説明

レール底部腐食量測定装置及び測定方法

【課題】レール頭部の摩耗があってもレール底部の腐食量を正確に測定することができるレール底部腐食量測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】頭部1aと頭部1aよりも横断面横幅が小さい腹部1bと腹部1bよりも横断面横幅が広い底部1cとを備えるレール1の頭部頂面に超音波探触子12を当接させて、頭部頂面に垂直に超音波を入射し、その際にやや拡散した超音波を入射し、レールの頭部1aの腹部1bよりも広がった下面に相当する顎部1dからの顎部反射エコーと、レールの底部1cからの底部反射エコーを検出し、顎部反射エコーと底部反射エコーとから、顎部と底部反射源との間隔を求め、前記顎部と底部反射源との間隔の測定値Lと、基準値L0とを比較して、測定値が基準値よりも小さい場合にレールの底部腐食があると判定し、その測定値Lと基準値L0との差異ΔLにより腐食量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールに超音波を入射することにより、レール底部の腐食量を測定するレール底部腐食量測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のレール底部の腐食を判定するものとしては、特許文献1に記載されたものが知られている。この装置では、レールに対して当接されながら移動して、該当接面に垂直に超音波を入射する超音波探触子を備え、さらに超音波探触子が受信する反射エコーのビーム路程を求めるビーム路程演算手段と、レールに対する移動位置に応じてビーム路程演算手段で得られるビーム路程のうちで少なくとも着目する移動位置に近傍の移動位置における複数のビーム路程から、着目する移動位置における基準の底面の位置に関する基準底面位置情報を求める基準底面演算手段と、ビーム路程演算手段で求めたビーム路程に対応する反射源の位置と前記基準底面位置との比較を行い、反射源が基準底面位置よりも当接面寄りの所定範囲にあるときに、当接面への接近程度に応じて腐食の進行度を決定する進行度判定手段と、を備えている。
【0003】
比較するべき基準底面位置情報を、得られる反射エコーのビーム路程から求めているために、レールが摩耗してレール高さが規定値と異なる場合でも底部腐食を検知することができ、底部腐食が進行していれば反射源の位置が底面よりも当接面に近づくはずであるので、その反射源の基準底面位置から当接面への接近程度に応じて腐食の進行度を決定することで、底部腐食の進行度を判定することができるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−220569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の装置及び方法よれば、底部腐食が局所的である場合には、レールの一様な摩耗に影響されることなく正確に底部腐食の進行度を評価することができる。しかしながら、底部腐食は長距離に亘り発生していることがあり、その場合に特許文献1記載の進行度の判定では、基準底面位置情報自体を正確に求めることができない、という問題がある。そのため、底部腐食が長距離に亘る場合には、進行した底部腐食を過小評価してしまうおそれがある。
【0006】
これに対して、特許文献1の方法とは異なり、反射エコーのビーム路程と一定の基準値との比較を行い、ビーム路程が基準値よりも小さい場合に、その差から底部腐食量を測定するという方法もあるが、この方法では、ビーム路程が基準値よりも小さい場合に、レール底部が腐食しているのか、レール頭部が摩耗しているのかの区別をすることができず、レール頭部の摩耗が発生している場合に、底部腐食を過大評価してしまうおそれがある。
【0007】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、レール頭部の摩耗があってもレール底部の腐食量を正確に測定することができるレール底部腐食量測定装置及び測定方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、請求項1記載の発明は、頭部と頭部よりも横断面横幅が小さい腹部と腹部よりも横断面横幅が広い底部とを備えるレールの頭部頂面から垂直に超音波を入射する超音波探触子を備え、該超音波探触子が反射エコーを受信することにより、レールの底部腐食の有無を判定すると共にその腐食量を測定するレール底部腐食量測定装置において、
前記超音波探触子からやや拡散した超音波をレールの頭部頂面から入射すると共に、
レールの頭部の腹部よりも広がった下面に相当する顎部からの顎部反射エコーと、レールの底部からの底部反射エコーとを検出する反射エコー検出手段と、
顎部反射エコーと底部反射エコーとから、顎部と底部反射源との間隔を求める底部−顎部間隔測定手段と、
レールの顎部と底部底面との間隔の基準値を記憶する基準値記憶手段と、
前記底部−顎部間隔測定手段で求めた顎部と底部反射源との間隔の測定値と、基準値記憶手段で記憶された基準値とを比較して、測定値が基準値よりも小さい場合にレールの底部腐食があると判定し、その測定値と基準値との差異により腐食量を決定する腐食量測定手段と、
を備える。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のものにおいて、顎部反射エコーからレールの頭部頂面と顎部との間隔を求める頭部−顎部間隔測定手段をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の底部−顎部間隔測定手段が、顎部反射エコーの受信レベルが閾値レベルを超えた時点と、底部反射エコーの受信レベルが閾値レベルを超えた時点との時間差から顎部と底部反射源との間隔を求めることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、頭部と頭部よりも横断面横幅が小さい腹部と腹部よりも横断面横幅が広い底部とを備えるレールの頭部頂面に超音波探触子を当接させて、頭部頂面に垂直に超音波を入射して、その反射エコーを受信することにより、レールの底部腐食の有無を判定すると共にその腐食量を測定するレール底部腐食測定方法において、
前記超音波探触子からやや拡散した超音波をレールの頭部頂面から入射し、
レールの頭部の腹部よりも広がった下面に相当する顎部からの顎部反射エコーと、レールの底部からの底部反射エコーを検出し、
顎部反射エコーと底部反射エコーとから、顎部と底部反射源との間隔を求め、
前記顎部と底部反射源との間隔の測定値と、顎部と底部底面との間隔の基準値とを比較して、測定値が基準値よりも小さい場合にレールの底部腐食があると判定し、その測定値と基準値との差異により腐食量を測定する。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の方法において、前記顎部反射エコーから頭部頂面と顎部との間隔を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
レールの顎部は、頭部頂面とは異なり摩耗を受ける可能性が低いために、顎部自体の位置の経年変化は少ないと考えられる。本発明によれば、レールの顎部と底面反射源との間の間隔で、腐食の有無及び腐食量の決定をしており、顎部と底部底面との間隔の基準値に対して測定値と比較することにより、頭部頂面に摩耗があっても、底部腐食量を正しく測定することができるようになる。
【0014】
請求項2及び5記載の発明によれば、顎部反射エコーを用いて頭部頂面と顎部との間隔を求めることができるので、頭部頂面の摩耗量も測定することができるようになる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、顎部反射エコーの場合は複数の反射経路のうちの最短経路となる顎部の定点からの反射エコーを得ることができる。また、底部反射エコーの場合は、底部腐食の広がりなどにより、測定している位置からの垂線上以外に存在する他の散乱源からの影響を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明のレール底部腐食量測定装置及び測定方法の実施形態の構成を表すブロック図である。
【0017】
図1において、このレール底部腐食量測定装置の被検査体であるレール1は、典型的に図2に示すような横断面形状をなしており、頭部1aと、頭部1aよりも横断面横幅が小さい腹部1bと、腹部1bから横断面横幅が広がった底部1cと、を有している。頭部1aの腹部1bよりも左右に広がった下面の部分が顎部1dとなる。
【0018】
図1において、この底部腐食量測定装置は、レール探傷車などに搭載されるレール1の頭部1a頂面上を当接して移動しながら該頭部頂面に対して垂直に超音波パルスをレール1内部に入射し、その反射エコーを受信する垂直探触子12を備えている。但し、探触子12と頭部頂面との間には遅延材が適宜配設可能である。
【0019】
また、この底部腐食量測定装置は、垂直探触子12と共に移動し、その移動距離を測定するエンコーダ等からなる移動距離センサ16を有している。
【0020】
さらに、垂直探触子12及び移動距離センサ16に接続され、垂直探触子12からの受信信号及び移動距離センサ16からの距離信号を受信して、その処理を行なう信号処理部20を有している。
【0021】
信号処理部20は、超音波送受信部22、反射エコー検出部23(顎部反射エコー検出部24、底部反射エコー検出部26)、底部−顎部間隔測定部32、基準値記憶部34、腐食量測定部36、移動距離測定部38、表示部40及び記録部42を備える。
【0022】
超音波送受信部22は、垂直探触子12の移動中に一定間隔(時間または距離)で送信信号を送出するとともに、垂直探触子12で受信される受信信号を増幅して出力するものである。尚、増幅率は、通常の傷検出や底面エコーの検出を行なうときの増幅率に比べて高いものとするとよい。また、増幅率は可変とすることも可能で、例えば送信信号の送出から一定時間経過後に漸次高くなるように変化するものとしてもよい。
【0023】
反射エコー検出部23の顎部反射エコー検出部24は、図3に示したようにゲート回路により超音波送受信部22が出力する受信信号から所定の第1検出時間範囲内にあるものだけを抽出し、かつ、その受信信号レベルを所定の閾値レベルと比較し、この受信信号レベルにおける閾値レベル以上の部分を顎部反射エコー信号として検出するものである。この第1検出時間範囲は、顎部1d付近で反射して戻った受信信号を抽出することができる範囲とし、頭部頂面の位置が摩耗により変化した場合でも顎部反射エコーを検出することができる範囲とする。
【0024】
反射エコー検出部23の底部反射エコー検出部26は、図3に示したようにゲート回路により超音波送受信部22が出力する受信信号から所定の第2検出時間範囲内にあるものだけを抽出し、かつ、その受信信号レベルを所定の閾値レベルと比較し、この受信信号レベルにおける閾値レベル以上の部分を底部反射エコー信号として検出するものである。この第2検出時間範囲は、底部1c付近で反射して戻った受信信号を抽出することができる範囲とし、頭部頂面の位置が摩耗により変化した場合、または、底部腐食が進行している場合にも底部反射エコーを検出することができる範囲とする。
【0025】
閾値レベルは、通常の傷検出や底面エコーの検出を行なうときの閾値レベルに比べて低いものとするとよい。
【0026】
底部−顎部間隔測定部32は、顎部反射エコー検出部24で検出された顎部反射エコー信号と、底部反射エコー検出部26で検出された底部反射エコー信号とから、それらの信号の立ち上がり時間差で表される顎部と底部反射源との間隔を求めるものである。
【0027】
基準値記憶部34は、顎部と底部底面との間隔の基準値を記憶するものである。底部腐食のない正常なレールにおける顎部と底部底面との間隔は、レールの種類によって異なる。よって、基準値記憶部34には、検査対象となるレールの種類に応じた顎部と底面との間隔が記憶されている。または、鉄道レールにおいては連続的な軌道においても、その軌道位置(つまり移動距離に対応する)によってレールの種類(50N、60k、50T、40N等)が異なることがあるので、その場合には軌道位置(または移動距離)と基準値との対応関係が記憶されている。
【0028】
腐食量測定部36は、底部−顎部間隔測定部32で求めた間隔と、基準値記憶部34からの基準値から、垂直探触子12で受けた反射エコーの反射源が腐食であるかどうか、及び腐食である場合に、腐食量がどの程度であるかの測定をするものである。
【0029】
移動距離測定部38は、移動距離センサ16からの信号を受信して、受信信号をカウントするなどして、移動距離を演算し、移動位置に対応する移動距離情報を出力するものである。
【0030】
表示部40は、腐食量測定部36で判定した腐食についてその位置などと共に腐食量の測定結果を画面表示するものである。
【0031】
記録部42は、任意の記憶装置で構成され、判定した腐食の位置及び腐食量の測定結果を記録し、または、印刷したハードコピー(記録紙)を出力するものである。
【0032】
以上の信号処理部20の反射エコー検出部23、底部−顎部間隔測定部32、基準値記憶部34及び移動距離測定部38は、ゲート回路、A/D変換器、カウンタ、CPU、メモリ、I/O回路及びデバイスコントローラ等で構成することができる。
【0033】
次に、この実施形態の構成における動作について説明する。図1に示したように、図示しないレール探傷車に搭載されて、垂直探触子12が検査対象のレール1の頭部1a頂面上を接触しながら移動し、この移動距離が移動距離センサ16で検出される。この際、超音波送受信部22は、移動距離測定部38または移動距離センサ16からの移動距離情報に基づいて、移動しながら一定間隔(時間または距離)で送信信号を垂直探触子12に出力し、垂直探触子12から超音波パルスがレール1へ放射される。このとき、垂直探触子12の超音波パルスはレール1内でやや拡散するようにレール横断面において放射角度にある程度の大きさを持たせる。
【0034】
図2に示したように、やや拡散された超音波とは、頭部1aから腹部1bを通り底部1cへと進む部分と、頭部1aから顎部1dの方へと向かう部分とがあるような放射角度を持つ波である。
【0035】
そして、頭部1aから顎部1dの方へと向かった波は、顎部1dで反射する。顎部1dにおける反射は複数経路考えられるが、最も早く垂直探触子12に戻る経路は、垂直探触子12から顎部1dの腹部1bとの境目付近において反射して同じ経路を通り垂直探触子12に戻る経路である。この経路を通った超音波が垂直探触子12で受信されると、垂直探触子12からの受信信号は超音波送受信部22で増幅されて、反射エコー検出部23に出力される。この受信信号は、顎部反射エコー検出部24の第1検出時間範囲において、最初に閾値レベルを超える信号となり、その閾値レベル以上の部分が顎部反射エコー信号として出力される。
【0036】
また、頭部1aから腹部1bを通り底部1cへと進む波は、底部1cにおいてレール底面または底部腐食などの反射源で反射し、再び垂直探触子12で受信される。底部腐食がない場合、底部反射エコーは平坦な底面で反射したものであるが、底部腐食がある場合、底部腐食で反射したものとなる。底部腐食があると、底部腐食が無い場合に比べて、反射面積は小さくなるために、受信信号は小さくなる。
【0037】
垂直探触子12からの受信信号は超音波送受信部22で増幅されて、反射エコー検出部23に出力される。この受信信号は、底部反射エコー検出部24の第2検出時間範囲において、最初に閾値レベルを超える信号となり、その閾値レベル以上の部分が底部反射エコー信号として出力される。
【0038】
底部−顎部間隔測定部32は、顎部反射エコー検出部24からの顎部反射エコー信号と底部反射エコー検出部26からの底部反射エコー信号とからこれらの信号の時間間隔を測定し、顎部と底部反射源との間隔を求める。2つのエコー信号の時間間隔に音速を乗算すると、顎部と底部反射源との間隔の測定値Lになる。
【0039】
ここで、間隔を求めるときの各反射エコーの測定時点としては、パルス幅のある顎部反射エコー信号及び底部反射エコー信号の任意の時点とすることができるが、図3に示すように、各反射エコー信号の前縁、つまり各検出時間範囲内において受信信号が閾値レベルを超えた時点、とすることが好ましい。これにより、顎部反射エコーの場合は複数の反射経路のうちの最短経路となる顎部1cの腹部1bの境目部分の定点からの反射経路のエコーを得ることができる。また、底部反射エコーの場合は、底部腐食の広がりなどにより、測定している移動位置からの垂線上以外に存在する他の散乱源からの影響を防ぐことができる。
【0040】
次に、腐食量測定部36では、底部−顎部間隔測定部32で求めた間隔に相当する測定値Lを受け取り、また、移動距離測定部38から受けた距離から基準値記憶部34において、該距離に対応する基準値Lを求める。そして、LとLとの比較を行い、差分ΔL=L−Lを求める。
【0041】
差分ΔLが正となるときには、図4に示すように、反射エコーの反射源は底面よりも上方にあるので、反射エコーの反射源は底部腐食であると判断することができる。この場合、そのΔLの大きさが底部腐食の腐食量に相当する。底部腐食が進行すればそれだけ反射源の位置が底面よりもより当接面に近づくはずであるために、ΔLが大きくなればなるほど、腐食量は多くなる。そして、決定した腐食量を表す信号を移動距離信号と共に表示部40に出力する。
【0042】
表示部40では、腐食量測定部36からの情報を表示し、記録部42では腐食量測定部36からの情報を記録する。
【0043】
以上のように本発明では、顎部と底部反射源との間の間隔で、腐食量を測定する。顎部は、頭部1aの頂面とは異なり摩耗を受ける可能性が低いために、顎部自体の位置の経年変化は少ないと考えられる。つまり、顎部と底部底面との間隔は、底部腐食等がなければ経年変化によらず一定であると考えられ、その一定と考えられる基準値Lに対して測定値Lと比較することにより、底部腐食の腐食量を正しく測定することができるようになり、レールの摩耗の影響を受けることがない。
【0044】
以上の例においては、レール頭部頂面の摩耗は一様であることを前提としていたが、本発明は左右非対称に摩耗が発生している場合にも適用可能である。レールを走行する車輪のフランジはレールの片側にのみ当接するので、図5に示したように、レールの摩耗が左右非対称になることもある。しかしながら、その場合であっても、底部に超音波が到達する限り、顎部と底部反射源との間の間隔Lを測定することができるので、底部腐食の有無及びその腐食量を正しく測定することができる。
【0045】
また、図6は、他の実施形態を表すブロック図である。同図において、図1と同一の部材は同一の符号を付し、その詳細説明を省略する。
【0046】
この例では、顎部と底部反射源との間の間隔を測定する底部−顎部間隔測定部32の他に、頭部頂面と顎部との間の間隔を測定する頭部−顎部間隔測定部30を備え、反射エコー検出部23に頭部頂面反射エコー検出部28を備える。頭部頂面反射エコー検出部28は、ゲート回路により超音波送受信部22が出力する受信信号から所定の第3検出時間範囲内にあるものだけを抽出し、かつ、その受信信号レベルを所定の閾値レベルと比較し、この受信信号レベルにおける閾値レベル以上の部分を頭部頂面エコー信号として検出するものである。この第3検出時間範囲は、頭部頂面で反射して戻った受信信号を抽出することができる範囲とする。また、基準値記憶部34は頭部頂面と顎部との間隔の基準値を併せて記憶している。この基準値もレールの種類に応じて異なる。また、軌道位置(つまり移動距離に対応する)によってレールの種類が異なることがあるので、その場合には軌道位置(または移動距離)と基準値との対応関係が記憶されている。
【0047】
図7に示すように、頭部−顎部間隔測定部30は、頭部頂面反射エコー信号と顎部反射エコー信号との間の時間間隔を測ることにより、頭部頂面と顎部との間の間隔の測定値Mを求める。
【0048】
腐食量測定部36は、摩耗量測定部の機能を併せ持ち、頭部−顎部間隔測定部30で求めた間隔に相当する測定値Mを受け取り、また、移動距離測定部38から受けた距離から基準値記憶部34において、該距離に対応する基準値Mを求める。そして、MとMとの比較を行い、差分ΔM=M−Mを求める。差分ΔMは頭部頂面の摩耗量とすることができる。
【0049】
こうして、腐食量の他に摩耗量も演算することも可能である。
【0050】
また、顎部反射エコー信号と底部反射エコー信号とから直接、顎部と底部反射源との間隔を求める代わりに、頭部頂面反射エコー信号のような他の信号を用いて、頭部頂面のようなある基準面と顎部との間隔と、該基準面と底部反射源との間隔を求め、それらの間隔の差異から顎部と底部反射源との間隔を求めてもよい。
【0051】
なお、以上の例では、レールに対する移動と共にリアルタイムで底部腐食量等を測定することを主として想定して説明したが、これに限るものではない。レールに対して移動していきながら、反射エコーを順次受信し、底部−顎部間隔測定部32、頭部−顎部間隔測定部30、腐食量測定部36での処理は、遅れて行なうようにしてもよい。または、信号処理部20を、垂直探触子12と共に移動する処理部と、垂直探触子12とは別の腐食量測定部36及び基準値記憶部34を構成するコンピュータとで構成することも可能である。そして、移動する処理部に設けられた記録媒体に、顎部と底部反射源との間隔(及び頭部頂面と顎部との間隔)の測定値データを距離データと共に記録し、記録媒体を別の場所にある腐食量測定部36及び基準値記憶部34を構成するコンピュータに運んで、そのコンピュータにおいて、処理を行なうようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のレール底部腐食量測定装置及び測定方法の実施形態の構成を表すブロック図である。
【図2】レール断面と受信信号との関係を表す図である。
【図3】受信信号、顎部反射エコー、底部反射エコー及び顎部−底部間隔との関係を表す図である。
【図4】頭部頂面に摩耗があって底部腐食のある場合のレール断面と受信信号との関係を表す図である。
【図5】頭部頂面の摩耗が非対称である場合のレール断面と受信信号との関係を表す図である。
【図6】本発明のレール底部腐食量測定装置及び測定方法の他の実施形態の構成を表すブロック図である。
【図7】受信信号、頭部頂面反射エコー、顎部反射エコー、底部反射エコー及び頭部−顎部間隔との関係を表す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 レール
1a 頭部
1b 腹部
1c 底部
1d 顎部
12 垂直探触子(超音波探触子)
23 反射エコー検出部
30 頭部−顎部間隔測定部
32 底部−顎部間隔測定部
34 基準値記憶部
36 腐食量測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と頭部よりも横断面横幅が小さい腹部と腹部よりも横断面横幅が広い底部とを備えるレールの頭部頂面から垂直に超音波を入射する超音波探触子を備え、該超音波探触子が反射エコーを受信することにより、レールの底部腐食の有無を判定すると共にその腐食量を測定するレール底部腐食量測定装置において、
前記超音波探触子からやや拡散した超音波をレールの頭部頂面から入射すると共に、
レールの頭部の腹部よりも広がった下面に相当する顎部からの顎部反射エコーと、レールの底部からの底部反射エコーとを検出する反射エコー検出手段と、
顎部反射エコーと底部反射エコーとから、顎部と底部反射源との間隔を求める底部−顎部間隔測定手段と、
レールの顎部と底部底面との間隔の基準値を記憶する基準値記憶手段と、
前記底部−顎部間隔測定手段で求めた顎部と底部反射源との間隔の測定値と、基準値記憶手段で記憶された基準値とを比較して、測定値が基準値よりも小さい場合にレールの底部腐食があると判定し、その測定値と基準値との差異により腐食量を決定する腐食量測定手段と、
を備えるレール底部腐食量測定装置。
【請求項2】
顎部反射エコーからレールの頭部頂面と顎部との間隔を求める頭部−顎部間隔測定手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のレール底部腐食量測定装置。
【請求項3】
底部−顎部間隔測定手段は、顎部反射エコーの受信レベルが閾値レベルを超えた時点と、底部反射エコーの受信レベルが閾値レベルを超えた時点との時間差から顎部と底部反射源との間隔を求めることを特徴とする請求項1または2記載のレール底部腐食量測定装置。
【請求項4】
頭部と頭部よりも横断面横幅が小さい腹部と腹部よりも横断面横幅が広い底部とを備えるレールの頭部頂面に超音波探触子を当接させて、頭部頂面に垂直に超音波を入射して、その反射エコーを受信することにより、レールの底部腐食の有無を判定すると共にその腐食量を測定するレール底部腐食測定方法において、
前記超音波探触子からやや拡散した超音波をレールの頭部頂面から入射し、
レールの頭部の腹部よりも広がった下面に相当する顎部からの顎部反射エコーと、レールの底部からの底部反射エコーを検出し、
顎部反射エコーと底部反射エコーとから、顎部と底部反射源との間隔を求め、
前記顎部と底部反射源との間隔の測定値と、顎部と底部底面との間隔の基準値とを比較して、測定値が基準値よりも小さい場合にレールの底部腐食があると判定し、その測定値と基準値との差異により腐食量を測定するレール底部腐食測定方法。
【請求項5】
前記顎部反射エコーから頭部頂面と顎部との間隔を求めることを特徴とする請求項4記載のレール底部腐食測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−145232(P2009−145232A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323599(P2007−323599)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000003388)東京計器株式会社 (103)
【出願人】(504412451)東京計器レールテクノ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】