説明

プラスチック光ファイバ構造体、照明装置、内視鏡、プラスチック光ファイバ構造体の製造方法

【課題】照明装置や内視鏡等に利用可能なプラスチック光ファイバ構造体について、端部からの出射光の光量増大を実現する技術の提供。
【解決手段】円筒状の樹脂体3の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線2を円周方向全体に亘って複数並べたリングファイバ1の端部を裸線2長手方向に沿って切断し、リングファイバ円周方向において互いに異なる部分同士をラップさせ、該リングファイバの円筒状部分6に比べて細い加工端部11としたプラスチック光ファイバ構造体10、その製造方法、プラスチック光ファイバ構造体を用いて構成した照明装置、内視鏡を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置や内視鏡等に好適に利用可能なプラスチック光ファイバ構造体、並びにこのプラスチック光ファイバ構造体を備えた照明装置及び内視鏡、プラスチック光ファイバ構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡等の照明装置において照明光を伝送するライトガイドとして、多成分ガラスからなる光ファイバ(多成分ファイバ)によるものが知られている。
また、特許文献1には、光透過可能な円柱状または円筒状の樹脂体の中に、該樹脂体の円周に添わせて複数のプラスチック光ファイバの裸線を実質的に均等に配置したプラスチック光ファイバ構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−288935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の多成分ファイバによるライトガイドは、多成分ファイバを束ねて構成されるため、内視鏡に用いるために曲げたり幾筋かに分けたりといった形状変更をすることが比較的容易であった。しかしながら、従来の多成分ファイバによるライトガイドは、多成分ファイバを束ねて製造するため、比較的コストが高かった。
また、特許文献1に記載のプラスチック光ファイバ構造体は、押し出し成形により全体をまとめて製造できるため低コストである。しかしながら、このプラスチック光ファイバ構造体は、側面発光(円筒状外周面からの発光)を目的とするため、端面発光を行うライトガイドとして使用することに関しては何らの記載がない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、低コスト且つ高い光入射効率を確保できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、円筒状の樹脂体の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線を円周方向全体に亘って複数並べたリングファイバを用いて構成され、前記リングファイバの長手方向の少なくとも一方の端部を、前記裸線の長手方向に沿って切断し、リングファイバ円周方向において互いに異なる部分同士をラップさせ、該リングファイバの円筒状部分に比べて細くした加工端部を有するプラスチック光ファイバ構造体を提供する。
第2の発明は、前記加工端部が、該加工端部を締め付ける口金に内挿されている第1の発明のプラスチック光ファイバ構造体を提供する。
第3の発明は、前記加工端部は、前記リングファイバの端部を捻って形成されている第1又は2の発明のプラスチック光ファイバ構造体を提供する。
第4の発明は、前記裸線に比べて屈折率が小さい透明の接着剤を用いて、前記加工端部先端に湾曲凸面を有する光取り込み用突部を形成した第1〜3のいずれか1つの発明のプラスチック光ファイバ構造体を提供する。
第5の発明は、前記加工端部が、前記切断によってリングファイバの端部を複数に分割した分割片部を集合したものである第1〜4のいずれか1つの発明のプラスチック光ファイバ構造体を提供する。
第6の発明は、前記口金はテーパ状の内孔を有する第2記載のプラスチック光ファイバ構造体を提供する。
第7の発明は、円筒状の樹脂体の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線を円周方向全体に亘って複数並べたリングファイバの長手方向の少なくとも一方の端部を、前記裸線の長手方向に沿って切断し、リングファイバ円周方向において互いに異なる部分同士をラップさせ、該リングファイバの円筒状部分に比べて細くした加工端部を形成するプラスチック光ファイバ構造体の製造方法を提供する。
第8の発明は、前記切断を行ったリングファイバの端部を、前記加工端部を締め付ける口金に内挿する工程をさらに有する第7の発明のプラスチック光ファイバ構造体の製造方法を提供する。
第9の発明は、前記切断を行ったリングファイバの端部を捻る工程をさらに有する第7又は8の発明のプラスチック光ファイバ構造体の製造方法を提供する。
第10の発明は、前記裸線に比べて屈折率が小さい透明の接着剤を用いて、前記加工端部先端に湾曲凸面を有する光取り込み用突部を形成する第7〜9のいずれか1つの発明のプラスチック光ファイバ構造体の製造方法を提供する。
第11の発明は、前記切断によってリングファイバの端部を複数に分割した分割片部を集合する第7〜10のいずれか1つの発明のプラスチック光ファイバ構造体の製造方法を提供する。
第12の発明は、円筒状の樹脂体の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線を円周方向全体に亘って複数並べたリングファイバを用いて構成され、前記リングファイバの長手方向の少なくとも一方の端部を、前記裸線の長手方向に沿って切断して複数の分割片部に分割し、これら分割片部を分散させたプラスチック光ファイバ構造体を提供する。
第13の発明は、円筒状の樹脂体の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線を円周方向全体に亘って複数並べたリングファイバの長手方向の少なくとも一方の端部を、前記裸線の長手方向に沿って切断して複数の分割片部を形成し、これら分割片部を分散させるプラスチック光ファイバ構造体の製造方法を提供する。
第14の発明は、第12の発明のプラスチック光ファイバ構造体の前記入射側の端部に、複数の光源を分割片部に対応させて配置した照明装置を提供する。
第15の発明は、第1〜6のいずれか1つの発明のプラスチック光ファイバ構造体の前記入射側の端部に、光源を備えた照明装置を提供する。
第16の発明は、第1〜6、12のいずれか1つの発明のプラスチック光ファイバ構造体の内部に、前記出射側の端部に対向した観察部位の画像を伝送する画像伝送手段を備えたことを特徴とする内視鏡を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光源からプラスチック光ファイバ構造体への光入射効率を高めることができ、その結果、プラスチック光ファイバ構造体の長手方向において光源から光入射される端部とは反対側の端部からの出射光の光量増大を容易に実現できる。
また、プラスチック光ファイバ構造体の製造に用いるリングファイバは、円筒状の樹脂体の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線を円周方向全体に亘って複数並べた構成であるため、例えば押し出し成形によって容易に低コストで製造できる。前記リングファイバを用いたプラスチック光ファイバ構造体の製造は、プラスチック光ファイバ構造体の低コスト化にも有効に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1形態例を説明する図であって、(a)はリングファイバの端部を裸線長手方向に切断した状態を示す斜視図、(b)は加工端部の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2形態例を説明する図であって、(a)はリングファイバの端部を裸線長手方向に切断した状態を示す斜視図、(b)は加工端部の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明のプラスチック光ファイバ構造体の円筒状部分の長手方向に垂直な断面の一例を示す断面図である。
【図4】端部を加工する前のリングファイバの一例を示す長手方向に沿う断面図である。
【図5】図4のリングファイバの端部付近を示す断面図である。
【図6】プラスチック光ファイバ構造体の入射側の端部に光源を設けた状態(照明装置)の一例を示す模式図である。
【図7】(a)、(b)は、加工端部を口金に内挿した状態の例を示す図である。
【図8】図7の口金の一例(C形の口金)を示す斜視図である。
【図9】プラスチック光ファイバ構造体の加工端部に光取り込み用突部を突設した状態の一例を示す図である。
【図10】捻り加工を行った加工端部の一例を示すモデル図であって、(a)は加工端部を口金に内挿した状態の一例、(b)は口金に内挿せずに露出状態のまま使用される加工端部の一例を示す。
【図11】本発明の第3形態例を説明する図である。
【図12】図1に示すプラスチック光ファイバ構造体に画像取得手段及び画像伝送手段を設けた状態(内視鏡)の一例を示す図である。
【図13】図12に示すプラスチック光ファイバ構造体に画像取得手段及び画像伝送手段を設けた状態(内視鏡)の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1(b)、図2(b)に、本発明の第1、第2形態例のプラスチック光ファイバ構造体10における入射側の端部(後述の加工端部11)付近の形状を示す。
【0010】
図3、図4に示すように、本発明のプラスチック光ファイバ構造体10は、円筒状の樹脂体3の内部に、樹脂体3長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線2を円周方向全体に亘って複数並べた構造のリングファイバ1を用いて製造される。このプラスチック光ファイバ構造体10は、前記リングファイバ1の長手方向において一方の端部を、リングファイバ1の円筒状部分に比べて細く加工した構成になっている。この加工された端部を、以下、加工端部11とも言う。
【0011】
前記リングファイバ1は、その長手方向に垂直な断面がリング状となる形状であり、そのリング状となる樹脂体3の内部は中空部4となっている。
また、このリング状の樹脂体3の内部には複数の裸線2が設けられる。これらの裸線2は、リングファイバ1の長手方向(図1の左右方向)に沿って延びている。裸線2は、コアの周囲にコアより屈折率が低い材料からなる樹脂鞘が設けられたプラスチック光ファイバ(POF)である。各裸線2は、コアと樹脂鞘との屈折率差による光導波路として機能する。コア及び樹脂鞘はいずれも、プラスチック光ファイバ構造体10によって伝送される光を透過可能なプラスチックからなる。
【0012】
裸線2のコアを構成するプラスチックとしては、特に限定されるものではなく、従来のプラスチック光ファイバのコア用プラスチックを用いることができる。裸線用プラスチックとしては、例えばメチルメタクリレートの単独重合体(ポリメチルメタクリレート:PMMA)、メチルメチクリレートとアクリル酸エステルとの共重合体、メチルメタクリレートとスチレンとの共重合体、ポリカーボネート、スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0013】
裸線2の樹脂鞘を構成するプラスチックとしては、特に限定されるものではなく、従来のプラスチック光ファイバの樹脂鞘用プラスチックを用いることができる。樹脂鞘用プラスチックとしては、例えばビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロペンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとトリフルオロエチレンとヘキサフルオロアセトンの共重合体、フルオロアルキルメタクリレート樹脂、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体などが挙げられる。
【0014】
樹脂体3を構成する樹脂としてはポリエチレン、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンとエチルアクリレートとの共重合体、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリウレタン、スチレン/ブタジエンブロック共重合体からなるエラストマー、あるいはこの共重合体の二重結合の殆どを水素添加したもの、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロペンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロペンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体、シリコン樹脂等が挙げられる。
【0015】
リングファイバ1は、例えば押し出しによって、容易に低コストで製造できる。また、このリングファイバ1は、その使用者が手指で簡単に曲げることができる程度の可撓性を有している。
また、このリングファイバ1は刃物による切断を容易に行うことができ、例えば、その長手方向の端部を裸線長手方向に切断して複数に分割するといったことも容易に行える。
【0016】
図6に示すように、プラスチック光ファイバ構造体10は、長手方向に沿う一方の端部が入射側の端部7とされ、それとは反対側である他の一方の端部が出射側の端部5とされる。裸線2及び樹脂体3は、いずれもプラスチック光ファイバ構造体10の長手方向に沿って、入射側の端部7から出射側の端部5まで延びている。また、中空部4もプラスチック光ファイバ構造体10の長手方向に沿って延び、両端部(すなわち入射側の端部7及び出射側の端部5)で開口している。
プラスチック光ファイバ構造体10は、図6に示すように入射側の端部7に光源8を設けると、光源8の光が各裸線2に沿って伝送され、出射側の端部5から出射することが可能である。
【0017】
図5に示すように、従来のプラスチック光ファイバ構造体では、円筒状のリングファイバ1の長手方向の一方の端部を加工することなく、そのまま入射側の端部として使用する。このプラスチック光ファイバ構造体に光を入射するための光源8としてLED(発光ダイオード。LED:Light Emitting Diode)を使用する場合は、図5仮想線に示すように、LEDの発光面8aの中央部をプラスチック光ファイバ構造体(リングファイバ1)の入射側端部の中心軸線に位置合わせすることで、プラスチック光ファイバ構造体への光入射を均等化できる。
【0018】
これに対して本発明では、図6に示すように、プラスチック光ファイバ構造体10の長手方向の少なくとも一方の端部が、該プラスチック光ファイバ構造体10の円筒状部分に比べて細い加工端部11とされている。LEDは、一般に、その発光面の中央部からの出射光に比べて発光面外周部からの出射光の光強度が低い発光プロファイルを有する。このため、プラスチック光ファイバ構造体10は、図6に示すように、前記加工端部11に光源8としてLEDを設け、前記加工端部11を光源8からの出射光が入射される入射側端部7として使用するとき、光源8(LED)の発光面8aの中央部を加工端部11の中心軸線に位置決めすれば、光源8との間に高い光結合効率を確保できる。
【0019】
つまり、このプラスチック光ファイバ構造体10は、図5に例示したプラスチック光ファイバ構造体の円筒状の入射側端部に比べて、入射側端部7の各裸線2の端面を光源8の出射光軸に接近させて配置できるため、光源8との間に高い光結合効率を確保できる。したがって、このプラスチック光ファイバ構造体10は、図5に例示したプラスチック光ファイバ構造体に比べて、光源8からの光入射量を多く確保すること(高い光入射効率の確保)が容易である。その結果、このプラスチック光ファイバ構造体10は、図5に例示したプラスチック光ファイバ構造体に比べて、出射側の端面からの出射光の光量増大を容易に実現できる。
【0020】
LEDは例えば白熱電球等に比べて発光に伴う発熱が格段に小さい光源である。光源8としてLEDを採用することは、光源からの熱がプラスチック光ファイバ構造体に変形、機械的特性の劣化、光損失の増大といった影響を与えることを回避する点で好適である。
光源8としてLEDを採用することは、本発明に係る全ての実施形態に適用できる。
【0021】
本発明に係るプラスチック光ファイバ構造体10の加工端部11は、リングファイバ1の長手方向の端部(本明細書において単に端部とも言う)を、裸線2の長手方向に沿って切断し(切断工程)、リングファイバ1円周方向において互いに異なる部分同士をラップさせ、該リングファイバ1の円筒状部分6に比べて細くし(端部形成工程)て形成されるものである。
プラスチック光ファイバ構造体10は、製造容易で安価に得ることが可能なリングファイバ1を加工して製造できる。このため、プラスチック光ファイバ構造体10は低コストで得ることができる。
【0022】
また、この加工端部11は、例えば接着剤を用いて形状を固定する。前記端部形成工程は、加工端部11の形状を固定する形状固定工程を含む。
リングファイバ1円周方向において互いに異なる部分同士をラップさせた箇所の存在は、該ラップ箇所が接着剤によって接着固定されることで、加工端部11の形状固定、形状安定性の確保に有効に寄与する。
【0023】
図1(a)、図2(a)において、符号12は、リングファイバ1の端部を切断して形成した切断線である。図1(a)、図2(a)において、切断線12はリングファイバ1の端面1aから裸線2の長手方向に沿って延在形成されている。リングファイバ1の端部の切断(切断工程)は、リングファイバ1の端部の円周方向の1又は複数箇所を切り離して、不連続にする工程である。リングファイバ1の端部を裸線2の長手方向に沿って切断することは、裸線2の切断本数を少なく抑えるから、プラスチック光ファイバ構造体10の出射側端面からの出射光量の増大に有効に寄与する。
【0024】
リングファイバ1の端部を切断する手法としては、例えば刃物を用いた切断を採用できる。この他の切断手法としては、例えばレーザ切断等、プラスチック材の切断に採用される周知の方法を採用できる。
リングファイバ1はプラスチック製であるので、刃物を用いた加工も容易である。
【0025】
図1(a)、(b)に示すように、第1形態例の加工端部11(図中、符号11Aを付記する)は、リングファイバ1の端部の円周方向の1箇所のみを裸線2の長手方向に沿って切断し、前記端部をリングファイバ1の軸線(円筒状部分6の軸線)を中心に巻いて、円筒状部分6から延出する先細りのテーパ状に成形したもの(テーパ状巻き上げ部)である。また、この加工端部11Aは、例えば接着剤を用いて形状を固定する。この加工端部11Aには、リングファイバ1円周方向において互いに異なる部分同士をラップさせた箇所が存在する。
【0026】
図1(b)に例示した加工端部11Aは、その先端において、リングファイバ1の端部のうち、該端部の切断によって形成された一対の切断面の一方からリングファイバ1円周方向において3分の1程度の範囲を、他方の切断面が位置する円周方向端部から内面側に挿入した構成になっている。
加工端部11Aにおいては、リングファイバ1の端部のうち、前記他方の切断面が位置する円周方向端部(巻回外側端部)から内面側に挿入した部分(挿入ラップ部)が、その外側に位置する部分と重なり合う(ラップする)。但し、加工端部11Aにおいて、リングファイバ1の端部のうち、前記挿入ラップ部の大きさは適宜変更可能である。
【0027】
図2(a)、(b)に示す、第2形態例の加工端部11(図中、符号11Bを付記する)は、リングファイバ1の端部を、その円周方向の複数箇所を裸線2の長手方向に沿って切断して複数(図示例では4つ)の分割片部13に分割し(切断工程)、これら分割片部13を集合し接着剤を用いて形状を固定したものである。各分割片部13の端面には複数本の裸線2の端面が露出している。
【0028】
この加工端部11B(分割片集合端部)も、リングファイバ1の円筒状部分6から延出する先細りのテーパ状に成形して形成されている。また、加工端部11Bでは、リングファイバ1端部の切断によって形成された隣り合う分割片部13について、互いにラップさせた部分を確保している。
【0029】
加工端部11の形状を固定するための手法は、接着剤による接着固定に限定されない。
例えば、切断工程を行ったリングファイバ1端部の複数箇所あるいは全体を加熱して、前記リングファイバ1端部の部分同士のラップ箇所を熱溶着するといった手法も採用可能である。
また、図7(a)に示すように、切断工程を行ったリングファイバ1端部を、リングファイバ1の円筒状部分6の外径よりも内径が小さいリング状の口金14に圧入して、加工端部11の形状を固定することも可能である。口金14としては、例えば、図8に例示するC形の口金14a、あるいは周方向に不連続部が存在しないリング部材を採用できる。
【0030】
図7(a)に例示した口金14aの内側を貫通する内孔は、その軸線方向全長にわたって一定の内径を有する。但し、口金14としては、例えば図7(b)に示すように、テーパ状の内孔を有するものを用いても良い。図7(b)の口金14に、図中符号14bを付記する。
図7(b)に例示した口金14bの内側を貫通する内孔14cは、その軸線方向片端の開口部を形成するストレート孔部14dと、このストレート孔部14dの軸線方向片端から先細りに形成されたテーパ孔部14eとからなる。ストレート孔部14dは、リングファイバ1の円筒状部分6の外径よりも若干小さい内径に形成されている。この口金14bの場合は、切断工程を行ったリングファイバ1端部を、ストレート孔部14d側から内孔14cに圧入することで、リングファイバ1端部を締め付けることができ、その結果、加工端部11の形状を固定できる。
【0031】
なお、テーパ状の内孔を有する口金は、C形の口金、周方向に不連続部が存在しないリング部材のいずれであっても良い。また、口金としては、テーパ孔部によって内孔全体が形成されている構成、テーパ孔部の他に、内孔の一部として、リングファイバ1の円筒状部分6の外径と同等あるいは若干大きい内径に形成され加工端部11の締め付けに寄与しない部分を有する構成等も採用可能である。
【0032】
図7(a)、(b)の形態例では、切断工程を行ったリングファイバ1端部を口金14に圧入(圧入工程)して締め付けることで、前記加工端部11が、該加工端部11を締め付ける口金14に内挿された状態となる。口金14は、加工端部11の形状を固定し、形状を安定に保つ機能を果たす。
切断工程を行った後、接着剤を用いた接着固定等による形状固定前のリングファイバ1端部を口金14に圧入する場合、前記口金14は、リングファイバ1端部を締め付けて目的形状の加工端部11を形成し、かつ該加工端部11の形状を固定する機能を果たす。
【0033】
この場合、加工端部11は、口金の内孔のうち加工端部を締め付ける部分(以下、締め付け孔部とも言う)の内面に沿う形状(外形)に形成される。
例えば図7(a)に例示した口金14aのように、口金14として、内孔の締め付け孔部がその軸線方向全長にわたって内径一定になっているものを用れば、加工端部11はその軸線方向に一定の断面形状に形成される。
図7(b)の口金14bのように、前記締め付け孔部として機能するストレート孔部14d及びテーパ孔部14eを有する口金を用いた場合は、加工端部11のうちストレート孔部14dに内挿されている部分はその軸線方向に一定の断面形状に形成され、テーパ孔部14eに内挿されている部分は先細りのテーパ状に形成される。
【0034】
口金14に圧入するリングファイバ1端部は、切断工程の完了後に接着剤を用いた接着固定等によって形状を固定した加工端部11の状態であっても良い。
なお、切断工程を行ったリングファイバ1端部を口金14に圧入する圧入工程は、切断を行ったリングファイバの端部を、前記加工端部を締め付ける口金に内挿する工程に相当する。
【0035】
図9は、加工端部11の先端に、接着剤を用いて外観ドーム状の光取り込み用突部15を突設した形態例を示す。この光取り込み用突部15は湾曲凸面を形成する。
接着剤としては、リングファイバ1の裸線2に比べて屈折率が小さく、硬化状態において透明なものを採用する。光取り込み用突部15は、光源8から出射された光の加工端部11に対する結合効率を高める機能を果たす。したがって、加工端部11に前記光取り込み用突部15を突設した構成であれば、光源8からプラスチック光ファイバ構造体への光入射量の増大を一層容易に実現できる。
【0036】
光取り込み用突部15は、例えば、加工端部11の形状固定用の接着剤を加工端部11先端に肉盛りして形成される。
また、図9では、プラスチック光ファイバ構造体の加工端部11を口金14に内挿し、口金14と加工端部11とを接着剤を用いて接着固定している。光取り込み用突部15は、口金14と加工端部11との接着固定用の接着剤を加工端部11先端に肉盛りして形成しても良い。口金14と加工端部11との接着固定用の接着剤は、加工端部11の形状固定用の接着剤と同じものを用いても良い。
【0037】
なお、前記口金14は省略可能である。本発明は、図9に例示したプラスチック光ファイバ構造体から口金を省略した構成も含む。
【0038】
入射側端部7が加工端部11であるプラスチック光ファイバ構造体10は、上述したように、入射側端部7(加工端部11)に光源8を設け、裸線2に光源8からの光が入射するように構成することによって照明装置9(図6参照)として用いることができる。
光源8は、その発光面8aを加工端部11の先端面に対面させて配置される。また、光源8は、発光面8aの中央部をプラスチック光ファイバ構造体10の加工端部11の軸線の延長上に位置合わせし、光源8の出射光の光軸を加工端部11の軸線に概ね一致させる。この構成により、この照明装置は、光源8からの出射光に加工端部11に対する高い結合効率を確保でき、プラスチック光ファイバ構造体10の入射側端部からの入射光量及び出射側端部からの出射光量の増大を容易に実現できる。
【0039】
図10(a)、(b)に示すように、プラスチック光ファイバ構造体10の加工端部11は、その軸線回り方向に捻りを与えた構成であっても良い。図10の加工端部11に符号11Cを付記する。この加工端部11Cは、切断工程を行ったリングファイバ1の端部を捻ることで、リングファイバ1の円筒状部分6に比べて細くし、さらに、例えば接着剤を用いた接着固定等の形状固定工程を行いその形状を固定することで形成される。切断工程を行ったリングファイバ1の端部を捻ることは、加工端部11をリングファイバ1の円筒状部分6に比べて細く形成することを容易にする。
【0040】
図10(a)は、加工端部11Cを口金14に内挿した構成の一例、図10(b)は口金14に内挿せずに露出状態のまま使用される加工端部11Cの一例を示す。
図10(a)では、口金14として図8に例示したC形の口金14aを使用した構成を例示したが、口金としてはこれに限定されず、本明細書にて既に説明した構成のものを適宜選択使用できる。
また、図10(a)、(b)では、加工端部11C先端に光取り込み用突部15を突設した構成を例示しているが、本発明は、加工端部11C先端に光取り込み用突部15を設けない構成も含む。
【0041】
図11は、本発明の第3形態例のプラスチック光ファイバ構造体10Aにおける入射側の端部7A付近の形状を示す。
このプラスチック光ファイバ構造体10Aの入射側端部7Aは、リングファイバ1の端部をその円周方向において複数に分割し、分散させたものである。
前記入射側端部7Aは、例えば図2(a)に例示したようにリングファイバ1の端部を、その円周方向の複数箇所を裸線2の長手方向に沿って切断して複数(図示例では4つ)の分割片部13に分割し(切断工程)、これら分割片部13を分散させて形成される。複数の分割片部13はリングファイバ1の円筒状部分6から放射状に分散し、各分割片部13の先端部を互いに離隔させる。各分割片部13の端面には複数本の裸線2の端面が露出している。
【0042】
図11に示すように、前記入射側端部7Aは、該入射側端部7Aに設けた形状固定部材16に各分割片部13を接着剤を用いた接着固定等によって固定して、各分割片部13の先端部が互いに離隔した状態を保っても良い。
入射側端部7Aの複数の分割片部13の先端部の位置を固定して、各分割片部13の先端部が互いに離隔した状態を保つための手法(分割片部固定方法)としては、前記形状固定部材16に分割片部13を固定する方法に限定されない。分割片部固定方法としては、例えば、入射側端部7Aの全ての分割片部13を一括被覆するモールド樹脂部の形成等も採用可能である。
【0043】
図11に示すように、前記プラスチック光ファイバ構造体10Aは、複数の光源8をそれぞれ分割片部13に対応させて設け、裸線2に光源8からの光が入射するように構成することによって照明装置9Aとして用いることができる。
光源8は、その発光面8aを分割片部13の先端面に対面させて配置される。また、光源8は、その発光面8aの中央部を、分割片部13の先端面の中央部に位置合わせする。これにより、この照明装置は、光源8からの出射光に分割片部13に対する高い結合効率を確保でき、プラスチック光ファイバ構造体10Aの入射側端部からの入射光量及び出射側端部からの出射光量の増大を容易に実現できる。
【0044】
このプラスチック光ファイバ構造体10Aにあっては、各分割片部13に対応して設けられている光源8からの出射光と分割片部13先端面に露出するプラスチック光ファイバの裸線2との光結合効率を高めるために、各分割片部13の先端面に、透明樹脂(接着剤等)を用いて外観ドーム状の光取り込み用突部を形成しても良い。
【0045】
上述の各形態例のプラスチック光ファイバ構造体は、出射側の端部5を観察部位に対向させたときに当該観察部位から画像を伝送する画像伝送手段を設けることにより、内視鏡等の観察装置として応用することもできる。
本形態例の内視鏡によれば、画像伝送手段をプラスチック光ファイバ構造体の円筒状部分6の内部に設けることにより、画像伝送手段の周囲の各裸線2から光を出射して観察部位を照明し、得られた画像を画像伝送手段により内視鏡の操作側に伝送することができるので、好ましい。
【0046】
図12は、図6に例示した照明装置9のプラスチック光ファイバ構造体10の出射側端部5に画像伝送手段を設けた構成(観察装置)の例を示す。また、図13は、図11に例示した照明装置9Aのプラスチック光ファイバ構造体10Aの出射側端部5に画像伝送手段を設けた構成(観察装置)の例を示す。
図12、図13において、プラスチック光ファイバ構造体10Aの入射側端部7、7Aには光源8が設けられている。
【0047】
図12、図13に示す例では、画像伝送手段21の先端に画像取得手段22が設けられ、画像取得手段22の端面23が観察部位に対向するように構成されている。
本形態例の内視鏡等の観察装置において、画像取得手段22が観察部位の画像を取得するための構成で、画像伝送手段21が観察部位の画像を伝送するための構成であれば、具体的な手段は、特に限定なく採用可能である。例えば、画像伝送手段21がイメージファイバである場合には、画像取得手段22として対物レンズを用いることができる。また、画像伝送手段21が電気導線である場合には、CCD等の撮像素子22を先端に設けて、画像を電気信号として伝送することも可能である。
さらにプラスチック光ファイバ構造体10は、その中空部4(図3参照)からガスや液体などの薬品を注入する注入手段や、観察部位を操作する機械的手段などの各種手段を観察部位に到達させるために用いることも可能である。
【0048】
図12、図13において、イメージファイバ、電気導線といった線状の画像伝送手段21は、プラスチック光ファイバ構造体10の出射側端部5と入射側端部7との間の途中部に形成した開口部16に通して、プラスチック光ファイバ構造体10の円筒状部分6内側から該円筒状部分6外側へ延出されている。
前記開口部16は、プラスチック光ファイバ構造体10の円筒状部分6をその長手方向、すなわち裸線2長手方向に沿って切断して形成して形成されている。この開口部16は、その形成の際の裸線2の切断本数を少なく抑えることができるため、出射側端部からの出射光量をより多く確保する点で好ましい。
【0049】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明のプラスチック光ファイバ構造体は、樹脂体3が外部に露出されたまま使用することもできる。また、プラスチック光ファイバ構造体の外側に別の被覆やチューブなどを設けることも可能である。
また、プラスチック光ファイバ構造体としては、その長手方向両方の端部を加工端部11としても良い。プラスチック光ファイバ構造体の出射側端部が加工端部であれば、狭隘な管路内等への挿入を円滑に行えるといった利点がある。
【符号の説明】
【0050】
1…リングファイバ、1a…(リングファイバの)端面、2…プラスチック光ファイバの裸線、3…樹脂体、4…中空部、5…(プラスチック光ファイバ構造体の)出射側の端部、6…(リングファイバ、プラスチック光ファイバ構造体の)円筒状部分、7、7A…(プラスチック光ファイバ構造体の)入射側の端部、8…光源、9、9A…照明装置、10、10A…プラスチック光ファイバ構造体、11、11A、11B、11C…加工端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の樹脂体の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線を円周方向全体に亘って複数並べたリングファイバを用いて構成され、前記リングファイバの長手方向の少なくとも一方の端部を、前記裸線の長手方向に沿って切断し、リングファイバ円周方向において互いに異なる部分同士をラップさせ、該リングファイバの円筒状部分に比べて細くした加工端部を有するプラスチック光ファイバ構造体。
【請求項2】
前記加工端部が、該加工端部を締め付ける口金に内挿されている請求項1に記載のプラスチック光ファイバ構造体。
【請求項3】
前記加工端部は、前記リングファイバの端部を捻って形成されている請求項1又は2に記載のプラスチック光ファイバ構造体。
【請求項4】
前記裸線に比べて屈折率が小さい透明の接着剤を用いて、前記加工端部先端に湾曲凸面を有する光取り込み用突部を形成した請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチック光ファイバ構造体。
【請求項5】
前記加工端部が、前記切断によってリングファイバの端部を複数に分割した分割片部を集合したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチック光ファイバ構造体。
【請求項6】
前記口金はテーパ状の内孔を有する請求項2記載のプラスチック光ファイバ構造体。
【請求項7】
円筒状の樹脂体の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線を円周方向全体に亘って複数並べたリングファイバの長手方向の少なくとも一方の端部を、前記裸線の長手方向に沿って切断し、リングファイバ円周方向において互いに異なる部分同士をラップさせ、該リングファイバの円筒状部分に比べて細くした加工端部を形成するプラスチック光ファイバ構造体の製造方法。
【請求項8】
前記切断を行ったリングファイバの端部を、前記加工端部を締め付ける口金に内挿する工程をさらに有する請求項7に記載のプラスチック光ファイバ構造体の製造方法。
【請求項9】
前記切断を行ったリングファイバの端部を捻る工程をさらに有する請求項7又は8に記載のプラスチック光ファイバ構造体の製造方法。
【請求項10】
前記裸線に比べて屈折率が小さい透明の接着剤を用いて、前記加工端部先端に湾曲凸面を有する光取り込み用突部を形成する請求項7〜9のいずれか1項に記載のプラスチック光ファイバ構造体の製造方法。
【請求項11】
前記切断によってリングファイバの端部を複数に分割した分割片部を集合する請求項7〜10のいずれか1項に記載のプラスチック光ファイバ構造体の製造方法。
【請求項12】
円筒状の樹脂体の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線を円周方向全体に亘って複数並べたリングファイバを用いて構成され、前記リングファイバの長手方向の少なくとも一方の端部を、前記裸線の長手方向に沿って切断して複数の分割片部に分割し、これら分割片部を分散させたプラスチック光ファイバ構造体。
【請求項13】
円筒状の樹脂体の内部に該樹脂体長手方向に沿うプラスチック光ファイバの裸線を円周方向全体に亘って複数並べたリングファイバの長手方向の少なくとも一方の端部を、前記裸線の長手方向に沿って切断して複数の分割片部を形成し、これら分割片部を分散させるプラスチック光ファイバ構造体の製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載のプラスチック光ファイバ構造体の前記入射側の端部に、複数の光源を分割片部に対応させて配置した照明装置。
【請求項15】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のプラスチック光ファイバ構造体の前記入射側の端部に、光源を備えた照明装置。
【請求項16】
請求項1〜6、12のいずれか1項に記載のプラスチック光ファイバ構造体の内部に、前記出射側の端部に対向した観察部位の画像を伝送する画像伝送手段を備えたことを特徴とする内視鏡。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−41025(P2013−41025A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176736(P2011−176736)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】