説明

プラグ載せ換えハンド装置

【課題】プラグサイズごとに、プラグをパレット上に縦にして稠密に配列するプラグ載せ換え作業が効率的に行えるプラグ載せ換えハンド装置を提供する。
【解決手段】プラグ載せ換えハンド装置において、一側にクランプ爪を有する上下に長い複数のクランプ(2)と、各クランプ(2)の他側が連結されかつ軸(5)の周りに旋回自在に支持された旋回円盤(3)と、旋回円盤(3)を軸(5)中心周りに旋回させる旋回駆動手段(4)と、軸(5)を固定したケーシング(10)と、を具備し、複数のクランプ(2)が、旋回円盤(3)の軸(5)中心に対して同じ移動量だけ水平移動する直動機構によって開閉する構成とされ、かつ複数のクランプを保持するケーシングがハンドスライドを介してロボットアームに半径方向に水平移動可能に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継目無鋼管用プラグ(以下、プラグともいう)を運搬する際、プラグサイズごとに、プラグをパレット上に縦にして稠密に配列するプラグ載せ換え作業が効率的に行えるプラグ載せ換えハンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
継目無鋼管の製造工程では、圧延工具としてプラグを多数使用する。このプラグを運搬する際、プラグサイズごとに、プラグをパレット上に縦にして稠密に配列することが一般的に行われている。このプラグサイズは、図5に示すように、たとえば全長L=300mm前後、根元外径D=100mm前後で、その重量は30kg前後である。したがって、図4に示したように、プラグ1を運搬する際、パレット上に縦にして稠密に配列するプラグ載せ換え作業を自動で行うロボット30のハンド装置が必要とされる。31はハンド装置を取り付けるロボットアームを示す。
【0003】
ところで、継目無鋼管の製造ラインには、劣化したプラグを取り外し、供給された新しいプラグを装着するプラグ着脱装置が配置されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−234504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のプラグ着脱装置をロボットのハンド装置に用い、プラグサイズごとに、プラグをパレット上に縦にして稠密に配列するプラグ載せ換え作業を行おうとすると、その構造上、効率的にプラグ載せ換え作業を行えないという問題があった。
そこで、本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、プラグサイズごとに、プラグをパレット上に縦にして稠密に配列するプラグ載せ換え作業が効率的に行えるプラグ載せ換えハンド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討し、従来のロボットのハンド装置に代わり、以下に述べる、クランプ開閉機構に直動機構を採用したプラグ載せ換えハンド装置とすることで、上記課題を解決できるとの知見に基づき、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.プラグを複数のクランプで把持してプラグ載せ換え作業を行うプラグ載せ換えハンド装置において、一側にクランプ爪を有する上下に長い複数のクランプと、各クランプの他側が連結されかつ軸の周りに旋回自在に支持された旋回円盤と、該旋回円盤を軸中心周りに旋回させる旋回駆動手段と、前記軸を固定したケーシングと、を具備し、複数のクランプが、前記旋回円盤の軸中心に対して同じ移動量だけ水平移動する直動機構によって開閉する構成とされかつ複数のクランプを保持するケーシングがハンドスライドを介してロボットアームに半径方向に水平移動可能に取り付けられていることを特徴とするプラグ載せ換えハンド装置。
2.前記旋回円盤は、さらに軸中心からの半径方向位置が同じである開度規制溝を有し、かつ前記開度規制溝にシリンダロッドを挿入可能な開度規制用シリンダを前記ケーシングの下部に有することを特徴とする1.に記載のプラグ載せ換えハンド装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハンド装置によれば、プラグサイズごとに、プラグをパレット上に縦にして稠密に配列するプラグ載せ換え作業が効率的に行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明例のプラグ載せ換えハンド装置の側面図である。
【図2】(a)は図1の部分正面図、(b)は図1のY−Y断面図である。
【図3】本発明例の適用結果を示す平面図である。
【図4】プラグ載せ換え作業を行う場合の問題点を説明する斜視図である。
【図5】プラグサイズを定義する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1〜3を用い、本発明例のプラグ載せ換えハンド装置について説明する。図1は本発明例のプラグ載せ換えハンド装置の側面図であり、図2(a)は図1の部分正面図、図2(b)は図1のY−Y断面図であり、本発明例の直動機構を構成するカム従動子2B、それと係合されるカム溝13の説明図でもある。また、図3は、本発明例の適用結果を示す平面図である。
【0010】
この場合、図1、図2(a)に示したように、一側にクランプ爪2Aを有する上下に長いクランプ2の数を4つとし、それに応じて、クランプ2の他側に取り付けるカム従動子2B、カム従動子2Bと係合されるカム溝13の数もそれぞれ4つとした。カム溝13は旋回円盤3の下面に形成する(図2(b)参照)。一側にクランプ爪2Aを有し他側にカム従動子2Bを取り付けた4つのクランプ2は、旋回円盤3の旋回に伴い、開閉するようにケーシング10に保持されている。ただし、クランプ開閉機構は、カム機構に限定されない。
【0011】
各クランプ2が開閉するようにケーシング10に保持するには、スライドガイド12(レールとガイドブロックとを組み合わせた公知のLMガイド)が好適に用いられる。LMガイドのレールを軸中心方向に延びるようにケーシング10に固定し、レールに案内されるガイドブロックをクランプ2のカム従動子2Bを有する側に固定する。また、カム従動子2Bを保持するシャフトがケーシング10と干渉しないよう、レールに沿って長孔15をケーシング10に設けておく。また、4つのクランプ2を保持するケーシング10には、旋回円盤3を旋回させる4つのロータリアクチュエータ4(旋回駆動手段)、および旋回円盤3を旋回自在に支持する軸5が固定されている。
【0012】
この本発明例の場合、ケーシング10の上方に、プラグ移動用シリンダ7、スライドロック用シリンダ8、ロボット取り付けフレーム11を有し、このロボット取り付けフレーム11にプラグ移動用シリンダ7およびスライドロック用シリンダ8が固定されている。
したがって、本発明例のプラグ載せ換えハンド装置によれば、図1中のプラグ移動用シリンダ7を作動させることによって4つのクランプ2を保持するケーシング10自体を図1の右方向に、ハンドスライド6による半径方向水平移動量の範囲内で動かすことができる。また、スライドロック用シリンダ8によってプラグ移動用シリンダ7を作動させていないとき、ケーシング10自体が図1の左右方向に動くのをロックすることができる。図1中、実線で示すプラグは、この4つのクランプ2で把持するプラグ1のうち最大のプラグサイズのものを示し、2点鎖線のプラグは最小のプラグサイズのものを示す。
【0013】
以上説明したように、本発明例のプラグ載せ換えハンド装置は、4つのクランプ2が、旋回円盤3の軸5中心に対して同じ移動量だけ水平移動する直動機構によって開閉する構成とされているとともに、4つのクランプを保持するケーシング10が、ハンドスライド6を介してロボットアーム31に半径方向に水平移動可能に取り付けられている。この構成により、ハンドスライド6による半径方向水平移動量の範囲内でケーシング10自体を動かしたオフセット状態にて、直動機構によってプラグ1を把持しあるいは把持したプラグ1を離すことができる。
【0014】
ここで、旋回円盤3は、図1に示したように、軸5中心からの半径方向位置が同じである開度規制溝14を有し、開度規制溝14にシリンダロッドを挿入可能な開度規制用シリンダ9をケーシング10の下部に有するのが好ましい。この理由は、簡単な構造により、プラグ1を把持しあるいは把持したプラグ1を離す際、隣接するプラグと接触することが防止でき、プラグサイズごとに、プラグ1をパレット上に縦にして稠密に配列するプラグ載せ換え作業が効率的に行えるからである(図3参照)。また、旋回円盤3はその外周にギア3Aを有し、ロータリアクチュエータ4はギア3Aと噛み合うギア4Aを有するのが、クランプ開閉機構に直動機構を採用した場合、4つのクランプ2の開閉タイミングを合わせることができるので好ましい。
【実施例】
【0015】
図1に示したケーシング10の直径が600mmであり、ケーシング10に4つのクランプ2が保持されているプラグ載せ換えハンド装置を設計・製作した。プラグ載せ換えハンド装置は、ロボットアーム31にハンドスライド6を介して取り付け、プラグサイズごとに、その上限の開度を開度規制溝14で規制し、プラグ載せ換え作業を行った。ハンドスライド6による半径方向水平移動量の最大値は200mmとした。その結果、プラグ1を運搬する際、プラグサイズごとに、図3に示したように、パレット上にプラグ1を縦にして稠密に配列する載せ換え作業が効率的に行えた。
【符号の説明】
【0016】
L 全長
D 根元外径
O 軸中心
1 プラグ
2 クランプ
2A クランプ爪
2B カム従動子(カムローラ)
3 旋回円盤
3A、4A ギア
4 ロータリアクチュエータ(旋回駆動手段)
5 軸
6 ハンドスライド
7 プラグ移動用シリンダ
8 スライドロック用シリンダ
9 開度規制用シリンダ
10 ケーシング
11 ロボット取り付けフレーム
12 スライドガイド
13 カム溝
14 開度規制溝
15 長孔
30 ロボット
31 ロボットアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラグを複数のクランプで把持してプラグ載せ換え作業を行うプラグ載せ換えハンド装置において、一側にクランプ爪を有する上下に長い複数のクランプと、各クランプの他側が連結されかつ軸の周りに旋回自在に支持された旋回円盤と、該旋回円盤を軸中心周りに旋回させる旋回駆動手段と、前記軸を固定したケーシングと、を具備し、複数のクランプが、前記旋回円盤の軸中心に対して同じ移動量だけ水平移動する直動機構によって開閉する構成とされかつ複数のクランプを保持するケーシングがハンドスライドを介してロボットアームに半径方向に水平移動可能に取り付けられていることを特徴とするプラグ載せ換えハンド装置。
【請求項2】
前記旋回円盤は、さらに軸中心からの半径方向位置が同じである開度規制溝を有し、かつ前記開度規制溝にシリンダロッドを挿入可能な開度規制用シリンダを前記ケーシングの下部に有することを特徴とする請求項1に記載のプラグ載せ換えハンド装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate