人工地盤の構造および施工方法
【課題】軟弱な原地盤に設ける構造物を杭によることなく簡易な人工地盤により安定に支持し、かつ原地盤を安定化して側方流動等の水平変位を防止する。
【解決手段】原地盤3上に、構造物1を支持する床版2と、床版2を支持する地盤改良体10を築造するとともに、地盤改良体の上部を鋼板12により巻き立てて鋼板の上端部を床版内に突出せしめて定着することにより、鋼板を介して地盤改良体と床版とを連結しかつ鋼板により地盤改良体の上部を外側から拘束する。その施工に際しては、原地盤の地表部に上下両端が開放された枠状の鋼板を配設し、鋼板内を通してその下方の原地盤を地表部から支持層まで地盤改良してその上部が鋼板内に位置する地盤改良杭体を施工した後、地盤改良体の上部に床版を構築して床版内に鋼板の上端部を定着する。
【解決手段】原地盤3上に、構造物1を支持する床版2と、床版2を支持する地盤改良体10を築造するとともに、地盤改良体の上部を鋼板12により巻き立てて鋼板の上端部を床版内に突出せしめて定着することにより、鋼板を介して地盤改良体と床版とを連結しかつ鋼板により地盤改良体の上部を外側から拘束する。その施工に際しては、原地盤の地表部に上下両端が開放された枠状の鋼板を配設し、鋼板内を通してその下方の原地盤を地表部から支持層まで地盤改良してその上部が鋼板内に位置する地盤改良杭体を施工した後、地盤改良体の上部に床版を構築して床版内に鋼板の上端部を定着する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱な地盤に擁壁や橋台等の構造物を築造する場合、その一方側に盛土等が存在することにより生じる軟弱な地盤の安定化や側方流動などの問題を主に解決する人工地盤の構造、およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、原地盤3に擁壁や橋台等の構造物1を構築する場合において、その原地盤3が軟弱地盤や液状化地盤である場合には、原地盤3に側方流動が生じて構造物1の側方変位や不同沈下が生じる懸念があることから、通常は杭5を安定な支持層4に達するように設けてそれら杭5により構造物1の基礎1aを支持することが一般的である。
また、図示しているように構造物1の後方に盛土6を造成する場合(あるいは構造物1の後方に原地盤3をそのまま上載地盤として残すような場合)には、図4に示すように盛土6の下方の原地盤3中に深層混合処理工法等の地盤改良手法による地盤改良体7を築造することにより、盛土6や上載地盤による上載荷重を支持するとともに原地盤3を強化して側方流動の発生を防止することも行われる。
【0003】
また、特許文献1には、杭に代えて基礎の下に原地盤土と固化材液を攪拌・混合した地盤改良体を構築したり、矢板壁で包囲した領域内に地盤改良体を構築するという直接基礎の構造についての開示がある。
【特許文献1】特開2007−51486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3や図4に示すように構造物1を杭5により支持することでは大断面の頑強な杭5を多数必要とするし、また原地盤3中に単に地盤改良体7を築造することでは充分な側方流動防止効果を得るための改良率が徒らに大きくなり、いずれも合理的ではない。
また、特許文献1に示されるような直接基礎の構造では側方流動に対する充分な防止効果が得られない場合がある。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、軟弱な地盤に擁壁や橋台等の構造物を築造する場合、その一方側に盛土等が存在することにより生じる軟弱な地盤の安定化や側方流動などの問題を解決し得る有効適切な人工地盤の構造、およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、軟弱な原地盤に擁壁や橋台等の構造物を構築するに際して、前記構造物を支持するべく原地盤に設ける人工地盤の構造であって、前記構造物を支持するべく原地盤上に構築される床版と、該床版を支持するべく原地盤中に造成される地盤改良体からなり、前記地盤改良体の上部を鋼板により巻き立てて該鋼板の上端部を前記床版内に突出せしめて定着することにより、該鋼板を介して地盤改良体と床版とを結合しかつ該鋼板により地盤改良体の上部を外側から拘束してなることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、軟弱な原地盤に擁壁や橋台等の構造物を構築するに際して、前記構造物を支持するための人工地盤を原地盤に造成するための施工方法であって、原地盤の地表部に上下両端が開放された枠状の鋼板を配設し、該鋼板内を通してその下方の原地盤を地表部から支持層まで地盤改良してその上部が鋼板内に位置する地盤改良体を施工した後、該地盤改良体の上部に床版を構築して該床版内に鋼板の上端部を定着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の人工地盤の構造によれば、地盤改良体の上部を鋼板により巻き立ててその鋼板の上端部を床版に対して定着することにより、床版と地盤改良体とが鋼板を介して構造的に確実に一体化された状態で結合され、したがって床版と地盤改良体による簡易な人工地盤を築造することのみで、構造物を支持するための大断面の杭を多数設けずとも構造物を安定に支持することができるし、原地盤に対する床版の水平滑動を確実に拘束することができる。
特に、地盤改良体の上部に鋼板が巻き立てられることによりその鋼板によって地盤改良体の上部に対する曲げ補強および剪断補強効果が得られ、地盤改良体は充分に高剛性となって側方への変位や曲げ変形が有効に拘束され、したがって地盤改良体のみで水平変位に対して充分に抵抗し得て優れた水平変位防止効果が得られ、側方流動等に起因する構造物の側方変位や不同沈下を確実に防止することができる。
【0009】
また、その施工に際しては、予め枠状の鋼板を地表部に配設してその内側を通して原地盤を地盤改良し、しかる後に地盤改良体の上部に床版を構築することにより、地盤改良体の上部に鋼板を自ずと巻き立てた状態で容易に施工することができるし、その鋼板の上端部を床版に対して容易に定着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1実施形態を図1に示す。これは図3や図4に示した事例のように、軟弱な原地盤3に擁壁や橋台等の構造物1を構築し、かつ構造物1の後方に原地盤に対する上載地盤としての盛土6を造成する場合の適用例であって、構造物1を支持するための床版2を(通常の基礎1aに代えて)原地盤3上に設けるとともに、その床版2の下方の原地盤3中に床版2を支持するための地盤改良体10を安定な支持層4に達するように築造し、それら床版2と地盤改良体10とにより構成される人工地盤によって構造物1を支持するとともに、原地盤3に側方流動等の水平方向変位が生じることを防止するようにしたものである。
【0011】
本第1実施形態における地盤改良体10は、構造物1の前後方向(盛土6の横断方向)および長さ方向(縦断方向)にそれぞれ所定間隔をおいて2列をなすように多数配列され、それら地盤改良体10の上部に構築される床版2をそれら地盤改良体10の全体で支持するものである。
地盤改良体10は深層混合処理工法等の周知の地盤改良工法により築造されるものであって、図示例では円形断面の地盤改良杭11を4本1組として造成し、その上部には鋼板12を巻き立ててそれら4本の地盤改良杭11の上部を一体に連結したものとなっている。
地盤改良体10の上部に巻き立てられている鋼板12はその上下両端がいずれも開放された枠状ないし角筒状のもので、その上部は地盤改良体10の上端よりやや上方に突出して床版2中に差し込まれてそこに定着されており、これにより床版2と地盤改良体10とはこの鋼板12を介して強固に結合されたものとなっている。
なお、鋼板12としては汎用の鋼矢板を所定長さに切断して枠状に組み立てたものが好適に採用可能であるし、あるいは大断面の角形鋼管を所定長さに切断したものを利用することも可能である。
また、地盤改良体10および床版2に対する鋼板12の一体化強度を確保するために、鋼板12の内面にたとえばスタッドや突起等の適宜の定着力増強手段を設けておいても良い。
【0012】
上記構造の人工地盤を施工するに際しては、予め枠状に組み立てた鋼板12の上端部を原地盤3上にやや突出させた状態で地表部に配設し、その内部に汎用の深層混合処理装置のロッドを通して地表から支持層4に達する深度まで4本の地盤改良杭11を順次あるいは同時に築造すれば良い。
その際、各地盤改良杭11を独立に築造することでも、あるいはそれらの周面どうしを相互にラップさせた状態で一体に形成することでも良いが、少なくとも鋼板12内においては各地盤改良杭11を鋼板12の内面に密着させ、かつ鋼板12内周面に沿って密に充填する状態で形成することが好ましく、そのためには固化材を周囲に噴射しつつ攪拌する噴射攪拌方式の地盤改良装置を使用することが好ましい。
いずれにしても最終的には各地盤改良杭11はそれらの上部が鋼板12により外側から巻き立てられる形態で形成されるから、地盤改良杭11どうしの構造的な一体化強度は支障なく確保し得る。
そのようにして地盤改良体10を築造した後、その上部に通常の手法で鉄筋コンクリート造の床版2を構築すれば、鋼板12の上端部は自ずと床版2の底部に埋設されてそこに定着され、鋼板12を介して床版2と地盤改良体10とが構造的に一体に結合される。
【0013】
本第1実施形態の人工地盤の構造によれば、地盤改良体10の上部を鋼板12により巻き立ててその鋼板12の上端部を床版2に対して定着したことにより、床版2と地盤改良体10とが鋼板12を介して構造的に確実に結合され、したがってそれら地盤改良体10と床版2とによる簡易な人工地盤を築造することのみで、図3〜図4に示したように構造物1を支持するための大断面の杭5を設けずとも構造物1を安定に支持し得るものであるし、原地盤3に対する床版2の水平滑動が確実に拘束されるものとなっている。
特に、地盤改良体10を構成している4本の地盤改良杭11の上部が鋼板12により一体に連結されてその変形が拘束され、しかもその鋼板12は地盤改良体10の上部に対する曲げ補強材および剪断補強材としても機能するから、地盤改良体10の全体は充分に高剛性となって側方への変位や曲げ変形が有効に拘束されるものとなっており、したがってそれら地盤改良体10の全体で側方流動圧等による水平力に対して確実に抵抗して優れた水平方向変形防止効果が得られ、側方流動等に起因する構造物1の側方変位や不同沈下を確実に防止し得るものとなっている。
【0014】
なお、上記のように鋼板12による地盤改良体10に対する補強効果を有効に得るためには、地盤改良体10の上部の特に引張応力が顕著に生じる範囲に鋼板12を装着することが好ましく、具体的には地盤改良体10の全体を単一の杭と想定してその特性値βを算定し、そのβに基づいて杭頭から下方に1/β〜1.5/βの範囲に鋼板12を巻き立てると良い(上記のβは杭の特性を表すための周知の指標であって、たとえば日本道路協会編の杭基礎設計便覧等に規定されているものである)。
【0015】
図2は第2実施形態を示す。本第2実施形態における鋼板12は、床版2の全長に及ぶ内外の横鋼板12aとそれらを所定間隔ごとに連結している縦鋼板12bとにより構成された鋼殻の形態をなすもので、それぞれの鋼板12a、12bで囲まれた内部に多数の地盤改良杭11が少なくとも鋼板12a、12bの内面に沿って密着して配列されたものとなっている。
したがって本第2実施形態においても第1実施形態と同様に地盤改良体10の上部に鋼板12が巻き立てられたものとなっていて、各地盤改良杭11がその鋼板12により一体に連結され、かつ鋼板12の上端部が床版2に一体に定着されることにより第1実施形態と同様の効果が得られるものとなっている。勿論、その施工も第1実施形態と同様の手順で容易に実施できるものである。
なお、先の第1実施形態では多数の地盤改良体10を床版2の長さ方向に若干の間隔をおいて配列しているので床版2の横断方向の地下水流を遮断することがなく、したがってそのような機能が要求される場合には有利である。それに対し、本第2実施形態では地盤改良体10を床版2の長さ方向に連続的に隙間無く設けているので、より確実に水平変位防止効果が得られるばかりでなく、床版2の横断方向の地下水流を遮断する効果も得られるから、そのような機能が要求される場合に適用するものとして好適である。
【0016】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明の要旨は軟弱地盤に設ける構造物を杭によることなく床版と地盤改良体とによる簡易な人工地盤により支持することにあり、そのためには床版を支持する地盤改良体の上部に鋼板を巻き立ててその鋼板の上端部を床版に対して定着すれば良く、その限りにおいて本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な設計的変更や応用が可能であることはいうまでもない。
例えば、床版2は鉄筋コンクリート造ないし無筋コンクリート造とすることが現実的であるが、それ以外にも、必要な強度が得られる範囲内であれば土砂に硬化材を混合攪拌して形成されたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の人工地盤の構造の第1実施形態を示す図である。
【図2】同、第2実施形態を示す図である。
【図3】従来一般の杭基礎の一例を示す図である。
【図4】同、他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 構造物
2 床版
3 原地盤(軟弱地盤)
4 支持層
6 盛土(上載地盤)
10 地盤改良体(地盤改良体)
11 地盤改良杭
12 鋼板
12a 横鋼板
12b 縦鋼板
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱な地盤に擁壁や橋台等の構造物を築造する場合、その一方側に盛土等が存在することにより生じる軟弱な地盤の安定化や側方流動などの問題を主に解決する人工地盤の構造、およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、原地盤3に擁壁や橋台等の構造物1を構築する場合において、その原地盤3が軟弱地盤や液状化地盤である場合には、原地盤3に側方流動が生じて構造物1の側方変位や不同沈下が生じる懸念があることから、通常は杭5を安定な支持層4に達するように設けてそれら杭5により構造物1の基礎1aを支持することが一般的である。
また、図示しているように構造物1の後方に盛土6を造成する場合(あるいは構造物1の後方に原地盤3をそのまま上載地盤として残すような場合)には、図4に示すように盛土6の下方の原地盤3中に深層混合処理工法等の地盤改良手法による地盤改良体7を築造することにより、盛土6や上載地盤による上載荷重を支持するとともに原地盤3を強化して側方流動の発生を防止することも行われる。
【0003】
また、特許文献1には、杭に代えて基礎の下に原地盤土と固化材液を攪拌・混合した地盤改良体を構築したり、矢板壁で包囲した領域内に地盤改良体を構築するという直接基礎の構造についての開示がある。
【特許文献1】特開2007−51486号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3や図4に示すように構造物1を杭5により支持することでは大断面の頑強な杭5を多数必要とするし、また原地盤3中に単に地盤改良体7を築造することでは充分な側方流動防止効果を得るための改良率が徒らに大きくなり、いずれも合理的ではない。
また、特許文献1に示されるような直接基礎の構造では側方流動に対する充分な防止効果が得られない場合がある。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、軟弱な地盤に擁壁や橋台等の構造物を築造する場合、その一方側に盛土等が存在することにより生じる軟弱な地盤の安定化や側方流動などの問題を解決し得る有効適切な人工地盤の構造、およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、軟弱な原地盤に擁壁や橋台等の構造物を構築するに際して、前記構造物を支持するべく原地盤に設ける人工地盤の構造であって、前記構造物を支持するべく原地盤上に構築される床版と、該床版を支持するべく原地盤中に造成される地盤改良体からなり、前記地盤改良体の上部を鋼板により巻き立てて該鋼板の上端部を前記床版内に突出せしめて定着することにより、該鋼板を介して地盤改良体と床版とを結合しかつ該鋼板により地盤改良体の上部を外側から拘束してなることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、軟弱な原地盤に擁壁や橋台等の構造物を構築するに際して、前記構造物を支持するための人工地盤を原地盤に造成するための施工方法であって、原地盤の地表部に上下両端が開放された枠状の鋼板を配設し、該鋼板内を通してその下方の原地盤を地表部から支持層まで地盤改良してその上部が鋼板内に位置する地盤改良体を施工した後、該地盤改良体の上部に床版を構築して該床版内に鋼板の上端部を定着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の人工地盤の構造によれば、地盤改良体の上部を鋼板により巻き立ててその鋼板の上端部を床版に対して定着することにより、床版と地盤改良体とが鋼板を介して構造的に確実に一体化された状態で結合され、したがって床版と地盤改良体による簡易な人工地盤を築造することのみで、構造物を支持するための大断面の杭を多数設けずとも構造物を安定に支持することができるし、原地盤に対する床版の水平滑動を確実に拘束することができる。
特に、地盤改良体の上部に鋼板が巻き立てられることによりその鋼板によって地盤改良体の上部に対する曲げ補強および剪断補強効果が得られ、地盤改良体は充分に高剛性となって側方への変位や曲げ変形が有効に拘束され、したがって地盤改良体のみで水平変位に対して充分に抵抗し得て優れた水平変位防止効果が得られ、側方流動等に起因する構造物の側方変位や不同沈下を確実に防止することができる。
【0009】
また、その施工に際しては、予め枠状の鋼板を地表部に配設してその内側を通して原地盤を地盤改良し、しかる後に地盤改良体の上部に床版を構築することにより、地盤改良体の上部に鋼板を自ずと巻き立てた状態で容易に施工することができるし、その鋼板の上端部を床版に対して容易に定着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1実施形態を図1に示す。これは図3や図4に示した事例のように、軟弱な原地盤3に擁壁や橋台等の構造物1を構築し、かつ構造物1の後方に原地盤に対する上載地盤としての盛土6を造成する場合の適用例であって、構造物1を支持するための床版2を(通常の基礎1aに代えて)原地盤3上に設けるとともに、その床版2の下方の原地盤3中に床版2を支持するための地盤改良体10を安定な支持層4に達するように築造し、それら床版2と地盤改良体10とにより構成される人工地盤によって構造物1を支持するとともに、原地盤3に側方流動等の水平方向変位が生じることを防止するようにしたものである。
【0011】
本第1実施形態における地盤改良体10は、構造物1の前後方向(盛土6の横断方向)および長さ方向(縦断方向)にそれぞれ所定間隔をおいて2列をなすように多数配列され、それら地盤改良体10の上部に構築される床版2をそれら地盤改良体10の全体で支持するものである。
地盤改良体10は深層混合処理工法等の周知の地盤改良工法により築造されるものであって、図示例では円形断面の地盤改良杭11を4本1組として造成し、その上部には鋼板12を巻き立ててそれら4本の地盤改良杭11の上部を一体に連結したものとなっている。
地盤改良体10の上部に巻き立てられている鋼板12はその上下両端がいずれも開放された枠状ないし角筒状のもので、その上部は地盤改良体10の上端よりやや上方に突出して床版2中に差し込まれてそこに定着されており、これにより床版2と地盤改良体10とはこの鋼板12を介して強固に結合されたものとなっている。
なお、鋼板12としては汎用の鋼矢板を所定長さに切断して枠状に組み立てたものが好適に採用可能であるし、あるいは大断面の角形鋼管を所定長さに切断したものを利用することも可能である。
また、地盤改良体10および床版2に対する鋼板12の一体化強度を確保するために、鋼板12の内面にたとえばスタッドや突起等の適宜の定着力増強手段を設けておいても良い。
【0012】
上記構造の人工地盤を施工するに際しては、予め枠状に組み立てた鋼板12の上端部を原地盤3上にやや突出させた状態で地表部に配設し、その内部に汎用の深層混合処理装置のロッドを通して地表から支持層4に達する深度まで4本の地盤改良杭11を順次あるいは同時に築造すれば良い。
その際、各地盤改良杭11を独立に築造することでも、あるいはそれらの周面どうしを相互にラップさせた状態で一体に形成することでも良いが、少なくとも鋼板12内においては各地盤改良杭11を鋼板12の内面に密着させ、かつ鋼板12内周面に沿って密に充填する状態で形成することが好ましく、そのためには固化材を周囲に噴射しつつ攪拌する噴射攪拌方式の地盤改良装置を使用することが好ましい。
いずれにしても最終的には各地盤改良杭11はそれらの上部が鋼板12により外側から巻き立てられる形態で形成されるから、地盤改良杭11どうしの構造的な一体化強度は支障なく確保し得る。
そのようにして地盤改良体10を築造した後、その上部に通常の手法で鉄筋コンクリート造の床版2を構築すれば、鋼板12の上端部は自ずと床版2の底部に埋設されてそこに定着され、鋼板12を介して床版2と地盤改良体10とが構造的に一体に結合される。
【0013】
本第1実施形態の人工地盤の構造によれば、地盤改良体10の上部を鋼板12により巻き立ててその鋼板12の上端部を床版2に対して定着したことにより、床版2と地盤改良体10とが鋼板12を介して構造的に確実に結合され、したがってそれら地盤改良体10と床版2とによる簡易な人工地盤を築造することのみで、図3〜図4に示したように構造物1を支持するための大断面の杭5を設けずとも構造物1を安定に支持し得るものであるし、原地盤3に対する床版2の水平滑動が確実に拘束されるものとなっている。
特に、地盤改良体10を構成している4本の地盤改良杭11の上部が鋼板12により一体に連結されてその変形が拘束され、しかもその鋼板12は地盤改良体10の上部に対する曲げ補強材および剪断補強材としても機能するから、地盤改良体10の全体は充分に高剛性となって側方への変位や曲げ変形が有効に拘束されるものとなっており、したがってそれら地盤改良体10の全体で側方流動圧等による水平力に対して確実に抵抗して優れた水平方向変形防止効果が得られ、側方流動等に起因する構造物1の側方変位や不同沈下を確実に防止し得るものとなっている。
【0014】
なお、上記のように鋼板12による地盤改良体10に対する補強効果を有効に得るためには、地盤改良体10の上部の特に引張応力が顕著に生じる範囲に鋼板12を装着することが好ましく、具体的には地盤改良体10の全体を単一の杭と想定してその特性値βを算定し、そのβに基づいて杭頭から下方に1/β〜1.5/βの範囲に鋼板12を巻き立てると良い(上記のβは杭の特性を表すための周知の指標であって、たとえば日本道路協会編の杭基礎設計便覧等に規定されているものである)。
【0015】
図2は第2実施形態を示す。本第2実施形態における鋼板12は、床版2の全長に及ぶ内外の横鋼板12aとそれらを所定間隔ごとに連結している縦鋼板12bとにより構成された鋼殻の形態をなすもので、それぞれの鋼板12a、12bで囲まれた内部に多数の地盤改良杭11が少なくとも鋼板12a、12bの内面に沿って密着して配列されたものとなっている。
したがって本第2実施形態においても第1実施形態と同様に地盤改良体10の上部に鋼板12が巻き立てられたものとなっていて、各地盤改良杭11がその鋼板12により一体に連結され、かつ鋼板12の上端部が床版2に一体に定着されることにより第1実施形態と同様の効果が得られるものとなっている。勿論、その施工も第1実施形態と同様の手順で容易に実施できるものである。
なお、先の第1実施形態では多数の地盤改良体10を床版2の長さ方向に若干の間隔をおいて配列しているので床版2の横断方向の地下水流を遮断することがなく、したがってそのような機能が要求される場合には有利である。それに対し、本第2実施形態では地盤改良体10を床版2の長さ方向に連続的に隙間無く設けているので、より確実に水平変位防止効果が得られるばかりでなく、床版2の横断方向の地下水流を遮断する効果も得られるから、そのような機能が要求される場合に適用するものとして好適である。
【0016】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明の要旨は軟弱地盤に設ける構造物を杭によることなく床版と地盤改良体とによる簡易な人工地盤により支持することにあり、そのためには床版を支持する地盤改良体の上部に鋼板を巻き立ててその鋼板の上端部を床版に対して定着すれば良く、その限りにおいて本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な設計的変更や応用が可能であることはいうまでもない。
例えば、床版2は鉄筋コンクリート造ないし無筋コンクリート造とすることが現実的であるが、それ以外にも、必要な強度が得られる範囲内であれば土砂に硬化材を混合攪拌して形成されたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の人工地盤の構造の第1実施形態を示す図である。
【図2】同、第2実施形態を示す図である。
【図3】従来一般の杭基礎の一例を示す図である。
【図4】同、他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 構造物
2 床版
3 原地盤(軟弱地盤)
4 支持層
6 盛土(上載地盤)
10 地盤改良体(地盤改良体)
11 地盤改良杭
12 鋼板
12a 横鋼板
12b 縦鋼板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱な原地盤に擁壁や橋台等の構造物を構築するに際して、前記構造物を支持するべく原地盤に設ける人工地盤の構造であって、
前記構造物を支持するべく原地盤上に構築される床版と、該床版を支持するべく原地盤中に造成される地盤改良体からなり、
前記地盤改良体の上部を鋼板により巻き立てて該鋼板の上端部を前記床版内に突出せしめて定着することにより、該鋼板を介して地盤改良体と床版とを結合しかつ該鋼板により地盤改良体の上部を外側から拘束してなることを特徴とする人工地盤の構造。
【請求項2】
軟弱な原地盤に擁壁や橋台等の構造物を構築するに際して、前記構造物を支持するための人工地盤を原地盤に造成するための施工方法であって、
原地盤の地表部に上下両端が開放された枠状の鋼板を配設し、該鋼板内を通してその下方の原地盤を地表部から支持層まで地盤改良してその上部が鋼板内に位置する地盤改良体を施工した後、
該地盤改良体の上部に床版を構築して該床版内に鋼板の上端部を定着することを特徴とする人工地盤の施工方法。
【請求項1】
軟弱な原地盤に擁壁や橋台等の構造物を構築するに際して、前記構造物を支持するべく原地盤に設ける人工地盤の構造であって、
前記構造物を支持するべく原地盤上に構築される床版と、該床版を支持するべく原地盤中に造成される地盤改良体からなり、
前記地盤改良体の上部を鋼板により巻き立てて該鋼板の上端部を前記床版内に突出せしめて定着することにより、該鋼板を介して地盤改良体と床版とを結合しかつ該鋼板により地盤改良体の上部を外側から拘束してなることを特徴とする人工地盤の構造。
【請求項2】
軟弱な原地盤に擁壁や橋台等の構造物を構築するに際して、前記構造物を支持するための人工地盤を原地盤に造成するための施工方法であって、
原地盤の地表部に上下両端が開放された枠状の鋼板を配設し、該鋼板内を通してその下方の原地盤を地表部から支持層まで地盤改良してその上部が鋼板内に位置する地盤改良体を施工した後、
該地盤改良体の上部に床版を構築して該床版内に鋼板の上端部を定着することを特徴とする人工地盤の施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2008−303584(P2008−303584A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150568(P2007−150568)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000185972)小野田ケミコ株式会社 (58)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(301031392)独立行政法人土木研究所 (107)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000185972)小野田ケミコ株式会社 (58)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【出願人】(000150110)株式会社竹中土木 (101)
【出願人】(000219406)東亜建設工業株式会社 (177)
【出願人】(000222668)東洋建設株式会社 (131)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】
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