがパッドを介して押圧されてブレーキ動作を行う産業用ディスクブレーキであって、前記パッドの開放位置を検出するリミットセンサを静止部にて支持するブレーキ開放センサ支持構造において、前記リミットセンサを静止部に対してピストン部材動作方向に位置調整可能に支持・固定されたことにより、リミットセンサの位置をブレーキ開放位置に対応させて調整できるので、センサのオン・オフや不感帯の調整を含めて常に精度よくブレーキ開放を確実に検知して外部の制御装置に信号を送ることができ、ブレーキ制御が適正に行われて、ブレーキの引摺りや焼付きを防止することができる。
【0012】
また、前記位置調整が、静止部に螺合された調整螺子によってなされるように構成した場合は、リミットセンサの位置調整が調整螺子の回転数で把握され、作業者の個人差による影響を解消できて位置調整が容易となる。さらに、前記位置調整が、調整螺子とリミットセンサとの間に介在されたウェッジ部材を介してなされるように構成した場合は、ウェッジ部材の斜面を介して、リミットセンサの調整方向と調整螺子の調整方向を異ならせることができるので、リミットセンサの調整ストロークに対する調整螺子の調整ストロークを適宜選定することにより、きめ細かな微調整を可能にするとともに、調整螺子がパッド等からの力を直接に受けないので、調整螺子がブレーキ開放後のパッドの後退に影響を受けにくくなる。
【0013】
さらにまた、前記位置調整が、調整螺子とリミットセンサとの間に介在されたラック・ピニオンギヤを介してなされるように構成した場合は、リミットセンサの側方にて調整螺子によるラック・ピニオンギヤを介した微調整ができ、ラックからピニオンギヤへの力が及びにくいこととも相俟って、調整螺子がパッド等からの力の影響を受けにくい。また、前記位置調整の後のリミットスイッチの静止部への固定が、固定螺子によりなされる場合は、調整後のリミットスイッチの正規位置を確実に保持できる。
【0014】
さらに、前記位置調整の後のリミットスイッチの静止部への固定が、リミットスイッチの静止部へのワンタッチ式のクランプによりなされる場合は、固定螺子を用いたもののような螺子込み作業を伴わず、リミットスイッチの静止部への固定作業がより簡素化される。さらにまた、前記リミットセンサが、静止部内において前記調整螺子側にばね付勢された場合は、調整螺子のバックラッシュによる誤差を吸収できて検知精度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のブレーキ開放センサ支持構造の第1実施例の要部拡大斜視図およびその裏面の一部分解斜視図である。
【図2】同、ブレーキロータに対するパッドの開放検知状態を示す検知部の一部断面斜視図である。
【図3】本発明のブレーキ開放センサ支持構造の第2実施例の要部拡大断面図である。
【図4】本発明のブレーキ開放センサ支持構造の第3実施例の要部拡大断面図である。
【図5】本発明のブレーキ開放センサ支持構造の第4実施例の要部拡大断面図である。
【図6】従来の旋回構造におけるブレーキ手段の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のブレーキ開放センサ支持構造を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。本発明のブレーキ開放センサ支持構造は、図2に示すように、軸方向に作動するピストン部材12により回転するブレーキロータ11がパッド10、10を介して押圧されてブレーキ動作を行う産業用ディスクブレーキであって、前記パッド10の開放位置を検出するリミットセンサ2を静止部(フレーム)1にて支持するブレーキ開放センサ支持構造において、前記リミットセンサ2を静止部1に対してピストン部材12の動作方向に位置調整可能に支持・固定されたことを特徴とする。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明のブレーキ開放センサ支持構造の第1実施例について説明する。図2に示すように、適宜のボディ20に組み付けられた一対の対向するピストン部材12、12の軸方向のブレーキ作動によって、ブレーキロータ11の両側に配置された一対のパッド10、10がブレーキロータ11の両側を挟持して押圧することで、ブレーキ作動がなされる。ブレーキロータ11は、例えば、図示外の風力発電機の羽根回転機構における羽根軸等と一体にて回転する。点検等任意の必要性、あるいは何らかの異常を検知した場合には、図示外の適宜の制御手段からの停止信号を得て、電気的なあるいは液圧によるアクチュエータとしてのピストン部材12が進出し、パッド10、10が回転するブレーキロータ11の両側を挟持して押圧することで、ブレーキ作動がなされる。また、パッド10は図示外のリターンスプリングによってボディ20の方向に付勢されており、開放状態ではブレーキロータ11から強制的に離される。
【0018】
ピストン部材12の背面側のボディ20には、静止部材としてのフレーム1が植設され、該フレーム1にリミットセンサ2がピストン部材12の動作方向に調整螺子5により位置調整可能に支持・固定される。リミットセンサ2と前記パッド10の背面との間にはロッド9が介設され、パッド10のブレーキロータ11からの開放位置をロッド9を通じてリミットセンサ2により検知する。ロッド9はフレーム1の底部1B(図1参照)を貫通している。そして、フレーム1内において底部1Bとの間にばね3が介設されて、ミットセンサ2が調整螺子5側にばね付勢される。好適には、図示のようにブレーキロータ11の両側にリミットセンサ2が配設される。
【0019】
図1により、リミットセンサ2のフレーム1への支持・固定について説明する。図1(A)に示すように、コの字状のフレーム1は、上部1Aと底部1Bとを有してこれらの間にリミットセンサ2が配設されて支持・固定される。リミットセンサ2は、上部に形成された斜面2Aにフレーム上部1Aの螺子孔に螺合された調整螺子5の下端部が当接される。調整螺子5は調整の後にロックナット5Aにより回止めされる。リミットセンサ2とフレーム底部1Bとの間にはばね3が介設されて、リミットセンサ2を調整螺子5側へ付勢して所定のテンションを付与している。これにより、調整螺子5の螺子部にバックラッシュによる誤差を生じさせないので、調整時の微調整に悪影響を及ぼすことがない。
【0020】
前記リミットセンサ2とフレーム底部1Bとの間に介設されるばね3内に、リミットセンサ2の底部のセンサ検知部7から延設される開放伝達部材4が配設され、該開放伝達部材4に、前記パッド10の背面に一端部が当接するロッド9の他端部が当接して組み付けられる。したがって、ロッド9の他端部は、図1(B)に示すように、フレーム底部1Bに穿設されたロッド孔1Cを貫通している。ロッド9は、そのリング溝17に係止されるスナップリング18とフレーム底部1Bとの間に介設されるリターンスプリング19によって、パッド10およびブレーキロータ11の方向に付勢されている。
【0021】
リミットセンサ2の裏面側に固定された固定板2Bには、フレーム1の軸方向(ピストン部材動作方向)に形成されたスライドガイド溝8に適合して摺動するガイド部材21が取り付けられており、リミットセンサ2の調整螺子5による軸方向の位置調整移動を円滑に行えるようにされている。前記スライドガイド溝8の両側の長孔を通じて、固定板2Bに穿設された螺子孔に螺合される固定螺子6、6の締結および前記調整螺子5におけるロックナット5Aの締結によって、静止部材であるフレーム1に対するリミットセンサ2のブレーキ開放位置に対応させた適宜位置への固定を行い、センサのオン・オフや不感帯の調整を含めた適正位置が決定される。
【0022】
このように構成されていることによって、パッド10がブレーキロータ11から充分に離れた位置(例えば2mm)を、パッド10の背面に当接するロッド9および開放伝達部材4を介したセンサ検知部7にて検知し、図示外の制御手段の出力等を監視しつつ、センサのオン・オフや不感帯の調整を含めた適正位置として調整螺子5の調整をすればよい。
【実施例2】
【0023】
図3は本発明のブレーキ開放センサ支持構造の第2実施例の要部拡大断面図である。本第2実施例では、前記リミットセンサ2のパッド背面に対する位置調整が、調整螺子5Aとリミットセンサ2との間に介在されたウェッジ部材13を介してなされるように構成したものである。リミットセンサ2は、ボディ20に植設されたフレーム1内の軸方向(ピストン部材動作方向)に併設された一対のガイドレール1D、1Dの間にばね3によりウェッジ部材13側に付勢されて摺動自在に配設される。ガイドレール1Dの一方側に横方向に螺合された調整螺子5Aの進退によってウェッジ部材13を進退させ、ウェッジ部材13とリミットセンサ2の対向面に互いに形成された斜面13A、2Aとの間の摺接によって、ロッド9および開放伝達部材4を介したリミットセンサ2のパッド10の背面に対する軸方向位置を適正に調整する。調整後には、センサ固定螺子6の締結により固定される。
【0024】
かくして、ウェッジ部材13の斜面13Aを介して、リミットセンサ2の調整方向と調整螺子5Aの調整方向を異ならせることができるので、リミットセンサ2の調整ストロークに対する調整螺子5Aの調整ストロークを適宜選定することにより、きめ細かな微調整を可能にするとともに、調整螺子5Aがパッド10等からの力を直接に受けないので、前記第1実施例のものと同様に、ばね3による調整螺子5Aにおけるバックラッシュのキャンセル機能を発揮しつつ、調整螺子5Aがブレーキ開放後のパッド10の後退に直接の影響を受けにくいので、調整螺子5Aの調整機能が長期間にわたり維持される。
【実施例3】
【0025】
図4は本発明のブレーキ開放センサ支持構造の第3実施例の要部拡大断面図である。本第3実施例では、前記リミットセンサ2のパッド背面に対する位置調整が、調整螺子5Bとリミットセンサ2との間に介在されたラック・ピニオンギヤ14,15を介してなされるように構成されたものである。リミットセンサ2は、ボディ20に植設されたフレーム1内の軸方向(ピストン部材動作方向)の前後に併設された一対のガイドレール1E、1Eの間にばね3によりパッド10と反対側に付勢されて摺動自在に配設される。リミットセンサ2の背面にはラック14が刻設され、その前面は固定螺子6の締結によってフレーム1に固定可能にされ、前記ラック14には背面側のガイドレール1Eの裏面に設置された調整螺子5Bによって回動自在なピニオンギヤ15が噛合されている。調整螺子5Bを回動させてピニオンギヤ15を介してリミットセンサ2の背面のラック14を軸方向に調整移動させる。調整後に前面の固定螺子6を締結してリミットセンサ2を固定する。
【0026】
かくして、リミットセンサ2の側方(後方背面)にて調整螺子5Bによるラック・ピニオンギヤ14、15を介した微調整ができ、ラック14からピニオンギヤ15への力が及びにくいこととも相俟って、調整螺子5Bがパッド等からの力の影響を受けにくい。本実施例3のものも、前記第2実施例のものと同様に、ばね3による調整螺子5Bのラック14とピニオンギヤ15との間におけるバックラッシュのキャンセル機能を発揮しつつ、調整螺子5Bがブレーキ開放後のパッド10の後退に直接の影響を受けにくいので、調整螺子5Aの調整機能が長期間にわたり維持される。
【実施例4】
【0027】
図5は本発明のブレーキ開放センサ支持構造の第4実施例の要部拡大断面図である。本第4実施例では、調整螺子5によるリミットセンサ2のパッド背面に対する位置調整がなされた後、前記位置調整の後のリミットスイッチ2の静止部であるフレーム1への固定が、リミットスイッチ2のフレーム1へのワンタッチ式のクランプ(皿ばね16とハンドル6A等から構成される)によりなされるものである。図示の実施例では、ボディ20に植設されたフレーム1として門型形状のガイド1F内の軸方向(ピストン部材動作方向)の前後に併設された一対のガイドレール1F、1Fの間にばね3によりパッド10と反対側の調整螺子5側に付勢されて摺動自在に配設される。
【0028】
リミットスイッチ2と前面のガイドレール1Fの内側との間には摩擦面22(微細な凹凸面でも、高摩擦係数を有する面でもよい)が形成され、リミットスイッチ2と背面のガイドレール1Fの内側との間には、皿ばね16の復元力により押圧部23をリミットスイッチ2の背面に押しつけるワンタッチ式のクランプが作用するように構成される。該クランプの外側端部にはハンドル6Aが設置され、該ハンドル6Aを摘んで外側に引くことによって皿ばね16を橈ませ、リミットスイッチ2を前面のガイドレール1Fの内側の摩擦面に対する固定から開放させて、調整螺子5の調整を可能にし、調整後にハンドル6Aを開放することで、皿ばね16によってリミットスイッチ2が前面のガイドレール1Fの内側の摩擦面に付勢されて圧接・固定される。
【0029】
かくして、本第4実施例のものでは、前述した各実施例のもののような固定螺子を用いた螺子込み作業を伴わず、リミットスイッチ2の静止部であるフレーム1への固定作業がワンタッチで可能となり、固定作業がより簡素化される。
【0030】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、ブレーキアクチュエータであるピストン部材の形式(液体圧あるいは空気圧等の流体式、電磁あるいはモータ等による電気式、あるいは歯車列を用いた機械式等も採用され得る)、形状およびそのボディへの配設形態、ブレーキロータおよびパッドの形式、形状、産業用ディスクブレーキとしての種類(実施例の、風力発電機の羽根軸ブレーキ等の他、ブレーキの開放を正確に検知する必要のある適宜の産業用ディスクブレーキへの適用が可能である)、リミットセンサの形状、形式(ストロークセンサ、オン・オフセンサ等)およびそのフレームに対するスライド移動形態(実施例の、フレームのスライドガイド溝とガイド部材との組合せ、リミットスイッチの両側あるいは前後のフレームガイドとの間のスライド移動形態の他、適宜のガイドとの組合せを用いたスライド移動形態が採用され得る)、ボディの形状、フレームの形状およびそのボディへの設置形態、ロッドおよび開放伝達部材の形状ならびにそれらの当接形態、リミットセンサの静止部であるフレームに対する位置調整形態(実施例の、静止部に螺合された調整螺子によるもの、ウェッジ部材によるもの、ラック・ピニオンギヤによるもの、リミットセンサ上面の斜面と横方向調整によるものの他、適宜の位置調整形態が採用さ得る)、位置調整の後のリミットスイッチの静止部への固定形態(実施例の、固定螺子によるもの、ワンタッチ式のクランプによるものの他、適宜の固定形態が採用され得る)、リミットセンサのばね付勢形態(実施例の、開放伝達部材の周囲に配設されたコイル状のばねによるものの他、リミットスイッチの上面の斜面の高い方からのばね付勢や場合によっては、リミットスイッチにおけるパッドと反対側からの引っ張りばねによってもよい)等については適宜選定できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のブレーキ開放センサ支持構造は、実施例の風力発電機の羽根軸ブレーキ等の他、ブレーキの開放を正確に検知する必要のある適宜の産業用ディスクブレーキへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 フレーム
2 リミットスイッチ
3 ばね
5 調整螺子
9 ロッド
10 パッド
11 ブレーキロータ
12 ピストン部材
20 ボディ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に作動するピストン部材により回転するブレーキロータがパッドを介して押圧されてブレーキ動作を行う産業用ディスクブレーキであって、前記パッドの開放位置を検知するリミットセンサを静止部にて支持するブレーキ開放センサ支持構造において、前記リミットセンサを静止部に対してピストン部材動作方向に位置調整可能に支持・固定されたことを特徴とするブレーキ開放センサ支持構造。
【請求項2】
前記位置調整が、静止部に螺合された調整螺子によってなされるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のブレーキ開放センサ支持構造。
【請求項3】
前記位置調整が、調整螺子とリミットセンサとの間に介在されたウェッジ部材を介してなされるように構成したことを特徴とする請求項2に記載のブレーキ開放センサ支持構造。
【請求項4】
前記位置調整が、調整螺子とリミットセンサとの間に介在されたラック・ピニオンギヤを介してなされるように構成したことを特徴とする請求項2に記載のブレーキ開放センサ支持構造。
【請求項5】
前記位置調整の後のリミットスイッチの静止部への固定が、固定螺子によりなされることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のブレーキ開放センサ支持構造。
【請求項6】
前記位置調整の後のリミットスイッチの静止部への固定が、リミットスイッチの静止部へのワンタッチ式のクランプによりなされることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のブレーキ開放センサ支持構造。
【請求項7】
前記リミットセンサが、静止部内において前記調整螺子側にばね付勢されたことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のブレーキ開放センサ支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−31893(P2012−31893A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170095(P2010−170095)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】