説明

乗用移植機

【課題】差動装置による差動を規制することのできる乗用移植機において、様々な走行状態に適用可能で、効率的な作業走行及び路上走行を行うことができる汎用性の高い乗用移植機を提供する。
【解決手段】左右一対の前後輪と、異なる速度で動力を分配伝動させる差動状態で左右の前輪に動力を分配伝動可能な差動装置と、ステアリング作動に連動して旋回内側のサイドクラッチを切断作動させる連係機構とを備え、差動装置の差動状態を制動力によって規制する規制機構42を設けた乗用移植機において、上記制動力を発生させずに差動状態を規制しない路上走行用状態と、差動装置がデフロックされるように上記制動力を発生させるデフロック状態と、デフロック時よりも小さい制動力を発生させて差動状態を規制する作業走行用状態との少なくとも3つの状態に切換可能に前記規制機構42を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
差動装置による差動を規制することのできる乗用移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
左右一対の前輪及び後輪と、異なる速度で動力を分配伝動させる差動状態で左右の前輪に動力を分配伝動可能な差動装置と、左側の後輪への動力伝動を断続させる左側のサイドクラッチと、右側の後輪への動力伝動を断続させる右側のサイドクラッチと、ステアリング作動に連動して旋回内側のサイドクラッチを切断作動させる連係機構とを備え、差動装置の差動状態及び連係機構による左右のサイドクラッチの断続によって小回り旋回を可能にした乗用移植機が従来公知である。
【0003】
このような構成の乗用移植機では、過重の低い側にトルクが分配される差動装置の特性により、左右の後輪の一方が圃場の泥濘にはまった場合に、そこから脱出せなくなる場合があるという通常車両と同様の欠点があり、この欠点を改善すべく、差動装置の差動状態を制動力によって規制する規制機構を設け走行性能を向上させた特許文献1に示す乗用移植機が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4086416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記文献の乗用移植機は、デフロックによって差動状態の有無を切換えることにより、走行性能を向上させるように規制機構が構成されているため、泥濘等のある走行条件の悪い圃場等においてデフロックを行った場合いには車体を旋回させることが困難となる一方で、デフロックを解除した場合には、上記走行条件の悪い圃場において走行を続行することが困難な場合があり、種々の走行条件に適用して効率的な路上走行及び作業走行を行うという観点から課題が残るものとなっていた。
本発明は上記問題を解決し、異なる速度で動力を分配伝動させる差動状態で左右の前輪に動力を分配伝動可能な差動装置と、差動装置の差動状態を制動力によって規制する規制機構とを備えた乗用移植機において、様々な走行状態に適用可能で、効率的な作業走行及び路上走行を行うことができる汎用性の高い乗用移植機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明の乗用移植機は、第1に左右一対の前輪1及び後輪2と、異なる速度で動力を分配伝動させる差動状態で左右の前輪1に動力を分配伝動可能な差動装置23と、左側の後輪2への動力伝動を断続させる左側のサイドクラッチと、右側の後輪2への動力伝動を断続させる右側のサイドクラッチと、ステアリング作動に連動して旋回内側のサイドクラッチを切断作動させる連係機構35とを備え、差動装置23の差動状態を制動力によって規制する規制機構42を設けた乗用移植機において、上記制動力を発生させずに差動状態を規制しない路上走行用状態と、差動装置23がデフロックされるように上記制動力を発生させるデフロック状態と、デフロック時よりも小さい制動力を発生させて差動状態を規制する作業走行用状態との少なくとも3つの状態に切換可能に前記規制機構42を構成したことを特徴としている。
【0007】
第2に、変速操作具12の変速切換操作に規制機構42における上記路上走行用状態と作業走行用状態との切換を連動させる連動手段52を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように構成される本発明の乗用移植機によれば、路上走行用状態と、デフロック状態と、作業走行用状態との切換を行うことにより、種々の走行条件に対応して効率的な作業走行及び路上走行を行うことが可能になり、汎用性が向上するという効果がある。
【0009】
また、変速操作具の変速切換操作に規制機構における上記路上走行用状態と作業走行用状態との切換を連動させる連動手段を設けてなることにより、該変速切換操作に連動して路上走行用状態と作業走行用状態との切換が行われるため、操作が簡便になり、利便性が向上する他、状態切換のための操作具を別途設ける必要も無く、部品点数も減少して製造コストも低減するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の乗用移植機を適用した乗用田植機の側面図である。
【図2】本発明の乗用移植機を適用した乗用田植機の平面図である。
【図3】本乗用田植機の動力伝動構成の要部を示すミッションケース内の展開図である。
【図4】(A),(B)は、ミッションケース、リヤアクスルケース、及びリンク機構の平面図及び側面図である。
【図5】路上走行用状態から作業走行用状態に切換えられる際の規制機構及び連動機構の要部平面図である。
【図6】路上走行用状態からデフロック状態に切換えられる際の規制機構及び連動機構の要部平面図である。
【図7】他の実施形態に関して規制機構における路上走行用状態から作業走行用状態に切換える際の平面図である。
【図8】他の実施形態に関して規制機構における路上走行用状態からデフロック状態に切換える際の平面図である。
【図9】図7の規制機構の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示する例に基づき、本発明の実施形態について説明する。
図1,2は、本発明の乗用移植機を適用した乗用田植機の側面図及び平面図である。前後輪1,2を備えた走行機体3は、前後方向中央に運転席4が設けられ、後方にリンク機構7を介して植付作業機6が昇降自在に連結されている。
【0012】
植付作業機6は、背面側に苗を載置する苗載せ台を有し、アクチュエータである油圧シリンダーによって昇降駆動され、下端部に苗載せ台上の苗を掻き取って圃場に植え付ける植付部及び圃場を均すフロート8が複数設けられている。
【0013】
運転席4には、オペレータが着座する座席9と、座席の前方に配置されたステアリングハンドル11と、前後揺動により走行変速切換操作を行う後述の副変速レバー12(変速操作具)と、ステアリングハンドル11と座席9との間に形成された床面であるフロアステップに踏込み操作可能に設けられたデフロックペダル13とが設置されている。
【0014】
次に、図3及び4に基づき、本乗用田植機の動力伝動構成について説明する。
図3は、本乗用田植機の動力伝動構成の要部を示すミッションケース内の展開図である。エンジン動力は、油圧式無段階変速機であるHST16によって無段階変速された後、ミッション伝動軸となるHSTのモータ軸17を介してミッションケース14内に入力される。
【0015】
ミッションケース14内に伝動された動力は、主クラッチ18を介してミッション伝動軸17に回転自在(遊転自在)に外装される筒状の入力軸19に断続伝動される。入力軸19の回転動力は、上述の植付作業機6側に伝動される一方で、副変速機構21(走行変速機構)を介して走行伝動軸22に変速伝動される。走行伝動軸22の動力は、差動装置23により前輪1に伝動される一方で、プロペラシャフト31を介して後輪への動力伝動用のリヤアクスルケース32(図4参照)に伝動される。
【0016】
上記副変速機構21は、入力軸19と一体回転するように入力軸19の軸方向にスライド自在に支持された小径の低速入力ギヤ23と、入力軸19に回転自在に軸支された大径の高速入力ギヤ24と、低速入力ギヤ23を介した入力軸19から高速入力ギヤ24への動力伝動を断続する爪クラッチ26と、入力軸19に対して平行に配置された変速軸27と、変速軸27と一体回転して低速入力ギヤ23と噛合い可能な低速出力ギヤ28と、変速軸27と一体回転して高速入力ギヤ24と常時噛合う高速出力ギヤ29とを備えている。
【0017】
低速入力ギヤ23を一方側(図示する例ではHST側)にスライド移動させることにより、爪クラッチ26が切作動して高速入力ギヤ24側への動力伝動が切断されるとともに、変速軸27に動力が低速伝動される。また、低速入力ギヤ23を他方側(図示する例では主クラッチ18側)にスライド移動させることにより、低速入力ギヤ23と低速出力ギヤ28との噛合いが解除されるとともに、爪クラッチ26が入作動して高速入力ギヤ24に入力軸19の動力が伝動され、これに伴い変速軸27に動力が高速伝動される。この変速軸27の動力は、上述の走行伝動軸22にギヤ伝動される。
【0018】
すなわち、上述の副変速レバー12の前後揺動によって、入力軸19上における低速入力ギヤ23のスライド移動を行い、これによって副変速機構21の低速と高速の変速切換を行う。ちなみに、オペレータは、圃場において植付作業を行いながら本乗用田植機(車体)を走行させる際には、副変速装置を低速に切換える一方で、路上走行用の際には、副変速装置を高速に切換える。
【0019】
図4(A),(B)は、ミッションケース、リヤアクスルケース及びリンク機構の平面図及び側面図である。プロペラシャフト31を介して入力された動力は、リヤアクスルケース32内の左右に配置された一対のサイドクラッチ(図示しない)に伝動される。左側のサイドクラッチは、リヤアクスルケース32上面左側に支持された操作アーム33の前後揺動によって断続操作され、左側の後輪2への動力伝動を断続させる一方で、右側のサイドクラッチは、リヤアクスルケース32上面右側に支持された操作アーム33の前後揺動によって断続操作され、右側の後輪2への動力伝動を断続させる。
【0020】
この左右の操作アーム33は、リンク機構35(連係機構)によって、ステアリングハンドル11の操向操作(ステアリング作動)によって左右に水平揺動するピットマンアーム34に連結されている。そして、このリンク機構35は、操向操作によって車体が旋回する場合に、旋回内側(図示する例では、左側)のサイドクラッチを切断操作するとともに、旋回外側のサイドクラッチを接続操作するように構成されている。
【0021】
次に図3,5及び6に基づき、差動装置23の構成について説明する。差動装置23は、従来公知のものであり、前輪1を駆動する左右方向の各ドライブシャフト41と一体回転する一対のベベルギヤであるサイドギヤ36と、両サイドギヤと常時噛合うベベルギヤであるセンタギヤ37と、各サイドギヤ36及びセンタギヤ37を内部で回転自在に収容支持するデフケース38(枠体)と、デフケース38の外周に取付固定されたリングギヤ39と、を備えている。
【0022】
リングギヤ39は、走行伝動軸22と一体回転する伝動ギヤと常時噛合い、走行伝動軸22の動力によって、デフケース38をドライブシャフト41の軸回りに回転駆動させる。このデフケース38の回転に伴って、センタギヤ37がドライブシャフトの軸回りに回転移動し、このセンタギヤ37と常時噛合う左右のサイドギヤ36に動力が分配伝動されて左右の前輪1が駆動される。この際、左右の前輪1の駆動速度は、上記構成により、各前輪1に掛かる負荷が高い程低速になり、低い程高速になる。
【0023】
すなわち、本乗用田植機では、差動装置23によって、左右の前輪1(ドライブシャフト41)にその負荷に応じて異なる速度で動力を分配伝動できる差動状態に切換可能になる。ただし、この差動状態では、左右の一方側の前輪1が泥濘にはまって他方の車輪に対して極端に負荷が大きくなると、他方側の前輪1のみに動力が分配されて空転し、左右の前輪1による駆動力が得られず、泥濘から脱出せない場合があるため、この差動装置23には、上記差動状態を規制する規制機構42が設けられている。
【0024】
図5は、路上走行用状態から作業走行用状態に切換えられる際の規制機構及び連動機構の要部平面図であり、図6は、路上走行用状態からデフロック状態に切換えられる際の規制機構及び連動機構の要部平面図である。規制機構は、デフケースを左右の一方側のドライブシャフト41(図示する例では右側ドライブシャフト)に固定するための制動力を変化させることによって、差動状態を複数段階で規制する。
【0025】
具体的には、制動力を発生させずに差動状態を規制しない路上走行用状態と、大きな制動力(デフロック用制動力)によりデフケース38を該ドライブシャフト41に完全に固定させることによって差動装置23をデフロックさせるデフロック状態と、該デフロック状態時の制動力に比べて小さい制動力(半デフロック用制動力)によりデフケース38を該ドライブシャフト41に半固定することによって車体旋回が可能な状態で差動状態を規制する作業走行用状態(半デフロック状態)との内、何れか1つの状態に切換が可能に規制機構42が構成されている。
【0026】
ちなみに、作業走行用状態ではドライブシャフト41がデフケース38に連れ回り回転されて差動状態がある程度規制された状態になり、この作業走行用状態を利用することにより、泥濘等がある走行条件の悪い圃場でも、一方の車輪が空転する状態に陥り難くなり、左右の前輪1の駆動力を失うことなく左右前輪1の差動を現出し、スムーズに操行することが可能になる。
【0027】
そして、規制機構42は、上記機能を有するべく、上記一方側のドライブシャフト41と一体回転するとともに該ドライブシャフト41の軸方向にスライド移動可能な状態で該ドライブシャフト41に外装されたリング状態の操作片43と、該ドライブシャフト41に回転自在に支持されて該ドライブシャフト41の外周を覆う筒状のクラッチケース44と、クラッチケース44と操作片43との間に形成された爪式の第1規制クラッチ46と、クラッチケース44内に収容されてクラッチケース44とデフケース38とを段階的に接続させるディスク式の第2規制クラッチ47と、を備えている。
【0028】
第1規制クラッチ46はクラッチケース44と操作片43との間に介挿された第1圧縮スプリング48によって切断側に弾性的に常時付勢されている。また、第2規制クラッチ47はクラッチケースとデフケース38との間に介挿された第2圧縮スプリング49によって切断側に弾性的に常時付勢され一方で、第2規制クラッチ47はクラッチケース44内の圧縮スプリング等によりなる弾性部材51の弾性力によって接続側に常時付勢され、クラッチケース44に対して動力的に半接続状態になっている。
【0029】
このため、操作片43がクラッチケース44側から離間した切断位置に変位している際には、第1規制クラッチ46が切断され、上記制動力が0になるため、差動状態が規制されない上述の路上走行用状態になる。また、操作片43がクラッチケース44側である半接続位置に変位している際には、第1規制クラッチ46が接続され、第2規制クラッチ47が半接続状態になり、上記一方側のドライブシャフト41がデフケース38に半固定されるため、差動状態がある程度規制される上述の作業走行用状態になる。さらに、操作片43がクラッチケース44を押圧する接続位置に変位している際には、第1規制クラッチ46が接続されるとともに、第2規制クラッチ47も完全に接続状態にされ、上記一方側のドライブシャフト41がデフケース38に固定されるため、上述のデフロック状態になる。
仮に、左右の前輪1の付加の差が、前記弾性部材51の弾性力によるブレーキ力を越えて一方の前輪1が空転した場合には、デフロックペダル13を操作して斯かるデフロック状態とすることで左右前輪1の差動をなくして両前輪1の駆動力を得ることができる。
【0030】
すなわち、本乗用田植機では、上記弾性部材51によって半デフロック用制動力を発生させ、上記弾性部材51及び操作片43による押圧力によってデフロック用制動力を発生させる構成になっており、この操作片43における切断位置と半接続位置と接続位置との切換を、連動機構52(連動手段)を介して、上述の副変速レバー12及びデフロックペダル13によって行う。
【0031】
上記連動機構52は、上記第1圧縮スプリング48等の付勢力により操作片43と常時当接した状態でドライブシャフト41に沿って左右揺動される操作アーム53と、背面視操作アームから左右両側に延設されて操作アーム53と一体で上下揺動する中継アーム54と、中継アーム54の左右端部の一方側と副変速レバー12の基端部とを連結する上下方向の変速側連結ロッド56と、中継アーム54の左右端部の他方側とデフロックペダル13とを連結する左右方向のロック側連結ロッド57とを備えている。
【0032】
そして、副変速レバー12を介して副変速を高速から低速に切換えた場合には、変速側連結ロッド56及び中継アーム54を介して、操作片43を切断位置から接続位置にスライドさせるように揺動操作され、本乗用田植機を路上走行用状態から作業走行用状態に切換える(図5参照)。ちなみに、この際、デフロックペダル13が作動しないように、ロック側連結ロッド57と中継アーム54とは中継アーム54に穿設された長孔(融通機構)を介して連結されている。
【0033】
また、デフロックペダル13の踏込み操作を行った場合には、副変速レバー12の前後揺動操作位置に関わらず、ロック側連結ロッド57及び中継アーム54を介して操作片43を切断位置又は接続位置から押圧位置にスライドさせるように揺動操作され、本乗用田植機を路上走行状態又は作業走行状態からデフロック状態に切換える(図6参照)。ちなみに、この際、副変速レバー12が作動しないように、変速側連結ロッド56と中継アーム54とは中継アーム54に穿設された長孔(融通機構)を介して連結されている。
【0034】
すなわち、規制機構42は、副変速レバー12による変速切換操作に路上走行用状態と作業走行用状態との切換を連動させるとともに、デフロックペダル13の踏込み操作にデフロック状態への切換を連動させるように構成されている。
【0035】
なお、副変速レバー12により副変速機構21が高速に切換えられた状態でのデフロックペダル13の踏込み操作解除によって、上述の第1圧縮スプリング48や第2圧縮スプリング49の弾性力により、操作片43が押圧位置から接続位置まで押戻される。また、デフロックペダル13の踏込み操作解除時に副変速レバー12による副変速機構21の高速から低速へ変速切換操作を行うことによって、第1圧縮スプリング48の付勢力により、操作片43が接続位置から切断位置まで押戻される。そして、副変速レバー12によって副変速機構21が低速に切換られた状態で、デフロックペダル13の踏込み操作解除を行うと、第1圧縮スプリング48及び第2圧縮スプリング49によって操作片43が押圧位置から切断位置まで押戻される。
【0036】
以上のように構成される本乗用田植機によれば、第2規制クラッチ47がディスク式であり、デフロック時に設定トルク以上のトルクが掛かると、ディスク間に滑りが生じ、規制機構の破損が防止される。
【0037】
次に、図7乃至9に基づき、規制機構42の他の実施形態について上述の例と異なる点を説明する。図7は、他の実施形態に関して規制機構における路上走行用状態から作業走行用状態に切換える際の平面図であり、図8は、他の実施形態に関して規制機構における路上走行用状態からデフロック状態に切換える際の平面図であり、図9は、図7の規制機構の要部平面図である。
【0038】
図示する規制機構42は、上記一方側のドライブシャフト41とに軸方向にスライド可能な状態で該ドライブシャフト41に外装されたリング状の操作片43と、該ドライブシャフト41に一体回転するように支持されて該ドライブシャフト41の外周を覆うクラッチケース45と、クラッチケース45内に収容されてクラッチケース45とデフケース38とを段階的に接続させるディスク式の規制クラッチ58と、上記操作片43とクラッチケース45との間に介挿されて操作片43をクラッチケース45から離間する側に付勢する圧縮式の制動用スプリング59と、クラッチケース45に外装されて規制クラッチ58を切断側に付勢する圧縮スプリングである切側弾性部材61とを備えている。
【0039】
操作片43は、上述の場合と同様に、連動機構52を介して、切断位置と、半接続位置と、接続位置との位置切換をされるように構成されており、操作片43の該位置切換によって路上走行用状態と、作業走行用状態と、デフロック状態との切換が行われる。
【0040】
具体的には、操作片43を切断位置に切換えることにより、差動状態を規制する上述の制動力が略0になって、規制クラッチ58が切断状態になり、路上走行用状態に切換えられる。
【0041】
また、操作片43を半接続位置に切換えることにより、差動状態を規制する上述の半デフロック用制動力が制動用スプリング59の弾性力によって発生し、規制クラッチ58が半接続状態になり、デフケース38が上記一方側のドライブシャフト41に半固定され、作業走行用状態に切換えられる。
【0042】
さらに、操作片43を接続位置に切換えることにより、差動状態を規制する上述のデフロック用制動力が制動用スプリング59の弾性力によって発生し、規制クラッチ58が接続状態になり、デフケース38が上記一方側のドライブシャフト41に固定され、デフロック状態に切換えられる。
【符号の説明】
【0043】
1 前輪
2 後輪
23 差動装置
35 リンク機構(連係機構)
42 規制機構
52 連動機構(連動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前輪(1)及び後輪(2)と、異なる速度で動力を分配伝動させる差動状態で左右の前輪(1)に動力を分配伝動可能な差動装置(23)と、左側の後輪(2)への動力伝動を断続させる左側のサイドクラッチと、右側の後輪(2)への動力伝動を断続させる右側のサイドクラッチと、ステアリング作動に連動して旋回内側のサイドクラッチを切断作動させる連係機構(35)とを備え、差動装置(23)の差動状態を制動力によって規制する規制機構(42)を設けた乗用移植機において、上記制動力を発生させずに差動状態を規制しない路上走行用状態と、差動装置(23)がデフロックされるように上記制動力を発生させるデフロック状態と、デフロック時よりも小さい制動力を発生させて差動状態を規制する作業走行用状態との少なくとも3つの状態に切換可能に前記規制機構(42)を構成した乗用移植機。
【請求項2】
変速操作具(12)の変速切換操作に規制機構(42)における上記路上走行用状態と作業走行用状態との切換を連動させる連動手段(52)を設けてなる請求項1の乗用移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−273614(P2010−273614A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129988(P2009−129988)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】