説明

ロボット、ロボットの動作表示制御方法

【課題】操作者の安全性を高めるロボットを実現する。
【解決手段】ロボット200は、ロボットアーム220と、ロボットアーム220の動作を制御する制御部240と、アーム先端部226に配置され、且つ現在時刻のアーム先端部226の位置・姿勢から、制御部240によって生成されたアーム先端部226の軌道に基づき、現在時刻から次時刻におけるアーム先端部226の移動方向及び移動速度を表示する動作表示部100と、を備えている。動作表示部100は、表示画素101の集合であって、表示画素101をアーム先端部226の移動方向に沿って点灯または点滅させる。このことによって、操作者はアーム先端部226の移動方向・移動速度を認識することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットと、このロボットの動作表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットを扱う教示者や作業者等の操作者は、現在時刻までのロボットアームの姿勢から、現在時刻からロボットアームの姿勢がどのように変化するかを推測し、危険をある程度予知することが可能である。しかし、ロボットアームが操作者の推測とは異なる動作をすることもあり、その場合、危険を伴うことがある。そこで、ロボットの動作を操作者に知らしめる表示装置を備えるロボットが提案されている。
【0003】
ロボットの動作を操作者に知らしめる表示装置を備えるロボットの1例として、ロボットの一面(人型ロボットの場合は顔面に相当)に表示装置を配置し、温度変化に伴う動作の変化をし、動作補正の大小を表示するというものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
他の1例としては、溶接用ロボットであって、溶接用トーチ先端に取付けられた表示装置により、予め設定された動作方向を表示装置で確認しながら表示された方向に溶接トーチの動作量を指定するというものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、操作者が発信する操作情報を受信してロボットの動作に関わる命令を表示する命令表示部と、命令を受信した動作方向を表示する方向表示装置とを備えており、方向表示装置の表示内容と命令表示部の表示内容とが一致していることを確認してから、動作命令を入力するロボットが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−196298号公報
【特許文献2】特開平5−31687号公報
【特許文献3】特開2003−80482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1によるロボットは、ロボット内部の温度を検出し、検出した温度によってロボットの動作速度や加速度などの動作補正を行う場合に、補正量に応じて表示装置に段階的に表示して操作者に知らしめるものであって、ロボットがどの方向にどれくらいの速度で動作するかを、操作者が直感的に認識することはできない。また、表示装置をロボットの一面側(実施例では顔面を例示している)のみに配置していることから、操作者の位置によっては表示装置が死角になってしまうという課題を有している。
【0008】
また、特許文献2は、予め設定された動作方向を表示装置で確認しながら表示された方向に溶接トーチの動作量を指定するものであり、特許文献3は、命令表示部と方向表示装置とを有し、表示装置の表示内容と命令表示部の表示内容とが一致していることを確認してから動作命令を入力するものである。従って、特許文献2及び特許文献3ともに、操作者は動作途中でのロボットの動作方向や動作速度を認識することができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]本適用例に係るロボットは、前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、前記ロボットアームに配置され、且つ現在時刻の前記ロボットアームの位置・姿勢を基準に、前記制御部によって生成された前記ロボットアームの軌道に基づき、現在時刻から次時刻における前記ロボットアームの移動方向及び移動速度を表示する動作表示部と、が備えられていることを特徴とする。
なお、移動方向には回転方向を含み、移動速度には回転速度を含む。
【0011】
本適用例によれば、ロボットアームが現在時刻位置から次時刻位置に移動していく際に、移動方向、姿勢、及び移動速度を動作表示部に表示することから、教示者あるいは作業者は、動作表示部でロボットアームの動作を認識でき、危険を回避して安全に作業することができる。
【0012】
[適用例2]上記適用例に係るロボットにおいて、前記動作表示部は、点滅可能な複数の表示画素で構成されていること、が好ましい。
ここで、動作表示部の形状としては、例えば球形・半球形・紡錘形や円柱形等を採用可能であって、表示画素としては、例えばLED素子(Light Emitting Diode)、有機EL素子(Organic Electro−Luminescence)等を用いることができる。
【0013】
このように、動作表示部を複数の表示画素で構成すれば、様々な表示形態で動作状態を表示させることができ、教示者あるいは作業者(以降、両者を総称して操作者と表す)の最も認識しやすい表示方法で表示させることができる。
【0014】
[適用例3]上記適用例に係るロボットにおいて、前記動作表示部は、前記表示画素を前記ロボットアームの移動方向に沿うように順次点灯、または順次点滅させ、前記ロボットアームの移動速度の大小に合わせて点灯速度、または点滅速度を変化させること、が好ましい。
【0015】
このようにすれば、表示画素の点灯または点滅の移動方向によってロボットアームの移動方向を認識でき、点灯または点滅の速度によってロボットアームの移動速度を直感的に認識することができる。
【0016】
[適用例4]上記適用例に係るロボットにおいて、前記表示画素は、前記動作表示部を周回するように点灯または点滅させること、が好ましい。
【0017】
このようにすれば、ロボットに対してどの位置からもロボットアームの移動方向及び移動速度を認識することができる。例えば、ロボットアームがある操作者から遠ざかる方向に移動することを認識可能なとき、ロボットの反対側にいる他の操作者はロボットアームが自分に近づく方向に移動することを認識することができる。
【0018】
[適用例5]上記適用例に係るロボットにおいて、前記動作表示部は、前記ロボットアームの動作範囲が大きい位置に配置されていること、が好ましい。
【0019】
ロボットアームの動作範囲が大きい位置としては例えばアーム先端部である。このように動作範囲が大きい位置では動作速度も高いことから、アーム先端部が次にどのような動作を行うかを認識できれば、安全性をより高めることができる。
【0020】
[適用例6]上記適用例に係るロボットにおいて、前記ロボットアームに対する操作者がいる方向を検出するセンサーをさらに備え、前記センサーの検出結果に基づき、前記複数の表示画素のうち、検出された前記操作者がいる方向の前記表示画素を特定して表示すること、が好ましい。
【0021】
ロボットに対する操作者がいる方向をセンサーで検出し、表示画素のうちの検出した方向に位置する表示画素を特定し、これを表示起点または表示終点とすれば、ロボットアームの移動方向を操作者視点で表示することができる。
【0022】
[適用例7]本適用例に係るロボットの動作表示制御方法は、ロボット座標を基準に順変換処理によってロボットアームの軌道を生成し、前記ロボットアームを駆動することと、教示内容に基づき、現在時刻から次時刻における前記ロボットアームの軌道を生成することと、現在時刻から次時刻における前記ロボットアームの移動方向及び移動速度を、動作表示部の表示内容に変換することと、前記動作表示部で、移動方向及び移動速度を表示することと、を含むことを特徴とする。
【0023】
本適用例によれば、ロボットアームの現在時刻の姿勢・位置をロボット座標を基準に、教示内容に基づき次時刻における移動軌跡を生成し、ロボットアームの先端が現在時刻から次時刻に移動していく際に、移動方向、姿勢、及び移動速度を動作表示部に示すことから、作業者は、動作表示部によってロボットアームの動作を認識でき、安全に作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ロボットの全体構成を示す斜視図。
【図2】制御部の主たる構成を示す構成説明図。
【図3】動作表示部の第1実施例を示す構成説明図。
【図4】動作表示部の他の実施例を示す構成説明図であって、(a)は第2実施例、(b)は第3実施例。
【図5】ロボットの動作表示方法を表すフロー説明図。
【図6】ロボットハンドの回転方向及び回転速度を表示方法の1例を示す説明図。
【図7】アーム先端部がx方向に移動する場合の表示方法を示す説明図。
【図8】アーム先端部が移動しつつ、ロボットハンドが回転する場合の表示方法を示し、(a)は操作者から遠ざかる方向に移動する場合、(b)は操作者に近づく方向に移動する場合。
【図9】アーム先端部が傾く場合の表示方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
なお、以下の説明で参照する図は、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(ロボットの構成)
【0026】
図1は、ロボット200の全体構成を示す斜視図である。
ロボット200は、本体部210と、ロボットアーム220及びロボットアーム220の最先端部に連結されるロボットハンド230と、制御部240と、から構成されている。本体部210は、例えば床、壁、天井、移動可能な台車の上などに固定される。ロボットアーム220は、本体部210に対して可動に設けられており、本体部210にはロボットアーム220を駆動させるための動力を発生させるモーターが内蔵されている。
【0027】
図1に例示したロボットアーム220は、第1アーム221、第2アーム222、第3アーム223、第4アーム224及び第5アーム225から構成されている。第1アーム221は、回転屈折軸を介して、本体部210に回転可能または屈折可能に接続されている。第2アーム222は、回転屈折軸を介して、第1アーム221及び第3アーム223に接続されている。第3アーム223は、回転屈折軸を介して、第2アーム222及び第4アーム224に接続されている。第4アーム224は、回転屈折軸を介して、第3アーム223及び第5アーム225に接続されている。第5アーム225は、回転屈折軸を介して、第4アーム224に接続されている。ロボットアーム220は、制御部240によって、各アーム221〜225が各回転屈折軸を中心に複合的に回転または屈折し動作する。
【0028】
第5アーム225のうち第4アーム224が連結される側の反対方向の先端部には、ロボットハンド230が取り付けられており、作業対象物を把持することができる。第5アーム225のアーム先端部226には、アーム先端部226(つまり、第5アーム225の先端部をアーム先端部226と表す)の移動方向及び移動速度と、ロボットハンド230の回転方向及び回転速度を表示する動作表示部100が配置されている。
【0029】
動作表示部100は、現在時刻のアーム先端部226の姿勢と、制御部240によって生成された軌道に基づき、現在時刻から次時刻におけるアーム先端部226の移動方向及び移動速度の大小、ロボットハンド230の回転方向及び回転速度を表示する。動作表示部100の形態は図3、図4を参照し、動作表示方法は図6〜図9を参照して後述する。
なお、図1に示すロボット200は1例であって、アームの数やロボットハンドの形態はこれに限定されない。
【0030】
図2は、制御部240の主たる構成の1例を示す構成説明図である。図1も参照する。制御部240は、入力装置242から入力されるロボット200の動作教示内容や動作命令を取込むインターフェイス部243と、動作教示内容を一旦所定のフォーマットで記憶する記憶部244と、教示内容に基づきロボットアーム220の移動軌跡・姿勢・移動速度等を演算する演算部245と、演算結果に基づきロボットアーム220を駆動させる駆動制御部250と、動作表示部100にどのように表示すべきかを出力する表示制御部260を有する。また、教示内容やロボットアーム220の動作は、ディスプレイ241に表示することが可能である。
【0031】
演算部245は、現在時刻のアーム先端部226の姿勢・位置を順運動学を用いてロボット座標(図1に示すロボット座標系:x、y、z)で出力する順変換部246と、動作教示内容に従い現在時刻から次時刻におけるアーム先端部226の軌道を生成する軌道生成部248を有する。アーム先端部226の軌道は、現在時刻のロボット座標を基準とした軌道であって、例えば、座標系:u、v、wで表される。従って、これを逆運動学を用いてロボット座標系に変換する逆変換部247をさらに有している。
【0032】
駆動制御部250は、ロボットアーム220の各アーム間のジョイント(関節部)に設けられるモーターの駆動制御を行うモータードライバー251と、ロボットアーム220の動作を演算部245にフィードバックするフィードバック部252と、を有して構成されている。なお、駆動制御部250は、ロボットコントローラーと呼ばれることがある。
【0033】
続いて、動作表示部100の形態・構成について説明する。動作表示部100の形態は幾つか考えられるが、操作者のロボット200に対する位置が限定されにくく、直感的に認識しやすい形態例をあげ説明する。
図3は、動作表示部100の形態の第1実施例を示す構成説明図である。本実施例の動作表示部100は、アーム先端部226に配置されている。つまり、ロボットハンド230の動作に影響しないアーム先端部226とロボットハンド230との間に配置されている。
なお、動作表示部100は、ロボットアーム220を構成する部位、例えば、第1アーム221〜第5アーム225のうちのいずれか、または、各アームを連結するジョイント(図示せず)に配置してもよい。本実施例では、ロボットアーム220を構成する部位のなかでも動作範囲が大きく、動作速度が大きくなることが多いアーム先端部226に動作表示部100を配置した場合を例示し説明する。
【0034】
動作表示部100は、アーム先端部226の移動方向や移動速度・姿勢を表す略半球状の表示部110と、ロボットハンド230の回転方向、回転速度を表す円環状の表示部120とを有する。表示部110は、図示するように、動作表示部100を周回するように、また表示部120はロボットハンド230の回転方向に周回するように配置される点滅可能な複数の表示画素101の集合体で構成されている。表示画素101としては、LED素子、有機EL素子や液晶表示素子等の電気光学素子を用いることができる。
【0035】
表示画素101としてLED素子や有機EL素子を用いる場合、例えばR(赤)、G(緑)、B(青)各々の画素を1単位画素として形成してもよく、複数個の集合体を1単位画素としてもよい。また、有機EL素子や液晶表示素子の場合は、曲面表示が可能なフレキシブル表示基板を用いる。
【0036】
なお、動作表示部100の形状としては、図3に示すような略半球形状の変形例として紡錘形状であってもよく(図示は省略)、図4に示すような形状も適用できる。
図4は、動作表示部100の他の実施例を示す構成説明図であって、(a)は第2実施例、(b)は第3実施例である。
【0037】
図4(a)に示すように、第2実施例は、動作表示部100が円柱形状表示部130を有していることに特徴を有している。表示画素101は、第1実施例と同様にLED素子、有機EL素子や液晶表素子等の電気光学素子からなり、円柱形状を周回するように配置されている。ここで、アーム先端部226側に配置される表示部110は、アーム先端部226の移動方向や移動速度・姿勢を表し、ロボットハンド230側に配置された表示部120は、ロボットハンド230の回転方向及び回転速度を表す。
【0038】
また、図4(b)に示す第3実施例では、動作表示部100が略円錐体形状表示部140を有していることを特徴とする。表示画素101は、第1実施例と同様にLED素子、有機EL素子や液晶表素子等の電気光学素子からなり、略円錐体形状を周回するように配置されている。アーム先端部226側に配置される表示部110は、アーム先端部226の移動方向や移動速度・姿勢を表し、ロボットハンド230側に配置された表示部120は、ロボットハンド230の回転方向及び回転速度を表す。
(ロボットの動作表示制御方法)
【0039】
続いて、上述したロボット200の動作表示制御方法について説明する。
図5は、ロボット200の動作表示制御方法を表すフロー説明図である。なお、この動作フロー説明図は、ロボット200の途中動作を表している。まず、フィードバックされたロボットアーム220の各アーム間に配置されるジョイントのジョイント角度に対して順変換処理を行う(ステップ:S10)。そして、教示内容に基づき次時刻に移行する際のアーム先端部226の軌道を生成する(ステップ:S20)。この軌道生成には、ロボットハンド230の回転軌道も含まれる。
【0040】
続いて、生成された軌道に基づき、前回のロボット座標(上述した現在時刻のロボット座標に相当する)から次にアーム先端部226がどの方向に、どのくらいの速度で移動するかを算出し、動作表示部100にどのように表示するかを決定する(ステップ:S30)。そして、動作表示部100に移動方向・移動速度・回転方向・回転速度を決定された表示内容で表示する(ステップ:S40)。
【0041】
また、ステップ:S20において生成した軌道は、現在時刻におけるロボット座標を基準とした指令のジョイント角であることから逆変換処理によって次時刻におけるアーム先端部226のロボット座標に変換し(ステップ:S50)、フィードバックをかける(ステップ:S60)。このフィードバックのデータが、最新の現在時刻のアーム先端部226の位置・姿勢を表す。よって、ステップ:S10からステップ:S60までの工程を繰り返すことによって、最新の現在時刻の位置・姿勢から次時刻のアーム先端部226及びロボットハンド230の移動方向・移動速度・姿勢・回転方向・回転速度を動作表示部100に随時表示することが可能となる。
(ロボットの動作表示方法)
【0042】
なお、表示方法(表示形態)も様々な方法が考えられるので、そのことについて実施例をあげ説明する。以下の説明では、図3に示す動作表示部100を例示して説明する。
【0043】
図6は、ロボットハンド230の回転方向及び回転速度を表示する1例を示す説明図である。なお、図中、塗りつぶしてある表示画素101は、点灯表示の1例である。図6は、ロボットハンド230が矢印Aで示す方向に回転する場合(z軸回りに回転)における表示部120の表示方法を表している。表示部120の表示画素101は、矢印B方向に点灯または点滅が移動していく。視点方向から見て、操作者は、次の動作を点灯箇所の移動方向で回転方向を、移動していく点灯速度または点滅速度で回転速度を直感的に認識することができる。
【0044】
なお、回転方向、回転速度の表示方法としては、表示画素101の一つまたは、複数個を回転方向に順次点灯させる方法や、点滅の繰り返しで表示させる方法等がある。表示画素101の一つ一つが、R、G、Bの画素の集合とすれば、回転速度によって表示色を変えて表示させることが可能である。
【0045】
また、表示部120は、動作表示部100を周回するように各表示画素を形成しているので、図6の視点とは本体部210を挟んで逆方向に操作者がいる場合(視点が逆方向になる場合)であっても、操作者は、自身に対する回転方向と回転速度を直感的に認識できる。
【0046】
次に、アーム先端部226(ロボットハンド230も含む)の移動方向・移動速度を表す実施例を説明する。
図7は、アーム先端部226がx方向に移動する場合の表示方法を示す説明図である。つまり、アーム先端部226は矢印A方向に移動する場合である。なお、図中、塗りつぶしてある表示画素101は、点灯表示の1例である。このような場合には、表示部110において、移動の基点方向にある表示起点110aと、移動の終点方向にある表示終点110bの表示画素101を点灯し、表示起点110aと表示終点110bの間を表示画素の点灯または点滅を移動させる。そして、点灯・点滅の移動速度がアーム先端部226の移動速度を表す。
【0047】
ここで、図示するように点灯させる表示画素101のy軸方向の配列を表示起点110aと表示終点110bの間を点灯するようにしても、表示起点110aと表示終点110bの間の1列を点灯するようにしてもよい。例えば、表示起点110aをG(緑色)点灯とし、表示終点110bをR(赤色)点灯というように、点灯色を変えるようにすれば、移動方向と移動速度とをより明確に認識できる。
【0048】
図8は、アーム先端部226が移動しつつ、ロボットハンド230が回転する場合の表示方法を示し、(a)は操作者から遠ざかる方向に移動する場合、(b)は操作者に近づく方向に移動する場合を表している。つまり、図8(a)と図8(b)では、アーム先端部226のY軸方向の同じ移動に関して操作者の視点位置が異なる場合を表している。操作者から遠ざかる方向にアーム先端部226が移動する場合には、まず、表示起点110aを点灯させ、表示起点110aから他の表示画素101を放射状に広がるように点灯または点滅させる。
【0049】
このような表示方法では、図8(b)に示すように、図8(a)の視点とは逆方向の表示部110には、表示終点110bを点灯し、他の表示画素101は、表示終点110bに収束するように点灯または点滅させることで、操作者に向かってアーム先端部226が近づいて来ることを認識することができる。そして、点灯・点滅の移動速度がアーム先端部226の移動速度を表す。このような動作表示方法では、遠ざかる場合と、近づく場合とでは、表示画素101の点灯または点滅は表示部110内において連続しており、操作者の視点方向によって放射状に広がっていくか、あるいは収束していくかで判断することができる。
【0050】
図9は、アーム先端部226の姿勢を表示する場合の表示方法を示す説明図である。図9は、アーム先端部226が図示矢印A方向に傾いていく場合を表している。なお、図中、塗りつぶしてある表示画素101は、点灯表示の1例である。このような場合には、表示画素101の点灯をサークル状に回転させることで認識することが可能である。例えば、図示したように、表示画素101を点灯させながら矢印B方向に回転するように表示すば、アーム先端部226が傾き移動していることを認識できる。なお、本体部210に対して図示した視点とは逆方向に視点がある場合にも、表示画素101がアーム先端部226を周回するように配置されていることから、傾き方向を認識できる。そして、点灯・点滅の移動速度がアーム先端部226の移動速度を表す。
【0051】
なお、図6〜図9で説明したロボットの動作表示方法は、操作者がロボット200に対して、概ね一定方向で作業を行う場合を想定し、表示起点110a及び表示終点110bを予め設定しているが、操作者の作業位置は様々になることも考えられる。そこで、本体部210に対する操作者の方向をセンサーが検出したときに、複数の表示画素101のうち、検出された方向の表示画素を特定して表示することが可能である。
【0052】
図示は省略するが、センサーは、例えば6個の赤外線センサーを本体部210の周囲に配置すれば、操作者の位置を本体部210に対して6方向で検出可能となる。このことによって、操作者の位置に合わせて表示起点110a及び表示終点110bを設定することが可能となる。
【0053】
以上説明したロボット200及びこのロボットの動作表示制御方法によれば、アーム先端部226に動作表示部100を備え、動作表示部100は、現在時刻のアーム先端部226の位置・姿勢から、制御部240によって生成されたアーム先端部226の軌道を生成し、現在時刻から次時刻におけるアーム先端部226の移動方向・姿勢、及び移動速度と、ロボットハンド230の回転方向及び回転速度を動作表示部100に示すことができる。このことから、操作者は、動作表示部100によってアーム先端部226の動作を認識でき、危険の回避行動をとることができることから安全な作業を行うことができる。
【0054】
また、動作表示部100は、アーム先端部226を軸回りに周回するよう配置される点灯または点滅可能な複数の表示画素101の集合体で構成されている。このようにすれば、操作者は、本体部210に対してどのような位置にいても、動作表示部100を視認できるという効果がある。
【0055】
また、動作表示部100は、複数の表示画素101をアーム先端部226の移動方向に沿うように順次点灯、または順次点滅させ、アーム先端部226の移動速度の大小に合わせて点灯速度、または点滅速度を変化させる。従って、操作者は、表示画素101の点灯または点滅の移動方向によってアーム先端部226の移動方向を認識でき、点灯または点滅の移動速度によってアーム先端部226の移動速度の両方を直感的に認識することができる。
【0056】
また、表示画素101の点灯または点滅は、動作表示部100の回りに周回させていることから、アーム先端部226が、操作者から遠ざかる方向に移動することを認識可能なとき、本体部210に対して反対側にいる他の操作者はアーム先端部226が自分に近づく方向に移動していることを認識することができる。
【0057】
さらに、ロボット200は、本体部210の周囲に操作者の方向を検出する複数の赤外線センサーをさらに備えている。赤外線センサーによる操作者の位置を検出し、この検出結果に基づき、複数の表示画素101のうち、操作者を検出した方向の表示画素101を特定して表示することによって、アーム先端部226の移動方向を操作者視点で表示することができる。従って、操作者に向かう位置に表示起点110aを特定し、反対側に表示終点を表示することができる。
【0058】
また、ロボット200の動作表示制御方法は、アーム先端部226の現在時刻の姿勢・位置をロボット座標を基準に、教示内容に基づき次時刻における移動軌跡を生成し、アーム先端部226が現在時刻位置から次時刻位置に移動していく際に、移動方向・姿勢、及び移動速度を動作表示部100に示すことから、作業者は、動作表示部100によってアーム先端部の動作を直感的に認識でき、安全に作業することができる。
【符号の説明】
【0059】
100…動作表示部、101…表示画素、110,120…表示部、200…ロボット、220…ロボットアーム、226…アーム先端部、240…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームと、
前記ロボットアームの動作を制御する制御部と、
前記ロボットアームに配置され、且つ現在時刻の前記ロボットアームの位置・姿勢を基準に、前記制御部によって生成された前記ロボットアームの軌道に基づき、現在時刻から次時刻における前記ロボットアームの移動方向及び移動速度を表示する動作表示部と、
が備えられていることを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記動作表示部は、点滅可能な複数の表示画素で構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記動作表示部は、前記表示画素を前記ロボットアームの移動方向に沿うように順次点灯、または順次点滅させ、
前記ロボットアームの移動速度の大小に合わせて点灯速度、または点滅速度を変化させること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のロボット。
【請求項4】
前記表示画素は、前記動作表示部を周回するように点灯または点滅させること、
を特徴とする請求項3に記載のロボット。
【請求項5】
前記動作表示部は、前記ロボットアームの動作範囲が大きい位置に配置されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項6】
前記ロボットアームに対する操作者がいる方向を検出するセンサーをさらに備え、
前記センサーの検出結果に基づき、前記複数の表示画素のうち、検出された前記操作者がいる方向の前記表示画素を特定して表示すること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のロボット。
【請求項7】
ロボット座標を基準に順変換処理によってロボットアームの軌道を生成し、前記ロボットアームを駆動することと、
教示内容に基づき、現在時刻から次時刻における前記ロボットアームの先端部の軌道を生成することと、
現在時刻から次時刻における前記ロボットアームの移動方向及び移動速度を、動作表示部の表示内容に変換することと、
前記動作表示部で、移動方向及び移動速度を表示することと、
を含むことを特徴とするロボットの動作表示制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−86223(P2013−86223A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230409(P2011−230409)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】