説明

乗用リールモアの速度設定機構

【課題】HSTによる変速機構を用いて、歯車噛合式の変速機構のように、簡単に作業速度のレンジと、移動速度のレンジへの切換ができきることで、刈取り中は比較的遅い一定速度で走行したり、刈取をしない通常速度で走行したりすることができる乗用リールモアの提供。
【解決手段】乗用リールモアの車速の変速機構をHST(64)により構成し、該HST(64)の変速操作を前進走行変速ペダル(21)と後進走行変速ペダル(22)とにより行う乗用リールモアの速度設定機構において、前記前進走行変速ペダル(21)の踏込みレンジを、作業速度レンジと移動速度レンジに分け、芝刈り作業時において、該前進走行変速ペダル(21)の前記移動速度レンジへの踏込みを牽制する作業速度設定ペダル(66)を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モアユニットを装着した乗用リールモアを、HST(Hydraulic Static Transmission)により変速駆動する場合の、前進走行変速ペダルによる、作業速度の速度設定機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乗用リールモアは、モアユニットを車体の下部に装着して、ゴルフ場のグリーン等の芝生面を走行しながら、モアユニットに設定した刈り高さにより、精密な高さに芝生を刈取るものであり、刈取り中は、比較的遅い一定速度(作業速度)で走行する必要があるのである。
しかし、ゴルフ場内の、グリーンからグリーンへ移動する等の刈取りをしないで走行する場合には、通常の走行速度(移動速度)が必要であり、作業速度と移動速度の両方の速度レンジが必要となるのである。
HSTによる変速機構を、乗用リールモアにおいて用いる場合に、歯車噛合式の変速機構のように、歯車の噛合の切換により作業速度のレンジ、と移動速度のレンジへの切換ができないのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−235320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が、解決しようとする課題は次の如くである。
本発明においては、前記の従来技術の不具合を解消する為に、HSTにより走行速度の変速機構を構成した場合において、前進変速は前進走行変速ペダル(21)により行い、後進変速は後進走行変速ペダル(22)により行うのであるが、該前進走行変速ペダル(21)による、一行程の踏込み角度の範囲内において、作業速度のレンジと、移動速度のレンジを設け、芝生の刈取り作業時においては、この作業速度のレンジでのみしか、前進走行変速ペダル(21)の踏込み操作ができないように構成し、ゴルフ場内を移動する場合には、この作業速度の設定を外して、広い範囲の速度で移動を可能とするものである。
本発明の乗用リールモアは、主にゴルフ場のグリーンで使用され、あるホールのグリーンから別のホールのグリーンへ移動するためなどの理由で刈取りをせずに走行する移動走行のときは、前進走行変速ペダル(21)を最高速度まで踏み込めるようにする一方で、芝生の刈取りをしながら走行する作業走行のときは、作業に適した速度までしか前進走行変速ペダル(21)を踏み込めないようにストッパー(ペダル係合アーム(70))により規制するところに特徴がある。こうしておけば、作業走行中は前進走行変速ペダル(21)をストッパーに当たるまで踏み込んでいるだけで、作業に適した一定速度で走行することができるのである。ゴルフ場のグリーンにおいては、ゴルフボールの転がり抵抗をいつも同程度に保つため、毎日のように芝生の刈り込みを行っているが、刈高さを一定にするだけでは十分ではなく、刈刃が1枚分回転する間に車体が進む距離(刈取りピッチ)を一定に保つことが重要となっている。そのために必要な運転操作は前進走行変速ペダル(21)を一定量踏み込んだ状態に保ち続ける操作であるが、足の操作だけでこれを実現するのは困難である。そこで、本発明の乗用リールモアは、作業走行のときだけストッパーを利かせて、ストッパーに当たるまで踏み込んでいるだけで一定速度を維持できるという点で効果を発揮するのである。
また、作業速度の範囲も、数段階でレンジの設定ができるように構成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明は、以下の手段をとる。
【0006】
請求項1においては、乗用リールモアの車速の変速機構をHST(64)により構成し、該HST(64)の変速操作を前進走行変速ペダル(21)と後進走行変速ペダル(22)とにより行う乗用リールモアの速度設定機構において、前記前進走行変速ペダル(21)の踏込みレンジを、作業速度レンジと移動速度レンジに分け、芝刈り作業時において、該前進走行変速ペダル(21)の前記移動速度レンジへの踏込みを牽制する作業速度設定ペダル(66)を設けたものである。
【0007】
請求項2においては、請求項1記載の乗用リールモアの速度設定機構において、前記作業速度レンジの幅を段階的に変更可能とする機構を設けたものである。
【0008】
請求項3においては、請求項2記載の乗用リールモアの速度設定機構において、前記作業速度のレンジ幅の変更は、前記前進走行変速ペダル(21)に付設した作業速度設定筒(69)と、該作業速度設定筒(69)内で突出摺動可能とした係合突出ピン(67)との位置関係を、速度設定孔(75)と作業速度設定ピン(71)とにより選択して決定すべく構成したものである。
【0009】
請求項4においては、請求項1記載の乗用リールモアの速度設定機構において、前記作業速度設定ペダル(66)は、前記前進走行変速ペダル(21)とフロントコラム(17)との間の位置で、該フロントコラム(17)に近い側にシーソーペダルとして配置し、前記作業速度設定ペダル(66)により回動して前記係合突出ピン(67)と係合するペダル係合アーム(70)に連結軸(76)により連結したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0011】
請求項1の如く、乗用リールモアの車速の変速機構をHST(64)により構成し、該HST(64)の変速操作を、前進走行変速ペダル(21)と後進走行変速ペダル(22)により行う乗用リールモアの速度設定機構において、該前進走行変速ペダル(21)の踏込みレンジを、作業速度レンジと移動速度レンジに分けて、芝刈り作業時において、移動速度レンジへの前進走行変速ペダル(21)の踏込みを牽制する作業速度設定ペダル(66)を設けたので、乗用リールモアにおいて、例えばゴルフ場でグリーンの芝生の刈取りを行う場合に、前進走行変速ペダル(21)が大きく踏み込まれたとしても、HST(64)の高速変速レンジに入ることがなく、適正な刈取り速度を超えることがなくなったのである。
【0012】
請求項2の如く、請求項1記載の乗用リールモアの速度設定機構において、前記作業速度レンジの幅を、段階的に変更可能とする機構を設けたので、グリーン上のボールの転がり抵抗に合わせて、作業速度をオペレータが予め設定することができるので、設定した通りの走行速度での刈取り作業を行うことができ、所望の転がり抵抗の芝生に仕上げることができるのである。
【0013】
請求項3の如く、請求項2記載の乗用リールモアの速度設定機構において、作業速度のレンジ幅の変更は、前進走行変速ペダル(21)に付設した作業速度設定筒(69)と、該作業速度設定筒(69)内で突出摺動可能とした係合突出ピン(67)の位置関係を、速度設定孔(75)と作業速度設定ピン(71)により選択して決定すべく構成したので、作業速度設定ピン(71)の挿抜による簡単な操作機構を、前進走行変速ペダル(21)とペダル係合アーム(70)の間に構成することが可能となり、操作も簡単に切り換えできるように成ったのである。
【0014】
請求項4の如く、請求項1記載の乗用リールモアの速度設定機構において、該作業速度設定ペダル(66)は、前進走行変速ペダル(21)とフロントコラム(17)との間の位置で、フロントコラム(17)に近い側にシーソーペダルとして配置し、該作業速度設定ペダル(66)により回動して、前記係合突出ピン(67)と係合するペダル係合アーム(70)との間を、連結軸(76)により連結した構成としたので、作業速度設定ペダル(66)の位置は、フロントコラム(17)に近い、右足で踏込み操作可能な位置でありながら、実際に係合するペダル係合アーム(70)は、前進走行変速ペダル(21)の前部に配置することが可能となり、前進走行変速ペダル(21)と作業速度設定ペダル(66)の併設配置が可能となったのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の乗用リールモアの進行方向左側の前方からの全体斜視図。
【図2】本発明の乗用リールモアの進行方向左側の後方からの全体斜視図。
【図3】本発明の乗用リールモアの全体平面図。
【図4】左フロントモアユニット(1L)の昇降支持機構の前面図。
【図5】左フロントモアユニット(1L)の昇降支持機構の後面図。
【図6】左フロントモアユニット(1L)の支持部の平面図。
【図7】左フロントモアユニット(1L)の支持部の左側面図。
【図8】左フロントモアユニット(1L)を刈取り状態に下降した状態の前面図。
【図9】左フロントモアユニット(1L)を刈取り状態に下降した状態の左側面図。
【図10】左フロントモアユニット(1L)を上昇した状態の前面図。
【図11】左フロントモアユニット(1L)を上昇した状態の左側面図。
【図12】左フロントモアユニット(1L)の昇降支持機構を示す斜視図。
【図13】左フロントモアユニット(1L)を取り外して下面から見た斜視図。
【図14】左フロントモアユニット(1L)を取り外す際における水平回動枢支ピン(25L)と水平回動枢支筒(37L)の脱着を示す斜視図。
【図15】左モア駆動モータ(23L)の脱着を示す斜視図。
【図16】左揺動ストッパー(5L)の揺動阻止状態の斜視図。
【図17】左揺動阻止チエーン(3L)の斜視図。
【図18】本発明の前進走行変速ペダル(21)とHST(64)との関係配置を示す平面図。
【図19】前進走行変速ペダル(21)と作業速度設定ペダル(66)とペダル係合アーム(70)の関係を示す側面図。
【図20】作業速度設定ペダル(66)とペダル係合アーム(70)の前面図。
【図21】前進走行変速ペダル(21)と作業速度設定ペダル(66)の斜視図。
【図22】作業速度設定ピン(71)と係合突出ピン(67)と作業速度設定筒(69)の斜視図。
【図23】係合突出ピン(67)と作業速度設定筒(69)の係合状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の乗用リールモアの進行方向左側の前方からの全体斜視図であり、図2は、本発明の乗用リールモアの進行方向左側の後方からの全体斜視図であり、図3は、本発明の乗用リールモアの全体平面図である。
【0018】
図1と図2と図3において、乗用リールモアは、左右の前輪(11L・11R)と、操向輪である1輪の後輪(15)により機体フレーム(6)を支持し、該機体フレーム(6)上に、エンジンを搭載し、該エンジンをボンネット(14)で被覆している。
該ボンネット(14)の前方に、オペレータが座る座席シート(13)を配置し、該座席シート(13)の前部に、フロントコラム(17)をステップ(18)から立設し、該フロントコラム(17)より上方へステアリングハンドル(12)を突設している。
【0019】
該フロントコラム(17)の左側のステップ(18)の上に、ブレーキペダル(20)を配置し、該フロントコラム(17)の右側のステップ(18)上に前進走行変速ペダル(21)と、後進走行変速ペダル(22)を配置している。
また、座席シート(13)の左側の機体フレーム(6)上に、バッテリー(16)を搭載し、座席シート(13)の右側の機体フレーム(6)の上に、燃料タンク(19)を搭載している。
【0020】
以上のように構成した乗用リールモアの車体に対して、機体の前部に、右フロントモアユニット(1R)と左フロントモアユニット(1L)を、左右に並べて配置し、車体の中央の下方に、前記右フロントモアユニット(1R)と左フロントモアユニット(1L)の間の刈り残しを、刈取る為のリアモアユニット(1C)を配置している。
該左フロントモアユニット(1L)と右フロントモアユニット(1R)は、左リフトアーム(9L)と右リフトアーム(9R)により吊り下げ支持しており、昇降操作可能としている。
該左フロントモアユニット(1L)と右フロントモアユニット(1R)の上方への回動時に、揺動するのを阻止する為の揺動ストッパー(5L・5R)が、機体フレーム(6)から突設され、フロントモアユニット(1L・1R)が上昇した状態で接当し、揺動を固定するように構成している。
【0021】
該左リフトアーム(9L)と右リフトアーム(9R)の先端に左右回動枢支筒(36L・36R)を固設し、該左右回動枢支筒(36L・36R)により、左右の左右回動軸(35L・35R)が水平方向の軸心回りで回動可能に枢支されており、左フロントモアユニット(1L)と右フロントモアユニット(1R)を支持している。
また、リアモアユニット(1C)は、車体の中央下方の位置から、車体の側方へ水平回動して取り出し、メンテナンスを可能としている。
左フロントモアユニット(1L)には、モア駆動モータ(23L)が外側の側面に付設されており、また、前方へはバケット(24L)が脱着可能に付設されている。
【0022】
図3は、本発明の乗用リールモアの全体平面図、図4は、左フロントモアユニット(1L)の昇降支持機構の前面図、図5は、左フロントモアユニット(1L)の昇降支持機構の後面図、図6は、左フロントモアユニット(1L)の支持部の平面図、図7は、左フロントモアユニット(1L)の支持部の左側面図、図8は、左フロントモアユニット(1L)を刈取り状態に下降した状態の前面図、図9は、左フロントモアユニット(1L)を刈取り状態に下降した状態の左側面図、図10は、左フロントモアユニット(1L)を上昇した状態の前面図、図11は、左フロントモアユニット(1L)を上昇した状態の左側面図である。
【0023】
機体フレーム(6)には、機体進行方向に向かって、枢支軸(29L・29R)が突設されており、該枢支軸(29L・29R)により左右のリフトアーム(9L・9R)の基部が枢支されている。該リフトアーム(9L・9R)の先端には、左右回動枢支筒(36L・36R)が固設されており、該左右回動枢支筒(36L・36R)の内部には、左右回動軸(35L・35R)が嵌装されており、該左右回動軸(35L・35R)の前端には、水平回動枢支筒(37L・37R)が固設されている。
該水平回動枢支筒(37L・37R)の内部に、フロントモアユニット(1L・1R)の左右の側板支持アーム(10・10)の間に架設した牽引杆(41L・41R)から、上方へ突設した水平回動枢支ピン(25L・25R)がその軸心方向を上下方向として嵌装されている。フロントモアユニット(1L・1R)の前部は、水平回動枢支筒(37L・37R)に水平回動枢支ピン(25)回りに左右水平回動可能に枢支されている。
また、左右の側板支持アーム(10・10)の下端部には、それぞれ左右の前後回動枢支軸(7・7)がその軸心方向を左右方向として嵌挿されている。フロントモアユニット(1)は、左右の前後回動枢支軸(7・7)回りに前後回動可能に支持されている。
【0024】
牽引杆(41L・41R)が側板支持アーム(10)から突出した左右端部には、バケット(24L・24R)を脱着自在に係止するバケット係止杆(46L・46R)が前方へ突設されている。該フロントモアユニット(1L・1R)の下面には、前方から前ローラ(34L・34R)が枢支され、次に、サッチングローラ(40L・40R)が枢支され、次に、リール回転刃(32L・32R)が駆動すべく枢支され、その後に、該リール回転刃(32L・32R)の受刃(38L・38R)が配置され、その後部に、後ローラ(8L・8R)が支持されている。 該受刃(38L・38R)とリール回転刃(32L・32R)との間隙を調整する受刃間隙調整機構(49L・49R)が、フロントモアユニット(1L・1R)の側板の左右外側に設けられている。
該リール回転刃(32L・32R)とサッチングローラ(40L・40R)は、モア駆動モータ(23L・23R)により駆動可能に構成されているが、前ローラ(34L・34R)と後ローラ(8L・8R)は、従動回転すべくフロントモアユニット(1L・1R)に支持されている。
【0025】
本発明においては、昇降油圧シリンダ(4L・4R)を伸縮して、リフトアーム(9L・9R)を介して、フロントモアユニット(1L・1R)を昇降した場合において、フロントモアユニット(1L・1R)の後部の後ローラ(8L・8R)の部分も十分なリフトストロークで上昇すべく、図4から図9に示す如く構成したものである。
図4に示す如く、機体フレーム(6)とリフトアーム(9L・9R)の中途部との間には、該フロントモアユニット(1L・1R)の重量と相殺して、該昇降油圧シリンダ(4L・4R)の負荷を減少させる為に、付勢バネ(28L・28R)が介装されている。
【0026】
図5に示す如く、機体フレーム(6)に枢支軸(43)で枢支した、昇降油圧シリンダ(4L・4R)のピストンの前端には、摺動ガイド(2L・2R)が連結位置調整自在に調節ボルト(44L・44R)により連結されている。該摺動ガイド(2L・2R)の内側のガイド溝内にガイドピン(31L・31R)が遊嵌嵌装されている。この摺動ガイド(2L・2R)により、フロントモアユニット(1L・1R)が芝生面に下降接地して、刈取り作業を行っている場合には、摺動ガイド(2L・2R)の内部で、ガイドピン(31L・31R)が自由に移動可能となり、フロントモアユニット(1L・1R)が芝生面に、フローティング状態で追随する余裕を得るように構成しているのである。
【0027】
チエーン昇降アーム(26L・26R)は、リフトアーム(9L・9R)の下側の面に固設された、枢支軸(30L・30R)に回動自在に枢支されている。
該チエーン昇降アーム(26L・26R)の連結リンク(27L・27R)とは逆の側に、揺動阻止チエーン(3L・3R)が係止されている。
該揺動阻止チエーン(3L・3R)は、図17に示すように、係合ピン(45L・45R)により、フロントモアユニット(1L・1R)のカバー部分に係止されている。
【0028】
以上の如く構成したので、図8と図9の如く、フロントモアユニット(1L・1R)を刈取りの為に下降した場合と、図10と図11の如く、乗用リールモアの移動の為に上昇した場合でも、フロントモアユニット(1L・1R)を、図9と図11に示す如く、側面視で、前後の位置を略水平状態に維持することができるのである。
即ち、図8と図9の如く、フロントモアユニット(1L・1R)が下降した状態では、昇降油圧シリンダ(4L・4R)のピストンが伸長するので、該ピストンの先端の摺動ガイド(2L・2R)がチエーン昇降アーム(26L・26R)を下方へ自由に昇降可能な側に回動するのである。この状態では、摺動ガイド(2L・2R)の内部でガイドピン(31L・31R)が左右に移動可能に構成されているので、芝生面に対して、フロントモアユニット(1L・1R)が自由に追随することができるのである。
【0029】
次に、図10と図11に示す如く、昇降油圧シリンダ(4L・4R)が縮小して、該フロントモアユニット(1L・1R)を引き上げた場合には、昇降油圧シリンダ(4L・4R)のピストンが摺動ガイド(2L・2R)を引っ張る方向に縮小し、該摺動ガイド(2L・2R)のガイド溝の端部に、ガイドピン(31L・31R)が係合し、連結リンク(27L・27R)を介して、チエーン昇降アーム(26L・26R)を、揺動阻止チエーン(3L・3R)が上がる方向に回動するのである。
これにより、フロントモアユニット(1L・1R)が乗用リールモアの移動の為に上昇された状態では、揺動阻止チエーン(3L・3R)を介して、フロントモアユニット(1L・1R)の後部が持ち上げられて、図11に示す如く、前後に略水平状態を維持したままで、上昇させることができるのである。
これにより、昇降油圧シリンダ(4L・4R)のストロークが大きくなくても、十分にフロントモアユニット(1L・1R)の上昇リフトストロークを得ることができるのである。
【0030】
図12は、左フロントモアユニット(1L)の昇降支持機構を示す斜視図、図13は、左フロントモアユニット(1L)を下面から見た斜視図、図14は、左フロントモアユニット(1L)を取り外す際における水平回動枢支ピン(25L)と水平回動枢支筒(37L)の脱着を示す斜視図、図15は、モア駆動モータ(23L)の脱着を示す斜視図、図16は、揺動ストッパー(5L)の揺動阻止状態の斜視図、図17は、揺動阻止チエーン(3L・3R)の斜視図である。
【0031】
前記機体フレーム(6)より、左右のフロントモアユニット(1L・1R)の上方へ向けて、揺動ストッパー(5L・5R)が突設されている。該揺動ストッパー(5L・5R)は、左右端が、下向きの「く」の字形に構成されており、フロントモアユニット(1L・1R)の上部の他の1本の補強杆(42L・42R)の上部に接当可能としており、昇降油圧シリンダ(4L・4R)により、フロントモアユニット(1L・1R)を上昇すると、該揺動ストッパー(5L・5R)が、補強杆(42L・42R)に接当して、該フロントモアユニット(1L・1R)の上下・前後・左右への揺動を阻止するように構成している。
【0032】
また、リフトアーム(9L・9R)の側端の左右回動枢支筒(36L・36R)に枢支されている左右回動軸(35L・35R)が、ある程度以上回動するのを阻止する、左右端上下回動ストッパー(33L・33R)が構成されている。該左右端上下回動ストッパー(33L・33R)は、左右回動枢支筒(36L・36R)と左右回動軸(35L・35R)との間で、ストッパー位置を調整可能に、調整ボルトと突起により構成されている。
【0033】
図14と図15においては、フロントモアユニット(1L・1R)を取り外す場合の手順について開示している。リフトアーム(9L・9R)に支持された水平回動枢支ピン(25)の部分から、フロントモアユニット(1L・1R)を取り外す際においては、該水平回動枢支ピン(25)に側方から嵌装したピン(47)を抜いた後に、ワッシャー(48)を外し、水平回動枢支筒(37L・37R)から水平回動枢支ピン(25)を下方へ抜くことが可能となっている。
また、フロントモアユニット(1L・1R)の側端部に付設したモア駆動モータ(23L・23R)は図15の如く、ボルトにより取り外し可能としている。
【0034】
図18は、本発明の前進走行変速ペダル(21)とHST(64)との関係配置を示す平面図、図19は、前進走行変速ペダル(21)と作業速度設定ペダル(66)とペダル係合アーム(70)の関係を示す側面図、図20は、作業速度設定ペダル(66)とペダル係合アーム(70)の前面図、図21は、前進走行変速ペダル(21)と作業速度設定ペダル(66)の斜視図、図22は、作業速度設定ピン(71)と係合突出ピン(67)と作業速度設定筒(69)の斜視図、図23は、係合突出ピン(67)と作業速度設定筒(69)の係合状態の斜視図である。
【0035】
図1から図3に示すように、乗用リールモアの車体におけるステップ(18)の上の前部中央には、フロントコラム(17)を立設しており、該フロントコラム(17)の左側には、ブレーキペダル(20)が突設されており、右側には、前進走行変速ペダル(21)と後進走行変速ペダル(22)が立設されている。
該前進走行変速ペダル(21)と後進走行変速ペダル(22)は、共に、HST(64)の斜板操作アーム(62)を前進側と後進側に回動操作する為に連動されている。
【0036】
図18から図23に示すように、該HST(64)に設けた斜板操作アーム(62)は、前進走行変速ペダル(21)と後進走行変速ペダル(22)を踏込み操作しない場合の為に、中立位置保持アーム(63)を介して、通常は速度ゼロの中立位置に戻るように付勢されている。
前記斜板操作アーム(62)は、連結リンク(74)を介して、前進・後進回動軸(73)に連動されており、該前進・後進回動軸(73)から、前進と後進に連結リンクが別れて、前進アーム(68)と後進アーム(72)に連結されている。
【0037】
前進走行変速ペダル(21)と後進走行変速ペダル(22)は、ペダル枢支軸(65)に枢支されており、後進走行変速ペダル(22)はペダル枢支軸(65)と一体的に回動し、後進アーム(72)を回動する。前進走行変速ペダル(21)は、ペダル枢支軸(65)の外周に遊嵌されており、前進アーム(68)と一体的に回動可能としている。
【0038】
該前進走行変速ペダル(21)がステップ(18)の上に露出した部分に、作業速度設定筒(69)が固設されており、該作業速度設定筒(69)内に係合突出ピン(67)が摺動自在に嵌装されている。該係合突出ピン(67)は、作業速度設定筒(69)に対し4段階に位置を変更可能としており、スナップピンにより構成された作業速度設定ピン(71)を速度設定孔(75)から抜き出すことにより、作業速度設定筒(69)内で係合突出ピン(67)を位置変更可能としている。
該速度設定孔(75)と作業速度設定ピン(71)による変更可能な、4段の速度の間が、作業速度である。
【0039】
また、移動速度と作業速度のレンジを切り換える為の、作業速度設定ペダル(66)とペダル係合アーム(70)が構成されている。図20に図示する如く、作業速度設定ペダル(66)とペダル係合アーム(70)は、連結軸(76)により連結されている。
図1から図3及び図18から図23に示すように、該作業速度設定ペダル(66)は、前進走行変速ペダル(21)とフロントコラム(17)との間の、前進走行変速ペダル(21)よりも内側に配置されており、前進走行変速ペダル(21)を踏込み操作する右足で踏込み操作を可能としている。
【0040】
そして、作業速度設定ペダル(66)を右足で踏み込むことにより、ペダル係合アーム(70)が、前記前進走行変速ペダル(21)の前部の係合突出ピン(67)の下側の位置に回動して位置するように構成している。
作業速度設定ペダル(66)を作業速度にする場合には、手前側に踏込み回動することにより、ペダル係合アーム(70)が前進走行変速ペダル(21)に近づいて、係合突出ピン(67)の下方に位置するのである。これにより、前進走行変速ペダル(21)を作業速度となる設定量まで踏み込むと、係合突出ピン(67)がペダル係合アーム(70)と係合して、このペダル係合アーム(70)がストッパーとして機能し、前進走行変速ペダル(21)をそれ以上は踏み込めないように規制することとなる。したがって、前進走行変速ペダル(21)を係合突出ピン(67)がペダル係合アーム(70)に当たるまで踏み込んでいるだけで、作業速度を一定に維持できるのである。
移動速度とする場合には、作業速度設定ペダル(66)を前方側に踏込み回動することにより、ペダル係合アーム(70)が係合突出ピン(67)との係合状態を解除されるのである。作業速度設定ペダル(66)はシーソーペダルにより構成している。
該作業速度設定ペダル(66)の配置されている部分のステップ(18)の下には、モアユニットの油圧駆動を停止する為の油圧ストップバルブ(77)が配置されている。
【0041】
作業速度設定ピン(71)の差込み位置を、4つの速度設定孔(75)の間で変更することにより、作業速度のレンジを幅広い状態から幅の狭い状態に、4段階に変更することができる。このレンジの調整は、ゴルフ場内のグリーンにおけるゴルフボールの転がり抵抗をどの程度に設定するか等により決定するものである。なお、係合突出ピン(67)に作業速度設定ピン(71)を通す孔は一個であっても良いが、作業速度設定筒(69)と異なる間隔で孔を開け、両方の孔の組み合わせを選ぶことにより、さらに細かく速度の設定を行うこともできるのである。
【符号の説明】
【0042】
1L 左フロントモアユニット
1R 右フロントモアユニット
1C リアモアユニット
11L・11R 前輪
15 後輪
17 フロントコラム
18 ステップ
21 前進走行変速ペダル
22 後進走行変速ペダル
23L・23R モア駆動モータ
64 HST
66 作業速度設定ペダル
67 係合突出ピン
69 作業速度設定筒
70 ペダル係合アーム
71 作業速度設定ピン
75 速度設定孔
76 連結軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用リールモアの車速の変速機構をHST(64)により構成し、該HST(64)の変速操作を前進走行変速ペダル(21)と後進走行変速ペダル(22)とにより行う乗用リールモアの速度設定機構において、
前記前進走行変速ペダル(21)の踏込みレンジを、作業速度レンジと移動速度レンジに分け、芝刈り作業時において、該前進走行変速ペダル(21)の前記移動速度レンジへの踏込みを牽制する作業速度設定ペダル(66)を設けたことを特徴とする乗用リールモアの速度設定機構。
【請求項2】
請求項1記載の乗用リールモアの速度設定機構において、
前記作業速度レンジの幅を段階的に変更可能とする機構を設けたことを特徴とする乗用リールモアの速度設定機構。
【請求項3】
請求項2記載の乗用リールモアの速度設定機構において、
前記作業速度のレンジ幅の変更は、前記前進走行変速ペダル(21)に付設した作業速度設定筒(69)と、該作業速度設定筒(69)内で突出摺動可能とした係合突出ピン(67)との位置関係を、速度設定孔(75)と作業速度設定ピン(71)とにより選択して決定すべく構成したことを特徴とする乗用リールモアの速度設定機構。
【請求項4】
請求項1記載の乗用リールモアの速度設定機構において、
前記作業速度設定ペダル(66)は、前記前進走行変速ペダル(21)とフロントコラム(17)との間の位置で、該フロントコラム(17)に近い側にシーソーペダルとして配置し、前記作業速度設定ペダル(66)により回動して前記係合突出ピン(67)と係合するペダル係合アーム(70)に連結軸(76)により連結したことを特徴とする乗用リールモアの速度設定機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−217674(P2011−217674A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90472(P2010−90472)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000198330)株式会社IHIシバウラ (74)
【Fターム(参考)】