下地取付け金具及びそれを使用したコンクリート系パネルの取付構造
【課題】 コンクリート系パネルを基礎部又は床に取付ける際の下地鋼材の取付けを容易にするとともに、パネルの取付けを効率よく実施でき、かつ、コンクリート系パネルと干渉しない下地取付け金具とコンクリート系パネルの取付構造を提供する。
【解決手段】 建築物の固定部材にコンクリート系パネルを取付ける際に、下地鋼材を基礎部にあらかじめ設置されたアンカーと接合を行うために使用する下地取付け金具であって、方形鋼板の一片に長穴状の切り欠きを有し、基礎部又は床部に設けられたアンカーをこの長穴状きり欠きに挿入し、位置を調整した後に下地鋼材に固定する。
【解決手段】 建築物の固定部材にコンクリート系パネルを取付ける際に、下地鋼材を基礎部にあらかじめ設置されたアンカーと接合を行うために使用する下地取付け金具であって、方形鋼板の一片に長穴状の切り欠きを有し、基礎部又は床部に設けられたアンカーをこの長穴状きり欠きに挿入し、位置を調整した後に下地鋼材に固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート系パネルを建築物の基礎部又は床部に取付けて壁を構成するために使用する下地取付け金具及びコンクリート系パネルの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート系パネルを建築物の躯体に取付けるには従来から様々な構造がある。
例えば図10に示されるコンクリート系パネルの取付構造は、基礎コンクリート5に設置されたアンカー6頭部を溶接用座金20の丸穴11に挿入して固定し、下地鋼材2と溶接用座金20を溶接により固定してある。しかる後、コンクリート系パネル取付け金具3にコンクリート系パネル取付け用アンカー8とコンクリート系パネル取付け用ボルト7を介してコンクリート系パネル4を固定し、このコンクリート系パネル取付け金具3を下地鋼材2に溶接してコンクリート系パネル4を取付ける方法である。
【0003】
この時に使用する溶接用座金20は、例えば図7に示すように、アンカーと下地鋼材との位置調整用に丸穴11が、方形鋼板1に偏芯してあけられており、溶接用座金20を回転することにより、段階的に位置調整をして固定するものがある。(例えば、非特許文献1参照。)
あるいはまた、図8に示されるように、アンカーと下地鋼材との位置調整用に方形鋼板1に長穴9があけられており、一方向のみに下地アングルと溶接用座金30の寸法調整が出来るものが提案されている。
さらに図9に示した溶接用座金40は、方形鋼板1の中央に長穴9があけられており、長穴9の部分で方形鋼板1を断面S字状に折り曲げてあるものも提案されている。この溶接用座金40は、図11に示すように下地鋼材2を基礎コンクリート5に仮置きした後、アンカー6に溶接用座金40をかぶせて、下地鋼材2とアンカー6を溶接して固定するものである(例えば、特許文献1参照。)。
床にコンクリート系パネルを設置する場合には、図7、図8、図9に示した溶接用座金20,30,40は、基礎コンクリート5部に用いられる取付け方法を準用して使用する。
【非特許文献1】クリオン株式会社 テクニカルハンドブック 2006年5月発行 P.104及びP.337
【特許文献1】特開平9−279603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンカー設置作業は、コンクリート系パネル工事の範囲に入らず、アンカー筋の場合はコンクリート打設作業時に予めコンクリート打設作業者により行われ、後打ちアンカーの場合はコンクリート打設作業後に作業者により設置作業が行われ、そのアンカー設置精度は、コンクリート系パネルを取付ける作業に必要な精度が保たれていない問題があった。
【0005】
しかし、図7に示した溶接用座金20は、アンカーと下地鋼材との位置調整は4辺のいずれかを使用して段階的にしか出来ないので、微細な調整がしにくいとの問題があった。アンカーと下地鋼材の間隔調整範囲が限られているため、溶接用座金の使用が不可能となる問題点があった。
また、図8に示した溶接用座金30は、長穴が明けられているが長穴の全周に縁があるため、方形鋼板の向きによっては調整出来る範囲が狭いという問題点があった。
さらに、図9に示される溶接用座金40は、下地鋼材の上にかぶさる形状のため、下地鋼材の上に溶接用座金が突出してしまうので、地震時の建物の揺れに際してコンクリート系パネルが振動した場合に、溶接用座金と干渉し合ってコンクリート系パネルの免震機構を阻害すると共に、コンクリート系パネルの取付け金具等と干渉し、施工するうえで障害となる問題があった。また、干渉する部分を溶接用座金の形状に合わせてはつるなど、施工性に問題があった。
コンクリート系パネルを床面に取付ける際に、図7、図8、図9等に示される溶接用座金を使用する場合にも、同様にアンカーと下地鋼材の間隔の調整範囲が限られているため、溶接用座金の使用が不可能となる問題があった。
【0006】
そこでこの発明は、アンカーと下地鋼材との位置調整を簡単にできるようにすると共に、調整範囲を拡大することを目的としたものである。
この発明は図9に示した溶接用座金のように、下地鋼材の上に座金が突出しないため、下地鋼材の上に設置されるコンクリート系パネルとの干渉を生じさせないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンクリート系パネルを建物の基礎部又は床面に取付けて壁を形成する場合に、下地取付け金具に設けられた長穴状の切り欠きにより、調整範囲を大きく取ることが出来るようにしたものである。
すなわち、本発明の下地取付け金具は、方形鋼板の一片に長穴状の切り欠きを有する下地取付け金具とした。
本発明の下地取付け金具では、前記方形鋼板として長方形のものを使用することができる。その場合には、前記長穴状の切り欠きを長方形の長辺に沿って設けたものとすることが好ましい。
【0008】
また、本発明のコンクリート系パネルの取付け構造は、建物の基礎部にコンクリート系パネルを取付ける際に、基礎コンクリートに設置されたアンカー頭部に前記本発明の下地取付け金具の長穴状の切り欠きを挿入して、位置を調整した後、溶接又はナットで締め付けて固定し、該下地取付け金具を前記コンクリート系パネル下端部に設ける下地鋼材に密着させて溶接固定し、さらに下地鋼材にコンクリート系パネル取付け用ボルト及びコンクリート系パネル取付け用アンカーを介してコンクリート系パネルを取付けて、コンクリート系パネルを建物の基礎部に取付けたコンクリート系パネルの取付け構造とした。
本発明のコンクリート系パネルの取付構造においては、前記下地取付け金具を下地鋼材に固定する際に、下地鋼材と同じ厚さの下地取付け金具を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の下地取付け金具は、長方形又は正方形の鋼板に設けられた長穴状の切り欠きにより、アンカーと下地鋼材との間隔の調整が容易に出来るため、コンクリート系パネルの下地鋼材取付け作業の施工性を向上させることが出来る。また、下地取付け金具の厚さを下地鋼材の厚さと同等以下にしておけば、下地鋼材の上部に下地取付け金具が突出しないため、コンクリート系パネルとの干渉を生じないので、地震時の揺れによるコンクリート系パネルの破損を防止するとともに、施工に際してコンクリート系パネルの取付金具との干渉を考慮しなくて良いので、コンクリート系パネルの施工性を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の下地取付け金具の一実施形態を図面によって説明する。図1は本発明の下地取付け金具の一実施形態を示す外観斜視図である。
本発明の下地取付け金具10は、方形鋼板1の一辺に長穴状の切り欠き12を有するものである。この長穴状の切り欠き12は、基礎部又は床の下地鋼材にコンクリート系パネルを設置する際に、基礎コンクリート又は床に設置されたアンカー頭部をこの長穴状の切り欠き12に挿入するが、その際にアンカーの施工精度に左右されずに位置を調整することが出来る作用効果を発揮する。
方形鋼板1は、正方形であっても長方形であってもいずれでも良い。長方形の鋼板を使用する場合には、長辺に沿って長穴状の切り欠き12を設け、短辺に切り欠きの開口を設けるのがよい。
方形鋼板1の厚さは、使用する下地鋼材の底辺の厚さと同じにするのが好ましい。このようにしておけば、取り付ける際に下地取付け金具が突出せず、下地鋼材の上部に設置されるコンクリート系パネルと下地取付け金具が干渉しないので、安定して固定することが可能となる。
方形鋼板1の大きさ及び長穴状の切り欠き12の大きさは、使用するアンカーの太さを考慮して、ナットで固定するのに十分な面積を確保できる大きさに設定すればよい。
【0011】
本発明にかかわる下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造を図2で説明する。図2は基礎部に本発明にかかわる下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造の一例を示す外観斜視図である。
このコンクリート系パネルの取付け構造においては、基礎コンクリート5に設置されたアンカー6に下地取付け金具10の長穴状切り欠き12を挿入し、下地鋼材2と下地取付け金具10の間隔を調整後、下地取付け金具10を下地鋼材2に溶接固定する。
下地鋼材2にはコンクリート系パネル固定金具3を固定し、コンクリート系パネル固定金具3に立てたコンクリート系パネル用アンカー8をコンクリート系パネル4の固定用孔に差し込んで、コンクリート系パネルを固定する。
【0012】
同様に図3は、本発明の下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造の他の例を示す斜視図である。
このコンクリート系パネルの取付構造では、下地鋼材2としてアングル鋼材を使用し、アンカー6に本発明の下地取付け金具10の長穴状の切り欠き12を挿入して位置を調整した後、アングル鋼材の底辺2aに本発明の下地取付け金具10を溶接固定し、アングル鋼材の垂直辺2bにコンクリート系パネル固定金具3を溶接固定する。コンクリート系パネル固定金具3にはコンクリート系パネル取付け用ボルト7が水平に固定されており、このコンクリート系パネル取付け用ボルト7をコンクリート系パネル4内に埋設したコンクリート系パネル取付け用アンカー8に挿入することによりコンクリート系パネル4を建物の基礎コンクリート5に固定する。
【0013】
図4は、床部に使用する際の本発明の下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造の一例を説明する斜視図である。
このコンクリート系パネルの取付け構造では、建物のコンクリート床14に複数の対になったアンカー6,6′が埋設されており、コンクリート床14上にこれらアンカー6,6′に挟まれるようにして下地鋼材2が置かれている。各アンカー6,6′に本発明の下地取付け金具10の長穴状切り欠き12を挿入し、下地鋼材2と下地取付け金具10の間隔を調整した後、下地取付け金具10を下地鋼材2に溶接して固定する。下地鋼材2を介してコンクリート系パネルを取付ける方法は、前述のいずれの方法を用いても良いので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0014】
同様に、図5も床部に使用する際の本発明の下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造の他の例を説明する斜視図である。
このコンクリート系パネルの取付け構造の例では、建物のコンクリート床14に複数のアンカー6・・・・,6′・・・・が千鳥状に埋設されており、これら千鳥になったアンカー6・・・・,6′・・・・の間に下地鋼材2が置かれている。アンカー6,6′に本発明の下地取付け金具10の長穴状の切り欠き12を挿入して下地鋼材2と下地取付け金具10の間隔を調整後、下地取付け金具10を下地鋼材2に溶接にて固定する。この場合も下地鋼材2を介してコンクリート系パネルを取付ける方法は、前述のいずれの方法を用いても良いので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0015】
本発明で使用する下地取付け金具は方形鋼板に設けられた長穴状の切り欠きを有するので、アンカーと下地取付け金具との間隔の調整を容易にすることができる。
図6に本発明のコンクリート系パネルの取付構造におけるアンカー6と下地取付け金具10の長穴状切り欠き12との位置関係を例示する。図中13は下地取付け金具10の長穴状切り欠き12の長手方向の中心線である。
図において、(a)はアンカー6が下地鋼材2と適度の距離を保って配置されている場合で、アンカー6は下地取付け金具10の長穴状切り欠き12のほぼ中央にくる。
(b)はアンカー6が下地鋼材2に接している場合で、アンカー6は下地取付け金具10の長穴状切り欠き12の先端にくる。
(c)はアンカー6が下地鋼材2から離れた場合を示す。アンカー6は下地取付け金具10の長穴状切り欠き12の最奥部にくる。なお、アンカー6が長穴状切り欠き12長さ以上に下地鋼材2から離れた場合には、下地取付け金具は使用できなくなるので、アンカー6と下地鋼材2との位置関係には一定の限度があるのは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の下地取付け金物の斜視図である。
【図2】本発明のコンクリート系パネルの取付構造の一例を説明する斜視図である。
【図3】本発明のコンクリート系パネルの取付構造の他の例を説明する斜視図である
【図4】床部にコンクリート系パネルを取付ける本発明のコンクリート系パネルの取付構造の一例を説明する斜視図である。
【図5】床部にコンクリート系パネルを取付ける本発明のコンクリート系パネルの取付構造の他の例を説明する斜視図である。
【図6】下地取付け金物とアンカーの位置関係を説明する図であって、(a)は、アンカーが長穴状切り欠きのほぼ中央に位置する場合、(b)はアンカーが下地鋼材に接して位置する場合、(c)はアンカーが下地鋼材から離れて位置する場合を示す。
【図7】従来の溶接用金具の一例を説明する図である。
【図8】従来の溶接用金具の他の例を示す平面図である。
【図9】従来の溶接用金具の別の例を示す外観斜視図である。
【図10】従来の溶接用金具を用いたコンクリート系パネルの取付構造の一例を説明する斜視図である。
【図11】従来の溶接用金具を用いたコンクリート系パネルの取付構造の他の例を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1 方形鋼板
2 下地鋼材
3 コンクリート系パネル取付け金具
4 コンクリート系パネル
5 基礎コンクリート
6,6′ アンカー
7 コンクリート系パネル取付け用ボルト
8 コンクリート系パネル取付け用アンカー
9 長穴
10 下地取付け金具
11 丸穴
12 長穴状の切り欠き
13 アンカー芯
14 コンクリート床
20,30,40 溶接用座金
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート系パネルを建築物の基礎部又は床部に取付けて壁を構成するために使用する下地取付け金具及びコンクリート系パネルの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート系パネルを建築物の躯体に取付けるには従来から様々な構造がある。
例えば図10に示されるコンクリート系パネルの取付構造は、基礎コンクリート5に設置されたアンカー6頭部を溶接用座金20の丸穴11に挿入して固定し、下地鋼材2と溶接用座金20を溶接により固定してある。しかる後、コンクリート系パネル取付け金具3にコンクリート系パネル取付け用アンカー8とコンクリート系パネル取付け用ボルト7を介してコンクリート系パネル4を固定し、このコンクリート系パネル取付け金具3を下地鋼材2に溶接してコンクリート系パネル4を取付ける方法である。
【0003】
この時に使用する溶接用座金20は、例えば図7に示すように、アンカーと下地鋼材との位置調整用に丸穴11が、方形鋼板1に偏芯してあけられており、溶接用座金20を回転することにより、段階的に位置調整をして固定するものがある。(例えば、非特許文献1参照。)
あるいはまた、図8に示されるように、アンカーと下地鋼材との位置調整用に方形鋼板1に長穴9があけられており、一方向のみに下地アングルと溶接用座金30の寸法調整が出来るものが提案されている。
さらに図9に示した溶接用座金40は、方形鋼板1の中央に長穴9があけられており、長穴9の部分で方形鋼板1を断面S字状に折り曲げてあるものも提案されている。この溶接用座金40は、図11に示すように下地鋼材2を基礎コンクリート5に仮置きした後、アンカー6に溶接用座金40をかぶせて、下地鋼材2とアンカー6を溶接して固定するものである(例えば、特許文献1参照。)。
床にコンクリート系パネルを設置する場合には、図7、図8、図9に示した溶接用座金20,30,40は、基礎コンクリート5部に用いられる取付け方法を準用して使用する。
【非特許文献1】クリオン株式会社 テクニカルハンドブック 2006年5月発行 P.104及びP.337
【特許文献1】特開平9−279603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンカー設置作業は、コンクリート系パネル工事の範囲に入らず、アンカー筋の場合はコンクリート打設作業時に予めコンクリート打設作業者により行われ、後打ちアンカーの場合はコンクリート打設作業後に作業者により設置作業が行われ、そのアンカー設置精度は、コンクリート系パネルを取付ける作業に必要な精度が保たれていない問題があった。
【0005】
しかし、図7に示した溶接用座金20は、アンカーと下地鋼材との位置調整は4辺のいずれかを使用して段階的にしか出来ないので、微細な調整がしにくいとの問題があった。アンカーと下地鋼材の間隔調整範囲が限られているため、溶接用座金の使用が不可能となる問題点があった。
また、図8に示した溶接用座金30は、長穴が明けられているが長穴の全周に縁があるため、方形鋼板の向きによっては調整出来る範囲が狭いという問題点があった。
さらに、図9に示される溶接用座金40は、下地鋼材の上にかぶさる形状のため、下地鋼材の上に溶接用座金が突出してしまうので、地震時の建物の揺れに際してコンクリート系パネルが振動した場合に、溶接用座金と干渉し合ってコンクリート系パネルの免震機構を阻害すると共に、コンクリート系パネルの取付け金具等と干渉し、施工するうえで障害となる問題があった。また、干渉する部分を溶接用座金の形状に合わせてはつるなど、施工性に問題があった。
コンクリート系パネルを床面に取付ける際に、図7、図8、図9等に示される溶接用座金を使用する場合にも、同様にアンカーと下地鋼材の間隔の調整範囲が限られているため、溶接用座金の使用が不可能となる問題があった。
【0006】
そこでこの発明は、アンカーと下地鋼材との位置調整を簡単にできるようにすると共に、調整範囲を拡大することを目的としたものである。
この発明は図9に示した溶接用座金のように、下地鋼材の上に座金が突出しないため、下地鋼材の上に設置されるコンクリート系パネルとの干渉を生じさせないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンクリート系パネルを建物の基礎部又は床面に取付けて壁を形成する場合に、下地取付け金具に設けられた長穴状の切り欠きにより、調整範囲を大きく取ることが出来るようにしたものである。
すなわち、本発明の下地取付け金具は、方形鋼板の一片に長穴状の切り欠きを有する下地取付け金具とした。
本発明の下地取付け金具では、前記方形鋼板として長方形のものを使用することができる。その場合には、前記長穴状の切り欠きを長方形の長辺に沿って設けたものとすることが好ましい。
【0008】
また、本発明のコンクリート系パネルの取付け構造は、建物の基礎部にコンクリート系パネルを取付ける際に、基礎コンクリートに設置されたアンカー頭部に前記本発明の下地取付け金具の長穴状の切り欠きを挿入して、位置を調整した後、溶接又はナットで締め付けて固定し、該下地取付け金具を前記コンクリート系パネル下端部に設ける下地鋼材に密着させて溶接固定し、さらに下地鋼材にコンクリート系パネル取付け用ボルト及びコンクリート系パネル取付け用アンカーを介してコンクリート系パネルを取付けて、コンクリート系パネルを建物の基礎部に取付けたコンクリート系パネルの取付け構造とした。
本発明のコンクリート系パネルの取付構造においては、前記下地取付け金具を下地鋼材に固定する際に、下地鋼材と同じ厚さの下地取付け金具を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の下地取付け金具は、長方形又は正方形の鋼板に設けられた長穴状の切り欠きにより、アンカーと下地鋼材との間隔の調整が容易に出来るため、コンクリート系パネルの下地鋼材取付け作業の施工性を向上させることが出来る。また、下地取付け金具の厚さを下地鋼材の厚さと同等以下にしておけば、下地鋼材の上部に下地取付け金具が突出しないため、コンクリート系パネルとの干渉を生じないので、地震時の揺れによるコンクリート系パネルの破損を防止するとともに、施工に際してコンクリート系パネルの取付金具との干渉を考慮しなくて良いので、コンクリート系パネルの施工性を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の下地取付け金具の一実施形態を図面によって説明する。図1は本発明の下地取付け金具の一実施形態を示す外観斜視図である。
本発明の下地取付け金具10は、方形鋼板1の一辺に長穴状の切り欠き12を有するものである。この長穴状の切り欠き12は、基礎部又は床の下地鋼材にコンクリート系パネルを設置する際に、基礎コンクリート又は床に設置されたアンカー頭部をこの長穴状の切り欠き12に挿入するが、その際にアンカーの施工精度に左右されずに位置を調整することが出来る作用効果を発揮する。
方形鋼板1は、正方形であっても長方形であってもいずれでも良い。長方形の鋼板を使用する場合には、長辺に沿って長穴状の切り欠き12を設け、短辺に切り欠きの開口を設けるのがよい。
方形鋼板1の厚さは、使用する下地鋼材の底辺の厚さと同じにするのが好ましい。このようにしておけば、取り付ける際に下地取付け金具が突出せず、下地鋼材の上部に設置されるコンクリート系パネルと下地取付け金具が干渉しないので、安定して固定することが可能となる。
方形鋼板1の大きさ及び長穴状の切り欠き12の大きさは、使用するアンカーの太さを考慮して、ナットで固定するのに十分な面積を確保できる大きさに設定すればよい。
【0011】
本発明にかかわる下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造を図2で説明する。図2は基礎部に本発明にかかわる下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造の一例を示す外観斜視図である。
このコンクリート系パネルの取付け構造においては、基礎コンクリート5に設置されたアンカー6に下地取付け金具10の長穴状切り欠き12を挿入し、下地鋼材2と下地取付け金具10の間隔を調整後、下地取付け金具10を下地鋼材2に溶接固定する。
下地鋼材2にはコンクリート系パネル固定金具3を固定し、コンクリート系パネル固定金具3に立てたコンクリート系パネル用アンカー8をコンクリート系パネル4の固定用孔に差し込んで、コンクリート系パネルを固定する。
【0012】
同様に図3は、本発明の下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造の他の例を示す斜視図である。
このコンクリート系パネルの取付構造では、下地鋼材2としてアングル鋼材を使用し、アンカー6に本発明の下地取付け金具10の長穴状の切り欠き12を挿入して位置を調整した後、アングル鋼材の底辺2aに本発明の下地取付け金具10を溶接固定し、アングル鋼材の垂直辺2bにコンクリート系パネル固定金具3を溶接固定する。コンクリート系パネル固定金具3にはコンクリート系パネル取付け用ボルト7が水平に固定されており、このコンクリート系パネル取付け用ボルト7をコンクリート系パネル4内に埋設したコンクリート系パネル取付け用アンカー8に挿入することによりコンクリート系パネル4を建物の基礎コンクリート5に固定する。
【0013】
図4は、床部に使用する際の本発明の下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造の一例を説明する斜視図である。
このコンクリート系パネルの取付け構造では、建物のコンクリート床14に複数の対になったアンカー6,6′が埋設されており、コンクリート床14上にこれらアンカー6,6′に挟まれるようにして下地鋼材2が置かれている。各アンカー6,6′に本発明の下地取付け金具10の長穴状切り欠き12を挿入し、下地鋼材2と下地取付け金具10の間隔を調整した後、下地取付け金具10を下地鋼材2に溶接して固定する。下地鋼材2を介してコンクリート系パネルを取付ける方法は、前述のいずれの方法を用いても良いので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0014】
同様に、図5も床部に使用する際の本発明の下地取付け金具を使用したコンクリート系パネルの取付け構造の他の例を説明する斜視図である。
このコンクリート系パネルの取付け構造の例では、建物のコンクリート床14に複数のアンカー6・・・・,6′・・・・が千鳥状に埋設されており、これら千鳥になったアンカー6・・・・,6′・・・・の間に下地鋼材2が置かれている。アンカー6,6′に本発明の下地取付け金具10の長穴状の切り欠き12を挿入して下地鋼材2と下地取付け金具10の間隔を調整後、下地取付け金具10を下地鋼材2に溶接にて固定する。この場合も下地鋼材2を介してコンクリート系パネルを取付ける方法は、前述のいずれの方法を用いても良いので、ここでは詳しい説明は省略する。
【0015】
本発明で使用する下地取付け金具は方形鋼板に設けられた長穴状の切り欠きを有するので、アンカーと下地取付け金具との間隔の調整を容易にすることができる。
図6に本発明のコンクリート系パネルの取付構造におけるアンカー6と下地取付け金具10の長穴状切り欠き12との位置関係を例示する。図中13は下地取付け金具10の長穴状切り欠き12の長手方向の中心線である。
図において、(a)はアンカー6が下地鋼材2と適度の距離を保って配置されている場合で、アンカー6は下地取付け金具10の長穴状切り欠き12のほぼ中央にくる。
(b)はアンカー6が下地鋼材2に接している場合で、アンカー6は下地取付け金具10の長穴状切り欠き12の先端にくる。
(c)はアンカー6が下地鋼材2から離れた場合を示す。アンカー6は下地取付け金具10の長穴状切り欠き12の最奥部にくる。なお、アンカー6が長穴状切り欠き12長さ以上に下地鋼材2から離れた場合には、下地取付け金具は使用できなくなるので、アンカー6と下地鋼材2との位置関係には一定の限度があるのは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の下地取付け金物の斜視図である。
【図2】本発明のコンクリート系パネルの取付構造の一例を説明する斜視図である。
【図3】本発明のコンクリート系パネルの取付構造の他の例を説明する斜視図である
【図4】床部にコンクリート系パネルを取付ける本発明のコンクリート系パネルの取付構造の一例を説明する斜視図である。
【図5】床部にコンクリート系パネルを取付ける本発明のコンクリート系パネルの取付構造の他の例を説明する斜視図である。
【図6】下地取付け金物とアンカーの位置関係を説明する図であって、(a)は、アンカーが長穴状切り欠きのほぼ中央に位置する場合、(b)はアンカーが下地鋼材に接して位置する場合、(c)はアンカーが下地鋼材から離れて位置する場合を示す。
【図7】従来の溶接用金具の一例を説明する図である。
【図8】従来の溶接用金具の他の例を示す平面図である。
【図9】従来の溶接用金具の別の例を示す外観斜視図である。
【図10】従来の溶接用金具を用いたコンクリート系パネルの取付構造の一例を説明する斜視図である。
【図11】従来の溶接用金具を用いたコンクリート系パネルの取付構造の他の例を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1 方形鋼板
2 下地鋼材
3 コンクリート系パネル取付け金具
4 コンクリート系パネル
5 基礎コンクリート
6,6′ アンカー
7 コンクリート系パネル取付け用ボルト
8 コンクリート系パネル取付け用アンカー
9 長穴
10 下地取付け金具
11 丸穴
12 長穴状の切り欠き
13 アンカー芯
14 コンクリート床
20,30,40 溶接用座金
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎部又は床にコンクリート系パネルを取付ける際に、該コンクリート系パネル下端部に設ける下地鋼材を取付ける金具であって、方形鋼板の一片に長穴状の切り欠きを有することを特徴とする下地取付け金具。
【請求項2】
前記方形鋼板が長方形であることを特徴とする請求項1に記載の下地取付け金具。
【請求項3】
前記長穴状の切り欠きが長方形の長辺に沿って設けられてなることを特徴とする請求項2に記載の下地取付け金具。
【請求項4】
建物の基礎部又は床にコンクリート系パネルを取付ける際に、基礎コンクリートに設置されたアンカー頭部に前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の下地取付け金具の長穴状の切り欠きを挿入して、位置を調整した後、溶接又はナットで締め付けて固定し、該下地取付け金具を前記コンクリート系パネル下端部に設ける下地鋼材に密着させて溶接固定し、さらに下地鋼材にコンクリート系パネル取付け用ボルト及びコンクリート系パネル取付け用アンカーを介してコンクリート系パネルを取付けて、コンクリート系パネルを建物の基礎部に取付けてなることを特徴とするコンクリート系パネルの取付け構造。
【請求項5】
前記下地取付け金具を下地鋼材に固定する際に、下地鋼材と同じ厚さの下地取付け金具を使用することを特徴とする請求項4に記載のコンクリート系パネルの取付構造。
【請求項1】
建物の基礎部又は床にコンクリート系パネルを取付ける際に、該コンクリート系パネル下端部に設ける下地鋼材を取付ける金具であって、方形鋼板の一片に長穴状の切り欠きを有することを特徴とする下地取付け金具。
【請求項2】
前記方形鋼板が長方形であることを特徴とする請求項1に記載の下地取付け金具。
【請求項3】
前記長穴状の切り欠きが長方形の長辺に沿って設けられてなることを特徴とする請求項2に記載の下地取付け金具。
【請求項4】
建物の基礎部又は床にコンクリート系パネルを取付ける際に、基礎コンクリートに設置されたアンカー頭部に前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の下地取付け金具の長穴状の切り欠きを挿入して、位置を調整した後、溶接又はナットで締め付けて固定し、該下地取付け金具を前記コンクリート系パネル下端部に設ける下地鋼材に密着させて溶接固定し、さらに下地鋼材にコンクリート系パネル取付け用ボルト及びコンクリート系パネル取付け用アンカーを介してコンクリート系パネルを取付けて、コンクリート系パネルを建物の基礎部に取付けてなることを特徴とするコンクリート系パネルの取付け構造。
【請求項5】
前記下地取付け金具を下地鋼材に固定する際に、下地鋼材と同じ厚さの下地取付け金具を使用することを特徴とする請求項4に記載のコンクリート系パネルの取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−214871(P2008−214871A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49735(P2007−49735)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(399117730)住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(399117730)住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
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