説明

二次電池

【課題】大きな衝撃を受けても内部短絡が発生し難い二次電池を提供する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池100は、正極131と負極132とがセパレータ133を介して巻回されてなる電極群130を有する。正極131の幅は負極132の幅よりも短く設定されており、正極131の外側に柔軟性を有する絶縁部材134が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池等の二次電池に関し、特に衝撃による内部短絡の発生を防止するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやビデオカメラの電池パックに使用されるリチウムイオン二次電池は、一般的に、電極群、非水電解質及び集電部品を備えており、電極群は正極と負極がセパレータを介して積層された構造を有している。このような構造のリチウムイオン二次電池は、落下等の衝撃による電極のずれによって、電極群の端面において正極と負極との接触(内部短絡)が生じ、異常放電によって異常過熱が発生するおそれがある。
【0003】
この問題を解消するリチウムイオン二次電池として、電極群の端面を接着剤を硬化させた絶縁体で保護することによって、振動又は衝撃による電極のずれを抑制し、内部短絡を防止する構造が提案されている(特許文献1参照)。また、正極と負極の一方の電極の幅方向の一端に集電体が合剤層から露出している露出部が存在しているリチウムイオン二次電池において、隣り合う露出部の間に補強部材を設けることにより内部短絡を抑制する構造が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−190912号公報
【特許文献2】特開2008−21644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載された構造では、大きな衝撃を受けた場合に、負極の剪断によって内部短絡が発生するおそれがある。その理由を、図6及び図7を参照して以下に説明する。
【0006】
図6は、公知のリチウムイオン二次電池の電極群の構造例を模式的に示す断面図であり、図7は、図6のリチウムイオン二次電池に衝撃により電極に剪断ずれが発生した電極群の状態を模式的に示す断面図である。このリチウムイオン二次電池の電極群600は、正極601と負極602とがセパレータ603を介して交互に積層された構造を有しており、正極601の幅(図中の左右方向での長さ)は、負極602の幅よりも短く設定されている。
【0007】
図6に示すように、例えば、落下による衝撃がリチウムイオン二次電池に加わり、矢印D方向に加圧される(応力が加わる)と、負極602において正極601の端面に対応するd−d部に剪断力が発生する。この剪断力により、図7に示すように、負極602がセパレータ603と共に部分的に剪断し、正極601と接触することで、内部短絡が発生する。
【0008】
このような負極への剪断力に起因する内部短絡に対し、特許文献1、特許文献2に記載された構造では、補強部材が柔軟に変形することができず、負極が正極端面に対応する位置で剪断荷重を受ける。そのため、大きな衝撃を受けた場合に、負極に剪断が発生することを防止することができずに、内部短絡が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、大きな衝撃(外力)を受けても、内部短絡が発生し難い二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る二次電池は、正極と負極とがセパレータを介して巻回又は積層されてなる電極群を有する二次電池であって、前記正極の幅と前記負極の幅とが異なり、幅の短い方の電極の外側に柔軟性を有する絶縁部材が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、落下等により外部から大きな衝撃(外力)を受けても、内部短絡が発生し難い二次電池を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示すリチウムイオン二次電池の分解斜視図である。
【図3】図1に示すリチウムイオン二次電池が有する電極群の斜視図である。
【図4】図3中に示す矢視A−Aでの断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池が有する電極群の構造を示す断面図である。
【図6】公知のリチウムイオン二次電池の電極群の構造例を示す断面図である。
【図7】図6のリチウムイオン二次電池に衝撃により電極に剪断ずれが発生した電極群の状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、本発明に係る二次電池として、リチウムイオン二次電池を取り上げることとする。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池の外観を示す斜視図であり、図2は、図1に示すリチウムイオン二次電池の分解斜視図である。リチウムイオン二次電池100は、一側部に開口部111が設けられたセル缶110の内部に電極群130が収容され、開口部111は封口体120によって密閉封止される構造となっている。
【0015】
電極群130は、図4を参照して後に説明するように、正極131と負極132とがセパレータ133を介して巻回された構造(巻回による積層構造)を有し、セル缶110の開口部111からセル缶110の内部に挿入される。電極群130は、正極131に取り付けられた正極集電体135と、負極132に取り付けられた負極集電体136とを備えている。ここで、セル缶110は、例えばアルミニウム等の金属材料からなり、正極集電体135と電気的に接続されることにより、リチウムイオン二次電池100の正極端子となることができる。
【0016】
正極集電体135は、例えばアルミニウム箔で形成され、正極131の端部(セル缶110の開口部111側)に設けられている。負極集電体136は、例えば銅箔で形成され、負極132の端部(セル缶110の開口部111側)に設けられている。
【0017】
封口体120は、セル缶110の開口部111に絶縁プレート125と共に配置され、電極群130と接続された後、セル缶110を密閉封止する。封口体120は、封口板121、電極端子122、ガスケット123及び安全弁124によって構成されている。封口板121は、金属材料からなり、セル缶110の開口部111に対応する形状で形成されている。封口板121は、正極集電体135と電気的に接続され、セル缶110の開口部111に配置されて、例えばレーザー溶接により、セル缶110の開口部111が密閉封止されるようにセル缶110と溶接される。
【0018】
封口板121の一端部に形成されている安全弁124は、リチウムイオン二次電池100内部が、例えばガスにより高圧になった場合に開裂してガスを外部に放出することで、リチウムイオン二次電池100の破裂を防止する。電極端子122は、負極集電体136と電気的に接続され、封口板121と電気的に接続されないように絶縁体で形成されたガスケット123を介して、封口板121の略中央において封口板121を貫通するように配置されている。
【0019】
図3は、リチウムイオン二次電池100の電極群130の斜視図であり、図4は、図3中に示す矢視A−Aでの断面図である。電極群130は、帯状の正極131と負極132とが帯状のセパレータ133を介して交互に積層された構造を有する。本実施形態では、正極131/セパレータ133/負極132/セパレータ133の積層体を巻回することにより、図4に示されるような多層構造を実現している。正極131の幅(図4の左右方向での長さ)は負極132の幅よりも短く設定されており、正極131の幅方向端には絶縁部材134が設けられている。正極131が配置されている正極層における絶縁部材134を含めた幅は負極132の幅と略同一となっている。すなわち、絶縁部材134と正極131とを合わせた幅寸法が負極132の幅寸法と略等しい。
【0020】
正極131は、例えば、コバルト酸リチウムからなる活物質層がアルミニウム箔の表面に形成された構造を有し、負極132は、例えば、炭素系材料からなる活物質層が銅箔の表面に形成された構造を有している。セパレータ133は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の軟質樹脂で形成されている。絶縁部材134は、正極131と略同一の厚みを有しており、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の柔軟性の材料からなり、正極131の外側に正極131と一体的に形成されている。
【0021】
リチウムイオン二次電池100が、落下等によって衝撃を受け、リチウムイオン二次電池100の内部の電極群130が荷重を受けると、正極131の外側に配置された絶縁部材134が柔軟に変形する。これにより、負極132において正極131の端面に対応する位置に加わる剪断力が軽減され、負極132に剪断が発生することが抑制される。すなわち、図4に示した電極群130の構造によれば、衝撃によって負極132が剪断して正極131と短絡することを防止することができる。
【0022】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池100が備える電極群130を構成する絶縁部材134がセパレータ133によって構成されるように、電極群130の構造を変形したものである。そこで、以下の説明では、第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池が備える電極群の詳細な構造についてのみ説明を行うこととする。
【0023】
図5は、第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池が有する電極群の構造を示す断面図である。電極群140は、正極131と負極132とがセパレータ137を介して交互に積層され、セパレータ137の幅方向端が正極131の幅方向端に当接するように、セパレータ137の端部138が折り曲げられた構造を有している。
【0024】
セパレータ137には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の柔軟性のある材料で形成されており、正極131と略同一の厚みを有している。
【0025】
第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池もまた、第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池100と同様に、落下等による衝撃を受けると、電極群140が荷重を受ける。このとき、正極131の外側に配置されたセパレータ137の端部138が柔軟に変形することで、負極132において正極131の端面に対応する位置に加わる剪断力が軽減され、負極132に剪断が発生することが抑制される。すなわち、第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池が有する電極群140によっても、衝撃によって負極132が剪断して正極131と短絡することを防止することができる。
【0026】
<その他の実施形態>
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0027】
例えば、上記実施形態では、二次電池としてリチウムイオン二次電池を取り上げたが、本発明は、シート状の正極及び負極をシート状のセパレータで隔離する構造を有し、正極の幅と負極の幅とが異なる二次電池に適用可能である。また、第1実施形態では、図4の多層構造を、正極131/セパレータ133/負極132/セパレータ133の積層体を巻回することで実現したが、任意の平面形状を有する正極131、負極132及びセパレータ133を逐次積層することで実現してもよい。
【符号の説明】
【0028】
100 チウムイオン二次電池
130,140 電極群
131 正極
132 負極
133,137 セパレータ
134 絶縁部材
138 (セパレータの)端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とがセパレータを介して巻回又は積層されてなる電極群を有する二次電池であって、
前記正極の幅と前記負極の幅とが異なり、幅の短い方の電極の外側に柔軟性を有する絶縁部材が配置されていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記絶縁部材を前記幅が短い方の電極の外側に配置したとき、前記絶縁部材と前記幅が短い方の電極とを合わせた幅寸法が幅の長い方の電極の幅寸法と略等しくなることを特徴とする請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記正極の幅が前記負極の幅よりも短いことを特徴とする請求項1又は2記載の二次電池。
【請求項4】
前記絶縁部材は、前記セパレータの端部が折り曲げられることによって形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−62222(P2013−62222A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201674(P2011−201674)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】