説明

乗用草刈機に装着可能な施肥装置

【課題】 葡萄棚の下等の低いエリアにおいて施肥作業が行える乗用草刈機に装着可能な施肥装置を提供する。
【解決手段】 水平支持棒に固定部材を介して固定された肥料収納部と、上記肥料収納部下部開口の下方に設けられた肥料送りローラと、該肥料送りローラの下方に設けられた肥料誘導ホースと、上記肥料送りローラを駆動するモータと、貫通孔が形成された固定用連結部を上記水平支持棒の適所に設けることにより施肥ユニットを構成し、草刈刃を有する乗用草刈機の後部に水平支持杆を固定し、該水平支持杆に直交する取付用基杆を車体後方向けて連結し、該取付用基杆の後端部に固定用受部を形成することにより施肥ユニット取付部を構成し、上記施肥ユニットの上記固定用連結部を上記固定用受部に装着することにより、上記施肥ユニットを上記乗用草刈機に着脱自在に装着し得るように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば葡萄棚、藤棚の下等の上下方句に狭いスペースにおいて、安全に施肥作業を可能とする乗用草刈機に装着可能な施肥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクター等の大型耕耘作業機に装着し、肥料等の散布を行う装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、乗用草刈機に施肥装置を設け、草刈を行うと共に肥料の散布を可能とした乗用草刈機が提案されている(特許文献2,3)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−141020号
【特許文献2】実開昭63−158114号
【特許文献3】特開昭61−285922号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トラクター等の大型耕耘作業機の場合は、その装置自体が大型であるため、葡萄棚の下等で作業するには、車高が高過ぎて棚下への進入が不可能であるか、進入できたとしても作業者が下を向く等の不自然な姿勢での作業を強いられており危険であるばかりでなく、小回りがきかないために作業効率も芳しくないという課題がある。
【0006】
一方、特許文献2,3に開示される乗用草刈機では、何れも施肥装置が乗用草刈機に専用装備されたものであるから、草刈機能のみを有する乗用草刈機を所有していたとしても、例えば葡萄棚での施肥作業を行うとすれば、特許文献1,2のような専用の乗用草刈機を新たに購入する必要があった。
【0007】
また、従来の乗用草刈機では、施肥装置の肥料繰出部の駆動を草刈機の車輪の回転力或いは刈り込んだ草の移送風用ブロアの排風等を利用するものであるから、肥料の散布量の調整が難しいという課題があった。
【0008】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、葡萄棚の下等の高さの低いスペースでも作業が可能であり、既に所有する乗用草刈機にも比較的簡単に取り付け可能であって、各種の形態の肥料の散布にも適切に対応可能な乗用草刈機に装着可能な施肥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、左右方向水平支持棒と、この水平支持棒に固定部材を介して固定された肥料収納部と、上記水平支持棒に平行に設けられた回転シャフトと、上記肥料収納部下部開口の下方位置において上記回転シャフトに同軸的に設けられた肥料送りローラと、該肥料送りローラの下方に設けられ該ローラにより送り出される肥料を落下誘導するホースと、上記回転シャフトを回転駆動するモータと、上記水平支持棒の適所に設けられた固定用連結部とにより施肥ユニットを構成し、かつ車体下部に草刈刃を有する乗用草刈機の後部に水平支持杆を固定し、該水平支持杆に直交する取付用基杆を車体後方向けて連結し、該取付用基杆の後端部に上記固定用連結部と結合し得る固定用受部を形成することにより施肥ユニット取付部を構成し、上記施肥ユニットの上記固定用連結部を上記施肥ユニット取付部における上記固定用受部に装着し、締結手段を以って上記固定用連結部と上記固定用受部を接続することにより、上記施肥ユニットを上記乗用草刈機に装着し得るように構成し、かつ上記締結手段の締結又は締結解除により、上記施肥ユニットを上記施肥ユニット取付部に対して着脱可能としたものであることを特徴とする乗用草刈機に装着可能な施肥装置により構成される。
【0010】
上記固定部材は例えば固定板(17,17)により構成することができる。上記ホースは案内ホース(30)により構成することができる。上記草刈刃は例えば回転刃(9)により構成することができる。上記固定用連結部は例えば固定用支持板(25)により構成することができる。上記固定用受部は例えば固定用支持板(16c)により構成することができる。上記水平支持棒の適所とは例えば水平支持棒(13)の所定間隔を置いた2箇所(固定用支持板25,25の位置)とすることができる。上記締結手段は、例えばボルト(B9)、ナット(B9’)により構成することができる。このように構成すると、車体下部に草刈刃を有する小型の乗用草刈機の後部に水平支持杆を固定しておけば、当該水平支持杆に固定用受部を有する取付用基杆を連結することにより施肥ユニット取付部を構成し得て、かつ上記固定用受部に施肥ユニットの固定用連結部を接続することにより、乗用草刈機の後部に施肥装置を取り付けることができる。従って、当該施肥装置を装着した乗用草刈機により葡萄棚の下等の高さの低いエリアにおいて、草刈作業、施肥作業を効率的に行うことができる。また、施肥ユニット取付部に対して施肥ユニットを着脱可能としたので、施肥ユニットのみを乗用草刈機から容易に取り外すことができる。
【0011】
第2に、左右方向水平支持棒と、この水平支持棒に固定部材を介して固定された肥料収納部と、上記水平支持棒に平行に設けられた回転シャフトと、上記肥料収納部下部開口の下方位置において上記回転シャフトに同軸的に設けられた肥料送りローラと、該肥料送りローラの下方に設けられ該ローラにより送り出される肥料を落下誘導するホースと、上記回転シャフトを回転駆動するモータと、上記水平支持棒の適所に設けられた固定用連結部とにより施肥ユニットを構成し、かつ車体下部に草刈刃を有する乗用草刈機の後部に取付アングルを以って固定し得るように構成された水平支持杆と、該水平支持杆に直交する方向に連結し得る取付用基杆と、該取付用基杆の後端部に形成され上記固定用連結部に結合し得る固定用受部により施肥ユニット取付部を構成し、上記施肥ユニットの上記固定用連結部を上記施肥ユニット取付部における上記固定用受部に装着し、締結手段を以って上記固定用連結部と上記固定用受部を接続することにより上記施肥ユニットを施肥ユニット取付部に装着し得るように構成し、かつ上記締結手段の締結又は締結解除により、上記施肥ユニットを上記施肥ユニット取付部に対して着脱可能としたものであることを特徴とする乗用草刈機に装着可能な施肥装置により構成される。
【0012】
上記取付アングルは例えばL型アングル(14)により構成することができる。このように構成すると、車体下部に草刈刃を有する小型の乗用草刈機の後部に水平支持杆を固定しておけば、当該水平支持杆に取り付け可能な汎用的な施肥装置を実現することができる。
【0013】
第3に、上記取付用基杆は上記水平支持杆に対して取付手段を以って着脱可能に設けられているものであることを特徴とする上記第1又は2記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置により構成される。
【0014】
上記取付手段は、例えば取付管部(16b,16b)とボルト(B8)等により構成することができる。このように構成すると、水平支持杆に対して取付用基杆を着脱可能であるので、乗用草刈機の後部に水平支持杆を装着することにより、各種の乗用草刈機にも汎用的に用いることができる施肥装置を実現し得るものである。
【0015】
第4に、上記固定用連結部を上記水平支持棒の所定間隔をおいた2箇所に設けると共に、上記取付用基杆及び固定用受部を上記固定用連結部に対応する左右方向の2箇所に設けたものであることを特徴とする上記第1〜3の何れかに記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置により構成される。
【0016】
第5に、上記肥料収納部、肥料送りローラを具備した施肥部を上記水平支持棒に沿って複数並設したものであることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置により構成される。
【0017】
よって、一度に多くの量の肥料を散布することができるし、肥料収納部毎に肥料の種類を変える等の散布方法をとることができる。
【0018】
第6に、上記駆動モータの回転速度を高速、中速、低速に段階的に切り換える変速スイッチを設けたものであることを特徴とする上記第1〜5の何れかに記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置により構成される。
【0019】
よって、肥料の種類に応じて肥料送りローラの回転速度を適切な速度に設定することができる。
【0020】
第7に、上記乗用草刈機は、前輪と後輪との間の車体下部に草刈用の回転刃を有するものであることを特徴とする上記第1〜6の何れかに記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置により構成される。
【0021】
よって、非常に小型の乗用草刈機にも装着が可能な施肥装置を実現し得るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように構成したので、小型の乗用草刈機に装着が可能であるため、葡萄棚や藤棚の下等の上下高さの低いスペースにおいて、草刈作業と施肥作業又は施肥作業のみを支障なく行うことができるものである。
【0023】
また、小型の乗用草刈機の後部に水平支持杆を固定しておけば、その他の構成は汎用性を有するため、各種の製造業者の既存の乗用草刈機にも適用が可能な汎用性の高い施肥装置を実現するものである。
【0024】
また、施肥ユニット取付部から施肥ユニットを簡単に着脱し得るため、施肥作業が必要ない場合は、施肥ユニットを取り外して、通常の乗用草刈機として使用することができ、乗用草刈機の本来の小回性等を害することもない。
【0025】
また、肥料収納部を複数設けたので、一度に多くの肥料を散布することができる。
【0026】
また、肥料送りローラの回転速度を段階的に切り換えることができるので、散布する肥料の種類に適した回転速度を容易に設定することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付図面に従って、本発明に係る乗用草刈機に装着可能な施肥装置の実施形態を詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明に係る施肥装置を乗用草刈機に装着した状態を示す乗用草刈機の側面図であり、同図において、1は小型で車高の低い乗用草刈機であり、車台(シャシ)2の前部にハンドル6により操舵される操舵輪としての前輪3(左右2輪)及び、車台2の後部に駆動輪としての後輪4(左右2輪)を有しており、車台2後部に設置されたエンジン5により後輪4を駆動することにより、全4輪で走行可能となっている。7はシートであり、上記車台2の略中央部に設置されている。
【0029】
8は草刈部であり、上記車台2における前輪3と後輪4との間に草刈用の回転刃9が支持されている。この回転刃9は上記車台2中央部に設けられた回転中心軸10にその基部9aが接続されており、上記車台2と地面Gとの間に位置している。
【0030】
この回転刃9は図示しない駆動力伝達ベルトにより上記エンジン5から回転駆動力を得て上記中心軸10を中心に回転することにより草刈りを行うものである。なお、草刈部8における8aは回転刃9の回転軌跡に沿う範囲を覆うカバーである。
【0031】
11は上記乗用草刈機1のエンジン5の後部に着脱可能に装着された施肥装置であり、以下この施肥装置について説明する。
【0032】
この施肥装置11は、概略、横方向に3個並列する肥料収納容器12,12,12、これらの肥料収容容器12を横一列に固定するための横方向の水平支持棒13を具備する施肥ユニット(着脱部)A(図2参照)と、上記乗用草刈機1のエンジン5のカバー5’(ボディ)後部にL型アングル14により固定された横方向水平支持杆15、該水平支持杆15の2箇所に設けられた一対の固定アングル16,16とを具備する施肥ユニット取付部B(図3参照)とから構成されており、上記施肥装置11は、上記施肥ユニットAを施肥ユニット取付部Bに装着固定することにより、上記乗用草刈機1後部に設置されるものである。
【0033】
施肥ユニットAは図2に示すように、上記水平支持棒13に固定された肥料収納容器12を有する3つの施肥部、即ち左端部の施肥部S1,中央部の施肥部S2,右端部の施肥部S3からなるものであり、これらの基本的構成は同一なので、同図中駆動モータMに近い左端部の施肥部S1について主として説明し、その他の施肥部S2,S3の同一部分については同一符号を付することにする。
【0034】
上記水平支持棒13の左端部(中央部、右端部)の施肥部S1(S2,S3)は、一対の固定板17,17がそれらの貫通孔17a,17aを以って直立状態で挿通されており、上記固定板17,17の上端の水平部17b,17bが互いに水平に対向する位置となるように、上記貫通孔17a,17aと上記水平支持棒13の外周面とが溶接され、これにより上記固定板17,17は上記水平支持棒13の左端部(中央部、右端部)に平行に所定間隔を持って直立状態で固定されている。
【0035】
また、上記左端部(中央部、右端部)の上記一対の固定板17,17の上記貫通孔17a,17aの上部の板面上方位置には、肥料送りローラ18を軸支する回転シャフト19が、上記板面に設けられた貫通孔17c,17cを介して上記水平支持棒13と平行に貫通している。尚、19aは上記回転シャフト19と上記固定板17の貫通孔17c部分に設けられた軸受である。
【0036】
この回転シャフト19の左端部(中央部、右端部)における上記固定板17,17の間には、上記肥料送り用のローラ18が同軸的に挿通固定されており、当該回転シャフト19と共に回転駆動されるものである。このローラ18の外周には、図4に示すように、上記肥料収容容器12から落下してくる肥料を受ける凹部18aが全周に亘り一定間隔で設けられており、回転することで、凹部18aで受けた肥料を下方に移動させるものである。また、上記ローラ18の外周には凹部18aが左右に2列構成されている(図2、図3参照)。
【0037】
上記回転シャフト19の左端部にはスプロケット20が装着されており、当該スプロケット20と上記回転シャフト19と平行の駆動モータMの駆動軸21(スプロケット)との間にチェーン22が装着されており、上記回転シャフト19は上記モータMの駆動により上記チェーン22を介して矢印a方向に回転し得るように構成されている。なお、23は上記モータの駆動軸21、チェーン22、スプロケット20等を被覆する駆動系カバーであり、上記左端部の固体板17の外側に固定されている。24は上記駆動系カバー23の前方に上記ローラ18と平行に設けられたモータケースであり、上記駆動モータMが格納されている。
【0038】
上記水平支持棒13における上記施肥部S1の右側の固定板17と施肥部S2の中央部左側の固定板17との間、及び上記施肥部S3の左側の固定板17と上記施肥部S2の中央部右側の固定板17との間には、前後方向の対向板25a,25aを有するU字形状の固定用支持板25,25が2箇所に固定されている。これらの固定用支持板25,25の上記対向板面25a,25aの各々には固定用ボルト挿入用の貫通孔25b,25bが貫通形成されており、さらに上記水平支持棒13にも、上記貫通孔25b,25bと連通する貫通孔13a,13aが前後方向に貫通形成されている(図5参照)。
【0039】
上記肥料収納容器12は、上面開口部に蓋12aが着脱自在に設けられており、下部は逆四角錐形状のホッパー部12bが形成され、該ホッパー部12bの下端には肥料が通過する開口12cが貫設されている(図4参照)。
【0040】
上記ホッパー部12bの下部には断面略逆台形状の金属製取付板26がその前後板部26a,26aを上記ホッパー部12bの前後の傾斜外周面に接する状態で宛がわれており、当該前後板部26a,26aと上記ホッパー部12bの傾斜外面をボルト及びナットB1で固定することにより、当該取付板26が上記ホッパー部12b下部に固定されている(図4)。
【0041】
そして、この取付板26の左右底板部26c,26cを上記固定板17,17の水平部17b,17bに載置し、上記左右底板部26c,26cと上記水平部17b,17bとをボルト及びナットB2で固定することにより(図7参照)、上記固定板17,17上に上記肥料収納部12を固定している。なお、上記金属製取付板26の底板部26cには、上記肥料収納部12の上記開口12cに連通する開口26dが貫設されている(図4参照)。
【0042】
上記ホッパー部12bの開口12cの下部には、後述のシャッター28の挿入スペースを形成した状態で、肥料案内ケース27がその上面2箇所を上記ホッパー部12b内の底部にボルト及びナットB3にて固定されている。この肥料案内ケース27は、その中央部に上記開口12c,26dに連通する開口27aが形成されており、かつ上記ローラ18の外周面に近接する円弧状案内部を有する案内板27bを有しており、上記開口12cから落下してきた肥料の飛散を防止するものである。
【0043】
上記ホッパー部12bの下面と上記肥料案内ケース27上面との間には開閉シャッター28が設けられている。この開閉シャッター28は、板面にスリット28aが設けられており、当該スリット28aを介してボルト及びナットB4によって上記後板部26aに設けられたアングル29に前後方向に摺動可能に係合されている。このシャッター28は、上記前方に向けて押し込むことで、上記金属製取付板26と上記肥料案内ケース27上面との間に位置するまで摺動して上記開口12cを閉鎖するものであり、後方に向けて引き出すことで上記開口12cを開くことができる。
【0044】
上記肥料案内ケース27及びローラ18の下方には肥料案内ホッパー29が設けられている。この肥料案内ホッパー29は、前面側のテーパ部29aの上端を上記肥料案内ケース27の前面板下端のテーパ部27cにボルト及びナットB5によって固定されており、当該固定状態において、左右方向に隣接する2つの小ホッパー部29b,29bが上記ローラ18の2列の凹部18a下方に各々位置するように構成されている(図2参照)。これらの小ホッパー部29b,29bには、円筒状の排出口29c,29cが設けられており(図4参照)、これらの排出口29c,29cには、案内ホース30,30の一端30a,30aが挿入固定されている。
【0045】
31、31は、上記左端部の施肥部S1の右側の固定板17の板面、及び右端部の施肥部S3の左側の固定板17の板面に各々一端を支持軸32,32を以って軸支された支持棒、33は上記支持棒31,31の下端のリング31a,31aに挿通支持された位置決め棒であり、この位置決め棒33は上記水平固定棒13と平行に吊下げられており、上記支持軸32,32を中心として前後方向(矢印b、c方向)(図4)に回動可能となっている。
【0046】
この位置決め棒33には、各施肥部S1(S2、S3)に対応する位置にホース固定リング34,34が装着されており、上記ホース30,30の先端部30b,30bを上記リング34,34に挿入することにより、上記ホース30,30の先端部の位置決めを行うものである。なお、ホース固定リング34は、上記位置決め棒33において適宜間隔を置いて固定されており、適切な間隔を以って肥料散布を可能とするものである。
【0047】
次に、施肥ユニット取付部Bについて説明する。
【0048】
上記L型アングル14,14は、左右一対であり(図3参照)、各一端は草刈機1後部のボディ5’にボルト及びナットB6により固定されており、垂直に屈曲した後端部14a,14aに、水平支持杆15の両端の垂直延出板15a,15aをボルト及びナットB7で固定することにより当該水平支持棒15が乗用草刈機1後部に水平に固定されている。尚、上記水平支持棒15のボディ5’への固定方法は任意であり、上記L型アングル14,14以外の構造で固定しても良い。
【0049】
上記固定アングル16,16は、上記水平支持棒15とは直交する方向(前後方向)に設けられた一対の取付用基杆16a,16aと、これら基杆16a,16aの前端上面に固定され、上記水平支持棒15に左右両端部から挿通する断面方形の筒状の取付管部16b,16bと、上記基杆16a,16aの各後端上面に設けられたU字形状の固定用支持板16c,16cとから構成されている。上記固定用支持板16cは、各々前後方向の対向板16c’,16c’を有しており、その対向板面16c’,16c’には前後方向に貫通する取付用の貫通孔16d,16dが各々設けられている。尚、上記施肥ユニットAの装着時においては貫通孔16d,16dは上記貫通孔25b,25bに連通するものである。
【0050】
上記固定用支持板16c,16cの左右方向の間隔(即ち、上記基杆16a,16aの左右方向の間隔)は、上記固定用支持板25、25の左右方向の間隔と同一の間隔を以って設けられており、かつ上記固定用支持板16c,16cの各々の対向板16c’16c’の前後方向の間隔は、上記固定用支持板25,25の対向板25a,25aの前後方向の間隔より若干大きくなるように構成されており、上記固定用支持板25,25を上記固定用支持板16c,16cに宛がったとき、対向板16c’,16c’内に上記固定用支持板25,25が位置するように構成され、かかる状態において、上記貫通孔16d,16dと上記貫通孔25b,13aが一直線に連通するように構成されている(図4)。
【0051】
上記固定アングル16,16は、その取付管部16b,16bを上記水平支持棒15の左右端部に挿通し、上面にスペーサ34を介してボルトB8を該スペーサ34にねじ込むことにより、当該スペーサ34を上記水平支持杆15上面に圧接することにより上記水平支持棒15の両端部に固定されるものである。
【0052】
この固定アングル16,16はかかる固定状態において、各々上記水平支持棒15と直交する方向(車体後方)に延出しており(図1参照)、後端上面の固定用支持板16c,16c上に上記施肥ユニットAの固定用支持板25,25を装着連結するものである。
【0053】
そして、上記施肥ユニットAを施肥ユニット取付部Bに取り付けるには、上記施肥ユニットAの固定用支持板25,25を上記施肥ユニット取付部Bの固定アングル16,16の固定用支持板16c,16cに位置合せした状態で、上記固定用支持板25,25下面を上記固定用支持板16c,16c上に載置する。すると、上記施肥ユニット取付部Bの固定用支持板16c,16cの対向板16c’,16c’間に上記施肥ユニットAの固定用支持板25,25の対向板25a,25aが重合した状態で位置し(図4参照)、かかる状態で、ボルトB9を後方より貫通孔16d,25b,13aに挿通して前方側の対向板16c’外に先端を突出させ、当該先端にナットB9’をねじ込むことにより、施肥ユニットAを施肥ユニット取付部Bに固定する。
【0054】
すると、図1(図4、図5)に示すように、乗用草刈機1の後部に施肥装置11を装着固定することができる。上記施肥装置11は、図1に示すように乗用草刈機の後部、即ち駆動輪4の後方のリアオーバーハング部に取り付けられる構成であるから、一般的な構成の乗用草刈機であれば、どの製造業者のものであっても問題なく取り付けることができる。また、施肥装置自体が水平支持棒13、これに固定される肥料収納部12、回転シャフト19と肥料送りローラ18、乗用草刈機側に取り付けられる水平支持杆15、取付用基杆16a等により構成することができ、全体に構成がシンプルであるから、例えば肥料収納部12を合成樹脂により形成すること等により全体の重量を非常に軽量(例えば15kg前後)に構成することができる。よって、小型の乗用草刈機の後部に設置しても車両バランスを崩すことがなく、既存の乗用草刈機に設置しても安全に走行することができるものである。
【0055】
次に、本発明の施肥装置の電気的構成を説明する。図10は本発明に係る駆動モータMの駆動系を示すブロック図であり、駆動モータMはパワートランジスタ等の可変抵抗素子41を介してコネクタ42、電源スイッチ45により乗用草刈機1のエンジン用のバッテリー40に接続されている。43は変速スイッチであり、高速端子43a、中速端子43b、低速端子43cと、これらの端子に選択的に接触し、抵抗器44と上記可変抵抗素子の入力端子(ベース端子)とを接続する切換端子43dとから構成されている。上記各端子43a,43b,43cは抵抗器44の所定位置に予め接続されており、各端子毎に上記可変抵抗素子41を介して駆動モータMに供給する電圧を変化させることで、上記各端子毎に上記駆動モータMの回転速度[rpm]を高速、中速、低速の3段階に変化させることができるように構成している。また、モータの回転速度は、さらに上記高速より回転速度の速い超高速端子を設け、超高速、高速、中速、低速の4段階に切り換えられるように構成しても良い。
【0056】
本発明の乗用草刈機に装着可能な施肥装置は上述のように構成されているので、施肥ユニットAを施肥ユニット取付部Bに装着した図1の状態で、エンジン5を始動し、葡萄棚の下等の施肥エリアに移動する。このとき、乗用草仮機1は、一般的なトラクターに比べて小型であり車高が低いので、葡萄棚の下にも容易に進入し得る。
【0057】
その後、例えばペレット状の肥料を肥料収納部12に入れて蓋12aを閉じ、開閉シャッター28を後方に引いて開き、変速スイッチ43を中速端子43bに接続し、かつ電源スイッチ45をオンする。すると、バッテリー40から可変抵抗素子41を介して中速端子43bの位置に対応した電圧が駆動モータMに供給され、当該モータMは中速で回転する。
【0058】
その後は、当該駆動モータMを回転させた状態で、乗用草刈機1の草刈刃9を回転させ、かかる状態で葡萄棚の下のエリアに当該草刈機1を走らせ、草刈を行えばよい。すると、草刈刃9により草刈りが行われると同時に、上記肥料収納部12に収納された肥料は、ローラ18の凹部18aに落下供給され、さらにローラ18の矢印a方向の回転により下方に誘導され、小ホッパー部29b,29bからホース30,30を介して該ホース30,30の下端部30b,30bから地面G上に肥料を散布することができる。
【0059】
ローラ8の回転速度を変化させる場合は、変速スイッチ43の端子を高速端子43a又は低速端子43cに切り換えることにより、容易に回転速度の変更を行うことができる。これにより、肥料の種類によって最適な量を散布することができる。
【0060】
施肥ユニットAを取り外す場合は、ナットB9’を外してボルトB9を固定用支持板16cの貫通孔16dから引き抜き、施肥ユニットAを上方に持ち上げることにより容易に取り外すことができる。また、上記施肥ユニットAを施肥ユニット取付部Bに取り付ける場合は、上記施肥ユニットAの2箇所の固定用支持板25,25を施肥ユニット取付部Bの固定用支持板16c,16cに装着し、上記ボルトB9とナットB9’を締結することにより両者を固定すれば良い。このように、施肥ユニットAの施肥ユニット取付部Bへの着脱は極めて容易に行うことができ、施肥の必要がない場合は、上記施肥ユニットAを取り外しておけば良い。
【0061】
また、上記施肥ユニット取付部Bにおける固定アングル16,16も上記乗用草刈機1後部の水平支持杆15から取り外すことができる。即ち、ボルト及びナットB7を取り外すと共に、ボルトB8を緩め、上記取付管部16bを上記水平支持杆15の左右端部から引き抜いて取り外すことで、上記固定アングル16,16を取り外すことができる。なお、上記水平支持杆15は、上記ボルト及びナットB7により、上記左右のL型アングルに取り付けておけば良い。
【0062】
このように、本発明の乗用草刈機に装着可能な施肥装置は、乗用草刈機1の後部に上記水平支持杆15を水平に取り付けておくだけで、上記固定アングル16,16、及び上記施肥ユニットAはそのまま汎用的に使用することができるという効果を奏するものである。即ち、乗用草刈機1は各種のものが存在するが、その後部に水平支持杆15を水平に固定することができれば、上記固定アングル16,16を上記水平支持杆15に装着し、当該固定アングル16,16に上記施肥ユニットAをそのまま装着することにより、乗用草刈機における施肥装置を構成することができる。この場合、上記水平支持杆15の乗用草刈機後部への固定方法は、上記L型アングル14,14に限らず、乗用草刈機後部の形状等によって各種の方法が取り得るが、上記水平支持杆15を固定することができれば、その後は、上記固定アングル16,16及び施肥ユニットAを用いて施肥装置を容易に取付けることができる。
【0063】
よって、本発明によれば、各種の乗用草刈機に用いることができる、極めて汎用性の高い施肥装置を実現することができるものである。
【0064】
尚、上記電源スイッチ45、変速スイッチ43は上記ハンドル6近傍の手元に設置すれば操作性を向上することができる。
【0065】
本発明は上述のように構成したので、施肥装置11を小型の乗用草刈機1に装着が可能であるため、葡萄棚や藤棚の下等の上下高さの低いスペースにおいて、草刈と施肥の同時作業又は施肥作業のみ、或いは草刈作業のみを支障なく安全かつ効率的に行うことができるものである。
【0066】
また、小型の乗用草刈機の後部に水平支持杆15を固定しておけば、その他の構成(その他の施肥ユニット取付部B、施肥ユニットA)は汎用性を有するため、各種の製造業者の乗用草刈機にも適用が可能な汎用性の高い施肥装置を実現するものである。
【0067】
また、既存の乗用草刈機の後部に水平支持杆15を取り付け固定する。このとき、乗用草刈機の後部形状は各種存在するので、水平支持杆15の固定方法は各種の方法が考えられる。上記実施形態におけるL型アングル14を使用しての固定はその1つの方法である。この水平支持杆15を固定できれば、その他の構成、即ち固定アングル16、施肥ユニットAは共通の構成を用いることができる。よって、既存の乗用草刈機を所有していれば、その乗用草刈機に水平支持杆15を固定して、本発明に係る施肥装置を取り付けることができるし、複数の乗用草刈機を所有していた場合は、各草刈機に水平支持杆15を取り付け、その他の構成は共有することができる。或いは、各常用草刈機に施肥ユニット取付部を固定することにより、施肥ユニットを共有することができる。
【0068】
また、乗用草刈機の製造業者にとっては、水平支持杆15を標準装備しておき、施肥装置をオプション扱いとすることができる。
【0069】
また、施肥ユニット取付部Bから施肥ユニットAを簡単に着脱し得るため、施肥作業が必要ない場合は、施肥ユニットAを取り外して、通常の乗用草刈機として使用することができ、乗用草刈機の本体の小回性等を害することもない。
【0070】
また、既にこの種の乗用草刈機を所有している場合は、その後部に水平支持杆15を固定すれば、施肥ユニット取付部B、施肥ユニットAを装着可能であるため、既存の乗用草刈機を利用して施肥装置とすることができ、施肥機能付きの新たな乗用草刈機を購入する必要がない。
【0071】
また、肥料収納部12を複数設けたので、一度に多くの肥料を散布することができる。
【0072】
また、肥料送りローラ18の回転速度を段階的に切り換えることができるので、散布する肥料の種類に適した回転速度を容易に設定することができるものである。
【0073】
また、本発明においては、粒状肥料、粉上肥料、ペレット状肥料等、各種の形態の肥料を用いることができる。
【0074】
なお、上記実施形態では肥料をホース30から下方に散布する構成であるが、ホースを短くして、ホースから落下した肥料を放射状に散布するように構成してもよい。
【0075】
尚、図1において50は作業者、51,52は各種操作ギア、図4において53は肥料飛散防止用ブラシ、54はその固定板、B10は該固定板をホッパー部12bに固定するボルト及びナットである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る乗用草刈機に装着可能な施肥装置は、葡萄棚、藤棚等の下の低いエリアにおける草刈、施肥作業に適しているのみならず、小回性が良いので、各種の農場における草刈、施肥作業に適しており、極めて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る乗用草刈機に装着可能な施肥装置を乗用草刈機に装着した状態の乗用草刈機の側面図である。
【図2】同上装置の装着状態の正面図である。
【図3】同上装置の施肥ユニット取付部と施肥ユニットの水平支持杆近傍の構成を示す斜視図である。
【図4】同上装置の肥料送りローラ近傍の断面図である。
【図5】同上装置の施肥ユニットを施肥ユニット取付部に取り付ける状態を示す側面図である。
【図6】同上装置の装着状態の一部切り欠き側面図である。
【図7】同上装置の装着状態の正面図である。
【図8】同上装置の施肥ユニットの正面図である。
【図9】同上装置の施肥ユニット取付部の分割斜視図である。
【図10】同上装置の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
1 乗用草刈機
9 回転刃
11 施肥装置
12 肥料収納部
13 水平支持棒
13a 貫通孔
15 水平支持杆
16a 取付用基杆
16c 固定用支持板
16d 貫通孔
17 固定板
18 肥料送りローラ
19 回転シャフト
25 固定用支持板
25b 貫通孔
29b 小ホッパー部
30 ホース
43 変速スイッチ
43a 高速端子
43b 中速端子
43c 低速端子
A 施肥ユニット
B 施肥ユニット取付部
B9 ボルト
B9’ ナット
M 駆動モータ
S1〜S3 施肥部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向水平支持棒と、この水平支持棒に固定部材を介して固定された肥料収納部と、上記水平支持棒に平行に設けられた回転シャフトと、上記肥料収納部下部開口の下方位置において上記回転シャフトに同軸的に設けられた肥料送りローラと、該肥料送りローラの下方に設けられ該ローラにより送り出される肥料を落下誘導するホースと、上記回転シャフトを回転駆動するモータと、上記水平支持棒の適所に設けられた固定用連結部とにより施肥ユニットを構成し、
かつ車体下部に草刈刃を有する乗用草刈機の後部に水平支持杆を固定し、該水平支持杆に直交する取付用基杆を車体後方向けて連結し、該取付用基杆の後端部に上記固定用連結部と結合し得る固定用受部を形成することにより施肥ユニット取付部を構成し、
上記施肥ユニットの上記固定用連結部を上記施肥ユニット取付部における上記固定用受部に装着し、締結手段を以って上記固定用連結部と上記固定用受部を接続することにより、上記施肥ユニットを上記乗用草刈機に装着し得るように構成し、
かつ上記締結手段の締結又は締結解除により、上記施肥ユニットを上記施肥ユニット取付部に対して着脱可能としたものであることを特徴とする乗用草刈機に装着可能な施肥装置。
【請求項2】
左右方向水平支持棒と、この水平支持棒に固定部材を介して固定された肥料収納部と、上記水平支持棒に平行に設けられた回転シャフトと、上記肥料収納部下部開口の下方位置において上記回転シャフトに同軸的に設けられた肥料送りローラと、該肥料送りローラの下方に設けられ該ローラにより送り出される肥料を落下誘導するホースと、上記回転シャフトを回転駆動するモータと、上記水平支持棒の適所に設けられた固定用連結部とにより施肥ユニットを構成し、
かつ車体下部に草刈刃を有する乗用草刈機の後部に取付アングルを以って固定し得るように構成された水平支持杆と、該水平支持杆に直交する方向に連結し得る取付用基杆と、該取付用基杆の後端部に形成され上記固定用連結部に結合し得る固定用受部により施肥ユニット取付部を構成し、
上記施肥ユニットの上記固定用連結部を上記施肥ユニット取付部における上記固定用受部に装着し、締結手段を以って上記固定用連結部と上記固定用受部を接続することにより上記施肥ユニットを施肥ユニット取付部に装着し得るように構成し、
かつ上記締結手段の締結又は締結解除により、上記施肥ユニットを上記施肥ユニット取付部に対して着脱可能としたものであることを特徴とする乗用草刈機に装着可能な施肥装置。
【請求項3】
上記取付用基杆は上記水平支持杆に対して取付手段を以って着脱可能に設けられているものであることを特徴とする請求項1又は2記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置。
【請求項4】
上記固定用連結部を上記水平支持棒の所定間隔をおいた2箇所に設けると共に、上記取付用基杆及び固定用受部を上記固定用連結部に対応する左右方向の2箇所に設けたものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置。
【請求項5】
上記肥料収納部、肥料送りローラを具備した施肥部を上記水平支持棒に沿って複数並設したものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置。
【請求項6】
上記駆動モータの回転速度を高速、中速、低速に段階的に切り換える変速スイッチを設けたものであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置。
【請求項7】
上記乗用草刈機は、前輪と後輪との間の車体下部に草刈用の回転刃を有するものであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の乗用草刈機に装着可能な施肥装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−225712(P2009−225712A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74279(P2008−74279)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(500156346)
【Fターム(参考)】