説明

ワーク搬送装置及び電子部品搬送装置

【課題】搬送テーブルの貫通孔に収納されてワークが搬送されるワーク搬送装置において、圧縮気体を用いて貫通孔からワークを速やかにかつ確実に取り出すことができるともに、圧縮空気の残圧による所望でないワークの飛び出し等が生じ難く、搬送効率を高め得るワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送ステージ3の搬送面3aに対向するように搬送テーブル4が配置されており、搬送テーブル4の貫通孔4bにワークとしての電子部品6が収納されて、搬送テーブル4が回転されて電子部品6が搬送される電子部品搬送装置において、電子部品が取り出される位置において、搬送面3aに開いた噴出孔11が設けられており、該噴出孔11の搬送テーブル4側の開口部の総面積が、電子部品6の搬送ステージ3の搬送面3a側の面の面積よりも大きくされている、ワーク搬送装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ型電子部品などの多数のワークを搬送するためのワーク搬送装置に関し、より詳細には、ワークが収納される収納部としての貫通孔が設けられている搬送テーブルを搬送ステージ上で移動させることによりワークを搬送する形式のワーク搬送装置及び電子部品搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チップ型電子部品の製造に際しては、チップ型電子部品を作製し、特性を検査した後、特性に応じて良品や不良品の選別が行われている。また、特性に応じて、得られたチップ型電子部品を複数のグループに分別することも行われている。これらの作業を自動化し、生産性を高めるために、様々な製造装置が提案されている。
【0003】
例えば下記の特許文献1には、この種の電子部品搬送装置の一例が開示されている。この電子部品搬送装置では、電子部品を搬送するために、テーブルベースの搬送面に接触するように、円板状の搬送テーブルが配置されている。円板状の搬送テーブルは、その中心軸まわりに回転し得るように、回転駆動源に連結されている。そして、ホッパーから順次供給される1個の電子部品が収納される貫通孔が搬送テーブルの周方向に沿って複数形成されている。この各貫通孔内に電子部品がホッパーから供給される。搬送テーブルがテーブルベースの搬送面上をスライドしつつ回転することにより、電子部品が搬送テーブルの周方向に搬送される。
【0004】
ここでは、電子部品を搬送テーブルの周方向に搬送する間に、電子部品の特性の測定が行われている。そして、測定結果に基づき、良品・不良品の選別をしたり、特性値に応じて分別するために、特性が測定された電子部品が、上記貫通孔から適宜の電子部品取り出し手段を用いて取り出される。
【0005】
なお、上記搬送に際し電子部品の姿勢を保持するために、上記搬送面には、上記貫通孔に連なる吸引用凹部が形成されており、該吸引用凹部が真空吸引源などに接続されている。
【0006】
他方、特性の測定を終えた電子部品の取り出しに際しては、図10に示す構造が用いられている。すなわち、図10に示すように、電子部品搬送装置101では、上記搬送テーブル102が、貫通孔102aを有する。貫通孔102aに、電子部品104が収納されている。なお、搬送テーブル102の一方面102bは、テーブルベース103の搬送面103aと当接されている。
【0007】
そして、テーブルベース103の搬送面103aにおいては、電子部品104の取り出し位置に、噴出孔103bが開口している。噴出孔103bは、搬送面103aから搬送面103aとは反対側の面103c側に向かって延ばされており、かつ圧縮空気供給ホース105に接続されている。圧縮空気供給ホース105は、コンプレッサーやボンベ等の圧縮空気供給源に接続されている。
【0008】
測定を終えた電子部品104が、搬送テーブル102の回転により電子部品取り出し位置にきたとき、貫通孔102aの一部に、貫通孔102aの開口部よりも小さな径の上記噴出孔103bが臨むことになる。そして、噴出孔103bから圧縮空気が噴射される。圧縮空気の圧力により、電子部品104が貫通孔102a外方に移動され、電子部品104が取り出される。
【0009】
この方法によれば、機械的な衝撃を与えることなく電子部品104を取り出し得るので、電子部品104の損傷が生じ難い。
【特許文献1】特開2004−226101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、搬送テーブル102は、前述したように、テーブルベース103とは独立に、テーブルベース103の搬送面103a上をスライドしつつ移動する。従って、上記圧縮空気により電子部品104が取り出された後、搬送テーブル102がさらに回転される。その結果、上記噴出孔103bは、搬送テーブル102の一方面102bにより再度閉じられることになる。
【0011】
この場合、圧縮空気が完全に貫通孔102a内に排出されて電子部品104が取り出され、しかる後、圧縮空気の供給を停止した後に、噴出孔103bが搬送テーブル102の一方面102bで閉じられた場合には、問題は生じない。
【0012】
しかしながら、搬送速度を高めた場合には、圧縮空気が噴出孔103b内に残存した状態のまま、噴出孔103bの開口部が搬送テーブル102により閉じられることがあった。その場合には、噴出孔103b内に、圧縮空気が残存し、残圧が生じる。
【0013】
従って、搬送テーブル102がさらに回転し、上記電子部品取り出し位置では取り出してはいけない電子部品が収納されている次の貫通孔が上記噴出孔103b上に移動してくると、本来取り出すべきではない電子部品が残圧により取り出されることがあった。よって、従来の電子部品搬送装置では、電子部品104を取り出した後、搬送テーブル102を直ちに回転移動させず空気を完全に排出させるために、搬送テーブル102を所定時間待機させねばならなかった。すなわち、上記残圧を開放するために、待機時間が必要であり、電子部品搬送装置を高速稼働することができなかった。
【0014】
特に、電子部品のサイズが小さくなるにつれて、上記噴出孔103bの大きさも小さくする必要があった。そのため、噴出孔103bの大きさが小さくなると、空気噴出量が十分ではないため、より一層、残圧を除去するための待機時間を長くしなければならなかった。また、待機時間を長くしたとしても、残圧が十分に開放され難くなるという問題もあった。
【0015】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、ワークが収納されている貫通孔に噴出孔から高圧の気体を噴出させてワークを貫通孔から取り出す構造を備えたワーク搬送装置であって、上記残圧による問題を解消することができ、従って、ワークの予期しない飛び出しを防止でき、かつワークの取り出し工程を含めた搬送工程の高速化を図ることが可能とされている、ワーク搬送装置及び電子部品搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係るワーク搬送装置は、ワークが搬送される搬送面を有する搬送ステージと、前記搬送ステージの前記搬送面に対向するように配置された第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを有し、第1,第2の面を貫通する貫通孔が備えられている搬送テーブルと、前記搬送テーブルの第1の面を前記搬送ステージの搬送面に対向させた状態で前記搬送テーブルを搬送面に対してスライドさせつつ移動させることを可能とするように、前記搬送テーブル及び/または前記搬送ステージに連結された駆動装置とを備え、前記搬送テーブルの前記貫通孔にワークを挿入した状態で、前記搬送テーブルが前記搬送面に対して移動されることにより前記ワークが搬送されるワーク搬送装置であって、前記搬送ステージの搬送面に、前記貫通孔に挿入された前記ワークを取り出すために、前記貫通孔と重なり合い得るようにワーク取り出し位置に設けられており、圧縮気体を噴出させるための噴出孔が設けられており、前記噴出孔に連結された圧縮気体供給装置とをさらに備え、前記噴出孔の前記搬送テーブル側の開口部の総面積が、前記ワークの前記搬送ステージの前記搬送面側に対向している端面の面積以上の大きさとされていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るワーク搬送装置では、好ましくは、前記搬送ステージの搬送面に、前記貫通孔に接続されている吸引用凹部が形成されており、前記搬送テーブルの第1の面において前記貫通孔に連ねられており、かつ前記吸引用凹部に連通されている吸引溝が形成されており、前記吸引用凹部に連結された吸引装置がさらに備えられている。この場合には、吸引装置からの吸引により、ワークを搬送するに際し、ワークを適切な姿勢に確実に保持することができる。
【0018】
本発明に係るワーク搬送装置では、好ましくは、前記噴出孔が、噴出孔本体部と、噴出孔本体部と噴出孔の開口部外面とを結んでおり、噴出孔本体部よりも細いノズル部とを有し、該ノズル部における圧縮気体流路長が、前記貫通孔の前記搬送面側の開口部の面積の平方根の60%以下とされている。この場合には、圧縮気体噴射時の流体抵抗を低くすることができ、圧縮気体の流量を多くすることができる。それによって、ワークを貫通孔からより確実に取り出すことができる。また、圧縮気体の吹き出しから吹き出し停止までの動作時間を短縮することができ、ワーク搬送装置における処理速度を高めることが可能となる。
【0019】
本発明に係るワーク搬送装置では、好ましくは、前記噴出孔の開口部が、前記ワーク搬送方向が長さ方向とされている長孔状の形状とされている。この場合には、ワークを収納するための貫通孔の位置が搬送方向において多少ずれたとしても、残圧を確実に開放することができる。すなわち、搬送方向における上記貫通孔の位置決め精度を低くしたとしても、残圧を開放することができる。
【0020】
前記噴出孔において、ノズル部が複数設けられている場合には、複数のノズル部間の部分にワークが当接載置されるので、ワークがノズル部の開口縁に引っかかり難い。
【0021】
複数のノズル部が、第1,第2のノズル部であり、ワークの一部が第1,第2のノズル部間の部分に位置するように第1,第2のノズル部が配置されている場合には、ワークが、第1,第2のノズル部間の部分上を移動することになるため、第1,第2のノズル部の開口縁にワークが引っかかり難い。
【0022】
本発明においては、好ましくは、上記搬送テーブルは中心軸を有する円板状の形状を有し、該搬送テーブルが、前記駆動装置により中心軸周りに回転駆動するように構成されている。この場合には、貫通孔に挿入されたワークが、搬送テーブルの回転に伴って、搬送テーブルの周方向に搬送されることになる。従って、円板状の搬送テーブル内において、周方向に搬送路が設けられることになるため、ワーク搬送装置の小型化及び設置スペースの低減することが可能となる。
【0023】
本発明のワーク搬送装置で搬送されるワークは、特に限定されないが、好ましくは、ワークとして電子部品が搬送される。特に、外形寸法が小さい、チップ型電子部品などの小型の電子部品を搬送するのに本発明のワーク搬送装置は好適に用いられる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るワーク搬送装置では、搬送ステージの搬送面に対向するように搬送テーブルが配置されており、搬送テーブルに設けられた貫通孔にワークが挿入された状態で、搬送テーブルが、搬送面に対して移動されることによりワークが搬送される。
【0025】
ワーク取り出し位置においては、貫通孔と重なり合うように搬送ステージに噴出孔が設けられている。従って、噴出孔に連結された圧縮気体供給装置から圧縮気体を噴出させることにより、ワーク取り出し位置において、圧縮空気の圧力により、ワークを貫通孔から速やかに取り出すことができる。しかも、噴出孔の搬送テーブル側の開口部の総面積が、ワークの搬送ステージの搬送面に対向している面の面積以上の大きさとされているので、圧縮空気が噴出孔から高速で、かつ速やかに噴出される。
【0026】
従って、上記噴出孔が搬送テーブルを回転させて閉じられた際に残圧が生じ難い。よって、残圧による、以降のワークの所望でない飛び出しを防止することかできるとともに、ワーク搬送装置における搬送速度を高めることができ、ワークの生産性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0028】
図2(a),(b)は、本発明の一実施形態に係る電子部品搬送装置を示す略図的正面図及び後述の搬送テーブルを除いた状態の略図的正面図である。
【0029】
電子部品搬送装置1は、ベースプレート2を有する。本実施形態では、ベースプレート2は、設置スペースにおいて上下方向に延びるように立設されている。もっとも、ベースプレート2は、上下方向から傾斜されていてもよく、またベースプレート2は、水平方向に延びるように配置されていてもよい。
【0030】
ベースプレート2の一方面2a上に、搬送ステージ3が配置されている。搬送ステージ3は、本実施形態では、円板状のプレートであるが、角板状等の他の形状を有していてもよい。搬送ステージ3は、ベースプレート2に対して固定されている。搬送プレート3は、ベースプレート2側とは反対側の面に搬送面3aを有する。
【0031】
搬送面3a上に、搬送テーブル4が配置されている。搬送テーブル4は、円板状の形状を有する。搬送テーブル4は、中心軸4aの周りに回転し得るように配置されており、該中心軸4aが、略図的に示す駆動装置5に連結されている。駆動装置5により、搬送テーブル4は、時計回りに回転移動されるように構成されている。
【0032】
なお、本実施形態では、搬送テーブル4が中心軸4aの周りに時計回りに回転されるが、搬送テーブル4が固定されており、搬送ステージ3が中心軸周りに回転されていてもよく、また搬送ステージ3と搬送テーブル4の双方が中心軸4aの周りに異なる速度で、あるいは逆方向に回転されてもよい。
【0033】
すなわち、搬送テーブル4が、相対的に搬送ステージ3の搬送面3aに対して移動されるように構成されておりさえすればよい。
【0034】
搬送テーブル4は、例えば金属もしくは合成樹脂などの硬質材料からなる。この搬送テーブル4の外周近傍には、複数の貫通孔4bが周方向に整列配置されている。貫通孔4bはワークとしての電子部品が収納される収納部を構成している。この複数の貫通孔4bは、周方向に2列形成されている。
【0035】
もっとも、複数の貫通孔4bからなる列の数は特に限定されず、1列、あるいは3列以上の形態で、複数の貫通孔4bが配置されてもよい。
【0036】
図3に図2のA−A線に沿う部分を部分切欠断面図で示す。図3から明らかなように、搬送テーブル4は、搬送ステージ3の搬送面3a上に当接もしくは近接されている第1の面4cと、第1の面4cとは反対側の面である第2の面4dとを有する。貫通孔4bは、第1の面4cから第2の面4dに向かって貫通している。貫通孔4bの第2の面4dにおける開口部は、電子部品6が入り込み得る大きさとされている。
【0037】
本実施形態では、貫通孔4bは、第2の面4dにおいて矩形の開口形状を有するように設けられている。
【0038】
図2(a)に戻り、電子部品は、上記貫通孔4bに、搬送テーブル4の第2の面4d側から、電子部品供給装置7により挿入される。この電子部品供給装置7としては、ホッパーや適宜の電子部品供給装置を用いることができ、特に限定されるものではない。
【0039】
また、上記搬送テーブル4が時計回りに回転されることにより、搬送テーブル4の第1の面4cが、搬送ステージ3の搬送面3a上をスライドするように、搬送テーブル4が移動する。その結果、貫通孔4bに収納された電子部品6が、搬送テーブル4の周方向に搬送されていくが、その搬送路の途中には、特性測定装置8が配置されている。特性測定装置8は、例えば電子部品の電極に当接される複数のプローブを有し、電子部品6の電気的特性を測定するために設けられている。この測定結果に応じて良品や不良品の判別が行われたり、あるいは特性値に応じて、搬送されてくる電子部品のグループ分けが行われる。
【0040】
上記測定装置8としては、測定される特性に応じて様々な電気的計測装置を用いることができる。
【0041】
他方、図2(b)において、上記搬送テーブル4を取り外し、搬送ステージ3の搬送面3aを露出させた状態を示すように、搬送面3aには、2本の吸引用凹部3b,3cが同心円上に設けられている。この吸引用凹部3b,3cは、搬送ステージ3上に配置されている搬送テーブル4の貫通孔4bの一部に後述の吸引溝を介して連ねられるように設けられている。同心円上に2本の吸引凹部3b,3cが設けられているのは、複数の貫通孔が周方向に2列整列配置されていることによる。すなわち、一方の吸引凹部3bは、複数の貫通孔4bからなる2列のうち、大きな径の列の径方向外側に位置しており、吸引凹部3cは、貫通孔4bの小さな径の列の径方向外側に位置されている。そして、外側の列の貫通孔4bに、後述の吸引溝を介して、吸引凹部3cが接続されており、内側の列の貫通孔4bには、後述の吸引溝により、内側の吸引凹部3bが接続される。吸引用凹部3b,3cは、図2(b)に示すように真空吸引源などの吸引源10に接続されている。
【0042】
図3に示すように、上記貫通孔4bは、第1の面4c側において、搬送テーブル4の径方向に延びる吸引溝4eに連ねられている。この吸引溝4eは、その一部が上記吸引用凹部3bまたは吸引用凹部3cに重なり合う位置に設けられている。
【0043】
従って、吸引用凹部3b,3cから吸引源10により吸引することにより、その負圧により電子部品は、貫通孔4b内において正しい位置に保持される。
【0044】
他方、電子部品取り出し装置9においては、図2(b)に示すように、複数の噴出孔11が搬送面3aに開口している。
【0045】
この噴出孔11が設けられている部分を図4(a)に部分切欠拡大断面図で、図4(b)に、模式的斜視図で示す。
【0046】
図4(a)に示すように、搬送ステージ3には、搬送面3a上に開口している噴出孔11が設けられている。そして、この噴出孔11は、前述したように、電子部品搬送装置1において、電子部品6を取り出すべき位置に設けられている。
【0047】
本実施形態では、噴出孔11は、噴出孔本体部11aと、搬送面3aに開口している第1,第2のノズル部11b,11cとを有する。噴出孔本体部11aは、前述した圧縮空気供給源に接続されており、該噴出孔本体部11aに比べて、ノズル部11b,11cは横断面が細くされている。なお、横断面とは、圧縮空気が通過する方向に直交する方向の断面をいうものとする。そして、このノズル部11b,11cの開口部の横断面方向の面積、すなわちノズル部11b,11cの開口総面積は、電子部品6の搬送面3aに対向している面6aの面積よりも大きくされている。言い換えれば、電子部品6が貫通孔4bの搬送面3a側の開口内において占有している専有面積以上の大きさの開口総面積となるように、上記第1,第2のノズル部11b,11cが設けられている。
【0048】
また、図4(a),(b)に示すように、上記第1のノズル部11bと、第2のノズル部11cとの間に、係止部11dが設けられている。係止部11dに、上記電子部品6が載置され、電子部品6の下方への落下が抑制されている。また、係止部11dが設けられているため、電子部品6は、ノズル部11b,11cの開口縁に引っかかり難い。
【0049】
すなわち、上記係止部11dが設けられていないと、電子部品6が電子部品取り出し位置に移動してきたときに、第1,第2のノズル部11b,11cの開口縁に引っかかったりし、搬送テーブル4の移動に支障をきたすおそれがある。
【0050】
これに対して、上記係止部11d上に電子部品6が確実に載置され、摺動されるので、電子部品6が、第1,第2のノズル部11b,11cの開口縁に引っかかり難い。
【0051】
なお、電子部品6では、外部電極形成部分のコーナー部分が図示のように丸みを帯びているので、係止部11dの上を通過するに際し、電極には傷はつき難い。
【0052】
図4(b)に示すように、第1,第2のノズル部11b,11cの開口縁は、長孔状の形状を有している。この長孔状の形状の長さ方向は、電子部品6の搬送方向に略一致されている。すなわち、搬送テーブル4の周方向に電子部品6が搬送されるので、上記長孔の長さ方向は上記搬送テーブル4の周方向に略一致されている。
【0053】
このように、電子部品6の搬送方向に略一致するように、長孔状の長さ方向が選ばれているので、電子部品取り出し位置において、貫通孔4bが、若干搬送方向においてずれたとしても、貫通孔4bを、噴出孔11上に確実に位置させることができる。従って、電子部品搬送装置1における搬送テーブル4の回転に際しての貫通孔4bの位置決め精度を低くすることができるとともに、その場合であっても確実に電子部品6を貫通孔4bから取り出すことができる。
【0054】
本実施形態の電子部品搬送装置1では、上記噴出孔11には、圧縮空気供給装置12が接続され、それによって圧縮気体としての圧縮空気が、噴出孔11の第1,第2のノズル部11b,11cから貫通孔4b側に噴出される。それによって、電子部品6が貫通孔4bから容易に取り出される。この場合、上記第1,第2のノズル部11b,11cの開口総面積が上記のように設定されているので、圧縮空気が速やかに貫通孔4b内に噴出される。
【0055】
図9に示すように、本実施形態によれば、第1,第2のノズル部11b,11cから圧縮空気を噴出させた場合、上記第1,第2のノズル部の開口総面積が比較的大きいため、当初から圧縮空気が大きな流路で噴出する。従って、短時間で必要な量の圧縮空気の噴出を完了することができる。これに対して、従来の電子部品搬送装置では、噴出孔の開口面積が比較的小さいため、同じ量の圧縮空気を噴出させた場合、噴出開始から噴出完了までの時間が図9に示すように長くなることがわかる。
【0056】
従って、電子部品6を速やかに取り出すことができる。
【0057】
加えて、電子部品6を取り出した後に、搬送テーブル4が回転駆動され、第1,第2のノズル部11b,11cが搬送テーブル4の第1の面4cに覆われたとしても、残圧が生じ難い。すなわち、圧縮空気が噴出孔11内に残り難いので、残圧が生じ難い。よって、次の貫通孔4が、該噴出孔11の上方に移動してきたとしても、残圧により、誤って電子部品6が飛び出すことがない。
【0058】
さらに、残圧が生じ難いため、搬送テーブル4の搬送速度を高め、すなわち前述した先行技術において必要であった待機時間を短くしたり、場合によっては待機時間を設けることなく、電子部品6を搬送することができる。従って、電子部品6の搬送速度や搬送効率を高めることができ、電子部品6の生産性を高めることが可能となる。
【0059】
好ましくは、上記第1,第2のノズル部11b,11cの開口部外表面と、第1,第2のノズル部11b,11cに連なる噴出孔本体部11aとの間の距離である圧縮気体噴出流路長T(図4参照)は、上記貫通孔4bの開口面積の平方根の60%以下とされている。この割合が60%以下とされていることにより、圧縮空気を、より速やかに貫通孔4b内に噴出させることができ、より一層残圧を防止することができるとともに、電子部品6の搬送効率を高めることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、上記第1,第2のノズル部11b,11cが設けられていたが、電子部品の形状に応じて、3以上の複数のノズル部が設けられてもよい。
【0061】
また、ノズル部の開口形状は、長孔状である必要は必ずしもなく、正方形あるいは円形等の形状であってもよい。もっとも、好ましくは、上記のように長さ方向が搬送方向に略一致されている形状の開口を形成することが望ましい。
【0062】
次に、上記電子部品搬送装置1を用いた電子部品の供給、搬送及び取り出し工程を説明する。
【0063】
図2に示すように、電子部品搬送装置1を用いて特性を選別し、電子部品を搬送するにあたっては、電子部品供給装置7から、電子部品を1個ずつ、上記搬送テーブル4の貫通孔4bに挿入する。そして、搬送テーブル4を駆動装置5を駆動することにより、時計方向に回転させる。その結果、貫通孔4bに収納されている電子部品6は、搬送テーブル4の周方向において時計周りに搬送されることになる。この場合、吸引用凹部3b,3cから吸引することにより、貫通孔4b内において電子部品6が正しい姿勢に保持されて搬送が行われる。
【0064】
そして、特性測定装置8において、搬送されてきた電子部品6の特性が測定され、特性結果に応じて、電子部品の分別が行われる。すなわち、電子部品取り出し装置9において電子部品を取り出すに際し、良品のみを特定の位置で取り出し、不良品を異なる位置で取り出したり、特性値に応じて、複数の異なる位置において電子部品を取り出すことが決定される。このように特性測定結果に応じて、電子部品取り出し装置9において特定の電子部品取り出し位置で電子部品が取り出されるが、このような制御は、電子部品搬送装置1に、制御手段を接続し、特性測定装置8から得られた測定結果に応じて、電子部品装置9を駆動すればよい。
【0065】
電子部品取り出し装置9においては、前述したように、貫通孔4b内に収納されている電子部品6が取り出されるが、この場合、圧縮空気を、噴出孔11の第1,第2のノズル部11b,11cから噴出させ、電子部品6が取り出される。すなわち、例えば図2(b)のCで示す位置で、第1のグループの電子部品を取り出す場合には、矢印Cで示す位置に存在する噴出孔11において圧縮空気を噴出させ、電子部品を取り出す。そして、第2のグループの電子部品は図2(b)のDで示す位置の噴出孔11において取り出す場合には、第2のグループの電子部品が、矢印Dで示す噴出孔11の部分に来たときに該噴出孔11から圧縮空気を噴出させ、電子部品を取り出せばよい。
【0066】
そして、第2のグループの電子部品が、上記搬送路に沿って移動されてきた際に、矢印Cで示す噴出孔11には残圧が生じ難いため、残圧により、第2のグループの電子部品が誤って貫通孔4bから飛び出すおそれがない。また、残圧が生じ難いため、前述したように、搬送テーブル4による搬送効率を高めることが容易である。
【0067】
次に、具体的な第1〜第4の実験例を説明する。
【0068】
第1の実験例では、1mm×0.5mm×0.5mmのチップ型電子部品を搬送した場合を評価した。この場合、チップ型電子部品は、長さ方向が貫通孔4bの深さ方向となるように貫通孔4bに挿入した。図5に模式的平面図で示すように貫通孔4bは、実線で示す輪郭を有し、コーナー部が丸められた略正方形の形状を有し、向かい合う2辺間の距離X1を0.71mmとし、コーナー部にRを付与し、開口部分の面積を0.4955mmとした。
【0069】
他方、上記第1,第2のノズル部11b,11cについては、図5に示すように、開口部を長孔状の形状とし、長さ方向寸法を、0.71mmより長くし、幅方向寸法Y1を0.28mmとし、第1,第2のノズル部の開口総面積を0.3976mmとした。従って、上記電子部品6の開口部4b内における専有面積、すなわち搬送面3aに対向し合う面積は、0.5mm×0.5mm=0.25mmであるため、上記噴出孔11の第1,第2のノズル部の開口総面積よりも小さくされている。このような条件で、150kPaの圧縮空気を噴射させたところ、同じ圧力の圧縮空気を、従来の0.2mmの径の噴出孔を有する場合に比べて、電子部品を取り出すのに必要な噴出開始から噴出完了までの時間を約15m秒短縮することができた。
【0070】
図6(a)は、第2の実験例を説明するための模式的斜視図であり、(b)は、図5と同様にノズル孔の形状と電子部品との関係を模式的に示す正面図である。第2の実験例では、貫通孔24bが円筒状の形状を有する。この円筒状の形状において、開口部の直径X2は0.8mmとした。また、電子部品6としては、第1の実験例と同様に1mm×0.5mm×0.5mmの寸法のものを用いた。図6(b)に示すように、第1,第2のノズル部11b,11cの開口部の形状は、第1の実験例と同様に長孔状とし、ただし、長さ方向寸法Zは0.8mmよりも長くし、幅方向寸法Y2は0.28mmとした。この場合、貫通孔24bの開口面積は、(0.8/2)π=0.5024mmとなる。
【0071】
第1,第2のノズル部の開口部の総面積は、0.3808mmであり、電子部品6の搬送面3a側に臨む面6aの面積は、第1の実験例と同様に0.25mmである。このように、円形の貫通孔24bが搬送テーブルに設けられている場合においても、第1の実験例と同様に、従来の0.2mmの径の噴出孔を有する電子部品搬送装置を用いた場合に比べて、圧縮空気の噴射から噴射完了までの時間を15m秒短縮することができた。
【0072】
第2の実験例から明らかなように、貫通孔の開口部の平面形状は、矩形に限らず、円形等の他の形状であってもよい。
【0073】
第3の実験例では、0.6mm×0.3mm×0.3mmの寸法の電子部品を用意し、図7に示すように、貫通孔34の開口部を、0.42mm×0.42mmの矩形のコーナー部を丸めた形状とした。この開口部34bの開口面積は、0.1678mmである。第1,第2のノズル部11b,11cの開口部の長さ方向寸法Zは、0.42mmよりも長くし、幅方向寸法Y3は0.15mmとした。この場合、第1,第2のノズル部11b,11cの開口部の面積の合計である開口総面積は、0.126mmとなり、ワークとしての電子部品の搬送面3a側に臨む面の面積は、0.3×0.3=0.09mmとなる。第3の実験例においても、従来の、0.2mmの径の1つのノズル部を有する電子部品搬送装置を用いた場合に比べて、150kPaの圧力の圧縮空気を噴出した場合、噴出開始から噴出完了までの時間を12m秒短縮することができた。
【0074】
図8は、第4の実験例において用いた貫通孔及び第1,第2のノズル部の開口部の形状を模式的に示す正面図である。ここでは、第3の実験例と同様に、0.6×0.3×0.3mmの電子部品を用いた。そして、第3の実験例とは異なり、第2の実験例と同様に、開口部が円形の貫通孔44bを搬送テーブル4に形成した。この貫通孔44bの直径X4を0.45mmとし、第1,第2のノズル部11b,11cの開口部については、長さ方向寸法を0.45mmとし、幅方向寸法Y4を0.15mmとした。上記貫通孔44bの開口面積は、(0.45/2)π=0.1590mmとなり、上記第1,第2のノズル部の開口面積の総面積は、0.0956mmとなる。他方、電子部品6の搬送面に臨む面の面積は、0.09mmである。この場合においても、第3の実験例と同様に、噴出開始から噴出完了までの時間を第3の実験例で用いた従来例の場合に比べて12m秒短縮することができた。
【0075】
上記実施形態では、搬送テーブルは円板状の形状を有し、中心軸4aの周りに時計回りに回転駆動されていたが、搬送テーブルは、円板状の形状を有する必要は必ずしもない。また、搬送テーブルは、直線状等の他の方向に移動され、それによって、搬送テーブルに設けられた貫通孔を、周方向ではなく、他の方向に搬送させるように搬送路を構成してもよい。すなわち、本発明のワーク搬送装置は、円板状の搬送テーブルを搬送ステージの搬送面に対し回転させる行動に限定されるものではない。
【0076】
また、上記電子部品搬送装置では、ワークとしての電子部品が搬送されていたが、電子部品以外の他のワークを搬送する用途に用いられてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、圧縮気体として圧縮空気を用いたが、窒素等の他の不活性な気体を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の電子部品搬送装置において、電子部品を圧縮気体により取り出す部分を示す部分切欠拡大側面断面図。
【図2】(a)は、本発明の一実施形態の電子部品搬送装置の正面図であり、(b)は搬送面に設けられた吸引溝を説明するための正面図。
【図3】図2のA−A′線に沿う部分を拡大して示す側面断面図。
【図4】(a)は、本発明の一実施形態において、電子部品が取り出される部分の噴出孔の形状を説明するための部分切欠拡大側面断面図であり、(b)は、貫通孔と第1,第2のノズル孔との関係を模式的に示す斜視図。
【図5】第1の実験例における貫通孔の開口部の寸法と、電子部品の搬送面に臨むための面積と、第1,第2のノズル孔の寸法との関係を模式的に示す正面図。
【図6】(a)は、第2の実験例で用意した貫通孔及び第1,第2のノズル孔と電子部品の形状の関係を示す模式的斜視図であり、(b)は、第2の実験例における貫通孔、電子部品及び第1,第2のノズル部の開口の寸法関係を模式的に示す正面図。
【図7】第3の実験例における貫通孔の開口部の寸法と、電子部品の搬送面に臨むための面積と、第1,第2のノズル部の開口の寸法との関係を模式的に示す正面図。
【図8】第4の実験例における貫通孔の開口部の寸法と、電子部品の搬送面に臨むための面積と、第1,第2のノズル部の寸法との関係を模式的に示す正面図。
【図9】従来例及び実施形態において、噴出孔から圧縮空気が噴出される際の流路の時間的変化を示す図。
【図10】従来の電子部品搬送装置において、電子部品が取り出される部分を説明するための模式的正面断面図。
【符号の説明】
【0079】
1…電子部品搬送装置
2…ベースプレート
3…搬送ステージ
3a…搬送面
3b,3c…吸引用凹部
4…搬送テーブル
4a…中心軸
4b…貫通孔
4c…第1の面
4d…第2の面
4e…吸引溝
5…駆動装置
6…電子部品
7…電子部品供給装置
8…特性測定装置
9…取り出し装置
10…吸引源
11…噴出孔
11a…噴出孔本体部
11b,11c…ノズル部
11d…係止部
24b,34b,44b…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが搬送される搬送面を有する搬送ステージと、
前記搬送ステージの前記搬送面に対向するように配置された第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを有し、第1,第2の面を貫通する貫通孔が備えられている搬送テーブルと、
前記搬送テーブルの第1の面を前記搬送ステージの搬送面に対向させた状態で前記搬送テーブルを搬送面に対してスライドさせつつ移動させることを可能とするように、前記搬送テーブル及び/または前記搬送ステージに連結された駆動装置とを備え、
前記搬送テーブルの前記貫通孔にワークを挿入した状態で、前記搬送テーブルが前記搬送面に対して移動されることにより前記ワークが搬送されるワーク搬送装置であって、
前記搬送ステージの搬送面に、前記貫通孔に挿入された前記ワークを取り出すために、前記貫通孔と重なり合い得るようにワーク取り出し位置に設けられており、圧縮気体を噴出させるための噴出孔が設けられており、
前記噴出孔に連結された圧縮気体供給装置とをさらに備え、
前記噴出孔の前記搬送テーブル側の開口部の総面積が、前記ワークの前記搬送ステージの前記搬送面側に対向している端面の面積以上の大きさとされていることを特徴とする、ワーク搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ステージの搬送面に、前記貫通孔に接続されている吸引用凹部が設けられており、前記搬送テーブルの第1の面において、前記貫通孔に連ねられており、かつ前記吸引用凹部に連通されている吸引溝が形成されており、該吸引用凹部に連結された吸引装置がさらに備えられている、請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記噴出孔が、噴出孔本体部と、噴出孔本体部と噴出孔の前記開口部とを結んでおり、噴出孔本体部よりも細いノズル部とを有し、該ノズル部における圧縮気体流路長が、前記貫通孔の前記搬送面側の開口部の面積の平方根の60%以下とされている、請求項1または2に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記噴出孔の前記開口部が、前記ワーク搬送方向が長さ方向とされている長孔状の形状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項5】
前記噴出孔において、前記ノズル部が複数設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項6】
前記複数のノズル部が、第1,第2のノズル部であり、前記ワークの一部が、第1,第2のノズル部間に位置される、請求項5に記載のワーク電子部品搬送装置。
【請求項7】
前記搬送テーブルが、中心軸を有する円板状の形状を有し、前記駆動装置により、前記搬送テーブルが、該中心軸周りに回転駆動されるように構成されており、
前記ワークが挿入される前記貫通孔が、前記搬送テーブルの回転駆動により、搬送テーブルの周方向に移動されるように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のワーク搬送装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のワーク搬送装置であって、前記ワークとして電子部品が搬送される、電子部品搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−314279(P2007−314279A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144558(P2006−144558)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】