説明

モータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造

【課題】 冷却ファン等の組付け部品の組付けを容易に行なうことができるモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造を提供すること。
【解決手段】 筐体内に、発熱体を設けた回路基板と、前記発熱体が発する熱を放熱する冷却フィンを備えた放熱器を配設し、該放熱器の冷却フィンを冷却する冷却ファンを内蔵したモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造において、
前記筐体6内の放熱器5に、前記冷却フィン13の配設方向と交叉する方向に、冷却ファン9を配置する収納用凹部を設けるとともに、前記筐体6の上面を覆う上部カバー3の前記冷却ファン9の取付位置に対応する内壁部にファン保持部31を形成し、前記筐体6の上部カバー3を組付けて該カバー3のファン保持部31によって前記冷却ファン9のハウジングを保持して該冷却ファン9を前記筐体6内に組み付けた構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装した回路基板を筐体内に収納したモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品を実装した回路基板を筐体内に収納したモータ等の制御装置は、回路基板に取り付けられたトランジスタ等の発熱素子から発せられる熱による筐体内部の温度上昇を防ぐために、冷却ファンを備えている。このような、従来の冷却ファンでは、冷却ファンのハウジングを、ネジ等を用いて筐体に組付けるのが一般的である(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、この構造では、筐体を組み立てる際、冷却ファンのリード線(ケーブル)が作業の邪魔になるという問題があった。
そこで、この問題を解決するため、特許文献1では、冷却ファンを一旦、フック形状が配置されたファンユニットに固定後、そのユニットのコネクタに冷却ファンを接続し、ファンユニットとして完了する。その後、ファンユニットを筐体にネジ止め固定し、筐体側の別のコネクタと対向する位置で嵌合することで、リード線引き回し作業を簡素化する構造を提案している。
【特許文献1】特開2000−31678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この実現のためには、リード線コネクタの位置決め、位置調整が可能な固定機能を用意する必要があり、構造が複雑、部品点数が多い、工数がかかる等の問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決し、冷却ファン等の組付け部品の組付けを容易に行なうことができるモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、筐体内に、発熱体を設けた回路基板と、前記発熱体が発する熱を放熱する冷却フィンを備えた放熱器を配設し、該放熱器の冷却フィンを冷却する冷却ファンを内蔵したモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造において、 前記筐体内の放熱器に、前記冷却ファンを配置する収納用凹部を設けるとともに、前記筐体の上面を覆う上部カバーの前記冷却ファンの取付位置に対応する内壁部にファン保持部を形成し、前記筐体の上部カバーを組付けて該カバーのファン保持部によって前記冷却ファンのハウジングを保持して該冷却ファンを前記筐体内に組み付けたことにある。
また、本発明は、前記放熱器と回路基板を仕切る壁面に切欠き部を形成し、前記冷却ファンのリード線を、前記切欠き部を通して前記回路基板のコネクタ部に組み付けたことにある。
さらに、本発明は、前記放熱器の冷却フィンの一部を切欠いて段差部を形成し、該段差部にモータを制御する回生抵抗器を組み付けたことにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば次のような効果を奏することができる。
請求項1によれば、冷却ファンの組付け作業に組付け用のネジ等の部品を必要とせず、組付け作業を容易に行なうことができる。
請求項2によれば、冷却ファンのリード線の引き回し作業が容易で、構造を簡素化することができる。
請求項3によれば、モータを制御する回生抵抗器を放熱器の冷却フィンの一部を切欠いて形成した段差部に配設することができるので、冷却効率の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、モータ制御機器を分解して示す斜視図、図2は冷却ファンを外して示す筐体の斜視図、図3は第1の回路基板を示す斜視図、図4は上部カバーの裏面を示す平面図、図5は図4のA−A線断面図である。図6は回生抵抗器の取付位置を示す筐体の斜視図、図7は冷却ファンおよび回生抵抗器の配線構造を示す平面図、図8は第2の回路基板の取り付け位置を示す斜視図、図9は汲み付けが完了した状態を示す斜視図である。
【0009】
図1ないし図8において、モータ制御機器1の前部カバー2、上部カバー3、下部カバー4を外して放熱器5を備えた筐体6を示しており、筐体6には、発熱体としての発熱素子7a,7bが設けられた第1の回路基板7、および第2の回路基板8が組み付けられ、発熱素子7a,7bを冷却する放熱器5には、冷却ファン9が組み付けられている。冷却ファン9は、四辺形の枠体からなるハウジング91の中心軸線上にファンモータ92を支持したものである。
【0010】
前記筐体6は、後部プレート10を含む四辺形を構成する枠体11の後部プレート10側を仕切り壁12で仕切り、この仕切り壁12で仕切られた後部プレート10との間隙に略等間隔で互いに平行に立設された多数の冷却フィン13が設けられている。この仕切り壁12で仕切られた後部プレート10側に、前記第1の回路基板7の発熱素子7a,7bが設けられた部分を配置し、これら発熱素子7a,7bが発する熱を放散するように前記発熱素子7a,7bの上部側に冷却フィン13が配設されている。
【0011】
これら冷却フィン13が並ぶ片側端部には、これら冷却フィン13の配設方向と直交する方向(すなわち冷却フィン13と交叉する方向)に、冷却ファン9を組付ける収納用凹部14が設けられ、この収納用凹部14に、冷却ファン9のハウジング91部分の一部を挿入して前記冷却ファン9が配置されている。この冷却ファン9はファンモータ92を冷却フィン13に向けて立設して配置され、冷却フィン13の間隙に、フィン13に沿って風を送るものである。図4および図5に示すように、冷却ファン9は上部カバー3の裏面に形成されたファン保持部31によってハウジング91の上面を保持されて固定されている。ファン保持部31は、上部カバー3の裏面に、冷却ファン9のハウジング91の位置に対応するようにして、突出して形成された2条の固定用リブ32によって構成されている。この固定用リブ32の先端にゴム等の緩衝材を設けることもできる。
【0012】
前記冷却ファン9のハウジング91の側壁91aには、図2、図6および図7に示すように、リード線93が引出されており、このリード線93の先端に装着されたコネクタ94は、前記仕切り壁12の上端部に形成されたU字状の切欠き部12aを通して、第1の回路基板7に設けられたコネクタ15に接続されている。このコネクタ15は、電源回路および制御回路に接続されており、リード線93を通してファンモータ92に電源および制御指令を送るものである。
【0013】
前記放熱器5の一部の冷却フィン13の上端部には、中央部分を一定の長さで、かつ一定の幅で切欠いて、冷却フィン13の上端部に対して一段低い段差部13aが形成されており、この段差部13aによって形成される間隙部に、モータ制御用の回生抵抗器16が配設されている。回生抵抗器16は上端の基板16aに設けられたネジ孔16bを介してネジ17により放熱器5の冷却フィン13と仕切り壁12の上端に形成されたネジ孔13b,12cにネジ止めされている。
【0014】
この回生抵抗器16のリード線161,162は、前記仕切り壁12の上端部に形成された矩形状の切欠き部12bを通して、リード線161,162が通され、リード線161,162の先端に装着された回生抵抗器用コネクタ163,164が、それぞれ第1の回路基板7に設けられたコネクタ18,19に接続されている。
【0015】
図8に示すように前記筐体6の枠体11には、前部側上面左右にボス部20が立設されており、このボス部20のネジ孔20aに第2の回路基板8がネジ21を介して羅着されている。この筐体6の枠体11の上面に上部カバー3を被せ、筐体6の下面に配置した下部カバー4と組み合わせて締結する。そして、筐体6の前面に前部カバー2を組付けてモータ制御機器1が組み立てられている。上部カバー3および下部カバー4は、図1に示すように前端側の左右に、一対の係合孔3a,4aが形成され、かつ後端側の左右に、一対の係合爪3b,4bが形成されており、一対の係合爪3b,4bを介して後部プレート10の上端部および下端部の両側に形成されたそれぞれ一対の係合孔10a,10bに係合して後部プレート10に組みつけられている。一方、前部カバー2の上端部および下端部の左右両側には、後方に向けてそれぞれ一対の係合爪2a,2bが設けられており、これら係合爪2a,2bを上部カバー3および下部カバー4の係合孔3a,4aに係合させて、前部カバー2と、上部カバー3および下部カバー4を一体に組み付けている。前部カバー2は、図9に示すようにネジ22を介して枠体11の前面に締結して固定されている。
【0016】
次に、上記モータ制御機器1の組立手順を説明する。
まず、筐体6の枠体11の下面に第1の回路基板7をネジ止めする。そして、下部カバー4の係合爪4bを筐体6の後部プレート10に形成した係合孔10bに差し込んで組付ける。次に、冷却ファン9を冷却フィン13の端部に形成された収納用凹部14に挿入して配置する。この冷却ファン9のリード線93は、仕切り壁12の上端部に形成された切欠き部12aを通して、第1の回路基板7に設けられたコネクタ15にリード線93のコネクタ94を接続する(図2,図3参照)。
【0017】
また、モータ制御用の回生抵抗器16は、放熱器5の一部の冷却フィン13の上端部に形成された段差部13aに配置し、回生抵抗器16の基板16aに設けられたネジ孔16bにネジ17を通して冷却フィン13の上端のネジ孔にネジ止めする。回生抵抗器16のリード線161,162は、仕切り壁12の上端部に形成された切欠き部12bを通して、第1の回路基板7に設けられたコネクタ18,19にリード線161,162のコネクタ163,164をそれぞれ接続する(図6,図7参照)。
【0018】
次に、図8に示すように、第2の回路基板8を筐体6の枠体11に立設されたボス部20にネジ21を介して羅着する。
そして、筐体6の枠体11の上面に上部カバー3を被せて、上部カバー3のファン保持部31によって、冷却ファン9を固定する。上部カバー3は、筐体6の下面に配置した下部カバー4と組み合わせて締結する。最後に、筐体6の枠体11の前面に前部カバー2をネジ22を介して組付けてモータ制御機器1の組み付けが完了する(図9参照)。
【0019】
上記実施の形態によれば、筐体6の枠体11に第1の回路基板7および第2の回路基板8を組付け、さらに、放熱器5の冷却フィン13および冷却ファン9を一体に組み付けているので、コンパクトで、かつ組付け容易なモータ制御機器1を提供することができる。また、上部カバー3の組付けによって、上部カバー3のファン保持部31によって、冷却ファン9を固定することができるので、組付け部品を省略して作業性の向上を図ることができる。放熱器5の一部の冷却フィン13の上端部に、中央部分を切欠いて一段低い段差部13aを形成し、この段差部13aによって生じた空間部に、モータ制御用の回生抵抗器16を配設したので、設置スペースの縮小が図れ、装置全体の小型化を図ることができる。
【0020】
さらに、筐体6内を仕切り壁12によって、発熱素子7a,7bが設けられた部分と、それ以外の回路部分とに区画し、仕切り壁12に設けられた切欠き部12a,12bを通して、冷却ファン9のリード線93および回生抵抗器16のリード線161,162をコネクタ15およびコネクタ18,19に接続しているので、コンパクトな配線構造を採用することができる。
【0021】
本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、組付け部品としては、冷却ファン9およびモータ制御用の回生抵抗器16に限らず、他の部品を組付ける場合に適用することもできる。等、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜、変更して実施し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造の実施の形態を示すモータ制御機器の背面側から見た分解斜視図である。
【図2】図1の放熱器から冷却ファンを外して示す正面側から見た分解斜視図である。
【図3】図2の第1の回路基板を示す斜視図である。
【図4】図1の上部カバーの裏面に設けられたファン保持部を示す平面図である。
【図5】図4のA−A線部分断面図である。
【図6】本発明のモータ制御用の回生抵抗器の組付け位置を示す斜視図である。
【図7】本発明の冷却ファンおよびモータ制御用の回生抵抗器の配線構造を示す平面図である。
【図8】図1の第2の回路基板の組付け位置を示す斜視図である。
【図9】本発明のモータ制御機器の組付けが完了した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 モータ制御機器
2 前部カバー
3 上部カバー
31 ファン保持部
4 下部カバー
5 放熱器
6 筐体
7 第1の回路基板
7a,7b 発熱素子
8 第2の回路基板
9 冷却ファン
91 ハウジング
92 ファン
93 リード線
94 コネクタ
10 後部プレート
11 枠体
12 仕切り壁
12a,12b 切欠き部
13 冷却フィン
13a 段差部
14 収納用凹部
15,18,19,93,163,164 コネクタ
16 回生抵抗
16a 基板
161,162 リード線
17 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、発熱体を設けた回路基板と、前記発熱体が発する熱を放熱する冷却フィンを備えた放熱器を配設し、該放熱器の冷却フィンを冷却する冷却ファンを内蔵したモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造において、
前記筐体内の放熱器に、前記冷却ファンを配置する収納用凹部を設けるとともに、前記筐体の上面を覆う上部カバーの前記冷却ファンの取付位置に対応する内壁部にファン保持部を形成し、前記筐体の上部カバーを組付けて該カバーのファン保持部によって前記冷却ファンのハウジングを保持して該冷却ファンを前記筐体内に組み付けたことを特徴とするモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造。
【請求項2】
前記放熱器と回路基板を仕切る壁面に切欠き部を形成し、前記冷却ファンのリード線を、前記切欠き部を通して前記回路基板のコネクタ部に組み付けたことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造。
【請求項3】
前記放熱器の冷却フィンの一部を切欠いて段差部を形成し、該段差部にモータを制御する回生抵抗器を組み付けたことを特徴とする請求項2に記載のモータ制御機器の放熱器と組付け部品との固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−253183(P2009−253183A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102144(P2008−102144)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】