説明

マルチレベル変換装置

【課題】マルチレベル変換装置は、スイッチング時の電圧と電流の時間積分によるスイッチング損失の増大、高耐圧素子の使用による装置が大型化、高コスト化となる問題がある。
【解決手段】電圧指令値に基づいて生成された出力電圧レベル信号とコンデンサの電圧及び出力電流を入力してスイッチング状態を選択するスイッチング状態選択部と、選択されたスイッチング状態を入力してスイッチング状態の転流を選択する転流シーケンス選択部を設ける。転流シーケンス選択部は、直列接続されたスイッチング素子のオン・オフ状態変化時にスイッチング状態を遷移させる転流手段を備え、出力電圧レベルが0と−E相互間及び0と+E相互間での電圧切り替わり時に転流するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレベル変換装置に係わり、特に装置の大型化を抑制し、直列接続する素子を制御するための補助回路や制御装置が不要なマルチレベル変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マルチレベル変換装置は、非特許文献や特許文献1、2において公知となっている。
図5は、非特許文献のFig2で提案されているマルチレベル変換装置の構成図で、この変換装置は図6で示す電圧指令と、位相をずらした4つの三角波キャリア信号の比較を行うことでPWM変調を行い、その結果にしたがって各スイッチング素子を動作させることで単相の5レベル出力が得られる。
【0003】
双方向性のスイッチング素子を用いて構成される図5で示す回路では、スイッチング素子S1〜S12のうち、S5とS7、S6とS8、S9とS11、及びS10とS12は同じスイッチング状態になるように動作させる。また、S1とS2、S3とS4、S5・S7とS6・S8、及びS9・S11とS10・S12は互いに反転のスイッチング状態になるように動作させる。その動作は図6で示すパターンにて制御される。すなわち、Vtr1〜 Vtr4はPWMゲート信号を作成するためのキャリア信号で、Vtr1はS1とS2、 Vtr2 はS3とS4、Vtr3はS5・S6・S7・S8、及びVtr4はS9・S10・S11・S12のPWMゲート信号を作成する。
図5で示す回路を図6で示すように変調を行うと、C1〜C3のコンデンサ電圧は自動的にバランスが保たれることが、非特許文献の2ページ「Proposed concept」の項に記載されている。
【0004】
図7は非特許文献のFig3で提案されている他の例で、図5で示す回路でのコンデンサC2,C3を取り除いたものである。図7の回路におけるスイッチング素子のPWM制御は、図8で示すように電圧指令値と4つの三角波キャリア信号を比較し、その時刻における出力電圧レベルの信号を得ている。出力電圧レベルは、−2E,−E,0,E,2Eの5レベルとなっており、この出力電圧レベルに従ったスイッチングパターンを表1から選択する。
【0005】
【表1】

【0006】
5つの電圧レベルのうち、電圧レベル−E,0,Eにはそれぞれ2つのスイッチング状態(表1のV2とV3、V4とV5、V6とV7)が存在し、自由に選択が可能となっている。電圧レベル−E,Eの出力時には、電流がコンデンサC1を介して流れるため、その出力電流の大きさと方向にしたがってコンデンサC1の充放電が行われ、電圧が増加、または減少する。これにより、コンデンサ電圧と出力電流の方向を監視し、コンデンサ電圧が所望の値に近づくような適切なスイッチングパターンを選択することで、コンデンサC1の電圧値を制御することができる。C1のコンデンサ容量は図5で示すコンデンサC1〜C3の容量と同じでよいため、図5に比べて装置の小型化、低コスト化が可能となる。
また、図7の回路では、セル3,4としてスイッチング素子S5〜S12の8個用いているが、図9で示すようにS5〜S8の4個とすることも可能となっている。その場合、スイッチング素子には2倍の電圧がかかるため、高い耐電圧を持つ素子の使用が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4369425
【特許文献2】特許第4540714
【非特許文献】
【0008】
“Active-Neutral-Clamped(ANPC)Multilevel Converter Technology” ,Barbosa他EPE2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5の回路を、図6で示すPWM制御方法を用いて制御すると、C1〜C3の各コンデンサが充放電するエネルギーの平均値は等しくなる。そのため、各コンデンサの充放電による電圧変動量を等しくしようとすると、各コンデンサの容量Cが同じである必要があり、図5の回路ではコンデンサの数量分だけ装置が大きくなる問題がある。
ここで、コンデンサの容量C=I/(ΔV・f)で、I=電流ピーク値、ΔV=コンデンサ電圧変動許容値、f=キャリア周波数、
図7の回路では、各スイッチング素子にかかる電圧を全て同じにする場合、S5とS9,S6とS10,S7とS11及びS8とS12のスイッチング素子を2直列にしなければならず、出力電圧指令値の1周期に2回、電圧指令値の符号が変わるときに直列素子2つを同時にON→OFFまたはOFF→ONにする必要がある。2つの素子を同時にON/OFFする際、ゲート回路などの周辺回路やスイッチング素子の特性により、スイッチの切り替わるタイミングが僅かにずれることで、直列素子2つのうち片方の素子に大きな電圧がかかり、その素子に損失・ストレスが集中する可能性があってスイッチング素子の故障原因となる。
【0010】
複数の直列素子のスイッチングによる問題を解決するためには、受動素子で構成されるスナバ回路などの補助回路や、電圧検出機構などの制御回路を備えて、ON/OFFのタイミングを最適化したり、故障を防止するようなON/OFF動作を行うアクティブゲートコントロールなどの制御が必要になって、電圧不均衡を防ぐための周辺回路や制御装置が必要となり、装置の大型化、高コスト化となる問題がある。また、補助回路によって装置の損失が増加するという問題も生じる。
【0011】
図9のように構成すると、スイッチング素子の直列部がなくなるため補助回路は不要となるが、特に高電圧を出力するインバータに適用した場合、非常に高電圧でスイッチングを行うことになり、スイッチング時の電圧と電流の時間積分によるスイッチング損失の増大、高耐圧素子の使用による高コスト化、大型化の懸念がある。
【0012】
本発明が目的とするとこは、図5に示す従来のマルチレベル変換装置におけるコンデンサC2,C3による装置の大型化を抑制し、且つ図7に示す従来のマルチレベル変換装置のスイッチング素子の直列接続構成に伴う問題点を解決したマルチレベル変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1は、出力端子と直流電源間にそれぞれ接続されスイッチング素子と該各スイッチング素子の直流電源側端子間に接続されたコンデンサC1を有するセル1と、
セル1の各スイッチング素子とそれぞれ直列接続されたスイッチング素子からなるセル2と、
セル2の各スイッチング素子の直流電源側端子と直流電源の正負側間及びセル2の各スイッチング素子の直流電源側端子と直流電源の中性点側間にそれぞれ接続されたスイッチング素子からなるセル3と、
セル3の各スイッチング素子の直流電源側端子と直流電源の正負側間及びセル3の各スイッチング素子の直流電源側端子と直流電源の中性点側間にそれぞれ接続されたスイッチング素子からなるセル4と、
セル3とセル4間で直流電源の正側と中性点側間及び直流電源の負側と中性点側間にそれぞれ接続されたコンデンサC20,30を有し、各セルのスイッチングパターンを可変してスイッチング状態を選択するよう構成されたマルチレベルの変換装置において、
電圧指令値に基づいて生成された出力電圧レベル信号と前記コンデンサC1の電圧及び出力電流を入力してスイッチング状態を選択するスイッチング状態選択部と、選択されたスイッチング状態を入力してスイッチング状態の転流を選択する
転流シーケンス選択部を設け、
転流シーケンス選択部は、前記セル3の各スイッチング素子とセル4の各スイッチング素子がそれぞれ直列接続されたスイッチング素子のオン・オフ状態変化時にスイッチング状態を遷移させる転流手段を備えたことを特徴としたものである。
【0014】
本発明の請求項2は、前記転流手段によるスイッチング状態の遷移時に、前記コンデンサC20,C30の電圧を制御するよう構成したことを特徴としたものである。
【0015】
本発明の請求項3は、前記転流手段によるスイッチング状態の遷移は、出力電圧レベルが0と−E相互間及び0と+E相互間での電圧切り替わり時に行うことを特徴としたものである。
【0016】
本発明の請求項4は、前記スイッチング状態選択部は、出力電圧レベルが−2Eを出力するV1と、−Eを出力するV2,V3と、0を出力するV4,V5と、Eを出力するV6,V8のスイッチング状態への遷移選択機能を備え、
前記転流シーケンス選択部の転流手段は、出力電圧レベルが−Eを出力するV9,V10と、Eを出力するV11,V12と、0を出力するV13,V14,V15及びV16の8個のスイッチング状態への遷移機能を備えたことを特徴としたものである。
【0017】
本発明の請求項5は、前記転流シーケンス選択部は、スイッチング状態がV2とV5間、V3とV5間、V6とV4間、及びV7とV4間でそれぞれ転流するとき、3つのスイッチング状態の遷移で行うことを特徴としたものである。
【0018】
本発明の請求項6は、前記転流シーケンス選択部は、転流動作によって発生した誤差電圧の算出機能を備え、算出された誤差電圧を前記電圧指令値と加算して補正された電圧指令値を生成するよう構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり、本発明によれば、従来のマルチレベル変換装置が有する通常の8個のスイッチング状態への遷移に加えて、更に8個のスイッチング状態を設け、通常の8個のスイッチング状態の切り替わり時に、追加された8個のスイッチング状態を任意に組み合わせて遷移するものである。これにより、コンデンサC20,C30の容量を小さくすることができので、小型化及び低コスト化ができる。
また、図7で示すスイッチング素子を2直列にして同時にON→OFF制御する従来のものと比較して、本発明ではスイッチング素子の直列接続部がなくなり、直列接続素子を制御するための補助回路や制御装置が不要になるものである。
さらに、直列接続・デットタイムによる異常電圧の発生が防止できる等の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態を示すマルチレベル変換装置の構成図。
【図2】本発明のマルチレベル変換部の構成図。
【図3】本発明の制御アルゴリズム。
【図4】本発明の他のマルチレベル変換部の構成図。
【図5】従来のマルチレベル変換装置の構成図。
【図6】PWM信号生成の説明図。
【図7】従来のマルチレベル変換装置の構成図。
【図8】PWM信号生成の説明図。
【図9】従来のマルチレベル変換装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の実施例を示す単相の電力変換装置を示したもので、回路構成自体は図5と同様に構成されるが、相違点はコンデンサC20とC30の容量が図5のC1,C2の容量よりも小さいものが使用される。なお、C1は図5と同容量ものが使用される。1は第1のセル(セル1)で、IGBTなどの双方向性のスイッチング素子S1,S2と充放電用のコンデンサC1を有している。2はスイッチング素子S3,S4よりなる第2のセル(セル2)、3は第3のセル(セル3)で、スイッチング素子S5〜S8とコンデンサC20,C30を有している。4は第4のセル(セル4)で、スイッチング素子S9〜S12を有している。
【0022】
5は直流電源で、直流電源5の正極側と出力端子6間には、セル1〜4のスイッチング素子S1,S3,S5及びS9による直列回路が形成され、直流電源5の負極側と出力端子6間には、セル1〜4のスイッチング素子S2,S4,S8及びS12による直列回路が形成されている。また、この直列回路と並列に、直流電源5の中性点と出力端子6間には、S1,S3,S6及びS10の直列回路とS2,S4,S7及びS11の直列回路が接続されている。
【0023】
図1の回路においても、コンデンサC1,C20,C30の電圧は図5で示す従来と同様に電圧レベルEに制御し、スイッチングパターンは、5レベルのうち、Eもしくは−Eの電圧出力時にはコンデンサC1の電圧が利用される。
また、セル3,4で同時にON/OFF制御される2つのスイッチング素子S5とS7、S6とS8、S9とS11及びS10とS12でON/OFFタイミングにずれが生じた場合、図5ではコンデンサC2,C3を介した電流経路が形成されてペア素子のうち片方の素子に電圧Eを越える過剰な電圧がかかり、また、スイッチング後に2つの素子間で電圧バランスが崩れる虞がある。
これを防止するために本発明は、従来のコンデンサC2,C3に対応するC20,C30の電圧を制御し、それぞれ直列接続されたスイッチング素子S5〜S12のON/OFF状態が変化するときに、転流シーケンスを用いた転流手段を用いるものである。以下本発明による転流動作について詳述する。
【0024】
本発明では、表2で示すようにスイッチング状態を定義し、V1〜V16による16種のスイッチング状態(Switching State)を有している。
【0025】
【表2】

【0026】
キャリア信号の傾きよりも電圧指令の傾きの方が小さいことを条件として、電圧レベルを2段以上スキップしない。
スイッチング状態V1〜V8のうち、セル3,4間で直列接続された素子のスイッチング状態は、V1〜V4が同じパターンであり、またV5〜V8が同じパターンとなることは表1と同じである。これはV4,V5を除くと、出力電圧(Phase Voltage)正の2E及びEを出力する期間(V6,V7,V8)でS5,S7,S9,S11はONで固定、負の電圧−2E及び−Eを出力する期間(V1,V2,V3)でS6,S8,S10,S12はONで固定となることを示している。
【0027】
スイッチング素子切り替えによる損失や、出力電圧誤差を抑制するためには、なるべくスイッチング素子の状態変化を少なくした方がよいことから、図8における電圧指令が正の半周期ではV5〜V8を用いてPWMを行い、電圧指令が負の半周期ではV1〜V4を用いてPWMを行うことが望ましい。すなわち、V4,V5は電圧指令の符号に基づいて選択される。したがって、電圧指令が正から負に切り替わった以降の最初のスイッチング切り替え時に、電圧指令1周期に2回の直列接続素子が切り替わる。
【0028】
直列接続素子の切り替わり時のスイッチング状態は次の通りとなる。
(1).V4(出力電圧レベル0)←→V6,V7(出力電圧レベルE)では、V4からV6又はV7と、V6又はV7からV4への状態遷移。
(2).V5(出力電圧レベル0)←→V2,V3(出力電圧レベル−E)では、V5からV2又はV3と、V2又はV3からV5への状態遷移。
【0029】
上記(1)(2)のスイッチング状態遷移では、表2で示すセル(Cell)1〜4のうち、3つのセル、例えばV4→V6の場合ではセル2〜4の素子が同時に切り替わることになる。このとき、前述のように直列接続された素子のタイミングずれが発生したり、デットタイムによって想定外の電流経路が形成されて予期しない電圧出力が発生する可能性がある。この予期しない電圧発生を防止するために、表2で示すV9〜V16の8種類のスイッチング状態が設けられている。
【0030】
このスイッチング状態を遷移させる転流は次の通りである。
ア.V2とV5間の遷移(括弧内は各スイッチング状態における出力電圧レベル)
(ア)V2(−E)→V15(0)→V9(−E)→V5(0)
(イ)V2(−E)→V16(0)→V10(−E)→V5(0)
イ.V3とV5間の遷移
(ア)V3(−E)→V13(0)→V10(−E)→V5(0)
(イ)V3(−E)→V14(0)→V9(−E)→V5(0)
ウ.V6とV4間の遷移
(ア)V6(E)→V15(0)→V11(E)→V4(0)
(イ)V6(E)→V16(0)→V12(E)→V4(0)
エ.V7とV4間の遷移
(ア)V7(E)→V13(0)→V12(E)→V4(0)
(イ)V7(E)→V14(0)→V11(E)→V4(0)
上記ア〜エのように、V9V〜16のスイッチング状態を利用することで3つのセルを同時に切り替える代わりに、3つのスイッチング状態の遷移で切り替えるものであり、一つの遷移では1つのスイッチング素子の切り替えとなる。
また、この遷移時間は非常に短い時間に設定することが可能である。ここでの短い時間とは、コンデンサC20,C30の電圧が変動しない程度であり、且つ出力電圧への影響が小さくなるように短い時間に設定することである。コンデンサC20,C30の容量もこの転流時間などを考慮して決定される。
また、上記のようにスイッチング状態を遷移することで、当初のスイッチング状態と最終のスイッチング状態における電圧レベル以外の電圧レベル、例えばV2からV5への遷移ならば−Eと0以外の電圧レベルの出力はなくなる。これにより出力電圧誤差や、サージ電圧の発生が抑制される。
【0031】
上記ア〜エの各スイッチング状態遷移には、それぞれ2つの遷移パターンがあり、選択するパターンと出力電流の流れる方向によってコンデンサC20,C30が充放電される。
遷移アの場合を例にとると、出力端子6からの出力電流i>0の場合のコンデンサC30は、ア.(ア)の遷移を選択するとV15,V9のスイッチング状態の期間で放電して電圧が低下し、ア.(イ)の遷移を選択するとV16,V10のスイッチング状態期間で充電して電圧が上昇する。また、(ア)のV15の期間ではコンデンサC1が充電され、(イ)のV16の期間ではコンデンサC1が放電される。
したがって、コンデンサC20,C30の電圧値と出力電流の極性を用い、適切な遷移パターンを2つの中から選択することでコンデンサC20,C30の電圧を制御することができる。この制御によりコンデンサC1も同時に電圧変動するが、コンデンサC1の設定容量に対して転流期間が非常に短いために充放電量が僅かてあり、出力電圧E,−Eの出力時にコンデンサC1のみ独立に電圧制御が可能であることから、コンデンサC20,C30の電圧制御に伴うコンデンサC1の電圧変動は無視できる。
【0032】
以上を踏まえ、変換装置を具体的に構成したものが図2である。
図2において、11はPWM制御部で、負荷や所望する運転状態などから演算された電圧指令値を入力してキャリア比較変調や、三相の空間ベクトル変調などの手法を用いて出力電圧レベル信号を演算する。12はV1〜V8のスイッチング状態選択部で、このスイッチング状態選択部12は出力電圧レベル信号を入力してV1〜V8の何れかのスイッチング状態に変換する。
その際、コンデンサC1の電圧を制御するためにコンデンサC1の検出電圧を入力し、また、極性情報として変流器16によって検出された出力電流を入力している。
【0033】
13は転流シーケンス選択部で、スイッチング状態V1〜V16の間での転流選択を実行する。この転流シーケンス選択部13では通常入力されたスイッチング状態をそのまま出力するが、スイッチング状態がV4とV6又はV7間、V5とV2又はV3間で変化が起きたときには、前述したア〜エの遷移シーケンスを用いて指定の転流時間ごとにスイッチング状態を切り替えて出力する。その転流シーケンス選択のために、出力電流の極性情報とコンデンサC20,C30の電圧情報が入力される。14は駆動信号変換部で、変換テーブルを用いてスイッチング状態信号から12個のスイッチング素子S1〜S12のゲート信号に変換し、図1で示す構成のマルチレベル変換装置15を介して負荷7を駆動する。そして、11〜16によって上記動作の制御ブロック10を構成している。
【0034】
図3は、スイッチング状態選択部12及び転流シーケンス選択部13による制御アルゴリズムを示したものである。
スイッチング状態が変化すると、ステップSt1で現在のスイッチング状態が判断され、その状態がV2,V3,V6,V7以外のときにはステップSt2でそのまま通常のスイッチング状態変化の選択を実行する。ステップSt1でスイッチング状態がV2,V3,V6,V7に該当し、その状態がV2であった場合には、ステップSt10で次のスイッチング状態はV5であるか否かが判断され、V5の場合にはスイッチング状態は前述のV2,V5間でのア項の遷移となる。
【0035】
すなわち、St11でコンデンサ電圧と出力電圧Eの大きさを比較し、その結果、コンデンサ電圧>EのときにはSt12で出力電流iが判断される。St12で出力電流iがi>0のときにはSt14でスイッチング状態のV2とV5間でア.(ア)の遷移となる。一方、St11でコンデンサ電圧<EのときにはSt13で出力電流iが判断され、出力電流iがi<0のときにはSt15でスイッチング状態のV2とV5間でのア項(イ)で示す遷移となる。
【0036】
以下同様にして、ステップSt20〜St25のシーケンスではV7とV4間でのエ項の遷移となり、ステップSt30〜St37のシーケンスではV3とV5間でのイ項の遷移となり、また、ステップSt40〜St47のシーケンスではV6とV4間でのウ項の遷移となる。
【0037】
図4は他の実施例を示したもので、図2と異なる点は加算部17を設け、転流シーケンス選択部13に発生する誤差電圧を加算部17へフィードバックして電圧指令値と加算して補正し、補正された電圧指令値をPWM制御部11に入力してスイッチングパターンの調整することで誤差電圧を補正する。
【0038】
以上のように本発明によれば、従来のマルチレベル変換装置が有する通常の8個のスイッチング状態に加えて、更に8個のスイッチング状態を設け、通常の8個のスイッチング状態の切り替わり時に、追加された8個のスイッチング状態を任意に組み合わせて3つのスイッチング状態への遷移を行うものである。これにより、図5で示す従来の装置と比較してコンデンサC20,C30の容量を小さくすることができので、小型化及び低コスト化ができ、また、図7で示すスイッチング素子を2直列にして同時にON→OFF制御する従来のものと比較して、本発明ではスイッチング素子の直列接続部がなくなり、直列接続素子を制御するための補助回路や制御装置が不要になるものである。
さらに、直列接続・デットタイムによる異常電圧の発生が防止できる等の効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0039】
1〜4…セル
5…直流電源
6…出力端子
7…負荷
11… PWM制御部
12… スイッチング状態選択部
13… 転流シーケンス選択部
14… 駆動信号変換部
15… 変換装置
16… 変流器
17… 加算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端子と直流電源間にそれぞれ接続されスイッチング素子と該各スイッチング素子の直流電源側端子間に接続されたコンデンサC1を有するセル1と、
セル1の各スイッチング素子とそれぞれ直列接続されたスイッチング素子からなるセル2と、
セル2の各スイッチング素子の直流電源側端子と直流電源の正負側間及びセル2の各スイッチング素子の直流電源側端子と直流電源の中性点側間にそれぞれ接続されたスイッチング素子からなるセル3と、
セル3の各スイッチング素子の直流電源側端子と直流電源の正負側間及びセル3の各スイッチング素子の直流電源側端子と直流電源の中性点側間にそれぞれ接続されたスイッチング素子からなるセル4と、
セル3とセル4間で直流電源の正側と中性点側間及び直流電源の負側と中性点側間にそれぞれ接続されたコンデンサC20,30を有し、各セルのスイッチングパターンを可変してスイッチング状態を選択するよう構成されたマルチレベルの変換装置において、
電圧指令値に基づいて生成された出力電圧レベル信号と前記コンデンサC1の電圧及び出力電流を入力してスイッチング状態を選択するスイッチング状態選択部と、選択されたスイッチング状態を入力してスイッチング状態の転流を選択する
転流シーケンス選択部を設け、
転流シーケンス選択部は、前記セル3の各スイッチング素子とセル4の各スイッチング素子がそれぞれ直列接続されたスイッチング素子のオン・オフ状態変化時にスイッチング状態を遷移させる転流手段を備えたことを特徴としたマルチレベル変換装置。
【請求項2】
前記転流手段によるスイッチング状態の遷移時に、前記コンデンサC20,C30の電圧を制御するよう構成したことを特徴とした請求項1記載のマルチレベル変換装置。
【請求項3】
前記転流手段によるスイッチング状態の遷移は、出力電圧レベルが0と−E相互間及び0と+E相互間での電圧切り替わり時に行うことを特徴とした請求項1又は2記載のマルチレベル変換装置。
【請求項4】
前記スイッチング状態選択部は、出力電圧レベルが−2Eを出力するV1と、−Eを出力するV2,V3と、0を出力するV4,V5と、Eを出力するV6,V8のスイッチング状態への遷移選択機能を備え、
前記転流シーケンス選択部の転流手段は、出力電圧レベルが−Eを出力するV9,V10と、Eを出力するV11,V12と、0を出力するV13,V14,V15及びV16の8個のスイッチング状態への遷移機能を備えたことを特徴とした請求項1乃至3の何れかに記載のマルチレベル変換装置。
【請求項5】
前記転流シーケンス選択部は、スイッチング状態がV2とV5間、
V3とV5間、V6とV4間、及びV7とV4間でそれぞれ転流するとき、3つのスイッチング状態の遷移で行うことを特徴とした請求項4記載のマルチレベル変換装置。
【請求項6】
前記転流シーケンス選択部は、転流動作によって発生した誤差電圧の算出機能を備え、算出された誤差電圧を前記電圧指令値と加算して補正された電圧指令値を生成するよう構成したことを特徴とした請求項1乃至5の何れかに記載のマルチレベル変換装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−210066(P2012−210066A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73859(P2011−73859)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】