説明

中耕散布作業機

【課題】前後バランスを良くしながら左右何れの側からも楽に乗降できる中耕散布作業機を具現する。
【解決手段】走行車台(2)の前後左右両側に左右前輪(3,3)と左右後輪(4,4)を設け、走行車台(2)の後側部左右中央に操縦席(7)を設けると共に、操縦席(7)の前方にステアリングハンドル(8)を設け、走行車台(2)の後側部には操縦席(7)の左右両側に位置するように左右薬液タンク(9,9)を配設する。そして、この左右薬液タンク(9,9)全体を後輪(4,4)の後車軸(4a)よりも前方に配置すると共に、左右薬液タンク(9,9)の前側端部を操縦席(7)の前側端部よりも後方に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、粉体あるいは粒体の薬剤、肥料等を作物や圃場に散布する散布作業をしたり、中耕除草作業をする中耕散布作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中耕散布作業機において、走行車台の後部に、操縦席の後方を覆うように薬液タンクを配設し、この薬液タンクの左右両側部に開閉蓋で開閉できる補給口を設け、薬液タンクの後側中央部には昇降リンク機構の一部が入り込む凹部を構成したものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−87026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような構成では、薬液タンクの形状が複雑になってコスト高となり、また、薬液タンクの後側部が後輪の車軸から後方へ張り出し、機体の前後バランスが悪くなるという不具合があった。そこで、この発明はこのような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、走行車台(2)の前後左右両側に左右前輪(3,3)と左右後輪(4,4)を設け、前記走行車台(2)の後側部左右中央に操縦席(7)を設けると共に、該操縦席(7)の前方にステアリングハンドル(8)を設け、前記走行車台(2)の後側左右には前記操縦席(7)の左右両側に位置するように左右薬液タンク(9,9)を配設し、該左右薬液タンク(9,9)全体を前記後輪(4,4)の後車軸(4a)よりも前方に配置し、前記走行車台(2)の後側端部の左右中央部に後方に延出するように設けた昇降リンク機構(11)により中耕除草機(12)を昇降自在に支持したことを特徴とする中耕散布作業機とする。
【0005】
前記構成によると、走行車台(2)の後側部には操縦席(7)の左右両側に位置するように左右薬液タンク(9,9)が配設されていて、この左右薬液タンク(9,9)の全体が後輪(4,4)の後車軸(4a)よりも略前方に配置されて、機体の前後バランスが安定する。
【0006】
請求項2の発明は、前記左右薬液タンク(9,9)の前側端部を前記操縦席(7)の前側端部よりも後方に位置するように構成したことを特徴とする請求項1記載の中耕散布作業機とする。
【0007】
前記構成によると、請求項1の発明の前記作用に加えて、左右薬液タンク(9,9)の前側端部が操縦席(7)の前側端部よりも後方に位置しているので、左右何れの側からも操縦席(7)に乗降することができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、左右後輪(4,4)の後車軸(4a)よりも前方に左右薬液タンク(9,9)が位置しているので、昇降リンク機構(11)により中耕除草機(12)を昇降自在に連結しても機体の前後バランスを安定させることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明の前記効果に加えて、操縦者の居住性を良くしながら操縦席(7)の左右何れの側からも楽に乗降することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、薬液散布及び中耕除草用の中耕散布作業機の一実施形態についてき説明する。
中耕除草及び薬液散布用の中耕散布作業機1は、走行車台2の前後左右両側には等径の左右前輪3,3と左右後輪4,4が設けられていて、走行車台2の前側部あるいは後側部に防除噴霧装置Aが設けられている。左右前輪3,3間の上方にはエンジン(図示省略)が搭載されていて、エンジン回りはボンネット6で被覆されている。走行車台2の後側部には操縦席7が設けられていて、操縦席7の前方にステアリングハンドル8が設けられている。また、ステアリングハンドル8を左右に操舵すると、左右前輪3,3及び左右後輪4,4が同時に操舵される四輪操舵に構成されている。また、走行車台2後側部における操縦席7の左右両側には、例えば直方体状の単純な構成の左右薬液タンク9,9が着脱自在に設けられている。
【0011】
また、エンジンの動力は走行用伝動装置を経由して左右前輪3,3及び左右後輪4,4に伝達され、エンジンの動力は作業用伝動装置を経由して薬液噴霧用のポンプP及び後部作業機駆動用のPTO軸(図示省略)に伝達される構成である。
【0012】
また、左右薬液タンク9,9全体を後輪4,4の後車軸4aよりも前方に配置し、また、タンクの前側端部を前記操縦席7の前側端部よりもやや後方に位置するようにしている。そして、走行車台2の後側左右中央部には、昇降リンク機構11を後側に向けて昇降自在に延出し、中耕除草機12を昇降するように構成している。
【0013】
前記構成によると、後輪4,4の後車軸4aよりも前方に左右薬液タンク9,9が位置しているので、機体の前後バランスが安定し、昇降リンク機構11により中耕除草機12を連結しても前後バランスを安定させることができ、操縦者の居住性を良くしながら楽に左右何れの側からも操縦席7に乗降することができる。
【0014】
また、左右薬液タンク9,9を走行車台2に搭載するにあたり、走行車台2の後部左右両側から左右支持フレーム13,13を左右後輪4,4に接近するように左右両側に向けて延出し、左右支持フレーム13,13の前側部に左右補助ステップ13a,13aを取り付け、この左右支持フレーム13,13の後側部には左右タンクベース14,14を取り付け、この左右タンクベース14,14に左右薬液タンク9,9を搭載し、左右薬液タンク9,9を走行車台2から左右両側に向けてオーバーハングさせ、タンクの大容量化及び支持強度のアップを図っている。また、左右薬液タンク9,9の底部を左右タンクベース14,14で支持することにより、タンクの保護及び着脱の容易化を図っている。
【0015】
また、左右薬液タンク9,9の底部を連結ホース15により連通し、ポンプPにより薬液の左右タンクの吸水及び排出を容易にし、作業効率の向上を図っている。
また、左右薬液タンク9,9の上部中央には開閉蓋付きの注水口16,16を設け、左右薬液タンク9,9のどちらからでも注水できるようにし、注水の容易化を図っている。
【0016】
また、図3に示すように、左右薬液タンク9,9の下部左右両側に排水口17,17を設け、左右薬液タンク9,9のどちらからでも排水できるようにし、排水の容易化を図っている。
【0017】
また、図4に示すように、操縦席7の下方には給水部及び吐出部を右外側に位置するようにポンプPを配置し、例えば右薬液タンク9の下部から給水パイプ21を経由して前記ポンプPの給水部に薬液が送られ、ポンプPから吐出した薬液は吐出ホース22により調圧装置23に送られるように構成している。調圧装置23は安全弁23a、エアチャンバ23b及び流量制御弁23cにより構成されていて、安全弁23aからあふれた吐出薬液の一部は戻りホース24を経て右薬液タンク9の底部に還流され、沈殿した薬液を撹拌する。また、調圧装置23の流量制御弁23cから吐出した薬液は、散布コック25、第1散布ホース26、圧力調整コック27、圧力計28a付きのマニホールド28、中央散布ホース29a、左右散布ホース29b,29bに送られ、中耕除草機12の中央除草ロータリ12a,左右除草ロータリ12b,12bの後方に位置する中央散布ノズル30a,左右散布ノズル30b,30b…から散布されるように構成している。
【0018】
なお、薬液タンク9の下方にはエンジンの駆動中は駆動されるライブPTO軸31を設け、ライブPTO軸31の動力がベルト伝動装置32、電磁クラッチ33を経由して前記ポンプPに伝達される。また、走行車台2の前側部に中央ブーム(図示省略)及び左右サイドブーム(図示省略)に配設した場合には、前記マニホールド28から中央散布ホース29a、左右散布ホース29b,29bを経て中央ブーム及び左右サイドブームに薬液が送らて散布される構成である。
【0019】
前記構成によると、ポンプP、吐出ホース22、調圧装置23、戻りホース24、散布コック25、第1散布ホース26、圧力調整コック27、マニホールド28、中央散布ホース29a、左右散布ホース29b,29bを共用にし、中耕除草機12の後方に位置する中央散布ノズル30a,左右散布ノズル30b,30b…から薬液を散布したり、あるいは、機体の前側に配置した中央ブーム及び左右サイドブームから薬液を散布することができ、コストの低減を図ることができる。
【0020】
また、走行車台2の操縦席7とステアリングハンドル8の間にはフロア10を設け、フロア10のステアリングハンドル8の左右両側部に操作ぺダル34a,34bを設け、前記散布コック25を右薬液タンク9の前方で、且つ、フロア10から右側方に突出する位置に配設している。
【0021】
前記構成によると、機体への乗り降りが左右どちら側からでも行なうことができ、また、操作ぺダル34a,34bの踏み込み操作にも散布コック25が邪魔にならない。
また、前記散布マニホールド28を操縦席7の後方に配設し、前記散布コック25を操縦席7の右側方に配置し、散布コック25と散布マニホールド28を離して配置し、これらの間を第1散布ホース26により接続している。
【0022】
散布コック25と散布マニホールド28を操縦席7の右側方に近接配置すると、中央散布ホース29a及び左右散布ホース29b,29bが長くなるという不具合がある。しかし、前記構成によると、散布コック25の操作を容易にしながら、このような不具合を解消することができ、散布効率を高めることができる。
【0023】
また、前記ポンプPを操縦席7の下方に配設し、ポンプPの吸水口及び吐出口を右側に配置し、前記調圧装置23の安全弁23a、エアチャンバ23b、流量制御弁23c及び散布コック25を、ポンプPの吸水口及び吐出口が位置する右側に配置している。
【0024】
前記構成によると、吸水パイプ21、吐出ホース22、第1散布ホース26の配管長さを短くすることができ、配管作業が容易となる。
また、前記散布マニホールド28を操縦席7の後方に配設し、散布マニホールド28から中央散布ホース29a及び左右散布ホース29b,29bを束ねて昇降リンク機構11の側方を通して後方に延出し、中耕除草機12の中央除草ロータリ12a,左右除草ロータリ12b,12bの後方に位置する中央散布ノズル30a,左右散布ノズル30b,30b…から散布するように構成している。
【0025】
前記構成によると、中央散布ホース29a,左右散布ホース29b,29bの配索がシンプルとなって接続ミスが無くなり、昇降リンク機構11との干渉を回避し、中耕除草機12を円滑に昇降しながら中耕散布作業をすることができる。
【0026】
また、図6及び図7に示すように、中耕除草機12の上部には左右方向に沿った中耕フレーム12cを設け、この中耕フレーム12cの中央部に中央上部ブラケット35aを介して中央除草ロータリ12aを取り付け、中耕フレーム12cの左右両側には左右上部ブラケット35b,35bを介して、左右除草ロータリ12b,12bを左右調節自在に取り付けている。中耕フレーム12cには左右伸縮自在の伝動軸12dを設けて、中央除草ロータリ12a及び左右除草ロータリ12b,12bに動力を伝達し、これらロータリ12a,12b,12bの後方に尾輪36,…をそれぞれ設けている。
【0027】
また、中央上部ブラケット35a,左右上部ブラケット35b,35bから中央延長フレーム37a,左右延長フレーム37b,37bをそれぞれ後方に向けて延出し、これら後端から中央縦フレーム38a,左右縦フレーム38b,38bをそれぞれ下方に向けて延出し、その下端部に中央散布ノズル30a,左右散布ノズル30b,30b…を取り付け、尾輪36,…の後方部位にノズルから薬液を散布するように構成している。
【0028】
前記構成によると、各除草ロータリ12a,12b,12bは草が繁茂する畦の底部を中耕除草し、その後の膨軟になった圃場面に薬液を散布することができ、薬液が土壌深くに浸入し、除草効果を高めることができる。また、中耕フレーム12cの中央除草ロータリ12aに対して、左右除草ロータリ12b,12bを左右に調節すると、尾輪36,…及び左右散布ノズル30b,30b…も同時に左右に調整され、中耕散布作業を円滑に行なうことができる。
【0029】
また、図8に示すように、操縦席7の後方にポンプP入切用のスイッチ41を設け、中耕除草機12とスイッチ41とをワイヤ42により連動連結し、昇降リンク機構11が下降して中耕除草機12が作業位置になると、スイッチ41が入りとなり、また、上昇すると切りになるように構成している。前記構成によると、中耕除草機12を作業位置に下降するとスイッチ41が自動的に入りとなり、上昇すると切りになるので、散布作業機の操作が簡単容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】中耕散布作業機の側面図
【図2】中耕散布作業機の平面図
【図3】中耕散布作業機の背面図
【図4】中耕散布作業機の平面図
【図5】中耕散布作業機の側面図
【図6】中耕散布作業機の後部の側面図
【図7】中耕散布作業機の背面図
【図8】中耕散布作業機の背面図
【符号の説明】
【0031】
1 中耕散布作業機
2 走行車台
3 左右前輪
4 左右後輪
4a 後車軸
7 操縦席
8 ステアリングハンドル
9 左右薬液タンク
11 昇降リンク機構
12 中耕除草機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車台(2)の前後左右両側に左右前輪(3,3)と左右後輪(4,4)を設け、前記走行車台(2)の後側部左右中央に操縦席(7)を設けると共に、該操縦席(7)の前方にステアリングハンドル(8)を設け、前記走行車台(2)の後側左右には前記操縦席(7)の左右両側に位置するように左右薬液タンク(9,9)を配設し、該左右薬液タンク(9,9)全体を前記後輪(4,4)の後車軸(4a)よりも前方に配置し、前記走行車台(2)の後側端部の左右中央部に後方に延出するように設けた昇降リンク機構(11)により中耕除草機(12)を昇降自在に支持したことを特徴とする中耕散布作業機。
【請求項2】
前記左右薬液タンク(9,9)の前側端部を前記操縦席(7)の前側端部よりも後方に位置するように構成したことを特徴とする請求項1記載の中耕散布作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−295342(P2008−295342A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143610(P2007−143610)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】