説明

レーザ診断装置

【課題】 レーザビーム発振手段の繰り返し周波数及び1パルス当たりの出力の安定性を少なくとも検出可能なレーザ診断装置を提供することである。
【解決手段】 レーザビーム発振手段が発振するパルスレーザビームの繰り返し周波数及び1パルス当たりの出力の安定性を少なくとも検出するレーザ診断装置であって、レーザビーム発振手段が発振するパルスレーザビームを反射する反射板と、該反射板が反射したパルスレーザビームを拡散させる拡散板と、該拡散板を透過した光を受光して電気信号に変換するフォトディテクターと、該フォトディテクターを該拡散板に接近又は離反する方向に移動する移動手段とを有するレーザ診断ユニットと、該レーザ診断ユニットの該フォトディテクターから出力される電気信号を表示するオシロスコープと、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビーム発振手段が発振するパルスレーザビームの繰り返し周波数及び1パルス当たりの出力の安定性を検出可能なレーザ診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC、LSI等が形成されたシリコンウエーハ、又はLED等が形成されたサファイアウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、被加工物に形成されたストリートに沿ってパルスレーザビームを照射することにより被加工物にレーザ加工溝を形成し、このレーザ加工溝に沿って機械的ブレーキング装置によって被加工物を割断する方法が提案されている(例えば、特開平10−305421号公報参照)。
【0003】
レーザ加工装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザビームを照射するレーザビーム照射手段とを含んでいる。レーザビーム照射手段は、パルスレーザビームを発振するレーザビーム発振手段と、レーザビーム発振手段が発振したレーザビームを調整する光学系と、ウエーハにレーザビームの集光点を位置づける集光器(レーザヘッド)から概ね構成されていて、レーザ加工装置によりウエーハを高精度に加工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−305421号公報
【特許文献2】特開2005−313182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、レーザビーム発振手段は時間経過に伴って劣化し、繰り返し周波数に変化が生じたり、1パルス当たりの出力が安定しなくなったりして、ウエーハを高精度に加工できなくなるという問題がある(特許文献2参照)。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーザビーム発振手段の繰り返し周波数及び1パルス当たりの出力の安定性を検出可能なレーザ診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、レーザビーム発振手段が発振するパルスレーザビームの繰り返し周波数及び1パルス当たりの出力の安定性を少なくとも検出するレーザ診断装置であって、レーザビーム発振手段が発振するパルスレーザビームを反射する反射板と、該反射板が反射したパルスレーザビームを拡散させる拡散板と、該拡散板を透過した光を受光して電気信号に変換するフォトディテクターと、該フォトディテクターを該拡散板に接近又は離反する方向に移動する移動手段とを有するレーザ診断ユニットと、該レーザ診断ユニットの該フォトディテクターから出力される電気信号を表示するオシロスコープと、を具備したことを特徴とするレーザ診断装置が提供される。
【0008】
好ましくは、レーザ診断ユニットは反射板を透過した光を吸収する反射板の背部に配設された光吸収板を更に有している。
【発明の効果】
【0009】
本発明のレーザ診断装置でレーザビーム発振手段を診断する際は、レーザビーム発振手段が発振するパルスレーザビームを遮るようにレーザ診断ユニットの反射板を位置づけて適量のレーザビームを取り込み、繰り返し周波数、1パルス当たりの出力の安定性及びパルス幅を検出することができるため、レーザビーム発振手段の修理の必要性又は交換の時期等を判断することができる。
【0010】
また、移動手段を作動させてフォトディテクターが受光する光量を調整してオシロスコープ上に表示される振幅を所定の値に設定して、1パルス当たりの出力の安定性を時系列的に比較して、レーザビーム発振手段の修理の必要性又は交換の時期等を判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】レーザ加工装置の斜視図である。
【図2】レーザ診断ユニットを装着可能なレーザビーム照射機構の側面図である。
【図3】レーザ診断ユニットの斜視図である。
【図4】レーザ診断ユニットの一部破断斜視図である。
【図5】レーザ診断ユニットのラビリンス構造を示す断面図である。
【図6】レーザ診断装置のブロック図である。
【図7】レーザビーム発振手段のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明のレーザ診断装置で診断可能なレーザ加工装置の外観斜視図が示されている。レーザ加工装置2は、静止基台4上にX軸方向に移動可能に搭載された第1スライドブロック6を含んでいる。
【0013】
第1スライドブロック6は、ボールねじ8及びパルスモータ10から構成される加工送り手段12により一対のガイドレール14に沿って加工送り方向、即ちX軸方向に移動される。
【0014】
第1スライドブロック6上には第2スライドブロック16がY軸方向に移動可能に搭載されている。即ち、第2スライドブロック16はボールねじ18及びパルスモータ20から構成される割り出し送り手段22により一対のガイドレール24に沿って割り出し送り方向、即ちY軸方向に移動される。
【0015】
第2スライドブロック16上には円筒支持部材26を介してチャックテーブル28が搭載されており、チャックテーブル28は加工送り手段12及び割り出し送り手段22によりX軸方向及びY軸方向に移動可能であるとともに、円筒支持部材26中に収容されたモータにより回転される。
【0016】
チャックテーブル28には、チャックテーブル28に吸引保持された半導体ウエーハをテープを介して支持するフレームをクランプするクランプ30が設けられている。32はカバーであり、図示を省略した蛇腹がカバー32に連結されて加工送り手段12及び割り出し送り手段22をデブリから保護する。
【0017】
静止基台4にはコラム34が立設されており、このコラム34にレーザビーム照射機構(レーザビーム照射手段)36が取り付けられている。レーザビーム照射機構36は、ケーシング40中に収容された図6に示すレーザビーム発振手段38及び光学系39と、ケーシング40の先端に取り付けられた集光器(レーザヘッド)42とから構成される。
【0018】
ケーシング40の先端には集光器42とX軸方向に整列して撮像手段44が取り付けられている。図2に示すように、ケーシング40の側面には図示しない開口が形成されており、この開口はカバープレート52をねじ54で締結することにより閉鎖されている。
【0019】
チャックテーブル28に保持されたウエーハWを加工する際には、レーザビーム発振手段38から出射されたパルスレーザビーム81は図6に示す光学系39によりそのパワー等が調整された後、ミラー88及び対物レンズ物90を有する集光器42によりウエーハW上に集光されて、ウエーハWのストリートに沿ってレーザ加工溝を形成する。
【0020】
本発明のレーザ診断装置でレーザビーム発振手段の診断を実施する際には、カバープレート52を取り外し、図1に示すようにこの開口部にレーザ診断ユニット46を装着することにより実施する。
【0021】
レーザ診断ユニット46は、図3及び図4に示すように、筐体48を備えており、この筐体48の前側には一対の取付ブラケット50が一体的に形成されている。各取付ブラケット50にはレーザ診断ユニット46の取付用の丸穴51が形成されている。
【0022】
筐体48の底板48aから支持プレート56が前方に突出している。支持プレート56上には石英反射板58と光吸収板60が搭載されている。石英反射板58は、入射した光の4%を反射し、他を透過させる性質を有している。光吸収板60は石英反射板58を透過した光を吸収する。
【0023】
筐体48の底板48a上には、石英反射板58で反射された光を拡散する拡散板62が設けられている。この拡散板62は、例えば砂番#240であり、入射した光を適度に拡散する。
【0024】
拡散板62の背面には拡散板62で拡散された光を電気信号に変換するフォトディテクター64が配設されている。フォトディテクター64はキャリッジ66上に搭載されており、このキャリッジ66は蝶ねじ70を係合することにより、ガイド溝68に沿って拡散板62に接近又は離反する方向に移動可能である。72はフォトディテクター64に接続された配線であり、他端はオシロスコープに接続されている。
【0025】
図5を参照すると、キャリッジ66に蝶ねじ70が係合する部分の断面図が示されており、部材74と部材76でラビリンス構造が形成されており、筐体48内から光が外に漏れ出すことを防止している。
【0026】
レーザビーム照射機構36のレーザビーム発振手段38を診断する際には、図2に示すカバープレート52を取り外し、図3に示すように、ねじ54を取り付けブラケット50の丸穴51中に挿入してケーシング40の側面に締結する。
【0027】
これにより、図6に示すように、石英反射板58及び光吸収板60がレーザビーム発振手段38が発振したレーザビームの光路に挿入される。レーザビーム発振手段38は、図7に示すように、レーザ発振器80と、繰り返し周波数設定手段82と、パルス幅調整手段84とを含んでいる。
【0028】
レーザ発振器80は、YAGレーザ又はYVO4レーザが発振する波長1064nmの基本波を非線形結晶を用いたTHG(第3高調波発生)により355nmに変換したパルスレーザビーム81を出射する。
【0029】
レーザ診断ユニット46をケーシング40の側面に装着すると、図6に示すように、石英反射板58がレーザビーム発振手段38が発振するパルスレーザビーム81の光路に挿入される。石英反射板58は4%の反射率を有しているため、パルスレーザビームの81の4%が反射されて96%は石英反射板58を透過して光吸収板60に吸収される。
【0030】
石英反射板58で反射されたパルスレーザビーム81は、拡散板62に入射されて拡散される。この拡散光はフォトディテクター64で検出されて電気信号に変換される。この電気信号は配線72を介してオシロスコープ92に入力されて、画面93上に時系列的に表示される。画面93上に表示されるグラフの横軸は例えば2μs毎に目盛の付いた時間を示しており、縦軸は例えば10mV毎に目盛のついた電圧を示している。
【0031】
本実施形態では、レーザ診断装置45は、レーザ診断ユニット46と、レーザ診断ユニット46に電気的に接続されたオシロスコープ92とから構成される。オシロスコープ92の画面93上には、パルスレーザビーム81の繰り返し周波数、パルス幅及びパルスの強度が電圧で表示される。
【0032】
パルスの強度が時系列的に表示されるため、1パルス当たりの出力の安定性を時系列的に比較することができ、例えば20%以上の出力の変動があるときには、レーザビーム発振手段38の修理又は交換の時期と判断することができる。
【0033】
繰り返し周波数及びパルス幅もオシロスコープ92の画面93上で観察できるため、繰り返し周波数及び/又はパルス幅が所定の許容値以上変動した場合には、同じくレーザビーム発振手段38を修理するか交換の必要性有りと判断する。
【0034】
オシロスコープ92はCPU96及びメモリ98を有するコントローラ94を内蔵しており、パルスレーザビーム81の繰り返し周波数、パルス幅及び1パルス当たりの出力強度はコントローラ94のメモリ98に記憶される。
【0035】
本実施形態のレーザ診断装置45では、1パルス当たりの出力を正確に検出するものではなく、1パルス当たりの出力の安定性を検出するものであるため、蝶ねじ70によりフォトディテクター64をガイド溝68に沿って拡散板62に接近又は離反する方向に移動して、フォトディテクター64が受光する光量を調整して、オシロスコープ92の画面93上で1パルス当たりの出力が30〜40mVの範囲内に収まるように調整する。診断終了後には、レーザ診断ユニット46をケーシング40から取り外し、ケーシング40の開口を塞ぐようにカバープレート52を取り付ける。
【符号の説明】
【0036】
2 レーザ加工装置
28 チャックテーブル
36 レーザビーム照射機構
38 レーザビーム発振手段
40 ケーシング
42 集光器(レーザヘッド)
45 レーザ診断装置
46 レーザ診断ユニット
58 石英反射板
60 光吸収板
62 拡散板
64 フォトディテクター
66 キャリッジ
80 レーザ発振器
81 パルスレーザビーム
82 繰り返し周波数設定手段
84 パルス幅調整手段
92 オシロスコープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビーム発振手段が発振するパルスレーザビームの繰り返し周波数及び1パルス当たりの出力の安定性を少なくとも検出するレーザ診断装置であって、
レーザビーム発振手段が発振するパルスレーザビームを反射する反射板と、該反射板が反射したパルスレーザビームを拡散させる拡散板と、該拡散板を透過した光を受光して電気信号に変換するフォトディテクターと、該フォトディテクターを該拡散板に接近又は離反する方向に移動する移動手段とを有するレーザ診断ユニットと、
該レーザ診断ユニットの該フォトディテクターから出力される電気信号を表示するオシロスコープと、
を具備したことを特徴とするレーザ診断装置。
【請求項2】
該レーザ診断ユニットは該反射板を透過した光を吸収する該反射板の背部に配設された光吸収板を更に有する請求項1記載のレーザ診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−15164(P2012−15164A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147520(P2010−147520)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】