説明

二輪車のブレーキ配管構造

【課題】 二輪車のブレーキ配管構造の外観等を向上すること。
【解決手段】 車体側チューブ11と車輪側チューブ12を伸縮可能に結合したフロントフォーク10を有し、ブレーキに作動液を供給する給液管60を備える二輪車のブレーキ配管構造において、車体側チューブ11内に支持した上側給液管70と車輪側チューブ12内に支持した下側給液管80を互いに摺動自在に挿入し、上側給液管70と下側給液管80の一方に、両給液管60の全摺動ストロークに渡って上側給液管70と下側給液管80の他方に臨む連絡室96を設け、上側給液管70と下側給液管80の他方に、両給液管60のいかなる摺動ストローク位置においても上記連絡室96に連通する連絡口97を設けてなるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二輪車のブレーキ配管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車のブレーキ配管構造として、特許文献1に記載の如く、ブレーキに作動液を供給する給液管をフロントフォークの車輪側チューブ内に設けたものがある。
【特許文献1】特開昭60-25868
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載のブレーキ配管構造では、マスタシリンダに接続されたブレーキホースが車体側チューブの外部に沿うように延在され、このブレーキホースが車輪側チューブ内の給液管に接続されるようになっているため、以下の問題点がある。
【0004】
(1)ブレーキホースはフロントフォークの伸縮に追従するためのたるみを有する必要があり、このたるみがマスタシリンダ〜車輪側チューブの長い範囲に延在される。従って、長くたるんだブレーキホースが外観を損なう他、前輪やカウリングと干渉するおそれもある。
【0005】
(2)ブレーキホースはたるむことができるようにゴム等から構成する必要があり、ブレーキ作動時の作動液の圧力によって膨らみ、液圧を低下させるおそれもある。
【0006】
本発明の課題は、二輪車のブレーキ配管構造の外観等を向上することにある。
【0007】
本発明の他の課題は、ブレーキ作動時の作動液の液圧の低下を防止してブレーキ効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、車体側チューブと車輪側チューブを伸縮可能に結合したフロントフォークを有し、ブレーキに作動液を供給する給液管を備える二輪車のブレーキ配管構造において、車体側チューブ内に支持した上側給液管と車輪側チューブ内に支持した下側給液管を互いに摺動自在に挿入し、上側給液管と下側給液管の一方に、両給液管の全摺動ストロークに渡って上側給液管と下側給液管の他方に臨む連絡室を設け、上側給液管と下側給液管の他方に、両給液管のいかなる摺動ストローク位置においても上記連絡室に連通する連絡口を設けてなるようにしたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記上側給液管と下側給液管の一方の内周に、両給液管の全摺動ストロークに渡るように設けた摺動部に、上側給液管と下側給液管の他方の外周を摺動自在に挿入し、上側給液管と下側給液管の一方に設けた摺動部には、上側給液管と下側給液管の他方の外周との間に連絡室を形成するとともに、連絡室の両端部を封止し、上側給液管と下側給液管の他方の外周には、上側給液管と下側給液管の一方に設けた摺動部の連絡室に常時連通する連絡口を設けたようにしたものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記上側給液管と下側給液管が金属管からなるようにしたものである。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において更に、前記上側給液管をマスタシリンダにつなぐ給液管が金属管からなるようにしたものである。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの発明において更に、前記下側給液管をホイールシリンダにつなぐ給液管が金属管からなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
(請求項1)
(a)上側給液管と下側給液管がフロントフォークの車体側チューブと車輪側チューブに内挿される。従って、たるみ状のブレーキホースをフロントフォーク周りの長い範囲に延在することがない。長くたるんだブレーキホースが外観を損なうことがないし、前輪やカウリングと干渉するおそれもない。
【0014】
(b)上側給液管と下側給液管の一方に、両給液管の全摺動ストロークに渡って上側給液管と下側給液管の他方に臨む連絡室を設け、上側給液管と下側給液管の他方に、両給液管のいかなる摺動ストローク位置においても上記連絡室に連通する連絡口を設けた。これにより、フロントフォーク(車体側チューブと車輪側チューブ)の伸縮に伴ない、上側給液管と下側給液管が互いにいか様に摺動しても、上側給液管の液装填容積と下側給液管の液装填容積は常に一定を維持する。従って、フロントフォークが伸縮しても、上側給液管と下側給液管の作動液にはマスタシリンダの圧力しか作用せず、マスタシリンダの圧力がそのままホイールシリンダに伝えられ、ブレーキ作動の安定を確保できる。
【0015】
(請求項2)
(c)上側給液管と下側給液管の一方の内周に、両給液管の全摺動ストロークに渡るように設けた摺動部に、上側給液管と下側給液管の他方の外周を摺動自在に挿入し、上側給液管と下側給液管の一方に設けた摺動部には、上側給液管と下側給液管の他方の外周との間に連絡室を形成するとともに、連絡室の両端部を封止し、上側給液管と下側給液管の他方の外周には、上側給液管と下側給液管の一方に設けた摺動部の連絡室に常時連通する連絡口を設けた。従って、上述(b)の如くに、上側給液管と下側給液管が互いにいか様に摺動しても、上側給液管の液装填容積と下側給液管の液装填容積を常に一定に維持できる。
【0016】
(請求項3)
(d)上側給液管と下側給液管が金属管からなるものとすることにより、上側給液管と下側給液管はブレーキ作動時の作動液の圧力によって膨らむことがなく、作動液の液圧の低下を防止してブレーキ効率を向上できる。
【0017】
(請求項4)
(e)フロントフォークの車体側チューブの上部にはハンドルが固定され、ハンドルにはマスタシリンダが固定されるから、車体側チューブに支持されている上側給液管とマスタシリンダをつなぐ給液管は可撓性をもつ必要がなく金属管にて構成できる。これにより、給液管はブレーキ作動時の作動液の圧力によって膨らむことがなく、作動液の液圧の低下を防止してブレーキ効率を向上できる。
【0018】
(請求項5)
(f)フロントフォークの車輪側チューブの下端側にはキャリパが固定され、キャリパにはホイールシリンダが固定されているから、車輪側チューブに支持されている下側給液管とホイールシリンダをつなぐ給液管は可撓性をもつ必要がなく、金属管にて構成できる。これにより、給液管はブレーキ作動時の作動液の圧力によって膨らむことがなく、作動液の液圧の低下を防止してブレーキ効率を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は自動二輪車のブレーキ配管構造を示す模式図、図2はフロントフォークを示す断面図、図3は図2の下部断面図、図4は図2の上部断面図である。
【実施例】
【0020】
図1に示した自動二輪車1は、左右一対の車体側チューブ11と車輪側チューブ12を伸縮可能に結合(本実施例では車体側チューブ11を車輪側チューブ12に挿入)したフロントフォーク10を有する。車体側チューブ11の上部にはハンドル2が固定され、車輪側チューブ12の下部には前輪3が軸支される。
【0021】
フロントフォーク10は、図2に示す如く、車体側チューブ11を車輪側チューブ12に摺動自在に挿入している。車輪側チューブ12の車体側チューブ11が挿入される開口端には、摺動ガイド13、シールスペーサ14、オイルシール15、ストッパリング16、ダストシール17が設けられる。車体側チューブ11の車輪側チューブ12に挿入される下端外周部には、摺動ガイド19が設けられる。
【0022】
車輪側チューブ12の底部にはボルト20が挿入され、このボルト20によりボトムピース21、ストッパリング21Aを介して固定される中空パイプ22が立設している。車体側チューブ11の上端部にはOリングを介してキャップボルト23の下端部の外周が螺着され、キャップボトル23の下端部に設けられる上ばね受部51と、中空パイプ22の上端部に設けられる下ばね受部52との間に、圧縮コイルばね50が介装される。
【0023】
中空パイプ22の上端部には拡径部31が設けられ、拡径部31の外周の環状溝内に、車体側チューブ11の内周に摺接するピストンリング32を嵌装している。中空パイプ22における拡径部31の下側部分の外側に油室27を設ける。
【0024】
車体側チューブ11の下端内周部(先端部)にはピストン41が設けられる。ピストン41は、車体側チューブ11の内径段差部に係止された環状上ピース42(通路42A)、ワッシャ43と、車体側チューブ11の下端かしめ部11Bにより上ピース42に固定化された筒状下ピース44とからなり、下ピース44の上テーパ部45Aの内周にチェック弁46を配置している。チェック弁46は、ワッシャ43により背面支持される皿ばね状(コイルでも可)スプリング47により付勢され、そのテーパ面を上テーパ部45Aのテーパ面に着座せしめられるとともに、その内周と中空パイプ22の外周との間に環状隙間48を形成している。
【0025】
ピストン41は、中空パイプ22の外側に設けた油室27を上下に仕切る。即ち、車体側チューブ11と中空パイプ22と拡径部31とピストン41により上油室27Aを、ピストン41の下部の車輪側チューブ12と中空パイプ22により下油室27Bを形成している。また、中空パイプ22の内側に油溜室28を設け、中空パイプ22の下端側で油室27と油溜室28を連通する複数の通孔34と、中空パイプ22の上端側で油室27と油溜室28を連通するオリフィス35とを中空パイプ22に設けている。油溜室28には作動油が充填されており、車体側チューブ11の内部で油溜室28の上部には気体室29を設けてある。
【0026】
尚、車体側チューブ11に設けたピストン41の上ピース42と、中空パイプ22に設けた拡径部31の間に、最大伸長時のリバウンドスプリング36を設け、最伸長ストロークを規制する。また、中空パイプ22の下端部と車輪側チューブ12の底部との間にオイルロックピース37を挟持し、最大圧縮時にピストン41の下ピース44によりオイルロックピース37の周囲の作動油を加圧して最圧縮ストロークを規制する。
【0027】
また、ピストン41の下ピース44に孔44Aを設け、かつ車体側チューブ11のピストン41を設けた部分に孔11Aを設け、車輪側チューブ12の摺動ガイド13、車体側チューブ11の摺動ガイド19、及びそれら摺動ガイド13、19に挟まれるチューブ間スペースに油室27の作動油を供給し、摺動ガイド13、19の潤滑、チューブ間スペースの容積補償を行なう。
【0028】
フロントフォーク10にあっては、車両が受ける衝撃を圧縮コイルばね50と気体室29の空気ばねによって吸収して緩和し、この衝撃の吸収に伴なう圧縮コイルばね50の振動を以下の減衰作用により制振する。
【0029】
(圧縮行程)
フロントフォーク10の圧縮行程では、車体側チューブ11が伸長状態から下降して下油室27Bの圧力が上昇し、ピストン41のチェック弁46が上向き移動して開くことにより下油室27Bの油が上油室27Aの側に置換するとともに、車体側チューブ11の断面積×ストローク分の油が下油室27Bから通孔34を通って油溜室28へ移動する際に、通孔34で生ずる通路抵抗に起因する減衰力を生ずる。
【0030】
(伸長行程)
フロントフォーク10の伸長行程では、車体側チューブ11が圧縮状態から上昇して上油室27Aの圧力が上昇し、上油室27Aの油がピストン41の上テーパ部45Aに着座せしめられるチェック弁46の環状隙間48から下油室27Bに移動する際に環状隙間48で生ずる通路抵抗、及び上油室27Aの油が中空パイプ22のオリフィス35から出て油溜室28、中空パイプ22の通孔34経由で下油室27Bに移動する際にオリフィス35で生ずる通路抵抗に起因する減衰力を生ずる。
【0031】
また、この伸長行程では、車体側チューブ11の断面積×ストローク分の油が油溜室28から下油室27Bに補給される。
【0032】
自動二輪車1のハンドル2には油圧を発生するマスタシリンダ61が固定され、車輪側チューブ12の下端側にはブレーキキャリパ62が固定され、ブレーキキャリパ62にホイールシリンダ63を備える。マスタシリンダ61からホイールシリンダ63には、ブレーキ作動液の給液管60が延在される。マスタシリンダ61の操作レバー61Aを操作してマスタシリンダ61の作動液を昇圧し、給液管60を介してホイールシリンダ63に作動液を供給する。
【0033】
給液管60は、上側給液管70と下側給液管80からなる。車体側チューブ11内に支持した上側給液管70と車輪側チューブ12内に支持した下側給液管80を互いに摺動自在に挿入する。上側給液管70に両給液管70、80の全摺動ストロークに渡って下側給液管80に臨む後述の連絡室96を設ける。下側給液管80に両給液管70、80のいかなる摺動ストローク位置においても上記連絡室96に連通する後述の連絡口97を設ける。具体的には以下の如くである。
【0034】
上側給液管70は、車体側チューブ11の上端部のキャップボルト23の中心部にOリングを介して挿着される第1上側給液管71と、第1上側給液管71の下端側にOリングを介して接続される第2上側給液管72(内管72Aと外管72Bの二重管)と、第2上側給液管72の下端側にOリングを介して接続される第3上側給液管73とからなる。第2上側給液管72は、内管72Aの上端部が第1上側給液管71の車体側チューブ11への挿入端に螺着されて該第1上側給液管71の外周段差面に押当てロックされ、外管72Bが内管72Aの外側にOリングを介して挿着され、外管72Bの下端部を内管72Aの下端部より下方にまで延在させている。第3上側給液管73は、上側ボス部73Aが第2上側給液管72の内管72A、外管72Bの下端部に螺着される。このとき、第3上側給液管73の上側ボス部73Aの上端面と、第2上側給液管72の内管72Aの下端側段差面との間にワッシャ74、Oリングが被着されたシールケース75が挟圧固定され、この第3上側給液管73の上側ボス部73Aの外周段差面に第2上側給液管72の外管72Bの下端側の内周段差面が押当てロックされる。シールケース75には、下側給液管80のためのブッシュ75A、オイルシール75Bが装填される。第3上側給液管73の下側ボス部73Bには、下側給液管80のためのブッシュ76A、オイルシール76Bが装填され、これらは下側ボス部73Bに螺着されるシールキャップ77によりワッシャ77Aを介して保持される。
【0035】
下側給液管80は、車輪側チューブ12の底部のボトムピース21の中心部に挿着されて立設される中空ロッドからなる。フロントフォーク10(車体側チューブ11と車輪側チューブ12)の伸縮に伴ない、下側給液管80の外周が上側給液管70の内周に設けた上側のブッシュ75A、オイルシール75Bと下側のブッシュ76A、オイルシール76B(摺動部)に摺動自在に挿入される。下側給液管80は第2上側給液管72(内管72A)の中空部を図4の実線〜鎖線で示す如くに上下に移動する。このとき、下側給液管80の下端側外周に設けたストッパリング81に係着するシールキャップ82がボトムピース21の上端外周部に螺着され、下側給液管80の下端部をボトムピース21の中心部に押当てロックする。シールキャップ82は、カラー83を介して、ボトムピース21の内周と下側給液管80の外周との間に装填したOリング84を押圧保持する。
【0036】
以下、給液管60の上側給液管70、下側給液管80が形成する給液通路について説明する。
【0037】
上側給液管70は、第1上側給液管71の上端面から車体側チューブ11への挿入端の外周にまで穿設される通路91、第2上側給液管72の内管72Aと外管72Bの間でそれらの上下両端部を除く一定範囲に設けられる環状隙間92、内管72Aの上端側の内周に設けられて通路91に連通するとともに、環状隙間92に連通する環状溝93、内管72Aの下端面と外管72Bの内周段差面との間に設けられて環状隙間92に連通するとともに、第3上側給液管73の上側ボス部73Aの外周に開口する後述の通路95に連通する環状溝94、第3上側給液管73の上側ボス部73Aに穿設されて環状溝94に連通するとともに、上側ボス部73Aの上端面を経由して第3上側給液管73の内周の後述する環状連絡室96に連通する通路95、第3上側給液管73の下側給液管80を囲む内周であって上下のボス部73A、73Bに設けたオイルシール75B、76Bに挟まれる範囲(上側給液管70に対する下側給液管80の全摺動ストローク範囲)に渡る環状連絡室96を有する。上側給液管70においては、通路91、環状溝93、環状隙間92、環状溝94、通路95、環状連絡室96が順に連通し、これらの給液通路に作動液が装填される。
【0038】
下側給液管80は、上側給液管70に対するいかなる摺動ストローク位置にあっても、上側給液管70の環状連絡室96に臨む該下側給液管80の外周に設けられる環状連絡口97、下側給液管80の中空部に設けられて環状連絡口97に連通し、下側給液管80の下端面に開口する通路98、車輪側チューブ12の下端部、ボルト20、ボトムピース21に設けられて互いに連通する通路99を有する。下側給液管80の中空部において、通路98は環状連絡口97と半径方向通路98Aを介して連通する部位を上端部とし、通路98の上端部〜下側給液管80の上端面の開口までの範囲は長尺プラグ棒85、ボール86を圧入されて閉鎖される。下側給液管80においては、下側給液管80が上側給液管70に対するいかなる摺動ストローク位置にあるときにも、上側給液管70の環状連絡室96に連通する環状連絡口97、通路98、99が順に連通し、これらの給液通路に作動液が装填される。
【0039】
従って、給液管60にあっては、上側給液管70の内周に、上下の両給液管70、80の全摺動ストロークに渡るように設けた摺動部(上下のボス部73A、73Bに設けたブッシュ75A及びオイルシール75Bとブッシュ76A及びオイルシール76B)に、下側給液管80の外周を摺動自在に挿入する。そして、上側給液管70に設けた上述の摺動部には、下側給液管80の外周との間に環状連絡室96を形成するとともに、環状連絡室96の上下の両端部を上下のオイルシール75B、76Bにより封止する。更に、下側給液管80の外周には、上側給液管70に設けた上述の摺動部の環状連絡室96に常時連通する環状連絡口97を設けたものになる。
【0040】
このとき、上側給液管70の第1上側給液管71、第2上側給液管72(内管72A、外管72B)、第3上側給液管73、下側給液管80は、好適には、いずれも金属管からなるものとする。
【0041】
従って、本実施例によれば以下の作用効果を奏する。
(a)上側給液管70と下側給液管80がフロントフォーク10の車体側チューブ11と車輪側チューブ12に内挿される。従って、たるみ状のブレーキホースをフロントフォーク10周りの長い範囲に延在することがない。長くたるんだブレーキホースが外観を損なうことがないし、前輪やカウリングと干渉するおそれもない。
【0042】
(b)上側給液管70に、両給液管70、80の全摺動ストロークに渡って下側給液管80に臨む連絡室96を設け、下側給液管80に、両給液管70、80のいかなる摺動ストローク位置においても上記連絡室96に連通する連絡口97を設けた。これにより、フロントフォーク10(車体側チューブ11と車輪側チューブ12)の伸縮に伴ない、上側給液管70と下側給液管80が互いにいか様に摺動しても、上側給液管70の液装填容積と下側給液管80の液装填容積は常に一定を維持する。従って、フロントフォーク10が伸縮しても、上側給液管70と下側給液管80の作動液にはマスタシリンダ61の圧力しか作用せず、マスタシリンダ61の圧力がそのままホイールシリンダ63に伝えられ、ブレーキ作動の安定を確保できる。
【0043】
(c)上側給液管70の内周に、両給液管70、80の全摺動ストロークに渡るように設けた摺動部に、下側給液管80の外周を摺動自在に挿入し、上側給液管70に設けた摺動部には、下側給液管80の外周との間に連絡室96を形成するとともに、連絡室96の両端部を封止し、下側給液管80の外周には、上側給液管70に設けた摺動部の連絡室96に常時連通する連絡口97を設けた。従って、上述(b)の如くに、上側給液管70と下側給液管80が互いにいか様に摺動しても、上側給液管70の液装填容積と下側給液管80の液装填容積を常に一定に維持できる。
【0044】
(d)上側給液管70と下側給液管80が金属管からなるものとすることにより、上側給液管70と下側給液管80はブレーキ作動時の作動液の圧力によって膨らむことがなく、作動液の液圧の低下を防止してブレーキ効率を向上できる。
【0045】
また、上側給液管70の第1上側給液管71に設けた通路91には給液管60Aを介してマスタシリンダ61が接続される。給液管60Aは、ゴム等の可撓管によって構成することもできるが、好適には金属管からなるものとする。
【0046】
フロントフォーク10の車体側チューブ11の上部にはハンドル2が固定され、ハンドル2にはマスタシリンダ61が固定されるから、車体側チューブ11に支持されている上側給液管70とマスタシリンダ61をつなぐ給液管60Aは可撓性をもつ必要がなく金属管にて構成できる。これにより、給液管60Aはブレーキ作動時の作動液の圧力によって膨らむことがなく、作動液の液圧の低下を防止してブレーキ効率を向上できる。
【0047】
また、下側給液管80が接続される車輪側チューブ12に設けた通路99には給液管60Bを介してホイールシリンダ63が接続される。給液管60Bは、ゴム等の可撓管によって構成することもできるが、好適には金属管からなるものとする。
【0048】
フロントフォーク10の車輪側チューブ12の下端側にはキャリパ62が固定され、キャリパ62にはホイールシリンダ63が固定されているから、車輪側チューブ12に支持されている下側給液管80とホイールシリンダ63をつなぐ給液管60Bは可撓性をもつ必要がなく、金属管にて構成できる。これにより、給液管60Bはブレーキ作動時の作動液の圧力によって膨らむことがなく、作動液の液圧の低下を防止してブレーキ効率を向上できる。
【0049】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。本発明では、上側給液管と下側給液管の一方に、両給液管の全摺動ストロークに渡って上側給液管と下側給液管の他方に臨む連絡室を設け、上側給液管と下側給液管の他方に、両給液管のいかなる摺動ストローク位置においても上記連絡室に連通する連絡口を設けてなるものであれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は自動二輪車のブレーキ配管構造を示す模式図である。
【図2】図2はフロントフォークを示す断面図である。
【図3】図3は図2の下部断面図である。
【図4】図4は図2の上部断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 フロントフォーク
11 車体側チューブ
12 車輪側チューブ
60、60A、60B 給液管
61 マスタシリンダ
63 ホイールシリンダ
70 上側給液管
80 下側給液管
96 連絡室
97 連絡口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側チューブと車輪側チューブを伸縮可能に結合したフロントフォークを有し、ブレーキに作動液を供給する給液管を備える二輪車のブレーキ配管構造において、
車体側チューブ内に支持した上側給液管と車輪側チューブ内に支持した下側給液管を互いに摺動自在に挿入し、
上側給液管と下側給液管の一方に、両給液管の全摺動ストロークに渡って上側給液管と下側給液管の他方に臨む連絡室を設け、
上側給液管と下側給液管の他方に、両給液管のいかなる摺動ストローク位置においても上記連絡室に連通する連絡口を設けてなることを特徴とする二輪車のブレーキ配管構造。
【請求項2】
前記上側給液管と下側給液管の一方の内周に、両給液管の全摺動ストロークに渡るように設けた摺動部に、上側給液管と下側給液管の他方の外周を摺動自在に挿入し、
上側給液管と下側給液管の一方に設けた摺動部には、上側給液管と下側給液管の他方の外周との間に連絡室を形成するとともに、連絡室の両端部を封止し、
上側給液管と下側給液管の他方の外周には、上側給液管と下側給液管の一方に設けた摺動部の連絡室に常時連通する連絡口を設けた請求項1に記載の二輪車のブレーキ配管構造。
【請求項3】
前記上側給液管と下側給液管が金属管からなる請求項1又は2に記載の二輪車のブレーキ配管構造。
【請求項4】
前記上側給液管をマスタシリンダにつなぐ給液管が金属管からなる請求項1〜3のいずれかに記載の二輪車のブレーキ配管構造。
【請求項5】
前記下側給液管をホイールシリンダにつなぐ給液管が金属管からなる請求項1〜4のいずれかに記載の二輪車のブレーキ配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−6826(P2009−6826A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169471(P2007−169471)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】