説明

二極給電開閉器

【課題】遮断時の手動操作の速度に影響を受けず、安定した遮断速度で瞬時に遮断することができ、好適な遮断能力が得られる二極給電開閉器を提供する。
【解決手段】二極給電開閉器(S)は、固定接触(3,3a)と、固定接触(3,3a)に対して直線的または略直線的に移動して接点を開閉する可動接触(4,4a)と、可動接触(4,4a)の移動方向に対して直交または略直交する平面上を回転する回転レバー(5)と、可動接触(4,4a)と回転レバー(5)の間に配置され、回転レバー(5)の回転に追従して可動接触の開閉動作を行うシフター(6)とを有しており、可動接触(4,4a)は、弾性力によって固定接触(3,3a)から離れる方向に付勢されており、シフター(6)には、回転レバー(5)が所定の角度まで回ることによって固定接触(3,3a)から可動接触(4,4a)を瞬時に切り離すことができる内カム(61)と外カム(62)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二極給電開閉器に関するものである。更に詳しくは、電力量計に使用され、電力供給の停止及び停止解除を行うことができる開閉器であって、遮断時の手動操作の速度に影響を受けず、安定した遮断速度で瞬時に遮断することができる二極給電開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭などにおいて使用した電力を積算し計量する電力量計には、停止停解開閉器が付加されている場合がある。停止停解開閉器は、例えば引っ越しや料金滞納住宅など、電力供給の停止及び停止解除が必要になったときに操作される。
【0003】
電力供給の停止及び停止解除を行うことができる開閉器としては、例えば特許文献1に記載の開閉器がある。
この開閉器は、中心のシャフト軸によってケースとカバーが一体化しており、電力供給の停止及び停止解除の操作は、カバーを摺動させて引き出し、さらに回転させて回転位置を給電または停電の各位置に合わせ、再度押し込むことによって行う構造であり、1極対応のものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006−40776
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の開閉器は、前記のようにカバーを操作することによって電力供給の停止、停止解除の操作を行うものである。すなわち、(1)カバーを摺動させて引き出し、(2)回転させて回転位置を給電または停電の各位置に合わせ、(3)再度押し込んで装着する、という3ステップの操作となる。
【0006】
このため、電力供給の停止、停止解除の操作を素早く行うことが難しい。しかも、前記操作における手動によるカバーの引き出しや押し込みの速度が、接触の投入、遮断の速度に直接影響し、特に遮断操作をする場合において瞬時に遮断を行うことができないので、負荷電流が流れている状態では適正な遮断能力が得にくい課題があった。
【0007】
また、この開閉器は、前記のように1極(1相)対応のものである。このため、例えば電力供給の停止、停止解除のために、2極(2相)の投入、遮断を行う場合には、二つの開閉器を使用して各極に接続し、操作もそれぞれの開閉器について行わなければならない。しかも、2極を同時に操作することが難しく、どうしても時間差が生じるため、例えば三相モーター等の動力回路の負荷電流が流れている状態では、1極遮断すると欠相状態となって電圧不平衡となり過電流が流れるおそれがあり、適正な遮断能力が得にくかった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、電力量計に使用され、電力供給の停止及び停止解除を行うことができる開閉器において、操作性に優れ、特に遮断時の手動操作の速度に影響を受けず、安定した遮断速度で瞬時に遮断することができ、好適な遮断能力が得られる二極給電開閉器を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記目的に加えて、電力量計の2極を同時に投入、遮断操作することが可能であり、容易かつ迅速な作業ができる二極給電開閉器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
固定接触と、
該固定接触に対して直線的または略直線的に移動して接点を開閉する可動接触と、
可動接触の移動方向に対して直交または略直交する平面上を回転する回転レバーと、
前記可動接触と回転レバーの間に配置され、回転レバーの回転に追従して可動接触の開閉動作を行う接触作動体と、
を有しており、
前記可動接触は、弾性力によって固定接触から離れる方向に付勢されており、 前記接触作動体には、固定接触から可動接触を瞬時に切り離す手段が形成されている、
二極給電開閉器である。
【0010】
本発明の二極給電開閉器は、
固定接触と可動接触の組み合わせを二以上有し、二以上の可動接触は、接触作動体によって同時に固定接触側に移動し、同時に固定接触から離れるのがより好ましい。
【0011】
本発明は、
請求項1または2記載の二極給電開閉器を備えている、電力量計である。
【0012】
(作用)
本発明に係る二極給電開閉器の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を前記各部に限定するものではない。
【0013】
二極給電開閉器(S)の固定接触(3,3a)と可動接触(4,4a)が投入されている状態から各接触を遮断する際には、回転レバー(5)を手動にて所定の方向に回す。回転レバー(5)が所定の角度回ったところで、接触作動体(6)に設けられている、固定接触(3,3a)から可動接触(4,4a)を瞬時に切り離す手段(61,610,62,620)が作用する。これにより、可動接触(4,4a)は固定接触(3,3a)から離れる方向へ直線的または略直線的に瞬時に移動して遮断され、給電は停止される。このときの遮断方向への可動接触(4,4a)の動きは、回転レバー(5)を操作する速度に影響を受けず、常に安定して作動する。
【0014】
固定接触(3,3a)と可動接触(4,4a)が遮断されている状態から各接触を投入する際には、回転レバー(5)を手動にて前記遮断の際と同じ方向に回す。回転レバー(5)の回転方向の動きは、接触作動体(6)を介して、固定接触(3,3a)に対して直線的または略直線的な方向への動きとして可動接触(4,4a)に伝えられる。これにより、可動接触(4,4a)は固定接触(3,3a)方向へ動き、 回転レバー(5)が所定の角度回ったところで固定接触(3,3a)に接触し、各接触は投入状態となり、給電が行われる。
【0015】
固定接触(3,3a)と可動接触(4,4a)の組み合わせを二以上有し、二以上の可動接触(4,4a)が、接触作動体(6)によって同時に固定接触(3,3a)側に移動し、同時に固定接触(3,3a)から離れるようにしたものは、電力量計の2極以上を同時に投入、遮断操作することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
(a)本発明は、電力量計に使用され、電力供給の停止及び停止解除を行うことができる開閉器において、操作性に優れるとともに、特に遮断時の手動操作の速度に影響を受けず、安定した遮断速度で瞬時に遮断することができ、好適な遮断能力が得られる二極給電開閉器を提供することができる。
(b)本発明は、電力量計の2極を同時に投入、遮断操作することが可能であり、容易かつ迅速な作業ができる二極給電開閉器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する。なお、以下の説明で方向や位置を表す「上下、左右」の用語は、図3、図4を基準とする。
【実施例】
【0018】
図1は本発明に係る二極給電開閉器の一実施の形態を示す斜視図、
図2は図1に示す二極給電開閉器の平面図、
図3は図2におけるA−A断面図、
図4は図2におけるB−B断面図、
図5は回転レバーを下面側からみた斜視図、
図6はシフターを上面側からみた斜視図、
図7は可動接触とシフター及び回転レバーの各当接部の位置関係を示す説明図である。
【0019】
二極給電開閉器Sは、外ケース1、外ケース1にスライド可能に収容される内ケース2、内ケース2に設けられている固定接触3、3a及び可動接触4、4a、内ケース2の上部に回転可能に取り付けられている回転レバー5、回転レバー5と可動接触4、4aの間に設けられている接触作動体であるシフター6を備えている。以下、これら各部について詳細に説明する。
【0020】
(外ケース1)
外ケース1は、上部側の全体が四角形状に開口している。外ケース1の下部側には、後述する内ケース2の四本のケーブル挿通管22通る挿通口11が四箇所に設けられている。また、挿通口11を形成するリブ12の内面側には、後述する固定用ネジ71を螺合する雌ネジ部13が設けられている。この固定用ネジ71は、外ケース1と内ケース2を固定するためのものである。
【0021】
(内ケース2)
内ケース2は、内ケース本体20と蓋体21を備えている。内ケース本体20は、外ケース1に内嵌めされ、上下方向へスライド可能であり、ストッパー(符号省略)によって、上方へ外れることはない。
内ケース本体20の下部側には、四本のケーブル挿通管22が軸線方向を上下方向へ向けて設けられている。各ケーブル挿通管22で囲まれた中心部には、上下方向へネジ挿通管24が設けられている。ネジ挿通管24については、後述する。各ケーブル挿通管22の上部側には、ケーブルを固定するためのホルダー部23が設けられている。
【0022】
左側の二組のホルダー部23の左側壁には、留めネジ230が外側から内側方向へ螺合されている。留めネジ230は、所要の間隔で上下二箇所に設けられている。留めネジ230は、ヘッド部に六角穴を設けたものであり、締め付けることによってケーブルの導体に接触して通電が可能になる。また、内ケース本体20の左側壁には、留めネジ230の回し操作を行うための穴状の窓部200が奥行き方向の二箇所に並設されている。
【0023】
(固定接触3、3a)
また、固定接触3、3a側のホルダー部23の右側壁には、板状の固定接触3、3aが固定されている。固定接触3は、図4において固定接触3aの手前側に並設されている(図7参照)。固定接触3、3aは、それぞれL字状に形成されており、上下方向に向けた縦部30をホルダー部23に固定して取り付けてある。固定接触3、3aの横部31は、曲げられて左右方向(水平方向)に向けられており、その先端寄りには接点32が設けられている。
【0024】
(可動接触4、4a)
右側の二組のホルダー部23の右側壁の上下二箇所に留めネジ231によってネジ留めされている。留めネジ231を締め付けることによってケーブルの導体が導電部に接触して通電が可能になる。また、内ケース本体20の右側壁には、留めネジ231の回し操作を行うための穴状の窓部201が奥行き方向の二箇所に並設されている。
【0025】
また、可動接触4、4a側のホルダー部23の左側壁には、板状の可動接触台部43、43aが固定されている。可動接触台部43は、図4において可動接触台部43aの手前側に並設されている。可動接触台部43、43aは、それぞれL字状に形成されており、上下方向に向けた縦部430をホルダー部23に固定して取り付けてある。可動接触台部43、43aの横部431は、曲げられて左右方向(水平方向)に向けられており、その先端寄りには可動接触4、4aの基部が固着されている。
【0026】
可動接触4、4aは、可動接触台部43、43aの横部431から前記固定接触3、3aの横部31の上方へ向け斜めに傾斜して設けられている。可動接触4は、図4において可動接触4aの手前側に並設されている(図7参照)。可動接触4、4aの先部側は水平に曲げられており、その先端寄りには前記固定接触3、3aの各接点32と接触することができる接点42が設けられている。また、可動接触4、4aは、その長手方向の中間部が、下方からコイルバネ40によって付勢力をもって支えられている。各コイルバネ40は、前記ネジ挿通管24の図3において奥行き方向の両側に設けられたバネ座25(図4参照)に取り付けられている。
【0027】
前記したように、固定接触3、3aと可動接触4、4aは、固定接触3と可動接触4及び固定接触3aと可動接触4aをそれぞれ1組として計2組(2極)が設けられている。そして、固定接触3、3aには、電源側ケーブル81がケーブル挿通管22に通されてホルダー部23で接続され、可動接触4、4aには、負荷側ケーブル82がケーブル挿通管22に通されてホルダー部23で接続される。
【0028】
(内ケース2)
内ケース本体20の下部側の二箇所(左右側の各ケーブル挿通管22の間)には、固定用ネジ72、73を通すためのネジ挿通孔26が上下方向に設けられている。各ネジ挿通孔26には、下側から固定用ネジ72、73が通されて、固定用ネジ72、73の先端部は、後述する蓋体21のネジ孔210に螺着される。これにより、内ケース本体20と蓋体21は固着される。
【0029】
また、内ケース本体20のほぼ中心部に設けられている前記ネジ挿通管24は、下部の径大部241と上部の径小部242で構成されている。径大部241の内部には、コイルバネ243が収容されている。コイルバネ243は、径大部241上端の段部(符号省略)で止まるようになっている。
【0030】
ネジ挿通管24には、径大部241側から固定用ネジ74がコイルバネ243と径小部242を貫通して通される。固定用ネジ74の先端部は、後述する回転レバー5の雌ネジ具54に螺着される。なお、コイルバネ243は、固定用ネジ74の径大のヘッド部に掛かって圧縮されている。コイルバネ243の付勢力により、回転レバー5は常に下方へ付勢されている。
【0031】
蓋体21は、内ケース本体20の上部開口部に被せられて取り付けられる。蓋体21の下面側には、前記内ケース本体20の各ネジ挿通孔26に対応して二箇所にネジ孔210が設けられている。前記したように、蓋体21は二本の固定用ネジ72、73によって内ケース本体20に固着される。
【0032】
蓋体21の上面側のほぼ中央部には、低い円筒状の軸筒211が立ち上げて設けられている。軸筒211の外周部に設けられた段部には、Oリング212が装着されるようになっており、後述する回転レバー5の嵌合筒51との間に液密性を付与できるようにしている。軸筒211の基端の外側には、円形の溝213が設けられている。溝213には、嵌合筒51の下端部が入り、回転を案内する。
【0033】
蓋体21の前記軸筒211の内部側には、上下方向に貫通した収容孔214が設けられている。収容孔214には、後述するシフター6が、後述する回転レバー5の軸管53と共に収容される。なお、この状態で、シフター6は上下方向に一定の範囲でスライド可能である。
【0034】
(回転レバー5)
回転レバー5の下面側のほぼ中央部には、円筒状の嵌合筒51が設けられている。嵌合筒51は、前記蓋体21の軸筒211に摺動回転可能に外嵌めされる。
嵌合筒51の内側には、嵌合筒51と中心を同じくして、より径小の円柱形の挿入体52がやや突出して設けられている。挿入体52の高さは、前記嵌合筒51よりやや低く形成されている。また、挿入体52は、前記蓋体21の軸筒211に摺動回転可能に内嵌めされる。
【0035】
挿入体52の中心部には、軸管53が挿入体52の下面からさらに突出して設けられている。軸管53の先端は、回転レバー5の下面縁よりやや突出している。軸管53の中心部には、雌ネジ具54が固着されている。
なお、回転レバー5の一つの隅部には、雌ネジ具50が設けられている。雌ネジ具50は、回転操作ロック(施錠)のために使用されるものであり、内部にロックボルト(公知の一般的なものであるため図示省略)が螺合されている。また、回転レバー5の長辺側で雌ネジ具50と隣り合う隅部には、凹部57が設けられている。
【0036】
前記ロックボルトは、ロック用ねじ孔に螺着される雄ねじの螺設されたボルト本体と、ボルト本体の基端側に同心で一体形成された円形の頭部とからなっている。頭部は、外径寸法が雌ネジ具50のネジ孔の孔径寸法より僅かに小さく設定され、これによってボルト本体がネジ孔に螺着された状態で、頭部がロック用挿通孔に嵌り込むようになっている。これにより、回転レバー5は抜け止め(すなわちロック)される。
【0037】
また、頭部の表面側には、軸心を中心とする楕円孔が凹設されているとともに、楕円孔の中心位置には、孔底から外方に向けて突設された針状突起が設けられている。この楕円孔に専用工具の先端部が挿入された状態で専用工具が回動操作されることにより、ロックボルトが雌ネジ具50のネジ孔に対して挿脱されるようになっている。
【0038】
専用工具は、円柱状のグリップと、グリップの先端から同心で突設されたグリップより小径の軸部と、軸部の先端から同心でさらに突設された係合突起とを備えて構成されている。係合突起は、ロックボルトの頭部の楕円孔に対応して正面視で楕円形に形状設定され、中心位置に針状突起に対応した受容孔が凹設されている。
【0039】
二極給電開閉器Sに対しロックボルトの着脱操作を行うに際しては、受容孔を針状突起に外嵌させるようにして係合突起を楕円孔に嵌め込み、グリップを把持して軸心回りに回動操作すればよい。これによってロックボルトはボルト心回りに正逆回動し、ボルト挿通孔に対して着脱することができる。
【0040】
このように、ロックボルトは、特殊な専用工具を用いなければ締弛操作をすることができないため、汎用のドライバーやレンチ等の一般的な工具によっては操作することができず、したがって、スイッチがみだりに投入または開放操作されることを有効に防止することができる。
【0041】
前記挿入体52の下面には、二箇所に当接部55、56が突出して形成されている。一方の当接部55は、軸管53の外周面に沿うように突出して平面視で円弧状に設けられている。他方の当接部56は、挿入体52の下面の外周縁に突出して平面視で円弧状に設けられている。当接部55、56は、軸管53の軸周方向において180°を成し、軸管53を挟んで相対向する位置に設けられている。当接部55は、後述するシフター6の内カム61に対応し、当接部56は外カム62に対応している。
【0042】
回転レバー5は、前記したように内ケース本体20のネジ挿通管24に通された固定用ネジ74とコイルバネ243の付勢力によって、常に下方へ付勢された状態で取り付けられている。回転レバー5は、この状態で固定用ネジ74を中心として水平方向に回転可能である。なお、回転レバー5の当接部55、56と前記可動接触4、4aの間には、シフター6が介在させてある(図7参照)。
【0043】
(シフター6)
シフター6は、概ね円筒形状のシフター本体60を有している。シフター本体60の上面側には、内カム61と外カム62が平面視円形状に設けられている。
内カム61は、最も低いカム位置610と、カム位置610から上り傾斜したカム面611及び最も高いカム面612で形成されている。カム面612は水平面で、ほぼ全長にわたり同じ高さに形成されている。なお、カム面612のカム位置610側端部は途切れており、大きな段差が設けられている。
【0044】
また、外カム62は、最も低いカム位置620を備えている。カム位置620は、前記カム位置610と軸周方向に180°ずれて相対向する位置に設けられている。
外カム62は、最も低いカム位置620と、カム位置620から上り傾斜したカム面621及び最も高いカム面622で形成されている。カム面622は水平面で、ほぼ全長にわたり同じ高さに形成されている。
なお、カム面622のカム位置620側端部は途切れており、大きな段差が設けられている。カム位置610、620は、固定接触3、3aから可動接触4、4aを瞬時に切り離す遮断手段を構成する。
【0045】
シフター本体60の外周部には、可動接触4、4aの上面(コイルバネ40の位置に対応する部分)に当たる押圧部63、64が下方へやや突出して設けられている。押圧部63、64の位置は、前記カム位置610、620に合わせてある。
なお、一方の押圧部63の側部には、全高にわたりストッパー溝630が設けられている。ストッパー溝630には、蓋体21の収容孔214に設けられているストッパー(図では見えない)が入って係合することにより、シフター本体60が軸周方向へ回らないようになっている。さらに、この構造は取り付け方向の誤りを防止する機能を持つ。
【0046】
また、前記二系統の内カム61と外カム62は、同様のカム面が軸周方向に180°ずれて相対向する位置に設けられており、カム面に当たる前記回転レバー5の当接部55、56が同じく180°ずれて相対向位置に設けられていることと相まって、シフター6が上下動する際の安定を図っている。
【0047】
(作用)
図8は二極給電開閉器の回転レバーが0°回転位置の各部の動きを示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)はB−B断面図、
図9は二極給電開閉器の回転レバーが90°回転位置の各部の動きを示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)はB−B断面図、
図10は二極給電開閉器の回転レバーが180°回転位置の各部の動きを示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)はB−B断面図、
図11は二極給電開閉器の回転レバーが330°回転位置の各部の動きを示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)はB−B断面図、
図12は二極給電開閉器を組み込んだ電力量計の説明図、
図13は二極給電開閉器に対する雨線外カバーの取付状態を示し、(a)は要部側面視説明図、(b)は要部正面視説明図である。
【0048】
図1ないし図13を参照し、二極給電開閉器Sの作用を説明する。
二極給電開閉器Sは、図12に示すように、電力量計W1から取り出された2極の電源側ケーブル81を固定接触3、3a側の各ホルダー部23に接続し、需要家93へつながる2極の負荷側ケーブル82を可動接触4、4a側の各ホルダー部23に接続して組み込まれる。
符号91は配電線、92は電力量計W1へつながる引き込み線である。なお、この組み込み作業は、固定接触3、3aと可動接触4、4aを遮断した状態で行われる。
【0049】
(1)回転角0°(OFF:図7、図8参照)
可動接触4、4aは、可動接触4、4a自身の弾性力及びコイルバネ40による反発力によって固定接触3、3aと離れており、遮断状態(OFF状態)である。回転レバー5の当接部55、56は、シフター6のカム位置610、620に位置している(図7参照)。この状態からは、回転角30°まで、左回りに回転(−30°)させることができる。なお、安全上、逆回しでの投入を阻止するため、蓋体21の円周上に設けた突起部(図示省略)が回転レバー5のストッパ(図示省略)に当たることでそれ以上は回せないようになっている。
【0050】
前記回転位置で、回転レバー5の凹部57から、外ケース1と内ケース2を固定している固定用ネジ71のヘッド部が露出するようになっており、固定用ネジ71の回し操作ができる。これにより、外ケース1と内ケース2の固定及び固定解除が可能であり、固定解除後に内ケース2の穴200、201と各留めネジ230、231を露出させてケーブル81、82の接続作業などが可能になる。
【0051】
(2)回転角90°(OFF→ON:図9参照)
需要家93に給電を行うには、二極給電開閉器Sを次のように操作する。
回転レバー5を図7、図8(a)において右回り方向へ回すと、当接部55、56がシフター6の上り傾斜したカム面611、621に沿って動く。カム面611、621は当接部55、56で押されるので、シフター6が徐々に可動接触4、4a側へ押される。可動接触4、4aはシフター6の押圧部63、64によって押されて、回転レバーが90°回ったところで固定接触3、3aと接触し、2極同時に投入状態(ON状態)となる。この時点では、当接部55、56はカム面611、621の途中に位置している。これにより、需要家93に対し、給電が行われる。
【0052】
(3)回転角180°(ON:図10参照)
回転レバー5をさらに右回り方向へ回すと、当接部55、56はカム面611、621に接して進む。投入状態は維持される。これにより、可動接触4、4aはシフター6によってさらに押され、可動接触4、4aと固定接触3、3aの接触がより緊密になる。
そして、回転レバーが180°回ると、当接部55、56はカム面612、622に位置する。この位置で、回転レバー5に設けられたストッパによって、回転レバー5に対して逆回転方向へのロックがかかり、この角度位置が給電使用状態となる。この角度位置からは左回りに回転させることができない。
【0053】
(4)回転角330°(ON→OFF:図11参照)
使用者の引っ越しなどの理由で給電を停止する場合は、二極給電開閉器Sを次のように操作する。
回転レバー5をさらに右回り方向へ回すと、回転レバー5が330°回ったところで、カム面612、622が途切れて、当接部55、56はカム面612、622端部からカム位置610、620に落ち、当接部55、56とカム面612、622との当接状態が一気に解除される。これにより、可動接触4、4a自体とコイルバネ40の反発力によって、可動接触4、4aは、所定の大きなストロークで瞬時に固定接触3、3aと離れ、2極同時に遮断状態(OFF状態)となる。これにより、需要家93に対する給電が停止される。
【0054】
(5)回転角0°(OFF)
回転レバー5を右回り方向へ回し、回転レバー5が0°(回転角360°)まで回ったところで回転レバー5が一回転し、前記(1)の状態に戻る。
【0055】
このように、二極給電開閉器Sの各接触の投入、遮断の操作は、回転レバー5を一方向へ回すだけでよく、この操作は操作ステップが少ない単純な操作であるため素早く行うことができる。また、各接触の遮断は、回転レバー5を回す操作速度に影響を受けることなく、前記したように安定した遮断速度で瞬時に行われる。
【0056】
さらに、二極給電開閉器Sは、電力供給の停止、停止解除のために2極(2相)の投入、遮断を行う場合には、2極を同時に開閉させることができる。
これにより、動力回路の負荷電流が流れている状態でも、従来のような1極毎の遮断における誤操作によって欠相状態が生じるリスクを低減することができる、操作性に優れた二極給電開閉器を提供することができる。
【0057】
二極給電開閉器Sが使用される場合の設置状態および手順は次のとおりである。
(A)単相交流三線式にて電力の供給を行う場合において、屋側の雨線内で二極給電開閉器Sが使用される場合。(図12参照)
電力量計W1へのケーブル81、82の接続が完了した後、二極給電開閉器Sの回転レバー5の操作を行ない、ロックボルトを雌ネジ具50に締付け回転レバー5を固定する。
この場合の二極給電開閉器Sは、ケーブル81を湾曲させて立ち上げた状態で、電力量計W1の近傍に設置する。
【0058】
(B)単相交流三線式にて電力の供給を行う場合において、屋側の雨線外で二極給電開閉器Sが使用される場合。
この場合、二極給電開閉器Sの内部に水(雨水)が浸入しないようにする雨線外カバー85が装着されている。図13を参照し、その装着手順を説明する。
(1)電力量計W1の端子カバー86外面に、取付金具87を両面テープ88にて固着させる。
(2)ケーブル81、82の接続が完了し、回転レバー5の操作を行なった二極給電開閉器Sに、雨線外カバー85を装着する。
(3)二極給電開閉器Sと一体となった雨線外カバー85を取付金具87に装着し、封印ネジ89により固定して取り付けを完了する。
このように、雨線外カバー85を装着することによって、雨がかかる屋側であっても二極給電開閉器S内部に水が浸入することはない。
【0059】
(C)三相交流三線式にて電力の供給を行う場合において、屋側の雨線内で二極給電開閉器Sが使用される場合。
図14は二極給電開閉器を組み込んだ電力量計の他の実施形態を示す説明図である。
本実施の形態に係る電力量計W2は、二極給電開閉器Sに加えて一極給電開閉器84を備えたもので、工場94等の動力電源が必要な箇所に適用するものである。
【0060】
例えば動力線の停止を行う場合には、従来のように一線を開放すると中性線欠相状態や電圧不平衡状態になる場合があるため、開放操作手順に注意することが必要である。
本発明の二極給電開閉器は、二線を同時に開放することによって、欠相のリスクを低減し、従来の作業者によるヒューマンエラーを防止することが出来るものである。
本実施の形態の電力量計W2における一極給電開閉器84と二極給電開閉器Sの設置方法は次のとおりである。
【0061】
(1)動力線の三線のうち、中性線2L以外の線である電源側ケーブル1L(または3L)に予め一極給電開閉器84を接続しておく。
(2)本実施の形態の二極給電開閉器Sに、動力線の他の二線である中性線2Lと、電源側ケーブル3L(または1L)、及び負荷側ケーブル82を前記電力量計W1の場合と同様に接続する。
【0062】
また、二極給電開閉器Sの操作手順は次のとおりである。
(1)動力線を開放(停止)する場合は、先ず一極給電開閉器84を開放する。
(2)続いて、二極給電開閉器Sの回転レバー5を回転し開放する。
(3)特殊ネジロックであるロックボルトを雌ネジ具50に専用工具にて装着し、二極給電開閉器Sの回転レバー5を容易に操作できないようにロックする。同様に一極給電開閉器84も操作できないようにロックする。
(4)前記二極給電開閉器Sおよび一極給電開閉器84は、ケーブル81を湾曲させて立ち上げた状態で、電力量計W2の近傍に設置する。
【0063】
(5)次に、動力線の停止を解除(投入)する場合は、先ず、ロックボルトを雌ネジ具50から専用工具にて外し、ロックボルトによるロックを解除して、二極給電開閉器Sの回転レバー5を回転させ、投入する。
(6)続いて、一極給電開閉器84を投入する。
【0064】
(7)ロックボルトを雌ネジ具50に専用工具にて装着し、二極給電開閉器Sの回転レバー5を容易に操作できないようにロックする。また、一極給電開閉器84も操作できないようにロックする。
(8)二極給電開閉器Sおよび一極給電開閉器84は、ケーブル81を湾曲させて立ち上げた状態で、電力量計W2の近傍に設置する。
【0065】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る二極給電開閉器の一実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1に示す二極給電開閉器の平面図。
【図3】図2におけるA−A断面図。
【図4】図2におけるB−B断面図。
【図5】回転レバーを下面側からみた斜視図。
【図6】シフターを上面側からみた斜視図。
【図7】可動接触とシフター及び回転レバーの各当接部の位置関係を示す説明図。
【図8】二極給電開閉器の回転レバーが0°回転位置の各部の動きを示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)はB−B断面図。
【図9】二極給電開閉器の回転レバーが90°回転位置の各部の動きを示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)はB−B断面図。
【図10】二極給電開閉器の回転レバーが180°回転位置の各部の動きを示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)はB−B断面図。
【図11】二極給電開閉器の回転レバーが330°回転位置の各部の動きを示す説明図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図、(c)はB−B断面図。
【図12】二極給電開閉器を組み込んだ電力量計の説明図。
【図13】二極給電開閉器に対する雨線外カバーの取付状態を示し、(a)は要部側面視説明図、(b)は要部正面視説明図。
【図14】二極給電開閉器を組み込んだ電力量計の他の実施形態を示す説明図。
【符号の説明】
【0067】
S 二極給電開閉器
W1 電力量計
1 外ケース
11 挿通口
12 リブ
13 雌ネジ部
2 内ケース
20 内ケース本体
200、201 窓部
21 蓋体
210 ネジ孔
211 軸筒
212 Oリング
213 溝
214 収容孔
22 ケーブル挿通管
23 ホルダー部
230 留めネジ
231 留めネジ
24 ネジ挿通管
241 径大部
242 径小部
243 コイルバネ
25 バネ座
26 ネジ挿通孔
3 固定接触
3a 固定接触
30 縦部
31 横部
32 接点
4 可動接触
4a 可動接触
40 コイルバネ
42 接点
43 可動接触台部
43a 可動接触台部
430 縦部
431 横部
5 回転レバー
50 雌ネジ具
51 嵌合筒
52 挿入体
53 軸管
54 雌ネジ具
55 当接部
56 当接部
57 凹部
6 シフター
60 シフター本体
61 内カム
610 カム位置
611 カム面
612 カム面
62 外カム
620 カム位置
621 カム面
622 カム面
63、64 押圧部
630 ストッパー溝
71、72、73、74 固定用ネジ
81 電源側ケーブル
82 負荷側ケーブル
85 雨線外カバー
86 端子カバー
87 取付金具
88 両面テープ
89 封印ネジ
91 配電線
92 引き込み線
93 需要家
W2 電力量計
1L、3L 電源側ケーブル
2L 中性線
84 一極給電開閉器
94 工場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接触(3,3a)と、
該固定接触(3,3a)に対して直線的または略直線的に移動して接点を開閉する可動接触(4,4a)と、
可動接触(4,4a)の移動方向に対して直交または略直交する平面上を回転する回転レバー(5)と、
前記可動接触(4,4a)と回転レバー(5)の間に配置され、回転レバー(5)の回転に追従して可動接触(4,4a)の開閉動作を行う接触作動体(6)と、
を有しており、
前記可動接触(4,4a)は、弾性力によって固定接触(3,3a)から離れる方向に付勢されており、 前記接触作動体(6)には、固定接触(3,3a)から可動接触(4,4a)を瞬時に切り離す手段(61,610,62,620)が形成されている、
二極給電開閉器。
【請求項2】
固定接触(3,3a)と可動接触(4,4a)の組み合わせを二以上有し、二以上の可動接触(4,4a)は、接触作動体(6)によって同時に固定接触(3,3a)側に移動し、同時に固定接触(3,3a)から離れる、
請求項1記載の二極給電開閉器。
【請求項3】
請求項1または2記載の二極給電開閉器(S)を備えている、電力量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−70662(P2009−70662A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237072(P2007−237072)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000003171)株式会社戸上電機製作所 (29)
【出願人】(390009999)日動電工株式会社 (24)
【Fターム(参考)】