説明

一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置の切換え操作装置

【課題】一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置において、確実なクラッチの切換え操作が可能となる装置を提供する。
【解決手段】耕耘機のエンジンの動力で駆動される一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置における正転と正逆転の切換ギヤ27、28への切換え操作を往復クラッチ23の往復作動で行うために、運転ハンドルに設けた操作レバーで操作ワイヤを支点越えさせて操作する手動操作部と、手動操作部の作動を操作ワイヤを介して往復クラッチ23へ伝達する操作伝達部と、操作伝達部の作動で回転カム斜面13を形成した往復筒体11を、斜面押圧ピン14を備えた回転中軸10の回動でスライドさせて往復筒体11のシフトフォーク12で往復クラッチ23を両側に寄せ付けてロータリ伝達装置の両切換ギヤ27、28への回転伝達の切換えをする往復クラッチ23を備えたクラッチ作動部Cとから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耕耘機に装着したロータリにおける「一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えを可能とするロータリ伝達装置」において、耕耘機のエンジン等の動力により共通の軸上で回転する耕耘用の複数の回転爪を、(a)全て同方向に正回転させる場合と、(b)ロータリケースに近い部分とそれに隣り合う外側部分を異なった正逆方向に同時に回転させる場合とに切換えるための操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の「一軸正転ないし正逆転切換えロータリ伝達装置」は、耕耘機に装着した往復クラッチの操作で1軸に装着した複数の耕耘用回転爪が、全て正回転とする場合と、同時に正回転と逆回転をする場合とに切換可能な構造が開示されている。
該ロータリ伝達装置では、往復クラッチを往復させ、該往復クラッチの両側に設けたドッククラッチの爪を往復クラッチの往復で回転を切換えるが、その際に往復クラッチは、チェーン及びスプロケットを介して、回転爪の一部を相互に逆方向に回転させる歯車と、正方向に回転させる歯車とに連結し、それぞれの連結で回転が伝達されて回転爪を正回転と正逆同時回転とに切換え可能としている。
該ロータリ伝達装置の実施にあたっては、前記回転爪を全て同方向の回転(以下「正転」と呼ぶ)と相互に逆方向に同時回転(以下「正逆転」と呼ぶ)する切換えが、運転ハンドル手元のチェンジレバーで行われるが、前記往復クラッチはチェンジレバーの支点からは遠い位置にあるため、その間の切換え操作の伝達はシャフト等を介して機械的に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−340003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のロータリ伝達装置は、前記往復クラッチ両側の回転伝達のドッククラッチをスライドさせ切換えを行う際に、前記往復クラッチを一方の切換ギヤ側に寄せるときにはバネを組み込んで往復クラッチを該バネの力で一方側に附勢して寄せ付けることで寄せた状態を保持することが可能となるが、その逆方向にバネの附勢力に抗して寄せるときには切換レバーの操作が重くなり、同時に、寄せた状態を保持しようとしても、寄せる方向への力が働いていないため「戻り現象」が発生してしまい確実に寄せ付け状態を保持することが難しい。このため、運転中に一旦切換わった切換ギヤから往復クラッチが外れてしまうことがあった。
【0005】
この対策のために、チェンジレバー部分にチェンジレバーの軸を誘導する戻り止め付きのガイド溝を備えた操作盤を設けて、運転ハンドルの手元でチェンジレバーを機械的に拘束(ロック)することで切換ギヤから往復クラッチが外れるのを防止する方法を本発明者が試みたが、この方法ではシャフトの撓みや、接続部分の遊びや、操作盤のガイド溝と往復クラッチなどの切換え部との対応関係の誤差などによって、往復クラッチの戻りを完全に防止することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、前記「一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置」において、運転ハンドル手元のチェンジレバーの支点とは遠い位置にある前記ロータリ伝達装置の正転と正逆転との切換ギヤへのクラッチ切換え操作を行う際に、切換わった両切換ギヤからいずれの側でも軽い操作で、しかもクラッチが外れる虞のなく切換え操作が確実な操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置の切換え操作装置は、請求項1に記載の発明にあっては、耕耘機のエンジン又はモーターの動力で駆動される一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置における正転と正逆転の切換ギヤへの切換え操作を往復クラッチの往復作動で行うために、耕耘機の運転ハンドルに設けた操作レバーによる手動操作部と、該手動操作部の作動を前記往復クラッチへ伝達する操作伝達部と、該操作伝達部の作動で前記ロータリ伝達装置の両切換ギヤへの回転伝達の切換えをするための往復クラッチを備えたクラッチ作動部とから成る。
【0008】
前記手動操作部は、前記運転ハンドルに固定された操作レバー取付け用金具にレバー枢支部を設けて先端にグリップを備えた操作レバーを枢支し、該操作レバーにワイヤ連結部を設けて操作ワイヤの基端を連結し、前記操作ワイヤが前記レバー枢支部を僅かに横切って停止するよう該操作レバーの回動範囲を決めるレバーストッパを設けて成る。
【0009】
前記操作伝達部は、前記手動操作部のワイヤ連結部とクラッチ作動部のクランクの連結部との間に緊張させた操作ワイヤを含む連結部材を介して連結して成る。
【0010】
前記クラッチ作動部は、前記ロータリ伝達装置の一部に、一方端寄りの周面には斜面押圧ピンを突設するとともに他方端寄りには前記クランクを固着した回転中軸を軸支し、該回転中軸の中間には、一方端には前記斜面押圧ピンに当接可能に対応した回転カム斜面を形成し、外周には前記往復クラッチに係合する係合部を備えたシフトフォークを突設した往復筒体を軸方向スライド可能に貫装し、該往復筒体の他方端と前記回転中軸のクランクとの間には押しバネを介装して成る。
【0011】
そして、前記往復クラッチがいずれの側においてもその側へシフトフォークに押圧された状態で切換えられるようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明にあっては、上記発明において、前記往復筒体の回転カム斜面側の先端面が突き当たって止まる筒体ストッパを前記ロータリ伝達装置の一部に設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明にあっては、上記各発明において、前記操作伝達部が、前記耕耘機の本体にクランク枢支軸を軸支して、該クランク枢支軸に固着したワイヤ連結用クランクとシャフト連結用クランクとを設け、前記ワイヤ連結用クランクに設けた連結部には前記手動操作部のワイヤ連結部に固定された操作ワイヤの末端を固定するとともに前記シャフト連結用クランクに設けた連結部には前記クラッチ作動部のシャフト連結用クランクに末端部を連結したシャフトの基端部を枢支したことを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明にあっては、上記各発明において、回転中軸を軸方向にスライド可能とした往復筒体の回転方向の拘束が、前記ロータリ伝達装置の切換ギヤ回転軸にスライド可能に装着した往復クラッチに係合したシフトフォークで行われるようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明にあっては、上記各発明において、運転ハンドルのレバー枢支部とワイヤ連結用クランクとの中間部位に操作ワイヤを通すワイヤガイド孔を設けて操作レバーの回転附勢方向の転換基準位置を確定したことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明にあっては、上記各発明において、運転ハンドルのレバー枢支部とワイヤ連結用クランクとの中間部位に補助収縮バネの一端部を繋ぎ、該補助収縮バネの他端部を操作レバーのワイヤ連結部付近に繋いだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記構成であり、前記操作レバーで操作ワイヤを引いたり緩めたりして操作すると前記往復クラッチが、一方側では押しバネに押圧されて戻らず、他方側では操作ワイヤが支点越えを起こして前記押しバネの引く力が前記操作レバーを戻さない方向に働いて戻らないようになる。
このように、前記押しバネの力で両側共に往復クラッチは引き戻らないように働いて確実に両側に押圧状態で寄せられ、往復クラッチの切換わった状態を安定的に保持可能となる。
この結果、運転中の往復クラッチの「戻り現象」を押えて回転爪の安定した作動が可能となる。
【0018】
請求項2の発明にあっては、前記往復筒体が筒体ストッパに当たって定位置で停止するので、該往復筒体の前記シフトフォークが前記往復クラッチを常に定位置で停止させて、切換ギヤへ寄せ過ぎよる過度の加圧を防いで往復クラッチの磨耗・損傷を防止し、往復クラッチから切換ギヤへの円滑な回転伝達を行うことが可能となる。
【0019】
請求項3の発明にあっては、前記操作伝達部において、クランクを介して操作ワイヤ及びシャフトが手動操作部のワイヤ連結部とクラッチ作動部のシャフト連結用クランクとに連結されるので、シャフト部分ではワイヤの弛みによる不安定な緊張状態が解消され、往復クラッチの往復切換えを安定して行うことが可能となる。
【0020】
請求項4の発明にあっては、前記シフトフォークの係合部により往復筒体の回転方向が拘束されて、円滑に往復クラッチを切換ギヤ回転軸方向にスライド移動させ、前記往復クラッチの安定した切換えが可能となる。
【0021】
請求項5の発明にあっては、前記ワイヤガイド孔の設定位置で、前記操作レバーの回転附勢方向が確実に逆となってその定位置で支点越えを起こし、操作ワイヤが引き戻らないように寄せられるときの基準位置を確定することが可能となる。
【0022】
請求項6の発明にあっては、回転中軸に介装した押しバネの押圧で操作ワイヤが引かれる際に、補助収縮バネの収縮力が押しバネの収縮力に加わって前記操作レバーに作用し、操作レバーの操作抵抗をより高めることで、支点越えした操作ワイヤをさらに強く引き寄せることが可能となる。そしてその結果、往復クラッチの外れが確実に防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】手動操作部を示す側面図である。
【図2】手動操作部を示す平面図である。
【図3】操作伝達部を示す側面図である。
【図4】往復クラッチを一方側に切換えた状態の操作伝達部及びクラッチ作動部を示す部分断面平面図である
【図5】往復クラッチを他方側に切換えた状態の操作伝達部及びクラッチ作動部を示す部分断面平面図である。
【図6】補助収縮バネを備えた手動操作部を示す側面図である。
【図7】往復筒体のシフトフォークを(イ)は上が長く下が短い二つの係合部で往復クラッチのスライド溝に係止した態様を示し、(ロ)は輪状の係合部が往復クラッチのスライド溝に係止した態様を示し、(ハ)は平行スライド軸に貫装した態様を示す各クラッチ作動部の側面図である。
【図8】ロータリ伝達装置に組み込んだ本発明の操作伝達部とクラッチ作動部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明の実施形態を説明する。
本発明の対象となる「一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置」は、農業用の耕耘機に装着した複数の耕耘用回転爪が、耕耘機のエンジンやモーター等から伝達される回転がロータリに伝わりその回転が正転用と正逆転用の切換ギヤへのクラッチで交番する伝達によって正転と正逆転とに切換え可能となっている。
【0025】
前記ロータリ伝達装置のクラッチ部分は、図3、図4及び図8に示すように、エンジン等で回転する切換ギヤ回転軸24に装着した2つの切換ギヤ27、28が該切換ギヤ27、28間に装着した往復クラッチ23の往復で交番して往復クラッチの正転伝達部a
と往復クラッチの正逆転伝達部bとがそれそれ別々に切換ギヤ27、28に連絡されて切換わって回転が伝達される仕組みとなっている。
その伝達の際に両切換えギヤ27、28は、図8に示すように、チェーン及びスプロケットを介して回転爪の一部を相互に逆方向に回転させる歯車と、正方向に回転させる歯車とに連絡し、両切換ギヤ27、28から回転が別々に伝達されて正転と正逆転が切換え可能となる(図省略)。
【0026】
本発明は上記「一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置」(以下単に「ロータリ伝達装置」と呼ぶ)の切換え操作装置であり、図1及び図2に示すように、前記耕耘機(本体は図省略)のエンジン等の動力で駆動されるロータリ伝達装置における正転と正逆転の切換ギヤ27、28への切換え操作を往復クラッチ23の往復作動で行うために、前記耕耘機の運転ハンドル1に設けた操作レバー2による手動操作部Aと、図3に示すように、該手動操作部Aの作動をシャフト8などを介して前記往復クラッチ23へ伝達する操作伝達部Bと、図4及び図5に示すように、該操作伝達部Bの作動で前記ロータリ伝達装置の正転用と正逆転用の両切換ギヤ27、28への回転伝達の切換えをするための往復クラッチ23を備えたクラッチ作動部Cとで構成する。
【0027】
前記手動操作部Aは、図1及び図2に示すように、前記運転ハンドル1に固定された操作レバー取付け用金具20にレバー枢支部3を設けて、先端に握り易い形状のグリップ2bを備えた操作レバー2の中間を枢支する。
そして、該操作レバー2にワイヤ連結部2aを設けて操作ワイヤ4の基端を連結し、前記操作ワイヤ4が前記レバー枢支部3を僅かに横切って停止するよう該操作レバーの回動範囲を決めるレバーストッパ17を設ける。
【0028】
即ち、操作ワイヤ4は該操作伝達部Bを介して作動クラッチ作動部Cに繋がって前記運転ハンドル1の取付け基部方向(図の下方向)へ附勢されており、図1に示すように、前記グリップ2bで操作ワイヤ4を引く操作(図中グリップ2bを下げる操作)をしたとき、中間が枢支されている操作レバー2の他端のワイヤ連結部2aに連結している操作ワイヤ4は、当初は上に引き上げられるが、前記グリップ2bをさらに下げると、レバー枢支部3を中心にさらに上方向に回転したワイヤ連結部2aに引っ張られた操作ワイヤ4が前記レバー枢支部3を横切って所謂「支点越え」を起こす。
そして、レバー枢支部3を中心にレバーストッパ17で決まる操作レバー2の可動範囲αのうち、符号βで示した範囲に入って、操作レバー2が逆方向に附勢するように転換される。そして最後に操作レバー2はレバーストッパ17に突き当たって止まる。
このとき、操作レバー2のワイヤ連結部2aは前記操作ワイヤ4で基部方向へ引っ張られているので、その位置で引き戻らないように抑え付けられた状態(ロック状態)に保持される。
【0029】
前記「支点越え」を起こす位置は正確には前記操作ワイヤ4が引っ張られる方向で決まるので、中間に障害物がない場合には運転ハンドル1のレバー枢支部3と図6に示すワイヤ連結用クランク6の連結部6aでその位置が決まる。
前記操作ワイヤ4が過度に長いと大きな弛みが生じる場合があるので、その「支点越え」を起こす基準位置の正確さが失われることがある。このため、図1及び図2に示すように、運転ハンドル1の手元側に近い中間の最適部位に調節して前記操作ワイヤ4を通すワイヤガイド孔18を設けることで、操作レバー2の回転附勢方向の転換基準位置を確定することが好ましい。
【0030】
なお、図1及び図2中の符号25は進行速度や前進・後退及びロータリ作動を手動操作のためのハンドル平行型の操作杆で、符号26はチェンジレバーをそれぞれ示している。
本発明の操作レバー2も前記操作杆の近くに設けて、運転者が前記操作杆の操作と同様に容易に手動操作を行うことができるようにする。
【0031】
また、前記操作伝達部Bは、前記手動操作部Aとクラッチ作動部Cとの間に介在し、前記手動操作部Aのワイヤ連結部2aとクラッチ作動部Cのクランク6の連結部6aとの間に緊張させた操作ワイヤ4を含む連結部材を介して連結する。
【0032】
該連結部材にシャフト8を用いる場合は、図3に示すように、前記耕耘機の本体にクランク枢支軸5を軸支して、該クランク枢支軸5に固着したワイヤ連結用クランク6とシャフト連結用クランク7とを設け、前記ワイヤ連結用クランク6に設けた連結部6aには前記手動操作部Aの操作レバー2のワイヤ連結部2aに固定された操作ワイヤ4の末端を固定するとともに、前記シャフト連結用クランク7に設けた連結部7aには前記クラッチ作動部Cのシャフト連結用クランク9に末端部を連結したシャフト9の基端部を枢支することが可能である。
【0033】
この形態では、前記ワイヤ連結用クランク6、図3に示すように、該クランク枢支軸5の回転中心からワイヤ連結部2aまでの長さを、該クランク枢支軸5の回転中心から前記シャフト連結用クランク7の連結部7aまでの長さより長くすれば、前記操作ワイヤ4を引く力がシャフト8に大きなモーメントとなって前記クラッチ作動部Cのシャフト連結用クランク9に対して大きな動きが伝達され、より確実なクラッチ移動操作が可能となる。
なお、前記操作ワイヤ4の前記ワイヤ連結用クランク6寄りにはワイヤガイド孔19を設けて前記操作ワイヤ4をガイドさせると、長い前記操作ワイヤ4の横振れや垂れ下がりが止められるので好ましい。
【0034】
また、前記クラッチ作動部Cは、図4、図5及び図8に示すように、前記ロータリ伝達装置の一部に、一方寄りの周面に斜面押圧ピン14を突設した回転中軸10を回転可能に軸支して設けるとともに、該回転中軸10の他方寄りには前記クランク9を固着する。該前記クランク9の連結部9aには、前記シャフト8の末端部を連結する。
また、前記回転中軸10の中間部位には、回転可能且つ軸方向スライド可能に往復筒体11を貫装する。
前記往復筒体11は、その外周に、先端に前記往復クラッチ23に係合する係合部12aを備えたシフトフォーク12を形成し、また該往復筒体11の一方端には、前記斜面押圧ピン14に当接可能に対応した回転カム斜面13を形成する。
そして前記往復筒体11の他方端側には、前記回転中軸10の前記クランク9との間に押しバネ15を装着する。
【0035】
さらに、前記回転カム斜面13側の先端面に対向して前記該往復筒体11の先端面が突き当たって止まる筒体ストッパ16を、前記ロータリ伝達装置内の一部に設けることもある。
【0036】
上記クラッチ作動部Cは上記構成なので、前記操作レバー2で操作ワイヤ4を緩める操作をしたときには、図4に示すように、前記押しバネ15で押圧された前記往復筒体11が一方側へスライドして、前記回転カム斜面13で前記斜面押圧ピン14を押した状態で、該往復筒体11のシフトフォーク12に押された状態で前記往復クラッチ23が一方側に切換えられる。
また、ストッパを設けた場合は、そのストッパに突き当たって停止させることもできる。
これは前記筒体ストッパ16に突き当たる前に切換ギヤ回転軸24に装着された両側の切換ギヤ27、28に当たって停止すると、前記往復クラッチ23の接触面とが強く擦れるので摩擦が増大する場合もあるためで、前記往復筒体11の端部に対する前記筒体ストッパ16の位置は適度に接触できる位置に決めることができる。
【0037】
また、前記操作レバー2で操作ワイヤ4を引く操作をしたときには、図5に示すように、前記回転中軸10の斜面押圧ピン14が回転して、押しバネ15の附勢に抗して前記往復筒体11の回転カム斜面13が、斜面押圧ピン14に押されて他方側へスライドする。
そしてさらに、操作ワイヤ4を引いたとき、該押しバネ15の押圧により緊張している操作ワイヤ4が前記レバー枢支部3を僅かに横切って支点越えをして前記操作レバー2の回転附勢方向が逆となり、操作ワイヤ4が戻らない方向に引き寄せられて前記レバーストッパ17に操作レバー2が突き当たって前記往復筒体11が停止し、該往復筒体11のシフトフォーク12に押された状態で前記往復クラッチ23が他方側に切換えられる。
【0038】
また、前記クラッチ作動部Cの回転中軸10を回転させたときに、往復筒体11の回転方向については回転しないように拘束して軸方向にスライドさせる構造は、往復筒体11の筒部分又はそこから突出したシフトフォーク12の部分で行うことが可能である。
前記シフトフォーク12で行う場合には、図7の(イ)、(ロ)、(ハ)に示すように、前記ロータリ伝達装置の切換ギヤ回転軸24に回転可能且つスライド可能に装着した往復クラッチ23にシフトフォーク12に形成した係合部12aを係合させることで、前記往復筒体11を軸方向にスライドさせ且つ回転方向の拘束を可能とする各種形態が可能である。
【0039】
図7の(イ)に示す形態では、前記往復筒体11に形成した上が長く下が短いシフトフォーク12の二つの係合部12aが、往復クラッチ23に外周に形成したスライド溝22に両側からの挟みつけで係合された構造である。この構造では該往復筒体11が回転中軸10の軸方向に往復クラッチ23の切換ギヤ回転軸24での軸方向の移動と同調して移動可能である。
また、図7の(ロ)に示す形態では、前記往復筒体11のシフトフォーク12に設けた輪状の係合部12aが、前記往復クラッチの外周に形成したスライド溝22に係合した状態を示している。この形態は、図7の(イ)に示す形態と同様に前記往復筒体11は回転中軸10の軸方向に往復クラッチ23の軸方向の移動と同調してスライド移動が可能である。
さらに、図7の(ハ)に示す形態では、前記往復筒体11のシフトフォーク12に設けた係合部12aが往復クラッチの外周のスライド溝22に係合し、且つシフトフォーク12の中間部位には回転中軸10と平行に固定したスライド軸29を遊嵌した構造となっている。この構造では、スライド軸29で前記往復筒体11の回転が拘束され、該往復筒体11の回転は止められ、且つ回転中軸10の軸方向に前記往復筒体11がスライド移動可能としている。
【0040】
以上のような往復筒体11の回転方向の拘束は、この他にも、前記シフトフォーク12にではなく回転中軸10自体を別のガイド軸(図省略)などで回転を拘束し且つ軸方向のスライド移動を可能とする構造として行うことも可能である。
【0041】
また本発明では、前記手動操作部Aにおいて、図6に示すように、運転ハンドル1のレバー枢支部3とワイヤ連結用クランク6との中間部位に設けた補助収縮バネ固定部21aに補助収縮バネ21の一端部を繋ぎ、該補助収縮バネ21の他端部を操作レバー2のワイヤ連結部2a付近に繋いだ形態も可能である。
【0042】
この形態では、前記操作レバー2の操作で、前記操作ワイヤ4とほぼ同じタイミングで補助収縮バネ21が前記レバー枢支部3に対して支点越えを起こすことができる。
そして前記補助収縮バネ21の一端部の固定位置となる補助収縮バネ固定部21aを上側のワイヤガイド孔18と前記レバー枢支部3を結ぶ線上に設けると、前記操作ワイヤ4は全く同じタイミングで支点越えを起こさせることができ、この補助収縮バネ21の引く力によって、強い力で支点越えを起こし前記操作レバー2の戻りを強く防止することが可能となる。
【0043】
図6には、前記ワイヤガイド孔18と前記レバー枢支部3を結ぶ線上よりも前記操作ワイヤ4が支点越えした側の上部の前記レバー枢支部3より少し下の位置に補助収縮バネ固定部21aを設けた場合を示している。
この場合、操作ワイヤ4の方では、グリップ2bを押して操作ワイヤ4を引く操作(図中グリップ2bを下げる操作)をしたとき、操作伝達部Bを介してクラッチ作動部Cに繋がっている操作ワイヤ4は前記運転ハンドル1の取付け基部方向(図6の下方向)へ引っ張られているので、前記レバー枢支部3を横切る位置で支点越えを起こす。
そして、その位置で操作レバー2がレバー枢支部3を中心に操作レバー2のレバーストッパ17で決まる可動範囲のα1のうち、符号β1で示した範囲では逆回転する附勢に変わる。
さらに、最後に前記操作レバー2がレバーストッパ17に当たって止まり、その位置で前記操作レバー2が引き戻らないように附勢された状態に寄せられて固定される。
これに加えて、前記補助収縮バネ21の方では、操作ワイヤ4の方に先立って支点越えを起こし、操作ワイヤ4を引く前記押しバネ15の附勢力と補助収縮バネ21の力が相俟って大きな強度で操作レバー2に作用し、戻り難い強力な支点越えが可能となる。
【0044】
以上の如く本発明は、上記各発明のクラッチ作動部Cが、前記ロータリ伝達装置を備えた耕耘機のロータリ装置内において切換ギヤ27、28と連絡される。
そして、正転並びに正逆転の切換え操作が往復クラッチを両側にそれぞれ押圧されて寄せ付けられた状態が保持されることで、回転爪の確実な切換え運転が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、耕耘機のエンジン等の動力で駆動される一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置において正転及び正逆転に回転を転換するための操作装置であるが、正逆転と逆転とに回転の切換えを行う装置にも利用が可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1 運転ハンドル
2 操作レバー
2a ワイヤ基端固定部
2b グリップ
3 レバー枢支部
4 操作ワイヤ
5 クランク枢支軸
6 ワイヤ連結用のクランク
6a 連結部
7 シャフト連結用のクランク
7a 連結部
8 シャフト
9 シャフト連結用のクランク
9a 連結部
10 回転中軸
11 往復筒体
12 シフトフォーク
12a 係合部
13 回転カム斜面
14 斜面押圧ピン
15 押しバネ
16 筒体ストッパ
17 レバーストッパ
18 ワイヤガイド孔
19 ワイヤガイド孔
20 操作レバー取付け用金具
21 補助収縮バネ
22 スライド溝
23 往復クラッチ
24 切換ギヤ回転軸
27 切換ギヤ
28 切換ギヤ
25 操作杆
26 チェンジレバー
29 平行スライド軸
A 手動操作部
B 操作伝達部
C クラッチ作動部
a 往復クラッチの正転伝達部
b 往復クラッチの正逆転伝達部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘機のエンジン又はモーターの動力で駆動される一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置における正転と正逆転の切換ギヤへの切換え操作を往復クラッチの往復作動で行うために、耕耘機の運転ハンドルに設けた操作レバーによる手動操作部と、該手動操作部の作動を前記往復クラッチへ伝達する操作伝達部と、該操作伝達部の作動で前記ロータリ伝達装置の両切換ギヤへの回転伝達の切換えをするための往復クラッチを備えたクラッチ作動部とから成り、
前記手動操作部は、前記運転ハンドルに固定された操作レバー取付け用金具にレバー枢支部を設けて操作レバーを枢支し、該操作レバーにワイヤ連結部を設けて操作ワイヤの基端を連結し、前記操作ワイヤが前記レバー枢支部を僅かに横切って停止するよう該操作レバーの回動範囲を決めるレバーストッパを設けて成り、
前記操作伝達部は、前記手動操作部のワイヤ連結部とクラッチ作動部のクランクの連結部との間に緊張させた操作ワイヤを含む連結部材を介して連結して成り、
前記クラッチ作動部は、前記ロータリ伝達装置の一部に、一方端寄りの周面には斜面押圧ピンを突設するとともに他方端寄りには前記クランクを固着した回転中軸を軸支し、該回転中軸の中間には、一方端には前記斜面押圧ピンに当接可能に対応した回転カム斜面を形成し、外周には前記往復クラッチに係合する係合部を備えたシフトフォークを突設した往復筒体を軸方向スライド可能に貫装し、該往復筒体の他方端と前記回転中軸のクランクとの間には押しバネを介装して成り、
前記往復クラッチがいずれの側においてもその側へシフトフォークに押圧された状態で切換えられるようにしたことを特徴とする一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置の切換え操作装置。
【請求項2】
往復筒体の回転カム斜面側の先端面が突き当たって止まる筒体ストッパを前記ロータリ伝達装置の一部に設けたことを特徴とする請求項1に記載の一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置の切換え操作装置。
【請求項3】
操作伝達部が、前記耕耘機の本体にクランク枢支軸を軸支して、該クランク枢支軸に固着したワイヤ連結用クランクとシャフト連結用クランクとを設け、前記ワイヤ連結用クランクに設けた連結部には前記手動操作部のワイヤ連結部に固定された操作ワイヤの末端を固定するとともに前記シャフト連結用クランクに設けた連結部には前記クラッチ作動部のシャフト連結用クランクに末端部を連結したシャフトの基端部を枢支したことを特徴とする請求項1又は2に記載の一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置の切換え操作装置。
【請求項4】
回転中軸を軸方向にスライド可能とした往復筒体の回転方向の拘束が、前記ロータリ伝達装置の切換ギヤ回転軸にスライド可能に装着した往復クラッチに係合したシフトフォークで行われることを特徴とする請求項1から3のうちのいずれかに記載の一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置の切換え操作装置。
【請求項5】
運転ハンドルのレバー枢支部とワイヤ連結用クランクとの中間部位に操作ワイヤを通すワイヤガイド孔を設けて操作レバーの回転附勢方向の転換基準位置を確定したことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれかに記載の一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置の切換え操作装置。
【請求項6】
運転ハンドルのレバー枢支部とワイヤ連結用クランクとの中間部位に補助収縮バネの一端部を繋ぎ、該補助収縮バネの他端部を操作レバーのワイヤ連結部付近に繋いだことを特徴とする請求項1から5のうちのいずれかに記載の一軸上ないし同軸上正転並びに正逆転切換えロータリ伝達装置の切換え操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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