説明

交流−交流電力変換装置

【課題】系統連系フィルタのキャパシタを分割することなく、キャパシタからスイッチまでの配線インダクタンスを可能な限り小さくすることができる交流−交流電力変換装置を得ることを目的とする。
【解決手段】交流電源1に連なる入力端に接続されたリアクトル21とキャパシタ22とからなる系統連系フィルタ2、系統連系フィルタ2と直流母線P、Nとの間に接続された交流交流スイッチ3PR〜3NTからなるPWM(パルス幅変調)整流器3、入力端を直流母線P、Nに接続し出力端に第一の負荷6を接続した複数のスイッチ4UP〜4WNからなる第一のインバータ4、および入力端を直流母線P、Nに接続し出力端に第二の負荷7を接続した複数のスイッチ5UP〜5WNからなる第二のインバータ5を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入力端の多相交流電圧を直接複数の多相交流電圧に変換して複数の出力端に供給する交流−交流電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の交流−交流電力変換装置は、入力端の多相交流電圧を大容量のエネルギー蓄積手段に一時的に蓄積することなく任意の周波数と振幅を持つ多相交流電圧に直接変換して出力端に出力する。このような交流−交流電力変換装置で複数の出力端に多相交流電圧を供給するための構成として、例えば、特許文献1に記載の手法がある。
特許文献1では、入力端に共通の系統連系フィルタをもつ複数のマトリクスコンバータ主回路モジュールを並列に接続し、単一の入力端の多相交流電圧を直接複数の多相交流電圧に変換して複数の出力端にそれぞれ供給する。
【0003】
この系統連系フィルタのキャパシタは、系統に流出する高周波ノイズを除去するのみでなく、それぞれの制御周期においてはモジュールを通じて負荷にエネルギーを供給する母線キャパシタの役割も担うことから、変換装置でのスイッチング時に瞬時に電荷を供給できることが必要であり、キャパシタからモジュールのスイッチまでの配線インダクタンスをできるだけ小さくすることが望ましく、キャパシタをモジュールの直近に接続する。さらに、個々のモジュール全てについてキャパシタからモジュールまでの配線インダクタンスを最小とするためには、キャパシタを分割してモジュールごとに配置することも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−65356号公報(段落0010〜段落0011、段落0014、図1、図12参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような構成の従来の交流−交流電力変換装置では、キャパシタを分割せずにモジュールの入力端に接続する場合、複数のモジュールを同一平面上に並べて配置すると端子間に距離が生じるため、キャパシタからスイッチまでの配線インダクタンスを可能な限り小さくすることができないという課題がある。複数のモジュールを対面に配置すれば配線インダクタンスを可能な限り小さくすることは可能であるが、実装スペースの制約が著しくなり製造コストの増大にもつながる。また、キャパシタを分割すれば配線インダクタンスを可能な限り小さくすることができるが、部品点数の増加となり故障率の増大、製造コストの増大につながり実装スペースの制約も大きくなる。
この発明は、以上のような従来の課題を解決するもので、系統連系フィルタのキャパシタを分割することなく、キャパシタからスイッチまでの配線インダクタンスを可能な限り小さくすることができる交流−交流電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る交流−交流電力変換装置は、入力端の多相交流電圧を出力電圧指令に基づく多相交流電圧に変換してそれぞれ負荷が接続された複数の出力端に出力する交流−交流電力変換装置において、
リアクトルとキャパシタとからなるフィルタを介して入力端に接続され入力端の多相交流電圧から逐次1つの2相間電圧を選択して直流母線に接続する複数のスイッチを有する1台のコンバータ、およびそれぞれ直流母線の電圧を出力電圧指令に基づき多相交流電圧に変換して出力端に出力する複数のスイッチを有する複数台のインバータを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、この発明に係る交流−交流電力変換装置は、コンバータとインバータとで構成し、かつ、インバータは複数台備えるが、コンバータは1台で構成するので、フィルタのキャパシタを分割することなく、従って、部品点数を削減して故障率の低下や製造コストの削減を実現できるとともに、キャパシタからスイッチまでの配線インダクタンスを可能な限り小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1による交流−交流電力変換装置の構成図である。
【図2】従来技術のマトリクスコンバータの構成図である。
【図3】交流交流スイッチの構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2による交流−交流電力変換装置の構成図である。
【図5】本発明の実施の形態2の交流−交流電力変換装置の三角搬送波およびスイッチ制御信号のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3による交流−交流電力変換装置の構成図である。
【図7】本発明の実施の形態3の交流−交流電力変換装置の三角搬送波およびスイッチ制御信号のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態4による交流−交流電力変換装置の構成図である。
【図9】本発明の実施の形態4の交流−交流電力変換装置の三角搬送波およびスイッチ制御信号のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態5による交流−交流電力変換装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による交流−交流電力変換装置の構成図である。本実施の形態の交流−交流電力変換装置は、交流電源1に連なる入力端に接続されたリアクトル21とキャパシタ22とからなる系統連系フィルタ2、その入力側を系統連系フィルタ2に接続しその出力側を直流母線P、Nに接続した、複数の双方向に電圧を阻止してかつ電流の導通を制御できる交流交流スイッチ3PR〜3NTからなるコンバータとしてのPWM(パルス幅変調)整流器3、その入力側を直流母線P、Nに接続しその出力側となる出力端に第一の負荷6を接続した複数のスイッチ4UP〜4WNからなる第一のインバータ4、およびその入力側を直流母線P、Nに接続しその出力側となる出力端に第二の負荷7を接続した複数のスイッチ5UP〜5WNからなる第二のインバータ5、からなる。
【0010】
このような交流−交流電力変換装置は、直流母線P、Nに直流電源や平滑用キャパシタなどの大容量エネルギー蓄積手段をもたないことから、交流電源1の何れかの相の電圧がPWM整流器3と直流母線P、Nと第一のインバータ4を介して直接第一の負荷6の相に現れ、また、交流電源1の何れかの相の電圧がPWM整流器3と直流母線P、Nと第二のインバータ5を介して直接第二の負荷7の相に現れる。
【0011】
PWM整流器3は、交流交流スイッチ3PR〜3NTのスイッチングによって直流母線P、N間に一時的な直流電圧として入力端の2相間電圧を接続する。スイッチ3PR〜3NTは、上段側のスイッチ3PR、3PS、3PTの何れか一つをターンオンとし、下段側のスイッチ3NR、3NS、3NTの何れか一つをターンオンとする。ただし、互いに直列に接続されているスイッチ3PRと3NR、3PSと3NS、3PTと3NTがそれぞれ同時にオンとなることはない。
【0012】
第一のインバータ4と第二のインバータ5とは、それぞれの入力側を1つの同じ直流母線P、Nに並列に接続する。第一のインバータ4を構成するスイッチ4UP〜4WNおよび第二のインバータ5を構成するスイッチ5UP〜5WNは、例えば、IGBT(絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ)とダイオードとを逆並列に接続した構成であり、そのスイッチングによって直流母線P、N間に一時的に接続される直流電圧を任意の振幅と周波数とをもつ多相交流電圧に変換する。なお、互いに直列に接続されているスイッチ4UPと4UN、4VPと4VN、4WPと4WN、5UPと5UN、5VPと5VN、5WPと5WNはそれぞれ何れか一方がターンオン、他方がターンオフとなる。
【0013】
系統連系フィルタ2のキャパシタ22は、PWM整流器3の交流交流スイッチまでの配線インダクタンスをできるだけ小さくするように、PWM整流器3の入力端の直近に接続する。また、PWM整流器3の出力側と第一のインバータ4の入力側、およびPWM整流器3の出力側と第二のインバータ5の入力側とのそれぞれ相互間を接続する直流母線P、Nも配線インダクタンスをできるだけ小さくするように接続する。
この場合、特に、キャパシタ22との接続構成が問題となるスイッチを備えたPWM整流器3は、1台で構成されるので、これが複数台のマトリクスコンバータで構成される従来装置と異なり、キャパシタとスイッチとの接続がコンパクトになし得るので、その間の配線インダクタンスを可能な限り小さくすることができる。
【0014】
なお、以下の各実施の形態を含め、直流母線P、Nに並列に接続するインバータを第一のインバータ4と第二のインバータ5との2台としているが、本願発明はその適用を適切に行うことにより3台以上のインバータを並列に接続した場合にも適用できるものである。
【0015】
また、交流−交流電力変換装置として必要となる交流交流スイッチの個数を、従来のマトリクスコンバータ主回路モジュールの場合と比較すると、本実施の形態の交流−交流電力変換装置の方が少なくて済み、この点でも有利となる。
即ち、図2に示す従来のマトリクスコンバータ主回路モジュールおよび図1に示す本実施の形態のPWM整流器3を構成する交流交流スイッチを、例えば、図3のように、IGBT2個を用いた構成とした場合、従来のマトリクスコンバータ主回路モジュールでは合計18個の交流交流スイッチで構成され、これが並列する2台分必要となり総計36個のIGBTが必要となる。
これに対し、本実施の形態の交流−交流電力変換装置は、PWM整流器3を構成する6個の交流交流スイッチに12個のIGBTを用い、第一のインバータ4と第二のインバータ5とでそれぞれ6個のIGBTを用いることから合計24個のIGBTでよく、その結果として交流−交流電力変換装置で用いるIGBTの個数を減らすことができる。
マトリクスコンバータやインバータの並列数が3以上になれば、両者の差は更に大きくなる。
【0016】
以上のように、本発明の実施の形態1によれば、系統連系フィルタと直流母線との間に単一のPWM整流器を接続しその直流母線に複数台のインバータを接続するようにしたので、系統連系フィルタのキャパシタを分割することなくキャパシタからPWM整流器までの配線インダクタンスを可能な限り小さくすることができ、また、交流−交流電力変換装置で用いるIGBTのような半導体スイッチの個数を削減することができるため、部品点数を削減して故障率の低下や製造コストの削減を実現できる。
【0017】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2では、第一のインバータ4および第二のインバータ5について、出力電圧指令を生成する出力電圧指令値演算手段と、その出力電圧指令値およびパルス幅変調制御の搬送波よりスイッチ制御信号を生成するインバータスイッチ制御信号生成手段とをインバータ毎に設けた構成とし、そのインバータスイッチ制御信号生成手段に入力する搬送波を共通の搬送波生成手段より出力するものとし、さらにその搬送波生成手段が出力する搬送波によって、PWM整流器3の交流交流スイッチ3PR〜3NTの切り替えタイミングでは第一のインバータ4および第二のインバータ5がともに直流母線PまたはNの何れか一方に接続するスイッチを全てターンオンとする所謂環流状態となるようにする。
【0018】
図4は、本発明の実施の形態2による交流−交流電力変換装置の構成図である。系統連系フィルタ2、PWM整流器3、第一のインバータ4、第二のインバータ5、第一の負荷6、第二の負荷7の機能および相互の配線は図1と同一であるため説明は省略する。
電圧検出器8は、交流電源1に接続する入力端の多相交流電圧を検出してコンバータ制御手段であるPWM整流器制御手段31に送出する。
【0019】
PWM整流器制御手段31は、2相間電圧抽出手段311、接続期間比率演算手段312およびコンバータスイッチ制御信号生成手段313からなる。2相間電圧抽出手段311は、検出した多相交流電圧に基づいて、入力端の多相交流電圧の周期に対して十分短い所定の制御周期(搬送波周期に相当)の中で直流母線P、Nに接続する2つの2相間電圧を抽出する。接続期間比率演算手段312は、入力電流指令に基づき抽出した2つの2相間電圧および多相交流電圧に基づいて所定の制御周期において2つの2相間電圧を直流母線P、Nに接続する期間の比率を接続期間比率として計算して出力する。コンバータスイッチ制御信号生成手段313は、抽出した2つの2相間電圧および接続期間比率に基づいて、PWM整流器3を構成するスイッチ3PR〜3NTのスイッチ制御信号を生成しスイッチ3PR〜3NTを駆動するゲートドライバ32に出力する。
【0020】
搬送波生成手段40は、上記接続期間比率に基づいて、一方の頂点をPWM整流器3の切り替えタイミングに同期させ、他方の頂点を制御周期の境界に同期させた変形三角搬送波を生成し出力する。
【0021】
第一のインバータ制御手段41は、出力電圧指令値演算手段412およびインバータスイッチ制御信号生成手段413からなる。インバータスイッチ制御信号生成手段413は、変形三角搬送波と出力電圧指令値とにより、第一のインバータ4を構成するスイッチ4UP〜4WNのスイッチ制御信号を生成しスイッチ4UP〜4WNを駆動するゲートドライバ42に出力する。第二のインバータ制御手段51は、出力電圧指令値演算手段512およびインバータスイッチ制御信号生成手段513からなり、インバータスイッチ制御信号生成手段513はインバータスイッチ制御信号生成手段413と同一の機能を有する。
【0022】
直流母線P、Nに現れる電圧は交流電源1の電圧およびPWM整流器制御手段31の制御結果により定められ、この電圧は出力電圧指令値演算手段412および512がそれぞれいかなる出力電圧制御法を用いたとしても変化することはない。したがって、出力電圧指令値演算手段412と512とは相互に異なる出力電圧指令値を設定することができる。
【0023】
なお、搬送波生成手段40は、第一のインバータ制御手段41および第二のインバータ制御手段51の何れからも独立するものとしたが、搬送波生成手段40を何れかのインバータ制御手段に包含してインバータスイッチ制御信号生成手段に入力するとともに他方のインバータの制御手段へ搬送波を出力してその内部のインバータスイッチ制御信号生成手段に入力するようにしてもその本質に変わりはない。
【0024】
図5は、本発明の実施の形態2による交流−交流電力変換装置において、2相間電圧抽出手段311が抽出し接続期間比率演算手段312が計算した直流母線P、N間に接続する入力端の2相間電圧とそれぞれの接続期間、コンバータスイッチ制御信号生成手段313が生成するPWM整流器3の交流交流スイッチ3PR〜3NTのスイッチ制御信号、搬送波生成手段40が出力する第一のインバータ4の三角搬送波と出力電圧指令値演算手段412が出力する出力電圧指令値V4U*、V4V*、V4W*およびこれらの信号からインバータスイッチ制御信号生成手段413が生成するスイッチ4UP〜4WNのスイッチ制御信号4U、4V、4W、搬送波生成手段40が出力する第二のインバータ5の三角搬送波と出力電圧指令値演算手段512が出力する出力電圧指令値V5U*、V5V*、V5W*およびこれらの信号からインバータスイッチ制御信号生成手段513が生成するスイッチ5UP〜5WNのスイッチ制御信号5U、5V、5Wの一例を示したタイミングチャートである。
【0025】
なお、三角搬送波および出力電圧指令値はそれぞれ(下端レベル)−1〜(上端レベル)+1の範囲に規格化したものである。スイッチ制御信号4Uはそれ自身がスイッチ4UPのスイッチ制御信号であると同時に、それを反転した信号がスイッチ4UNのスイッチ制御信号となる。4V、4W、5U、5V、5Wについても同様である。
【0026】
図5の例は、2相間電圧抽出手段311が交流電源1の複数の正の2相間電圧の中で最大の電圧VRSと中間の電圧VRTを、入力端の多相交流電圧の周期に対して十分短い所定の制御周期の中で直流母線P、Nに接続する電圧として抽出し、接続期間比率演算手段312は交流−交流電力変換装置の入力電流制御、ここでは、入力端の力率を1とする制御により入力端の相電圧絶対値最大のR相以外の2つの相であるS相とT相との相電圧VSとVTとの比率を2相間電圧VRSとVRTの接続期間比率として計算したものである。
【0027】
また、搬送波生成手段40は、2相間電圧VRSとVRTとの接続期間の境界、すなわちPWM整流器3の交流交流スイッチ3PR〜3NTの切り替えタイミングに一方の頂点を同期させ、制御周期の境界に他方の頂点を同期させた三角搬送波を生成しており、換言すると、この三角搬送波の形状は、片搬送波と称する各直線を−1〜+1の範囲の下端レベルおよび上端レベルで折り返してなる、所謂変形三角波形状の三角搬送波となる。なお、本段落に示した内容は公知の範囲の技術であり、それ以上の詳細な説明は省略する。
【0028】
本実施の形態の交流−交流電力変換装置では、出力電圧指令値演算手段412と512とで相互に異なる任意の出力電圧制御法を用いることができるので、インバータスイッチ制御信号生成手段413と513とは相互に異なるスイッチ制御信号をそれぞれ生成することができ、第一のインバータ4と第二のインバータ5とは相互に振幅と周波数との異なる多相交流電圧をそれぞれの出力端に供給することができる。
【0029】
また、第一のインバータ4と第二のインバータ5とのそれぞれのスイッチ制御信号を生成するための変形三角搬送波を共通の搬送波生成手段40より出力することから、交流−交流電力変換装置の演算装置における搬送波生成手段を簡素なものとすることができる。さらに、搬送波生成手段40が出力する、一方の頂点を接続期間の境界に同期させた変形三角搬送波を第一のインバータ4および第二のインバータ5の共通の三角搬送波としたことから、第一のインバータ4および第二のインバータ5はともに直流母線PまたはNの何れか一方に接続するスイッチを全てターンオンとする環流状態となるようなタイミングを作り、そのタイミングでは、第一の負荷6を流れる電流が第一の負荷6と第一のインバータ4との間で、また、第二の負荷7を流れる電流が第二の負荷7と第二のインバータ5との間で、それぞれ電流が環流するため、PWM整流器3の交流交流スイッチ3PR〜3NTの切り替えを行ってもスイッチング損失は発生しない。
【0030】
以上のように、本発明の実施の形態2によれば、複数台のインバータの変形三角搬送波を共通の搬送波生成手段より出力するようにしたので、交流−交流電力変換装置の演算装置における搬送波生成手段を簡素なものとすることができる。また、複数台のインバータの出力電圧指令値を相互に異なる任意の出力電圧制御法により生成できるようにしたので、それぞれのインバータの出力端に異なる任意の出力電圧制御法による出力電圧指令値を出力することができ、相互に異なる運転特性をもつ複数の負荷をそれぞれ適切に運転することができる。また、変形三角搬送波の一方の頂点を接続期間の境界に同期させてそのタイミングでは全てのインバータの直流母線PまたはNの何れか一方に接続するスイッチを全てターンオンとする環流状態となるので、それぞれのインバータとその出力端に接続するそれぞれの負荷との間で電流が環流してPWM整流器には電流が流れずそのタイミングでPWM整流器の交流交流スイッチの切り替えを行ってもスイッチング損失は発生しないことになり、交流−交流電力変換装置で発生する電力損失を低減することができる。
【0031】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3では、第一のインバータ制御手段41と第二のインバータ制御手段51とにそれぞれ搬送波生成手段411と511とを設け、この内、搬送波生成手段511は接続期間比率とは無関係に均等三角搬送波を出力する構成とする。
図6は、本発明の実施の形態3による交流−交流電力変換装置の構成図である。図4との相違点は、第一のインバータ制御手段41と第二のインバータ制御手段51とにそれぞれ搬送波生成手段411と511とを設け、搬送波生成手段411は、接続期間比率演算手段312の出力に基づき搬送波を生成し、搬送波生成手段511は、接続期間比率演算手段312の出力に基づくことなく搬送波を生成する点である。
【0032】
図7は、本発明の実施の形態3による交流−交流電力変換装置における、直流母線P、N間に接続する入力端の2相間電圧とその期間、交流交流スイッチ3PR〜3NTのスイッチ制御信号、第一のインバータ4および第二のインバータ5それぞれの、三角搬送波、出力電圧指令値、および、スイッチ4UP〜4WN、スイッチ5UP〜5WNのスイッチ制御信号の一例を示したタイミングチャートである。図5との相違点は、搬送波生成手段511が出力する三角搬送波を1つの制御周期で1個の左右対称の均等三角搬送波とする点である。
【0033】
第二のインバータ5が演算装置と一体化されたユニットの一部である場合、その演算装置が内包する搬送波生成手段は通常、左右対称の均等三角搬送波を生成する。したがって、このユニットの入力端を直流母線P、Nにそのまま接続するだけで本実施の形態の交流−交流電力変換装置とすることができ、ユニットに一体化された演算装置をそのまま使用することができる。この場合、PWM整流器3の交流交流スイッチ3PR〜3NTの切り替えタイミングでは、第二のインバータ5は環流状態とはならずPWM整流器3の交流交流スイッチ3PR〜3NTに電流が流れるため交流交流スイッチ3PR〜3NTの切り替えでスイッチング損失が発生する。しかしながら、第二の負荷7を流れる電流が第一の負荷6を流れる電流に比べて十分に小さい場合にはスイッチング損失の増加はそれほど大きくはならない。
なお、図6では、2台のインバータのそれぞれに搬送波生成手段を1台設けているが、例えば、4台のインバータを接続する場合、その内の2台のインバータ毎に共用の搬送波生成手段を1台設けるようにしてもよい。
【0034】
以上のように、本発明の実施の形態3によれば、複数台のインバータの制御手段にそれぞれ搬送波生成手段を設け、その一部の搬送波生成手段では接続期間比率演算手段の出力に基づくことなく搬送波を生成するようにしたので、この搬送波生成手段を内包する演算装置を当該インバータの制御にそのまま使用することができ、インバータと演算装置を一体化したユニットの適用や安価な演算装置の使用による製造コストの削減を実現できる。
【0035】
実施の形態4.
一般に、インバータの三角搬送波の周波数を低くして搬送波周期を長くすると、インバータを構成するスイッチでのスイッチング回数が少なくなることからインバータで発生するスイッチング損失を低減することができ、また、負荷の入力端に現れる電圧のパルス幅が長く周波数が低いため負荷の対地浮遊容量のインピーダンスが高くなり負荷から流れ出る漏れ電流を小さくすることができる。その一方で、インバータの出力端、すなわち負荷の入力端に現れる電圧パルス幅が長いことで高周波電力振動や高周波運転振動が大きくなり負荷の制御特性が低下し、負荷の電力損失や運転騒音が増大することになる。インバータの三角搬送波の周波数を高くすれば逆の効果が現れることになり、これらの特性は三角搬送波の周波数の上げ下げによりトレードオフの関係にある。
【0036】
交流−交流電力変換装置の複数の出力端に接続する複数の負荷すべてがインバータの三角搬送波の周波数に対して同等の特性をもつのであれば、例えば、図5や図7に示すように、すべてのインバータの搬送波生成手段が1つの制御周期で2個の片搬送波を生成して1個の変形三角搬送波または均等三角搬送波として出力して三角搬送波の周波数をすべてのインバータで同一とすればよい。しかしながら、例えば、一方の負荷はインバータの電力損失を低減することなどを目的として三角搬送波の周波数を低くすることが望ましく、他方の負荷は負荷の電力損失を低減することなどを目的として三角搬送波の周波数を高くすることが望ましい場合には、すべてのインバータの三角搬送波の周波数を同一とすることが複数の出力端に接続した負荷全てにとって必ずしも望ましいとは言えない。
【0037】
そこで、本発明の実施の形態4では、第一のインバータ制御手段41の搬送波生成手段411と第一のインバータ制御手段51の搬送波生成手段511とが、1つの制御周期で生成する片搬送波の個数を相互に異なるものとする。
図8は、本発明の実施の形態4による交流−交流電力変換装置の構成図である。図6との相違点は、搬送波生成手段411および511がともに接続期間比率演算手段312の出力に基づき搬送波を生成するようにした点である。
【0038】
図9は、本発明の実施の形態4による交流−交流電力変換装置における、直流母線P、N間に接続する入力端の2相間電圧とその期間、交流交流スイッチ3PR〜3NTのスイッチ制御信号、第一のインバータ4および第二のインバータ5それぞれの、三角搬送波、出力電圧指令値、および、スイッチ4UP〜4WN、スイッチ5UP〜5WNのスイッチ制御信号の一例を示したタイミングチャートである。図5との相違点は、搬送波生成手段511が、入力端の2種の2相間電圧VRSとVRTとの接続期間でそれぞれ2個の片搬送波を生成して均等三角搬送波として出力する点である。
【0039】
本実施の形態の交流−交流電力変換装置では、搬送波生成手段511が、入力端の2種の2相間電圧VRSとVRTとの接続期間でそれぞれ2個の片搬送波を生成する均等三角搬送波としたことから1つの制御周期では相互に周期の異なる2個の均等三角搬送波を生成することになり、第二のインバータ5の三角搬送波の周波数は第一のインバータ4の三角搬送波の周波数と比較して平均的に2倍となるので、第一のインバータ4と第二のインバータ5との三角搬送波の周波数を相互に異なるものとすることができる。このことにより、第一の負荷6が三角搬送波の周波数を低くすることが望ましく第二の負荷7が三角搬送波の周波数を高くすることが望ましい場合に、それぞれの負荷にとって望ましい三角搬送波の周波数で負荷の入力端に多相交流電圧を供給することができる。
【0040】
なお、図9では何れの搬送波生成手段も交流電源1の2相間電圧のそれぞれの接続期間の境界に一方の頂点を同期させる三角搬送波を出力するものとしているが、何れか一方の搬送波生成手段が接続期間比率演算手段312の出力に基づくことなくその一方の頂点を上記境界に同期させない1つの均等三角搬送波として出力しても、若しくは何れか一方の搬送波生成手段が接続期間比率演算手段312の出力に基づくことなくその一方の頂点を上記境界に同期させずにすべて同一の周期をもつ2個の均等三角搬送波として出力するようにしてもよい。また、本実施の形態の以上の内容では1つの制御周期で高々2個の三角搬送波を生成するものとしているが、1つの制御周期で3個以上の三角搬送波を生成するようにしてもよい。
【0041】
さらに、本実施の形態の以上の内容では1つの制御周期で偶数個の片搬送波を生成して単一または複数個の三角搬送波を生成するようにしているが、上記の2つの接続期間のうち一方で1個の片搬送波を生成して他方で2個以上の片搬送波を生成するようにしてもよく、制御周期の境界で三角搬送波の頂点位置が一致するように生成する片搬送波を適宜調整するようにしてもよい。
【0042】
以上のように、本発明の実施の形態4によれば、複数台のインバータの制御手段の搬送波生成手段が出力する三角搬送波を1つの制御周期あたりの片搬送波の個数が相互に異なるものとしたことで三角搬送波の周波数が相互に異なるようになり、それぞれの負荷にとって望ましい三角搬送波の周波数となり交流−交流電力変換装置による負荷の運転にとってより望ましい運転特性を得ることができる。
【0043】
実施の形態5.
直流母線P、NにPWM整流器の出力端とインバータの入力端とを接続する回路構成であって、インバータの出力端に誘導性負荷を接続した交流−交流電力変換装置では、過電流・過電圧や主回路故障を検知したときにPWM整流器を構成する交流交流スイッチおよびインバータを構成するスイッチの全てのスイッチ制御信号をターンオフとして誘導性負荷の運転を急停止する場合があるが、誘導性負荷に流れる電流がインバータのダイオードを通って直流母線に流れ直流母線の電圧を上昇させるため直流母線の電圧が過電圧となりスイッチを破壊する可能性がある。これを防ぐため、直流母線P、Nの間に誘導性負荷を流れていた電流のエネルギーを吸収するためのキャパシタと、そのキャパシタの電圧が直流母線に接続する交流電源の2相間電圧よりも高いときに異電圧短絡を防止するためのダイオードとで構成するクランプ回路を備えることがある。また、このキャパシタはインバータのスイッチのスイッチング動作によって直流母線P、N間に発生する高周波サージ電圧を吸収する役割もある。クランプ回路のキャパシタの容量は、上記の誘導性負荷を流れる電流のエネルギーを吸収しても直流母線が過電圧とならない大きさとすればよい。
【0044】
ところで、交流−交流電力変換回路の通常の運転ではこのキャパシタは交流電源の最大の2相間電圧若しくはそれ以上の電圧で常時充電されエネルギーを蓄積している。そこで本発明の実施の形態5では、クランプ回路のキャパシタに蓄積したエネルギーを一部の負荷の通常の運転でも活用するため、交流−交流電力変換回路の複数台のインバータのうち一部のインバータの入力端をクランプ回路のキャパシタの両端に接続してキャパシタの蓄積エネルギーを活用するものである。
【0045】
図10は、本発明の実施の形態5による交流−交流電力変換装置の構成図である。本実施の形態の交流−交流電力変換装置は、図6の交流−交流電力変換装置にキャパシタ91とダイオード92とで構成するクランプ回路9を備え、第二のインバータ5の入力端をキャパシタ91の両端に接続した構成であり、その他の構成は図6と同一であるため説明は省略する。
【0046】
本実施の形態の交流−交流電力変換装置では、第二のインバータ5による第二の負荷7の運転に系統連系フィルタ2のキャパシタ22の代わりにクランプ回路9のキャパシタ91を用いることから、キャパシタ91と第二のインバータ5との間の配線インダクタンスのみを可能な限り小さくすればよく、キャパシタ22から第二のインバータ5まで、特に直流母線P、Nから第二のインバータ5までの配線インダクタンスを必ずしも小さくする必要はなくなり、第二のインバータ5とキャパシタ91の配置の制約が緩和され交流−交流電力変換装置の設計自由度が増す。また、キャパシタ91と第二の負荷7との間にPWM整流器3がないことからキャパシタ91から第二のインバータ5を通って第二の負荷7を流れる電流がそのままPWM整流器3の交流交流スイッチ3PR〜3NTを流れることはなく、第二のインバータ制御手段51の搬送波生成手段511がどのような三角搬送波を出力するとしても、例えば、本発明の実施の形態3に示すような均等三角搬送波を出力する搬送波生成手段511を含む演算装置と第二のインバータ5とを一体化したユニットを使用したとしても、PWM整流器3を構成する交流交流スイッチの切り替えタイミングで第二の負荷7を流れる電流がそのままPWM整流器3を流れることはないのでPWM整流器3で発生するスイッチング損失を著しく増大させることはない。
【0047】
以上のように、本発明の実施の形態5によれば、複数台のインバータのうち一部のインバータの入力端をクランプ回路のキャパシタの両端に接続し当該キャパシタの蓄積エネルギーを利用する構成としたので、直流母線から上記インバータまでの配線インダクタンスを必ずしも小さくする必要はなくなり上記インバータの配置の制約が小さくなるため、交流−交流電力変換装置の設計自由度が増して製造コストを低減することができる。また、均等三角搬送波を出力する搬送波生成手段を含む演算装置をそのまま使用してもPWM整流器で発生するスイッチング損失を著しく増大させることはなく、交流−交流電力変換装置で発生する電力損失を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明は、入力端の三相交流電圧を直接三相交流電圧に変換して複数の出力端に出力する場合に限られるものではなく、広く、入力端の多相交流電圧を直接多相交流電圧に変換して複数の出力端に出力する場合にも適用でき、同等の効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0049】
1 交流電源、2 系統連系フィルタ、21 リアクトル、22 キャパシタ、
3 PWM整流器、
3PR,3PS,3PT,3NR,3NS,3NT 交流交流スイッチ、
31 PWM整流器制御手段、311 2相間電圧抽出手段、
312 接続期間比率演算手段、313 コンバータスイッチ制御信号生成手段、
32,42,52 ゲートドライバ、4 第一のインバータ、
4UP,4VP,4WP,4UN,4VN,4WN スイッチ、
40,411,511 搬送波生成手段、41 第一のインバータ制御手段、
412,512 出力電圧指令値演算手段、
413 インバータスイッチ制御信号生成手段、5 第二のインバータ、
5UP,5VP,5WP,5UN,5VN,5WN スイッチ、
51 第二のインバータ制御手段、513 インバータスイッチ制御信号生成手段、
6 第一の負荷、7 第二の負荷、8 電圧検出器、9 クランプ回路、
91 キャパシタ、92 ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端の多相交流電圧を出力電圧指令に基づく多相交流電圧に変換してそれぞれ負荷が接続された複数の出力端に出力する交流−交流電力変換装置において、
リアクトルとキャパシタとからなるフィルタを介して前記入力端に接続され前記入力端の多相交流電圧から逐次1つの2相間電圧を選択して直流母線に接続する複数のスイッチを有する1台のコンバータ、およびそれぞれ前記直流母線の電圧を前記出力電圧指令に基づき多相交流電圧に変換して前記出力端に出力する複数のスイッチを有する複数台のインバータを備えたことを特徴とする交流−交流電力変換装置。
【請求項2】
前記入力端の多相交流電圧の周期に対して十分短い所定の制御周期毎に前記入力端の多相交流電圧から前記直流母線に接続すべき2種の2相間電圧を抽出する2相間電圧抽出手段、入力電流指令に基づき前記2相間電圧抽出手段で抽出した前記2種の2相間電圧のそれぞれの前記制御周期における接続期間比率を演算する接続期間比率演算手段、前記2相間電圧抽出手段と前記接続期間比率演算手段との出力に基づき前記コンバータのスイッチをオンオフ制御するスイッチ制御信号を生成するコンバータスイッチ制御信号生成手段、およびパルス幅変調制御の搬送波を生成する搬送波生成手段を備えるとともに、
前記複数台のインバータ毎に、前記出力電圧指令を生成する出力電圧指令値演算手段、および前記出力電圧指令と前記搬送波生成手段からの搬送波とに基づき前記インバータのスイッチをオンオフ制御するスイッチ制御信号を生成するインバータスイッチ制御信号生成手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の交流−交流電力変換装置。
【請求項3】
前記搬送波生成手段を1台備え、当該搬送波生成手段からの搬送波を前記複数台のインバータにおける各前記インバータスイッチ制御信号生成手段に送出するようにしたことを特徴とする請求項2記載の交流−交流電力変換装置。
【請求項4】
前記搬送波生成手段を複数台備え、当該複数の搬送波生成手段からの搬送波を前記複数台のインバータにおける各前記インバータスイッチ制御信号生成手段に送出するようにしたことを特徴とする請求項2記載の交流−交流電力変換装置。
【請求項5】
前記搬送波生成手段を前記複数台のインバータ毎に備え、当該各インバータにおける搬送波生成手段からの搬送波を当該各インバータにおけるインバータスイッチ制御信号生成手段に送出するようにしたことを特徴とする請求項4記載の交流−交流電力変換装置。
【請求項6】
前記搬送波生成手段の少なくとも1台は、前記接続期間比率演算手段の出力に基づきパルス幅変調制御の搬送波を生成することを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の交流−交流電力変換装置。
【請求項7】
前記搬送波生成手段は、前記制御周期における搬送波の形状として、片搬送波と称する各直線を上端レベルまたは下端レベルで折り返してなる三角波形状のものを生成するとともに、前記制御周期における前記片搬送波の個数が前記搬送波生成手段で互いに異なるようにしたことを特徴とする請求項4または5に記載の交流−交流電力変換装置。
【請求項8】
前記直流母線にキャパシタとダイオードとの直列体からなるクランプ回路を接続し、前記複数台のインバータの内の一部のインバータの入力端は前記クランプ回路のキャパシタに接続し、前記複数台のインバータの内の残りのインバータの入力端は前記直流母線に接続するようにしたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の交流−交流電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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