ミシン
【課題】ロングアームの水平方向の振動の低減、針交換や糸通しの保守の簡素化を図れるミシンを提供する。
【解決手段】ヘッド5はロングアーム3の先端にロングアーム3の延び方向Aと略直交する方向に突出する形に設け、このヘッド5の内部に針棒クランク9の回転軸8をロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置し、この回転軸8にミシンモータ11の回転を伝達させるベルト伝動機構12をロングアーム3の内部に備えている。
【解決手段】ヘッド5はロングアーム3の先端にロングアーム3の延び方向Aと略直交する方向に突出する形に設け、このヘッド5の内部に針棒クランク9の回転軸8をロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置し、この回転軸8にミシンモータ11の回転を伝達させるベルト伝動機構12をロングアーム3の内部に備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール箱、テント、ゴルフバック等のように比較的長尺の被縫製物の縫製作業がしやすいようにふところ寸法を長くしたロングアームを備え、このロングアームの先端のヘッドが作業者側に位置するように配置されたミシンにおいて、主として、ミシンアーム先端側の振動を低減できるようにしたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のミシンとして、例えば、図12に示すように、ロングアーム30を備え、このロングアーム30の先端のヘッド31が作業者側に位置するように配置されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。図12において、Xは水平方向、Yは垂直方向を示す。
一方、多くの工業用ミシンでは、図13に示すように、スライダクランク機構の原理に基づいて、ミシン上軸(ミシン主軸)32の回転運動を針棒クランク33、クランクアーム(クランクロッド)34を介して針棒35の上下往復駆動に変換させている(例えば、特許文献2参照。)。図13において、Xは水平方向、Yは垂直方向を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−2549号公報(特に、第1図参照)
【特許文献2】特開平4−156886号公報(特に、第5図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1記載の発明のミシンにおいて、ロングアーム30の内部にロングアーム30の延び方向と平行に支承されるミシン主軸32に、上記特許文献2記載の発明などに公知の針棒クランク33及びクランクアーム34を主要構成部材としてミシン主軸32の回転運動を針棒35の上下往復駆動に変換するスライダクランク機構を採用することが考えられる。
しかしながら、こうした場合、ミシン主軸32がロングアーム30の内部にロングアーム30の延び方向と平行に支承されているので、針棒クランク33とクランクアーム34を主構成とするスライダクランク機構の偶力(モーメント)と釣り合わない慣性力が水平方向Xと垂直方向Yに発生して、それらがロングアーム30を揺らし、振動と騒音を発生させる原因となるという問題がある。特にロングアーム30の振動は、図外の針とルーパーの位置関係を不安定にさせる要因となり、目飛びの原因となる。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、上記のような、ミシンベッドの基端より立設し作業者位置の方向に向かって延びてふところ寸法を長くするロングアームを備え、このロングアームの先端に針棒を内蔵したヘッド(針棒ハウジング)を設けているミシンにおいて、針棒クランクの回転軸のロングアームに対する配置方、およびロングアームの先端部に対するヘッドの取付け形態に工夫を凝らすことによりロングアームの水平方向の振動の低減、針交換や糸通しの保守の簡素化を図れるミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図11に付した符号を参照して説明すると、ミシンベッド2の基端より立設し作業者位置Wの方向に向かって延びてふところ寸法Dを長くするロングアーム3を備え、このロングアーム3の先端に針棒6を内蔵したヘッド5を設けているミシンにおいて、ヘッド5はロングアーム3の先端にロングアーム3の延び方向Aと略直交する方向に突出する形に設けており、このヘッド5の内部に、回転軸8をロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置するとともに、この回転軸8の回転運動を針棒6の上下往復駆動に変換する針棒クランク9およびクランクアーム10を備えており、回転軸8にミシンモータ11の回転を伝達させるベルト伝動機構12をロングアーム3の内部に備えていることに特徴を有するものである。
【0007】
上記構成のミシンによると、ヘッド5の内部に針棒クランク9の回転軸8をロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置することで、針棒クランク9とクランクアーム10によるスライダクランク機構の偶力と水平方向の慣性力をロングアーム3の根元方向(図1、図5中、矢印B方向)に流すことができるため、ロングアーム3の水平方向の振動を低減できる。
【0008】
従来の針糸の経路は針棒糸道から針までの針糸の屈折が多いため、余分な張力が発生して縫目が安定しなかった。これに対し、上記ミシンの構成によれば、ヘッド5はロングアーム3の先端にロングアーム3の延び方向Aと略直交する方向に突出する形に設けることで、針糸15の経路を直線状に配置することができるため、従来の針糸の経路のごとき余分な張力が発生するのを防止できて安定した縫目が得られ、また針交換や針糸通しの保守が簡単に行える。
【0009】
請求項1記載のミシンは、請求項2に記載のように、前記ベルト伝動機構12はミシンモータ11を駆動源とする駆動軸17上に固定された駆動プーリ18と、ヘッド5内に駆動軸17と平行に配された前記回転軸8上に固定された従動プーリ19と、駆動軸17と回転軸8間の中間に、それら軸17,8と平行に配された中間軸21上に固定された中間プーリ23とを備え、駆動プーリ18と中間プーリ23に無端状の一つのベルト24を、中間プーリ23と従動プーリ19に前記ベルト24とは別の無端状のもう一つのベルト25をそれぞれけさ掛けするという構成を採用することができる。
ベルト伝動機構12において軸間距離が長いものをタイミングベルトなどによるベルトで伝達すると、組立時のベルト張力が大きくなり、トルクが重たくて、運転中のベルトの振れも大きく振動、騒音の発生原因となる。これに対し、中間軸21を設ける上記ベルト伝動機構12を採用することにより、各軸間距離、各ベルト長を短くすることができるため、ベルト張力、トルクを軽減できる。
【0010】
請求項1又は2記載のミシンは、請求項3に記載のように、前記ヘッド5はロングアーム3の先端に着脱可能に取り付けるという構成を採用することができる。
これによると、ロングアーム3の延び方向Aに長い形のヘッド5や短い形のヘッド5など長さを異にする各種のヘッド5を用意しておき、そのうち、被縫製物16の長さに対応すべきヘッド5を選択して取り付けることでふところ寸法を容易に調整することができる。また、ベルト伝動機構12に中間軸21を設ける構成を採用することと相俟って、ヘッド5の交換によりロングアーム3のふところ寸法Dを変えることに応じてベルト取替えが安価に且つ容易に行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明のミシンによれば、ロングアームの水平方向の振動を低減でき、しかも針交換や糸通しの保守が簡単に行えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例のミシンの横断平面図である。
【図2】図1のミシンのロングアームの先端部の拡大図である。
【図3】図1のミシンの縦断側面図である。
【図4】図1のミシンのロングアームの先端部の正面図である。
【図5】図1のミシンのロングアームの先端部の内部側面図である。
【図6】図1のミシンのロングアームの先端部の平面図である。
【図7】図1のミシンのロングアームの先端部の縦断正面図である。
【図8】図1のミシンのロングアームの先端部の側面図である。
【図9】図1のミシンのロングアームの先端部の横断平面図である。
【図10】図1のミシンのロングアームの先端部の縦断側面図である。
【図11】被縫製物の縫製工程図であって、(a)は被縫製物の挿入工程図、(b)は被縫製物の縫製中の工程図、(c)は被縫製物の排出工程図である。
【図12】従来例のロングアームを備えたミシンの斜視図である。
【図13】従来例のミシンの針棒天秤機構を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、本発明に係るミシン1は、ミシンベッド2を被縫製物の挿入・排出方向に沿って長く延びる筒形状に形成している。このミシンベッド2の基端側にはロングアーム3が立設され、該ロングアーム3はミシンベッド2の上方にミシンベッド2の延出方向と平行に長く延びるように、すなわち作業者位置Wの方向(延び方向A)に向かって長く延びてふところ寸法Dの長い形に形成されている。
ミシン1でダンボール箱など被縫製物16を縫製するには、図11(a)のように被縫製物16をミシンベッド2に矢印B方向に挿入し、被縫製物16の挿入側端16aがロングアーム3の根元3aに当たった時点が被縫製物16の最大挿入可能な寸法となる。そして、後述する針棒6下端の針14で縫製を開始し、同図(b)のように被縫製物16を縫製し続けながら手前(矢印E方向)に送り出して縫製を完了する。したがって、本明細書において、ふところ寸法Dとは、被縫製物16の挿入に必要なロングアーム3の根元3aと針14との間の距離を言う。なお、縫製完了により被縫製物16は同図(c)のように手前(矢印E方向)に排出される。
【0014】
ミシンベッド2の先端部には針板4aやルーパー機構等の縫いを構成する部品4(周知のものと同一であるため、詳細な説明は省略する)が備えられている。
【0015】
ロングアーム3の先端にはヘッド(針棒ハウジング)5を設けている。
【0016】
図2、図5、図9、図10に示すように、ヘッド5の内部には下端に針14を備えた針棒6、押え棒7、回転軸8、回転軸8に固着された針棒クランク9、針棒クランク9に回動自在に連結されたクランクアーム10を備えており、クランクアーム10の先端部が針棒6に回動自在に連結されている。一方、ロングアーム3の内部には、回転軸8にミシンモータ11の回転を伝達させるベルト伝動機構12を備えている。しかるときは、回転軸8がベルト伝動機構12により回転駆動されると、針棒クランク9、クランクアーム10を介して針棒6が上下に往復駆動される。
【0017】
ヘッド5内において、針棒クランク9の回転軸8はロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置している。これにより、針棒クランク9とクランクアーム10によるスライダクランク機構の偶力と水平方向の慣性力をロングアーム3の根元3a方向(図1、図5中、矢印B方向)に流し、ロングアーム3の水平方向の振動を低減することができる。なお、図5中、矢印Fはクランク水平方向を示す。また、そのように針棒クランク9の回転軸8はロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置することで、図9のように縫製方向(矢印C方向)から見て、針棒6の後ろ側に押え棒7が配置される関係が保てるため、押え棒7の構造が他の機構に干渉するようなことがなくなる。
【0018】
図1、図2、図9に示すように、ヘッド5はロングアーム3の先端にロングアーム3の延び方向Aと略直交する方向に突出する形に設けている。これにより、図6〜図8に示すように針棒6の上端部に取付けた針棒糸道13から針14までの針糸15の経路を直線状に配置することができる。したがって、針交換や針糸通しの保守が簡単に行える。また、針棒糸道13から針14までの針糸15の屈折が多かった従来の針糸の経路のごとき余分な張力が発生して縫目が不安定になるようなことがなくて、安定した縫目が得られた。
【0019】
ヘッド5はロングアーム3の先端に着脱可能に取り付ける。ヘッド5にはロングアーム3の延び方向Aに長い形のヘッドや短い形のヘッドなど長さの違う各種のヘッドを用意しておく。かくして、そのうちから所望長さのヘッド5を選択して取り付けることで被縫製物16の長さに対応するふところ寸法Dを容易に出すことができる。
【0020】
図1、図3において、ロングアーム3内のベルト伝動機構12は、軸間距離、ベルト長を短くし、ベルト張力、トルクを軽減するために、中間軸(第2の中間軸)21を設ける構造とする。すなわち、このベルト伝動機構12は、図1、図3に示すように、ミシンベッド2内のミシンモータ11を駆動源とする駆動軸17上に固定された駆動プーリ18と、ヘッド5内に駆動軸17と平行に配された回転軸8上に固定された従動プーリ19と、駆動軸17と回転軸8間の中間に、それら軸17,8と平行に配された第1の中間軸20上および第2の中間軸21上にそれぞれ固定された第1,2の中間プーリ22,23とを備える。そして、駆動プーリ18と第1,2の中間プーリ22,23に無端状のタイミングベルト等による一つのベルト24を、第2の中間プーリ23と従動プーリ19に前記ベルト24とは別の無端状のタイミングベルト等によるもう一つのベルト25をそれぞれけさ掛けして、駆動軸17と回転軸8との間をベルト伝動している。各ベルト24,25のゆるみ側にはそれぞれテンションプーリ26を設けている。
【0021】
このようにベルト伝動機構12は中間軸21を備える構造とすることにより軸間距離、ベルト長を短くし、ベルト張力、トルクを軽減できるばかりか、長さの異なる各種のヘッド5と取替えることによりロングアーム3のふところ寸法Dを変えることに応じて一つのベルト24はそのまま使用して、予め各種長さのものを用意するもう一つのベルト25のみを取替えるだけで済み、安価に且つ容易にベルト取替えが行える。
【符号の説明】
【0022】
1 ミシン
2 ミシンベッド
3 ロングアーム
5 ヘッド(針棒ハウジング)
6 針棒
8 回転軸
9 針棒クランク
10 クランクアーム
11 ミシンモータ
15 針糸
16 被縫製物
17 駆動軸
18 駆動プーリ
19 従動プーリ
21 中間軸(第2の中間軸)
23 中間プーリ(第2の中間プーリ)
24 一つのベルト
25 もう一つのベルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール箱、テント、ゴルフバック等のように比較的長尺の被縫製物の縫製作業がしやすいようにふところ寸法を長くしたロングアームを備え、このロングアームの先端のヘッドが作業者側に位置するように配置されたミシンにおいて、主として、ミシンアーム先端側の振動を低減できるようにしたミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のミシンとして、例えば、図12に示すように、ロングアーム30を備え、このロングアーム30の先端のヘッド31が作業者側に位置するように配置されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。図12において、Xは水平方向、Yは垂直方向を示す。
一方、多くの工業用ミシンでは、図13に示すように、スライダクランク機構の原理に基づいて、ミシン上軸(ミシン主軸)32の回転運動を針棒クランク33、クランクアーム(クランクロッド)34を介して針棒35の上下往復駆動に変換させている(例えば、特許文献2参照。)。図13において、Xは水平方向、Yは垂直方向を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−2549号公報(特に、第1図参照)
【特許文献2】特開平4−156886号公報(特に、第5図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1記載の発明のミシンにおいて、ロングアーム30の内部にロングアーム30の延び方向と平行に支承されるミシン主軸32に、上記特許文献2記載の発明などに公知の針棒クランク33及びクランクアーム34を主要構成部材としてミシン主軸32の回転運動を針棒35の上下往復駆動に変換するスライダクランク機構を採用することが考えられる。
しかしながら、こうした場合、ミシン主軸32がロングアーム30の内部にロングアーム30の延び方向と平行に支承されているので、針棒クランク33とクランクアーム34を主構成とするスライダクランク機構の偶力(モーメント)と釣り合わない慣性力が水平方向Xと垂直方向Yに発生して、それらがロングアーム30を揺らし、振動と騒音を発生させる原因となるという問題がある。特にロングアーム30の振動は、図外の針とルーパーの位置関係を不安定にさせる要因となり、目飛びの原因となる。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、上記のような、ミシンベッドの基端より立設し作業者位置の方向に向かって延びてふところ寸法を長くするロングアームを備え、このロングアームの先端に針棒を内蔵したヘッド(針棒ハウジング)を設けているミシンにおいて、針棒クランクの回転軸のロングアームに対する配置方、およびロングアームの先端部に対するヘッドの取付け形態に工夫を凝らすことによりロングアームの水平方向の振動の低減、針交換や糸通しの保守の簡素化を図れるミシンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図11に付した符号を参照して説明すると、ミシンベッド2の基端より立設し作業者位置Wの方向に向かって延びてふところ寸法Dを長くするロングアーム3を備え、このロングアーム3の先端に針棒6を内蔵したヘッド5を設けているミシンにおいて、ヘッド5はロングアーム3の先端にロングアーム3の延び方向Aと略直交する方向に突出する形に設けており、このヘッド5の内部に、回転軸8をロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置するとともに、この回転軸8の回転運動を針棒6の上下往復駆動に変換する針棒クランク9およびクランクアーム10を備えており、回転軸8にミシンモータ11の回転を伝達させるベルト伝動機構12をロングアーム3の内部に備えていることに特徴を有するものである。
【0007】
上記構成のミシンによると、ヘッド5の内部に針棒クランク9の回転軸8をロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置することで、針棒クランク9とクランクアーム10によるスライダクランク機構の偶力と水平方向の慣性力をロングアーム3の根元方向(図1、図5中、矢印B方向)に流すことができるため、ロングアーム3の水平方向の振動を低減できる。
【0008】
従来の針糸の経路は針棒糸道から針までの針糸の屈折が多いため、余分な張力が発生して縫目が安定しなかった。これに対し、上記ミシンの構成によれば、ヘッド5はロングアーム3の先端にロングアーム3の延び方向Aと略直交する方向に突出する形に設けることで、針糸15の経路を直線状に配置することができるため、従来の針糸の経路のごとき余分な張力が発生するのを防止できて安定した縫目が得られ、また針交換や針糸通しの保守が簡単に行える。
【0009】
請求項1記載のミシンは、請求項2に記載のように、前記ベルト伝動機構12はミシンモータ11を駆動源とする駆動軸17上に固定された駆動プーリ18と、ヘッド5内に駆動軸17と平行に配された前記回転軸8上に固定された従動プーリ19と、駆動軸17と回転軸8間の中間に、それら軸17,8と平行に配された中間軸21上に固定された中間プーリ23とを備え、駆動プーリ18と中間プーリ23に無端状の一つのベルト24を、中間プーリ23と従動プーリ19に前記ベルト24とは別の無端状のもう一つのベルト25をそれぞれけさ掛けするという構成を採用することができる。
ベルト伝動機構12において軸間距離が長いものをタイミングベルトなどによるベルトで伝達すると、組立時のベルト張力が大きくなり、トルクが重たくて、運転中のベルトの振れも大きく振動、騒音の発生原因となる。これに対し、中間軸21を設ける上記ベルト伝動機構12を採用することにより、各軸間距離、各ベルト長を短くすることができるため、ベルト張力、トルクを軽減できる。
【0010】
請求項1又は2記載のミシンは、請求項3に記載のように、前記ヘッド5はロングアーム3の先端に着脱可能に取り付けるという構成を採用することができる。
これによると、ロングアーム3の延び方向Aに長い形のヘッド5や短い形のヘッド5など長さを異にする各種のヘッド5を用意しておき、そのうち、被縫製物16の長さに対応すべきヘッド5を選択して取り付けることでふところ寸法を容易に調整することができる。また、ベルト伝動機構12に中間軸21を設ける構成を採用することと相俟って、ヘッド5の交換によりロングアーム3のふところ寸法Dを変えることに応じてベルト取替えが安価に且つ容易に行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明のミシンによれば、ロングアームの水平方向の振動を低減でき、しかも針交換や糸通しの保守が簡単に行えるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例のミシンの横断平面図である。
【図2】図1のミシンのロングアームの先端部の拡大図である。
【図3】図1のミシンの縦断側面図である。
【図4】図1のミシンのロングアームの先端部の正面図である。
【図5】図1のミシンのロングアームの先端部の内部側面図である。
【図6】図1のミシンのロングアームの先端部の平面図である。
【図7】図1のミシンのロングアームの先端部の縦断正面図である。
【図8】図1のミシンのロングアームの先端部の側面図である。
【図9】図1のミシンのロングアームの先端部の横断平面図である。
【図10】図1のミシンのロングアームの先端部の縦断側面図である。
【図11】被縫製物の縫製工程図であって、(a)は被縫製物の挿入工程図、(b)は被縫製物の縫製中の工程図、(c)は被縫製物の排出工程図である。
【図12】従来例のロングアームを備えたミシンの斜視図である。
【図13】従来例のミシンの針棒天秤機構を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、本発明に係るミシン1は、ミシンベッド2を被縫製物の挿入・排出方向に沿って長く延びる筒形状に形成している。このミシンベッド2の基端側にはロングアーム3が立設され、該ロングアーム3はミシンベッド2の上方にミシンベッド2の延出方向と平行に長く延びるように、すなわち作業者位置Wの方向(延び方向A)に向かって長く延びてふところ寸法Dの長い形に形成されている。
ミシン1でダンボール箱など被縫製物16を縫製するには、図11(a)のように被縫製物16をミシンベッド2に矢印B方向に挿入し、被縫製物16の挿入側端16aがロングアーム3の根元3aに当たった時点が被縫製物16の最大挿入可能な寸法となる。そして、後述する針棒6下端の針14で縫製を開始し、同図(b)のように被縫製物16を縫製し続けながら手前(矢印E方向)に送り出して縫製を完了する。したがって、本明細書において、ふところ寸法Dとは、被縫製物16の挿入に必要なロングアーム3の根元3aと針14との間の距離を言う。なお、縫製完了により被縫製物16は同図(c)のように手前(矢印E方向)に排出される。
【0014】
ミシンベッド2の先端部には針板4aやルーパー機構等の縫いを構成する部品4(周知のものと同一であるため、詳細な説明は省略する)が備えられている。
【0015】
ロングアーム3の先端にはヘッド(針棒ハウジング)5を設けている。
【0016】
図2、図5、図9、図10に示すように、ヘッド5の内部には下端に針14を備えた針棒6、押え棒7、回転軸8、回転軸8に固着された針棒クランク9、針棒クランク9に回動自在に連結されたクランクアーム10を備えており、クランクアーム10の先端部が針棒6に回動自在に連結されている。一方、ロングアーム3の内部には、回転軸8にミシンモータ11の回転を伝達させるベルト伝動機構12を備えている。しかるときは、回転軸8がベルト伝動機構12により回転駆動されると、針棒クランク9、クランクアーム10を介して針棒6が上下に往復駆動される。
【0017】
ヘッド5内において、針棒クランク9の回転軸8はロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置している。これにより、針棒クランク9とクランクアーム10によるスライダクランク機構の偶力と水平方向の慣性力をロングアーム3の根元3a方向(図1、図5中、矢印B方向)に流し、ロングアーム3の水平方向の振動を低減することができる。なお、図5中、矢印Fはクランク水平方向を示す。また、そのように針棒クランク9の回転軸8はロングアーム3の延び方向Aと直交するように配置することで、図9のように縫製方向(矢印C方向)から見て、針棒6の後ろ側に押え棒7が配置される関係が保てるため、押え棒7の構造が他の機構に干渉するようなことがなくなる。
【0018】
図1、図2、図9に示すように、ヘッド5はロングアーム3の先端にロングアーム3の延び方向Aと略直交する方向に突出する形に設けている。これにより、図6〜図8に示すように針棒6の上端部に取付けた針棒糸道13から針14までの針糸15の経路を直線状に配置することができる。したがって、針交換や針糸通しの保守が簡単に行える。また、針棒糸道13から針14までの針糸15の屈折が多かった従来の針糸の経路のごとき余分な張力が発生して縫目が不安定になるようなことがなくて、安定した縫目が得られた。
【0019】
ヘッド5はロングアーム3の先端に着脱可能に取り付ける。ヘッド5にはロングアーム3の延び方向Aに長い形のヘッドや短い形のヘッドなど長さの違う各種のヘッドを用意しておく。かくして、そのうちから所望長さのヘッド5を選択して取り付けることで被縫製物16の長さに対応するふところ寸法Dを容易に出すことができる。
【0020】
図1、図3において、ロングアーム3内のベルト伝動機構12は、軸間距離、ベルト長を短くし、ベルト張力、トルクを軽減するために、中間軸(第2の中間軸)21を設ける構造とする。すなわち、このベルト伝動機構12は、図1、図3に示すように、ミシンベッド2内のミシンモータ11を駆動源とする駆動軸17上に固定された駆動プーリ18と、ヘッド5内に駆動軸17と平行に配された回転軸8上に固定された従動プーリ19と、駆動軸17と回転軸8間の中間に、それら軸17,8と平行に配された第1の中間軸20上および第2の中間軸21上にそれぞれ固定された第1,2の中間プーリ22,23とを備える。そして、駆動プーリ18と第1,2の中間プーリ22,23に無端状のタイミングベルト等による一つのベルト24を、第2の中間プーリ23と従動プーリ19に前記ベルト24とは別の無端状のタイミングベルト等によるもう一つのベルト25をそれぞれけさ掛けして、駆動軸17と回転軸8との間をベルト伝動している。各ベルト24,25のゆるみ側にはそれぞれテンションプーリ26を設けている。
【0021】
このようにベルト伝動機構12は中間軸21を備える構造とすることにより軸間距離、ベルト長を短くし、ベルト張力、トルクを軽減できるばかりか、長さの異なる各種のヘッド5と取替えることによりロングアーム3のふところ寸法Dを変えることに応じて一つのベルト24はそのまま使用して、予め各種長さのものを用意するもう一つのベルト25のみを取替えるだけで済み、安価に且つ容易にベルト取替えが行える。
【符号の説明】
【0022】
1 ミシン
2 ミシンベッド
3 ロングアーム
5 ヘッド(針棒ハウジング)
6 針棒
8 回転軸
9 針棒クランク
10 クランクアーム
11 ミシンモータ
15 針糸
16 被縫製物
17 駆動軸
18 駆動プーリ
19 従動プーリ
21 中間軸(第2の中間軸)
23 中間プーリ(第2の中間プーリ)
24 一つのベルト
25 もう一つのベルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンベッドの基端より立設し作業者位置の方向に向かって延びてふところ寸法を長くするロングアームを備え、このロングアームの先端に針棒を内蔵したヘッドを設けているミシンにおいて、
前記ヘッドは前記ロングアームの先端にロングアームの延び方向と略直交する方向に突出する形に設けており、このヘッドの内部に、回転軸を前記ロングアームの延び方向と直交するように配置するとともに、この回転軸の回転運動を前記針棒の上下往復駆動に変換する針棒クランクおよびクランクアームを備えており、前記回転軸にミシンモータの回転を伝達させるベルト伝動機構を前記ロングアームの内部に備えていることを特徴とする、ミシン。
【請求項2】
前記ベルト伝動機構はミシンモータを駆動源とする駆動軸上に固定された駆動プーリと、前記ヘッド内に前記駆動軸と平行に配された前記回転軸上に固定された従動プーリと、前記駆動軸と前記回転軸間の中間に、それら軸と平行に配された中間軸上に固定された中間プーリとを備え、前記駆動プーリと前記中間プーリに無端状の一つのベルトを、前記中間プーリと前記従動プーリに前記ベルトとは別の無端状のもう一つのベルトをそれぞれけさ掛けしている、請求項1記載のミシン。
【請求項3】
前記ヘッドが前記ロングアームの先端に着脱可能に取り付けられている、請求項1又は2記載のミシン。
【請求項1】
ミシンベッドの基端より立設し作業者位置の方向に向かって延びてふところ寸法を長くするロングアームを備え、このロングアームの先端に針棒を内蔵したヘッドを設けているミシンにおいて、
前記ヘッドは前記ロングアームの先端にロングアームの延び方向と略直交する方向に突出する形に設けており、このヘッドの内部に、回転軸を前記ロングアームの延び方向と直交するように配置するとともに、この回転軸の回転運動を前記針棒の上下往復駆動に変換する針棒クランクおよびクランクアームを備えており、前記回転軸にミシンモータの回転を伝達させるベルト伝動機構を前記ロングアームの内部に備えていることを特徴とする、ミシン。
【請求項2】
前記ベルト伝動機構はミシンモータを駆動源とする駆動軸上に固定された駆動プーリと、前記ヘッド内に前記駆動軸と平行に配された前記回転軸上に固定された従動プーリと、前記駆動軸と前記回転軸間の中間に、それら軸と平行に配された中間軸上に固定された中間プーリとを備え、前記駆動プーリと前記中間プーリに無端状の一つのベルトを、前記中間プーリと前記従動プーリに前記ベルトとは別の無端状のもう一つのベルトをそれぞれけさ掛けしている、請求項1記載のミシン。
【請求項3】
前記ヘッドが前記ロングアームの先端に着脱可能に取り付けられている、請求項1又は2記載のミシン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−34809(P2012−34809A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177102(P2010−177102)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(391005123)株式会社森本製作所 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(391005123)株式会社森本製作所 (26)
【Fターム(参考)】
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