ロッキング椅子
【課題】シャツめくれ現象が抑制されたロッキング椅子を提供する。
【手段】椅子はベース3と座4と背フレーム5と背もたれ6とを有しており、座4の前部はベース3にフロントリンク18で連結されている。座4と背フレーム5(11)はリアリンク21で連結されている。前後のリンク18,21の規制作用により、座4はロッキングに際して背もたれ6よりも小さい角度で後傾しつつ大きく後退動する。座4と背フレーム5(11)とは、ガイドピン19とガイド用長穴20との嵌め合わせによるガイド手段で相対位置が保持されている。簡単な機構ながらロッキングに際して座4は大きく後退動するため、座4と背もたれ6とが離反することに起因したシャツめくれを抑制できる。
【手段】椅子はベース3と座4と背フレーム5と背もたれ6とを有しており、座4の前部はベース3にフロントリンク18で連結されている。座4と背フレーム5(11)はリアリンク21で連結されている。前後のリンク18,21の規制作用により、座4はロッキングに際して背もたれ6よりも小さい角度で後傾しつつ大きく後退動する。座4と背フレーム5(11)とは、ガイドピン19とガイド用長穴20との嵌め合わせによるガイド手段で相対位置が保持されている。簡単な機構ながらロッキングに際して座4は大きく後退動するため、座4と背もたれ6とが離反することに起因したシャツめくれを抑制できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれの後傾動に連動して座が後退及び後傾するタイプのロッキング機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれの後傾動に連動して座が後退及び後傾する椅子は事務用椅子を初めとして広く使用されており、座を背もたれに連動させる機構についても様々な構成が提案され或いは実施されている。例えば特許文献1には、ベースに後傾動自在に連結された背フレームに背もたれを取り付けた方式の椅子において、座の前部に下向き突部を設けてこの下向き突部を座に連結することにより、座が僅かに後退しつつ後傾することを許容し、更に、座と背フレームとをリンクで連結することが開示されている。
【0003】
他方、本願発明者の発明に係る特許文献2には、座を第1リンクと第2リンクとの前後のリンクでベースに連結することで座の後退動と後傾動とを許容すると共に、座と背フレームとを第3リンクで連結することで座と背フレーム(背もたれ)とを連動させることが開示されている。
【特許文献1】特開2003−250651号公報
【特許文献2】米国特許第6709057号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背もたれの後傾動に連動して座を後退及び後傾させることの目的の1つに、ロッキング時に座と背もたれとの間隔が広がることをできるだけ防止して背ずれ又はシャツ捲れの現象を抑制することがある。すなわち、ロッキングに際して座と背もたれとが相対的に離反すると、着座者の背中が背もたれに対して下向きに滑って、シャツが捲れるような現象を呈して人に違和感や不快感を与えることであり、そこで、ロッキングに際して座と背もたれとの相対距離をなるべく変化させないように、座を後退させつつ後傾させているのである。
【0005】
そこで特許文献1,2について検討するに、特許文献1は本質的に座の前部をベースに連結しているものであり、非ロッキング時とロッキング時とで座の前部の高さと前後位置とは殆ど違いはないため、座を背もたれに追従させるという機能はあまり期待できない。従って、背ずれ又はシャツ捲れ現象の防止という効果はあまり期待できないと言える。
【0006】
他方、特許文献2では第1リンクと第2リンクとで平行リンク機構に近いリンク機構が構成されているため、第1リンクと第2リンクとの長さや後傾角度を選択することでロッキング時に座を大きく後退させることができ、従って、背ずれ又はシャツ捲れ現象を防止する機能に優れていると言える。また、リンクを使用した連動機構は構造が簡単であるという利点も有している。
【0007】
本願発明は、特許文献2のように座をリンクでベースに連結する方式を踏襲しつつ、椅子の機能が的確に発揮されるように改良せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明が対象とするロッキング椅子は、人が腰掛ける座と、着座した人が凭れ掛かり得る背もたれと、前記座の下方に配置されているベースと、前記ベースに後傾動自在に連結されていると共に背もたれが設けられた背フレームとを備えており、前記背もたれと背フレームとが一体に後傾するようになっている。なお、背フレームに関して「背もたれが設けられた」とは、背フレームが背もたれの一部を構成している場合と、背もたれと背フレームとが別部材になっている場合との両方を含んでいる。
【0009】
そして、請求項1の発明では、前記座とベースとを、座がベースに対して後退しつつ後傾するようにフロントリンクで連結されており、更に、前記座と背フレームとは、背フレームが後傾すると座は背フレームより少ない角度で後傾するようにリアリンクで連結されており、更に、前記座と背フレームとは、座だけが単独で動くことを阻止しつつ座と背フレームとの相対動が許容されるようにガイド手段で連結されている。なお、フロントリンクとその機能からして座とベースとのそれぞれに対して回動し、また、リアリンクもその機能からして座と背フレームとのそれぞれに対して回動する。
【0010】
請求項2の発明に係るロッキング椅子は、請求項1において、前記ガイド手段は、背フレームに設けたガイド長穴との座に設けたピンとの嵌め合わせになっている。また、請求項3の発明に係るロッキング椅子は、前記フロントリンクは背フレームの回動支点の手前に配置され、前記リアリンクは背フレームの回動支点の後ろ側に配置されている。
【0011】
本願発明では、座は上下に重なった複数の部材から成っているものも含んでいる。この場合、下層の部材に対して上層の部材が前後位置調節可能に取り付いていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、座はベースと背フレームとにそれぞれリンクで連結されているが、リンクの長さや位置は必要に応じて任意に選定できるため、座を背もたれに追従させて大きく後退させることができ、その結果、ロッキングに際して座と背もたれとが相対的に離れることに起因したいわゆるシャツめくれ現象を防止又は著しく抑制することができる。
【0013】
そして、座は単独では回動しないようにガイド手段で保持されているため、非ロッキング時とロッキング時とに関係なく座は安定した状態に保持されるが、ガイド手段は座と背フレームとに設けているため、座が大きく後退動することが可能になっている(特許文献2の場合は、座は例えば図1に表示されているリンク8の回動によって動きが規制されるため、ロッキングに際しての座の後退量に限度がある。)。
【0014】
ガイド手段としては様々の態様を採用できるが、請求項2のようにピンと長穴とのは嵌め合わせを採用すると、長穴はおおよそ前後方向に長く延びる形態になるため、着座者の荷重はピンを介して長穴の内面で安定良く支持されることになり、その結果、座の安定性をより向上させることができる利点がある。また、ガイド手段としてリンクを使用すると座は背フレームに対して前後動しつつ上下動することになるが、ピンと長穴との組み合わせを採用すると、座を背フレームに対して殆ど上下動せずに前後動させることができ、このため座のスムースな動きを実現できる。なお、請求項2とは異なって、ガイド手段として座に長穴を設けて背フレームにピンを設けることも可能である。
【0015】
背フレームの回動支点とフロントリンクとリアリンクとの位置関係は様々に設定可能であるが、背フレームの回動支点が前に寄り過ぎていると背もたれのロッキング角度を大きくできない一方、背フレームの回動支点が後ろに寄りすぎていると、ロッキングに際して背もたれが過度に後退する傾向を呈して座を追従させるための措置が面倒になる。この点、請求項3のようにフロントリンクとリアリンクとを背フレームの回動支点を挟んだ前後に配置すると、背もたれの後傾角度を適度に保持しつつ座を背もたれの動きに的確に追従させることができて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用に多用されている回転椅子に適用している。図1〜図14では第1実施形態を示しており、図15では第2実施形態を示している。以下、第1実施形態から順に説明する。
【0017】
(1).第1実施形態の概略
図1は椅子の側面図、図2は一部を省略した背面図、図3は部材を分離した状態での側面図、図4はロッキング状態の概略側面図、図5のうち(A)は一部破断側面図、(B)は部材を分離した状態での概略背面図、図6のうち(A)は椅子の縦断側面図、(B)は背もたれ6の下部の縦断側面図、(C)は背もたれ6の上部の縦断側面図である。まず、これらの図に基づいて椅子の概要を説明する。
【0018】
図1に示すように、椅子は、主要要素として、脚支柱2を有する脚装置1、脚支柱2の上端に固定されたベース3、ベース3の上方に配置された座4、一部を背もたれ6と成したフレーム装置5、背もたれ6に取付けられたヘッドレスト装置7、座4の左右に配置された肘掛け装置8、を備えている。肘掛け装置8はフレーム装置5に固定されている。但し、肘掛け装置8は本願発明との関係はないので以下においても説明は省略する。なお、肘掛け装置8はオプション品であり、取付けない場合もある。
【0019】
脚1は放射状に延びる複数本の枝足9を備えており、各枝足9の先端にはキャスタ10を設けている。脚支柱2は伸縮自在なガスシリンダを使用しており、従って、外筒と内筒とを備えている。背フレーム5は、ベース3の左右両側において前後方向に延びる揺動フレーム11を備えている。
【0020】
揺動フレーム11はその前端部を中心にして後傾するようにベース3に第1軸12で連結されている。揺動フレーム11の後部には上向きに延びる背支柱11aが一体に形成されており、左右の背支柱11aに、背もたれ6の輪郭(周囲)を構成するバックフレーム13がねじで固定されている。本実施形態では背フレーム5は揺動フレーム11とバックフレーム13とで構成されているが、バックフレーム13は背もたれ6の構成要素でもある。
【0021】
バックフレーム13は基本的には縦長の四角形(略台形)に近い形状であり、従って、背もたれ6の左右側部を構成する縦長の左右のサイドメンバー14と、背もたれ6の上部を構成する略横長(水平状)のアッパーメンバー15と、背もたれ6の下部を構成する略横長のロアメンバー16とから成っている。そして、バックフレーム13にネット状材17を張ることで背もたれ6が構成されている。
【0022】
ネット状材17の取り付け手段としては、図6(B)(C)に示すように、バックフレーム13を構成する各メンバーの外周面に溝46を形成して、ネット状材17の縁部に固定した縁部材45が溝46に嵌め込んでいる。勿論、他の手段で取り付けることも可能である。
【0023】
座4の前部とベース3の前部とはフロントリンク18で連結されており、フロントリンク18が後傾動することで座4は後退しつつ後傾し得る。また、座4の後部寄りに、揺動フレーム11に向けて横向き突出した左右のガイドピン19が設けられている一方、左右揺動フレーム11の相対向する内側面には、ガイドピン19がスライド可能に嵌まるガイド用長穴20が横向きに開口した状態に空いている。ガイドピン19とガイド用長穴20とは座4のみが動くことを阻止するガイド手段の一例である。
【0024】
図3から理解できるように、フロントリンク18とガイドピン19とガイド用長穴20とのガイド作用により、座4は、背もたれ6の後傾動に連動して一緒に後傾及び後退並びに下降する。この場合、ガイド用長穴20はおおよそ前後方向に延びているため(すなわち、非ロッキング姿勢で側面視傾斜しているものの水平姿勢に近い姿勢に傾斜しているため)、ガイドピン19はガイド用長穴20の下内面で滑り難い状態で支持されており、このため、座4は荷重が掛かっても安定した状態に保持されている。なお、言うまでもないが、座4の後傾の度合いは背もたれ6の後傾の度合いよりも小さい。
【0025】
例えば図3に示すように、椅子は、座4とフレーム装置5とに相対回動可能に連結された左右のリアリンク21と、左右リアリンク21の上端部の前面に重なった左右のランバーパッド(スペーサ)22とを備えている。ランバーパッド22はネット状材17の左右側部を裏側から支持している。リアリンク21は、揺動フレーム11とほぼ重なった下部21aとその後端から上向きに延びる起立部21bとを備えて全体的にはL字に近い形状になっており、下部21aと起立部21bとが繋がったコーナー部がバックフレーム13のサイドメンバー14にピン51で連結されて、下部21aの前端に形成した上向き突起21cが座4の後部にピン49で連結されている。
【0026】
リアリンク21とランバーパッド22とはネット状材17のテンション調節手段を構成するもので、背もたれ6が後傾するとリアリンク21は起立部21bの上部がバックフレーム13に対して相対的に後傾動し、これにより、ロッキング時にネット状材17はランバーパッド22で支持された箇所を中心にして弛むことになる。
【0027】
ヘッドレスト装置7は、人の頭が当たるヘッドレスト23と、これが取り付いた左右の支持フレーム24とを備えており、左右の支持フレーム24はその上部において横長の補強フレーム25で連結されている。左右の支持フレーム24の下部はバックフレーム13におけるサイドメンバー14に内側面に重なって枢支部24aになっており、枢支部24aの上端が左右横長のピン26でサイドメンバー14に連結されている。
【0028】
そして、背もたれ6が後傾すると、リアリンク21の上端に設けたピン58でで枢支部24aの下端が後方に押され、これによってヘッドレスト23が背もたれ6に対して相対的に前進する。なお、図4において(A)ではヘッドレスト装置7を表示しているが、(B)ではヘッドレスト装置7を表示していない。
【0029】
ロッキング時にヘッドレスト23が背もたれ6に対して相対的に前進するのは本実施形態の一つの特徴であるが、この特徴により、ロッキング時に人の頭が反り過ぎることを抑制できる。従って、例えばロッキング状態のままで頭を起こすことなくパソコンのディスプレイを楽に見ることができたり、読書に際して本を持ち上げる必要がないといった利点がある。図3や図6から推測できるように、ランバーパッド22にはリアリンク21の上部に嵌まる溝55が形成されており、この溝55に山形の1つの突起56が形成されている一方、リアリンクには突起56が嵌脱する凹所57を多段に形成している。従って、ランバーパッド22を段階的に高さ調節することができる。
【0030】
(2).ロッキング機構の詳細
以下、従前の図に加えて図7以下の図面も参照しつつ各部位の構造や動きを詳述する。まず、ベース3の構造やロッキング機構のような椅子の基本的構造を、図6〜図10を参照して説明する。図7は座部の一部破断平面図、図8はロッキング用ばねの箇所の部分的な平面図、図9は図7の IX-IX視断面図、図10は図7の X-X視断面図である。
【0031】
図6(A)に示すように、ベース3は、上向きに開口した浅い箱状の本体28とその上面にボルトで固定された下向き開口の蓋29とで中空に形成されており、図7に示すように平面形状はやや前後長手で後向きに窄まっている(勿論、形状は自由に選択できる。)。脚支柱2は本体28の後部に嵌着されている。第1軸12は本体28と蓋29とで上下から挟むようになっており、このため、本体28と蓋29とには、左右外向きに突出した半割り状軸受け部30が形成されている。
【0032】
半割り状軸受け部30と揺動フレーム11との間には間隔が空いており、このため、第1支軸12にはカラー31を嵌め入れている。第1支軸12は左右の揺動フレーム11に相対回転不能に固定されている。
【0033】
ベース3を構成する本体28のうち脚支柱2の手前の箇所には下向きの凹所28bが形成されており、この凹所28aに略鉛直姿勢の支軸32をねじ込みによって取付け、支軸32にロッキング用ばね(コイルばね)33を上方から嵌め入れている。そして、第1軸12には、当該第1軸12から後ろ向きに延びるアーム状のばね押さえ34を相対回転不能に取り付けている。ばね押さえ34の先端部は、支軸32と干渉せずにロッキング用ばね33に上方から重なるように二股状になっており、背もたれ6はロッキングばね33に抗して後傾動する。
【0034】
本実施形態では第1軸12は円形になっており、そこでばね押さえ34は溶接やピン止めで第1軸12に固定されているが、例えば第1軸12を断面四角形等の角形に形成することでばね押さえ34と第1軸12とを相対回転不能に嵌め合わせることも可能である(この点は、第1軸12と揺動フレーム11との固定構造についても同様である。)。また、ロッキング用ばねの形態や配置態様も様々に具体化することができる。例えばばね手段としては、ねじりばねや板ばね、或いはトーションバーを使用することも可能である。
【0035】
ベース3を構成する本体28の前部には、フロントリンク18を連結するための左右横長の筒状軸受け部28bが一体に形成されており、この筒状軸受け部28bに挿通した第2軸35でフロントリンク18の下部が本体28に連結されている。なお、筒状軸受け部28bは本体28の左右両側に分離して設けても良く、第2軸35を左右別々に分離することも可能である。
【0036】
例えば図3、図6(A)、図9に示すように、座4は、樹脂製の座受け36にインナーシェル37を固定してその上面にクッション38を張った構造になっている。座受け36は左右揺動フレーム11の間に入り込む左右幅であり、下向きの側板36aを備えている。そして、座受け36における左右側板36aの前寄り部分に、厚肉のフロント軸受け部39を一体に形成して、このフロント軸受け部39にフロントリンク18の上端を左右横長の第3軸40でそれぞれ連結している。なお、第3軸40は1本に連続させることが可能である。
【0037】
座受け36には、座インナーシェル37が人の体圧で沈み込み変形することを許容するための大きな抜き穴41が空いている(勿論、抜き穴41は無くても良いし、また、座4にメッシュ構造を採用することも可能である。)。例えば図9では座4はインナーシェル37と座受け36と密着した状態に描いているが、実際には、座4とインナーシェル37と座受け36との間にはその大部分において隙間が空いている。
【0038】
座受け36の左右側板36aには、その後端に寄った部分に厚肉状で下向きのリアブラケット42を一体に形成しており、このリアブラケット42の下端に前記したガイドガイドピン19を外向き突設している。他方、図7や図10に示すように、揺動フレーム11には、既述のとおり、ガイドガイドピン19がスライド自在に嵌まるガイド用長穴20が空いている。揺動フレーム11はアルミダイキャストのような金属加工品であり、基本的には内側に開口した中空状であって、中空部に補強リブを設けている。
【0039】
(3).第1実施形態のまとめ
揺動フレーム11は側面視で水平に対して緩い角度で前傾した姿勢になっているが、例えば図10に示すように、ガイド用長穴20は側面視において揺動フレーム11に対して相対的に若干の角度だけ前傾した姿勢になっている。このような揺動フレーム11とガイド用長穴20との傾斜角度の関係により、座4が背もたれ6に連動して後傾・後退・下降するにおいて、人間工学的に違和感のない快適な使用感を得ることができる。
【0040】
さて、座4のガイド手段としてリンクを使用した場合、リンクの回動角度の変化率と座4の後退量及び下降量の変化率とは比例関係になく、このため、座4が加速度的に下降したり後退したりして動きがスムースでなくなる虞がある。これに対して本実施形態のようにガイドピン19とガイド用長穴20とのガイド手段を採用すると、ガイド用長穴20は直線状に延びているため、ロッキングに際しての座4は揺動フレーム11の後傾に比例して後退又は後傾するのであり、このため座4は違和感のない動きをする。
【0041】
更に、ガイド用長穴20が非ロッキング状態で前傾していることにより、ロッキングに際して背もたれ7の後傾の度合いに対する座4の後傾の度合いが小さくなり、ロッキングに際して身体が屈み勝手になることが防止される。このように、ガイド用長穴20が直線状に延びていることと前傾していることとにより、ロッキングに際して人間工学的に違和感のない快適な使用感を得ることができるのである。
【0042】
図1に示すように、非ロッキング状態では、座4は側面視で概ね水平に近い姿勢であって揺動フレーム11はな後傾姿勢になっている。従って、座5と揺動フレーム11とはある程度の角度θで交差している。そして、ロッキングすると、背もたれ5の後傾に連動して座4は後傾しつつ後退動するが、フロントリンク18が回動して座4が全体的に下降するとことと、座4と揺動フレーム11との相対位置がガイドピン19とガイド用長穴20とで規制されていることにより、座4の後傾角度は揺動フレーム11の後傾角度よりも遥かに小さい。このため、背もたれ5を大きくロッキングできる椅子でありながら、ロッキング時に身体が屈み勝手になることを防止できる。
【0043】
本実施形態ではリアリンク21をバックフレーム13に連結しているが、リアリンク21は揺動フレーム11に連結しても良い。ピン51はビスやリベット等を含む概念であり、また、ピン51に相当するボス部をバックフレーム13又は揺動フレーム11に形成することも可能である。更に、揺動フレーム1とバックフレーム13とを一体構造とすることも可能である。
【0044】
なお、フロントリンク18とリアリンク21のみしか存在しない場合や、フロントリンク18とガイド手段19,20のみか存在しない場合は、座4は独自に動いて安定性を保持できないが、フロントリンク18とリアリンク21とガイド手段19,20とが存在してこれらが互いに規制し合っているため、座4は独自に動くことなく背フレーム5及び背もたれ6と連動して動く。
【0045】
(4).他の実施形態及び参考例
第1実施形態ではリアリンク21はランバーパッド22を前後動させる機能を有しているが、図11に第2実施形態として示すように、リアリンク21は単に座4と背フレーム5(或いは揺動フレーム11)とを連結する機能を有しているに過ぎない構成とすることも可能である。
【0046】
図12では本願発明に類似した参考例を示している。この参考例は、第1及び第2の実施形態とはリアリンク21を有しない点で共通しており、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、補助リンク115で座4とベース3とが連結されている点である。補助リンク60の上端はガイドピン19に連結されているが、座4の他の部位に他のピンで連結しても良い。補助リンク115をベース3に連結するに当たっては、ピン61が嵌まる穴を長穴62とすることにより、座4の後退動を許容している。
【0047】
(5).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、適用対象は必ずしも回転椅子に限定されるものではなく、例えば劇場用椅子やベンチのような固定式椅子にも適用できる。背もたれは樹脂製の背板(インナーシェル)にクッションを張った方式とすることも可能である。ガイド手段としては、リニア式スライド部材など様々のものを採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1実施形態に係る椅子の側面図である。
【図2】一部を省略した背面図である。
【図3】部材を分離した状態での側面図である。
【図4】ロッキング状態の概略側面図で、(A)はヘッドレスト装置を表示したもので(B)はヘッドレスト装置を表示していないものである。
【図5】(A)は一部破断側面図、(B)は部材を分離した状態での概略背面図である。
【図6】(A)は椅子の縦断側面図、(B)は背もたれの下部の縦断側面図、(C)は背もたれの上部の縦断側面図である。
【図7】座部の一部破断平面図である。
【図8】ロッキング用ばねの箇所の部分的な平面図である。
【図9】図7の IX-IX視断面図である。
【図10】図7の X-X視断面図である。
【図11】第2実施形態を示す図である。
【図12】参考例を示す図である。
【0049】
1 脚装置
3 ベース
4 座
5 フレーム装置
6 背もたれ
7 ヘッドレスト装置
11 背フレームを構成する揺動フレーム
13 背もたれと背フレームとを構成するバックフレーム
14 バックフレームのサイドメンバー
19 ガイド手段を構成するガイドピン
20 ガイド手段を構成するガイド用長穴
21 リアリンク
【技術分野】
【0001】
本願発明は、背もたれの後傾動に連動して座が後退及び後傾するタイプのロッキング機能に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背もたれの後傾動に連動して座が後退及び後傾する椅子は事務用椅子を初めとして広く使用されており、座を背もたれに連動させる機構についても様々な構成が提案され或いは実施されている。例えば特許文献1には、ベースに後傾動自在に連結された背フレームに背もたれを取り付けた方式の椅子において、座の前部に下向き突部を設けてこの下向き突部を座に連結することにより、座が僅かに後退しつつ後傾することを許容し、更に、座と背フレームとをリンクで連結することが開示されている。
【0003】
他方、本願発明者の発明に係る特許文献2には、座を第1リンクと第2リンクとの前後のリンクでベースに連結することで座の後退動と後傾動とを許容すると共に、座と背フレームとを第3リンクで連結することで座と背フレーム(背もたれ)とを連動させることが開示されている。
【特許文献1】特開2003−250651号公報
【特許文献2】米国特許第6709057号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背もたれの後傾動に連動して座を後退及び後傾させることの目的の1つに、ロッキング時に座と背もたれとの間隔が広がることをできるだけ防止して背ずれ又はシャツ捲れの現象を抑制することがある。すなわち、ロッキングに際して座と背もたれとが相対的に離反すると、着座者の背中が背もたれに対して下向きに滑って、シャツが捲れるような現象を呈して人に違和感や不快感を与えることであり、そこで、ロッキングに際して座と背もたれとの相対距離をなるべく変化させないように、座を後退させつつ後傾させているのである。
【0005】
そこで特許文献1,2について検討するに、特許文献1は本質的に座の前部をベースに連結しているものであり、非ロッキング時とロッキング時とで座の前部の高さと前後位置とは殆ど違いはないため、座を背もたれに追従させるという機能はあまり期待できない。従って、背ずれ又はシャツ捲れ現象の防止という効果はあまり期待できないと言える。
【0006】
他方、特許文献2では第1リンクと第2リンクとで平行リンク機構に近いリンク機構が構成されているため、第1リンクと第2リンクとの長さや後傾角度を選択することでロッキング時に座を大きく後退させることができ、従って、背ずれ又はシャツ捲れ現象を防止する機能に優れていると言える。また、リンクを使用した連動機構は構造が簡単であるという利点も有している。
【0007】
本願発明は、特許文献2のように座をリンクでベースに連結する方式を踏襲しつつ、椅子の機能が的確に発揮されるように改良せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明が対象とするロッキング椅子は、人が腰掛ける座と、着座した人が凭れ掛かり得る背もたれと、前記座の下方に配置されているベースと、前記ベースに後傾動自在に連結されていると共に背もたれが設けられた背フレームとを備えており、前記背もたれと背フレームとが一体に後傾するようになっている。なお、背フレームに関して「背もたれが設けられた」とは、背フレームが背もたれの一部を構成している場合と、背もたれと背フレームとが別部材になっている場合との両方を含んでいる。
【0009】
そして、請求項1の発明では、前記座とベースとを、座がベースに対して後退しつつ後傾するようにフロントリンクで連結されており、更に、前記座と背フレームとは、背フレームが後傾すると座は背フレームより少ない角度で後傾するようにリアリンクで連結されており、更に、前記座と背フレームとは、座だけが単独で動くことを阻止しつつ座と背フレームとの相対動が許容されるようにガイド手段で連結されている。なお、フロントリンクとその機能からして座とベースとのそれぞれに対して回動し、また、リアリンクもその機能からして座と背フレームとのそれぞれに対して回動する。
【0010】
請求項2の発明に係るロッキング椅子は、請求項1において、前記ガイド手段は、背フレームに設けたガイド長穴との座に設けたピンとの嵌め合わせになっている。また、請求項3の発明に係るロッキング椅子は、前記フロントリンクは背フレームの回動支点の手前に配置され、前記リアリンクは背フレームの回動支点の後ろ側に配置されている。
【0011】
本願発明では、座は上下に重なった複数の部材から成っているものも含んでいる。この場合、下層の部材に対して上層の部材が前後位置調節可能に取り付いていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、座はベースと背フレームとにそれぞれリンクで連結されているが、リンクの長さや位置は必要に応じて任意に選定できるため、座を背もたれに追従させて大きく後退させることができ、その結果、ロッキングに際して座と背もたれとが相対的に離れることに起因したいわゆるシャツめくれ現象を防止又は著しく抑制することができる。
【0013】
そして、座は単独では回動しないようにガイド手段で保持されているため、非ロッキング時とロッキング時とに関係なく座は安定した状態に保持されるが、ガイド手段は座と背フレームとに設けているため、座が大きく後退動することが可能になっている(特許文献2の場合は、座は例えば図1に表示されているリンク8の回動によって動きが規制されるため、ロッキングに際しての座の後退量に限度がある。)。
【0014】
ガイド手段としては様々の態様を採用できるが、請求項2のようにピンと長穴とのは嵌め合わせを採用すると、長穴はおおよそ前後方向に長く延びる形態になるため、着座者の荷重はピンを介して長穴の内面で安定良く支持されることになり、その結果、座の安定性をより向上させることができる利点がある。また、ガイド手段としてリンクを使用すると座は背フレームに対して前後動しつつ上下動することになるが、ピンと長穴との組み合わせを採用すると、座を背フレームに対して殆ど上下動せずに前後動させることができ、このため座のスムースな動きを実現できる。なお、請求項2とは異なって、ガイド手段として座に長穴を設けて背フレームにピンを設けることも可能である。
【0015】
背フレームの回動支点とフロントリンクとリアリンクとの位置関係は様々に設定可能であるが、背フレームの回動支点が前に寄り過ぎていると背もたれのロッキング角度を大きくできない一方、背フレームの回動支点が後ろに寄りすぎていると、ロッキングに際して背もたれが過度に後退する傾向を呈して座を追従させるための措置が面倒になる。この点、請求項3のようにフロントリンクとリアリンクとを背フレームの回動支点を挟んだ前後に配置すると、背もたれの後傾角度を適度に保持しつつ座を背もたれの動きに的確に追従させることができて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用に多用されている回転椅子に適用している。図1〜図14では第1実施形態を示しており、図15では第2実施形態を示している。以下、第1実施形態から順に説明する。
【0017】
(1).第1実施形態の概略
図1は椅子の側面図、図2は一部を省略した背面図、図3は部材を分離した状態での側面図、図4はロッキング状態の概略側面図、図5のうち(A)は一部破断側面図、(B)は部材を分離した状態での概略背面図、図6のうち(A)は椅子の縦断側面図、(B)は背もたれ6の下部の縦断側面図、(C)は背もたれ6の上部の縦断側面図である。まず、これらの図に基づいて椅子の概要を説明する。
【0018】
図1に示すように、椅子は、主要要素として、脚支柱2を有する脚装置1、脚支柱2の上端に固定されたベース3、ベース3の上方に配置された座4、一部を背もたれ6と成したフレーム装置5、背もたれ6に取付けられたヘッドレスト装置7、座4の左右に配置された肘掛け装置8、を備えている。肘掛け装置8はフレーム装置5に固定されている。但し、肘掛け装置8は本願発明との関係はないので以下においても説明は省略する。なお、肘掛け装置8はオプション品であり、取付けない場合もある。
【0019】
脚1は放射状に延びる複数本の枝足9を備えており、各枝足9の先端にはキャスタ10を設けている。脚支柱2は伸縮自在なガスシリンダを使用しており、従って、外筒と内筒とを備えている。背フレーム5は、ベース3の左右両側において前後方向に延びる揺動フレーム11を備えている。
【0020】
揺動フレーム11はその前端部を中心にして後傾するようにベース3に第1軸12で連結されている。揺動フレーム11の後部には上向きに延びる背支柱11aが一体に形成されており、左右の背支柱11aに、背もたれ6の輪郭(周囲)を構成するバックフレーム13がねじで固定されている。本実施形態では背フレーム5は揺動フレーム11とバックフレーム13とで構成されているが、バックフレーム13は背もたれ6の構成要素でもある。
【0021】
バックフレーム13は基本的には縦長の四角形(略台形)に近い形状であり、従って、背もたれ6の左右側部を構成する縦長の左右のサイドメンバー14と、背もたれ6の上部を構成する略横長(水平状)のアッパーメンバー15と、背もたれ6の下部を構成する略横長のロアメンバー16とから成っている。そして、バックフレーム13にネット状材17を張ることで背もたれ6が構成されている。
【0022】
ネット状材17の取り付け手段としては、図6(B)(C)に示すように、バックフレーム13を構成する各メンバーの外周面に溝46を形成して、ネット状材17の縁部に固定した縁部材45が溝46に嵌め込んでいる。勿論、他の手段で取り付けることも可能である。
【0023】
座4の前部とベース3の前部とはフロントリンク18で連結されており、フロントリンク18が後傾動することで座4は後退しつつ後傾し得る。また、座4の後部寄りに、揺動フレーム11に向けて横向き突出した左右のガイドピン19が設けられている一方、左右揺動フレーム11の相対向する内側面には、ガイドピン19がスライド可能に嵌まるガイド用長穴20が横向きに開口した状態に空いている。ガイドピン19とガイド用長穴20とは座4のみが動くことを阻止するガイド手段の一例である。
【0024】
図3から理解できるように、フロントリンク18とガイドピン19とガイド用長穴20とのガイド作用により、座4は、背もたれ6の後傾動に連動して一緒に後傾及び後退並びに下降する。この場合、ガイド用長穴20はおおよそ前後方向に延びているため(すなわち、非ロッキング姿勢で側面視傾斜しているものの水平姿勢に近い姿勢に傾斜しているため)、ガイドピン19はガイド用長穴20の下内面で滑り難い状態で支持されており、このため、座4は荷重が掛かっても安定した状態に保持されている。なお、言うまでもないが、座4の後傾の度合いは背もたれ6の後傾の度合いよりも小さい。
【0025】
例えば図3に示すように、椅子は、座4とフレーム装置5とに相対回動可能に連結された左右のリアリンク21と、左右リアリンク21の上端部の前面に重なった左右のランバーパッド(スペーサ)22とを備えている。ランバーパッド22はネット状材17の左右側部を裏側から支持している。リアリンク21は、揺動フレーム11とほぼ重なった下部21aとその後端から上向きに延びる起立部21bとを備えて全体的にはL字に近い形状になっており、下部21aと起立部21bとが繋がったコーナー部がバックフレーム13のサイドメンバー14にピン51で連結されて、下部21aの前端に形成した上向き突起21cが座4の後部にピン49で連結されている。
【0026】
リアリンク21とランバーパッド22とはネット状材17のテンション調節手段を構成するもので、背もたれ6が後傾するとリアリンク21は起立部21bの上部がバックフレーム13に対して相対的に後傾動し、これにより、ロッキング時にネット状材17はランバーパッド22で支持された箇所を中心にして弛むことになる。
【0027】
ヘッドレスト装置7は、人の頭が当たるヘッドレスト23と、これが取り付いた左右の支持フレーム24とを備えており、左右の支持フレーム24はその上部において横長の補強フレーム25で連結されている。左右の支持フレーム24の下部はバックフレーム13におけるサイドメンバー14に内側面に重なって枢支部24aになっており、枢支部24aの上端が左右横長のピン26でサイドメンバー14に連結されている。
【0028】
そして、背もたれ6が後傾すると、リアリンク21の上端に設けたピン58でで枢支部24aの下端が後方に押され、これによってヘッドレスト23が背もたれ6に対して相対的に前進する。なお、図4において(A)ではヘッドレスト装置7を表示しているが、(B)ではヘッドレスト装置7を表示していない。
【0029】
ロッキング時にヘッドレスト23が背もたれ6に対して相対的に前進するのは本実施形態の一つの特徴であるが、この特徴により、ロッキング時に人の頭が反り過ぎることを抑制できる。従って、例えばロッキング状態のままで頭を起こすことなくパソコンのディスプレイを楽に見ることができたり、読書に際して本を持ち上げる必要がないといった利点がある。図3や図6から推測できるように、ランバーパッド22にはリアリンク21の上部に嵌まる溝55が形成されており、この溝55に山形の1つの突起56が形成されている一方、リアリンクには突起56が嵌脱する凹所57を多段に形成している。従って、ランバーパッド22を段階的に高さ調節することができる。
【0030】
(2).ロッキング機構の詳細
以下、従前の図に加えて図7以下の図面も参照しつつ各部位の構造や動きを詳述する。まず、ベース3の構造やロッキング機構のような椅子の基本的構造を、図6〜図10を参照して説明する。図7は座部の一部破断平面図、図8はロッキング用ばねの箇所の部分的な平面図、図9は図7の IX-IX視断面図、図10は図7の X-X視断面図である。
【0031】
図6(A)に示すように、ベース3は、上向きに開口した浅い箱状の本体28とその上面にボルトで固定された下向き開口の蓋29とで中空に形成されており、図7に示すように平面形状はやや前後長手で後向きに窄まっている(勿論、形状は自由に選択できる。)。脚支柱2は本体28の後部に嵌着されている。第1軸12は本体28と蓋29とで上下から挟むようになっており、このため、本体28と蓋29とには、左右外向きに突出した半割り状軸受け部30が形成されている。
【0032】
半割り状軸受け部30と揺動フレーム11との間には間隔が空いており、このため、第1支軸12にはカラー31を嵌め入れている。第1支軸12は左右の揺動フレーム11に相対回転不能に固定されている。
【0033】
ベース3を構成する本体28のうち脚支柱2の手前の箇所には下向きの凹所28bが形成されており、この凹所28aに略鉛直姿勢の支軸32をねじ込みによって取付け、支軸32にロッキング用ばね(コイルばね)33を上方から嵌め入れている。そして、第1軸12には、当該第1軸12から後ろ向きに延びるアーム状のばね押さえ34を相対回転不能に取り付けている。ばね押さえ34の先端部は、支軸32と干渉せずにロッキング用ばね33に上方から重なるように二股状になっており、背もたれ6はロッキングばね33に抗して後傾動する。
【0034】
本実施形態では第1軸12は円形になっており、そこでばね押さえ34は溶接やピン止めで第1軸12に固定されているが、例えば第1軸12を断面四角形等の角形に形成することでばね押さえ34と第1軸12とを相対回転不能に嵌め合わせることも可能である(この点は、第1軸12と揺動フレーム11との固定構造についても同様である。)。また、ロッキング用ばねの形態や配置態様も様々に具体化することができる。例えばばね手段としては、ねじりばねや板ばね、或いはトーションバーを使用することも可能である。
【0035】
ベース3を構成する本体28の前部には、フロントリンク18を連結するための左右横長の筒状軸受け部28bが一体に形成されており、この筒状軸受け部28bに挿通した第2軸35でフロントリンク18の下部が本体28に連結されている。なお、筒状軸受け部28bは本体28の左右両側に分離して設けても良く、第2軸35を左右別々に分離することも可能である。
【0036】
例えば図3、図6(A)、図9に示すように、座4は、樹脂製の座受け36にインナーシェル37を固定してその上面にクッション38を張った構造になっている。座受け36は左右揺動フレーム11の間に入り込む左右幅であり、下向きの側板36aを備えている。そして、座受け36における左右側板36aの前寄り部分に、厚肉のフロント軸受け部39を一体に形成して、このフロント軸受け部39にフロントリンク18の上端を左右横長の第3軸40でそれぞれ連結している。なお、第3軸40は1本に連続させることが可能である。
【0037】
座受け36には、座インナーシェル37が人の体圧で沈み込み変形することを許容するための大きな抜き穴41が空いている(勿論、抜き穴41は無くても良いし、また、座4にメッシュ構造を採用することも可能である。)。例えば図9では座4はインナーシェル37と座受け36と密着した状態に描いているが、実際には、座4とインナーシェル37と座受け36との間にはその大部分において隙間が空いている。
【0038】
座受け36の左右側板36aには、その後端に寄った部分に厚肉状で下向きのリアブラケット42を一体に形成しており、このリアブラケット42の下端に前記したガイドガイドピン19を外向き突設している。他方、図7や図10に示すように、揺動フレーム11には、既述のとおり、ガイドガイドピン19がスライド自在に嵌まるガイド用長穴20が空いている。揺動フレーム11はアルミダイキャストのような金属加工品であり、基本的には内側に開口した中空状であって、中空部に補強リブを設けている。
【0039】
(3).第1実施形態のまとめ
揺動フレーム11は側面視で水平に対して緩い角度で前傾した姿勢になっているが、例えば図10に示すように、ガイド用長穴20は側面視において揺動フレーム11に対して相対的に若干の角度だけ前傾した姿勢になっている。このような揺動フレーム11とガイド用長穴20との傾斜角度の関係により、座4が背もたれ6に連動して後傾・後退・下降するにおいて、人間工学的に違和感のない快適な使用感を得ることができる。
【0040】
さて、座4のガイド手段としてリンクを使用した場合、リンクの回動角度の変化率と座4の後退量及び下降量の変化率とは比例関係になく、このため、座4が加速度的に下降したり後退したりして動きがスムースでなくなる虞がある。これに対して本実施形態のようにガイドピン19とガイド用長穴20とのガイド手段を採用すると、ガイド用長穴20は直線状に延びているため、ロッキングに際しての座4は揺動フレーム11の後傾に比例して後退又は後傾するのであり、このため座4は違和感のない動きをする。
【0041】
更に、ガイド用長穴20が非ロッキング状態で前傾していることにより、ロッキングに際して背もたれ7の後傾の度合いに対する座4の後傾の度合いが小さくなり、ロッキングに際して身体が屈み勝手になることが防止される。このように、ガイド用長穴20が直線状に延びていることと前傾していることとにより、ロッキングに際して人間工学的に違和感のない快適な使用感を得ることができるのである。
【0042】
図1に示すように、非ロッキング状態では、座4は側面視で概ね水平に近い姿勢であって揺動フレーム11はな後傾姿勢になっている。従って、座5と揺動フレーム11とはある程度の角度θで交差している。そして、ロッキングすると、背もたれ5の後傾に連動して座4は後傾しつつ後退動するが、フロントリンク18が回動して座4が全体的に下降するとことと、座4と揺動フレーム11との相対位置がガイドピン19とガイド用長穴20とで規制されていることにより、座4の後傾角度は揺動フレーム11の後傾角度よりも遥かに小さい。このため、背もたれ5を大きくロッキングできる椅子でありながら、ロッキング時に身体が屈み勝手になることを防止できる。
【0043】
本実施形態ではリアリンク21をバックフレーム13に連結しているが、リアリンク21は揺動フレーム11に連結しても良い。ピン51はビスやリベット等を含む概念であり、また、ピン51に相当するボス部をバックフレーム13又は揺動フレーム11に形成することも可能である。更に、揺動フレーム1とバックフレーム13とを一体構造とすることも可能である。
【0044】
なお、フロントリンク18とリアリンク21のみしか存在しない場合や、フロントリンク18とガイド手段19,20のみか存在しない場合は、座4は独自に動いて安定性を保持できないが、フロントリンク18とリアリンク21とガイド手段19,20とが存在してこれらが互いに規制し合っているため、座4は独自に動くことなく背フレーム5及び背もたれ6と連動して動く。
【0045】
(4).他の実施形態及び参考例
第1実施形態ではリアリンク21はランバーパッド22を前後動させる機能を有しているが、図11に第2実施形態として示すように、リアリンク21は単に座4と背フレーム5(或いは揺動フレーム11)とを連結する機能を有しているに過ぎない構成とすることも可能である。
【0046】
図12では本願発明に類似した参考例を示している。この参考例は、第1及び第2の実施形態とはリアリンク21を有しない点で共通しており、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、補助リンク115で座4とベース3とが連結されている点である。補助リンク60の上端はガイドピン19に連結されているが、座4の他の部位に他のピンで連結しても良い。補助リンク115をベース3に連結するに当たっては、ピン61が嵌まる穴を長穴62とすることにより、座4の後退動を許容している。
【0047】
(5).その他
本願発明は上記の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、適用対象は必ずしも回転椅子に限定されるものではなく、例えば劇場用椅子やベンチのような固定式椅子にも適用できる。背もたれは樹脂製の背板(インナーシェル)にクッションを張った方式とすることも可能である。ガイド手段としては、リニア式スライド部材など様々のものを採用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】第1実施形態に係る椅子の側面図である。
【図2】一部を省略した背面図である。
【図3】部材を分離した状態での側面図である。
【図4】ロッキング状態の概略側面図で、(A)はヘッドレスト装置を表示したもので(B)はヘッドレスト装置を表示していないものである。
【図5】(A)は一部破断側面図、(B)は部材を分離した状態での概略背面図である。
【図6】(A)は椅子の縦断側面図、(B)は背もたれの下部の縦断側面図、(C)は背もたれの上部の縦断側面図である。
【図7】座部の一部破断平面図である。
【図8】ロッキング用ばねの箇所の部分的な平面図である。
【図9】図7の IX-IX視断面図である。
【図10】図7の X-X視断面図である。
【図11】第2実施形態を示す図である。
【図12】参考例を示す図である。
【0049】
1 脚装置
3 ベース
4 座
5 フレーム装置
6 背もたれ
7 ヘッドレスト装置
11 背フレームを構成する揺動フレーム
13 背もたれと背フレームとを構成するバックフレーム
14 バックフレームのサイドメンバー
19 ガイド手段を構成するガイドピン
20 ガイド手段を構成するガイド用長穴
21 リアリンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が腰掛ける座と、着座した人が凭れ掛かり得る背もたれと、前記座の下方に配置されているベースと、前記ベースに後傾動自在に連結されていると共に背もたれが設けられた背フレームとを備えており、前記背もたれと背フレームとが一体に後傾するようになっている、という椅子であって、
前記座とベースとを、座がベースに対して後退しつつ後傾するようにフロントリンクで連結されており、更に、前記座と背フレームとは、背フレームが後傾すると座は背フレームより少ない角度で後傾するようにリアリンクで連結されており、更に、前記座と背フレームとは、座だけが単独で動くことを阻止しつつ座と背フレームとの相対動が許容されるようにガイド手段で連結されている、
ロッキング椅子。
【請求項2】
前記ガイド手段は、背フレームに設けたガイド長穴との座に設けたピンとの嵌め合わせになっている、
請求項1に記載したロッキング椅子。
【請求項3】
前記フロントリンクは背フレームの回動支点の手前に配置され、前記リアリンクは背フレームの回動支点の後ろ側に配置されている、
請求項1又は2に記載したロッキング椅子。
【請求項1】
人が腰掛ける座と、着座した人が凭れ掛かり得る背もたれと、前記座の下方に配置されているベースと、前記ベースに後傾動自在に連結されていると共に背もたれが設けられた背フレームとを備えており、前記背もたれと背フレームとが一体に後傾するようになっている、という椅子であって、
前記座とベースとを、座がベースに対して後退しつつ後傾するようにフロントリンクで連結されており、更に、前記座と背フレームとは、背フレームが後傾すると座は背フレームより少ない角度で後傾するようにリアリンクで連結されており、更に、前記座と背フレームとは、座だけが単独で動くことを阻止しつつ座と背フレームとの相対動が許容されるようにガイド手段で連結されている、
ロッキング椅子。
【請求項2】
前記ガイド手段は、背フレームに設けたガイド長穴との座に設けたピンとの嵌め合わせになっている、
請求項1に記載したロッキング椅子。
【請求項3】
前記フロントリンクは背フレームの回動支点の手前に配置され、前記リアリンクは背フレームの回動支点の後ろ側に配置されている、
請求項1又は2に記載したロッキング椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−99102(P2010−99102A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270491(P2008−270491)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】
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