説明

一体成形された細長い要素を有する容器

【課題】燃料タンクの剛性を高め、燃料タンク壁厚を薄くすることにより、使用材料の量を減少させる燃料タンクの形成方法および成形用装置を提供する。
【解決手段】燃料タンクを形成するためのキャビティを用意する工程と、前記キャビティ内に一以上の細長い要素(例えばワイヤの補強材)を挿入する工程と、前記キャビティ内で前記細長い要素の近くにパリソンを配置する工程と、前記パリソンに流圧を加え、これにより前記パリソンを変形させて前記パリソンの表面に前記細長い要素を係合させ、一体化させる工程とにより、燃料タンクを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全体的に燃料タンクなどの流体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の燃料タンクは金属やプラスチック材から製造される。燃料タンクは異なる用途における要求に応じてさまざまな寸法及び形状に形成される。乗用車に用いられる燃料タンクは、例えば衝撃を受けたときの破裂に対する耐性及び燃料蒸気中の炭化水素に対する透過性に関する所定の要件を満たさなければならない。典型的なプラスチック製の燃料タンクは単一の壁を含み、この壁は単一の材料又は異なる材料からなる複数の層から形成されてもよい。
【発明の概要】
【0003】
本発明に係る燃料タンクを形成する方法は、燃料タンクを形成するためのキャビティを用意する工程と、該キャビティ内にパリソンを配置する工程と、前記パリソンに流圧を加え、これにより前記パリソンを変形させて前記パリソンの表面に細長い要素を係合させる工程と、を含んでもよい。
【0004】
本発明に係る燃料タンクを形成する方法は、共同で間にキャビティを形成する第一部分及び第二部分を有する金型を用意する工程と、前記金型の近くに細長い要素を運ぶための供給源を用意する工程と、前記金型のキャビティ内に細長い要素を挿入する工程と、前記金型のキャビティ内に前記細長い要素を固定する工程と、内表面及び外表面が設けられたパリソンを前記金型のキャビティ内に挿入する工程と、前記パリソンの内表面に圧力を加え、これにより前記パリソンの外表面を前記細長い要素に押し付けて、前記細長い要素の少なくとも一部を前記パリソンの外表面に係合させて前記パリソンを成形する工程と、を含んでもよい。
【0005】
本発明に係る燃料タンクを形成する装置は、融解されたパリソンから燃料タンクを成形する表面を有するキャビティと、前記燃料タンクの形成中に細長い要素を固定するための一以上の位置とを有する金型と、前記キャビティ内であって前記金型と前記パリソンの外表面との間に前記細長い要素を挿入可能な前記細長い要素の供給源と、前記パリソンの外表面を前記金型の表面及び前記細長い要素に向かって付勢する流圧の供給源と、を有してもよい。
【0006】
本発明に係る流体容器は、該流体容器の縁を画定する外壁と、前記流体容器の外壁内に少なくとも部分的に埋め込まれた一以上の細長い特徴部と、を有してもよい。
【0007】
本発明の実施例について本明細書に添付された図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1a】燃料タンクを形成する装置の断面図である。
【図1b】燃料タンクを形成する装置の断面図である。
【図1c】燃料タンクを形成する装置の断面図である。
【図1d】燃料タンクを形成する装置の断面図である。
【図1e】燃料タンクを形成する装置の断面図である。
【図1f】燃料タンクを形成する装置の断面図である。
【図2】複数の細長い特徴的要素を含む燃料タンクの斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は燃料タンクを形成する装置の追加の断面図である。
【図4】ワイヤの一部が組み込まれたパリソンの断面図である。
【図5】燃料タンクを形成する方法に係るフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
燃料タンク(これに限定されない)などの容器は、プラスチック又は他の類似の材料からモールド成形することができる。容器は液体を含むことができ、燃料タンクの場合、液体とはエンジンに送られてエンジンの運転を補助する燃料である。
【0010】
本明細書に記載するように、燃料タンクのブロー成形中に、一以上の細長い特徴的要素が燃料タンクの表面に少なくとも部分的に埋め込まれてもよい。細長い特徴的要素は、燃料タンクに構造的又は補強リブを形成するとともに燃料タンクを支持する。一実施において、一以上のブロー成型用金型又は部分の成形表面と融解されたパリソンの外表面との間に細長い特徴的要素を配置してもよい。パリソンに圧力下でブロー成型用金型の表面に向かう外向きの力を加えると、金型と融解されたパリソンとの間に配置された細長い特徴的要素がパリソン内に部分的に又は完全に埋め込まれる。また、細長い特徴的要素は、融解されたパリソンの一部がブロー形成用金型の表面と接触することを防止し、その結果燃料タンクに一以上のリブが形成される。形成されたパリソン(例えば燃料タンク)が冷やされると、細長い特徴的要素が、形成された燃料タンクの壁と一体化する。このことは燃料タンク壁厚の減少を促し、燃料タンクの構成に使用される材料の量を減少させる。さらに、そのように形成された細長い特徴的要素及びリブは燃料タンクの剛性を高めて燃料タンクを強化する役割を果たす。細長い特徴的要素を燃料タンクの壁内に一体化させることは、ストラップ(金属など)又は金属薄板から形成された連結フランジなどの他の非一体化連結方法に代えて又は加えて使用でき、これにより燃料タンクが車両に搭載される。
【0011】
細長い特徴的要素の形はさまざまな可能性のなかから任意の形をとることができる。例えば、細長い特徴的要素は、異なる組成並びに/又は断面形状及び寸法のワイヤを用いて実施可能である。他の例はケーブル、ネジ、フィラメント又は任意の他の類似材料を含む。これらの断面は円形状でもよいが、長円形、正方形及び矩形などの他の断面形状でもよい。また、細長い特徴的要素は、矩形の断面形状を有するバンド、ベルト、チェーン又はロープであってもよい。要するに、細長い特徴的要素の形状及び構造は本明細書に記載の装置及び/又は方法においてそれほど重要ではない。本明細書では説明のために(複数の)細長い特徴的要素をワイヤ又はワイヤの部分(一部)と称する。しかしながらこの命名は細長い特徴的要素に用いられる各材料又は構造を限定するものではない。
【0012】
図面を参照してより詳細に説明する。図1a〜fは、融解パリソン12から燃料タンクなどの容器を形成するのに使用されるブロー成形装置10の断面を示す。図1aに示すように、ブロー成形装置10は第一部分16及び第二部分18を有する成形金型14を含んでもよく、成形金型14は、成形中に閉じて燃料タンクの外部表面を成形する。第一部分16は第一キャビティ20を有してもよく、第二部分18は第二キャビティ22を有してもよい。第一キャビティ20と第二キャビティ22とが対面するよう第一部分16と第二部分18とが互いに対向する位置に配置されると、第一キャビティ20と第二キャビティ22は共同で燃料タンクの外表面の形成を画定する形成表面を画定する。
【0013】
さらに、ワイヤ源24を成形金型14に隣接した位置に配置してもよく、これによりワイヤが第一キャビティ20及び/又は第二キャビティ22を横切って成形金型14内に提供され、最終的にワイヤの少なくとも一部が燃料タンクの外部表面に組み込まれる。ワイヤの部分を保持するために、第一保持部26及び第二保持部28を、第二部分18の両側に配置してもよい。第一保持部26及び第二保持部28は、第一保持部26と第二保持部28との間にワイヤの部分を取り外し可能に固定することができ、これによりワイヤの部分が第二キャビティ22内に少なくとも部分的に配置される。
【0014】
図1bは、ワイヤの部分30が第二キャビティ22を横切って挿入された成形金型14を示す。ワイヤの部分30は、第一保持時部26及び/又は第二保持部28において、第二部分18に連結される。この場合、ワイヤの部分30の長さは、ワイヤが第二キャビティ22の表面と同一表面上に横たわるのを許容するような長さよりも短くてもよい。ワイヤの部分30の長さによって、パリソン12の外表面が第二キャビティ22の表面に接触するのを防止することができる。その結果、第一保持部26及び第二保持部28において固定されたワイヤの部分30が、融解パリソン12を少なくとも部分的に形成する役割を果たすことができ、これにより、形成された燃料タンクにリブが作成される。
【0015】
図1cは、ワイヤの部分30の上方且つ第一キャビティ20と第二キャビティ22との間に挿入されたパリソン12を示す。パリソン12は、内表面32及び外表面34を有する。ブロー成形中、パリソン12の内表面32に流圧が加えられ、これによりパリソン12の外表面34が移動して第一キャビティ20と第二キャビティ22の表面と接触するとともにワイヤの部分30と接触する。
【0016】
図1dを参照すると、燃料タンクの形成に備えて、成形金型14の第一部分16と第二部分18が引き合わされてパリソン12の周囲で結合される。本実施形態ではこの過程でパリソン12の外表面34がワイヤの部分30に押しつけられ、これによりリブが少なくとも部分的にパリソン12に作成される。パリソン12の外表面34はワイヤの部分30に沿って変形してもよく、第一保持部26及び第二保持部28を用いてワイヤの部分30に張力が与えられてもよい。パリソン12の変形は図中の斜線部36から分かる。パリソン12に圧力を加える前に変形を生じさせることも可能である。
【0017】
図1eを参照すると、パリソン12の内表面32に流圧が加えられ、これにより、パリソン12の外表面34が、第一キャビティ20及び第二キャビティ22並びにワイヤの部分30と適合するよう付勢される。図1eから分かるように、ワイヤの部分30が無くてもパリソン12の外表面34を第一キャビティ20の表面に押し付けて形成することができる。しかしながら、ワイヤの部分30は、パリソン12の外表面34が第二キャビティ22の表面と完全に接触することを防止して燃料タンクにリブ42を形成する。
【0018】
図1fを参照すると、第一部分16及び第二部分18が分離されてパリソン12(形成された燃料タンクなど)が成形金型から取り出される。ワイヤ30は、この時点で又はこれより前の成形金型の部分16、18が閉じられた時点で切断してもよい。
【0019】
図2を参照すると、燃料タンク50の外表面52に組み込まれた複数のワイヤの部分30を有する燃料タンク50が示されている。図1a〜fに示されたパリソン12が成形金型の第一及び第二部分16、18から取り出されて冷やされると、燃料タンク50が得られる。図2に示される燃料タンク50の外表面52は、ブロー成形中に燃料タンク50内に成形された複数のワイヤの部分30を有する。一以上のワイヤの部分30から一以上の燃料タンク搭載点54を形成することができる。例えば、燃料タンク搭載点54は、一以上のワイヤの部分30の端部で輪を形成することにより、あるいはワイヤの部分を取り付け金具又は他の搭載部若しくは部品に連結することにより、作成できる。
【0020】
図3(a)〜(c)を参照すると、成形金型14に隣接したワイヤ配置装置の一実施形態が示されている。ワイヤ配置装置は、可動なピストン40を有する空気圧式装置38として示される。図3(a)に示される可動なピストン40は後退位置にあり、この時ピストン40は掴持部を用いてワイヤ源24からのワイヤを解放可能に掴むことができる。図3(b)を参照すると、ピストン40は空気圧式装置38から展開し又は伸び、第二キャビティ22を横切ってワイヤの部分30を運び、あるいはワイヤの部分30とともに第二キャビティ22を横断してワイヤの部分30を第二保持部28に連結し、第一保持部26に連結することも可能である。本明細書において、第一及び第二保持部26、28は成形金型14の一部として示されているが、第一及び第二保持部26、28を成形金型14から離れた位置に配置してもよい。ワイヤの部分30を一以上の保持部26、28に連結した後、ピストン40はワイヤの部分30を解放し、図3(c)に示すように空気圧式装置38内に後退して戻ってもよい。ワイヤ配置装置を可動なアームとして実施することも可能であり、このアームは、成形金型14内にワイヤの部分を配置できるとともに第一位置から第二位置に移動させることができる。
【0021】
図4を参照すると、ワイヤの部分30が組み込まれたパリソン12の断面が示されている。この場合、ワイヤの部分30はパリソン12の外表面34内に完全に包まれている。この場合、包み込まれたワイヤは、燃料タンクの内側体積内に内向きに伸びるリブ42を形成する。
【0022】
図5を参照すると、燃料タンクなどの容器を形成する方法500が示されている。各種構成要素に関しては図1a〜fを参照されたい。この方法500はステップ510から始まり、ステップ510において、合わせて閉じたときに間にキャビティを共同で画定する第一部分16及び第二部分18を有する成形金型を準備する。したがって第一部分16及び第二部分18は各々キャビティの一部を含むことができ、その表面は形成される燃料タンクの形状を少なくとも部分的に画定する。勿論、当然のことながら、この方法500は燃料タンク以外の他の容器にも適用できる。しかしながら、本明細書では説明のために方法500を車両燃料システムに使用される燃料タンクに関して記載する。燃料タンクは、任意の適切な(複数の)材料からなるパリソン12から形成されてもよい。一実施形態において、燃料タンクは、いわゆる「多層」燃料タンクにおいて、高分子材料の多数の層から形成されてもよい。「多層」タンクは、高密度ポリエチレン(HDPE)などの内側層及び外側層を形成する一以上の構造層と、一以上の接着剤層と、燃料タンク内に含まれる流体に関連する炭化水素若しくはその他の蒸気又は液体の透過に対する所望の耐性を有する一以上のバリア層と、を含んでもよい。一例に基づくバリア層の材料はナイロン及びEVOH(エチレンビニルアルコール)を含むが、他の材料も使用できる。あるいは、燃料タンクは単一の材料から形成されてもよく、又は本明細書に具体的に記載されたものに加えて若しくはそれ以外の層を有してもよい。
【0023】
一般的に、融解されたパリソン12をキャビティ内で受けるために成形金型の第一及び第二部分16、18を分離して即ち開けて、その後金型14の第一及び第二部分16、18を接合させて即ち閉じてもよい。閉じている状態で、成形金型の第一及び第二部分16、18のキャビティはブローピン及び/又はブローピン用開口を含んでもよく、それを介して流体がパリソンの内表面32と連通し、これによりパリソン12に圧力が加えられてパリソンの外表面34を第一及び第二部分16、18のキャビティに向かって押してキャビティと係合させる。方法500は次にステップ520に進む。
【0024】
ステップ520において、ワイヤ源24を成形金型14に隣接して設け、ワイヤの部分30を成形金型14のキャビティ内に挿入する。成形金型14内へのパリソン12の挿入前又は挿入時に、一以上のワイヤの部分30を成形金型14のキャビティ内に配置するとともに成形金型のキャビティの表面と融解されたパリソン12との間に位置決めしてもよい。このワイヤ30は、HDPE又は他の類似の材料からなるワイヤなどのように、ブロー成形金型14内に挿入可能なよう柔軟性及び耐熱性を有してもよい。方法500に用いられるワイヤ30は、例として直径が約2mmから10mmでもよい。好ましくは、ワイヤ30は直径が5mmでもよい。一例では、ワイヤ源24はワイヤ30を一巻きに巻いて格納し、ブロー成形中にワイヤ30がキャビティ内に挿入されるようワイヤ30の一巻きを回転させる。この一巻きの回転はコンピュータによって作成された命令に基づき、この命令は、ワイヤ30の所定長さ又は部分を成形金型14のキャビティ内に挿入させることを含む。本明細書では方法500をワイヤの部分30に関して記載したが、方法500を複数の独立したワイヤの部分30をキャビティ内に挿入するために用いてもよい。そして、複数の独立したワイヤの部分30をワイヤの部分30が互いに平行になるようキャビティ内に挿入してもよい。
【0025】
しかしながら、独立したワイヤの部分30は、成形金型のキャビティ内にどのように配置されるかに依って所定角度で互いに交差してもよい。これについて以下により詳細に説明する。別の例では、ワイヤ30間の所定角度は従属するワイヤの部分30、例えば複数のワイヤの部分30を結合して形成された所定幅を有するワイヤの格子であるワイヤの部分30ならなるウェブ又はネットワーク、を用いて定められる。ワイヤのウェブなどの従属するワイヤの部分30は一巻きに巻いて格納することができ、また従属するワイヤの部分30は独立したワイヤの部分30のように形成中にキャビティ内に挿入できる。
【0026】
複数のワイヤの部分30を成形金型のキャビティ内に挿入するために複数のワイヤ源24を用いることができ、各ワイヤ源24は、成形金型14のキャビティ内に挿入されるワイヤの部分30を作成することができる。複数の独立したワイヤの部分30を複数のワイヤ源24から作成することも可能である。例えば、複数のワイヤ源24は各々連続的なワイヤを含み、これを切断して複数の独立したワイヤの部分30を作成することができる。しかしながら、一つのワイヤ源24を用いて複数の独立したワイヤの部分30を成形金型14のキャビティ内に供給することも想定される。一実施形態において、細長い筒状部材又は糸巻きは、糸巻きの周りに各々巻かれた複数の連続的なワイヤを含むことができる。糸巻きが回転すると、複数の別々の独立したワイヤの部分30が連続的なワイヤから切断される。所望であれば、複数のワイヤの部分を単一のワイヤから切断して成形金型の別の部分に配置してもよい。
【0027】
成形金型14内にワイヤの部分を挿入するために、成形金型とワイヤ源に隣接するワイヤ配置装置を用いてもよい。一例において、ワイヤ配置装置は空気圧式、油圧式又はサーボ駆動式であってもよく、あるいはプッシュロッド、ピストン又はワイヤの部分を解放可能に保持する掴持部が一端に設けられたアームを用いる他の装置でもよい。このような装置(例えばワイヤ配置装置38)の一例は図3(a)〜(c)を参照して上述した。図3(a)〜(c)において、空気圧式ピストン40は直線上で移動し、第一位置と第二位置の間で伸張及び後退する。掴持部は、ワイヤの部分を解放可能に掴むことができる機械式クランプでもよく、そのようなクランプは電気的、機械的、油圧的及び/又は空気圧式的に駆動される。ワイヤの部分30を成形金型14のキャビティ内に挿入する前に、掴持部はワイヤの部分30の一部に接続する又は接続される。ワイヤの部分30の一部はワイヤの端部又はワイヤの長さに沿った任意の点であってもよい。掴持部がワイヤを保持した後、ピストン40が成形金型14のキャビティを横切って伸びてもよく、これによりワイヤの部分30、複数のワイヤの部分30又はワイヤの部分30からなるウェブを伴って成形金型14のキャビティを横切ることができる。
【0028】
当然のことながら、さまざまな方法を用いてワイヤの部分30を成形金型14のキャビティ内に挿入することができる。例えば、ワイヤの部分30は成形金型14のキャビティを完全に横切ってもよい。別の例では、ワイヤの部分30は成形金型14内に部分的に配置されてもよく、ワイヤの部分30は成形金型14のキャビティ全体は横切らない。この場合、ワイヤの部分30は単純に成形金型のキャビティ内の任意の位置で終端してもよく、ワイヤの部分30は、成形金型14のキャビティ内に配置された、端部が任意的に成形金型14の外に伸びている一以上のワイヤの輪であってもよく、あるいは例えば成形金型14のキャビティ内にワイヤを蛇行させて配置してもよく、これらの例は限定を意図しておらず、ワイヤの配置に関してはさまざまな可能性がある。方法500は次にステップ530に進む。
【0029】
ステップ530において、キャビティ内に挿入されたワイヤの部分を固定する。(複数の)ワイヤの部分30を成形金型14のキャビティ内に挿入した後、(複数の)ワイヤの部分を成形金型14内の一以上の位置で固定してもよい。これは任意の方法で達成することができる。例えば、成形金型の第一部分16又は第二部分18は、ワイヤの部分30を固定して動かないようにする保持部26、28を有してもよい。保持部26、28は成形金型14の一部の一方の側に形成されたV字状の溝であってもよい。任意的に、第二V字状溝を成形金型14の一部の反対の側に形成してもよい。例えば、第一部分16が一つ、二つ又はそれ以上のV字状溝を含んでもよい。しかしながら、(複数の)ワイヤの部分30を一つの保持部を用いて取り付け、ワイヤ源24を用いて適切にぴんと張った状態にしてもよい。また、保持部26、28の角度に基づいて、成形金型14及び/又は燃料タンクに対するワイヤの部分30の角度を定めてもよい。例えば、もしワイヤの部分30が成形金型14のキャビティ内に所定角度で横たわることを意図するならば、V字状溝などの保持部26、28を成形金型14の第一及び/又は第二部分16、18に所定角度で挿入してもよい。上記のワイヤ配置装置38を用いて、ピンストン40はピストン40上に位置する掴持部を用いてワイヤの部分30を保持してもよく、そしてプストン40を掴持部がV字状保持部に隣接する点に到達するまで伸ばしてもよい。ピストン40はワイヤの部分30がV字状部によって保持される位置までワイヤの部分30を動かすことができ、そして掴持部はワイヤの部分30を解放することができる。その後ピストン40は後退してもよい。ピシトン40の動作をロボットアーム又は他の駆動装置を用いて実行することをもできる。複数のワイヤの部分30が成形金型14内に挿入された場合、複数の保持部26、28を、成形金型の第一及び/又は第二部分16、18と共に用いることができる。
【0030】
保持部26、28とは別に、他の方法を用いてワイヤの部分30を成形金型14に固定することも可能である。例えば、一以上のワイヤの部分30を成形金型14のキャビティ内に挿入することができる。この場合、ワイヤの部分30は、成形金型14の第一及び第二部分16、18のキャビティを完全に横切ることができる。その後、成形工程のために成形金型14の第一及び第二部分16、18を閉じて又は接合させて、成形金型14の第一及び第二部分16、18が(複数の)ワイヤの部分30を成形金型14の第一及び第二部分16、18間に挟んでもよい。この場合、特定の保持部において、成形中にキャビティ内に(複数の)ワイヤを固定することは必須ではない。
【0031】
燃料タンクの形状は、少なくとも部分的に、成形金型14内に挿入される(複数の)ワイヤの部分30の長さに基づいて定められる。すなわち、燃料タンクが形成されるときに一以上のワイヤの部分30を用いてパリソン12の外表面34に対して抵抗力を加えてもよい。一例において、十分な長さを有する成形金型14内にワイヤの部分30を挿入してもよく、これにより燃料タンクの形成中にワイヤの部分30がキャビティの表面とほぼ同一面内で押される。しかしながら、成形金型のキャビティ内に含まれるもの以外の方法で燃料タンクに輪郭又はリブを加えることも可能である。例えば、成形金型のキャビティの表面と同一面に適合するであろう長さよりも短い長さを有するキャビティ内にワイヤの部分30を挿入することができる。成形金型14に固定されたワイヤの部分30の長さは、燃料タンク内で所望されるリブの深さに依存して異なってもよい。すなわち、キャビティ内に挿入されるワイヤ30の部分が大きいほど、作成されるリブの高さは短くなる。一方で、成形金型14内のワイヤの部分30の長さを減少させることで、より深いリブが作成される。方法500は次にステップ540に進む。
【0032】
ステップ540において、内表面及び外表面32、34を有するパリソン12が成形金型14のキャビティ内に挿入される。ワイヤの部分30が成形金型14のキャビティ内に挿入されると、パリソン12を成形金型14のキャビティ内に挿入することができる。通常、パリソン12は筒状の断面を有していてもよいが、当然のことながら別の断面形状を有していてもよい。挿入後、パリソン12を、キャビティ内で一以上のワイヤの部分30の近くに配置してもよい。このことは、パリソン12の外表面と向かい合う一以上のワイヤの部分30によって説明できる。ワイヤの部分30及びパリソン12を成形金型14のキャビティ内に挿入した後に、第一部分16と第二部分18を接合させて、燃料タンクの形成の準備のために成形金型14を閉じてもよい。方法500は次にステップ550に進む。
【0033】
ステップ550において、パリソンの内表面32上に流圧が加えられてパリソンの外表面34がワイヤ30の(複数の)部分に押し付けられ、これによりワイヤ30の少なくとも一部がパリソン12の外表面34内に埋め込まれてパリソン12の一部が成形される。パリソン12は変形することができ、一以上のワイヤの部分30はパリソン12の表面内に少なくとも部分的に埋め込まれる。ブロー成形中、圧縮空気などの流圧を用いてパリソン12を成形金型14のキャビティ表面に向かって付勢することができる。ここで、流圧はワイヤの部分30をパリソン12の外表面34内に付勢することもできる。これが起こると、パリソン12の外表面34及び(複数の)ワイヤの部分30が少なくとも部分的に合体する。このことは、いくつかの応用において、パリソン12が燃料タンクの形に形成されて冷えた後に、(複数の)ワイヤの部分30の少なくとも一部がパリソン12の外表面に残ってもよいこと及び/又はパリソン12の外表面に見えてもよいことを意味する。しかしながら、いくつかの応用において、パリソン12の内側に加えられた流圧がパリソン12の外表面34をワイヤの部分30に付勢してもよく、これにより(複数の)ワイヤの部分30がパリソン12内に完全に一体化することで、(複数の)ワイヤの部分30がパリソンの外表面34の外側に残らない及び/又は見られない。
【0034】
さらに、ブロー成形工程において、パリソン12の外表面34を(複数の)ワイヤの部分30に付勢することができ、これにより燃料タンク内にリブが形成される。この場合、(複数の)ワイヤの部分30の少なくともいくつかの部分は、成形金型のキャビティの表面に接触しなくともよい。パリソン12の外表面34が圧力下でキャビティの表面に向かって付勢されるにつれ、ワイヤの部分30は、パリソン12の外表面34の少なくとも一部が成形金型のキャビティの表面に到達することを防止することができる。このようにして、(複数の)ワイヤの部分30に沿って一以上のリブが形成される。そして方法500は終了する。
【0035】
本明細書で開示された実施形態は好ましい実施形態であるが、その他のさまざまな実施形態も可能である。例えば、本開示は全体的に成形金型とパリソンの外部表面との間に細長い要素を配置することに関連するが、一方で、二個のパリソンの間に(複数の)細長い要素を配置することも可能である。この実施形態では、(複数の)細長い要素は内側のパリソンの外側で且つ外側のパリソンの内側に配置されるであろう。また、細長い要素を単一のパリソン又は複数のパリソンを用いる場合には所望に応じて最内側のパリソンの内部即ち内側に配置することも可能である。本明細書では、本発明の同等の形態又は効果の可能性の全てを記載することは意図していない。本明細書に用いられる用語は単に説明用であり、限定するものではない。また、本発明の精神又は範囲内でさまざまな変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの形成方法において、
(a)燃料タンクを形成するためのキャビティを用意する工程と、
(b)前記キャビティ内に一以上の細長い要素を挿入する工程と、
(c)前記キャビティ内にパリソンを配置する工程と、
(d)前記パリソンに流圧を加え、これにより前記パリソンを変形させて前記パリソンの表面に前記細長い要素を係合させる工程と、を含む
ことを特徴とする燃料タンクの形成方法。
【請求項2】
二以上の部分を有する金型を用いて前記キャビティを用意する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項3】
前記キャビティが、前記パリソンを少なくとも部分的に成形する表面を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項4】
前記細長い要素の少なくとも一つが、前記キャビティ内への挿入用の別個のワイヤの部分を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項5】
前記キャビティに隣接する位置に一以上の保持部を設ける工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項6】
前記細長い要素を前記パリソンの表面に押し付けることによって、前記パリソンに一以上のリブを形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項7】
前記細長い要素を前記パリソンの表面内に完全に包む工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項8】
ワイヤ挿入装置を用いて前記キャビティ内に前記細長い要素を挿入する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項9】
前記キャビティ内に前記細長い要素を少なくとも部分的に配置するために、前記ワイヤ挿入装置に第一位置から第二位置に駆動されるアームが設けられていることを特徴とする請求項8に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項10】
(e)前記キャビティを共同で間に形成する第一部分と第二部分とを有する金型を用意する工程と、
(f)前記金型に隣接する位置に前記細長い要素を運ぶための部材を用意する工程と、
(g)前記金型のキャビティ内に前記細長い要素を固定する工程と、
(h)前記パリソンの内表面に流圧を加えて前記パリソンの外表面を前記細長い要素に押し付け、これにより前記細長い要素の少なくとも一部を前記パリソンの外表面に係合させて前記パリソンの一部を形成する工程と、をさらに含む
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項11】
前記キャビティが、前記パリソンを少なくとも部分的に成形する表面を有することを特徴とする請求項10に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項12】
前記キャビティ内に一又は二以上の別個のワイヤの部分を設ける工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項13】
前記パリソンの内表面に圧力を加えることによって前記パリソンに一以上のリブを作成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項14】
前記長細い要素を前記パリソンの表面内に完全に包む工程をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載の燃料タンクの形成方法。
【請求項15】
燃料タンク形成用装置において、
パリソンから燃料タンクを成形する表面を有するキャビティと、前記燃料タンクの形成中に細長い要素を固定するための一以上の位置と、を有する金型と、
前記キャビティ内であって前記金型と前記パリソンの外表面との間に前記細長い要素を挿入可能な前記細長い要素の供給源と、
前記パリソンの外表面を前記金型の表面及び前記細長い要素に向かって付勢する流圧の供給源と、を有する
ことを特徴とする燃料タンク成形用装置。
【請求項16】
可動なアームを用いて前記細長い要素を前記キャビティ内に挿入するワイヤ挿入装置が設けられたことを特徴とする請求項15に記載の燃料タンク成形用装置。
【請求項17】
流体容器において、
前記流体容器の縁を画定する外壁と、前記流体容器の外壁内に少なくとも部分的に埋め込まれた一以上の細長い特徴部と、を有することを特徴とする流体容器。
【請求項18】
前記一以上の細長い特徴部から少なくとも部分的に形成されたタンク搭載点を含むことを特徴とする請求項17に記載の流体容器。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−1118(P2013−1118A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129570(P2012−129570)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【出願人】(500385968)ティーアイ オートモーティヴ テクノロジー センター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【氏名又は名称原語表記】TI Automotive Technology Center GmbH
【Fターム(参考)】