説明

ロータリ耕耘機のカバー装置

【課題】ロータリ耕耘部跡として圃場に形成される窪みに耕起土を十分に落とし込む。
【解決手段】ロータリ耕耘部11の後方を覆うリアカバー15を備え、リアカバー15は、ロータリ耕耘部11の後方に位置するメインカバー18と、メインカバー18の後下部に装着されるサブカバー19とを備え、サブカバー19は、メインカバー18に取り付けられる被取付部29と、耕起土を均す整地部30とを備え、サブカバー19は、ロータリ耕耘部11が耕耘位置から上昇したときにロータリ耕耘部跡の窪みに耕起土を押し入れるべく、被取付部29に対して整地部30をメインカバー18の後下端から垂れ下げ可能にする枢支機構56を介して装着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ耕耘機のカバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ロータリ耕耘機は、トラクタの後部に三点リンク機構を介して昇降自在に取り付けられる機枠と、該機枠の下部に左右方向の軸心回りに回転自在に支持された爪軸に複数の耕耘爪を取り付けてなるロータリ耕耘部と、該ロータリ耕耘部を覆うロータリカバーとを備えている。
該ロータリカバーは、ロータリ耕耘部の上方に設けられる上部カバーと、ロータリ耕耘部の後方に設けられるリヤカバーとを備えている。
また、リヤカバーが、上部カバーの後端側に左右方向の軸心廻りに回動自在に支持された上部側のメインカバーと、該メインカバーの下端側に設けられた取付部に着脱自在に取り付けられるサブカバーとを備えているロータリカバーが知られている。
【0003】
例えば特許文献1のロータリ耕耘機において、サブカバーは、メインカバーに設けられた取付部に着脱自在に取り付けられる被取付部と、該被取付部にボルト等の締結具を介して締結された整地部とを備えている。
【特許文献1】特開2006−67972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロータリ耕耘機を用いた耕耘作業においては、ロータリ耕耘部を圃場に目的耕耘深さまで沈めた耕耘位置に設定して耕耘作業を行う一方、畔際の旋回時等、耕耘を行うことなくトラクタを移動させる必要がある場合には、その直前にトラクタを前進(旋回)移動させつつロータリ耕耘機を上昇させる。この結果、圃場には、ロータリ耕耘部跡として耕耘爪の回転半径程度の大きさを有する椀状の窪みが生じてしまう。
このとき、トラクタを前進させながらロータリ耕耘部を上昇させると、該上昇に伴ってメインカバー及びサブカバーが前記軸心廻りに前下方(接地面)に向けて相対的に揺動する。ところが、ロータリ耕耘機全体としてはやはり圃場から上昇するものであり、これにより、該上昇時のサブカバーの整地部は耕起土を上下方向中途部から上方に抜ける軌跡を通る。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のロータリ耕耘機においては、サブカバーの整地部が被取付部に固設されているため、前記軌跡よりも下方の耕起土を浚うことできない。このため、上記特許文献1のロータリ耕耘機においては、ロータリ耕耘部の上昇に伴ってサブカバーの整地部が前下方に向けて相対的に揺動しながら耕起土を窪みに向けて押動すると云えども、十分な量の耕起土を窪みに落し込むことができない問題があった。
そこで、本発明の目的は、ロータリ耕耘部跡に形成される窪みに耕起土を十分に落とし込むことができるロータリ作業機のカバー装置を提供するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、ロータリ耕耘部11の後方を覆うリアカバー15を備え、該リアカバー15は、ロータリ耕耘部11の後方に位置するメインカバー18と、該メインカバー18の後下部に装着されるサブカバー19とを備え、該サブカバー19は、メインカバー18に取り付けられる被取付部29と、該被取付部29に装着されていて耕起土mを均す整地部30とを備えているロータリ耕耘機のカバー装置において、
前記サブカバー19は、前記ロータリ耕耘部11が耕耘位置から上昇したときにロータリ耕耘部跡の窪みPに前記耕起土mを押し入れるべく、前記被取付部29に対して整地部30を前記メインカバー18の後下端から垂れ下げ可能にする枢支機構56を介して装着していることを特徴としている。
【0007】
これによれば、ロータリ耕耘部11を上昇させると、サブカバー19の被取付部29も上昇し、これに伴って整地部30は相対的に回転して垂れ下がる。これにより、該整地部30は耕起土mをより底部から浚うことができ、これによって十分な量の耕起土mが窪みPに落とし入れられることとなる。
また、前記枢支機構56は、前記整地部30を前下向き傾斜すべくその重心よりも後方位置で枢支しており、前記整地部30は、ロータリ耕耘部11を耕耘位置とした状態で耕起土mを均す整地面53と、該整地面53の前端に位置してロータリ耕耘部11を耕耘位置から上昇させたときに垂れ下がった状態で前記耕起土mを押動する押動面54とを備えていることが好ましい。
【0008】
これによれば、ロータリ耕耘部11の上昇に伴って整地部30の押動面54が垂れ下がることとなり、該押動面54によって耕起土mが窪みPに落とし込まれ、より確実に前記耕起土mを窪みPに落とし入れることができる。
また、前記枢支機構56は、前記整地部30を後下向き傾斜すべくその重心よりも前方位置で枢支していることが好ましい。
これによれば、ロータリ耕耘部11の上昇に伴って整地部30の後端部が垂れ下がることとなり、該後端部によって前記耕起土mが窪みPに落とし込まれ、より確実に前記耕起土mを窪みPに落とし入れることができる。
【0009】
さらに、前記枢支機構56は、前記整地部30を垂れ下げ方向に付勢する付勢手段60を備えていることが好ましい。
これによれば、整地部30は、圃場にて付勢手段により該圃場に押し付けられる方向に付勢されることとなるため、ロータリ耕耘部11の上昇に伴う整地部30の姿勢変更がスムーズなものとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロータリ耕耘部跡に形成される窪みに耕起土を十分に落とし込むことができる。したがって、ロータリ耕耘部の上昇により圃場に窪みが形成されるにも拘わらず、該ロータリ耕耘部の上昇させる過程で該窪みを埋めることができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をロータリ耕耘機1に実施した形態につき、図面を参照して説明する。
図1〜図5は、本発明に係るカバー装置を備えたロータリ耕耘機1の第1の実施の形態を示している。
図3に示す如く、本実施の形態のロータリ耕耘機1はトラクタ(図示省略)の後部に三点リンク機構1a等を介して昇降自在に装着される。
該ロータリ耕耘機1は、中央のギヤケース2から左右に一対のサポートアーム3を突設し、一方のサポートアーム3の左右方向外端側に伝動ケース4の上部を固定すると共に、他方のサポートアーム3の左右方向外端側にサイドフレームの上部を固定して門型に構成された機枠5を有する。
【0012】
該機枠5のギヤケース2には、トップマスト6が上方突出状に固定されている。該トップマスト6は、前後二股状に形成されており、該トップマスト6の前方突出部6aの上部には、三点リンク機構1aのトップリンク1bの後端側又は三点リンク機構1aの後端側に連結される連結枠1dの上部に取り付けられる上部取付部7が設けられている。
また、各サポートアーム3には、三点リンク機構1aのロアリンク1cの後端側又は三点リンク機構1aの後端側に連結される連結枠1dの下部に取り付けられる取付ブラケット8が設けられている。
【0013】
また、機枠5の下部には、伝動ケース4とサイドフレームとの下部間に左右方向の軸心廻りに回動自在に支持された爪軸9と、該爪軸9に取り付けられた複数の耕耘爪10とを有するロータリ耕耘部11が設けられている。
なお、機枠5のギヤケース2には、トラクタのPTO軸からドライブシャフトを介して動力が伝達されるPIC軸12が設けられ、このPIC軸12に伝達された動力は、ギヤケース2内の動力伝達機構、サポートアーム3内の伝動軸、伝動ケース4内の動力伝達機構を経て爪軸9に伝達されて、該爪軸9が、例えば、矢示A方向に回転駆動されるように構成されている。
【0014】
また、ロータリ耕耘機1には、ロータリ耕耘部11を覆うロータリカバー(カバー装置)13が設けられており、該ロータリカバー13は、ロータリ耕耘部11の上方を覆う上部カバー14と、ロータリ耕耘部11の後方を覆うリヤカバー15と、ロータリ耕耘部11の後部の左右両側を覆うサイドカバー(図示省略)とを備えている。
上部カバー14は、その左右方向の端部が、伝動ケース4とサイドフレームとに固定された側板25に取付固定されている。
リヤカバー15は、上端側が上部カバー14の後端側(機枠5側)に、左右方向の軸心を有する支軸17の軸心回りに回動自在に枢支されていて、上下揺動自在に支持された上部側のメインカバー18と、該メインカバー18の下端側に着脱自在に取り付けられるサブカバー19とを有して構成されている。
【0015】
また、該ロータリ耕耘機1においては、リアカバー15の下端側を下方側(接地方向)に付勢する弾下装置23が機枠5とリアカバー15に亘って且つ左右一対設けられている。
図1及び図2に示す如く、メインカバー18の下端側には、サブカバー19を取り外したときに圃場Fに接地する整地部18aが設けられている。また、該メインカバー18の背面下部には、図5に示す如く、板材から形成された左右一対の取付部24が設けられ、これら左右の取付部24は、図1及び図2に示す如く、メインカバー18の背面に上部から下部に亘って設けられた補強部材26に溶接等によって固定された底壁24aと、該底壁24aの左右両側から後方側に延出された左右の側壁24bとを有する。
【0016】
左右の側壁24bの上部側には、前後一対の係合部27が設けられ、左右の側壁24bの下部には、前後一対の位置決め部28が設けられている。
前後一対の係合部27は、それぞれ上方側に向けて開放状とされた溝から形成され、底部側は側面視円弧状に形成されている。
前後一対の位置決め部28は、それぞれ左右方向に軸心を有する丸棒材によって構成され、左右の側壁24b間に亘って設けられている。
サブカバー19は、メインカバー18の左右の取付部24に着脱自在に取り付けられる左右一対の被取付部29と、該左右一対の被取付部29に装着されていて後述の耕起土mを均す整地部30とを有している。
【0017】
サブカバー19の被取付部29は、整地部30を支持する支持ブラケット35と、該支持ブラケット35をメインカバー19に連結するためのロック部材36とを有する。
該支持ブラケット35は、板材から形成されていて、左右一対の側壁35aと、該左右一対の側壁35aの後部側上縁どうしを連結する上壁35bと、左右側壁35aの後部側下部間に亘って設けられた下壁35cとを有する。
また、支持ブラケット35の後部には、サブカバー19を持つために把持する把持部38が設けられている。図5に示す如く、被取付部29は左右一対あるので、把持部38も左右一対設けられることとなり、これによってサブカバー19を両手で持つことができる。
【0018】
また、図1及び図2に示す如く、支持ブラケット35の左右側壁35aの前部側上部にはメインカバー18の取付部24の係合部27に上方側から係脱自在に係合する被係合部39が設けられている。また、支持ブラケット35の左右側壁35aの前部側下部には、メインカバー18の取付部24の位置決め部28に後方側から係合する被位置決め部40が設けられている。
被位置決め部40は、前方側に向けて開放状の溝から形成され、被係合部39を係合部27に受持させた状態で、サブカバー19が被係合部39回りに前回りに回動することにより、後方側から位置決め部28に係合(嵌合)する。
【0019】
このとき、被位置決め部40の下側部分が位置決め部28に係合してサブカバー19の上方側への移動が規制され、被係合部39が係合部27に係合し且つ被位置決め部40が位置決め部28に係合することによりサブカバー19が位置決めされる。
本実施の形態では、係合部27及び位置決め部28は、前後2カ所に設けられていて、サブカバー19は2位置に位置決めできるようになっている。
また、前側の係合部27に被係合部39を係合させると共に被位置決め部40を前側の位置決め部28に係合するときに、支持ブラケット35の左右側壁35aが後側の位置決め部28に干渉するのを防止するために、支持ブラケット35の左右側壁35aには、後側の位置決め部28に嵌合する係合溝42が形成されている。
【0020】
本実施の形態のリヤカバー15にあっては、通常の深さのロータリ耕(標準耕耘作業)よりも深い耕耘(深耕し)を行う場合はサブカバー19を外してメインカバー18のみで使用し、標準耕耘作業を行う場合は被係合部39を前側の係合部27に係合した状態でサブカバー19を位置決めして使用し、標準耕耘作業よりも浅い耕耘(浅耕し)又は代掻き作業を行う場合は被係合部39を後側の係合部27に係合した状態でサブカバー19を位置決めして使用する。
前記ロック部材36は、サブカバー19を位置決めした状態で、被位置決め部40とにより位置決め部28を挟持することによりメインカバー18の取付部24からサブカバー19が外れないようにロックするものであり、該ロック部材36は、支持ブラケット35の左右側壁35aに亘って設けられた左右方向の支軸43を介して該支軸43の軸心廻りに回動自在とされた枢支部44と、該枢支部44に接続部45を介して接続されたレバー部46と、枢支部44から前方側に延設されて被位置決め部40とで位置決め部28を挟持する(掴む)フック状のロック部47とを有している。
【0021】
図2に示す如く、ロック部材36は、支軸43回りに回動することにより、ロック部47と被位置決め部40とで位置決め部28を挟持するロック位置(図2の実線位置)と、該ロック状態を解除すべくロック部47が位置決め部28から離反した位置(図2の2点鎖線位置)に位置する非ロック位置とに位置変更自在とされている。
また、枢支部44には捩りコイルバネ48が外嵌され、該捩りコイルバネ48によってロック部材36はロック位置に向けて回動する方向に付勢されている。
レバー部46は、支持ブラケット35の上壁35bと対向する位置に配備されている。ロック部材36がロック位置にある場合において、レバー部46を支持ブラケット35の把持部38と一緒に握ることにより、該レバー部46が前記上壁35bに近接してロック部材36が非ロック位置へと回動する。
【0022】
支持ブラケット35の下壁35cの下部に配備されている整地部30は、圃場Fに接地する整地部材50と、該整地部材50を支持すると共に支持ブラケット35の下壁35cに支持される支持部材51とを備えている。
整地部材50は、図1及び図5に示す如くロータリ耕耘部11の幅と同程度の幅を有する金属製の薄板を屈曲形成して構成されており、前後方向に凸円弧状に形成された整地面53と、該整地面53の前端部53fから立ち上がって形成される押動面54と、整地面53の後部53rを下側から上側に向けて弧状に折り返して形成されるループ面55とを備えている。これにより、押動面54の背部とループ面55との間が上方開放状に形成されることとなっている。
【0023】
また、支持部材51は、短冊状に形成されて支持ブラケット35の下壁35cに対向する位置に配備されており、前端部が整地部材50の押動面54の裏側に連結されると共に、後端部がループ面55の前部に連結されている。
また、支持部材51は、枢支機構56を介して支持ブラケット35に支持されている。該枢支機構56は、ロータリ耕耘部11が耕耘位置から上昇したときに被取付部29に対して整地部30をメインカバー18の後下端よりも垂れ下げるものであって、支持ブラケット35の下壁35cで下方に突設された駒部57と、整地部30の支持部材51に設けられた円筒部58と、これら駒部57及び円筒部58を貫通する軸体59とを備えている。
【0024】
また、駒部57は支持ブラケット35の下壁35cの後部に配備されると共に、円筒部58は支持部材51の後端部側となる位置に配備されている。これにより、枢支機構56は、整地部30をその重心を通過して前後に二分する直線Gよりも後方となる位置で枢支している。或いは、枢支機構56の軸体59の軸心よりも前側に整地部30の重心が位置しているとも言える。このため、ロータリ耕耘部11の上昇に伴ってメインカバー18が持ち上がると、整地部30は、図1中に2点鎖線で示す如く軸体59の軸心を回転中心として、自重により押動面54を下降させる共にループ面55を上昇させて揺動する。
【0025】
ここで、支持ブラケット35の後端部は、ループ面55と対向する位置まで後方に突出しており、揺動するループ面55に当接可能とされている。これにより、整地部30は、自重により揺動をするとループ面55の上端部が支持ブラケット35の後端部に当接することとなり、これによってこれ以上の揺動を規制される。
また、整地部30がこの様にループ面55の上端部を支持ブラケット35の後端部に当接した姿勢に設定されると、該整地部30の押動面54はメインカバー18の整地部18aに対向していた位置から該整地部18aの後下方まで揺動し、図1中に1点鎖線で示す水平線Hに対し鉛直状又は略鉛直状に立ち上がる。
【0026】
また、枢支機構56の円筒部58には、整地部30の前部を支持ブラケット35から離間する方向に付勢するバネ等からなる付勢手段60が配備されている。
本実施の形態は以上の構成からなるものであって、続いて、本実施の形態のロータリ耕耘機1を用いた圃場の耕耘方法について、説明する。
図3に示す如く、トラクタを前進させると共にロータリ耕耘機1を作動させることにより圃場Fを掘削していくと、掘削された土砂(泥土)は、耕耘爪10によって耕耘された後、耕起土mとなってロータリ耕耘部11の後方に堆積することとなるが、該耕起土mは、トラクタの前進によりロータリ耕耘部11に続いて牽引されるサブカバー19の整地部30により崩されて均される。これにより、圃場Fの耕耘と整地が効率よく進められることとなるのである。
【0027】
このとき、整地部30は、トラクタの前進による牽引力と圃場Fや耕起土mからの接地圧(均平圧)とを受ける。これらの力のバランスにより、整地部30は、整地部材50の押動面54をメインカバー18の整地部18aに対向させて且つ整地面53の後部53rを前部よりも下側とした姿勢に維持される。これによって、整地部材50の整地面53の後部53r及びループ面55が圃場Fに接することとなり、これら整地面53の後部53rとループ面55とによって耕起土mが均されていく。また、上記接地圧は圃場Fの凹凸によって変動するため、整地部30の整地部材50には大小様々な接地圧が作用することとなるが、かかる接地圧は枢支機構56の付勢手段60がダンパとして機能することによりによって適宜吸収される。このため、整地部30が圃場Fの凹凸に過敏に反応してがたつく虞はない。
【0028】
この状態で圃場Fの耕耘を進め、畔際までトラクタを前進させると、該トラクタを180°旋回させながらロータリ耕耘部11を上昇させて圃場Fから引き上げる。このとき、図4に示す如く、該ロータリ耕耘部11の上昇に伴って圃場Fにはロータリ耕耘部跡の窪みPが形成される。
ここで、メインカバー18及びサブカバー19は、弾下装置23により接地方向に向けて揺動するものの、支軸17はやはりロータリ耕耘部11と共に上昇する。この様なカバー18、19の動きに追従することにより、枢支機構56の軸体59の軸心は、耕起土mの底部から上方に抜ける図4中の軌跡tを通過することとなる。これに対し、サブカバー19の整地部30は、枢支機構56を介して支持ブラケット35に枢支されているため、前記ロータリ耕耘部11の上昇に伴って自重により相対的に揺動する。そして、ループ面55の上端部が支持ブラケット35の後端部に当接する位置まで揺動することにより、サブカバーの整地部30は、押動面54をメインカバー18の整地部18aの後下方に突出させて耕起土mに対向させた姿勢となる。
【0029】
そして、この状態でトラクタを前進(旋回)させることにより、整地部30の押動面54が窪みPの後方に堆積した耕起土mを該窪みPに向けて押動するのである。該押動面は、前記軌跡tよりも耕起土mの底部側を通過するため、これによって、十分な量の耕起土mが窪みPに落とし込まれ、耕起土mによって窪みが埋められることとなる。
このとき、押動面54は、耕起土mを押動することによる反力を受けることとなるが、該押動面54の背部に支持部材51を介して枢支機構56の軸体59が位置しているため、整地部30には、前記反力が軸体59の軸心に向けて主に作用することとなる。このため、該整地部30には、軸体59を回転中心とした前記反力による回転モーメントが僅かに作用するに過ぎず、これによって耕起土mによる反力が作用するにも拘わらず整地部30は安定した姿勢に保たれる。この結果、トラクタの旋回中にロータリ耕耘機1を上昇させるにも拘わらず、整地部30の姿勢が大きくぶれることはなく、耕起土mは確実に窪みPに落とし込まれる。
【0030】
本実施の形態によれば、耕耘状態のロータリ耕耘部11を上昇させることによって圃場Fに窪みPが生じることとなっても、該窪みPにはサブカバー19の整地部30によって耕起土mが十分に落とし込まれる。したがって、トラクタを旋回させるために生じる畔際付近窪みPはトラクタを旋回させる過程で埋められこととなるのである。
図6及び図7は、本発明に係るカバー装置を備えたロータリ耕耘機1の第2の実施の形態を示しており、該ロータリ耕耘機1のロータリカバー(カバー装置)13において、サブカバー19の枢支機構56は、図6に示す如く整地部30の重心を通過して前後に二分する直線Gよりも前方となる位置で該整地部30を枢支している。即ち、枢支機構56の駒部57は支持ブラケット35の下壁35cの前部に配備されると共に、円筒部58は整地部30の支持部材51の前端部に配備されている。これにより、軸体59の軸心よりも後側に整地部30の重心が位置することとなる。
【0031】
また、該枢支機構56の円筒部58には、整地部30を垂れ下げ方向に付勢するバネ60からなる付勢手段60が配備されている。
また、整地部材50は、整地面53の前端部53fが面取り状に屈曲形成されると共に、該前端部から立ち上がって形成される立上り面61を備えている。また、該立上り面61の上端部からは、前記メインカバー18の整地部18aの湾曲に沿って湾曲する湾曲面62が突出している。
第2の実施の形態のロータリ耕耘機1を用いて標準耕耘作業を行うと、整地部30は、付勢手段60の付勢力に抗した接地圧を圃場Fから受けながら支持部材51の上端部を支持ブラケット35の下壁35cに当接させた状態で牽引される。このため、整地部30は、整地部材50の整地面53の後部53r及びループ面55を接地させた姿勢となり、これら整地面53の後部53rとループ面55とによって圃場Fが整地されていく。
【0032】
この状態からトラクタを旋回させながらロータリ耕耘部11を引き上げると、自重及び枢支機構56の付勢手段60の付勢力により整地部30は相対的に揺動し、これによって整地部30は、図7に示す如く整地部材50の整地面53の後部53r及びループ面55をメインカバー18の整地部18aや枢支機構56の軸体59よりも垂れ下げた姿勢となる。このとき、整地部材50の立上り面61がメインカバー18の整地部18aの後端部に当接することとなり、これによって、整地部材50は前記垂れ下げた姿勢に維持される。
【0033】
サブカバー19の整地部30のかかる動作の最中にもトラクタは旋回しており、これによって該整地部30の整地面53の後部53r及びループ面55が窪みPの後方に堆積した耕起土mを窪みPに向けて押動する。このとき、これら整地面53の後部53r及びループ面55は、枢支機構56の軸体59の軸心が通過する軌跡tよりも耕起土mの底部側を通過するため、十分な量の耕起土mが窪みPに落とし込まれ、これによって窪みPは埋められる。
以上、本発明の実施の形態を詳述したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記第1の実施の形態の付勢手段を配備しない構成とした場合にも、本発明と同様の効果が得られる。
【0034】
また、整地部30の左右両側に、該整地部30から左右方向外方に突出可能とされた延長整地部を配備する構成を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態の要部を示す断面側面図である。
【図2】メインカバーからサブカバーを取り外した状態を示す断面側面図である。
【図3】耕耘状態のロータリ耕耘機を示す左側面図である。
【図4】ロータリ耕耘機を耕耘位置から上昇させた状態を示す左側面図である。
【図5】サブカバーの平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態の要部を示す断面側面図である。
【図7】該サブカバーにより耕起土を押動する状態を示す断面側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ロータリ耕耘機
18 メインカバー
19 サブカバー
24 取付部
29 被取付部
30 整地部
35 支持ブラケット
50 整地部材
51 支持部材
53 整地面
54 押動面
55 ループ面
56 枢支機構
57 駒部
59 軸体
60 付勢手段
F 圃場
m 耕起土
P 窪み


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリ耕耘部(11)の後方を覆うリアカバー(15)を備え、該リアカバー(15)は、ロータリ耕耘部(11)の後方に位置するメインカバー(18)と、該メインカバー(18)の後下部に装着されるサブカバー(19)とを備え、該サブカバー(19)は、メインカバー(18)に取り付けられる被取付部(29)と、該被取付部(29)に装着されていて耕起土(m)を均す整地部(30)とを備えているロータリ耕耘機のカバー装置において、
前記サブカバー(19)は、前記ロータリ耕耘部(11)が耕耘位置から上昇したときにロータリ耕耘部跡の窪み(P)に前記耕起土(m)を押し入れるべく、前記被取付部(29)に対して整地部(30)を前記メインカバー(18)の後下端から垂れ下げ可能にする枢支機構(56)を介して装着していることを特徴とするロータリ耕耘機のカバー装置。
【請求項2】
前記枢支機構(56)は、前記整地部(30)を前下向き傾斜すべくその重心よりも後方位置で枢支しており、前記整地部(30)は、ロータリ耕耘部(11)を耕耘位置とした状態で耕起土(m)を均す整地面(53)と、該整地面(53)の前端に位置してロータリ耕耘部(11)を耕耘位置から上昇させたときに垂れ下がった状態で前記耕起土(m)を押動する押動面(54)とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のロータリ耕耘機のカバー装置。
【請求項3】
前記枢支機構(56)は、前記整地部(30)を後下向き傾斜すべくその重心よりも前方位置で枢支していることを特徴とする請求項1に記載のロータリ耕耘機のカバー装置。
【請求項4】
前記枢支機構(56)は、前記整地部(30)を垂れ下げ方向に付勢する付勢手段(60)を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のロータリ耕耘機のカバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−319144(P2007−319144A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156530(P2006−156530)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】