説明

プラットホーム端部用型枠およびプラットホーム端部の施工方法

【課題】工期短縮を図れて、施工誤差を抑えることができるプラットホーム端部用型枠およびプラットホーム端部の施工方法を提供する。
【解決手段】プラットホーム端部用の型枠10を、側面12と底面14とからなるL字状断面の型枠部材16と、この型枠部材16を側面12に垂直な方向Xおよび底面14に垂直な方向Yの二方向にそれぞれ移動自在に固定する基部材18とで構成するようにする。プラットホーム端部2の躯体天端4上に基部材18と型枠部材16の底面14を配置するとともに、型枠部材16の側面12をプラットホーム端部2の側面2a側に配置して、型枠部材16を必要に応じてX、Yの二方向に移動させて位置調整するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の駅などの軌道用車両乗降場において、乗降客が車両に乗降するために軌道に接して設けられるプラットホームを施工する際に用いるプラットホーム端部用型枠およびプラットホーム端部の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、新幹線の駅などのプラットホームの端部は、図8に示すように、基盤となる躯体天端4上に石材6を敷き詰めた笠石構造として構築される。このプラットホーム端部2の施工は、通常、端部側面に木製型枠を配置して、躯体天端4上にモルタルを打設し、この上面に石材6を接着することにより施工していた。
【0003】
このプラットホーム端部のような敷石構造の施工技術に関しては、例えば、特許文献1に示される敷石床構造およびその施工方法や、特許文献2に示される敷石の位置決め部材およびそれを用いた施工方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−33575号公報
【特許文献2】特開平8−260406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図9および図10に示すように、プラットホーム端部2の高さHおよびプラットホーム端部2の離れDは、通常、軌道8を基準とした規格値内に収めることが要請される。したがって、軌道工事が全て完了しないとプラットホーム端部の施工を開始できず、軌道工事が長引くと所定の工期を厳守することが難しくなるおそれがあった。
【0006】
また、上記の従来の木製型枠を用いた施工方法は、施工性と美観性に劣る上、軌道側に生じた施工誤差を吸収するための対応が難しいという問題があった。
【0007】
このため、工期短縮を図れるように、軌道敷設の完了を待たずしてプラットホーム端部を先行施工することが可能で、しかも、プラットホーム端部の高さおよびプラットホーム離れの施工誤差を微小(例えば10mm以下)に抑えて施工することができる技術の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、工期短縮を図れて、施工誤差を抑えることができるプラットホーム端部用型枠およびプラットホーム端部の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係るプラットホーム端部用型枠は、軌道に接して設けられるプラットホーム端部用の型枠であって、側面と底面とからなるL字状断面の型枠部材と、この型枠部材を側面に垂直な方向および底面に垂直な方向の二方向にそれぞれ移動自在に固定する基部材とからなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に係るプラットホーム端部用型枠は、上述した請求項1において、前記型枠部材の底面に、側面に垂直な方向に延びる長孔を設け、前記基部材と接続したボルトをこの長孔に通し、このボルトと底面とをナットで締結固定したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に係るプラットホーム端部用型枠は、上述した請求項2において、前記基部材は、ボルトが突設された平板からなり、前記型枠部材の底面の裏側に配置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項4に係るプラットホーム端部の施工方法は、上述した請求項1〜3のいずれか一つに記載のプラットホーム端部用型枠を用いてプラットホーム端部を施工する方法であって、プラットホーム端部の躯体天端上に前記基部材を固定して前記型枠部材の底面を配置するとともに、前記型枠部材の側面をプラットホーム端部の側面側に配置して、前記型枠部材を必要に応じて前記二方向に移動させて位置調整することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項5に係るプラットホーム端部の施工方法は、上述した請求項4において、軌道工事に先行して、前記型枠部材をプラットホーム端部に配置して、軌道工事後に前記型枠部材を必要に応じて前記二方向に移動させて、前記軌道からのプラットホーム端部の高さおよび前記軌道からのプラットホーム端部の離れを調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るプラットホーム端部用型枠によれば、軌道に接して設けられるプラットホーム端部用の型枠であって、側面と底面とからなるL字状断面の型枠部材と、この型枠部材を側面に垂直な方向および底面に垂直な方向の二方向にそれぞれ移動自在に固定する基部材とからなるので、この型枠を軌道敷設完了前に先行して施工して、軌道敷設完了後にプラットホーム端部の高さおよび離れの微調整を行うことにより、工事全体の工期短縮を図ることができ、かつ、プラットホーム端部の施工誤差を抑えることができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係るプラットホーム端部の施工方法によれば、上述したプラットホーム端部用型枠を用いてプラットホーム端部を施工する方法であって、プラットホーム端部の躯体天端上に前記基部材を固定して前記型枠部材の底面を配置するとともに、前記型枠部材の側面をプラットホーム端部の側面側に配置して、前記型枠部材を必要に応じて前記二方向に移動させて位置調整する。このため、型枠を軌道敷設完了前に先行して施工して、軌道敷設完了後にプラットホーム端部の高さおよび離れの微調整を行うことにより、工事全体の工期短縮を図ることができ、かつ、プラットホーム端部の施工誤差を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明に係るプラットホーム端部用型枠の実施例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に係るプラットホーム端部用型枠の実施例を示す斜視図である。
【図3】図3は、プラットホーム端部用型枠の設置状況を示す図である。
【図4】図4は、プラットホーム端部の設置状況を示す図である。
【図5】図5は、離れ方向の位置調整状況を示す図である。
【図6】図6は、高さ方向の位置調整状況を示す図である。
【図7】図7は、施工後のプラットホーム端部を示す断面図である。
【図8】図8は、プラットホーム端部の一例を示す概略斜視図である。
【図9】図9は、プラットホーム端部の高さの規格値の一例を示す断面図である。
【図10】図10は、プラットホーム端部の離れの規格値の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係るプラットホーム端部用型枠およびプラットホームの施工方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1および図2に示すように、本発明に係るプラットホーム端部用型枠10は、軌道に接して設けられるプラットホーム端部用の型枠であって、側面12と底面14とからなるL字状断面のアングル16(型枠部材)と、この底面14の裏側に配置した基部材18とからなる。
【0019】
アングル16の底面14には、軌道直角方向X(側面12に垂直な方向)に延びる長孔20が少なくとも一つ設けてあり、この長孔20には基部材18のボルト22の上側部分が挿通してある。ボルト22と底面14は、ワッシャ24を介してダブルナット26で挟み込んで締結固定される。なお、長孔20とボルト22を、アングル16の稜線28に沿う長尺方向(図1では紙面に垂直な方向)に間隔をあけて複数設けてもよい。
【0020】
アングル16の寸法、材質としては、例えば板厚1.5mm×30mm×150mm程度のステンレス材などの金属材を用いることができる。アングル16の長尺方向の長さは、例えば3m程度に構成してよい。
【0021】
基部材18は、上面にボルト22が突設された水平板30(平板)からなり、アングル16を軌道直角方向Xおよび高さ方向Y(底面14に垂直な方向)の二方向にそれぞれ移動自在に固定するためのものである。基部材18の水平板30は、図1に示すように、プラットホーム端部2の躯体天端4上面にボルト32で固定され、アングル16の跳ね上がりを防止している。
【0022】
このように、本発明のプラットホーム端部用型枠10は、位置の微調整が可能な構造であるので、この型枠10を軌道敷設完了前に先行してプラットホーム端部2に設置し、軌道敷設完了後に軌道からの高さおよび離れ位置の微調整を行うことにより、従来の木製型枠を用いる場合に比べて工事全体の工期短縮を図ることができ、かつ、プラットホーム端部2の施工誤差を抑えることができる。
【0023】
次に、本発明に係るプラットホーム端部10の施工方法を説明する。
【0024】
この施工方法は、プラットホーム端部用型枠10を用いてプラットホーム端部2を施工するものであり、図1に示すように、プラットホーム端部2の躯体天端4上に基部材18を固定してアングル16の底面14を躯体天端4上に配置するとともに、アングル16の側面12をプラットホーム端部2の側面2a側に配置して、アングル16を必要に応じてX、Yの二方向に移動させて位置調整するというものである。
【0025】
具体的には、図3および図4に示すように、軌道工事に先行して、プラットホーム端部用型枠10をプラットホーム端部2に設置する。この場合、建築限界測定定規等を用いて、予め設けてある軌道の基準墨に合わせて設置する。
【0026】
次に、軌道工事が完了して軌道の位置が確定したら、軌道を基準としたプラットホーム端部2の高さおよび離れ位置が予め定めた施工目標値となるように、図5および図6に示すようにダブルナット26を緩めてアングル16をX、Yの二方向に移動させ、躯体天端4に固定してある基部材18からの相対位置を微調整し、ダブルナット26を再び締結固定する。こうすることで、軌道工事の完了を待たずしてプラットホーム端部2の工事、特に手間のかかる型枠設置に先行着手でき、工事全体の工期短縮を図ることが可能となる。
【0027】
続いて、図7に示すように、躯体天端4とアングル16の底面14間に無収縮モルタル34を充填するとともに、アングル16の底面14上に調整モルタル36を打設し、この上面に床パネル38を接着することでプラットホーム端部2が完成する。プラットホーム端部用型枠10は、最終的にプラットホーム端部2に埋め込まれることとなる。
【0028】
このように、本発明に係るプラットホーム端部の施工方法によれば、この型枠10を軌道敷設完了前に先行してプラットホーム端部2に設置し、軌道敷設完了後に高さおよび離れ位置の微調整を行うことにより、工事全体の工期短縮を図ることができ、かつ、プラットホーム端部2の施工誤差を抑えることができる。また、プラットホーム端部用型枠10は最終的に側面12が外部に露出した態様で埋め込まれるので、型枠10をステンレス等で構成すれば、金属調の光沢が得られて美観性の向上に寄与することができる。
【0029】
次に、本発明によるプラットホーム端部の施工管理(規格値管理)の一例について説明する。
【0030】
図8に示すように、軌道8の軌間が1435mmで、プラットホーム端部2の高さの設計値hが軌道レベルELより1250mmである場合には、施工にあたっては、この1250mmを絶対に超えてはならないため、例えば、この設計値−5mmを施工目標値と定め、その上下限の幅を±5mmと設定する。ゆえに、仕上がり寸法1245mm±5mm(1240〜1250mm)にて施工管理を実施する。
【0031】
また、図9に示すように、軌道8の軌間が1435mmで、プラットホーム端部2の離れの設計値dが軌道センターCLから1760mmである場合には、施工にあたっては、この1760mmを下回ってはならないため、例えば、この設計値±5mmを施工目標値と定め、その上下限の幅を±5mmと設定する。ゆえに、仕上がり寸法1765mm±5mm(1760〜1770mm)にて施工管理を実施する。
【0032】
規格値管理を行う場合には、まず、予め設けてある軌道基準墨を基準として、プラットホーム端部用型枠10をプラットホーム端部2に取り付ける。この場合、上記の施工目標値に近くなるように、型枠10の位置をある程度調整しておく。そして、軌道敷設完了後にアングル16をX、Yの二方向に動かし、上記の規格値(仕上がり寸法)を厳守する位置に微調整する。これにより、工期短縮および施工精度の向上の双方を図った施工を行うことができる。
【0033】
以上説明したように、本発明に係るプラットホーム端部用型枠によれば、軌道に接して設けられるプラットホーム端部用の型枠であって、側面と底面とからなるL字状断面の型枠部材と、この型枠部材を側面に垂直な方向および底面に垂直な方向の二方向にそれぞれ移動自在に固定する基部材とからなるので、この型枠を軌道敷設完了前に先行して施工して、軌道敷設完了後にプラットホーム端部の高さおよび離れの微調整を行うことにより、工事全体の工期短縮を図ることができ、かつ、プラットホーム端部の施工誤差を抑えることができる。
【0034】
また、本発明に係るプラットホーム端部の施工方法によれば、上述したプラットホーム端部用型枠を用いてプラットホーム端部を施工する方法であって、プラットホーム端部の躯体天端上に前記基部材を固定して前記型枠部材の底面を配置するとともに、前記型枠部材の側面をプラットホーム端部の側面側に配置して、前記型枠部材を必要に応じて前記二方向に移動させて位置調整する。このため、型枠を軌道敷設完了前に先行して施工して、軌道敷設完了後にプラットホーム端部の高さおよび離れの微調整を行うことにより、工事全体の工期短縮を図ることができ、かつ、プラットホーム端部の施工誤差を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係るプラットホーム端部用型枠およびプラットホーム端部の施工方法は、鉄道の駅などの軌道に接して設けられるプラットホーム端部の施工に有用であり、特に、工期短縮を図れて、施工誤差を抑えるのに適している。
【符号の説明】
【0036】
2 プラットホーム端部
2a プラットホーム端部の側面
4 躯体天端
10 プラットホーム端部用型枠
12 側面
14 底面
16 アングル(型枠部材)
18 基部材
20 長孔
22 ボルト
24 ワッシャ
26 ダブルナット
28 稜線
30 水平板(平板)
32 ボルト
34 無収縮モルタル
36 調整モルタル
38 床パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に接して設けられるプラットホーム端部用の型枠であって、
側面と底面とからなるL字状断面の型枠部材と、この型枠部材を側面に垂直な方向および底面に垂直な方向の二方向にそれぞれ移動自在に固定する基部材とからなることを特徴とするプラットホーム端部用型枠。
【請求項2】
前記型枠部材の底面に、側面に垂直な方向に延びる長孔を設け、前記基部材と接続したボルトをこの長孔に通し、このボルトと底面とをナットで締結固定したことを特徴とする請求項1に記載のプラットホーム端部用型枠。
【請求項3】
前記基部材は、ボルトが突設された平板からなり、前記型枠部材の底面の裏側に配置されることを特徴とする請求項2に記載のプラットホーム端部用型枠。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載のプラットホーム端部用型枠を用いてプラットホーム端部を施工する方法であって、
プラットホーム端部の躯体天端上に前記基部材を固定して前記型枠部材の底面を配置するとともに、前記型枠部材の側面をプラットホーム端部の側面側に配置して、前記型枠部材を必要に応じて前記二方向に移動させて位置調整することを特徴とするプラットホーム端部の施工方法。
【請求項5】
軌道工事に先行して、前記型枠部材をプラットホーム端部に配置して、軌道工事後に前記型枠部材を必要に応じて前記二方向に移動させて、前記軌道からのプラットホーム端部の高さおよび前記軌道からのプラットホーム端部の離れを調整することを特徴とする請求項4に記載のプラットホーム端部の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−36646(P2012−36646A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178025(P2010−178025)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【Fターム(参考)】