説明

乗用型田植機

【課題】 苗の植え付けを行いながら農用供給体を田面に供給するように構成された乗用型田植機において、植付作業の開始前に空の貯留部に農用供給体を入れた後に、空気を抜く作業や各部のブリッジ現象を消失させる作業が、適切に行えるように構成する。
【解決手段】 苗植付装置5に動力を伝達する植付伝動系と、繰り出し部80a〜80h,81a〜81dに動力を伝達する農用供給体伝動系とを並列的に配置する。植付伝動系を介して苗植付装置5に動力を伝達し、農用供給体伝動系を介して繰り出し部80a〜80h,81a〜81dに動力を伝達するように構成する。苗植付装置5よりも上手側の植付伝動系の部分に、動力を伝動及び伝動遮断自在な伝動遮断機構50を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗の植え付けを行いながら農用供給体(液状や粉粒状の肥料や薬剤等)を田面に供給するように構成された乗用型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機では、例えば特許文献1に開示されているように、苗の植え付けを行いながら液状の肥料(農用供給体に相当)を田面に供給するように構成されたものがある。特許文献1では、液状の肥料を貯留する肥料タンク(貯留部に相当)(特許文献1の図1及び図8の21,31)、肥料タンクの液状の肥料を圧送する施肥ポンプ(繰り出し部に相当)(特許文献1の図8の23,33)、及び施肥ポンプからの液状の肥料を田面に供給する施肥ノズル(供給部に相当)(特許文献1の図1及び図8の22,32)を備えている。
【0003】
特許文献1では、ミッションケース(特許文献1の図5の70)から伝動軸(特許文献1の図5の75,7)が延出されて、伝動軸が苗植付装置に接続されており、動力がミッションケースから伝動軸を介して苗植付装置に伝達されている。この場合、特許文献1では、伝動軸(特許文献1の図5の75)から、伝動系(特許文献1の図5及び図11の81,82)が分岐して施肥ポンプに接続されており、苗植付装置に伝達される動力が分岐して施肥ポンプに伝達されて、施肥ポンプが駆動される。
【0004】
【特許文献1】特開2002−233216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液状の肥料では、一つの水田に供給する液状の肥料の総量が設定量になるようにする方法が一般的であり、施肥ノズルから一定量の液状の肥料が田面に供給されるようにすることが必要である。
しかしながら、液状の肥料では空気が混入し易く、特に植付作業の開始前に空の肥料タンクに液状の肥料を入れた際に空気が混入し易い。このように液状の肥料に空気が混入すると、施肥ノズルから一定量の液状の肥料が田面に供給されない部分が生じる(液状の肥料に混入した空気が一つの気泡となって施肥ノズルから出ると、その部分だけ液状の肥料が田面に供給されないことになる)。
これにより、植付作業の開始前に空の肥料タンクに液状の肥料を入れた後に、肥料タンク、肥料ポンプ及び肥料ノズルから空気を抜く作業を行わなければならない。これは液状の薬剤を田面に供給する場合でも同様である。
【0006】
粉粒状の肥料や薬剤を田面に供給する場合、植付作業の開始前に空の貯留部に粉粒状の肥料や薬剤を入れた際に、貯留部の内部や、貯留部と繰り出し部との接続部分の各部に粉粒状の肥料や薬剤のブリッジ現象が発生し易い。このように各部にブリッジ現象が発生すると、繰り出し部を作動させて粉粒状の肥料や薬剤の繰り出しを開始しても、各部のブリッジ現象により繰り出し部から粉粒状の肥料や薬剤の繰り出されない状態が生じるのであり、各部のブリッジ現象が消失して、繰り出し部から粉粒状の肥料や薬剤が繰り出されるまで、少し時間を要することがある。
これにより、植付作業の開始前に空の貯留部に粉粒状の肥料や薬剤を入れた後に、各部のブリッジ現象を消失させる作業を行わなければならない。
【0007】
本発明は苗の植え付けを行いながら農用供給体を田面に供給するように構成された乗用型田植機において、植付作業の開始前に空の貯留部に農用供給体を入れた後に、空気を抜く作業や各部のブリッジ現象を消失させる作業が、適切に行えるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型田植機において次のように構成することにある。
苗植付装置と、農用供給体を貯留する貯留部と、貯留部の農用供給体を繰り出す繰り出し部と、繰り出し部からの農用供給体を田面に供給する供給部とを備える。苗植付装置に動力を伝達する植付伝動系と、繰り出し部に動力を伝達する農用供給体伝動系とを並列的に配置して、植付伝動系を介して苗植付装置に動力を伝達し、農用供給体伝動系を介して繰り出し部に動力を伝達するように構成する。苗植付装置よりも上手側の植付伝動系の部分に、動力を伝動及び伝動遮断自在な伝動遮断機構を備える。
【0009】
本発明の第3特徴は、乗用型田植機において次のように構成することにある。
苗植付装置と、農用供給体を貯留する貯留部と、貯留部の農用供給体を繰り出す繰り出し部と、繰り出し部からの農用供給体を田面に供給する供給部とを備える。苗植付装置に動力を伝達する植付伝動系と、繰り出し部に動力を伝達する農用供給体伝動系とを並列的に配置して、植付伝動系を介して苗植付装置に動力を伝達し、農用供給体伝動系を介して繰り出し部に動力を伝達するように構成する。苗植付装置よりも上手側の植付伝動系の部分に、動力を伝動及び伝動遮断自在な植付クラッチを備え、繰り出し部よりも上手側の農用供給体伝動系に、動力を伝動及び遮断自在な繰り出しクラッチを備える。植付及び繰り出しクラッチの両方を伝動状態に操作可能及び両方を遮断状態に操作可能な連動状態と、植付及び繰り出しクラッチを独立に操作可能な非連動状態とを、選択可能に構成する。
【0010】
(作用)
乗用型田植機において、植付作業の開始前に空の貯留部に農用供給体を入れた後に、空気を抜く作業や各部のブリッジ現象を消失させる作業を行う場合、供給部から出る農用供給体を容器で受けながら、混入した空気が全て供給部から出で供給部から安定して農用供給体が出るまで、各部のブリッジ現象が消失して供給部から安定して農用供給体が出るまで、繰り出し部を駆動すると言う作業を行う。
【0011】
特許文献1では前述の「背景技術」に記載のように、ミッションケースから伝動軸が延出され、伝動軸が苗植付装置に接続されて、動力がミッションケースから伝動軸を介して苗植付装置に伝達されており、伝動軸から伝動系が分岐して施肥ポンプに接続され、苗植付装置に伝達される動力が分岐して施肥ポンプに伝達されて、施肥ポンプが駆動されている。これにより、ミッションケースに備えられたクラッチ等によって、伝動軸に動力を伝動及び遮断操作することにより、苗植付装置及び施肥ポンプの両方を駆動する状態と、苗植付装置及び施肥ポンプの両方を停止させる状態が得られる。
従って、空気を抜く作業を行う場合、施肥ポンプを駆動すると(苗植付装置及び施肥ポンプの両方を駆動する状態を設定すると)、空気を抜く作業とは関係がない苗植付装置も一緒に駆動されてしまうので、空気を抜く作業が行い難くなる。
【0012】
本発明の第1特徴によると、苗植付装置に動力を伝達する植付伝動系と、繰り出し部に動力を伝達する農用供給体伝動系とを並列的に配置して、苗植付装置よりも上手側の植付伝動系の部分に、動力を伝動及び伝動遮断自在な伝動遮断機構を備えている。
これによって、空気を抜く作業や各部のブリッジ現象を消失させる作業を行う場合、植付伝動系に動力が伝達される状態を設定しても、伝動遮断機構を遮断状態に設定しておけば、苗植付装置を停止させた状態で繰り出し部を駆動することができる。
【0013】
本発明の第3特徴によると、苗植付装置よりも上手側の植付伝動系の部分に、動力を伝動及び伝動遮断自在な植付クラッチを備え、繰り出し部よりも上手側の農用供給体伝動系に、動力を伝動及び遮断自在な繰り出しクラッチを備え、植付及び繰り出しクラッチを独立に操作可能な非連動状態が選択可能に構成されている。
これにより、空気を抜く作業や各部のブリッジ現象を消失させる作業を行う場合、非連動状態を選択しておくことによって、植付クラッチを遮断状態に操作し、繰り出しクラッチを伝動状態に操作しておけば、苗植付装置を停止させた状態で繰り出し部を駆動することができる。
【0014】
植付作業においては、例えば1回の植付行程が終了して畦際に達すると、畦際で旋回を行い次の植付行程に入ると言う操作を繰り返す。この場合、1回の植付行程が終了して畦際に達すると、植付クラッチを遮断状態に操作して苗植付装置を停止させ、繰り出しクラッチを遮断状態に操作して繰り出し部を停止させるのであり、畦際での旋回を終了して次の植付行程に入る際に、植付クラッチを伝動状態に操作して苗植付装置を作動させ、繰り出しクラッチを伝動状態に操作して繰り出し部を作動させる。
【0015】
本発明の第3特徴によると、植付作業において連動状態を選択しておくことにより、前述のように1回の植付行程が終了して畦際に達すると、1回の操作で植付及び繰り出しクラッチを遮断状態に操作することができるのであり、植付及び繰り出しクラッチを別々に遮断状態に操作するようなことを行う必要がない。畦際での旋回を終了して次の植付行程に入る際に、1回の操作で植付及び繰り出しクラッチを伝動状態に操作することができるのであり、植付及び繰り出しクラッチを別々に伝動状態に操作するようなことを行う必要がない。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第1及び第3特徴によると、苗の植え付けを行いながら農用供給体を田面に供給するように構成された乗用型田植機において、空気を抜く作業や各部のブリッジ現象を消失させる作業を行う場合、苗植付装置を停止させた状態で繰り出し部を駆動することができ、空気を抜く作業や各部のブリッジ現象を消失させる作業を適切に行うことができるようになって、乗用型田植機の作業性をさせることができた。
【0017】
本発明の第3特徴によると、植付作業において連動状態を選択しておくことにより、1回の操作で植付及び繰り出しクラッチを伝動及び遮断状態に操作することができ、植付及び繰り出しクラッチを別々に伝動及び遮断状態に操作するようなことを行う必要がないので、乗用型田植機の植付作業での操作性の低下を伴うものではない。
【0018】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の乗用型田植機において次のように構成することにある。
苗植付装置よりも上手側の植付伝動系の部分に、中立停止位置を備えた植付変速機構を備えて、植付変速機構を伝動遮断機構としてある。
【0019】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
乗用型田植機では植付変速機構を備えることによって、動力が植付変速機構を介して苗植付装置に伝達されるように構成したものがあり、植付変速機構により苗植付装置に伝達される動力を変速することによって、苗植付装置による苗の植付間隔(機体の作業走行速度に対する苗植付装置の植付速度の比)を変更することができる。
【0020】
本発明の第2特徴によると、苗植付装置よりも上手側の植付伝動系の部分に植付変速機構を備えており、植付伝動系に動力が伝達される状態を設定しても、植付変速機構で変速された動力は繰り出し部に伝達されないので、植付変速機構によって繰り出し部の駆動速度が変化することはない。
【0021】
本発明の第2特徴によると、植付変速機構に中立停止位置を備えているので、前項[I]に記載のように、空気を抜く作業や各部のブリッジ現象を消失させる作業を行う場合、植付伝動系に動力が伝達される状態を設定しても、植付変速機構を中立停止位置に操作しておけば、苗植付装置を停止させた状態で繰り出し部を駆動することができる。この場合に、既存の構造と言ってよい植付変速機構を伝動遮断機構に兼用しているので、専用の伝動遮断機構を備える必要がない。
【0022】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、植付変速機構を備えた場合、植付変速機構によって繰り出し部の駆動速度が変化せずに農用供給体が安定して繰り出されるようにしながら、既存の構造と言ってよい植付変速機構を伝動遮断機構に兼用することにより、専用の伝動遮断機構を備える必要がなくなり、乗用型田植機の構造の簡素化の面で有利なものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[1]
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2を備えた機体の後部に、リンク機構3及びリンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ4が備えられており、リンク機構3の後部に8条植型式の苗植付装置5が支持されて、乗用型田植機が構成されている。
【0024】
図1及び図2に示すように、苗植付装置5は4個の伝動ケース6、伝動ケース6の後部の右及び左側部に回転駆動自在に支持された植付ケース7、植付ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、5個の接地フロート9及び苗のせ台10等を備えており、苗植付装置5の左右方向に沿って配置された支持フレーム64(図11及び図13参照)に、伝動ケース6が後方に向けて片持ち状に連結されて構成されている。これにより、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付ケース7が回転駆動され、苗のせ台10の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面に植え付ける。
【0025】
[2]
次に、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2への走行伝動系について説明する。
図1に示すように、機体の前部にミッションケース17が備えられ、ミッションケース17の前部に連結された支持フレーム18にエンジン19が支持されている。ミッションケース17の右及び左の横側部に右及び左の前車軸ケース20が連結されており、右及び左の前輪1が右及び左の前車軸ケース20の縦軸芯周りに操向自在に支持されている。
【0026】
図5及び図6に示すように、ミッションケース17の左の横側部における上部の前部に静油圧式無段変速装置21が連結されており、エンジン19の動力が静油圧式無段変速装置21の入力軸21aに伝動ベルト86を介して伝達されている。静油圧式無段変速装置21は中立停止位置を備え、前進側及び後進側に無段階に変速自在に構成されている。図5及び図6に示すように、静油圧式無段変速装置21の入力軸21a及び出力軸21bがミッションケース17の内部に入り込んでおり、伝動軸22が回転自在にミッションケース17に支持されて、静油圧式無段変速装置21の出力軸21bと伝動軸22とがスプライン構造により連結されている。
【0027】
図5及び図6に示すように、伝動軸22に低速ギヤ24及び高速ギヤ25が固定されており、伝動軸22と平行に配置された伝動軸26に、シフトギヤ27がスプライン構造にて伝動軸26と一体回転及びスライド自在に外嵌されている。これにより、シフトギヤ27をスライド操作して低速ギヤ24及び高速ギヤ25に咬合させることによって、静油圧式無段変速装置21の出力軸21b及び伝動軸22の動力が、高低2段に変速されて伝動軸26に伝達される。
【0028】
図6に示すように、ミッションケース17の右の横側部における上部の前部に油圧ポンプ59が連結されており、油圧ポンプ59の入力軸59aがミッションケース17の内部に入り込んでいる。静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと油圧ポンプ59の入力軸59aとが同芯状に配置されており、静油圧式無段変速装置21の入力軸21aと油圧ポンプ59の入力軸59aとに亘って、伝動軸60が連結部材61を介してスプライン構造により連結されている。これにより、エンジン19の動力が静油圧式無段変速装置21の入力軸21aに伝達され、駆動軸60を介して油圧ポンプ59に伝達されて、油圧ポンプ59が駆動される。
【0029】
図6に示すように、ミッションケース17、右及び左の前車軸ケース20に亘って一対の伝動軸28が突き合わせて配置され、一対の伝動軸28の間にデフ機構29が備えられており、デフ機構29のケース29aが回転自在にミッションケース17に支持されている。伝動軸26に伝動ギヤ30が固定されており、デフ機構29のケース29aに固定された伝動ギヤ31が伝動ギヤ30に咬合している。
【0030】
図6に示すように、円筒部材32がキー構造により一方の伝動軸28に一体回転及びスライド自在に外嵌されており、円筒部材32をスライド操作する操作軸41、及び操作軸41に連係されたデフロックペダル(図示せず)が備えられている。これにより、デフロックペダルを踏み操作すると、操作軸41が回転操作され、円筒部材32がスライド操作されてデフ機構29のケース29aの端部に咬合するのであり、円筒部材32をデフ機構29のケース29aの端部に咬合させることによって、デフ機構29をロック状態とすることができる。
【0031】
図6に示すように、ミッションケース17の後部に走行出力軸34が備えられて後向きに突出しており、デフ機構29のケース29aに固定されたベベルギヤ35が、走行出力軸34に備えられたベベルギヤ36に咬合している。図1に示すように、右及び左の後輪2を支持する後車軸ケース37が備えられて、走行出力軸34と後車軸ケース37の入力軸(図示せず)とに亘って伝動軸38が接続されている。
これにより、図1及び図6に示すように、静油圧式無段変速装置21の出力軸21bの動力が、伝動軸22,26、デフ機構29、伝動軸28を介して右及び左の前輪1に伝達され、デフ機構29のケース29a、走行出力軸34及び伝動軸38を介して右及び左の後輪2に伝達される。
【0032】
図6に示すように、ミッションケース17の内部の壁部と走行出力軸34との間に複数の摩擦板39が備えられ、円盤状の操作部材40が走行出力軸34に相対回転自在に外嵌されており、操作部材40をスライド操作する操作軸42、及び操作軸42に連係されたブレーキペダル(図示せず)が備えられ、ブレーキペダル(図示せず)と静油圧式無段変速装置21とが機械的に連係されている。これにより、ブレーキペダル(図示せず)を踏み操作すると、静油圧式無段変速装置21が中立停止位置に操作されて、操作軸42が回転操作され、操作部材40がスライド操作されて、操作部材40が摩擦板39を押圧し、走行出力軸34に制動が掛かる。走行出力軸34に制動が掛かると、デフ機構29及び伝動軸28を介して右及び左の前輪1に制動が掛かるのであり、走行出力軸34及び伝動軸38を介して右及び左の後輪2に制動が掛かる。
【0033】
[3]
次に、苗植付装置5への植付伝動系について説明する。
図5及び図6に示すように、円筒部材23がワンウェイクラッチ44を介して伝動軸22に外嵌されており、伝動軸22に相対回転自在に外嵌された伝動ギヤ43が円筒部材23に咬合して連結されている。ワンウェイクラッチ44により静油圧式無段変速装置21の出力軸21bの前進の動力が、円筒部材23及び伝動ギヤ43に伝達され、ワンウェイクラッチ44により静油圧式無段変速装置21の出力軸21bの後進の動力が、円筒部材23及び伝動ギヤ43に伝達されない。
【0034】
図5,6,7に示すように、伝動ギヤ45及び6枚の伝動ギヤ46が一体で回転するように互いに連結されて、伝動ギヤ45及び6枚の伝動ギヤ46が伝動軸26に相対回転自在に外嵌されており、伝動ギヤ43,45が咬合している。伝動軸26と平行に配置された伝動軸47に6枚の変速ギヤ48が相対回転自在に外嵌されて、6枚の伝動ギヤ46及び変速ギヤ48の各々が咬合している。
【0035】
図5及び図7に示すように、変速ギヤ48が外嵌された伝動軸47の部分が中空状(円筒状)に構成されて、この伝動軸47の部分の外周部に円形の開口部(図示せず)が形成されており、伝動軸47の開口部にボール33が配置されている。伝動軸47に操作ロット49がスライド操作自在に挿入されており、操作ロッド49の先端部に大径部49aが備えられ、操作ロッド49の中間部に6個の環状の凹部49bと1個の環状の凹部49cが形成されている。操作ロッド49の凹部49b,49cに係合可能なデテントボール62が、ミッションケース17に備えられている。
【0036】
以上のように6枚の伝動ギヤ46及び変速ギヤ48及び操作ロッド49等により、植付変速機構50(伝動遮断機構に相当)が構成されている。操作ロッド49をスライド操作して、操作ロッド49の大径部49aにより選択したボール33を外方に押し出して、選択したボール33を伝動軸47の開口部と変速ギヤ48の内周部とに入り込ませることによって、一つの変速ギヤ48を伝動軸47に連結する。これにより、操作ロッド49により6枚の変速ギヤ48のうちの一つの変速ギヤ48を選択して伝動軸47に連結することによって、伝動軸26の動力が6段に変速されて伝動軸47に伝達される。
【0037】
図7に示すように、植付変速機構50において、操作ロッド49をスライド操作して伝動軸26の動力を6段に変速する場合、変速ロッド49の凹部49bの一つにデテントボール62が係合して、操作ロッド49が保持される。操作ロッド49の凹部49cにデテントボール62が係合する位置まで操作ロッド49をスライド操作すると、操作ロッド49の大径部49aが全てのボール33から図7の紙面右方に離れる。これにより、全てのボール33が変速ギヤ48から伝動軸47の内方側に離れて、全ての変速ギヤ48が伝動軸47に連結されない状態(相対回転自在に外嵌された状態)となるのであり、伝動軸26の動力が植付変速機構50で遮断された状態となる(植付変速機構50を中立停止位置に操作した状態に相当)。
【0038】
図5及び図7に示すように、ミッションケース17の後部の上部に出力軸51が備えられて後向きに突出しており、出力軸51に相対回転自在に外嵌されたベベルギヤ52が伝動軸47に固定されたベベルギヤ53に咬合している。シフト部材54がスプライン構造により出力軸51と一体回転及びスライド自在に外嵌され、シフト部材54をベベルギヤ52との咬合側に付勢するバネ55が備えられて、シフト部材54をベベルギヤ52から離し操作する操作ロッド56が備えられており、伝動軸47の動力を出力軸51に伝動及び遮断自在な植付クラッチ57が構成されている。図1に示すように、出力軸51と苗植付装置5の入力軸(図示せず)とに亘って、伝動軸58が接続されている。
【0039】
これにより、図1,5,6,7に示すように、伝動軸26の動力が植付変速機構50、ベベルギヤ52,53、植付クラッチ57、出力軸51及び伝動軸58を介して苗植付装置5に伝達される。植付変速機構50により苗植付装置5(伝動軸47)に伝達される動力を変速することにより、苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付間隔(機体の作業走行速度に対する苗植付装置5(植付アーム8)の植付速度の比)を変更することができる。
【0040】
[4]
次に、右及び左の肥料タンク16(貯留部に相当)、第1,2,3,4,5,6,7,8側条ポンプ80a,80b,80c,80d,80e,80f,80g,80h(繰り出し部に相当)、及び第1,2,3,4深層ポンプ81a,81b,81c,81d(繰り出し部に相当)の構造について説明する。
【0041】
図1,2,3に示すように、エンジン19を覆うボンネット12の下部の右及び左横側に、畦から運転座席11への乗降用のステップ13が備えられており、支持フレーム18及び前車軸ケース20から、前及び後の支持フレーム14が右及び左のステップ13の横外側に延出され上方に延出されて、4個の予備苗のせ台14aが右及び左のステップ13の横外側に位置するように前及び後の支持フレーム14に支持されている。
【0042】
図3,14,15に示すように、前及び後の支持フレーム14に、前及び後の支持フレーム15が連結されて右及び左横側に延出されており、板材を折り曲げて構成された支持フレーム63が前及び後の支持フレーム15に亘って連結されている。液状の肥料(農用供給体に相当)を貯留する右及び左の肥料タンク16が、支持フレーム63に載置されて支持されており、右及び左の肥料タンク16の底部に一体的に形成された前及び後のフランジ部16aが、前及び後の支持フレーム15に連結された固定部15aにボルト連結されている。図1,2,3に示すように、右及び左の肥料タンク16は合成樹脂製で半透明に構成され、縦長状に構成されており、機体の右及び左横側で予備苗のせ台14aの下方に、右及び左の肥料タンク16が前後方向に沿って配置されている。
【0043】
図3,14,15に示すように、右及び左の肥料タンク16の内部における前後方向中央において、上下軸芯P1周りに攪拌羽根78が回転自在に支持され、攪拌羽根78を回転駆動する電動モータ79が、右及び左の肥料タンク16の底部で支持フレーム63の間に備えられている。これにより、電動モータ79により攪拌羽根78を回転駆動し、液状の肥料を攪拌することによって、液状の肥料の固化を防止している。
【0044】
図14,15,16に示すように、正面視逆三角形状の前及び後のブラケット65が、支持フレーム63の前部及び後部に下向きに連結されており、前及び後のブラケット65に亘って上及び下の補強ロッド66が連結されている。左の肥料タンク16の下方において、第1,2,3,4側条ポンプ80a,80b,80c,80d、及び第1,2深層ポンプ81a,81bが、前及び後のブラケット65に亘って左右方向に向いた状態で、前後方向(左の肥料タンク16の長手方向に沿う方向)に並べて連結されている。図4に示すように、右の肥料タンク16の下方において、第5,6,7,8側条ポンプ80e,80f,80g,80h、及び第3,4深層ポンプ81c,81dが、前及び後のブラケット65に亘って左右方向に向いた状態で、前後方向(右の肥料タンク16の長手方向に沿う方向)に並べて連結されている。
【0045】
図14,15,16に示すように、第1〜4側条ポンプ80a〜80d及び第1,2深層ポンプ81a,81bが内部に互いに連通しており、左の肥料タンク16の前部下部から延出された供給路67が最前部の第1深層ポンプ81aに接続され、左の肥料タンク16の後部下部から延出された供給路68,70が最後部の第4側条ポンプ80dに接続されている。図4に示すように、第5〜8側条ポンプ80e〜80h及び第3,4深層ポンプ81c,81dが内部に互いに連通しており、右の肥料タンク16の前部下部から延出された供給路67が最前部の第4深層ポンプ81dに接続され、右の肥料タンク16の後部下部から延出された供給路68,70が最後部の第5側条ポンプ80eに接続されている。
【0046】
図14,15,16に示すように、供給路67,68はゴムホース製でエルボ状に構成されており、供給路70は合成樹脂製でT字状に構成されて、供給路70から斜め外方下方に向けて排出路70aが延出されている(図3参照)。供給路70の排出路70aに開閉弁(図示せず)が内装されており、開閉弁を操作する操作アーム70bが供給路70の排出路70aに備えられている。
【0047】
これによって、図14,15,16に示すように、左の肥料タンク16の液状の肥料が供給路67を介して第1深層ポンプ81aの吸引部99に供給され、供給路68,70を介して第4側条ポンプ80dの吸引部99に供給されて、第1〜4側条ポンプ80a〜80d及び第1,2深層ポンプ81a,81bの吸引部99に供給される。図4に示すように、右の肥料タンク16の液状の肥料が供給路67を介して第4深層ポンプ81dの吸引部99に供給され、供給路68,70を介して第5側条ポンプ80eの吸引部99に供給されて、第5〜8側条ポンプ80e〜80h及び第3,4深層ポンプ81c,81dの吸引部99に供給される。
【0048】
[5]
次に、第1,2,3,4,5,6,7,8側条ノズル82a,82b,82c,82d,82e,82f,82g,82h(供給部に相当)、及び第1,2,3,4深層ノズル83a,83b,83c,83d(供給部に相当)の構造について説明する。
図11及び図13に示すように、各々の伝動ケース6に支持ブラケット73が連結されており、支持軸74が支持ブラケット73に回転自在に、伝動ケース6の下側を右及び左横側に亘って支持されている。支持軸74の両端部にブラケット74aが備えられ、支持軸74の中間部にブラケット74bが備えられており、支持軸74のブラケット74bが支持ブラケット73にボルト連結されている。
【0049】
図11及び図13に示すように、支持軸74のブラケット74aに、パイプ状の第1及び第2側条ノズル82a,82b(第3及び第4側条ノズル82c,82d)(第5及び第6側条ノズル82e,82f)(第7及び第8側条ノズル82g,82h)が連結されており、第1〜8側条ノズル82a〜82hが植付ケース7及び植付アーム8の通過軌跡の横近傍に配置されており、第1〜8側条ノズル82a〜82hの出口が田面内の比較的浅い位置に配置されている。図4に示すように、第1〜8側条ポンプ80a〜80hの各々と第1〜8側条ノズル82a〜82hの各々とに亘って、供給ホース84が接続されている。支持軸74のブラケット74bが支持ブラケット73にボルト連結される位置を変更して、支持ブラケット73に対する支持軸74の角度を変更することにより、第1〜8側条ノズル82a〜82hの出口の位置を独立に上下に変更することができる。
【0050】
図11及び図12に示すように、支持フレーム64の4箇所に支持ブラケット75が連結されて、支持ブラケット75に支持パイプ129が横軸芯P3廻りに回転自在に支持され、支持ブラケット75の横軸芯P3周りに支持パイプ129を介して、支持ブラケット76が揺動自在に支持されている。支持ブラケット75に形成された複数の開口部75aのうちの一つを介して、ボルト77により支持ブラケット75,76を連結することにより、支持ブラケット75に対する支持ブラケット76の角度を変更することができる。
【0051】
図11及び図12に示すように、支持パイプ129にに支持ブラケット69が連結されて、支持パイプ129の各々にパイプ状の第1〜4深層ノズル83a〜83dが連結されており、図4に示すように、第1〜4深層ポンプ81a〜81dの各々と第1〜4深層ノズル83a〜82dの各々とに亘って、供給ホース85が接続されている。
【0052】
図4及び図11に示すように、第1及び第2側条ノズル82a,82bの間、第3及び第4側条ノズル82c,82dの間、第5及び第6側条ノズル82e,82fの間、第7及び第8側条ノズル82g,82hの間に、第1〜4深層ノズル83a〜83dが配置されており、第1〜4深層ポンプ81a〜81dの出口が第1〜8側条ノズル82a〜82hの出口よりも深い位置に配置されている。この場合、第2及び第3深層ノズル83b,83cは隣接する接地フロート9の間に配置されており、第1及び第4深層ノズル83a,83dは接地フロート9に開口された長孔9aを通って延出されている。
【0053】
図11及び図12に示すように、支持ブラケット69の受け部69aと支持ブラケット76の受け部76aとに亘ってバネ87が接続されて、支持ブラケット76に対する支持ブラケット69及び第1深層ノズル83a(第2,3,4深層ノズル83b,83c,83d)の角度(位置)が決められている。前述のように、支持ブラケット75に対する支持ブラケット76の角度を変更することにより、第1〜4深層ノズル83a〜83dの出口の位置を独立に上下に変更することができるのであり、第1〜4深層ノズル83a〜83dに下方から障害物が当たった場合、バネ87が圧縮されながら第1〜4深層ノズル83a〜83dが上方に逃げる。
【0054】
図1,2,4に示すように、左の肥料タンク16側の4本の供給ホース84と2本の供給ホース85(第1〜4側条ポンプ80a〜80d及び第1,2深層ポンプ81a,81bと第1〜4側条ノズル82a〜82d及び第1,2深層ノズル83a,83bとを接続する供給ホース84,85)、右の肥料タンク16側の4本の供給ホース84と2本の供給ホース85(第5〜8側条ポンプ80e〜80h及び第3,4深層ポンプ81c,81dと第5〜8側条ノズル82e〜82h及び第3,4深層ノズル83c,83dとを接続する供給ホース84,85)、並びにリンク機構3の1つのトップリンク3aにおいて、リンク機構3のトップリンク3aの左横側に、左の肥料タンク16側の4本の供給ホース84と2本の供給ホース85が取り付けられ、リンク機構3のトップリンク3aの右横側に、右の肥料タンク16側の4本の供給ホース84と2本の供給ホース85が取り付けられている。リンク機構3に苗植付装置5を着脱自在に構成した場合、接続及び分離自在なカプラー97を、供給ホース84,85におけるリンク機構3のトップリンク3aの部分に備える。
【0055】
以上の構造により、図4及び図11に示すように、苗植付装置5による苗の植え付けに伴って、後述する[6]に記載のように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dが駆動されて、左の肥料タンク16の液状の肥料が、第1〜4側条ノズル82a〜82d及び第1,2深層ノズル83a,83bを介して、田面の比較的浅い位置及び深い位置に供給され、右の肥料タンク16の液状の肥料が、第5〜8側条ノズル82e〜82h及び第3,4深層ノズル83c,83dを介して、田面の比較的浅い位置及び深い位置に供給される。
【0056】
[6]
次に、第1〜8側条ポンプ80a〜80h、及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの駆動構造について説明する。
図5及び図8に示すように、ミッションケース17に第1施肥出力軸88が回転自在に支持されており、第1施肥出力軸88がミッションケース17から外部に突出している。第1施肥出力軸88に伝動ギヤ90が固定されて、植付変速機構50の最も小径の伝動ギヤ46に伝動ギヤ90が咬合している。
【0057】
図5及び図8に示すように、支持ケース91がミッションケース17の外部に固定されて、第1施肥出力軸88と同芯状で相対回転自在に、第2施肥出力軸89が支持ケース91に回転自在に支持されている。シフト部材92がスプライン構造にて第2施肥出力軸89と一体回転及びスライド自在に外嵌されており、シフト部材92を第1施肥出力軸88への咬合側に付勢するバネ93、シフト部材92を第1施肥出力軸88から離間操作する操作軸94が備えられて、第1施肥出力軸88とシフト部材92との間で施肥クラッチ95(繰り出しクラッチに相当)が構成されている。
【0058】
図2及び図3に示すように、複数段に変速自在な変速機構96が右のステップ13の下部に固定され、図4,5,8,9に示すように、第2施肥出力軸89に固定された出力スプロケット89aと、変速機構96の入力スプロケット96aとに亘って伝動チェーン98が巻回されている。図2,9,10に示すように、変速機構96を変速操作する2本のシフト軸96dが右横側に突出しており、変速機構96のシフト軸96dをスライド操作する2本の操作レバー71が、変速機構96の上下軸芯P2周りに揺動自在に支持されている。
【0059】
図2,9,10に示すように、右のステップ13において操作レバー71の上方に位置する部分に開口部13aが形成されて、側面視で(図10参照)で右のステップ13の開口部13aよりも少し下側に、操作レバー71が配置されており、右及び左ののステップ13(右のステップ13の開口部13a)を覆うようにゴム製のステップマット72が載置されている。通常は、ステップマット72により右のステップ13の開口部13a及び操作レバー72が隠れており、ステップマット72をめくり上げることによって、右のステップ13の開口部13aから操作レバー71を操作して、変速機構96の変速操作を行う。
【0060】
図3,4,9に示すように、変速機構96から左の出力軸96bが左横側に延出されており、変速機構96の左の出力軸96bが支持フレーム18の上側で伝動ベルト86の下側を通って、第4側条ポンプ80dの近傍にまで延出されており、図15及び図16に示すように、後のブラケット65に連結された軸受け部65aに、変速機構96の左の出力軸96bが回転自在に支持されている。変速機構96から右の出力軸96cが右横側に延出されて、第5側条ポンプ80eの近傍にまで延出されており、後のブラケット65に連結された軸受け部65aに、変速機構96の右の出力軸96cが回転自在に支持されている。
【0061】
図4,15,16に示すように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dは、液状の肥料を圧送するローター100、ローター100に連結された駆動軸101、駆動軸101に相対回転自在に外嵌された一対の伝動スプロケット102、キー構造にて駆動軸101に一体回転及びスライド自在に外嵌されたシフト部材103、シフト部材103を伝動スプロケット102への咬合側に付勢するバネ104等を備えて構成されている。第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吐出部105の最上部にプラグ106が接続されて、プラグ106に供給ホース84,85が接続されている。
【0062】
図14及び図15に示すように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吐出部105の圧力を検出する詰まりセンサー107が、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吐出部105の最下部に備えられており、詰まりセンサー107の表示部107a(LED等)が詰まりセンサー107の下部に備えられている。これにより、詰まりセンサー107の表示部107aが機体の右及び左横側に備えられた状態となり、機体の右又は左横側の補助作業者が詰まりセンサー107の表示部107aを比較的容易に目視することができる。
【0063】
図14,15,16に示すように、変速機構96の左の出力軸96bの端部に出力スプロケット96eが固定されて、第4側条ポンプ80dの伝動スプロケット102と、変速機構96の左の出力軸96bの出力スプロケット96eとに亘って伝動チェーン108が巻回されており、第1〜4側条ポンプ80a〜80d及び第1,2深層ポンプ81a,81bの伝動スプロケット102に亘って伝動チェーン108が巻回されている。変速機構96の右の出力軸96cの端部に出力スプロケット96eが固定されて、第5側条ポンプ80eの伝動スプロケット102と、変速機構96の右の出力軸96cの出力スプロケット96eとに亘って伝動チェーン108が巻回されており、第5〜8側条ポンプ80e〜80h及び第3,4深層ポンプ81c,81dの伝動スプロケット102に亘って伝動チェーン108が巻回されている。
【0064】
以上の構造により図4,5,6,7に示すように、エンジン19の動力が静油圧式無段変速装置21、伝動軸22,26、デフ機構29、伝動軸28を介して右及び左の前輪1に伝達され、走行出力軸34及び伝動軸38を介して右及び左の後輪2に伝達される。静油圧式無段変速装置21の前進の動力がワンウェイクラッチ44、伝動ギヤ43,45、植付変速機構50(伝動ギヤ46,48)、ベベルギヤ52,53、植付クラッチ57、出力軸51及び伝動軸58を介して苗植付装置5に伝達される。
【0065】
図4及び図5に示すように、ワンウェイクラッチ44と植付変速機構50(伝動ギヤ46)との間の動力(植付変速機構50において、操作ロッド49により伝動軸26の動力が6段に変速されて伝動軸47に伝達される前の動力)が、伝動ギヤ46,90、第1施肥出力軸88、施肥クラッチ95、第2施肥出力軸89、伝動チェーン98、変速機構96、伝動チェーン108、伝動スプロケット102及びシフト部材103を介して、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dに伝達される。
【0066】
図4及び図15に示すように、液状の肥料が第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吸引部99に入り込み、ローター100の回転により液状の肥料が、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吐出部105に圧送されて、プラグ106から供給ホース84,85を介して、第1〜8側条ノズル82a〜82h及び第1〜4深層ノズル83a〜83dに供給される。変速機構96を変速操作することによって、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの駆動速度を変速して、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dによる液状の肥料の供給量を変更することができる。
【0067】
この場合、図15に示すように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吐出部105の最上部にプラグ106が接続されているので、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吸引部99及び吐出部105に空気が滞留しかけても、空気がプラグ106から供給ホース84,85に圧送され易くなる。第1〜8側条ノズル82a〜82h及び第1〜4深層ノズル83a〜83d、供給ホース84,85に液状の肥料の詰まりが発生すると、液状の肥料の詰まりが発生した第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吐出部105の圧力が上昇するので、圧力の上昇を検出した詰まりセンサー107の表示部107aが点灯する。
【0068】
[7]
次に、植付クラッチ57及び施肥クラッチ95(図5,7,8参照)の操作について説明する。
図2,3,19に示すように、右及び左の前輪1を操向操作する操縦ハンドル116の下側の右横側に操作レバー117が備えられて、操作レバー117が右の横外方に延出されている。操作レバー117は中立位置Nから上方の第1上昇位置U1及び第2上方位置U2、下方の第1下降位置D1及び第2下降位置D2、後方の右マーカー位置R及び前方の左マーカー位置Lの十字方向に操作自在に構成されて、中立位置Nに付勢されており、操作レバー117の操作位置が制御装置118に入力されている。
【0069】
図19に示すように、右及び左のマーカー(図示せず)が苗植付装置5の右及び左横側部に備えられており、右及び左のマーカーが田面に接地して次の作業行程の指標を形成する作用姿勢、及び田面から上方に離れた格納姿勢に変更自在に構成されている。右及び左のマーカーを作用及び格納姿勢に操作する電動モータ(図示せず)が備えられており、制御装置118により電動モータが作動操作される。植付クラッチ57を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ119、施肥クラッチ95を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ120が備えられており、制御装置118により電動モータ119,120が作動操作される。
【0070】
図19に示すように、操作レバー117を第2上昇位置U2に操作すると(第2上昇位置U2に操作して中立位置Nに操作すると)、電動モータ119,120により植付及び施肥クラッチ57,95が遮断状態に操作され、後述する自動昇降制御が停止され、右及び左のマーカーが格納姿勢に操作されて、苗植付装置5が上限位置まで上昇駆動される。操作レバー117を第2下降位置D2に操作すると(第2下降位置D2に操作して中立位置Nに操作すると)、苗植付装置5が下降駆動され、接地フロート9が田面に接地すると自動昇降制御が作動し、苗植付装置5が田面に接地して停止した状態となる。操作レバー117を第2下降位置D2に操作した後(第2下降位置D2に操作して中立位置Nに操作した後)、操作レバー117を再び第2下降位置D2に操作すると、電動モータ119,120により植付及び施肥クラッチ57,95が伝動状態に操作される。
【0071】
この場合、自動昇降制御は次のようにして行われる。
苗植付装置5に中央の接地フロート9の後部が上下に揺動自在に支持されて、苗植付装置5に対する中央の接地フロート9の高さを検出するポテンショメータ(図示せず)が備えられており、ポテンショメータの検出値が制御装置118に入力されている。機体の進行に伴って中央の接地フロート9が田面に接地追従するのであり、ポテンショメータの検出値により苗植付装置5に対する中央の接地フロート9の高さを検出することによって、田面(中央の接地フロート9)から苗植付装置5までの高さを検出することができる。これにより、苗植付装置5に対する中央の接地フロート9の高さ(田面(中央の接地フロート9)から苗植付装置5までの高さ)に基づいて、苗植付装置5が田面から設定高さに維持されるように(ポテンショメータの検出値が設定値に維持されるように)、油圧シリンダ4が作動操作されて、苗植付装置5が自動的に昇降駆動される。
【0072】
図19に示すように、操作レバー117を右マーカー位置Rに操作すると(右マーカー位置Rに操作して中立位置Nに操作すると)、右のマーカーが作用姿勢に操作されるのであり、操作レバー117を左マーカー位置Lに操作すると(左マーカー位置Lに操作して中立位置Nに操作すると)、左のマーカーが作用姿勢に操作される。
【0073】
図19に示すように、操作レバー117を第1上昇位置U1に操作すると、電動モータ119,120により植付及び施肥クラッチ57,95が遮断状態に操作されて、自動昇降制御が停止され、右及び左のマーカー50が格納姿勢に操作されて、苗植付装置5が上昇駆動される。この場合、操作レバー117を第1上昇位置U1に操作している間だけ苗植付装置5が上昇駆動されるのであり、操作レバー117を第1上昇位置U1から中立位置Nに操作すると、苗植付装置5の上昇駆動が停止する。
【0074】
図19に示すように、操作レバー117を第1下降位置D1に操作すると、苗植付装置5が下降駆動される。この場合、操作レバー117を第1下降位置D1に操作している間だけ苗植付装置5が下降駆動されるのであり、操作レバー117を第1下降位置D1から中立位置Nに操作すると、苗植付装置5の下降駆動が停止する。これにより、操作レバー117を第1上昇及び第1下降位置U1,D1に操作することにより、リンク機構3(苗植付装置5)を任意の高さに昇降駆動して停止させることができる。
【0075】
[8]
植付作業の開始前に空の右及び左の肥料タンク16に液状の肥料を入れた後に、混入した空気を抜く作業を以下のようにして行う。
路上等において、苗植付装置5をスタンド(図示せず)により支持しておき(植付及び施肥クラッチ57,95は遮断状態)、第1〜8側条ノズル82a〜82h及び第1〜4深層ノズル83a〜83dの出口から出る液状の肥料を、容器(バケツ等)(図示せず)で受けることができるようにしておく。
【0076】
前項[3]、図5,6,7に示すように、植付変速機構50において、操作ロッド49の凹部49cにデテントボール62が係合する位置まで操作ロッド49をスライド操作して、全ての変速ギヤ48が伝動軸47に連結されない状態(相対回転自在に外嵌された状態)として、伝動軸26の動力が植付変速機構50で遮断された状態としておく。前項[2]、図5及び図6に示すように、シフト部材27を中立位置(低速ギヤ24及び高速ギヤ25の両方に咬合しない位置)にスライド操作し(右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に動力が伝達されない状態)、静油圧式無段変速装置21を前進側に操作しておく。
【0077】
以上の状態において、前項[7]及び図19に示すように、操作レバー117を第2下降位置D2に操作した後に再び第2下降位置D2に操作して、植付及び施肥クラッチ57,95を伝動状態に操作する。これにより、図4及び図5に示すように、静油圧式無段変速装置21の出力軸21b及び伝動軸22の動力が、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に伝達されない状態、並びに苗植付装置5に伝達されない状態で、施肥クラッチ95を介して前項[6]に記載のように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dに伝達される。これにより、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81d、供給ホース84,85、第1〜8側条ノズル82a〜82h及び第1〜4深層ノズル83a〜83dに混入した空気が、液状の肥料と一緒に第1〜8側条ノズル82a〜82h及び第1〜4深層ノズル83a〜83dから排出されるのであり、液状の肥料は容器に回収される。
【0078】
この場合、図15に示すように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吐出部105の最上部にプラグ106が接続されているので、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吸引部99及び吐出部105に空気が滞留しかけても、空気がプラグ106から供給ホース84,85に圧送され易くなる。第1〜8側条ノズル82a〜82h及び第1〜4深層ノズル83a〜83d、供給ホース84,85に液状の肥料の詰まりが発生すると、液状の肥料の詰まりが発生した第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの吐出部105の圧力が上昇するので、圧力の上昇を検出した詰まりセンサー107の表示部107aが点灯する。
【0079】
植付作業の終了後に右及び左の肥料タンク16に残った液状の肥料を回収する場合、図14及び図16に示す供給路70の排出路70aの下方に容器(バケツ等)(図示せず)を置き、供給路70の操作アーム70bにより開閉弁を開操作して、右及び左の肥料タンク16に残った液状の肥料を供給路70の排出路70aから排出して回収する。
右及び左の肥料タンク16に残った液状の肥料の回収を終了すると、右及び左の肥料タンク16に水を入れ、前述と同様に、静油圧式無段変速装置21の出力軸21b及び伝動軸22の動力が、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に伝達されない状態、並びに苗植付装置5に伝達されない状態で、施肥クラッチ95を介して前項[6]に記載のように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dに伝達されるようにする。これにより、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81d、供給ホース84,85、第1〜8側条ノズル82a〜82h及び第1〜4深層ノズル83a〜83dの内部を洗浄することができる。
【0080】
[9]
次に、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの停止操作構造について説明する。
図15及び図16に示すように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの各々の上部に、支持ピン109が横向き取り付けられ、支持ピン109の各々に操作アーム110が揺動自在に支持されて、操作アーム110の各々がシフト部材103の各々に係合している。
【0081】
図1,2,19に示すように、運転座席11の後側に第1,2,3,4クラッチレバー111a,111b,111c,111dが備えられて、第1〜4クラッチレバー111a〜111dの各々に2本のレリーズワイヤ112a,112b,112c,112dのインナーが接続されている。図14,15,17に示すように、第1〜4側条ポンプ80a〜80d及び第1,2深層ポンプ81a,81bの下部に連結されたブラケット130に、第1,2クラッチレバー111a,111bのレリーズワイヤ112a,112bのアウターが接続され、第5〜8側条ポンプ80e〜80g及び第3,4深層ポンプ81c,81dの下部に連結されたブラケット130に、第3,4クラッチレバー111c,111dのレリーズワイヤ112c,112dのアウターが接続されている。
【0082】
図15,17,19に示すように、第1クラッチレバー111aのレリーズワイヤ112aのインナーが、長孔113aを備えた接続部材113を介して、第1,2側条ポンプ80a,80b及び第1深層ポンプ81aの操作アーム110に接続されている。
第2クラッチレバー111bのレリーズワイヤ112bのインナーが、長孔113aを備えた接続部材113を介して、第3,4側条ポンプ80c,80d及び第2深層ポンプ81bの操作アーム110に接続されている。
第3クラッチレバー111cのレリーズワイヤ112cのインナーが、長孔113aを備えた接続部材113を介して、第5,6側条ポンプ80e,80f及び第3深層ポンプ81cの操作アーム110に接続されている。
第4クラッチレバー111cのレリーズワイヤ112dのインナーが、長孔113aを備えた接続部材113を介して、第7,8側条ポンプ80g,80h及び第4深層ポンプ81dの操作アーム110に接続されている。
【0083】
これにより、図15及び図19に示すように、第1〜4クラッチレバー111a〜111dを伝動位置に操作すると、シフト部材103が伝動スプロケット102に咬合して、前項[6]に記載のように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dが駆動される。
【0084】
例えば第1クラッチレバー111aを遮断位置に操作すると、レリーズワイヤ112aが引き操作されて、操作アーム110により第1,2側条ポンプ80a,80b及び第1深層ポンプ81aのシフト部材103が伝動スプロケット102から離し操作され、第1,2側条ポンプ80a,80b及び第1深層ポンプ81aが停止する。同様に、第2クラッチレバー111bにより、第3,4側条ポンプ80c,80d及び第2深層ポンプ81bを停止させることができる。第3クラッチレバー111cにより、第5,6側条ポンプ80e,80f及び第3深層ポンプ81cを停止させることができる。第4クラッチレバー111cにより、第7,8側条ポンプ80g,80h及び第4深層ポンプ81dを停止させることができる。
【0085】
図15,16,18に示すように、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの操作アーム110の各々の下部に、ピアノ線で構成された操作部材114が連結され、操作部材114が支持ピン109に当て付けられながら上方に延出されている。伝動スプロケット102及び操作アーム110等を覆うカバー115が支持フレーム63に連結されており、カバー115に開口されたレバーガイド115aに、接続部材114が通されて上方に延出されている。
【0086】
図15,16,18に示すように、第1〜4クラッチレバー111a〜111dを伝動及び遮断位置に操作することにより、操作アーム110が揺動操作されると、操作部材114がカバー115のレバーガイド115aに沿って移動する。操作部材114の上部を手で持って図15及び図18の紙面下方に移動させると、操作アーム110が揺動操作されて、シフト部材103が伝動スプロケット102から離し操作されるのであり、操作部材114をカバー115のレバーガイド115aに係合させることにより、シフト部材103を伝動スプロケット102から離し操作した状態に保持できる。これにより、第1〜4クラッチレバー111a〜111dとは関係なく、操作部材114により、第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dの各々を独立で停止させることができる。
【0087】
[10]
次に、第1,2,3,4少数条クラッチ121a,121b,121c,121d、第1,2,3,4縦送りクラッチ122a,122b,122c,122d、及び第1〜8側条ポンプ80a〜80h及び第1〜4深層ポンプ81a〜81dとの連係状態について説明する。
図2及び図19に示すように、伝動ケース6の各々の植付ケース7の支持部に、第1〜4少数条クラッチ121a〜121dが左の伝動ケース6から順に備えられている。第1〜4少数条クラッチ121a〜121dは1つの伝動ケース6において、2つの植付ケース7に動力を伝動及び遮断状態に操作することにより、2つの植付ケース7を作動及び停止操作する。
【0088】
図2及び図19に示すように、苗のせ台10の苗のせ面の各々に、一対の無端回動ベルト型式の縦送り機構123が備えられており、苗のせ台10の隣接する2つの苗のせ面の縦送り機構123が一体で作動するように構成されて、一体で作動する4つの縦送り機構123が4組備えられている。苗のせ台10が右及び左の往復横送り駆動の移動限度に達すると、縦送り機構123が所定量だけ駆動されて、苗のせ台10に載置された苗が苗のせ台10の下部に送られる。4組の縦送り機構123に対して、第1〜4縦送りクラッチ122a〜122dが左から順に備えられており、第1〜4縦送りクラッチ122a〜122dは、苗のせ台10の隣接する2つの苗のせ面の縦送り機構123に動力を伝動及び遮断状態に操作することにより、苗のせ台10の隣接する2つの苗のせ面の縦送り機構123を作動及び停止操作する。
【0089】
この場合、図19に示すように、電動モータ124により、第1〜4少数条クラッチ121a〜121d及び第1〜4縦送りクラッチ122a〜122dが伝動及び遮断状態に操作される。
第1,2側条ポンプ80a,80b及び第1深層ポンプ81aと、第1少数条クラッチ121a及び第1縦送りクラッチ122aとが対応している。第3,4側条ポンプ80c,80d及び第2深層ポンプ81bと、第2少数条クラッチ121b及び第2縦送りクラッチ122bとが対応している。第5,6側条ポンプ80e,80f及び第3深層ポンプ81cと、第3少数条クラッチ121c及び第3縦送りクラッチ122cとが対応している。第7,8側条ポンプ80g,80h及び第4深層ポンプ81dと、第4少数条クラッチ121d及び第4縦送りクラッチ122dとが対応している。
【0090】
図19に示すように、第1〜4クラッチレバー111a〜111dが遮断位置に操作されたことを検出するリミットスイッチ125が備えられており、リミットスイッチ125の検出信号が制御装置118に入力されている。
これにより、前項[9]に記載のように、第1クラッチレバー111aを伝動位置に操作すると、第1,2側条ポンプ80a,80b及び第1深層ポンプ81aが駆動され、第1少数条クラッチ121a及び第1縦送りクラッチ122aが伝動状態に操作されるのであり、第1クラッチレバー111aを遮断位置に操作すると、第1,2側条ポンプ80a,80b及び第1深層ポンプ81aが停止し、第1少数条クラッチ121a及び第1縦送りクラッチ122aが遮断状態に操作される。この操作は、第2,3,4クラッチレバー111b,111c,111dにおいても同様に行われる。
【0091】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、図7に示すように、操作ロッド49の凹部49cにデテントボール62が係合する位置まで操作ロッド49をスライド操作し、全ての変速ギヤ48が伝動軸47に連結されない状態(相対回転自在に外嵌された状態)を得る構成を廃止して、これに代えて図20に示すように構成してもよい。
【0092】
図20に示すように、連動及び非連動位置に操作自在な切換スイッチ126、プッシュオン・プッシュオフ型式の植付クラッチスイッチ127、プッシュオン・プッシュオフ型式の施肥クラッチスイッチ128が備えられており、切換スイッチ126、植付及び施肥クラッチスイッチ127,128の操作信号が制御装置118に入力されている。
これにより、切換スイッチ126を連動位置に操作していると、前項[7]に記載のように、操作レバー117を第2上昇位置U2及び第2下降位置D2に操作することによって、電動モータ119,120により植付及び施肥クラッチ57,95が同時に伝動状態に操作され、同時に遮断状態に操作される。
【0093】
図20に示すように、切換スイッチ126を非連動位置に操作すると、操作レバー117を中立位置Nに操作している状態において、植付クラッチスイッチ127を操作することによって、電動モータ119により植付クラッチ57だけを伝動及び遮断状態に操作することができるのであり、施肥クラッチスイッチ128を操作することによって、電動モータ120により施肥クラッチ95だけを伝動及び遮断状態に操作することができる。このように切換スイッチ126を非連動位置に操作した状態において、前項[8]に記載のような、植付作業の開始前に空の右及び左の肥料タンク16に液状の肥料を入れた後に、混入した空気を抜く作業を行えばよい。
【0094】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]では、8条植型式の苗植付装置5を示している。これに対して、6条植型式の苗植付装置5では、図21に示すように、6個の第1〜6側条ポンプ80a〜80f及び3個の第1,2,3深層ポンプ81a,81b,81c、6個の第1〜6側条ノズル82a〜82f及び3個の第1,2,3深層ノズル83a,83b,83c、長孔9aを備えた3個の接地フロート9を備えている。
【0095】
5条植型式の苗植付装置5では、図22に示すように、5個の第1〜5側条ポンプ80a〜80e及び3個の第1,2,3深層ポンプ81a,81b,81c、5個の第1〜5側条ノズル82a〜82e及び3個の第1,2,3深層ノズル83a,83b,83c、長孔9aを備えた2個の接地フロート9、及び長孔9aを備えない1個の接地フロート9を備えている。
【0096】
本発明は、液状の肥料を使用する乗用型田植機ばかりではなく、液状の薬剤、粉粒状の肥料や薬剤を使用する乗用型田植機にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】乗用型田植機の全体正面図
【図4】エンジン、静油圧式無段変速装置、ミッションケース、変速機構、第1〜8側条ポンプ及び第1〜4深層ポンプの伝動系(農用供給体伝動系)、並びに、第1〜8側条ポンプ及び第1〜4深層ポンプと、第1〜8側条ノズル及び第1〜4深層ノズルとの接続状態を示す図
【図5】エンジン、静油圧式無段変速装置、ミッションケース、苗植付装置の伝動系(植付伝動系)、並びに、変速機構、第1〜8側条ポンプ及び第1〜4深層ポンプの伝動系(農用供給体伝動系)を示す図
【図6】ミッションケースの横断平面図
【図7】ミッションケースの出力軸の付近の横断平面図
【図8】ミッションケースの第1及び第2施肥出力軸の付近の横断平面図
【図9】変速機構の付近の平面図
【図10】変速機構の付近の側面図
【図11】苗植付装置の側面図
【図12】第1〜4深層ノズルの支持構造を示す分解斜視図
【図13】第1〜8側条ノズルの支持構造を示す平面図
【図14】左の肥料タンク、第1〜4側条ポンプ及び第1,2深層ポンプの付近の側面図
【図15】左の肥料タンク、第1〜4側条ポンプ及び第1,2深層ポンプの付近の縦断正面図
【図16】第1〜4側条ポンプ及び第1,2深層ポンプの付近の平面図
【図17】第1〜8側条ポンプ及び第1〜4深層ポンプの操作アーム、ブラケットの付近の底面図
【図18】第1〜8側条ポンプ及び第1〜4深層ポンプのカバー、操作部材の付近の側面図
【図19】第1〜8側条ポンプ及び第1〜4深層ポンプ、植付クラッチ、施肥クラッチ、第1〜4少数条クラッチ、第1〜4縦送りクラッチの連係状態を示す図
【図20】発明の実施の第1別形態において、第1〜8側条ポンプ及び第1〜4深層ポンプ、植付クラッチ、施肥クラッチ、第1〜4少数条クラッチ、第1〜4縦送りクラッチの連係状態を示す図
【図21】発明の実施の第2別形態において、6条植型式の苗植付装置の第1〜6側条ポンプ及び第1,2,3深層ポンプと、第1〜6側条ノズル及び第1,2,3深層ノズルとの接続状態を示す図
【図22】発明の実施の第2別形態において、5条植型式の苗植付装置の第1〜5側条ポンプ及び第1,2,3深層ポンプと、第1〜5側条ノズル及び第1,2,3深層ノズルとの接続状態を示す図
【符号の説明】
【0098】
5 苗植付装置
16 貯留部
50 伝動遮断機構、植付変速機構
57 植付クラッチ
80a〜80h,81a〜81d 繰り出し部
82a〜82h,83a〜83d 供給部
95 繰り出しクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植付装置と、農用供給体を貯留する貯留部と、前記貯留部の農用供給体を繰り出す繰り出し部と、前記繰り出し部からの農用供給体を田面に供給する供給部とを備え、
前記苗植付装置に動力を伝達する植付伝動系と、前記繰り出し部に動力を伝達する農用供給体伝動系とを並列的に配置して、
前記植付伝動系を介して苗植付装置に動力を伝達し、前記農用供給体伝動系を介して繰り出し部に動力を伝達するように構成すると共に、
前記苗植付装置よりも上手側の植付伝動系の部分に、動力を伝動及び伝動遮断自在な伝動遮断機構を備えてある乗用型田植機。
【請求項2】
前記苗植付装置よりも上手側の植付伝動系の部分に、中立停止位置を備えた植付変速機構を備えて、
前記植付変速機構を伝動遮断機構としてある請求項1に記載の乗用型田植機。
【請求項3】
苗植付装置と、農用供給体を貯留する貯留部と、前記貯留部の農用供給体を繰り出す繰り出し部と、前記繰り出し部からの農用供給体を田面に供給する供給部とを備え、
前記苗植付装置に動力を伝達する植付伝動系と、前記繰り出し部に動力を伝達する農用供給体伝動系とを並列的に配置して、
前記植付伝動系を介して苗植付装置に動力を伝達し、前記農用供給体伝動系を介して繰り出し部に動力を伝達するように構成すると共に、
前記苗植付装置よりも上手側の植付伝動系の部分に、動力を伝動及び伝動遮断自在な植付クラッチを備え、前記繰り出し部よりも上手側の農用供給体伝動系に、動力を伝動及び遮断自在な繰り出しクラッチを備えて、
前記植付及び繰り出しクラッチの両方を伝動状態に操作可能及び両方を遮断状態に操作可能な連動状態と、前記植付及び繰り出しクラッチを独立に操作可能な非連動状態とを、選択可能に構成してある乗用型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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