メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を検出するためのプライマーおよびプローブ、ならびに、それらを用いたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の検出方法
【課題】MRSAを正確、迅速かつ簡便に検出するための方法を提供する。
【解決手段】試料中のMRSAを検出する方法であって、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子領域を特異的に増幅するプライマー対を用意し、被検核酸および該核酸プライマー対を含む反応液によって被検核酸を増幅し、得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめ、得られた複合体を検出する方法。
【解決手段】試料中のMRSAを検出する方法であって、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子領域を特異的に増幅するプライマー対を用意し、被検核酸および該核酸プライマー対を含む反応液によって被検核酸を増幅し、得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめ、得られた複合体を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(メチシリン・レジスタント・スタヒロコッカス・アウレウスと同義である。本明細書では、以下MRSAとも表記する。)を検出するためのプライマーおよびプローブ、ならびに、それらを用いたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRSAは、メチシリン耐性に係わる遺伝子mecAを獲得した黄色ブドウ球菌であり、幅広い抗生物質に対する耐性を示す。
黄色ブドウ球菌を検出する方法としては、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子(熱安定性ヌクレアーゼをコードしている遺伝子)を検出する方法が知られている(非特許文献1)。
メチシリン耐性を試験する方法としては、培養による薬剤感受性試験、mecAがコードするPBP−2’を抗PBP−2’抗体を用いたイムノアッセイで検出する方法、mecA又はmecAと連鎖するDNAをPCRで増幅して検出する方法などが実施されている(非特許文献2、非特許文献3)。
【0003】
培養試験およびイムノアッセイ法は検査の前段階として被験者から得られた黄色ブドウ球菌を培養する必要がある。このため培養に要する時間も含めると検査には一日以上を要する。
【0004】
これに対してPCRなどの核酸増幅による検査では、培養した黄色ブドウ球菌以外にも、鼻腔スワブや膿などの臨床サンプル中に存在する黄色ブドウ球菌を検出することが可能である(非特許文献4)。
【0005】
核酸増幅を用いた方法では核酸増幅産物をどのようにして検出するかが問題となる。最も古典的な検出方法としてはアガロースゲル電気泳動よって増幅産物を視認する方法がある。しかしこの方法では増幅産物のキャリーオーバーによるコンタミネーションが生じる可能性がある。
【0006】
上記問題点を改善する方法としてSYBR Greenや蛍光色素標識プローブを用いた検出法が広く用いられている。しかし、SYBR Greenは塩基配列非特異的に二本鎖DNAに結合するため、核酸増幅の正確性が低い場合は誤った核酸を検出する偽陽性の可能性がある。これに対し、蛍光色素標識プローブの場合には非特異的核酸配列は検出しにくいため偽陽性の可能性は低くなる。しかし、核酸増幅の正確性が低い場合は試料中に検出対象の核酸が含まれていても誤増幅による偽陰性の可能性があり、いずれの方法でも正確な検査のためには核酸増幅過程での高い正確性が求められる。
【0007】
感染症治療および感染拡大防止のためには感染者に対し早急に適切な治療を施すことが必須であり、早期治療のためには正確性のみならず迅速性に優れた感染症検査が必要である。核酸増幅を用いる遺伝子検査は一般的に培養検査よりも迅速性に優れる。しかし同じ遺伝子検査でも核酸増幅方法あるいはDNAポリメラーゼなどの核酸合成酵素の性能により検査速度は大きく左右される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Clinical Microbiology, July 1992, p.1654-1660
【非特許文献2】Journal of Clinical Microbiology, July 1992, p.1685-1691
【非特許文献3】Journal of Clinical Microbiology, July 2000, p.2170-2173
【非特許文献4】German Medical Science, July, 2009, 7:Doc06
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
臨床現場においては、診断、治療及び予防を目的として、簡便・迅速かつ正確なMRSAの検出が望まれてきた。本発明はこの問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を特異的に増幅する1対のプライマーを用いることにより、従来技術よりも正確にMRSAを検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
【0011】
[項1]
試料中のMRSAを検出する方法であって、以下の(A)に示す工程により試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を検出する手段を含むことを特徴とする、MRSAの検出方法。
(A)
(1)配列番号1と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対であって、以下の(I)または(II)のいずれか1つ以上に該当する核酸プライマー対を用意する工程。
(I)フォワードプライマーが、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(II)リバースプライマーが、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(2)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する工程。
(3)工程(2)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(4)工程(3)で得られた複合体を検出する工程。
[項2]
項1に記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(I)に記載の核酸プライマー対が、配列番号1で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対である、項1に記載のMRSAの検出方法。
[項3]
項1または項2のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(I)に記載のフォワードプライマーが配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列である項1または項2に記載のMRSAの検出方法。
[項4]
項1または項2のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(II)に記載のリバースプライマーが配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列である項1または項2に記載のMRSAの検出方法。
[項5]
項1〜項4のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)に記載の核酸プローブが、配列番号24、25のいずれかに示される核酸配列からなる核酸プローブである、項1〜項4のいずれかに記載のMRSAの検出方法。
[項6]
項5に記載の核酸プローブが、末端のシトシンのうち少なくとも一つが蛍光色素で標識されている核酸プローブである、項5に記載のMRSAの検出方法。
[項7]
項1〜6のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、核酸増幅を、α型DNAポリメラーゼ、および、α型DNAポリメラーゼを変異させた変異型、のうち1つ以上を含む系で行う、項1〜6のいずれかに記載のMRSAの検出方法。
[項8]
項1〜7のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、さらに、以下の(B)に示す工程により試料中のメチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段を含むことを特徴とする、MRSAの検出方法。
(B)
(5)配列番号2と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対であって、以下の(III)または(IV)のいずれか1つ以上に該当する核酸プライマー対を用意する工程。
(III)フォワードプライマーが、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(IV)リバースプライマーが、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(6)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する工程。
(7)工程(6)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(8)工程(7)で得られた複合体を検出する工程。
[項9]
項8に記載のMRSAの検出方法において、工程(B)(III)に記載のフォワードプライマーが配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列である項8に記載のMRSAの検出方法。
[項10]
項8に記載のMRSAの検出方法において、工程(B)(IV)に記載のリバースプライマーが配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列である項8に記載のMRSAの検出方法。
[項11]
試料中のMRSAを検出するためのプライマーセットであって、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセット。
[項12]
項11に記載のプライマーセットが、配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成される、項11に記載のプライマーセット。
[項13]
項11または項12に記載のプライマーセットに加えて、さらに、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含む、項11または項12に記載のプライマーセット。
[項14]
項11または項12に記載のプライマーセットに加えて、さらに、配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含む、項13に記載のプライマーセット。
[項15]
項11〜14のいずれかに記載のプライマーセットを含む、MRSA検出キット。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、MRSAの検出を簡便・迅速かつ正確に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の結果を示す図である。
【図2】実施例1の結果を示す図である。
【図3】実施例1の結果を示す図である。
【図4】実施例1の結果を示す図である。
【図5】実施例1の結果を示す図である。
【図6】実施例1の結果を示す図である。
【図7】実施例1の結果を示す図である。
【図8】実施例1の結果を示す図である。
【図9】実施例1の結果を示す図である。
【図10】実施例1の結果を示す図である。
【図11】実施例2の結果を示す図である。
【図12】実施例2の結果を示す図である。
【図13】実施例2の結果を示す図である。
【図14】実施例2の結果を示す図である。
【図15】実施例2の結果を示す図である。
【図16】実施例2の結果を示す図である。
【図17】実施例2の結果を示す図である。
【図18】実施例2の結果を示す図である。
【図19】実施例3の結果を示す図である。
【図20】実施例3の結果を示す図である。
【図21】比較例1の結果を示す図である。
【図22】比較例2の結果を示す図である。
【図23】実施例4の結果を示す図である。
【図24】実施例4の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のMRSAの検出方法
本発明のMRSAの検出方法は、試料中のMRSAを検出する方法であって、ある特定の工程により試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を検出する方法、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のMRSAの検出方法において、試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を検出する方法としては、以下の(1)〜(4)の工程を例示することができる。
(1)黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を特異的に増幅する1対のプライマー対を用意する。
(2)被検核酸および該核酸プライマー対を含む反応液によって被検核酸を増幅する。
(3)工程(2)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
(4)工程(3)で得られた複合体を検出する。
【0016】
[1]黄色ブドウ球菌由来の核酸を増幅するプライマー対
本発明のMRSAの検出方法において、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を特異的に増幅する1対のプライマー対は、配列番号1で示されるnuc遺伝子と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対である。
上記において、配列番号1との核酸配列の相同性は、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%(すなわち配列番号1そのもの)である。
【0017】
[核酸配列の相同性]
なお、本願明細書において、核酸配列の相同性は、GENETYXソフトで比較した値を意味する。
GENETYXソフトは、例えば、GENETYX CORPORATIONから販売されているGENETYX WIN Version 6.1のものを使用できる。
また、本願明細書において、「相同性」の用語は、「同一性」の意味で用いている。
【0018】
上記のプライマー対は、以下の(I)または(II)のいずれか1つ以上に該当する。
(I)フォワードプライマーが、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(II)リバースプライマーが、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
【0019】
ここで、配列番号3は、配列番号1の326番目から345番目の部分である。また、配列番号4は、配列番号1の483番目から502番目の部分の相補鎖である。
【0020】
核酸増幅においては増幅産物長が短いほど増幅に要する時間は短くなる。発明者らはDNA鎖伸長反応を1サイクルあたり5秒以内で完了させるためには増幅産物長が400塩基未満であることが望ましいことを見出した。
配列番号3はnuc遺伝子のセンス鎖に由来する配列であり、配列番号4はアンチセンス鎖に由来する配列である。
上記のプライマー対は(I)または(II)のいずれか1つ以上に該当すれば特に限定されるものではないが、センス鎖に由来する配列とアンチセンス鎖に由来する配列の組合せでなければならない。
【0021】
これらのプライマー対を選択することにより、従来と比較して短時間でも正確に黄色ブドウ球菌を検出する効果がある。
【0022】
このようなプライマー対として、特に、フォワードプライマーとして配列番号7、8、9、10のいずれかで示される塩基配列、および/または、リバースプライマーとして配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列、の組合せが好ましい。
【0023】
[2]被検核酸の増幅
本発明における被検核酸は、例えば、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。二本鎖の場合は、例えば、被検核酸とプローブとをハイブリダイズさせてハイブリッド体を形成するために、加熱により前記二本鎖を一本鎖に解離させる工程を含むことが好ましい。
【0024】
前記被検核酸の種類としては、特に制限されないが、例えば、DNAや、トータルRNA、mRNA等のRNA等があげられる。また、前記被検核酸は、例えば、黄色ブドウ球菌の血液培養試料や生体試料等の試料に含まれる核酸があげられる。
【0025】
前記生体試料としては、特に制限されないが、例えば、膿、胸水、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、血液などが挙げられる。
試料の採取方法、DNAやRNA等の核酸の調製方法等は、制限されず、従来公知の方法が採用できる。
【0026】
続いて、単離したゲノムDNAを鋳型として、上述のプライマー対を用いて、PCR等の核酸増幅法によって、検出目的の塩基部位を含む配列を増幅させる。なお、PCR等の条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0027】
本発明のMRSAの検出方法における核酸の増幅工程に用いられる具体的な核酸増幅方法としては特に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(Transcription−mediated amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等があげられるが、PCR法を用いることが好ましい。なお、これらの各方法において、増幅反応の条件は特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0028】
核酸増幅にPCR法を用いる場合、DNAポリメラーゼには、α型DNAポリメラーゼを用いることが好ましい。その理由を以下に説明する。
【0029】
本発明プローブが含まれる反応系でnuc遺伝子を増幅する場合、核酸増幅工程中に該核酸プローブが試料のnuc遺伝子またはそれらの増幅産物と結合しうる。核酸増幅工程中にnuc遺伝子と結合した該核酸プローブは、核酸プライマーとDNAポリメラーゼによる核酸増幅反応を阻害する。
【0030】
Taq DNA PolymeraseなどPolI型のDNAポリメラーゼは5’− 3’エキソヌクレアーゼ活性を持つことが知られている。この活性のため、核酸増幅反応中に鋳型となるnuc遺伝子と結合した核酸がある場合、該結合核酸はエキソヌクレアーゼ活性によって分解されてしまう。このため、反応系中の該核酸プローブが減少し核酸検出工程に問題が生じる可能性がある。従って、PolI型DNAポリメラーゼを用いて本発明を実施することは好ましくない。
【0031】
他方、KOD DNA Polymerase(超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1由来)などα型のDNAポリメラーゼは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を持たず、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ。従って、α型DNAポリメラーゼを用いれば上記問題を解決できるのみならず、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性により核酸増幅工程において高い正確性が発揮される。
【0032】
通常、α型DNAポリメラーゼは3’→ 5’エキソヌクレアーゼ活性のため、核酸増幅速度はPolI型酵素と比較して低い傾向がある。しかし、KOD DNA Polymeraseはα型DNAポリメラーゼでありながらDNA合成活性が高く100塩基/秒以上のDNA合成速度を有し伸長効率が優れている。従って、本発明の実施にはα型DNAポリメラーゼの中でも、KOD DNA Polymerase(東洋紡績製、商標)を用いることが好ましい。
【0033】
さらに、α型DNAポリメラーゼを変異させて100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を達成させた変異型、あるいは、野生型および/または変異型の組み合わせにより当該性能を達成させたDNAポリメラーゼ組成物も、本発明の実施に適したDNAポリメラーゼとして用いることができる。
例えば、上記KOD DNA Polymerase以外に100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を有するDNAポリメラーゼとして、「KOD FX(東洋紡績製、登録商標)」、「KOD −Plus−(東洋紡績製、商標)」、「KOD Dash(東洋紡績製、登録商標)」、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製、登録商標)なども利用できる。
なかでも、高い正確性とDNA合成活性とをあわせ持つKOD −Plus−が望ましい。
【0034】
[DNA合成活性]
本発明において、DNA合成活性とは鋳型DNAにアニールされたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの3’−ヒドロキシル基にデオキシリボヌクレオシド5’−トリホスフェートのα−ホスフェートを共有結合せしめることにより、デオキシリボ核酸にデオキシリボヌクレオシド5’−モノホスフェートを鋳型依存的に導入する反応を触媒する活性をいう。
【0035】
その活性測定法は、酵素活性が高い場合には、保存緩衝液でサンプルを希釈して測定を行う。本発明では、下記A液25μl、B液およびC液各5μlおよび滅菌水10μlをエッペンドルフチューブに加えて攪拌混合した後、上記酵素液5μlを加えて75℃で10分間反応する。その後、氷冷し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後、さらに10分間氷冷する。この液をガラスフィルター(ワットマンGF/Cフィルター)で濾過し、D液及びエタノールで充分洗浄し、フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード社製)で計測し、鋳型DNAへのヌクレオチドの取り込みを測定する。酵素活性の1単位はこの条件下で30分あたり10nモルのヌクレオチドを酸不溶性画分に取り込む酵素量とする。
A: 40mM Tris−HCl(pH7.5)
16mM 塩化マグネシウム
15mM ジチオスレイトール
100μg/ml BSA
B: 2μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C: 1.5mM dNTP(250cpm/pmol〔3H〕dTTP)
D: 20% トリクロロ酢酸(2mMピロリン酸ナトリウム)
E: 1μg/μl キャリアーDNA
【0036】
[3’−5’エキソヌクレアーゼ活性]
本発明において、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性とは、DNAの3’末端領域を切除し、5’−モノヌクレオチドを遊離する活性をいう。
その活性測定法は、50μlの反応液(120mM Tris−HCl(pH8.8 at 25℃), 10mM KCl, 6mM 硫酸アンモニウム,1mM MgCl2, 0.1% Triton X−100, 0.001% BSA,5 μg トリチウムラベルされた大腸菌DNA)を1.5mlのエッペンドルフチューブに分注し、DNAポリメラーゼを加える。75℃で10分間反応させた後、氷冷によって反応を停止し、次にキャリアーとして、0.1%のBSAを50μl加え、さらに10%のトリクロロ酢酸、2%ピロリン酸ナトリウム溶液を100μl加え混合する。氷上で15分放置した後、12,000回転で10分間遠心し沈殿を分離する。上清100μlの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード社製)で計測し、酸可溶性画分に遊離したヌクレオチド量を測定する。
【0037】
[3]黄色ブドウ球菌由来の核酸増幅産物とプローブとの複合体形成
本発明のMRSAの検出方法においては、工程(2)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
【0038】
核酸増幅産物を含む試料に核酸プローブを添加するタイミングは、特に制限されず、例えば、前述の核酸増幅反応前、核酸増幅反応途中および核酸増幅反応後のいずれに、増幅反応の反応系に添加してもよい。
中でも、増幅反応と、後述の検出反応とを連続的に行うことができるため、増幅反応前に添加することが好ましい。このように核酸増幅反応の前に前記プローブを添加する場合は、例えば、後述のように、その3’末端に、蛍光色素を付加したり、リン酸基を付加したりすることが好ましい。
【0039】
前記プローブは、核酸増幅産物を含む液体試料に添加してもよいし、溶媒中で核酸増幅産物と混合してもよい。前記溶媒としては、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl2、MgSO4、グリセロール等を含む溶媒、PCR反応液等、従来公知のものがあげられる。
【0040】
本発明のMRSAの検出方法において、配列番号24で示される、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を検出するためのプローブは、nuc遺伝子の386〜405位に相補的な配列で構成されている。
配列番号25で示される本発明のプローブも、nuc遺伝子の358〜376位に相補的な配列で構成されている。
【0041】
上記のプローブは、配列番号24または25に示される核酸配列が好ましいが、nuc遺伝子と相補的な連続した10塩基以上30塩基以下の核酸配列またはこれに相補的な核酸配列であれば、特に限定されない。
【0042】
上記のプローブは、後述の融解曲線解析によってnuc遺伝子の塩基配列中に変異の有無があるかを識別することができる。
本発明プローブは野生型nuc遺伝子と完全に相補的な塩基配列であるため、nuc遺伝子中の本発明プローブが結合する部分領域の野生型と変異型とを識別することができる。
【0043】
発明者らはnuc遺伝子の402位にしばしば置換変異が現れることを見出した。402位の塩基はチミンであるが、黄色ブドウ球菌の中にnuc遺伝子の402位がしばしばシトシンに置換された株が散見された。配列番号24で表される本発明プローブは402位を含む部分領域と相補的であるため、402位の変異を検出することが可能である。
nuc遺伝子の402位はチミンでもシトシンでもアミノ酸には変化が無い。従って、上記変異は黄色ブドウ球菌の形質には影響を与えないものと考えられる。
【0044】
上記のような遺伝子変異はしばしば株の識別に利用できる。例えば、特定の地域や施設で流行した黄色ブドウ球菌のnuc遺伝子402位が置換変異型であった場合、新たに黄色ブドウ球菌に感染した患者から採取した黄色ブドウ球菌のnuc遺伝子の402位を調べることで、当該患者が保有する黄色ブドウ球菌が過去に流行した株と同一である可能性を探ることができる。
【0045】
[4]核酸増幅産物とプローブとの複合体の検出
上記で得られた複合体を検出する方法は特に限定されない。例えば、融解曲線分析による方法が挙げられる。
【0046】
融解曲線分析の場合は、例えば、以下のように行う。
二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は、加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。
【0047】
本発明において、融解曲線分析を行うための温度変化に伴うシグナル変動の測定は、前述のような原理から、260nmの吸光度測定により行うこともできるが、本発明のプローブに付加した標識のシグナルを測定することが好ましい。このため、本発明のMRSAの検出方法に用いるプローブとしては、標識化プローブを使用することが好ましい。
【0048】
標識化プローブとしては、例えば、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ、または、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブがあげられる。前者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成している際にはシグナルを示さず、加熱によりプローブが遊離するとシグナルを示す。また、後者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成することによってシグナルを示し、加熱によりプローブが遊離するとシグナルが減少(消失)する。したがって、この標識によるシグナルをシグナル特有の条件(吸光度等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、融解の進行を把握することができる。
【0049】
標識化プローブの具体例として、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。このような現象は、一般に、蛍光消光現象と呼ばれる。この蛍光消光現象を利用したプローブとしては、中でも、一般的にグアニン消光プローブとよばれるものが好ましい。このようなプローブは、いわゆるQProbe(登録商標)として知られている。グアニン消光プローブとは、例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端もしくは5’末端の塩基がシトシンとなるように設計し、その末端の塩基シトシンが相補的な塩基グアニンに近づくと発光が弱くなる蛍光色素で前記末端を標識化したプローブである。本発明のプローブにおいては、例えば、蛍光消光現象を示す蛍光色素を、前記オリゴヌクレオチドの3’末端のシトシンに結合させてもよいし、前記オリゴヌクレオチドの5’末端をシトシンに設計し、これに結合させてもよい。
【0050】
前記蛍光色素は、制限されないが、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられ、市販の蛍光色素としては、例えば、BODIPY FL(商標、モレキュラープローブ社製)、FluorePrime(商標、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商標、ミリポア社製)、FAM(ABI社製)、Cy3およびCy5(アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(モレキュラープローブ社製)等があげられる。プローブの検出条件は、特に制限されず、使用する蛍光色素により適宜決定できるが、例えば、Pacific Blueは、検出波長450〜480nm、TAMRAは、検出波長585〜700nm、BODIPY FLは、検出波長515〜555nmで検出できる。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。
【0051】
本発明のMRSAの検出方法に用いるプローブは、例えば、3’末端にリン酸基が付加されてもよい。後述するように、遺伝子の有無を検出する被検核酸(標的核酸)は、PCR等の核酸増幅法によって調製することができ、この際、本発明のプローブを核酸増幅反応の反応系に共存させることができる。このような場合、プローブの3’末端にリン酸基を付加させておけば、プローブ自体が核酸増幅反応によって伸長することを十分に防止できる。また、3’末端に前述のような標識物質を付加することによっても、同様の効果が得られる。
【0052】
得られたPCR増幅産物の解離、および、解離により得られた一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記反応液の温度変化によって行うことができる。
【0053】
前記解離工程における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されないが、例えば、85〜98℃である。加熱時間も特に制限されないが、通常、1秒〜10分であり、好ましくは1秒〜5分である。
【0054】
また、解離した一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件としては、例えば、35〜50℃である。
【0055】
ハイブリダイズ工程の反応系(反応系)における各組成の体積や濃度は、特に制限されない。具体例としては、前記反応系において、DNAの濃度は、例えば、0.01〜100μmol/Lであり、好ましくは0.1〜10μmol/L、前記標識化プローブの濃度は、例えば、前記DNAに対する添加割合を満たす範囲が好ましく、例えば、0.01〜100μmol/Lであり、好ましくは0.01〜10μmol/Lである。
【0056】
そして、前記反応液の温度を変化させ、前記増幅産物と前記標識化プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナル値を測定する。具体的には、例えば、前記反応液(前記一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリッド形成体)を加熱し、温度上昇に伴うシグナル値の変動を測定する。前述のように、末端のC塩基が標識化されたプローブ(グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAとハイブリダイズした状態では、蛍光が減少(または消光)し、解離した状態では、蛍光を発する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0057】
蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されないが、例えば、開始温度が室温〜85℃であり、好ましくは25〜70℃であり、終了温度は、例えば、40〜105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されないが、例えば、0.05〜20℃/秒であり、好ましくは0.08〜5℃/秒である。
【0058】
被検核酸の有無の決定は、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動を測定することによって行いうる。すなわち、前記プローブを含む反応液の温度を降下させてハイブリッド形成体を形成する際に、前記温度降下に伴うシグナル変動を測定する。
【0059】
具体例として、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ(例えば、グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAとプローブとが解離している状態では蛍光を発しているが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。他方、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブを使用した場合、一本鎖DNAとプローブとが解離している状態では蛍光を発していないが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光を発するようになる。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0060】
また、本発明においては、目的の塩基部位における遺伝子型の決定のために、前記シグナルの変動を解析してTm(melting temperature)値として決定してもよい。
【0061】
[5]メチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段
また、本発明のMRSAの検出方法においては、さらに、試料中のメチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段として、以下の(5)〜(8)の工程を含ませることができる。これにより、黄色ブドウ球菌由来の核酸と、メチシリン耐性遺伝子由来の核酸とを、同時に検出することができ、正確な検査結果をより迅速に臨床現場に提供することが可能になる。
(5)MRSAのメチシリン耐性遺伝子の領域を特異的に増幅する1対のプライマー対を用意する。
(6)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する。
(7)工程(6)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
(8)工程(7)で得られた複合体を検出する。
【0062】
本発明のMRSAの検出方法において、メチシリン耐性遺伝子由来の核酸領域を特異的に増幅する1対のプライマー対は、配列番号2で示されるmecA遺伝子と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対である。
上記において、配列番号2との核酸配列の相同性は、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%(すなわち配列番号2そのもの)である。
【0063】
上記のプライマー対は、以下の(III)または(IV)のいずれか1つ以上に該当する。
(III)フォワードプライマーが、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(IV)リバースプライマーが、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
【0064】
ここで、配列番号5は、配列番号2の366番目から385番目の部分である。また、配列番号6は、配列番号2の524番目から543番目の相補鎖の部分である。
配列番号5mecA遺伝子のセンス鎖に由来する配列であり、配列番号6はアンチセンス鎖に由来する配列である。
上記のプライマー対は(III)または(IV)のいずれか1つ以上に該当すれば特に限定されるものではないが、センス鎖に由来する配列とアンチセンス鎖に由来する配列の組合せでなければならない。
【0065】
これらのプライマー対を選択することにより、従来と比較して短時間でも正確にメチシリン耐性遺伝子を検出する効果がある。また、これらのプライマー対で検出されるメチシリン耐性遺伝子はMRSA由来のメチシリン耐性遺伝子には限定されず、表皮ブドウ球菌などのメチシリン耐性遺伝子も検出することができる。従って本発明のプライマー対はMRSA以外の菌由来のメチシリン耐性遺伝子の検出に使用してもよい。
【0066】
このようなプライマー対として、特に、フォワードプライマーとして配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列、および/または、リバースプライマーとして配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列、の組合せが好ましい。
【0067】
メチシリン耐性遺伝子由来の核酸を増幅する工程に用いられる具体的な核酸増幅方法は特に限定されず、本書の上記[2]で記載された方法を用いることができる。黄色ブドウ球菌由来の核酸と、メチシリン耐性遺伝子由来の核酸とで同じ増幅法を用いることが好ましい。また、試料中のメチシリン耐性遺伝子由来の核酸を増幅する工程は、試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を増幅する工程と、別々に行っても良いし、同時に行っても良い。
【0068】
上記メチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段においては、工程(6)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
【0069】
その工程で用いるプローブは、前述のように、mecA遺伝子の変異の検出に使用することができる。複合体の形成方法は、何ら制限されず、被検核酸と前記プローブとのハイブリダイズを利用する方法であればよい。
【0070】
本発明のMRSAの検出方法において、メチシリン耐性遺伝子に特異的なmecA遺伝子の領域を検出するためのプローブは、mecA遺伝子と相補的な連続した10塩基以上30塩基以下の核酸配列またはこれに相補的な核酸配列であれば特に限定されるものではないが、配列番号26または配列番号27で示される塩基配列を有するものが例示できる。
【0071】
上記で得られた複合体を検出する方法は特に限定されない。例えば、本書の上記[4]で記載された方法を用いることができる。融解曲線分析による方法が挙げられる。
【0072】
[6]プライマーセット
本発明のプライマーセットは、上記のMRSA検出方法に用いることが出来る。
その一態様は、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を特異的に増幅することができる、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセットである。
nuc遺伝子の領域を特異的に増幅することができるプライマーセットとして、好ましくは、配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成される、項11に記載のプライマーセットである。
【0073】
本発明のプライマーセットは、上記のプライマーセットに加えて、さらに、メチシリン耐性遺伝子由来の核酸領域を特異的に増幅することができる、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含んでいてもよい。
メチシリン耐性遺伝子由来の核酸領域を特異的に増幅することができるプライマーセットとして、好ましくは、配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成されるプライマーセットである。
[7]MRSA検出キット
本発明のMRSA検出キットは、上記のプライマーセットのうちいずれかを含み、上記のMRSA検出方法に用いることが出来る。該キットは、核酸プローブと、DNAポリメラーゼとを含み、そのほかに、反応に必要な試薬を適宜含むことが好ましい。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0075】
〔実施例1:MRSA由来DNAからのnuc遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
STAPHYLOCOCCUS AUREUS (mecA+) DNA CONTROL(Vircell社製)を10mMのTris−HCl(pH7.5)で100(コピー/μl)に調製し、試料とした。陰性コントロール(NC)として水を使用した。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
上記試料および陰性コントロールにそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件によりnuc遺伝子を検出した。核酸増幅および融解曲線解析には東洋紡績社製GENECUBE(登録商標)を使用した。
【0076】
試薬
以下の試薬を含む溶液を調製した。なお、核酸プライマーの組み合わせについては表1に記載した。
100μM核酸プライマー(配列番号7、8、9、10のいずれか1本)0.2μl
10μM核酸プライマー(配列番号11、12、13、14のいずれか1本)0.4μl
10μM核酸プローブ(配列番号24、3’末端をBODIPY−FL標識)0.4μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
試料3μl
【0077】
【表1】
【0078】
核酸増幅および融解曲線解析
94℃・2分
(以上1サイクル)
97℃・1秒
50℃・5秒
63℃・5秒
(以上60サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
39℃〜75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
【0079】
結果
図1は、表1の組み合わせNo.1で示されるプライマー対を用いて核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図1より明らかなように、黄色ブドウ球菌の遺伝子が検出されている。なお、本実施例では増幅開始から検出終了まで約45分で完了しており、非特許文献4に記載の各方法よりもさらに迅速性に優れる検査方法である。
また、図2から図10は、それぞれ表1の組み合わせNo.2から10で示されるプライマー対を用いて、同様の実験を行った結果である。いずれの組み合わせでも黄色ブドウ球菌のnuc遺伝子が検出されており、本発明のnuc遺伝子検出用核酸プライマーはいずれもnuc遺伝子の迅速検出に有効であることが示された。
【0080】
〔実施例2:MRSA由来DNAからのmecA遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
実施例1と同じ。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0081】
試薬
以下の試薬を含む溶液を調製した。なお、核酸プライマーの組み合わせについては表2に記載した。
10μM核酸プライマー(配列番号15、16、17、18、19のいずれか1本)0.4μl
100μM核酸プライマー(配列番号20、21、22、23のいずれか1本)0.2μl
10μM核酸プローブ(配列番号26、3’末端をBODIPY−FL標識)0.4μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
試料3μl
【0082】
【表2】
【0083】
核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0084】
結果
図11は、表1の組み合わせNo.1で示されるプライマー対を用いて核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図11より明らかなように、mecA遺伝子が検出されている。また、図12から図18は、それぞれ表1の組み合わせNo.2から9で示されるプライマー対を用いて、同様の実験を行った結果である。いずれの組み合わせでも黄色ブドウ球菌のmecA遺伝子が検出されており、本発明のmecA遺伝子検出用核酸プライマーはいずれもmecA遺伝子の迅速検出に有効であることが示された。
【0085】
〔実施例3:異なる核酸プローブを用いたMRSA由来DNAからのnuc遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
実施例1と同じ。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0086】
試薬
以下の試薬を含む溶液を調製した。なお、核酸プライマーの組み合わせについては表3に記載した。
10μM核酸プライマー(配列番号7、9のいずれか1本)0.4μl
100μM核酸プライマー(配列番号11、12のいずれか1本)0.2μl
10μM核酸プローブ(配列番号25、3’末端をBODIPY−FL標識)0.4μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
試料3μl
【0087】
【表3】
【0088】
結果
図19は組み合わせNo.1、図20は組み合わせNo.2で示されるプライマー対を用いて核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。いずれのプライマー対でもnuc遺伝子が検出されており、配列番号25で示される核酸プローブもnuc遺伝子検出に適していることが示される。
【0089】
〔実施例4:MRSA由来DNAからのnuc遺伝子およびmecA遺伝子の同時検出〕
上記の実施例1における組み合わせ番号1と、実施例2における組み合わせ番号1のプライマーセットおよびプローブを用いて核酸増幅を行い、nuc遺伝子およびmecA遺伝子の同時検出を行った。
(1)資料の調製
血液培養ボトルにて培養された黄色ブドウ球菌(MSSA)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)からフェノールクロロホルム抽出法によって抽出したDNA(約100コピー/μl)を試料とした。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0090】
試薬
nuc遺伝子検出用試薬は実施例1と、mecA遺伝子検出用試薬は実施例2と同じ。
【0091】
核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0092】
結果
本実施例の融解曲線解析の結果を図23および図24に示した。図のResultは検出結果を示しており、nucのmは402位に変異が入った変異型nuc遺伝子が検出されたことを、Wは野生型のnuc遺伝子が検出されたことを示す。mecAの−はmecA遺伝子が検出されなかったことを、RはmecA遺伝子が検出されたことを示す。また、PeakTm1は検出ピークが現れた時の温度を、PeakF1はピークの蛍光微分値を示している。
図23ではnuc遺伝子がm、mecAが−であり、試料であるMSSA DNAはメチシリン耐性遺伝子を持っておらず、なおかつnuc遺伝子が変異型であることが明らかとなった。図24ではnuc遺伝子がW、mecAがRであり、試料であるMRSADNAはnuc遺伝子とmecA遺伝子の両方を有することが明らかになった。
以上から、本発明のプライマー・プローブを用いてnuc遺伝子とmecA遺伝子を同時に調べることでMSSAとMRSAの識別を容易に行うことが可能である。また、nuc遺伝子については402位の変異を検出できることが示唆された。
【0093】
〔比較例1:nuc遺伝子検出における増幅産物長限定効果〕
(1)試料の調製
STAPHYLOCOCCUS AUREUS (mecA+) DNA CONTROL(Vircell社製)を10mMのTris−HCl(pH7.5)で25コピー/μlに調製し、試料とした。陰性コントロール(NC)として水を使用した。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0094】
試薬
以下の試薬を含む10μl溶液を調製した。核酸プライマーは本発明に記載の核酸プライマー(配列番号7、11)および発明効果比較用核酸プライマー(配列番号28、29)を用いた。
[試薬組成1]
100μM核酸プライマー(配列番号7)0.15μl
10μM核酸プライマー(配列番号11)0.3μl
10μM核酸プローブ(配列番号24、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
水0.25μl
試料 1μl
[試薬組成2]
以下の試薬を含む10μl溶液を調製した。
100μM核酸プライマー(配列番号28)0.15μl
10μM核酸プライマー(配列番号29)0.3μl
10μM核酸プローブ(配列番号24、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
水0.25μl
試料 1μl
【0095】
核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0096】
結果
本比較例は核酸増幅産物長がnuc遺伝子検出に及ぼす影響を見たものである。核酸プライマー7、11による核酸増幅では増幅産物長は188bpとなる。一方、核酸プライマー28、29による核酸増幅では増幅産物長は509bpとなる。
本比較例の結果は図21で表される。増幅産物長が短くなるよう設計した核酸プライマーを含む試薬組成1で核酸増幅および検出を行うと、25コピーのDNAからnuc遺伝子を検出した。しかし、増幅産物長が長くなるよう設計した核酸プライマーを含む試薬組成2で核酸増幅および検出を行うと、25コピーのDNAからnuc遺伝子を検出することはできなかった。以上から、増幅産物長を短く限定すると遺伝子検査の感度が向上することが示された。
【0097】
〔比較例2:mecA遺伝子検出における増幅産物長限定効果〕
(1)試料の調製
比較例1と同じ
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0098】
試薬
以下の試薬を含む10μl溶液を調製した。核酸プライマーは本発明に記載の核酸プライマー(配列番号15、20)および発明効果比較用核酸プライマー(配列番号30、31)を用いた。
[試薬組成1]
10μM核酸プライマー(配列番号15)0.3μl
100μM核酸プライマー(配列番号20)0.15μl
10μM核酸プローブ(配列番号26、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
水0.25μl
試料 1μl
[試薬組成2]
10μM核酸プライマー(配列番号30)0.3μl
100μM核酸プライマー(配列番号31)0.15μl
10μM核酸プローブ(配列番号26、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
水0.25μl
試料 1μl
【0099】
核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0100】
結果
本比較例は核酸増幅産物長がmecA遺伝子検出に及ぼす影響を見たものである。核酸プライマー15、20による核酸増幅では増幅産物長は205bpとなる。一方、核酸プライマー30、31による核酸増幅では増幅産物長は418bpとなる。
本比較例の結果は図22で表される。増幅産物長が短くなるよう設計した核酸プライマーを含む試薬組成1で核酸増幅および検出を行うと、25コピーのDNAからmecA遺伝子を検出した。しかし、増幅産物長が長くなるよう設計した核酸プライマーを含む試薬組成2で核酸増幅および検出を行うと、25コピーのDNAからmecA遺伝子を検出することはできなかった。以上から、nuc遺伝子検査の場合(比較例1)と同様に、mecA遺伝子検査においても増幅産物長を短く限定すると遺伝子検査の感度が向上することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明を黄色ブドウ球菌の遺伝子検査に利用することで、迅速性、正確性の両方に優れ、なおかつ高感度に黄色ブドウ球菌を検出することができる。さらに、メチシリン耐性の有無を適切に識別できる。また、黄色ブドウ球菌以外の菌のメチシリン耐性遺伝子の有無も識別できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(メチシリン・レジスタント・スタヒロコッカス・アウレウスと同義である。本明細書では、以下MRSAとも表記する。)を検出するためのプライマーおよびプローブ、ならびに、それらを用いたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRSAは、メチシリン耐性に係わる遺伝子mecAを獲得した黄色ブドウ球菌であり、幅広い抗生物質に対する耐性を示す。
黄色ブドウ球菌を検出する方法としては、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子(熱安定性ヌクレアーゼをコードしている遺伝子)を検出する方法が知られている(非特許文献1)。
メチシリン耐性を試験する方法としては、培養による薬剤感受性試験、mecAがコードするPBP−2’を抗PBP−2’抗体を用いたイムノアッセイで検出する方法、mecA又はmecAと連鎖するDNAをPCRで増幅して検出する方法などが実施されている(非特許文献2、非特許文献3)。
【0003】
培養試験およびイムノアッセイ法は検査の前段階として被験者から得られた黄色ブドウ球菌を培養する必要がある。このため培養に要する時間も含めると検査には一日以上を要する。
【0004】
これに対してPCRなどの核酸増幅による検査では、培養した黄色ブドウ球菌以外にも、鼻腔スワブや膿などの臨床サンプル中に存在する黄色ブドウ球菌を検出することが可能である(非特許文献4)。
【0005】
核酸増幅を用いた方法では核酸増幅産物をどのようにして検出するかが問題となる。最も古典的な検出方法としてはアガロースゲル電気泳動よって増幅産物を視認する方法がある。しかしこの方法では増幅産物のキャリーオーバーによるコンタミネーションが生じる可能性がある。
【0006】
上記問題点を改善する方法としてSYBR Greenや蛍光色素標識プローブを用いた検出法が広く用いられている。しかし、SYBR Greenは塩基配列非特異的に二本鎖DNAに結合するため、核酸増幅の正確性が低い場合は誤った核酸を検出する偽陽性の可能性がある。これに対し、蛍光色素標識プローブの場合には非特異的核酸配列は検出しにくいため偽陽性の可能性は低くなる。しかし、核酸増幅の正確性が低い場合は試料中に検出対象の核酸が含まれていても誤増幅による偽陰性の可能性があり、いずれの方法でも正確な検査のためには核酸増幅過程での高い正確性が求められる。
【0007】
感染症治療および感染拡大防止のためには感染者に対し早急に適切な治療を施すことが必須であり、早期治療のためには正確性のみならず迅速性に優れた感染症検査が必要である。核酸増幅を用いる遺伝子検査は一般的に培養検査よりも迅速性に優れる。しかし同じ遺伝子検査でも核酸増幅方法あるいはDNAポリメラーゼなどの核酸合成酵素の性能により検査速度は大きく左右される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Journal of Clinical Microbiology, July 1992, p.1654-1660
【非特許文献2】Journal of Clinical Microbiology, July 1992, p.1685-1691
【非特許文献3】Journal of Clinical Microbiology, July 2000, p.2170-2173
【非特許文献4】German Medical Science, July, 2009, 7:Doc06
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
臨床現場においては、診断、治療及び予防を目的として、簡便・迅速かつ正確なMRSAの検出が望まれてきた。本発明はこの問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を特異的に増幅する1対のプライマーを用いることにより、従来技術よりも正確にMRSAを検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のような構成からなる。
【0011】
[項1]
試料中のMRSAを検出する方法であって、以下の(A)に示す工程により試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を検出する手段を含むことを特徴とする、MRSAの検出方法。
(A)
(1)配列番号1と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対であって、以下の(I)または(II)のいずれか1つ以上に該当する核酸プライマー対を用意する工程。
(I)フォワードプライマーが、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(II)リバースプライマーが、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(2)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する工程。
(3)工程(2)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(4)工程(3)で得られた複合体を検出する工程。
[項2]
項1に記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(I)に記載の核酸プライマー対が、配列番号1で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対である、項1に記載のMRSAの検出方法。
[項3]
項1または項2のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(I)に記載のフォワードプライマーが配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列である項1または項2に記載のMRSAの検出方法。
[項4]
項1または項2のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(II)に記載のリバースプライマーが配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列である項1または項2に記載のMRSAの検出方法。
[項5]
項1〜項4のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)に記載の核酸プローブが、配列番号24、25のいずれかに示される核酸配列からなる核酸プローブである、項1〜項4のいずれかに記載のMRSAの検出方法。
[項6]
項5に記載の核酸プローブが、末端のシトシンのうち少なくとも一つが蛍光色素で標識されている核酸プローブである、項5に記載のMRSAの検出方法。
[項7]
項1〜6のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、核酸増幅を、α型DNAポリメラーゼ、および、α型DNAポリメラーゼを変異させた変異型、のうち1つ以上を含む系で行う、項1〜6のいずれかに記載のMRSAの検出方法。
[項8]
項1〜7のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、さらに、以下の(B)に示す工程により試料中のメチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段を含むことを特徴とする、MRSAの検出方法。
(B)
(5)配列番号2と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対であって、以下の(III)または(IV)のいずれか1つ以上に該当する核酸プライマー対を用意する工程。
(III)フォワードプライマーが、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(IV)リバースプライマーが、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(6)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する工程。
(7)工程(6)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(8)工程(7)で得られた複合体を検出する工程。
[項9]
項8に記載のMRSAの検出方法において、工程(B)(III)に記載のフォワードプライマーが配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列である項8に記載のMRSAの検出方法。
[項10]
項8に記載のMRSAの検出方法において、工程(B)(IV)に記載のリバースプライマーが配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列である項8に記載のMRSAの検出方法。
[項11]
試料中のMRSAを検出するためのプライマーセットであって、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセット。
[項12]
項11に記載のプライマーセットが、配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成される、項11に記載のプライマーセット。
[項13]
項11または項12に記載のプライマーセットに加えて、さらに、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含む、項11または項12に記載のプライマーセット。
[項14]
項11または項12に記載のプライマーセットに加えて、さらに、配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含む、項13に記載のプライマーセット。
[項15]
項11〜14のいずれかに記載のプライマーセットを含む、MRSA検出キット。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、MRSAの検出を簡便・迅速かつ正確に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の結果を示す図である。
【図2】実施例1の結果を示す図である。
【図3】実施例1の結果を示す図である。
【図4】実施例1の結果を示す図である。
【図5】実施例1の結果を示す図である。
【図6】実施例1の結果を示す図である。
【図7】実施例1の結果を示す図である。
【図8】実施例1の結果を示す図である。
【図9】実施例1の結果を示す図である。
【図10】実施例1の結果を示す図である。
【図11】実施例2の結果を示す図である。
【図12】実施例2の結果を示す図である。
【図13】実施例2の結果を示す図である。
【図14】実施例2の結果を示す図である。
【図15】実施例2の結果を示す図である。
【図16】実施例2の結果を示す図である。
【図17】実施例2の結果を示す図である。
【図18】実施例2の結果を示す図である。
【図19】実施例3の結果を示す図である。
【図20】実施例3の結果を示す図である。
【図21】比較例1の結果を示す図である。
【図22】比較例2の結果を示す図である。
【図23】実施例4の結果を示す図である。
【図24】実施例4の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のMRSAの検出方法
本発明のMRSAの検出方法は、試料中のMRSAを検出する方法であって、ある特定の工程により試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を検出する方法、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のMRSAの検出方法において、試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を検出する方法としては、以下の(1)〜(4)の工程を例示することができる。
(1)黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を特異的に増幅する1対のプライマー対を用意する。
(2)被検核酸および該核酸プライマー対を含む反応液によって被検核酸を増幅する。
(3)工程(2)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
(4)工程(3)で得られた複合体を検出する。
【0016】
[1]黄色ブドウ球菌由来の核酸を増幅するプライマー対
本発明のMRSAの検出方法において、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を特異的に増幅する1対のプライマー対は、配列番号1で示されるnuc遺伝子と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対である。
上記において、配列番号1との核酸配列の相同性は、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%(すなわち配列番号1そのもの)である。
【0017】
[核酸配列の相同性]
なお、本願明細書において、核酸配列の相同性は、GENETYXソフトで比較した値を意味する。
GENETYXソフトは、例えば、GENETYX CORPORATIONから販売されているGENETYX WIN Version 6.1のものを使用できる。
また、本願明細書において、「相同性」の用語は、「同一性」の意味で用いている。
【0018】
上記のプライマー対は、以下の(I)または(II)のいずれか1つ以上に該当する。
(I)フォワードプライマーが、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(II)リバースプライマーが、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
【0019】
ここで、配列番号3は、配列番号1の326番目から345番目の部分である。また、配列番号4は、配列番号1の483番目から502番目の部分の相補鎖である。
【0020】
核酸増幅においては増幅産物長が短いほど増幅に要する時間は短くなる。発明者らはDNA鎖伸長反応を1サイクルあたり5秒以内で完了させるためには増幅産物長が400塩基未満であることが望ましいことを見出した。
配列番号3はnuc遺伝子のセンス鎖に由来する配列であり、配列番号4はアンチセンス鎖に由来する配列である。
上記のプライマー対は(I)または(II)のいずれか1つ以上に該当すれば特に限定されるものではないが、センス鎖に由来する配列とアンチセンス鎖に由来する配列の組合せでなければならない。
【0021】
これらのプライマー対を選択することにより、従来と比較して短時間でも正確に黄色ブドウ球菌を検出する効果がある。
【0022】
このようなプライマー対として、特に、フォワードプライマーとして配列番号7、8、9、10のいずれかで示される塩基配列、および/または、リバースプライマーとして配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列、の組合せが好ましい。
【0023】
[2]被検核酸の増幅
本発明における被検核酸は、例えば、一本鎖でもよいし、二本鎖でもよい。二本鎖の場合は、例えば、被検核酸とプローブとをハイブリダイズさせてハイブリッド体を形成するために、加熱により前記二本鎖を一本鎖に解離させる工程を含むことが好ましい。
【0024】
前記被検核酸の種類としては、特に制限されないが、例えば、DNAや、トータルRNA、mRNA等のRNA等があげられる。また、前記被検核酸は、例えば、黄色ブドウ球菌の血液培養試料や生体試料等の試料に含まれる核酸があげられる。
【0025】
前記生体試料としては、特に制限されないが、例えば、膿、胸水、咽頭拭い液、鼻腔拭い液、血液などが挙げられる。
試料の採取方法、DNAやRNA等の核酸の調製方法等は、制限されず、従来公知の方法が採用できる。
【0026】
続いて、単離したゲノムDNAを鋳型として、上述のプライマー対を用いて、PCR等の核酸増幅法によって、検出目的の塩基部位を含む配列を増幅させる。なお、PCR等の条件は、特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0027】
本発明のMRSAの検出方法における核酸の増幅工程に用いられる具体的な核酸増幅方法としては特に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)法、NASBA(Nucleic acid sequence based amplification)法、TMA(Transcription−mediated amplification)法、SDA(Strand Displacement Amplification)法等があげられるが、PCR法を用いることが好ましい。なお、これらの各方法において、増幅反応の条件は特に制限されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0028】
核酸増幅にPCR法を用いる場合、DNAポリメラーゼには、α型DNAポリメラーゼを用いることが好ましい。その理由を以下に説明する。
【0029】
本発明プローブが含まれる反応系でnuc遺伝子を増幅する場合、核酸増幅工程中に該核酸プローブが試料のnuc遺伝子またはそれらの増幅産物と結合しうる。核酸増幅工程中にnuc遺伝子と結合した該核酸プローブは、核酸プライマーとDNAポリメラーゼによる核酸増幅反応を阻害する。
【0030】
Taq DNA PolymeraseなどPolI型のDNAポリメラーゼは5’− 3’エキソヌクレアーゼ活性を持つことが知られている。この活性のため、核酸増幅反応中に鋳型となるnuc遺伝子と結合した核酸がある場合、該結合核酸はエキソヌクレアーゼ活性によって分解されてしまう。このため、反応系中の該核酸プローブが減少し核酸検出工程に問題が生じる可能性がある。従って、PolI型DNAポリメラーゼを用いて本発明を実施することは好ましくない。
【0031】
他方、KOD DNA Polymerase(超好熱始原菌Thermococcus kodakaraensis KOD1由来)などα型のDNAポリメラーゼは5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を持たず、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を持つ。従って、α型DNAポリメラーゼを用いれば上記問題を解決できるのみならず、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性により核酸増幅工程において高い正確性が発揮される。
【0032】
通常、α型DNAポリメラーゼは3’→ 5’エキソヌクレアーゼ活性のため、核酸増幅速度はPolI型酵素と比較して低い傾向がある。しかし、KOD DNA Polymeraseはα型DNAポリメラーゼでありながらDNA合成活性が高く100塩基/秒以上のDNA合成速度を有し伸長効率が優れている。従って、本発明の実施にはα型DNAポリメラーゼの中でも、KOD DNA Polymerase(東洋紡績製、商標)を用いることが好ましい。
【0033】
さらに、α型DNAポリメラーゼを変異させて100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を達成させた変異型、あるいは、野生型および/または変異型の組み合わせにより当該性能を達成させたDNAポリメラーゼ組成物も、本発明の実施に適したDNAポリメラーゼとして用いることができる。
例えば、上記KOD DNA Polymerase以外に100塩基/秒以上のデオキシリボ核酸合成速度を有するDNAポリメラーゼとして、「KOD FX(東洋紡績製、登録商標)」、「KOD −Plus−(東洋紡績製、商標)」、「KOD Dash(東洋紡績製、登録商標)」、PrimeSTAR HS DNAポリメラーゼ(タカラバイオ製、登録商標)なども利用できる。
なかでも、高い正確性とDNA合成活性とをあわせ持つKOD −Plus−が望ましい。
【0034】
[DNA合成活性]
本発明において、DNA合成活性とは鋳型DNAにアニールされたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの3’−ヒドロキシル基にデオキシリボヌクレオシド5’−トリホスフェートのα−ホスフェートを共有結合せしめることにより、デオキシリボ核酸にデオキシリボヌクレオシド5’−モノホスフェートを鋳型依存的に導入する反応を触媒する活性をいう。
【0035】
その活性測定法は、酵素活性が高い場合には、保存緩衝液でサンプルを希釈して測定を行う。本発明では、下記A液25μl、B液およびC液各5μlおよび滅菌水10μlをエッペンドルフチューブに加えて攪拌混合した後、上記酵素液5μlを加えて75℃で10分間反応する。その後、氷冷し、E液50μl、D液100μlを加えて、攪拌後、さらに10分間氷冷する。この液をガラスフィルター(ワットマンGF/Cフィルター)で濾過し、D液及びエタノールで充分洗浄し、フィルターの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード社製)で計測し、鋳型DNAへのヌクレオチドの取り込みを測定する。酵素活性の1単位はこの条件下で30分あたり10nモルのヌクレオチドを酸不溶性画分に取り込む酵素量とする。
A: 40mM Tris−HCl(pH7.5)
16mM 塩化マグネシウム
15mM ジチオスレイトール
100μg/ml BSA
B: 2μg/μl 活性化仔牛胸腺DNA
C: 1.5mM dNTP(250cpm/pmol〔3H〕dTTP)
D: 20% トリクロロ酢酸(2mMピロリン酸ナトリウム)
E: 1μg/μl キャリアーDNA
【0036】
[3’−5’エキソヌクレアーゼ活性]
本発明において、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性とは、DNAの3’末端領域を切除し、5’−モノヌクレオチドを遊離する活性をいう。
その活性測定法は、50μlの反応液(120mM Tris−HCl(pH8.8 at 25℃), 10mM KCl, 6mM 硫酸アンモニウム,1mM MgCl2, 0.1% Triton X−100, 0.001% BSA,5 μg トリチウムラベルされた大腸菌DNA)を1.5mlのエッペンドルフチューブに分注し、DNAポリメラーゼを加える。75℃で10分間反応させた後、氷冷によって反応を停止し、次にキャリアーとして、0.1%のBSAを50μl加え、さらに10%のトリクロロ酢酸、2%ピロリン酸ナトリウム溶液を100μl加え混合する。氷上で15分放置した後、12,000回転で10分間遠心し沈殿を分離する。上清100μlの放射活性を液体シンチレーションカウンター(パッカード社製)で計測し、酸可溶性画分に遊離したヌクレオチド量を測定する。
【0037】
[3]黄色ブドウ球菌由来の核酸増幅産物とプローブとの複合体形成
本発明のMRSAの検出方法においては、工程(2)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
【0038】
核酸増幅産物を含む試料に核酸プローブを添加するタイミングは、特に制限されず、例えば、前述の核酸増幅反応前、核酸増幅反応途中および核酸増幅反応後のいずれに、増幅反応の反応系に添加してもよい。
中でも、増幅反応と、後述の検出反応とを連続的に行うことができるため、増幅反応前に添加することが好ましい。このように核酸増幅反応の前に前記プローブを添加する場合は、例えば、後述のように、その3’末端に、蛍光色素を付加したり、リン酸基を付加したりすることが好ましい。
【0039】
前記プローブは、核酸増幅産物を含む液体試料に添加してもよいし、溶媒中で核酸増幅産物と混合してもよい。前記溶媒としては、特に制限されず、例えば、Tris−HCl等の緩衝液、KCl、MgCl2、MgSO4、グリセロール等を含む溶媒、PCR反応液等、従来公知のものがあげられる。
【0040】
本発明のMRSAの検出方法において、配列番号24で示される、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を検出するためのプローブは、nuc遺伝子の386〜405位に相補的な配列で構成されている。
配列番号25で示される本発明のプローブも、nuc遺伝子の358〜376位に相補的な配列で構成されている。
【0041】
上記のプローブは、配列番号24または25に示される核酸配列が好ましいが、nuc遺伝子と相補的な連続した10塩基以上30塩基以下の核酸配列またはこれに相補的な核酸配列であれば、特に限定されない。
【0042】
上記のプローブは、後述の融解曲線解析によってnuc遺伝子の塩基配列中に変異の有無があるかを識別することができる。
本発明プローブは野生型nuc遺伝子と完全に相補的な塩基配列であるため、nuc遺伝子中の本発明プローブが結合する部分領域の野生型と変異型とを識別することができる。
【0043】
発明者らはnuc遺伝子の402位にしばしば置換変異が現れることを見出した。402位の塩基はチミンであるが、黄色ブドウ球菌の中にnuc遺伝子の402位がしばしばシトシンに置換された株が散見された。配列番号24で表される本発明プローブは402位を含む部分領域と相補的であるため、402位の変異を検出することが可能である。
nuc遺伝子の402位はチミンでもシトシンでもアミノ酸には変化が無い。従って、上記変異は黄色ブドウ球菌の形質には影響を与えないものと考えられる。
【0044】
上記のような遺伝子変異はしばしば株の識別に利用できる。例えば、特定の地域や施設で流行した黄色ブドウ球菌のnuc遺伝子402位が置換変異型であった場合、新たに黄色ブドウ球菌に感染した患者から採取した黄色ブドウ球菌のnuc遺伝子の402位を調べることで、当該患者が保有する黄色ブドウ球菌が過去に流行した株と同一である可能性を探ることができる。
【0045】
[4]核酸増幅産物とプローブとの複合体の検出
上記で得られた複合体を検出する方法は特に限定されない。例えば、融解曲線分析による方法が挙げられる。
【0046】
融解曲線分析の場合は、例えば、以下のように行う。
二本鎖DNAを含む溶液を加熱していくと、260nmにおける吸光度が上昇する。これは、二本鎖DNAにおける両鎖間の水素結合が加熱によってほどけ、一本鎖DNAに解離(DNAの融解)することが原因である。そして、全ての二本鎖DNAが解離して一本鎖DNAになると、その吸光度は、加熱開始時の吸光度(二本鎖DNAのみの吸光度)の約1.5倍程度を示し、これによって融解が完了したと判断できる。
【0047】
本発明において、融解曲線分析を行うための温度変化に伴うシグナル変動の測定は、前述のような原理から、260nmの吸光度測定により行うこともできるが、本発明のプローブに付加した標識のシグナルを測定することが好ましい。このため、本発明のMRSAの検出方法に用いるプローブとしては、標識化プローブを使用することが好ましい。
【0048】
標識化プローブとしては、例えば、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ、または、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブがあげられる。前者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成している際にはシグナルを示さず、加熱によりプローブが遊離するとシグナルを示す。また、後者のプローブであれば、検出対象配列とハイブリッド(二本鎖)を形成することによってシグナルを示し、加熱によりプローブが遊離するとシグナルが減少(消失)する。したがって、この標識によるシグナルをシグナル特有の条件(吸光度等)で検出することによって、前記260nmの吸光度測定と同様に、融解の進行を把握することができる。
【0049】
標識化プローブの具体例として、例えば、蛍光色素で標識され、単独で蛍光を示し且つハイブリッド形成により蛍光が減少(例えば、消光)するプローブが好ましい。このような現象は、一般に、蛍光消光現象と呼ばれる。この蛍光消光現象を利用したプローブとしては、中でも、一般的にグアニン消光プローブとよばれるものが好ましい。このようなプローブは、いわゆるQProbe(登録商標)として知られている。グアニン消光プローブとは、例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端もしくは5’末端の塩基がシトシンとなるように設計し、その末端の塩基シトシンが相補的な塩基グアニンに近づくと発光が弱くなる蛍光色素で前記末端を標識化したプローブである。本発明のプローブにおいては、例えば、蛍光消光現象を示す蛍光色素を、前記オリゴヌクレオチドの3’末端のシトシンに結合させてもよいし、前記オリゴヌクレオチドの5’末端をシトシンに設計し、これに結合させてもよい。
【0050】
前記蛍光色素は、制限されないが、例えば、フルオレセイン、リン光体、ローダミン、ポリメチン色素誘導体等があげられ、市販の蛍光色素としては、例えば、BODIPY FL(商標、モレキュラープローブ社製)、FluorePrime(商標、アマシャムファルマシア社製)、Fluoredite(商標、ミリポア社製)、FAM(ABI社製)、Cy3およびCy5(アマシャムファルマシア社製)、TAMRA(モレキュラープローブ社製)等があげられる。プローブの検出条件は、特に制限されず、使用する蛍光色素により適宜決定できるが、例えば、Pacific Blueは、検出波長450〜480nm、TAMRAは、検出波長585〜700nm、BODIPY FLは、検出波長515〜555nmで検出できる。このようなプローブを使用すれば、シグナルの変動により、ハイブリダイズと解離とを容易に確認することができる。
【0051】
本発明のMRSAの検出方法に用いるプローブは、例えば、3’末端にリン酸基が付加されてもよい。後述するように、遺伝子の有無を検出する被検核酸(標的核酸)は、PCR等の核酸増幅法によって調製することができ、この際、本発明のプローブを核酸増幅反応の反応系に共存させることができる。このような場合、プローブの3’末端にリン酸基を付加させておけば、プローブ自体が核酸増幅反応によって伸長することを十分に防止できる。また、3’末端に前述のような標識物質を付加することによっても、同様の効果が得られる。
【0052】
得られたPCR増幅産物の解離、および、解離により得られた一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記反応液の温度変化によって行うことができる。
【0053】
前記解離工程における加熱温度は、前記増幅産物が解離できる温度であれば特に制限されないが、例えば、85〜98℃である。加熱時間も特に制限されないが、通常、1秒〜10分であり、好ましくは1秒〜5分である。
【0054】
また、解離した一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリダイズは、例えば、前記解離工程の後、前記解離工程における加熱温度を降下させることによって行うことができる。温度条件としては、例えば、35〜50℃である。
【0055】
ハイブリダイズ工程の反応系(反応系)における各組成の体積や濃度は、特に制限されない。具体例としては、前記反応系において、DNAの濃度は、例えば、0.01〜100μmol/Lであり、好ましくは0.1〜10μmol/L、前記標識化プローブの濃度は、例えば、前記DNAに対する添加割合を満たす範囲が好ましく、例えば、0.01〜100μmol/Lであり、好ましくは0.01〜10μmol/Lである。
【0056】
そして、前記反応液の温度を変化させ、前記増幅産物と前記標識化プローブとのハイブリッド形成体の融解状態を示すシグナル値を測定する。具体的には、例えば、前記反応液(前記一本鎖DNAと前記標識化プローブとのハイブリッド形成体)を加熱し、温度上昇に伴うシグナル値の変動を測定する。前述のように、末端のC塩基が標識化されたプローブ(グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAとハイブリダイズした状態では、蛍光が減少(または消光)し、解離した状態では、蛍光を発する。したがって、例えば、蛍光が減少(または消光)しているハイブリッド形成体を徐々に加熱し、温度上昇に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0057】
蛍光強度の変動を測定する際の温度範囲は、特に制限されないが、例えば、開始温度が室温〜85℃であり、好ましくは25〜70℃であり、終了温度は、例えば、40〜105℃である。また、温度の上昇速度は、特に制限されないが、例えば、0.05〜20℃/秒であり、好ましくは0.08〜5℃/秒である。
【0058】
被検核酸の有無の決定は、例えば、ハイブリッド形成時におけるシグナル変動を測定することによって行いうる。すなわち、前記プローブを含む反応液の温度を降下させてハイブリッド形成体を形成する際に、前記温度降下に伴うシグナル変動を測定する。
【0059】
具体例として、単独でシグナルを示し且つハイブリッド形成によりシグナルを示さない標識化プローブ(例えば、グアニン消光プローブ)を使用した場合、一本鎖DNAとプローブとが解離している状態では蛍光を発しているが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、前記蛍光が減少(または消光)する。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の減少を測定すればよい。他方、単独でシグナルを示さず且つハイブリッド形成によりシグナルを示す標識化プローブを使用した場合、一本鎖DNAとプローブとが解離している状態では蛍光を発していないが、温度の降下によりハイブリッドを形成すると、蛍光を発するようになる。したがって、例えば、前記反応液の温度を徐々に降下させて、温度下降に伴う蛍光強度の増加を測定すればよい。
【0060】
また、本発明においては、目的の塩基部位における遺伝子型の決定のために、前記シグナルの変動を解析してTm(melting temperature)値として決定してもよい。
【0061】
[5]メチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段
また、本発明のMRSAの検出方法においては、さらに、試料中のメチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段として、以下の(5)〜(8)の工程を含ませることができる。これにより、黄色ブドウ球菌由来の核酸と、メチシリン耐性遺伝子由来の核酸とを、同時に検出することができ、正確な検査結果をより迅速に臨床現場に提供することが可能になる。
(5)MRSAのメチシリン耐性遺伝子の領域を特異的に増幅する1対のプライマー対を用意する。
(6)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する。
(7)工程(6)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
(8)工程(7)で得られた複合体を検出する。
【0062】
本発明のMRSAの検出方法において、メチシリン耐性遺伝子由来の核酸領域を特異的に増幅する1対のプライマー対は、配列番号2で示されるmecA遺伝子と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対である。
上記において、配列番号2との核酸配列の相同性は、好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%(すなわち配列番号2そのもの)である。
【0063】
上記のプライマー対は、以下の(III)または(IV)のいずれか1つ以上に該当する。
(III)フォワードプライマーが、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(IV)リバースプライマーが、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
【0064】
ここで、配列番号5は、配列番号2の366番目から385番目の部分である。また、配列番号6は、配列番号2の524番目から543番目の相補鎖の部分である。
配列番号5mecA遺伝子のセンス鎖に由来する配列であり、配列番号6はアンチセンス鎖に由来する配列である。
上記のプライマー対は(III)または(IV)のいずれか1つ以上に該当すれば特に限定されるものではないが、センス鎖に由来する配列とアンチセンス鎖に由来する配列の組合せでなければならない。
【0065】
これらのプライマー対を選択することにより、従来と比較して短時間でも正確にメチシリン耐性遺伝子を検出する効果がある。また、これらのプライマー対で検出されるメチシリン耐性遺伝子はMRSA由来のメチシリン耐性遺伝子には限定されず、表皮ブドウ球菌などのメチシリン耐性遺伝子も検出することができる。従って本発明のプライマー対はMRSA以外の菌由来のメチシリン耐性遺伝子の検出に使用してもよい。
【0066】
このようなプライマー対として、特に、フォワードプライマーとして配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列、および/または、リバースプライマーとして配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列、の組合せが好ましい。
【0067】
メチシリン耐性遺伝子由来の核酸を増幅する工程に用いられる具体的な核酸増幅方法は特に限定されず、本書の上記[2]で記載された方法を用いることができる。黄色ブドウ球菌由来の核酸と、メチシリン耐性遺伝子由来の核酸とで同じ増幅法を用いることが好ましい。また、試料中のメチシリン耐性遺伝子由来の核酸を増幅する工程は、試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を増幅する工程と、別々に行っても良いし、同時に行っても良い。
【0068】
上記メチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段においては、工程(6)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる。
【0069】
その工程で用いるプローブは、前述のように、mecA遺伝子の変異の検出に使用することができる。複合体の形成方法は、何ら制限されず、被検核酸と前記プローブとのハイブリダイズを利用する方法であればよい。
【0070】
本発明のMRSAの検出方法において、メチシリン耐性遺伝子に特異的なmecA遺伝子の領域を検出するためのプローブは、mecA遺伝子と相補的な連続した10塩基以上30塩基以下の核酸配列またはこれに相補的な核酸配列であれば特に限定されるものではないが、配列番号26または配列番号27で示される塩基配列を有するものが例示できる。
【0071】
上記で得られた複合体を検出する方法は特に限定されない。例えば、本書の上記[4]で記載された方法を用いることができる。融解曲線分析による方法が挙げられる。
【0072】
[6]プライマーセット
本発明のプライマーセットは、上記のMRSA検出方法に用いることが出来る。
その一態様は、黄色ブドウ球菌に特異的なnuc遺伝子の領域を特異的に増幅することができる、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセットである。
nuc遺伝子の領域を特異的に増幅することができるプライマーセットとして、好ましくは、配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成される、項11に記載のプライマーセットである。
【0073】
本発明のプライマーセットは、上記のプライマーセットに加えて、さらに、メチシリン耐性遺伝子由来の核酸領域を特異的に増幅することができる、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含んでいてもよい。
メチシリン耐性遺伝子由来の核酸領域を特異的に増幅することができるプライマーセットとして、好ましくは、配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成されるプライマーセットである。
[7]MRSA検出キット
本発明のMRSA検出キットは、上記のプライマーセットのうちいずれかを含み、上記のMRSA検出方法に用いることが出来る。該キットは、核酸プローブと、DNAポリメラーゼとを含み、そのほかに、反応に必要な試薬を適宜含むことが好ましい。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0075】
〔実施例1:MRSA由来DNAからのnuc遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
STAPHYLOCOCCUS AUREUS (mecA+) DNA CONTROL(Vircell社製)を10mMのTris−HCl(pH7.5)で100(コピー/μl)に調製し、試料とした。陰性コントロール(NC)として水を使用した。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
上記試料および陰性コントロールにそれぞれ下記試薬を添加して、下記条件によりnuc遺伝子を検出した。核酸増幅および融解曲線解析には東洋紡績社製GENECUBE(登録商標)を使用した。
【0076】
試薬
以下の試薬を含む溶液を調製した。なお、核酸プライマーの組み合わせについては表1に記載した。
100μM核酸プライマー(配列番号7、8、9、10のいずれか1本)0.2μl
10μM核酸プライマー(配列番号11、12、13、14のいずれか1本)0.4μl
10μM核酸プローブ(配列番号24、3’末端をBODIPY−FL標識)0.4μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
試料3μl
【0077】
【表1】
【0078】
核酸増幅および融解曲線解析
94℃・2分
(以上1サイクル)
97℃・1秒
50℃・5秒
63℃・5秒
(以上60サイクル)
94℃・30秒
39℃・30秒
39℃〜75℃(0.09℃/秒で温度上昇)
【0079】
結果
図1は、表1の組み合わせNo.1で示されるプライマー対を用いて核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図1より明らかなように、黄色ブドウ球菌の遺伝子が検出されている。なお、本実施例では増幅開始から検出終了まで約45分で完了しており、非特許文献4に記載の各方法よりもさらに迅速性に優れる検査方法である。
また、図2から図10は、それぞれ表1の組み合わせNo.2から10で示されるプライマー対を用いて、同様の実験を行った結果である。いずれの組み合わせでも黄色ブドウ球菌のnuc遺伝子が検出されており、本発明のnuc遺伝子検出用核酸プライマーはいずれもnuc遺伝子の迅速検出に有効であることが示された。
【0080】
〔実施例2:MRSA由来DNAからのmecA遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
実施例1と同じ。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0081】
試薬
以下の試薬を含む溶液を調製した。なお、核酸プライマーの組み合わせについては表2に記載した。
10μM核酸プライマー(配列番号15、16、17、18、19のいずれか1本)0.4μl
100μM核酸プライマー(配列番号20、21、22、23のいずれか1本)0.2μl
10μM核酸プローブ(配列番号26、3’末端をBODIPY−FL標識)0.4μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
試料3μl
【0082】
【表2】
【0083】
核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0084】
結果
図11は、表1の組み合わせNo.1で示されるプライマー対を用いて核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。図11より明らかなように、mecA遺伝子が検出されている。また、図12から図18は、それぞれ表1の組み合わせNo.2から9で示されるプライマー対を用いて、同様の実験を行った結果である。いずれの組み合わせでも黄色ブドウ球菌のmecA遺伝子が検出されており、本発明のmecA遺伝子検出用核酸プライマーはいずれもmecA遺伝子の迅速検出に有効であることが示された。
【0085】
〔実施例3:異なる核酸プローブを用いたMRSA由来DNAからのnuc遺伝子の検出〕
(1)試料の調製
実施例1と同じ。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0086】
試薬
以下の試薬を含む溶液を調製した。なお、核酸プライマーの組み合わせについては表3に記載した。
10μM核酸プライマー(配列番号7、9のいずれか1本)0.4μl
100μM核酸プライマー(配列番号11、12のいずれか1本)0.2μl
10μM核酸プローブ(配列番号25、3’末端をBODIPY−FL標識)0.4μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
試料3μl
【0087】
【表3】
【0088】
結果
図19は組み合わせNo.1、図20は組み合わせNo.2で示されるプライマー対を用いて核酸増幅を行い、その後の温度上昇にともなう蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。いずれのプライマー対でもnuc遺伝子が検出されており、配列番号25で示される核酸プローブもnuc遺伝子検出に適していることが示される。
【0089】
〔実施例4:MRSA由来DNAからのnuc遺伝子およびmecA遺伝子の同時検出〕
上記の実施例1における組み合わせ番号1と、実施例2における組み合わせ番号1のプライマーセットおよびプローブを用いて核酸増幅を行い、nuc遺伝子およびmecA遺伝子の同時検出を行った。
(1)資料の調製
血液培養ボトルにて培養された黄色ブドウ球菌(MSSA)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)からフェノールクロロホルム抽出法によって抽出したDNA(約100コピー/μl)を試料とした。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0090】
試薬
nuc遺伝子検出用試薬は実施例1と、mecA遺伝子検出用試薬は実施例2と同じ。
【0091】
核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0092】
結果
本実施例の融解曲線解析の結果を図23および図24に示した。図のResultは検出結果を示しており、nucのmは402位に変異が入った変異型nuc遺伝子が検出されたことを、Wは野生型のnuc遺伝子が検出されたことを示す。mecAの−はmecA遺伝子が検出されなかったことを、RはmecA遺伝子が検出されたことを示す。また、PeakTm1は検出ピークが現れた時の温度を、PeakF1はピークの蛍光微分値を示している。
図23ではnuc遺伝子がm、mecAが−であり、試料であるMSSA DNAはメチシリン耐性遺伝子を持っておらず、なおかつnuc遺伝子が変異型であることが明らかとなった。図24ではnuc遺伝子がW、mecAがRであり、試料であるMRSADNAはnuc遺伝子とmecA遺伝子の両方を有することが明らかになった。
以上から、本発明のプライマー・プローブを用いてnuc遺伝子とmecA遺伝子を同時に調べることでMSSAとMRSAの識別を容易に行うことが可能である。また、nuc遺伝子については402位の変異を検出できることが示唆された。
【0093】
〔比較例1:nuc遺伝子検出における増幅産物長限定効果〕
(1)試料の調製
STAPHYLOCOCCUS AUREUS (mecA+) DNA CONTROL(Vircell社製)を10mMのTris−HCl(pH7.5)で25コピー/μlに調製し、試料とした。陰性コントロール(NC)として水を使用した。
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0094】
試薬
以下の試薬を含む10μl溶液を調製した。核酸プライマーは本発明に記載の核酸プライマー(配列番号7、11)および発明効果比較用核酸プライマー(配列番号28、29)を用いた。
[試薬組成1]
100μM核酸プライマー(配列番号7)0.15μl
10μM核酸プライマー(配列番号11)0.3μl
10μM核酸プローブ(配列番号24、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
水0.25μl
試料 1μl
[試薬組成2]
以下の試薬を含む10μl溶液を調製した。
100μM核酸プライマー(配列番号28)0.15μl
10μM核酸プライマー(配列番号29)0.3μl
10μM核酸プローブ(配列番号24、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
水0.25μl
試料 1μl
【0095】
核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0096】
結果
本比較例は核酸増幅産物長がnuc遺伝子検出に及ぼす影響を見たものである。核酸プライマー7、11による核酸増幅では増幅産物長は188bpとなる。一方、核酸プライマー28、29による核酸増幅では増幅産物長は509bpとなる。
本比較例の結果は図21で表される。増幅産物長が短くなるよう設計した核酸プライマーを含む試薬組成1で核酸増幅および検出を行うと、25コピーのDNAからnuc遺伝子を検出した。しかし、増幅産物長が長くなるよう設計した核酸プライマーを含む試薬組成2で核酸増幅および検出を行うと、25コピーのDNAからnuc遺伝子を検出することはできなかった。以上から、増幅産物長を短く限定すると遺伝子検査の感度が向上することが示された。
【0097】
〔比較例2:mecA遺伝子検出における増幅産物長限定効果〕
(1)試料の調製
比較例1と同じ
(2)核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0098】
試薬
以下の試薬を含む10μl溶液を調製した。核酸プライマーは本発明に記載の核酸プライマー(配列番号15、20)および発明効果比較用核酸プライマー(配列番号30、31)を用いた。
[試薬組成1]
10μM核酸プライマー(配列番号15)0.3μl
100μM核酸プライマー(配列番号20)0.15μl
10μM核酸プローブ(配列番号26、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
水0.25μl
試料 1μl
[試薬組成2]
10μM核酸プライマー(配列番号30)0.3μl
100μM核酸プライマー(配列番号31)0.15μl
10μM核酸プローブ(配列番号26、3’末端をBODIPY−FL標識)0.3μl
KOD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
PPD Mix(ジーンキューブ(R)テストベーシック、東洋紡製)3μl
水0.25μl
試料 1μl
【0099】
核酸増幅および融解曲線解析
実施例1と同じ。
【0100】
結果
本比較例は核酸増幅産物長がmecA遺伝子検出に及ぼす影響を見たものである。核酸プライマー15、20による核酸増幅では増幅産物長は205bpとなる。一方、核酸プライマー30、31による核酸増幅では増幅産物長は418bpとなる。
本比較例の結果は図22で表される。増幅産物長が短くなるよう設計した核酸プライマーを含む試薬組成1で核酸増幅および検出を行うと、25コピーのDNAからmecA遺伝子を検出した。しかし、増幅産物長が長くなるよう設計した核酸プライマーを含む試薬組成2で核酸増幅および検出を行うと、25コピーのDNAからmecA遺伝子を検出することはできなかった。以上から、nuc遺伝子検査の場合(比較例1)と同様に、mecA遺伝子検査においても増幅産物長を短く限定すると遺伝子検査の感度が向上することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明を黄色ブドウ球菌の遺伝子検査に利用することで、迅速性、正確性の両方に優れ、なおかつ高感度に黄色ブドウ球菌を検出することができる。さらに、メチシリン耐性の有無を適切に識別できる。また、黄色ブドウ球菌以外の菌のメチシリン耐性遺伝子の有無も識別できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のMRSAを検出する方法であって、以下の(A)に示す工程により試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を検出する手段を含むことを特徴とする、MRSAの検出方法。
(A)
(1)配列番号1と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対であって、以下の(I)または(II)のいずれか1つ以上に該当する核酸プライマー対を用意する工程。
(I)フォワードプライマーが、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(II)リバースプライマーが、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(2)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する工程。
(3)工程(2)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(4)工程(3)で得られた複合体を検出する工程。
【請求項2】
請求項1に記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(I)に記載の核酸プライマー対が、配列番号1で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対である、請求項1に記載のMRSAの検出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(I)に記載のフォワードプライマーが配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列である請求項1または請求項2に記載のMRSAの検出方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(II)に記載のリバースプライマーが配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列である請求項1または請求項2に記載のMRSAの検出方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)に記載の核酸プローブが、配列番号24、25のいずれかに示される核酸配列からなる核酸プローブである、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のMRSAの検出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸プローブが、末端のシトシンのうち少なくとも一つが蛍光色素で標識されている核酸プローブである、請求項5に記載のMRSAの検出方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、核酸増幅を、α型DNAポリメラーゼ、および、α型DNAポリメラーゼを変異させた変異型、のうち1つ以上を含む系で行う、請求項1〜6のいずれかに記載のMRSAの検出方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、さらに、以下の(B)に示す工程により試料中のメチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段を含むことを特徴とする、MRSAの検出方法。
(B)
(5)配列番号2と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対であって、以下の(III)または(IV)のいずれか1つ以上に該当する核酸プライマー対を用意する工程。
(III)フォワードプライマーが、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(IV)リバースプライマーが、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(6)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する工程。
(7)工程(6)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(8)工程(7)で得られた複合体を検出する工程。
【請求項9】
請求項8に記載のMRSAの検出方法において、工程(B)(III)に記載のフォワードプライマーが配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列である請求項8に記載のMRSAの検出方法。
【請求項10】
請求項8に記載のMRSAの検出方法において、工程(B)(IV)に記載のリバースプライマーが配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列である請求項8に記載のMRSAの検出方法。
【請求項11】
試料中のMRSAを検出するためのプライマーセットであって、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセット。
【請求項12】
請求項11に記載のプライマーセットが、配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成される、請求項11に記載のプライマーセット。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のプライマーセットに加えて、さらに、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含む、請求項11または請求項12に記載のプライマーセット。
【請求項14】
請求項11または請求項12に記載のプライマーセットに加えて、さらに、配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含む、請求項13に記載のプライマーセット。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれかに記載のプライマーセットを含む、MRSA検出キット。
【請求項1】
試料中のMRSAを検出する方法であって、以下の(A)に示す工程により試料中の黄色ブドウ球菌由来の核酸を検出する手段を含むことを特徴とする、MRSAの検出方法。
(A)
(1)配列番号1と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対であって、以下の(I)または(II)のいずれか1つ以上に該当する核酸プライマー対を用意する工程。
(I)フォワードプライマーが、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(II)リバースプライマーが、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(2)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する工程。
(3)工程(2)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(4)工程(3)で得られた複合体を検出する工程。
【請求項2】
請求項1に記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(I)に記載の核酸プライマー対が、配列番号1で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対である、請求項1に記載のMRSAの検出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(I)に記載のフォワードプライマーが配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列である請求項1または請求項2に記載のMRSAの検出方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)(II)に記載のリバースプライマーが配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列である請求項1または請求項2に記載のMRSAの検出方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、工程(A)に記載の核酸プローブが、配列番号24、25のいずれかに示される核酸配列からなる核酸プローブである、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のMRSAの検出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸プローブが、末端のシトシンのうち少なくとも一つが蛍光色素で標識されている核酸プローブである、請求項5に記載のMRSAの検出方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、核酸増幅を、α型DNAポリメラーゼ、および、α型DNAポリメラーゼを変異させた変異型、のうち1つ以上を含む系で行う、請求項1〜6のいずれかに記載のMRSAの検出方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のMRSAの検出方法において、さらに、以下の(B)に示す工程により試料中のメチシリン耐性遺伝子由来の核酸を検出する手段を含むことを特徴とする、MRSAの検出方法。
(B)
(5)配列番号2と95%以上相同な塩基配列で示される核酸配列のうち一部領域を核酸増幅するための核酸プライマー対であって、以下の(III)または(IV)のいずれか1つ以上に該当する核酸プライマー対を用意する工程。
(III)フォワードプライマーが、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(IV)リバースプライマーが、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなる核酸プライマーである。
(6)被検核酸および核酸プライマー対を含む反応液によって、被検核酸を増幅する工程。
(7)工程(6)によって得られた核酸増幅産物と、該核酸増幅産物の一部と複合体を形成せしめるように設計された核酸プローブとをハイブリダイズさせ複合体を形成せしめる工程。
(8)工程(7)で得られた複合体を検出する工程。
【請求項9】
請求項8に記載のMRSAの検出方法において、工程(B)(III)に記載のフォワードプライマーが配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列である請求項8に記載のMRSAの検出方法。
【請求項10】
請求項8に記載のMRSAの検出方法において、工程(B)(IV)に記載のリバースプライマーが配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列である請求項8に記載のMRSAの検出方法。
【請求項11】
試料中のMRSAを検出するためのプライマーセットであって、配列番号3で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号4で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセット。
【請求項12】
請求項11に記載のプライマーセットが、配列番号7、8、9、10、のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号11、12、13、14のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成される、請求項11に記載のプライマーセット。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載のプライマーセットに加えて、さらに、配列番号5で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるフォワードプライマー、および、配列番号6で示される塩基配列を含む20塩基以上36塩基以下の塩基配列からなるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含む、請求項11または請求項12に記載のプライマーセット。
【請求項14】
請求項11または請求項12に記載のプライマーセットに加えて、さらに、配列番号15、16、17、18、19のいずれかで示される塩基配列であるフォワードプライマー、および、配列番号20、21、22、23のいずれかで示される塩基配列であるリバースプライマーから構成されるプライマーセットを含む、請求項13に記載のプライマーセット。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれかに記載のプライマーセットを含む、MRSA検出キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
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【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−48619(P2013−48619A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172817(P2012−172817)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】
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