説明

ポンプ装置

【課題】 給水量不足あるいは給水圧力不足に陥ることなく推定末端圧力一定制御を行うことのできるポンプ装置を提供する。
【解決手段】 ポンプ310と、吐出圧力を検出する圧力検出手段323と、電動機210と、末端圧力を一定に調節するためポンプ310の吐出流量に対応する吐出圧力の関係を、最低必要流量に対応する最低回転速度Nbと最大必要流量に対応する最高回転速度Nmaxとの間について求める推定末端圧力一定制御用演算部15と、実際の吐出圧力が求められた吐出圧力になるように、電動機210の回転速度を制御する回転速度制御手段13とを備え、推定末端圧力一定制御用演算部15は、最高回転速度Nmaxを、最大必要流量がポンプ310の運転中に大きい方向に変化したときは大きくなった最大流量に応じて再演算するように構成され、最高回転速度Nmaxは予め設定されたスケジュールに従って初期化されるポンプ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関し、特に、使用最高回転速度が比較的低い場合でも安定した推定末端圧力一定制御の可能なポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、家庭に給水を行うために、受水槽に蓄えた水や井戸水を供給するのにポンプを使用して、供給水量や吐出圧力を検出して、それらに基づいて自動的にポンプを発停する自動給水装置が多く用いられている。このような従来の自動給水装置はビルのような長い配管で、且つ高所にある末端に水を供給するための推定末端圧力一定制御を行っている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特公平4-39689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来のポンプ装置では、通常の流量よりも大流量に対して推定末端圧力制御がされる状態で運転されて、給水量不足あるいは給水圧力不足に陥るという問題があった。また、吸込み水位が変動すると給水圧力不足に陥るという問題があった。
【0005】
そこで第1の発明は、通常の流量よりも大流量を供給するという状態が生じた後でも給水量不足あるいは給水圧力不足に陥ることなく推定末端圧力一定制御を行うことのできるポンプ装置を提供することを目的とする。また、第2の発明は、吸込み水位が変動しても圧力不足に陥らない安定した推定末端圧力一定制御を行うことのできるポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明によるポンプ装置は、例えば、図3に示すように、流体を昇圧し吐出するポンプ310と;ポンプ310の吐出圧力を検出する圧力検出手段323と;ポンプ310を駆動する電動機210と;前記昇圧された流体の供給先の末端圧力をポンプ310の吐出流量に拘わらずほぼ一定に調節するための推定末端圧力一定制御用演算部15であって、前記末端圧力をほぼ一定に調節するためのポンプ310の吐出流量に対応する吐出圧力の関係を(例えば図4参照)、最低必要流量に対応するポンプ310の最低回転速度Nbと最大必要流量に対応するポンプ310の最高回転速度Nmaxとの間について演算して求める推定末端圧力一定制御用演算部15と;実際の必要流量に対応して、前記検出される吐出圧力が前記演算で求められた関係に従った吐出圧力になるように、電動機210の回転速度を制御する回転速度制御手段13とを備え;推定末端圧力一定制御用演算部15は、最高回転速度Nmaxを前記供給先で必要とする最大必要流量がポンプ310の運転中に大きい方向に変化したときは該大きくなった最大流量に応じて再演算する(例えば図6、ステップS10)ように構成され、最高回転速度Nmaxは予め設定されたスケジュールに従って初期化されるように構成される。
【0007】
流量は典型的にはポンプの回転速度と吐出圧力から該ポンプ特性によって定まるもので代用する。
【0008】
このように構成すると、推定末端圧力一定制御用演算部15は、最高回転速度Nmaxを前記供給先で必要とする最大必要流量がポンプ310の運転中に大きい方向に変化したときは該大きくなった最大流量に応じて再演算するように構成され、最高回転速度は予め設定されたスケジュールに従って初期化されるように構成されるので、通常の流量よりも大流量に対して推定末端圧力制御がされる状態が長期間継続するのを回避することができる。
【0009】
また、上記目的を達成するため、請求項2にかかる発明によるポンプ装置は、例えば、図3に示すように、流体を昇圧し吐出するポンプ310と;ポンプ310の吐出圧力を検出する圧力検出手段323と;ポンプ310を駆動する電動機210と;前記昇圧された流体の供給先の末端圧力をポンプ310の吐出流量に拘わらずほぼ一定に調節するための推定末端圧力一定制御用演算部15であって、前記末端圧力をほぼ一定に調節するためのポンプ310の吐出流量に対応する吐出圧力の関係を(例えば図4参照)、最低必要流量に対応する前記ポンプの最低回転速度Nbと最大必要流量に対応するポンプ310の最高回転速度Nmaxとの間について演算して求める推定末端圧力一定制御用演算部15と;実際の必要流量に対応して、前記検出される吐出圧力が前記演算で求められた関係に従った吐出圧力になるように、電動機210の回転速度を制御する回転速度制御手段13とを備え;推定末端圧力一定制御用演算部15は、前記必要流量と吐出圧力との関係を、ポンプ310の想定される最高吸込水位に対して演算して求める(例えば図7(b))。
【0010】
このように構成すると、推定末端圧力一定制御用演算部は、前記必要流量と吐出圧力との関係を、ポンプの想定される最高吸込水位に対して演算して求めるので、吸込み水位が変化しても、ポンプの水量が低下することなく運転することができる。
【0011】
また請求項3に記載のように、請求項2に記載のポンプ装置では、推定末端圧力一定制御用演算部15は、最高回転速度Nmaxを前記供給先で必要とする最大必要流量がポンプ310の運転中に大きい方向に変化したときは該大きくなった最大流量に応じて再演算するように構成され、最高回転速度Nmaxは予め設定されたスケジュールに従って初期化されるように構成されてもよい。
【0012】
また請求項4に記載のように、請求項1又は請求項3に記載のポンプ装置では、前記スケジュールは、第1の初期化から第1の所定の期間経過後第2の所定期間の間に前記ポンプが停止したときに前記第1の初期化の次の第2の初期化を行い、前記第2の所定期間の経過までに前記ポンプが停止しないときは、前記ポンプが運転中であっても強制的に初期化を行うものであるようにしてもよい。以後同様に、前記第2の初期化から前記第1の所定期間経過後第2の所定期間の間に前記ポンプが停止したときに前記第2の初期化(第1の初期化)の次の第3の初期化(第2の初期化)を行い、前記第2の所定期間の経過までに前記ポンプが停止しないときは、前記ポンプが運転中であっても強制的に初期化を行うという操作を繰り返す。
【0013】
第1の所定の期間は、20分以上4ヶ月以下、好ましくは1時間以上1ヶ月以下、さらに好ましくは9日以上19日以下であり、典型的には13日間程度とするとよい。また、第2の所定期間は、10分以上2ヶ月以下、好ましくは30分以上15日以下、さらに好ましくは2日以上6日以下であり、典型的には4日間程度とするとよい。
前記典型的な期間に設定した場合、例えば毎日必ず1回は発停を行うポンプであれば、13日〜14日毎にNmaxの初期化を行う。毎日ではなく例えば5日前後の日程で発停を行うポンプであっても、最長で17日毎に初期化を行うということになる。
【0014】
また請求項5に記載のように、請求項1、請求項3及び請求項4のいずれか1項に記載のポンプ装置では、前記スケジュールは、前記ポンプの始動スイッチを運転に切り替えてから直ちに前記初期化を行った後第3の所定期間経過の後に前記初期化を行うものであるものとしてもよい。
【0015】
ここで「直ちに初期化を行う」とは運転スイッチに連動させて0秒で初期化する場合の他、1秒から数秒例えば5秒程度での初期化も含む概念である。また、第3の所定期間は1分以上1日以下、好ましくは30分以上5時間以下、さらに好ましくは1時間以上3時間以下とする。典型的には2時間である。運転スイッチの切り替え後に直ちに初期化することにより、例えば配管洗浄のために大流量を流した後で一旦ポンプを停止した後に洗浄用のバルブを閉とし、その後ポンプを始動してそのまま常用運転に入る場合に通常の推定末端圧力一定制御に直ちに入ることができ都合がよい。
【0016】
また第3の所定期間の後に初期化することにより、例えばポンプを一旦停止した後に配管洗浄のためのバルブを開閉し、大流量を流す操作をした後にバルブを閉としそのままポンプの運転を継続するような場合に対処できる。すなわち、第3の所定期間をポンプ洗浄に要する時間をカバーするような時間(好ましくは洗浄に要する時間よりも多少長めの時間)に設定しておけばよい。このようにすれば、通常の推定末端圧力一定制御を享受できない期間を最小限に抑えることができる。
【0017】
第3の所定時間があまり短いと、例えば1分より短いと、配管洗浄後ポンプを始動した後にバルブを閉める操作をするような場合、バルブ操作が完了しないうちに初期化され、結局Nmaxが高く設定された状態が継続してしまう。また、第3の所定時間があまり長いと、例えば1日を越えるような時間であると、吐出圧力一定制御即ち過剰な吐出圧力での運転、又はNmaxが非常に大きく設定された運転すなわち圧力、流量が所望よりも低い運転が長過ぎて、使用者に不便を強いることになる。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明のポンプ装置によれば、推定末端圧力一定制御用演算部15は、最高回転速度Nmaxを前記供給先で必要とする最大必要流量がポンプ310の運転中に大きい方向に変化したときは該大きくなった最大流量に応じて再演算するように構成され、最高回転速度は予め設定されたスケジュールに従って初期化されるように構成されるので、通常の流量よりも大流量に対して推定末端圧力制御がされる状態が長期間継続するのを回避することができるポンプ装置を提供することが可能となる。
【0019】
第2の発明のポンプ装置によれば、推定末端圧力一定制御用演算部は、前記必要流量と吐出圧力との関係を、ポンプの想定される最高吸込水位に対して演算して求めるので、吸込み水位が変化しても、ポンプの水量が低下することなく運転することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0021】
図1の平面図(a)と一部断面正面図(b)を参照して、本発明の実施の形態のポンプ装置としての給水装置201を説明する。本実施の形態では、ポンプとしてカスケードポンプ310を備える。カスケードポンプは摩擦ポンプの名前でも呼ばれるポンプであり、周縁に多数の溝を切った円板として形成された羽根車311を備える。このポンプは小型であるが、1個の羽根車で数段の渦巻ポンプに匹敵する揚程を得られ、小容量高揚程の目的に適している。また自吸性を有するので、家庭に給水を行うために受水槽に蓄えた水や井戸水を供給するのに適している。羽根車311はポンプケーシング312に収納されている。ポンプケーシング312の羽根車の軸の方向から見た正面には、ポンプケーシングカバー313がボルトで取り付けられており、これを取り外すと羽根車311にアクセスでき、保守点検が容易である。
【0022】
また自動給水装置201は、ポンプ310を駆動する電動機210を備える。ポンプ310は可変速運転を行なうことにより吐出圧を制御できるように、インバータ装置230を備える。インバータ装置230は、電動機210の近傍に配置されている。
【0023】
ポンプ吸込口326と羽根車313との間の流路には、チェッキ弁321が配置されている。
【0024】
羽根車311の下流側には、気水分離室112が設けられ、気水分離室112の下流側にフロースイッチ324、その近傍に圧力検出器(圧力センサ)(圧力発信器)323が配置されている。フロースイッチ324と圧力センサ323とは、気水分離室112の下流に設けられた吐出管325に配置されている。吐出管325の下流には、ポンプ装置の吐出口327が設けられている。吐出管325には圧力タンク322が接続されている。圧力タンク322の鉛直方向上部には呼水栓328が設けられている。圧力タンク322は、ポンプ310の吐出側で、フロースイッチ324よりも下流側に設けられている。
【0025】
以上の構成機器、ポンプ310、電動機210、インバータ装置230、圧力タンク322は、ユニットベース332の上に載置されボルトで固定されており、全体としてコンパクトにまとめられている。またこれらの機器全体を覆う、樹脂製のユニットカバー331を備える。
【0026】
図2のフローシートを参照して、ポンプ装置としての給水装置201の各構成機器につき、水の流れに則した配置と作用を説明する。ここで給水装置201は自動給水装置であり、水の使用量に応じてポンプ310を自動的に発停し、また運転速度を自動的に可変速する。
【0027】
図2において、地上Sから掘られた井戸Wellには水WがレベルLの所まで溜まっている。自動給水装置201は井戸Wellに近接して、地上Sに据え付けられている。
【0028】
吸込管309は給水装置201のポンプ310の吸込口326に接続されている。吸い込まれた水は、チェッキ弁321を経てポンプ310の羽根車311に吸い込まれる。チェッキ弁321は、ポンプ310が停止したときに、水が井戸Wellに逆流しないようにする逆止弁である。ポンプ310はカスケードポンプであるので、始動時に吸込管309中に空気があっても、それを排出して水Wを吸い上げることができるが、チェッキ弁321が設けられているので、発停ごとに空気を追い出す必要がない。
【0029】
フロースイッチ324は、ポンプ310の吐出水量を検出し、検出結果をインバータ装置230に送信し電動機210を発停する。圧力センサ323は、ポンプ310の吐出圧力を検出し、検出結果をインバータ装置230内のマイコン11に送信する。
【0030】
吐出管325に設けられた圧力タンク322は、耐圧容器内にゴム製のブラダが内蔵されており、吐出圧が上昇するとブラダの外側の空気を圧縮し水が加圧状態で貯留される。また、吐出圧が低下するにつれて、圧縮された空気が膨張し、貯留された水を吐出管325に押し出す。このようにして、ポンプ310が停止しても、しばらくは圧力タンク322から吐出管325に水が供給される。
【0031】
吐出管325の先には供給先のビル内配管325aが接続されている。配管325aには蛇口等の弁325c−1、325c−2、325c−3・・が、取り付けられている。配管325aの末端325bに弁325c−1がある。推定末端圧力はこの末端325bにおける圧力を推定したものである。これは、最高所及び/又は最長配管の末端であり、ポンプの目標吐出圧力を支配する部分である。ポンプの吐出圧力を所定の目標圧力に制御することにより、弁325c−1から所望の水量が放流されることを可能とする。
【0032】
図3のフロー図を参照して、本実施の形態の給水装置の制御装置及び作用につき説明する。図中信号ラインに(D)で示す信号はデジタル信号、(A)で示す信号はアナログ信号である。インバータ装置230(二点鎖線で表示)は、電動機としての直流ブラシレスモータ210に駆動電力を供給するIPM(IntelligentPower Module)232、IPM232をコントロールするDCBLコントローラ235、DCBLコントローラ235をコントロールするマイコン11を備える。
【0033】
マイコン11には、CPU12、CPU12で用いるプログラムを保存したメモリー17、外部からの入力信号を受け付け、また外部に信号を出力する中継装置であるI/O18を備える。
【0034】
圧力タンク322は、フロースイッチ324よりも下流側に設置されているので、ポンプ310が停止しているときに圧力タンク322から供給される水流をフロースイッチ324が検出することはない。
【0035】
DCBL(直流ブラシレス)コントローラ235は、直流ブラシレスモータ210から磁極信号のフィードバックを受けて、駆動電力の周波数を直流ブラシレスモータ210の回転速度に同期させ、モータ210の固定子に回転磁界を形成する。
【0036】
DCBL(直流ブラシレス)コントローラ235は、IPM232にPWM波形信号を送信する。IPM232は、その信号に対応した(と同波形の)電力を直流ブラシレスモータ210に供給する。
【0037】
圧力センサ323からの圧力信号は、圧力コントローラ部14に入力され、圧力コントローラ部14は速度コントローラ部13に速度設定値を送る。速度コントローラ部13は、モータ210の回転速度のフィードバックを受けて、設定速度と実際の運転速度との差に応じた制御信号(電圧信号Ve)をDCBLコントローラ235に出力する。
【0038】
IPM232は、先に説明したように電動機210に駆動電力を供給する。IPM232は、DCBL(直流ブラシレス)コントローラ235からPWM駆動波形信号を受信して、その信号波形と同じ波形の電力を生成する。いわば増幅器である。IPM232は、電力トランジスタを内蔵しており、そのゲートにオン/オフ信号が入力し、その信号と同じオン/オフの電力を出力する。電力トランジスタは、いわゆるスイッチング動作をする。
【0039】
IPM232では、DCBLコントローラ235からのオン・オフ信号と同じ周期で、電力トランジスタにスイッチング動作をさせる。この結果、オンとオフの発生周期が一定(t1)で、オンの継続時間WにW1、W2・・と広狭があり、オン/オフの広狭が周期Tで繰り返される、電圧が一定の直流電力が得られる。直流ではあるが、時間幅Wの狭い箇所は実効値が低く、広い箇所は高い、全体的に周期がTの交流電力と同等の電力となる。
【0040】
また、信号電圧Veが高いときは、時間幅Wが全体的に広くなるので、交流電力と見たときの全体の実効値が高くなる。このようにして、ポンプ310の負荷が大きくなっても回転速度が維持される。
【0041】
DCBLコントローラ235は、CPU12中の速度コントローラ部13から、電圧信号Veを受信する。電圧信号Veは、CPU12から出力されるときは、デジタル信号であるが、途中に備えられたD/A(デジタルアナログ変換器)20でアナログ信号(0〜5V)に変換されDCBLコントローラ235に入力する。CPU12はIC構造を有する。電圧信号Veの定めるデューティ比は、広狭の幅を1山ずつではなく1周期分につき1セットで定める。
【0042】
一方DCBLコントローラ235は、電動機210から磁極信号のフィードバックを受けて、出力信号であるPWM駆動波形信号の周期Tを調節する。電動機210の回転子(不図示)の回転速度と固定子(不図示)の回転磁界の回転速度が等しくないと、いわゆる脱調を起こすからである。
【0043】
例えば、ポンプ310の負荷が増大してモータ210の回転子の回転が落ちてくると、それはDCBLコントローラ235にフィードバックされて、固定子の回転磁界の回転速度も低下する。このときポンプの吐出圧力が低下するので、圧力コントローラ部14と速度コントローラ部13が働いて電圧信号Veが高くなり、先に説明したように、IPM232からの駆動電力の実効電圧が高くなり、電動機210の出力が増大しポンプ310の回転速度が維持され、吐出圧力が維持されることになる。
【0044】
DCBLコントローラ235の出力であるPWM駆動波形の周期Tが可変、すなわち周波数が可変であり、結局電動機210の回転速度が可変であることにより、ポンプ310の流量に応じて適正な吐出圧力を得るような制御が可能となる。
【0045】
CPU12は、速度コントローラ部13と、圧力コントローラ部14と、推定末端圧力一定制御用演算部15を含んで構成されている。さらに自動発停制御部分16も含む。推定末端圧力一定制御については、別図を参照して説明する。
【0046】
速度コントローラ部13には、圧力コントローラ部14からの設定速度信号(デジタル信号)が入力される。またDCBLコントローラ235から出力されたデジタルの速度信号がフィードバックされる。ここでいうデジタルの速度信号は、回転速度に比例した時間当たりパルス数のパルス出力である。
【0047】
速度コントローラ部13は、圧力コントローラ部14からの設定速度とフィードバックされた速度との差が0になるようにPI(比例積分)制御する。速度コントローラ部13には圧力コントローラ部14からの設定速度信号が入力する。圧力コントローラ部14には、ポンプ310の吐出圧力を検出した圧力発信器323からのアナログの圧力信号がA/D変換器19でデジタル信号に変換されて入力する。一方、設定圧力信号(デジタル信号)が、推定末端圧力一定制御用演算部15から入力する。
【0048】
圧力コントローラ部14は、ポンプ310の吐出圧力が設定圧力信号による設定圧力になるように、設定速度信号を調節する。すなわち、ポンプ吐出圧力が低下すると設定速度を高めるように調節する。これもPI制御である。
【0049】
速度コントローラ部13が設けられているので、ポンプ310の最高回転速度の上限を抑えるような設定が可能となる。すなわちオーバースピードを防止する制御が可能である。
【0050】
また、速度コントローラ部13を設けたので、そこに入力する設定速度信号を推定末端圧力一定制御用演算部で用いる回転速度信号として利用することができる。なお、DCBLコントローラ235からの速度信号を、上記目的に利用してもよい。推定末端圧力一定制御のための演算部15については、後述する。
【0051】
CPU12は自動発停制御部16を有しており、自動発停信号を外部から受信して、停止信号を速度コントローラ部13とDCBLコントローラ235に送信する。
【0052】
CPU12はマイコンの中核部品である。CPU12が演算するためのプログラムは、マイコン11内のメモリー17に保存されている。
【0053】
CPU12には、先に説明したように、圧力コントローラ部14、速度コントローラ部13、推定末端圧力一定制御用演算部15、自動発停制御部16があり、メモリー17に保存されたコントロールプログラム、演算プログラムによって、演算処理が行なわれる。DCBLコントローラ235は、ICで構成されており、各種の情報信号が入力される。
【0054】
図4のポンプ運転特性曲線図を参照して、推定末端圧力一定制御を説明する。横軸が水量であり、縦軸がヘッドすなわち揚程(以下適宜「圧力」ともいう)であり、曲線Nxはポンプ回転速度一定の運転特性である。ここで抵抗曲線Rは、ポンプ310から需要先末端迄の使用水量に応じた管路損失であり、水量Qが0の点を原点としたとき使用水量の略二乗に比例した曲線となっている。したがって、ポンプ310の吐出側の圧力を一定に制御するためには、ポンプ310の吐出側の圧力Paが一定となるようにポンプの回転速度をNo(後で説明するNmaxに対応)とNb’(締め切り圧がPaの性能曲線)との間で制御すればよい。このような制御をすると最小流量では末端の圧力は必要以上の圧力となる。一方、推定末端圧力一定制御においては使用水量に応じた(抵抗曲線Rで示される)管路損失を見込む必要があるため、この損失を考慮してポンプ回転速度をNoとNb(締め切り圧がPbの性能曲線)との間で制御する。中間の流量では、中間の回転速Na(後で説明するNに対応)で運転する。ポンプの吐出圧力は抵抗曲線Rに沿って変化する。
【0055】
先に説明した推定末端圧力一定制御用演算部15は、ポンプ310の回転速度Nに応じて抵抗曲線Rに乗るような設定圧力f(N)を演算で求めて、その設定値f(N)を圧力コントロ−ラ部14に設定値として与えるものである。
【0056】
本自動給水装置201は、水の使用量の下限を設定しておき、フロースイッチ324がその下限値を検出すると、マイコン11が作動して電動機210を、ひいてはポンプ310を停止する。その後水が使用されるとしばらくは圧力タンク322から水が供給されるが、圧力タンク322内の水が少なくなり、さらに圧力が低下すると、圧力センサ323がこれを検出して、マイコン11が電動機210を始動する。
【0057】
このとき、水量が低下して電動機210を停止する際に、一時的にポンプの運転速度を上昇させることにより吐出圧力を上昇させ、圧力タンク322内に十分な水が貯留されるようにするとよい。水の流量低下によるポンプ310の停止は、フロースイッチ323によらず、回転速度の下限値に基づいて行なってもよい。
【0058】
図5のポンプ運転特性曲線図を参照して、本発明の第1の実施の形態を説明する。まず推定末端圧力一定制御を説明する。図中、横軸が水量Qであり、縦軸がヘッドHあるいは圧力である。本実施の形態のポンプ装置は、制御目標圧力を制御することによって末端必要圧力がほぼ一定となるような制御をする制御装置を備える。
【0059】
本ポンプ装置では、最低必要流量(典型的には流量ゼロ「締めきり状態」)でのポンプの各回転速度における圧力値を記憶したデータテーブル(不図示)と、必要最大流量時に必要末端圧力を出しているときのポンプ回転速度と圧力値のデータ(図5中の点PA、Nmax1)を用いて各ポンプ回転速度毎の制御目標圧力を決定することができる。
または締め切り圧力と回転速度の関係式(典型的には2次方程式)の係数を記憶しておき、抵抗曲線算出に必要な値(例えばNb)をその方程式から計算してもよい。
なお、N−H座標(不図示)上で運転カーブSV=f(N)(SVは目標圧力)を規定するためには2点が定まればよいので、そのうちの1点が締め切り時である必要はない。要は運転カーブ上にあるべき点の中から2点を選べばよい。ただし、運転カーブが定まっていない段階で運転カーブ上にあるべき点を規定することができるのは、一般に最大必要流量の点と締め切り点だけである。それ以外の点では、運転カーブが未定義の段階では、流量と回転速度と吐出圧力の関係は未知だからである。逆にいえば、流量と回転速度と吐出圧力の関係を定めているのが運転カーブである。但し、末端に圧力計を設置して、その実測圧力がPbとなるように回転速度を調整することにより、中間の点でも運転カーブを規定するための点として採用することができる。
【0060】
すなわち、図中、締め切り状態で末端圧力Pb(回転速度Nb)の点と最大流量で配管損失を見込んだポンプ吐出圧力Pa(回転速度Nmax1)の点を結ぶ線である抵抗曲線R1を設定する。抵抗曲線はQ−H座標上でほぼ2次曲線である。その線を得るためにN−H(回転速度−揚程)座標上で、該2点を結ぶ1つの直線又は中間点で折れ曲がった2本の直線で近似してもよい。これをQ−H座標上に投影するとほぼ2次曲線となる。
【0061】
ここで、Nmax(必要最大水量時の必要回転速度)は設計計算によってあらかじめ求めておき入力することもできる。しかしながら、前もってわかっていなくても次のようにして本装置を運転、制御することができる。
【0062】
インバータ装置230は、不図示の最大回転速度記憶装置(不図示)を備える。ここに記憶された最大回転速度に基づいて抵抗曲線R1を演算し設定できる。前回最大回転速度記憶装置内に適切な最大回転速度のデータがない場合は、あらかじめ定められた一定時間はあらかじめ定められた一定の目標圧力を出力し、一定時間後一定目標圧力で運転していた時の最大回転速度を用いて制御目標圧力の適切な演算ができるように、推定末端圧力一定制御用演算部15は構成されている。
【0063】
ここで前回最大回転速度記憶装置内に適切な最大回転速度のデータがない場合とは電源が入れられた直後等で前回最大回転速度記憶装置内に最大回転速度のデータがない、またはノイズにより有りえないデータ(30000Hzとか、数字でないデータ)はあるが適切な最大回転速度のデータではない場合であり、このような場合に本装置を現場へ据え付け後、目標圧力=Paとして運転させ、その間の最大回転速度をNmaxとして、速度データが得られるようになったところで抵抗曲線R1を決定することができる。具体的には、適切な最大回転速度のデータがない期間、および現在の正常な回転速度が前回の最大回転速度を越え、且つ増加中である期間について目標圧力=Paとして運転させる。
【0064】
また、制御を抵抗曲線R1によるものに移した後でも最大回転速度Nmaxが変化したとき、それにともなって制御演算の基になる抵抗曲線R1を修正することができる。即ち、前回最大回転速度を越える正常な回転速度が入力されたときにその最大回転速度の値を推定末端圧力一定制御用演算部15に送り、ポンプの回転速度毎の制御目標圧力との関係を再設定することができる。
【0065】
以上を具体的に説明する。例えばポンプの実質的な最大回転速度は通常50Hz(又は60Hz)であるが使用者側の定格に応じて、制御の最大値は50Hz以下の適切な値が存在する。適切な値とはポンプを回転速度制御して給水し実際に回転速度が最大に上がった点と考えられる。
【0066】
ここで上記の前回最大回転速度を越える正常な回転速度が入力されたときにとは、例えば、ある50Hz以下のNmax(仮に45Hzとする)で抵抗曲線R1に従って制御目標圧力を演算しながら、運転していたとき、ポンプの回転速度が47Hzまで上がった、言いかえれば前回最大回転速度(Nmax=45Hz)を越える回転速度が入力された場合を言う。正常な回転速度とはここではたとえば50Hz以下(又は60Hz以下)のことで、ノイズなどによりデータが書き換わり制御上有り得ない異常な値(30000Hzとか、数字でないデータ)でない回転速度という意味であり、又、その最大回転速度の値(上記例では47Hz)を推定末端圧力一定制御用演算部15に送り、ポンプの回転速度毎の制御目標圧力との関係を再設定することができるとは、抵抗曲線R1を47Hzにより作り直し、その後の抵抗曲線R2にしたがって制御するということを意味する。
【0067】
回転速度が正常か否かは、例えば下記条件の両方が成立するときに回転速度が正常であると判定することができる。
(1)回転数指令値≦定格回転数(誘導電動機ポンプにおける50Hzもしくは60Hzに相当する値)
(2)圧力と回転数の関係が平衡状態もしくはそれに近い状態になっている。具体的には、プログラム内で次の式により状態識別する。(目標圧力(圧力コントローラ部のSV値)と吐出し圧力(圧力コントローラ部のPV値))の差の絶対値≦0.3m)
【0068】
回転速度は水の使われかたによって様々に変化する。水が最大につかわれた時に、最大回転速度となる。さらに水が使われて、今度は47Hzが49Hzになったときは、またその最大回転速度の値(49Hz)を推定末端圧力一定制御用演算部15に送り、ポンプの回転速度毎の制御目標圧力との関係(抵抗曲線R)を再設定する。ただし1000Hzのように正常でない回転速度となった時は再設定しない。
【0069】
しかしながら、需要先の配管は、その清掃等のため一部が取り外されて、ポンプが運転される場合がある。そのようなとき、配管抵抗は低下する。
【0070】
図5中、抵抗曲線R2がそのような場合であるとする。清掃が終わり配管が取り付けられても、推定末端圧力一定制御用演算部15は抵抗曲線R2により目標圧力を演算するので、ポンプは本来の欲しい回転速度よりも低い値となってしまう。
【0071】
そこで本発明の第1の実施の形態では、最高回転速度を予め設定されたスケジュールに従って初期化されるように構成されている。
図6のフロー図を参照して、第1の実施の形態をさらに詳しく説明する。
S1:まずポンプを始動する。
S2:ポンプをある初期回転速度Nで運転する。
S3:ポンプの運転回転速度Nに基づき推定末端圧力一定制御用演算部15で演算をして目標吐出圧力を求める。
目標吐出圧力を圧力コントローラ部14(図3参照)に設定圧力として入力する。
S4:一方圧力センサ323が、運転回転速度Nで運転されているポンプの吐出圧力を検出する。検出された圧力は圧力コントローラ部14に入力される。
S5:圧力コントローラ部14は、S3で求めた目標吐出圧力とS4で検出された実際の吐出圧力とを比較する。
S6:圧力コントローラ部14は、本実施の形態では比例積分(PI)制御調節器である。したがって、S5による比較に基づき、両者の差がゼロになる方向にポンプの回転速度の設定値を決めて速度コントローラ部13に出力する。例えば回転速度Nで運転されているポンプ吐出圧力が抵抗曲線R1で定まる目標圧力よりも低いときは、回転速度の設定値を上げる。このようにして、目標吐出圧力と検出された実際の吐出圧とが等しくなったところで安定した運転が継続される。
S7:先に説明したように、ポンプを現場へ据え付け後の初期状態では、推定末端圧力一定制御用演算部15は、目標圧力=Paとして運転させ、その間の最大回転速度をNmaxとして、速度データが得られるようになったところで抵抗曲線R1を決定する。
S8:本実施の形態のポンプ装置では、装置を据え付けて運転開始後、又は前回の初期化後、第1の所定期間としての13日間(約2週間)経過した後4日以内にポンプが停止したときに抵抗曲線R2の再設定、すなわち初期化を行う。また前記4日以内にポンプが停止しないときは、強制的に初期化を行うように構成されている。
前回の初期化から13日以内の停止であれば初期化はしない。したがって頻繁すぎる初期化を避けることができる。また13日経過後はポンプ停止時に初期化するので、運転中の初期化をさけることができ、需要者が水の使用中に水の流れ方が急変することを回避できる。また4日の間にポンプが停止しないときは、強制的に初期化するので、抵抗曲線が不自然なR2になっていたとしても、そこで本来の抵抗曲線R1に戻すことができる。
ステップS8では、ポンプ装置が運転継続中に初期化時期に至っているか否かを、上記のように判断する。
S9:初期化時期でなければ、ポンプ最大流量が過去の最大流量を越えたか否かを判断し、越えていなければ(S9がNo)、そのままの状態でポンプの運転を継続する(S2)。
S7:越えていれば(S9がYes)、新しい最大流量に基づき演算カーブ(例えばR2)を設定する。最大流量に基づき設定するとは、具体的には、その最大流量で配管損失を見込んだポンプ吐出圧力Paになるポンプ回転速度Nmax2に基づいてカーブR2を定めるということである。
【0072】
図7を参照して、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、吸込み水位が変化する用途に適したポンプ装置である。
例えば浅井戸ポンプでは、吸込み水位がかなりの幅、例えば12m幅(−8mから+4m)で変化しても運転が可能に設計されている。井戸の水位には季節変動があるからである。一般に春には水位が高く、秋口には水位が低くなる。
【0073】
図7(a)は、推定末端圧力一定制御用演算部15で、まず抵抗曲線R(Ps)が、吸込み水位がPsで設定されている場合を示す。抵抗曲線R(Ps)は、締め切り圧力Pb(回転速度Nb(Ps))の点と最大流量で圧力がPa(回転速度がNmax)の点との間に設定されている。Psは例えば秋口の井戸の水位が低い状態のものであるとする。
【0074】
次に春になり井戸の水位が上昇し、Psより高いPs’になったとする。線図の縦軸Pは吐出圧力を示すので、吸込み水位が上昇すれば性能曲線は図中上方に移動する。すなわち、Pb一定、Pa一定の下では、抵抗曲線Rは図中右方向に移動する。言い換えれば、抵抗曲線R(Ps’)は抵抗曲線R(Ps)よりも下方に位置するようになる。
【0075】
したがって井戸の水位が低い秋口には推定末端圧力は本来欲しい圧力であったものが、春になり井戸の水位が上昇しポンプの吸込み水位が高くなると、推定末端圧力が低い値に演算されることになる。すなわち、吸込み水位が上昇するにつれて、推定末端圧力一定制御の結果、ポンプの吐出圧力がかえって低下するという現象が起こる。ポンプの能力はあるにもかかわらず吐出圧力が低下する。また本来欲しい吐出水量が得られない。
【0076】
例えば、最大必要流量で運転したいときは推定末端圧力は(a)に示されるように、Paとなるべきである。すなわち、Nmax(Ps)の性能カーブと圧力Paの交点で運転されるべきである。ところが、抵抗曲線がR(Ps’)に移った結果、推定末端圧力はNmax(Ps)と抵抗曲線R(Ps’)との交点の圧力(Paよりも低い)となってしまう。このような制御がされて、結局本来の性能曲線Nmax(Ps)ではなく図中性能曲線N(<Nmax(Ps))と抵抗曲線R(Ps’)の交点の圧力、水量まで下がってしまう。
【0077】
本発明の第2の実施の形態では、(b)に示すように、当該ポンプ装置について想定される最高吸込み水位(例えば春先の水位である4m)に対して抵抗曲線Rを設定する。
このように構成すると、吸込み水位は低下するしかないので、図中性能曲線は下方に移動する。その結果、抵抗曲線Rは図中左方向、同一水量について言えば上方に移動する。このような移動の結果、吸込み水位が下降するにつれて、推定末端圧力一定制御の結果、ポンプの吐出圧力は欲しい圧力よりも高めになり、ポンプの能力があるにもかかわらず吐出圧力が低く運転されることがなく、また言い換えれば、本来欲しい吐出水量が得られないということがなくなる。吸込み圧力検出手段を用いずとも、上記のような制御が可能となる。
【0078】
図8のポンプ運転特性曲線図を参照して、本発明の第3の実施の形態を説明する。この実施の形態は、最高回転速度を予め設定されたスケジュールに従って初期化するが、吸込み圧力をポンプの想定される最高吸込水位にはしていない場合である。本図では縦軸をP(圧力)の代わりにH(揚程ヘッド)で表してあるが本質は変わらない。また図中運転カーブの設定をAutomaxと表示してある。また運転カーブ(Ps)は既に説明した抵抗曲線R(Ps)を意味する。
【0079】
(1)まず、(a)に示すように、吸込み圧力Psに対して運転カーブ(Ps)を設定する。運転カーブ(Ps)は、Nmax(Ps)のポンプ特性曲線とH=Paの直線(Q軸に平行)が交差した点1とNb(Ps)のポンプ特性曲線とH=Pbの直線(Q軸に平行)が交差した点2とを結ぶ曲線すなわち運転カーブ(Ps)となる。
(2)次に、(b)に示すように、吸込み圧力がPsからPs’へ上昇したとする。ここでPs<Ps’とする。前述のように、運転カーブは、Nmax(Ps’)のポンプ特性曲線とH=Paの直線(Q軸に平行)が交差した点1’とNb(Ps’)のポンプ特性曲線とH=Pbの直線(Q軸に平行)が交差した点2’を結ぶ曲線すなわち運転カーブ(Ps’)へシフトする。ここでは運転カーブ(Ps)を破線で、新しい運転カーブ(Ps’)を実線で表している。
(3)Nmax(Ps)のポンプ特性曲線とH=Paの直線(Q軸に平行)が交差した点が建物のバルブ最大開放時だったとすると、建物のバルブ最大開放のままであるにもかかわらず、運転カーブ(Ps)から運転カーブ(Ps’)へ運転カーブがシフトした結果圧力流量とも不足することになる。
(4)(3)で述べた問題を軽減するために、(c)(d)に示すように、Nmaxを初期化し、運転カーブの再設定を行う。Nmax(Ps)のポンプ特性曲線とH=Paの直線(Q軸に平行)が交差した点が建物のバルブ最大開放時だったとすると、Nmaxを初期化し運転カーブの再設定を行っている時もこの点以上右側へ動作点を持っていくことはできない。その時の回転数をNmax’とすると、Nmaxを初期化し運転カーブの再設定を行った結果得られる運転カーブ(再設定した運転カーブ(Ps’)の右端の点は、Nmax’(Ps’)のポンプ特性曲線とH=Paの直線(Q軸に平行)が交差した点3(=1)となる。なお、Nmax’(Ps’)のポンプ特性曲線とNmax(Ps)のポンプ特性曲線を同じQ−H座標上に描くと概ね重なり合う(Nmax’<Nmax)。一方、再設定した運転カーブ(Ps’)の左端の点は、Nb(Ps’)のポンプ特性曲線とH=Pbの直線(Q軸に平行)が交差した点のままである。これは初期化および運転カーブの再設定はNmaxに関しての作業であり、Nbに関しては再設定しない。すなわち、吸込み圧力Ps’時の締切り圧力がPbとなるような回転速度Nb’を求める作業を行わない。こうすることにより、吸込み圧力Ps’で締切り時の回転速度Nb’を求める必要がなくなり、したがって前回の初期化以来一度も締切り状態すなわちポンプ停止していない場合においても、運転カーブの再設定を行うことが可能となる。前回の初期化以来今回の初期化までの間に締切り状態すなわちポンプ停止があった場合は、その時の回転速度と吐出し圧力を用いて、その時の吸込み圧力(ほぼPs’であると考えて良い)において締切り圧力がPbとなるような回転速度Nb’を求め、そのNb’と前述のNmax’を用いて運転カーブを再設定しても良い。Nb’を求めるか求めないかに拘わらずすなわち上述のどちらの方法によっても、吸込み側に圧力センサを設置すること無しに、吸込み圧力の変動に起因する運転カーブのシフトを補正でき、使用者に不便を強いることのない運転カーブを再設定できるようになる。
【0080】
図9を参照して、第4の実施の形態を説明する。第1、第2の実施の形態では、ポンプを地上に据え付ける浅井戸ポンプ装置を想定して説明したが、本発明は深井戸ポンプ装置に適用することもできる。
【0081】
本実施の形態のポンプは水中モータポンプである。設置状態を(a)の系統図で説明する。水中モータポンプは吐出し管で井戸Well中に吊り下げられて据え付けられている。水中モータポンプは、その名前のように井戸Wellの水中に没している。したがって吸込み圧力は常に正圧である。したがって浅井戸ポンプでは吸込み圧力が10m(実用上は8m程度)を越えることができなかったのに対して、深井戸ポンプでは井戸の深さに事実上制限がない。
【0082】
地上には、制御装置を収納した地上ユニットが設置されている。地上ユニットには、その他、インバータ、圧力検出装置、流量検出装置等が収納されている。制御装置は推定末端圧力一定制御装置を含む。
【0083】
(b)の断面図を参照して、水中モータポンプの構造を説明する。水中モータポンプは、鉛直方向に配置された円筒状の外ケーシング内に中間ケーシングを備え、ケーシングの中心に軸芯が鉛直方向に配置された主軸と、その主軸に固定された複数の羽根車(図中5段)を備える。複数段の羽根車を備えるのは、深井戸ポンプの高揚程に対処するためである。羽根車よりも下方に、主軸を回転するモータが備えられている。羽根車よりも上方に吐出ケーシングが備えられ、(a)で説明した吐出し管に接続されている。
【0084】
このような構造の深井戸ポンプであっても第1、第2の実施の形態で説明したのと同様な推定末端圧力制御が可能である。該制御は先の実施の形態と同様であるので重複した説明は省略する。
【0085】
以上の実施の形態は、井戸ポンプの場合で説明したが、水道の本管に吸込み側を直結する、いわゆる直結型の給水ポンプにも適用できる。例えば需要側の配管の洗浄等で大流量が流れたような場合の初期化、あるいは想定される最高吸込み水位(吸込み圧力)に対して抵抗曲線を設定するのは有効である。但し、水道本管の圧力変動は井戸の場合の季節変動と違って周期が短いが、そのような周期に合わせた運用をすればよい。
【0086】
以上のように本発明の実施の形態では、ポンプを備える給水装置において、あらかじめポンプの回転速度毎の制御目標圧力を定め(あるいは回転速度より制御目標圧力を演算する関数を定め)回転速度の変化にともなって制御目標圧力を変化させる制御装置を備えたから、ポンプ吐出圧力一定で制御するようなエネルギー損失がない。
給水設備毎に個別に実測して制御を行うような労力と時間のかかる方法を必要としないで、配管末端圧力をほぼ一定に保つことができる。
また、必要以上に高い流量に基づいた抵抗曲線が設定されてしまった場合でも、スケジュールに従って初期化するので、適切な時期に正常な推定末端圧力制御に戻すことができる。
また、吸込み水位の変化に対応して、ポンプの性能をフルに発揮できる状態で推定末端圧力一定制御をすることができる。
【0087】
なお、本発明のポンプ装置は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、また図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態による給水装置の平面図及び正面図である。
【図2】本発明の実施の形態による給水装置を説明するフロー図である。
【図3】本発明の実施の形態による給水装置の制御装置及び作用につき説明するフロー図である。
【図4】推定末端圧力一定制御を説明するポンプの運転特性図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態のポンプ運転特性曲線図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態を説明するフロー図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態(吸込み水位が変化する用途に適したポンプ装置)を説明するポンプの運転特性図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態(吸込み水位は任意に決めて運転カーブの再設定を行うポンプ装置)を説明するポンプの運転特性図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態(深井戸ポンプ装置)を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0089】
11 マイコン
12 CPU
13 速度コントローラ部
14 圧力コントローラ部
15 推定末端圧力一定制御用演算部
16 自動発停制御部
17 メモリー
18 I/O
19 A/D
20 D/A
201 給水装置
210 電動機
211 電動機本体
230 インバータ装置
232 IPM素子
309 吸込管
310 ポンプ
311 羽根車
312 ポンプケーシング
313 ポンプケーシングカバー
321 チェッキ弁
322 圧力タンク
323 圧力センサ
324 フロースイッチ
325 吐出管
326 吸込口
327 吐出口
328 呼水栓
331 ユニットカバー
L レベル
S 地上
W 水
Well 井戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を昇圧し吐出するポンプと;
前記ポンプの吐出圧力を検出する圧力検出手段と;
前記ポンプを駆動する電動機と;
前記昇圧された流体の供給先の末端圧力を前記ポンプの吐出流量に拘わらずほぼ一定に調節するための推定末端圧力一定制御用演算部であって、前記末端圧力をほぼ一定に調節するための前記ポンプの吐出流量に対応する吐出圧力の関係を、最低必要流量に対応する前記ポンプの最低回転速度と最大必要流量に対応する前記ポンプの最高回転速度との間について演算して求める推定末端圧力一定制御用演算部と;
実際の必要流量に対応して、前記検出される吐出圧力が前記演算で求められた関係に従った吐出圧力になるように、前記電動機の回転速度を制御する回転速度制御手段とを備え;
前記推定末端圧力一定制御用演算部は、前記最高回転速度を前記供給先で必要とする最大必要流量が前記ポンプの運転中に大きい方向に変化したときは該大きくなった最大流量に応じて再演算するように構成され、前記最高回転速度は予め設定されたスケジュールに従って初期化されるように構成された;
ポンプ装置。
【請求項2】
流体を昇圧し吐出するポンプと;
前記ポンプの吐出圧力を検出する圧力検出手段と;
前記ポンプを駆動する電動機と;
前記昇圧された流体の供給先の末端圧力を前記ポンプの吐出流量に拘わらずほぼ一定に調節するための推定末端圧力一定制御用演算部であって、前記末端圧力をほぼ一定に調節するための前記ポンプの吐出流量に対応する吐出圧力の関係を、最低必要流量に対応する前記ポンプの最低回転速度と最大必要流量に対応する前記ポンプの最高回転速度との間について演算して求める推定末端圧力一定制御用演算部と;
実際の必要流量に対応して、前記検出される吐出圧力が前記演算で求められた関係に従った吐出圧力になるように、前記電動機の回転速度を制御する回転速度制御手段とを備え;
前記推定末端圧力一定制御用演算部は、前記必要流量と吐出圧力との関係を、前記ポンプの想定される最高吸込水位に対して演算して求める;
ポンプ装置。
【請求項3】
前記推定末端圧力一定制御用演算部は、前記最高回転速度を前記供給先で必要とする最大必要流量が前記ポンプの運転中に大きい方向に変化したときは該大きくなった最大流量に応じて再演算するように構成され、前記最高回転速度は予め設定されたスケジュールに従って初期化されるように構成された;
請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記スケジュールは、第1の初期化から第1の所定の期間経過後第2の所定期間の間に前記ポンプが停止したときに前記第1の初期化の次の第2の初期化を行い、前記第2の所定期間の経過までに前記ポンプが停止しないときは、前記ポンプが運転中であっても強制的に初期化を行うものである、請求項1又は請求項3に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記スケジュールは、前記ポンプの始動スイッチを運転に切り替えてから直ちに前記初期化を行った後第3の所定期間経過の後に前記初期化を行うものである、請求項1、請求項3および請求項4のいずれか1項に記載のポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−9749(P2006−9749A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190995(P2004−190995)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】