位置検出装置
【課題】被測定物の位置制御のため信号処理回路を改良する。
【解決手段】本位置検出装置1は、被測定物10が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサ2と、被測定物10の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサ3と、絶対位置検出センサ2の出力信号である絶対位置検出信号と、相対位置検出センサ3の出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部4と、を有する。位置検出装置1は、複合位置検出信号が所定レベル以上又は以下に変化した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、被測定物10の所定位置からの相対距離を検出する。
【解決手段】本位置検出装置1は、被測定物10が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサ2と、被測定物10の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサ3と、絶対位置検出センサ2の出力信号である絶対位置検出信号と、相対位置検出センサ3の出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部4と、を有する。位置検出装置1は、複合位置検出信号が所定レベル以上又は以下に変化した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、被測定物10の所定位置からの相対距離を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の位置を検出する位置検出センサから出力される位置検出信号を信号処理し、該信号処理後の位置検出信号に基づいて被測定物の位置を測定する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサやスイッチの検出信号を信号処理する信号処理回路としては、様々なものが提案されている(特許文献1〜8参照)。
【0003】
このうち特許文献1に記載されている技術は、複数のアナログスイッチを制御し、このアナログスイッチの制御に応じた分圧値(検出信号の一種)を、後段のA/D(アナログ−デジタル)変換器を介してマイクロコンピュータに入力し、分圧値を設定値と比較して、その比較結果から上記複数のアナログスイッチのオンとオフの状態を判定するものである。
特許文献2に記載されている技術は、複数のスイッチを制御し、このスイッチの制御による電圧値(検出信号の一種)をマイクロコンピュータ内のA/D変換器に入力するものであり、とくに複数のスイッチの多重操作を精度よく検出するための1つの電圧値を生成する手法に関する。
特許文献3に記載されている技術は、マイクロコンピュータの端子の兼用化に関し、A/D変換すべき信号(検出信号として使用可能な信号)と、割込信号とを共通の端子から取り込めるようにスイッチで切り換えるものである。
A/D特許文献4に記載されている技術は、デジタルオシロスコープの信号処理回路に関し、その入力端子に印加された信号(検出信号の一種)を、A/D変換回路に入力する前に、その交流成分と直流成分に分けて増幅することにより、信号経路の直流特性と広帯域特性とを両立させるものである。
【0004】
これら特許文献1〜4に記載されている技術は、基本的には1つの検出信号(又は、1つの検出信号に基づく信号)を信号処理するものであり、それによって信号伝送ライン数を削減する他、後段の処理回路の入力端子数を減らし、あるいは、信号処理の精度や特性を向上させるものである。
【0005】
一方、特許文献5および7に記載されている技術においては2つの検出信号に対し信号処理を行う。
特許文献5に記載されている技術は、2つの検出信号の和信号と差信号の比に比例した信号を得るに際し、後段のA/D変換器の分解能が低くて済むように、2つの検出信号の一方と和信号によって所望の結果が得られるようにしたものである。
特許文献6に記載されている技術は、デジタイザなどの座標入力装置に関し、2つの検出信号、すなわちX座標信号とY座標信号を切替接続回路により切り替えて差動増幅し、X座標信号とY座標信号を順次A/D変換するものである。
【0006】
ところで、2つの検出信号を用いて被測定物の位置制御を行うものとして、カメラ等におけるレンズの位置制御が知られている。
レンズの位置制御部においては、通常、アクチュエータの動作、たとえばDCモータ等の回転に応じて相対位置を検出し相対位置検出信号を出力する相対位置センサ、および、レンズの機械的な絶対位置を検出し絶対位置検出信号を出力する絶対位置検出センサを備える。そして、絶対位置検出センサの出力変化を基準に、相対位置検出センサの出力変動をカウントしてレンズを目的の位置まで移動させ、停止させることによりレンズ位置を制御する。
【0007】
レンズの位置制御などの用途では、とくに小型化および低コストが要求される。
上記のようにDCモータ等のアクチュエータの動きに連動した相対位置検出センサとして、一般的に、回転式エンコーダ、あるいは、モアレ干渉縞を利用した光学スケールなどを使用すると、その構造が簡素で安価である。とくに回転式エンコーダは、その回転検出デバイスとして、フォトインタラプタ等のアナログデバイスを使用すると、その構造が簡単で安価である。
また、絶対位置検出センサとしては、機械式スイッチ、非接触の光学センサ、たとえばフォトインタラプタ又はフォトリフレクタを用いると、その構造が簡単で安価である。
【0008】
これらレンズ位置制御部を簡単で安価とするために採用される相対位置検出センサおよび絶対位置検出センサは、通常、その出力がアナログ信号である。したがって、これらのセンサ出力に基づいて中央演算ユニット(CPU)等でレンズ位置を測定し制御するためには、そのセンサ出力を増幅し、アナログ信号を量子化するためのA/D変換器(又は、その機能)が必要となる。この用途では高い量子化精度は不要であることから、通常、CPU内のA/D変換機能を利用して相対位置検出信号と絶対位置検出信号をそれぞれA/D変換し、A/D変換後の信号を基に、アクチュエータとなるモータ等のフィードバック制御を行う。
【特許文献1】特開平08−201889号公報
【特許文献2】特開平09−270685号公報
【特許文献3】特開平06−036056号公報
【特許文献4】特開平06−197019号公報
【特許文献5】特開平03−263619号公報
【特許文献6】特開平02−260023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように2つの位置検出センサをCPUにてA/D変換する場合、2つの信号伝送ラインを要する他、CPU内でA/D変換ポートを2つ確保する必要がある。また、2つのセンサ出力を同時にA/D変換する必要があるためCPUの負荷が重く、駆動源(アクチュエータ)の制御に対して位置検出に遅れが発生する。
【0010】
また、CPUのA/D変換ポートを利用して上記の信号を処理する、たとえばカメラの場合、安価のCPUにおいてA/D変換チャンネルは、4チャンネル程度しかないものがある。カメラの場合、システム上CPUで必要とされるA/D変換ポートは、レンズ位置制御用のほかに、環境温度検出用、バッテリ温度検出用、バッテリ電圧検出用などがある。これらを想定するとA/D変換ポート数が4つではとても十分とは言えず、できる限りレンズ制御等で使用するA/Dポート数を減らす必要がある。また、A/D変換ポート数を増やすと、それだけカメラのシステムコストが増大し好ましくない。
【0011】
なお、このようなレンズ等の位置検出制御の用途に対しては、以下の理由により、前述した2つの検出信号に対する信号処理技術(特許文献5および6)を適用することができない。
特許文献5は2つの検出信号の差信号と和信号の比に比例した信号を得ることから、たとえば光ディスクのサーボ制御に特化したものである。また、特許文献6は、座標入力装置に関するものであり、とくに2つの検出信号(X座標信号とY座標信号)が片方ずつ差動増幅されて順次A/D変換される。これと同じような方法をレンズ等の位置制御に適用すると、その制御レスポンスを悪くすることから、この方法はカメラなどの用途に使えない。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、被測定物の位置制御のため信号処理回路の改良にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る位置検出装置は、被測定物が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサと、被測定物の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサと、前記絶対位置検出センサの出力信号である絶対位置検出信号と、前記相対位置検出センサの出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部と、を有し、前記複合位置検出信号が所定レベル以上又は以下に変化した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する。
本発明に係る他の位置検出装置は、被測定物が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサと、被測定物の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサと、前記絶対位置検出センサの出力信号である絶対位置検出信号と、前記相対位置検出センサの出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部と、を有し、前記複合位置検出信号のピークレベル、ボトムレベル又は前記ピークレベル及びボトムレベルにより特定される所定のレベルの変化を検出した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する。
【0014】
好ましくは、前記信号処理部は、前記相対位置検出信号と前記絶対位置検出信号とを差動増幅処理することにより前記一の信号である前記複合位置検出信号を生成する。
あるいは、好ましくは、前記信号処理部は、前記相対位置検出信号を搬送波として、前記絶対位置検出信号により該搬送波の振幅変調を行うことにより前記一の信号である前記複合位置検出信号を生成する。
好ましくは、前記複合位置検出信号のダイナミックレンジをX(V)、前記絶対位置検出信号の振幅範囲をA(V)、前記相対位置検出信号の振幅範囲をB(V)、前記相対位置検出信号のノイズレベルをWn(V)とした場合に、下記(1)及び(2)を満たす。
(1)X>A+B
(2)A>B+Wn
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る信号処理装置において、被測定物の位置制御のため信号処理回路を改良することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1に、本発明の実施の形態における位置検出のための位置検出装置の一構成例を示す。
図1に示すように、位置検出装置1は、被測定物10の位置を測定するために2つの位置検出センサ、すなわち被測定物の絶対位置を検出し絶対位置検出信号Saを出力する絶対位置検出センサ2と、非測定物の相対位置を検出し相対位置検出信号Srを出力する相対位置検出センサ3とを有する。ここで「絶対位置」とは相対位置の基準あるいは起点を示す位置をいい、絶対位置からの相対位置の変化量で被測定物の位置が確定する。
【0018】
位置検出装置1は、絶対位置検出信号Saと相対位置検出信号Srとから一の信号(以下、複合位置検出信号という)Sdを出力する信号処理回路4と、位置検出信号から被測定物の位置を測定する位置検出部としての中央演算ユニット(CPU)5とを有する。CPU5はA/D変換の機能(便宜上、図1においてA/D変換部5Aにより表示)を有し、A/D変換部5Aに上記複合位置検出信号Sdが入力され、ここで複合位置検出信号Sdがデジタル信号に変換され、不図示のCPU内機能により位置検出のためのデジタル信号処理が実行される。
【0019】
図2(A)に絶対位置検出信号Saの波形を、図2(B)に相対位置検出信号Srの波形を示す。これらの図においては横軸が時間t、縦軸が各検出信号のレベルLを表している。
絶対位置検出信号Saは、図1に示す被測定物10がある向きに移動することに伴って、図2(A)に示すように、たとえばL(Low)レベルからH(High)レベルに推移する信号である。なお、これとは逆に、絶対位置検出信号SaをHレベルからLレベルに推移する信号としてもよい。このような絶対位置検出信号Saを出力する図1に示す絶対位置検出センサ2としては、機械式センサ、たとえば、センサの切片が被測定物10に接触する状態から非接触の状態、あるいは、逆に非接触の状態から接触する状態で出力レベルが変化するスイッチを用いてもよい。ただし、機械式センサは負荷を発生させ、その駆動系への影響があり、負荷の大きさが経時変化し、さらに機械的トレランスにより検出位置が変動することから、絶対位置検出センサ2としては光学センサが望ましい。光学センサとして、フォトインタラプタあるいはフォトリフレクタを用いることができる。
【0020】
これに対し、相対位置検出信号Srは、図2(B)に示すように、ノイズの大小により多少振幅変動するが、基本的には一定の振幅を有する周期的な信号が望ましい。このような相対位置検出信号Sr(アナログ波形)を出力する図1に示す相対位置検出センサ3は、たとえばモアレ干渉縞を利用した光学スケールあるいは磁気スケールでもよいが、構造が簡素で安価な回転式のアナログエンコーダが望ましい。なお、アナログエンコーダや上記フォトインタラプタについては後述する。
【0021】
つぎに、より具体的な構成および動作を説明する。
【0022】
図3に、振幅変調により絶対位置検出信号Saと相対位置検出信号Srとを重畳する信号処理回路4を示す。
図3に示す信号処理回路4は、具体的な回路構成は省略するが、AMラジオで使用される振幅変調による方法により2つのアナログ信号の振幅変調し、増幅する機能(図3においては「Mod.&Amp.」と表記)を備える。振幅変調され増幅後の信号は、複合位置検出信号SdとしてCPU5のDA変換ポートAD1に入力される。
【0023】
図4(C)に、図3に示す構成で振幅変調と増幅により生成された複合位置検出信号Sdの波形を示す。また、図4(A)に絶対位置検出信号Saの波形を、図4(B)に相対位置検出信号Srの波形を示す。これらの図の縦軸および横軸は、前述した図2と同じであり、信号レベルLおよび時間tは3つの図で同じスケールである。
【0024】
図4(C)を図4(A)および図4(B)と比較すれば明らかなように、複合位置検出信号Sdは、相対位置検出センサの出力波形(相対位置検出信号Sr:図4(B))を搬送波とし、絶対位置検出センサの出力(絶対位置検出信号Sa:図4(A))を信号波形(信号のpeak-to-peak値)として振幅変調を行ったものである。この複合位置検出信号Sdにおいて、絶対位置検出センサの出力は振幅として現れ、相対位置検出センサの出力の繰り返し周期は、複合位置検出信号Sdにおいてもそのまま維持されている。その結果、1つのアナログ量で2つのアナログ信号の情報を表すことができる。
【0025】
図5に、差動増幅により相対位置検出信号の直流レベルを変化させて複合位置検出信号Sdを生成する信号処理回路4の他の構成例を示す。
図5に示す信号処理回路4は、一方の差動入力(たとえば「+」入力)に絶対位置検出信号Saを入力し、他方の差動入力(たとえば「−」入力)に相対位置検出信号Srを入力し、これらの差を所定のゲインで増幅する差動増幅器(D.Amp)4Aと、相対位置検出信号Srを所定のゲインで増幅し、差動増幅器4Aに出力する増幅器(Amp.)4Bとを有する。差動増幅器4Aの出力から複合位置検出信号Sdが出力され、CPU5のDA変換ポートAD1に入力される。
【0026】
図6(C)に、図5に示す構成で差動増幅により生成された複合位置検出信号Sdの波形を示す。また、図6(A)に絶対位置検出信号Saの波形を、図6(B)に相対位置検出信号Srの波形を示す。これらの図の縦軸および横軸は、前述した図2と同じであり、信号レベルLおよび時間tは3つの図で同じスケールとする。ただし、作図の都合上、図5に示す差動増幅器4Aのゲイン、増幅器4Bのゲインはそれぞれ「1」として図6(C)の複合位置検出信号Sdを表している。
【0027】
図6(C)に示すように、振幅変調に代えて、相対位置検出センサの出力に対し絶対位置検出センサの出力分を直流シフトさせても、図4(C)の場合と同様に1つのアナログ量で2つのアナログ信号の情報を表すことができる。
【0028】
ここで図5に示す差動増幅器4Aのゲイン、増幅器4Bのゲインは、以下ように決めることができる。このゲインの決め方は、図3に示す信号処理回路4内で振幅変調前の信号を増幅する場合にも適用できる。
相対位置検出信号Srは、たとえば回転式のアナログエンコーダの場合、回転体のスリットを通過し、スリット間の回転体部分により遮断される光を受光部で検出することにより得られる。回転体のスリットは周回方向に所定の周期で正確に形成されているが、軸ぶれや回転体の変形により多少なりとも位置検出信号Srの振幅が変動する。このような微小変動と信号経路の重畳ノイズとにより、相対位置検出信号Srのノイズレベルは、図4(C)(又は図6(C))の絶対位置検出前の波形Sd1に示すように、ある幅Wnで変動する。
このノイズレベルの最大変化点から更に外側、すなわち、レベルとしてより小さい側(又はより大きい側)に一定のマージンWd以上離れた位置に絶対位置の検出レベルを設ける必要がある。また、この検出レベルは、図4(A)(又は図6(A))にLdで示すように、絶対位置検出信号のHレベルから十分なマージンだけ離れたレベル変化途中に設定する必要がある。
この検出レベルの波形Sd1およびSd2に対する各マージンが、必要な値Wdより小さいと、図4(C)(又は図6(C))に示す絶対位置検出前の波形Sd1のノイズレベル、あるいは、絶対位置検出後の波形Sd2のノイズレベルに検出レベルが重なり、ノイズにより誤って絶対位置が検出されるおそれがある。このような誤動作を防止するために適切に検出レベルを設定する必要があるが、この設定可能な範囲は、絶対位置検出信号Saと相対位置検出信号Srとの相対的なゲイン調整で拡大することができる。
図3に示す構成においては、ノイズレベルを相対的に抑圧する目的で差動増幅器4Aのゲインを1より大きな値に設定することが望ましい。これに対し、増幅器4Bのゲインは、上記誤動作防止のための範囲拡大の観点から、1以上又は1未満の適切な値に設定することが望ましい。なお、同じ効果を得るために、図3とは逆に、絶対位置検出信号Saを増幅してもよいし、絶対位置検出信号Saと相対位置検出信号Srの双方を異なるゲインで増幅してもよい。
【0029】
本実施の形態では、複合位置検出信号Sdが所定レベル以上又は以下に変化した位置を基点に該複合位置検出信号Sdのパルス数を計測する方法と、複合位置検出信号Sdのピークレベル、ボトムレベル又は当該ピークレベル及びボトムレベルにより特定される所定のレベルの変化を検出した位置を基点に該複合位置検出信号Sdのパルス数を計測する方法とがある。
【0030】
何れの方法においても、複合位置検出信号SdのダイナミックレンジをX(V)、絶対位置検出信号Saの振幅範囲をA(V)、相対位置検出信号Srの振幅範囲をB(V)、相対位置検出信号SrのノイズレベルをWn(V)とした場合に、下記(1)及び(2)を満たすことが望ましい。
(1)X>A+B
(2)A>B+Wn
【0031】
これは、確実な絶対位置の検出を行うための条件例を規定するものである。これにより、図12(C)に示すように、ノイズレベルを考慮しながら波形Sd1とDs2が重ならないレベルでの絶対位置検出が可能である。または、ボトムレベルでシフトしても確実に絶対位置に到達したことを検出することができる。
【0032】
このようにして生成された検出信号Sdは、図3又は図5に示すCPU5内でA/D変換され、CPU内の比較などを実行する演算機能、レジスタなどのデータ保持機能を活用して、そのレベル変化極点(以下、正極ピークおよび負極ピークを含め単に「ピーク」という)の検出が実行される。
【0033】
図7に、ピーク検出方法を模式的に示す。なお、実際のピーク検出はデジタルデータに対して行われるが、図7では波形のレベル変化を便宜上、アナログ量で示す。
一般的に、振幅変調された信号は復調処理回路で復調してから処理を行なう必要がある。これに対し、本例では振幅変調後の信号(複合位置検出信号Sd)が元の相対位置検出信号Srの周期をそのまま維持していることから、絶対位置検出後に、複合位置検出信号Sdのパルス数を、たとえばピーク数によりカウントすれば、復調処理を行わなくても、図3又は図5に示すCPU5によって、被測定物10(図1)の位置検出が可能である。
【0034】
図7に示すように、位置検出信Sdのピーク値が常に監視され、ピーク検出が実行される。正極ピークは、ピークレベルからノイズキャンセルレベルより大きく信号レベルが低下したことにより検出され、負極ピークは、ピークレベルからノイズキャンセルレベルより大きく信号レベルが上昇したことにより検出される。
図7においては、ピーク検出ごとにCPU内のカウンタ値が、…, n-1, n, n+1, n+2, …とインクリメントされる。本例では、その途中でカウンタ値がnとなった後に、信号レベルがハイ側の絶対値検出レベルLdhに達し、これにより絶対位置が検出される。絶対位置が検出されるとカウンタ値がリセットされるか、あるいは、別のカウンタ値がピーク検出数をカウントし始め、この絶対位置を起点に新たに計測が開始されたピーク検出数により被測定物10の位置測定が開始される。
これにより、たとえば所望の位置に対応するカウンタ値に達すると被測定物10の移動を停止するなどの制御を行うことができる。
【0035】
以上の位置検出方法では、振幅変動幅が絶対位置検出センサの出力に対応し、相対位置検出センサの出力において波形の周期は変動しない。このため、上記のように相対位置検出センサの出力をピーク検出数で検出すると、振幅変動は相対位置検出に影響を与えない。したがって、信号処理部3の構成が簡素であるにもかかわらず、検出精度が高い位置検出、及び、そのための信号処理が可能である。
また、図8に示すように各検出信号SaとSrをそれぞれ信号増幅(Amp.)した後にCPU内の別のA/D変換ポートAD1とAD2に入力する比較例と比べると、上記本実施の形態の位置検出方法では使用するA/D変換ポートが1つであり、その分、安価なCPUが採用できる。
【0036】
つぎに、以上の位置検出方法を適用してレンズ位置の制御を行う実施例を説明する。
【0037】
カメラのレンズは、レンズ鏡筒の先端側から撮像素子側に向かって、光軸に沿って順に配列され種々の役割をもったレンズ群で構成される。たとえば、あるレンズ構成によれば、レンズ鏡筒の先端側に配置され焦点合わせのための1群レンズ、変倍を行うための2群レンズ、変倍動作後に焦点を撮像面上で正しく結ばせるための3群レンズ、そして、撮像面に結像させるための4群レンズを備える。この何れのレンズ群を可動とし、何れを固定とするかは様々であるが、一般には、2群レンズと4群レンズを可動とし他を固定するもの、2群レンズと3群レンズを可動とし他を固定するもの、これに加えて1群レンズを可動とするもの、3群レンズを省略し2群レンズと4群レンズのリア(撮像素子側)の一部を可動とするものなどがある。
【0038】
本実施例では、この可動レンズ群を被測定物(移動ユニット)として一軸移動を行う。
図9に、移動ユニットを移動させる駆動系および位置検出のための構成を図示する。
レンズ群を収容した移動ユニット11は、内面が雌ネジ加工されたネジ穴を有し、そのネジ穴に駆動軸12が通されている。駆動軸12は、その外周に雄ネジが加工され、それが移動ユニットのネジ孔の雌ネジと螺合し、駆動軸12の回転にともなって移動ユニット11が図9に示す矢印方向に移動するようになっている。とくに図示しないが、移動ユニット11はレンズの鏡筒(不図示)にも受けられたガイド機構によってスムーズにスライドが可能になっている。
【0039】
駆動軸12の一端部に駆動軸プーリ12Aが固定され、駆動軸プーリ12Aは、モータ(M)13の軸に固定されたモータ側プーリ13Aと、ベルト又はギアにより連結されている。モータ13の回転駆動力は、モータ側プーリ13A、駆動軸プーリ12Aによって伝達され駆動軸12を軸回転させる。モータ13は、図1に示すCPU等による制御下で、モータドライバ14により駆動される。
【0040】
駆動軸12の他端部に、周回方向に切り欠き部(又はスリット穴)を備えるアナログエンコーダの回転盤15が固定されている。駆動軸12の軸回転にともなって、この回転盤15も軸回転し、その切り欠き部(又はスリット穴)が周期的にフォトインタラプタ16の光を通過させ、周期的に、その光路が回転盤によって遮られることによってフォトインタラプタ16の出力から周期的な相対位置検出信号Srが得られる。なお、この回転盤15は、駆動軸プーリ12A又はモータ側プーリ13Aに切り欠き部やスリット穴を設けることにより代用でき、その場合、フォトインタラプタ16は、駆動軸プーリ12A又はモータ側プーリ13Aに近接配置される。
【0041】
図10に、フォトインタラプタ16の等価回路を示す。
電圧供給線とGNDレベル間に抵抗R1を介して発光ダイオードDiが接続され、位置検出時に発光ダイオードに電力が供給されると、発光ダイオードDiが発光する。その光はフォトディテクタ(トランジスタT)で受光される。フォトディテクタは電圧供給線とGND線との間に負荷抵抗RLを介して接続され、受光により光電変換された電荷が電位勾配に応じて流れると、フォトディテクタと負荷抵抗RLとの接続中点の電位が変動する。この電位変動は、フォトディテクタと発光ダイオードとの間の空間を上記回転盤15(図9)が移動し、その回転に応じて光が通過し遮蔽されるたびに、その通過と遮断を1周期として繰り返され、その結果、図11(A)に示す周期的な相対位置検出信号Srが、当該フォトインタラプタ16から出力される。
【0042】
一方、図9に示す移動ユニット11には、その移動方向に長い遮蔽尺11Aが設けられている。遮蔽尺11Aに対し、図10と同様な等価回路の他のフォトインタラプタ17が近接配置されている。このため、フォトインタラプタ17からは、遮蔽尺11Aにより発光ダイオードからの光が遮られている間はLレベルを維持し、遮られなくなるとHレベルに推移することにより、図11(B)に示す波形となる絶対位置検出信号Saが出力される。
【0043】
この絶対位置検出信号Saおよび上記相対位置検出信号Srは、図1に示す信号処理回路4に出力され、ここで図3又は図5に示す構成によって1つの複合位置検出信号Sdが生成される。
その後、CPU5に入力された複合位置検出信号Sdは、そこでA/D変換される。なお、A/D変換にもノイズ、あるいは機械的な振動が発生し、ある程度変動が予想されるため、これらによる誤判定をしないように、変化判定値を設け、ノイズキャンセル機能を持たせる処理を行うことが望ましい。
A/D変換後に、前述したように信号のピークレベル変化に応じて絶対位置が検出され、それ以後のピーク検出数のカウントによって図9に示す移動ユニット11の位置検出が開始される。制御目標値は、手動による操作、あるいは、オートフォーカス時の測距結果によって予めCPU5に入力され、その内部で記憶されている。移動ユニット11が制御目標値に達すると、あるいは、その直前になると、CPU5はモータドライバ14に停止指示を発し、その結果、モータ13が停止してレンズ位置制御が終了する。
【0044】
この実施例では、たとえば図10に等価回路を示す簡単なアクチュエータ16により絶対位置検出および相対位置検出ができ、レンズ位置制御部の構成がシンプルで安価に製造できるという利点がある。また、前述したように、構成が簡素である割には検出精度が高いレンズ位置検出が可能であり、また、使用するCPU5のA/D変換ポートが1つであり、その分、安価なCPUが採用できるという利益が得られる。
【0045】
本実施の形態によれば、前述した信号処理部の構成が簡素であるにもかかわらず、検出精度が高い位置検出、及び、そのための信号処理が可能であること、AD変換ポートの削減が可能であることに加え、以下の利点が得られる。
複合位置検出信号が所定レベル以上又は以下に変化した位置により絶対位置を検出する場合、とくに複合位置検出信号のピークレベル、ボトムレベル又は当該ピークレベル及びボトムレベルにより特定される所定のレベルの変化を検出する場合においては、この特定される所定のレベルとして複合位置検出信号の中点のレベルで絶対位置の検出が可能である。
上記2つの方法では、さらに前述した(1)および(2)の条件を同時に満足すると、繰り返し波形の影響やノイズの影響がない安定したレベルでの位置検出が可能である。また、ボトムレベルでシフトしても確実に絶対位置に到達したことを検出することができる。このため、さらに検出精度が高い位置検出、そのための信号処理が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、被測定物の位置を検出する位置検出センサから出力される位置検出信号を信号処理し、該信号処理後の位置検出信号に基づいて被測定物の位置を測定する用途に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態における位置検出のための信号処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】(A)は絶対位置検出信号の波形図、(B)は相対位置検出信号の波形図である。
【図3】振幅変調により絶対位置検出信号と相対位置検出信号とを重畳する信号処理部を備えるブロック図である。
【図4】(A)は絶対位置検出信号の波形図、(B)は相対位置検出信号の波形図、(C)は、図3に示す構成で振幅変調と増幅により生成された位置検出信号の波形図である。
【図5】差動増幅により相対位置検出信号の直流レベルを変化させて位置検出信号を生成する信号処理回路4の他の構成例を示す回路ブロック図である。
【図6】(A)は絶対位置検出信号の波形図、(B)は相対位置検出信号の波形図、(C)は、図5に示す構成で差動増幅により生成された位置検出信号の波形図である。
【図7】ピーク検出方法を模式的に示す図である。
【図8】各検出信号をそれぞれ増幅した後にCPU内の別のA/D変換ポートに入力する比較例を示すブロック図である。
【図9】実施例において、移動ユニットを移動させる駆動系および位置検出のための構成を示す図である。
【図10】実施例で用いたフォトインタラプタの等価回路図である。
【図11】(A)はフォトインタラプタから出力される相対位置検出信号の波形図、(B)は絶対位置検出信号の波形図である。
【図12】(A)は絶対位置検出信号の波形図、(B)は相対位置検出信号の波形図、(C)は差動増幅により生成された位置検出信号の他の波形図である。
【符号の説明】
【0048】
1…信号処理回路、2…絶対位置検出センサ、3…相対位置検出センサ、4…信号処理部、4A…差動増幅器、4B…増幅器、5…CPU、5A…A/D変換部、10…被測定物、11…移動ユニット、11A…遮蔽尺、12…駆動軸、12A…駆動軸プーリ、13…モータ、13A…モータ側プーリ、14…モータドライバ、15…回転盤、16,17…フォトインタラプタ、Sa…絶対位置検出信号、Sr…相対位置検出信号、Sd…複合位置検出信号、Lp,Lph…検出レベル
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の位置を検出する位置検出センサから出力される位置検出信号を信号処理し、該信号処理後の位置検出信号に基づいて被測定物の位置を測定する位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
センサやスイッチの検出信号を信号処理する信号処理回路としては、様々なものが提案されている(特許文献1〜8参照)。
【0003】
このうち特許文献1に記載されている技術は、複数のアナログスイッチを制御し、このアナログスイッチの制御に応じた分圧値(検出信号の一種)を、後段のA/D(アナログ−デジタル)変換器を介してマイクロコンピュータに入力し、分圧値を設定値と比較して、その比較結果から上記複数のアナログスイッチのオンとオフの状態を判定するものである。
特許文献2に記載されている技術は、複数のスイッチを制御し、このスイッチの制御による電圧値(検出信号の一種)をマイクロコンピュータ内のA/D変換器に入力するものであり、とくに複数のスイッチの多重操作を精度よく検出するための1つの電圧値を生成する手法に関する。
特許文献3に記載されている技術は、マイクロコンピュータの端子の兼用化に関し、A/D変換すべき信号(検出信号として使用可能な信号)と、割込信号とを共通の端子から取り込めるようにスイッチで切り換えるものである。
A/D特許文献4に記載されている技術は、デジタルオシロスコープの信号処理回路に関し、その入力端子に印加された信号(検出信号の一種)を、A/D変換回路に入力する前に、その交流成分と直流成分に分けて増幅することにより、信号経路の直流特性と広帯域特性とを両立させるものである。
【0004】
これら特許文献1〜4に記載されている技術は、基本的には1つの検出信号(又は、1つの検出信号に基づく信号)を信号処理するものであり、それによって信号伝送ライン数を削減する他、後段の処理回路の入力端子数を減らし、あるいは、信号処理の精度や特性を向上させるものである。
【0005】
一方、特許文献5および7に記載されている技術においては2つの検出信号に対し信号処理を行う。
特許文献5に記載されている技術は、2つの検出信号の和信号と差信号の比に比例した信号を得るに際し、後段のA/D変換器の分解能が低くて済むように、2つの検出信号の一方と和信号によって所望の結果が得られるようにしたものである。
特許文献6に記載されている技術は、デジタイザなどの座標入力装置に関し、2つの検出信号、すなわちX座標信号とY座標信号を切替接続回路により切り替えて差動増幅し、X座標信号とY座標信号を順次A/D変換するものである。
【0006】
ところで、2つの検出信号を用いて被測定物の位置制御を行うものとして、カメラ等におけるレンズの位置制御が知られている。
レンズの位置制御部においては、通常、アクチュエータの動作、たとえばDCモータ等の回転に応じて相対位置を検出し相対位置検出信号を出力する相対位置センサ、および、レンズの機械的な絶対位置を検出し絶対位置検出信号を出力する絶対位置検出センサを備える。そして、絶対位置検出センサの出力変化を基準に、相対位置検出センサの出力変動をカウントしてレンズを目的の位置まで移動させ、停止させることによりレンズ位置を制御する。
【0007】
レンズの位置制御などの用途では、とくに小型化および低コストが要求される。
上記のようにDCモータ等のアクチュエータの動きに連動した相対位置検出センサとして、一般的に、回転式エンコーダ、あるいは、モアレ干渉縞を利用した光学スケールなどを使用すると、その構造が簡素で安価である。とくに回転式エンコーダは、その回転検出デバイスとして、フォトインタラプタ等のアナログデバイスを使用すると、その構造が簡単で安価である。
また、絶対位置検出センサとしては、機械式スイッチ、非接触の光学センサ、たとえばフォトインタラプタ又はフォトリフレクタを用いると、その構造が簡単で安価である。
【0008】
これらレンズ位置制御部を簡単で安価とするために採用される相対位置検出センサおよび絶対位置検出センサは、通常、その出力がアナログ信号である。したがって、これらのセンサ出力に基づいて中央演算ユニット(CPU)等でレンズ位置を測定し制御するためには、そのセンサ出力を増幅し、アナログ信号を量子化するためのA/D変換器(又は、その機能)が必要となる。この用途では高い量子化精度は不要であることから、通常、CPU内のA/D変換機能を利用して相対位置検出信号と絶対位置検出信号をそれぞれA/D変換し、A/D変換後の信号を基に、アクチュエータとなるモータ等のフィードバック制御を行う。
【特許文献1】特開平08−201889号公報
【特許文献2】特開平09−270685号公報
【特許文献3】特開平06−036056号公報
【特許文献4】特開平06−197019号公報
【特許文献5】特開平03−263619号公報
【特許文献6】特開平02−260023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように2つの位置検出センサをCPUにてA/D変換する場合、2つの信号伝送ラインを要する他、CPU内でA/D変換ポートを2つ確保する必要がある。また、2つのセンサ出力を同時にA/D変換する必要があるためCPUの負荷が重く、駆動源(アクチュエータ)の制御に対して位置検出に遅れが発生する。
【0010】
また、CPUのA/D変換ポートを利用して上記の信号を処理する、たとえばカメラの場合、安価のCPUにおいてA/D変換チャンネルは、4チャンネル程度しかないものがある。カメラの場合、システム上CPUで必要とされるA/D変換ポートは、レンズ位置制御用のほかに、環境温度検出用、バッテリ温度検出用、バッテリ電圧検出用などがある。これらを想定するとA/D変換ポート数が4つではとても十分とは言えず、できる限りレンズ制御等で使用するA/Dポート数を減らす必要がある。また、A/D変換ポート数を増やすと、それだけカメラのシステムコストが増大し好ましくない。
【0011】
なお、このようなレンズ等の位置検出制御の用途に対しては、以下の理由により、前述した2つの検出信号に対する信号処理技術(特許文献5および6)を適用することができない。
特許文献5は2つの検出信号の差信号と和信号の比に比例した信号を得ることから、たとえば光ディスクのサーボ制御に特化したものである。また、特許文献6は、座標入力装置に関するものであり、とくに2つの検出信号(X座標信号とY座標信号)が片方ずつ差動増幅されて順次A/D変換される。これと同じような方法をレンズ等の位置制御に適用すると、その制御レスポンスを悪くすることから、この方法はカメラなどの用途に使えない。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、被測定物の位置制御のため信号処理回路の改良にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る位置検出装置は、被測定物が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサと、被測定物の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサと、前記絶対位置検出センサの出力信号である絶対位置検出信号と、前記相対位置検出センサの出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部と、を有し、前記複合位置検出信号が所定レベル以上又は以下に変化した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する。
本発明に係る他の位置検出装置は、被測定物が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサと、被測定物の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサと、前記絶対位置検出センサの出力信号である絶対位置検出信号と、前記相対位置検出センサの出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部と、を有し、前記複合位置検出信号のピークレベル、ボトムレベル又は前記ピークレベル及びボトムレベルにより特定される所定のレベルの変化を検出した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する。
【0014】
好ましくは、前記信号処理部は、前記相対位置検出信号と前記絶対位置検出信号とを差動増幅処理することにより前記一の信号である前記複合位置検出信号を生成する。
あるいは、好ましくは、前記信号処理部は、前記相対位置検出信号を搬送波として、前記絶対位置検出信号により該搬送波の振幅変調を行うことにより前記一の信号である前記複合位置検出信号を生成する。
好ましくは、前記複合位置検出信号のダイナミックレンジをX(V)、前記絶対位置検出信号の振幅範囲をA(V)、前記相対位置検出信号の振幅範囲をB(V)、前記相対位置検出信号のノイズレベルをWn(V)とした場合に、下記(1)及び(2)を満たす。
(1)X>A+B
(2)A>B+Wn
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る信号処理装置において、被測定物の位置制御のため信号処理回路を改良することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1に、本発明の実施の形態における位置検出のための位置検出装置の一構成例を示す。
図1に示すように、位置検出装置1は、被測定物10の位置を測定するために2つの位置検出センサ、すなわち被測定物の絶対位置を検出し絶対位置検出信号Saを出力する絶対位置検出センサ2と、非測定物の相対位置を検出し相対位置検出信号Srを出力する相対位置検出センサ3とを有する。ここで「絶対位置」とは相対位置の基準あるいは起点を示す位置をいい、絶対位置からの相対位置の変化量で被測定物の位置が確定する。
【0018】
位置検出装置1は、絶対位置検出信号Saと相対位置検出信号Srとから一の信号(以下、複合位置検出信号という)Sdを出力する信号処理回路4と、位置検出信号から被測定物の位置を測定する位置検出部としての中央演算ユニット(CPU)5とを有する。CPU5はA/D変換の機能(便宜上、図1においてA/D変換部5Aにより表示)を有し、A/D変換部5Aに上記複合位置検出信号Sdが入力され、ここで複合位置検出信号Sdがデジタル信号に変換され、不図示のCPU内機能により位置検出のためのデジタル信号処理が実行される。
【0019】
図2(A)に絶対位置検出信号Saの波形を、図2(B)に相対位置検出信号Srの波形を示す。これらの図においては横軸が時間t、縦軸が各検出信号のレベルLを表している。
絶対位置検出信号Saは、図1に示す被測定物10がある向きに移動することに伴って、図2(A)に示すように、たとえばL(Low)レベルからH(High)レベルに推移する信号である。なお、これとは逆に、絶対位置検出信号SaをHレベルからLレベルに推移する信号としてもよい。このような絶対位置検出信号Saを出力する図1に示す絶対位置検出センサ2としては、機械式センサ、たとえば、センサの切片が被測定物10に接触する状態から非接触の状態、あるいは、逆に非接触の状態から接触する状態で出力レベルが変化するスイッチを用いてもよい。ただし、機械式センサは負荷を発生させ、その駆動系への影響があり、負荷の大きさが経時変化し、さらに機械的トレランスにより検出位置が変動することから、絶対位置検出センサ2としては光学センサが望ましい。光学センサとして、フォトインタラプタあるいはフォトリフレクタを用いることができる。
【0020】
これに対し、相対位置検出信号Srは、図2(B)に示すように、ノイズの大小により多少振幅変動するが、基本的には一定の振幅を有する周期的な信号が望ましい。このような相対位置検出信号Sr(アナログ波形)を出力する図1に示す相対位置検出センサ3は、たとえばモアレ干渉縞を利用した光学スケールあるいは磁気スケールでもよいが、構造が簡素で安価な回転式のアナログエンコーダが望ましい。なお、アナログエンコーダや上記フォトインタラプタについては後述する。
【0021】
つぎに、より具体的な構成および動作を説明する。
【0022】
図3に、振幅変調により絶対位置検出信号Saと相対位置検出信号Srとを重畳する信号処理回路4を示す。
図3に示す信号処理回路4は、具体的な回路構成は省略するが、AMラジオで使用される振幅変調による方法により2つのアナログ信号の振幅変調し、増幅する機能(図3においては「Mod.&Amp.」と表記)を備える。振幅変調され増幅後の信号は、複合位置検出信号SdとしてCPU5のDA変換ポートAD1に入力される。
【0023】
図4(C)に、図3に示す構成で振幅変調と増幅により生成された複合位置検出信号Sdの波形を示す。また、図4(A)に絶対位置検出信号Saの波形を、図4(B)に相対位置検出信号Srの波形を示す。これらの図の縦軸および横軸は、前述した図2と同じであり、信号レベルLおよび時間tは3つの図で同じスケールである。
【0024】
図4(C)を図4(A)および図4(B)と比較すれば明らかなように、複合位置検出信号Sdは、相対位置検出センサの出力波形(相対位置検出信号Sr:図4(B))を搬送波とし、絶対位置検出センサの出力(絶対位置検出信号Sa:図4(A))を信号波形(信号のpeak-to-peak値)として振幅変調を行ったものである。この複合位置検出信号Sdにおいて、絶対位置検出センサの出力は振幅として現れ、相対位置検出センサの出力の繰り返し周期は、複合位置検出信号Sdにおいてもそのまま維持されている。その結果、1つのアナログ量で2つのアナログ信号の情報を表すことができる。
【0025】
図5に、差動増幅により相対位置検出信号の直流レベルを変化させて複合位置検出信号Sdを生成する信号処理回路4の他の構成例を示す。
図5に示す信号処理回路4は、一方の差動入力(たとえば「+」入力)に絶対位置検出信号Saを入力し、他方の差動入力(たとえば「−」入力)に相対位置検出信号Srを入力し、これらの差を所定のゲインで増幅する差動増幅器(D.Amp)4Aと、相対位置検出信号Srを所定のゲインで増幅し、差動増幅器4Aに出力する増幅器(Amp.)4Bとを有する。差動増幅器4Aの出力から複合位置検出信号Sdが出力され、CPU5のDA変換ポートAD1に入力される。
【0026】
図6(C)に、図5に示す構成で差動増幅により生成された複合位置検出信号Sdの波形を示す。また、図6(A)に絶対位置検出信号Saの波形を、図6(B)に相対位置検出信号Srの波形を示す。これらの図の縦軸および横軸は、前述した図2と同じであり、信号レベルLおよび時間tは3つの図で同じスケールとする。ただし、作図の都合上、図5に示す差動増幅器4Aのゲイン、増幅器4Bのゲインはそれぞれ「1」として図6(C)の複合位置検出信号Sdを表している。
【0027】
図6(C)に示すように、振幅変調に代えて、相対位置検出センサの出力に対し絶対位置検出センサの出力分を直流シフトさせても、図4(C)の場合と同様に1つのアナログ量で2つのアナログ信号の情報を表すことができる。
【0028】
ここで図5に示す差動増幅器4Aのゲイン、増幅器4Bのゲインは、以下ように決めることができる。このゲインの決め方は、図3に示す信号処理回路4内で振幅変調前の信号を増幅する場合にも適用できる。
相対位置検出信号Srは、たとえば回転式のアナログエンコーダの場合、回転体のスリットを通過し、スリット間の回転体部分により遮断される光を受光部で検出することにより得られる。回転体のスリットは周回方向に所定の周期で正確に形成されているが、軸ぶれや回転体の変形により多少なりとも位置検出信号Srの振幅が変動する。このような微小変動と信号経路の重畳ノイズとにより、相対位置検出信号Srのノイズレベルは、図4(C)(又は図6(C))の絶対位置検出前の波形Sd1に示すように、ある幅Wnで変動する。
このノイズレベルの最大変化点から更に外側、すなわち、レベルとしてより小さい側(又はより大きい側)に一定のマージンWd以上離れた位置に絶対位置の検出レベルを設ける必要がある。また、この検出レベルは、図4(A)(又は図6(A))にLdで示すように、絶対位置検出信号のHレベルから十分なマージンだけ離れたレベル変化途中に設定する必要がある。
この検出レベルの波形Sd1およびSd2に対する各マージンが、必要な値Wdより小さいと、図4(C)(又は図6(C))に示す絶対位置検出前の波形Sd1のノイズレベル、あるいは、絶対位置検出後の波形Sd2のノイズレベルに検出レベルが重なり、ノイズにより誤って絶対位置が検出されるおそれがある。このような誤動作を防止するために適切に検出レベルを設定する必要があるが、この設定可能な範囲は、絶対位置検出信号Saと相対位置検出信号Srとの相対的なゲイン調整で拡大することができる。
図3に示す構成においては、ノイズレベルを相対的に抑圧する目的で差動増幅器4Aのゲインを1より大きな値に設定することが望ましい。これに対し、増幅器4Bのゲインは、上記誤動作防止のための範囲拡大の観点から、1以上又は1未満の適切な値に設定することが望ましい。なお、同じ効果を得るために、図3とは逆に、絶対位置検出信号Saを増幅してもよいし、絶対位置検出信号Saと相対位置検出信号Srの双方を異なるゲインで増幅してもよい。
【0029】
本実施の形態では、複合位置検出信号Sdが所定レベル以上又は以下に変化した位置を基点に該複合位置検出信号Sdのパルス数を計測する方法と、複合位置検出信号Sdのピークレベル、ボトムレベル又は当該ピークレベル及びボトムレベルにより特定される所定のレベルの変化を検出した位置を基点に該複合位置検出信号Sdのパルス数を計測する方法とがある。
【0030】
何れの方法においても、複合位置検出信号SdのダイナミックレンジをX(V)、絶対位置検出信号Saの振幅範囲をA(V)、相対位置検出信号Srの振幅範囲をB(V)、相対位置検出信号SrのノイズレベルをWn(V)とした場合に、下記(1)及び(2)を満たすことが望ましい。
(1)X>A+B
(2)A>B+Wn
【0031】
これは、確実な絶対位置の検出を行うための条件例を規定するものである。これにより、図12(C)に示すように、ノイズレベルを考慮しながら波形Sd1とDs2が重ならないレベルでの絶対位置検出が可能である。または、ボトムレベルでシフトしても確実に絶対位置に到達したことを検出することができる。
【0032】
このようにして生成された検出信号Sdは、図3又は図5に示すCPU5内でA/D変換され、CPU内の比較などを実行する演算機能、レジスタなどのデータ保持機能を活用して、そのレベル変化極点(以下、正極ピークおよび負極ピークを含め単に「ピーク」という)の検出が実行される。
【0033】
図7に、ピーク検出方法を模式的に示す。なお、実際のピーク検出はデジタルデータに対して行われるが、図7では波形のレベル変化を便宜上、アナログ量で示す。
一般的に、振幅変調された信号は復調処理回路で復調してから処理を行なう必要がある。これに対し、本例では振幅変調後の信号(複合位置検出信号Sd)が元の相対位置検出信号Srの周期をそのまま維持していることから、絶対位置検出後に、複合位置検出信号Sdのパルス数を、たとえばピーク数によりカウントすれば、復調処理を行わなくても、図3又は図5に示すCPU5によって、被測定物10(図1)の位置検出が可能である。
【0034】
図7に示すように、位置検出信Sdのピーク値が常に監視され、ピーク検出が実行される。正極ピークは、ピークレベルからノイズキャンセルレベルより大きく信号レベルが低下したことにより検出され、負極ピークは、ピークレベルからノイズキャンセルレベルより大きく信号レベルが上昇したことにより検出される。
図7においては、ピーク検出ごとにCPU内のカウンタ値が、…, n-1, n, n+1, n+2, …とインクリメントされる。本例では、その途中でカウンタ値がnとなった後に、信号レベルがハイ側の絶対値検出レベルLdhに達し、これにより絶対位置が検出される。絶対位置が検出されるとカウンタ値がリセットされるか、あるいは、別のカウンタ値がピーク検出数をカウントし始め、この絶対位置を起点に新たに計測が開始されたピーク検出数により被測定物10の位置測定が開始される。
これにより、たとえば所望の位置に対応するカウンタ値に達すると被測定物10の移動を停止するなどの制御を行うことができる。
【0035】
以上の位置検出方法では、振幅変動幅が絶対位置検出センサの出力に対応し、相対位置検出センサの出力において波形の周期は変動しない。このため、上記のように相対位置検出センサの出力をピーク検出数で検出すると、振幅変動は相対位置検出に影響を与えない。したがって、信号処理部3の構成が簡素であるにもかかわらず、検出精度が高い位置検出、及び、そのための信号処理が可能である。
また、図8に示すように各検出信号SaとSrをそれぞれ信号増幅(Amp.)した後にCPU内の別のA/D変換ポートAD1とAD2に入力する比較例と比べると、上記本実施の形態の位置検出方法では使用するA/D変換ポートが1つであり、その分、安価なCPUが採用できる。
【0036】
つぎに、以上の位置検出方法を適用してレンズ位置の制御を行う実施例を説明する。
【0037】
カメラのレンズは、レンズ鏡筒の先端側から撮像素子側に向かって、光軸に沿って順に配列され種々の役割をもったレンズ群で構成される。たとえば、あるレンズ構成によれば、レンズ鏡筒の先端側に配置され焦点合わせのための1群レンズ、変倍を行うための2群レンズ、変倍動作後に焦点を撮像面上で正しく結ばせるための3群レンズ、そして、撮像面に結像させるための4群レンズを備える。この何れのレンズ群を可動とし、何れを固定とするかは様々であるが、一般には、2群レンズと4群レンズを可動とし他を固定するもの、2群レンズと3群レンズを可動とし他を固定するもの、これに加えて1群レンズを可動とするもの、3群レンズを省略し2群レンズと4群レンズのリア(撮像素子側)の一部を可動とするものなどがある。
【0038】
本実施例では、この可動レンズ群を被測定物(移動ユニット)として一軸移動を行う。
図9に、移動ユニットを移動させる駆動系および位置検出のための構成を図示する。
レンズ群を収容した移動ユニット11は、内面が雌ネジ加工されたネジ穴を有し、そのネジ穴に駆動軸12が通されている。駆動軸12は、その外周に雄ネジが加工され、それが移動ユニットのネジ孔の雌ネジと螺合し、駆動軸12の回転にともなって移動ユニット11が図9に示す矢印方向に移動するようになっている。とくに図示しないが、移動ユニット11はレンズの鏡筒(不図示)にも受けられたガイド機構によってスムーズにスライドが可能になっている。
【0039】
駆動軸12の一端部に駆動軸プーリ12Aが固定され、駆動軸プーリ12Aは、モータ(M)13の軸に固定されたモータ側プーリ13Aと、ベルト又はギアにより連結されている。モータ13の回転駆動力は、モータ側プーリ13A、駆動軸プーリ12Aによって伝達され駆動軸12を軸回転させる。モータ13は、図1に示すCPU等による制御下で、モータドライバ14により駆動される。
【0040】
駆動軸12の他端部に、周回方向に切り欠き部(又はスリット穴)を備えるアナログエンコーダの回転盤15が固定されている。駆動軸12の軸回転にともなって、この回転盤15も軸回転し、その切り欠き部(又はスリット穴)が周期的にフォトインタラプタ16の光を通過させ、周期的に、その光路が回転盤によって遮られることによってフォトインタラプタ16の出力から周期的な相対位置検出信号Srが得られる。なお、この回転盤15は、駆動軸プーリ12A又はモータ側プーリ13Aに切り欠き部やスリット穴を設けることにより代用でき、その場合、フォトインタラプタ16は、駆動軸プーリ12A又はモータ側プーリ13Aに近接配置される。
【0041】
図10に、フォトインタラプタ16の等価回路を示す。
電圧供給線とGNDレベル間に抵抗R1を介して発光ダイオードDiが接続され、位置検出時に発光ダイオードに電力が供給されると、発光ダイオードDiが発光する。その光はフォトディテクタ(トランジスタT)で受光される。フォトディテクタは電圧供給線とGND線との間に負荷抵抗RLを介して接続され、受光により光電変換された電荷が電位勾配に応じて流れると、フォトディテクタと負荷抵抗RLとの接続中点の電位が変動する。この電位変動は、フォトディテクタと発光ダイオードとの間の空間を上記回転盤15(図9)が移動し、その回転に応じて光が通過し遮蔽されるたびに、その通過と遮断を1周期として繰り返され、その結果、図11(A)に示す周期的な相対位置検出信号Srが、当該フォトインタラプタ16から出力される。
【0042】
一方、図9に示す移動ユニット11には、その移動方向に長い遮蔽尺11Aが設けられている。遮蔽尺11Aに対し、図10と同様な等価回路の他のフォトインタラプタ17が近接配置されている。このため、フォトインタラプタ17からは、遮蔽尺11Aにより発光ダイオードからの光が遮られている間はLレベルを維持し、遮られなくなるとHレベルに推移することにより、図11(B)に示す波形となる絶対位置検出信号Saが出力される。
【0043】
この絶対位置検出信号Saおよび上記相対位置検出信号Srは、図1に示す信号処理回路4に出力され、ここで図3又は図5に示す構成によって1つの複合位置検出信号Sdが生成される。
その後、CPU5に入力された複合位置検出信号Sdは、そこでA/D変換される。なお、A/D変換にもノイズ、あるいは機械的な振動が発生し、ある程度変動が予想されるため、これらによる誤判定をしないように、変化判定値を設け、ノイズキャンセル機能を持たせる処理を行うことが望ましい。
A/D変換後に、前述したように信号のピークレベル変化に応じて絶対位置が検出され、それ以後のピーク検出数のカウントによって図9に示す移動ユニット11の位置検出が開始される。制御目標値は、手動による操作、あるいは、オートフォーカス時の測距結果によって予めCPU5に入力され、その内部で記憶されている。移動ユニット11が制御目標値に達すると、あるいは、その直前になると、CPU5はモータドライバ14に停止指示を発し、その結果、モータ13が停止してレンズ位置制御が終了する。
【0044】
この実施例では、たとえば図10に等価回路を示す簡単なアクチュエータ16により絶対位置検出および相対位置検出ができ、レンズ位置制御部の構成がシンプルで安価に製造できるという利点がある。また、前述したように、構成が簡素である割には検出精度が高いレンズ位置検出が可能であり、また、使用するCPU5のA/D変換ポートが1つであり、その分、安価なCPUが採用できるという利益が得られる。
【0045】
本実施の形態によれば、前述した信号処理部の構成が簡素であるにもかかわらず、検出精度が高い位置検出、及び、そのための信号処理が可能であること、AD変換ポートの削減が可能であることに加え、以下の利点が得られる。
複合位置検出信号が所定レベル以上又は以下に変化した位置により絶対位置を検出する場合、とくに複合位置検出信号のピークレベル、ボトムレベル又は当該ピークレベル及びボトムレベルにより特定される所定のレベルの変化を検出する場合においては、この特定される所定のレベルとして複合位置検出信号の中点のレベルで絶対位置の検出が可能である。
上記2つの方法では、さらに前述した(1)および(2)の条件を同時に満足すると、繰り返し波形の影響やノイズの影響がない安定したレベルでの位置検出が可能である。また、ボトムレベルでシフトしても確実に絶対位置に到達したことを検出することができる。このため、さらに検出精度が高い位置検出、そのための信号処理が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、被測定物の位置を検出する位置検出センサから出力される位置検出信号を信号処理し、該信号処理後の位置検出信号に基づいて被測定物の位置を測定する用途に広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態における位置検出のための信号処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】(A)は絶対位置検出信号の波形図、(B)は相対位置検出信号の波形図である。
【図3】振幅変調により絶対位置検出信号と相対位置検出信号とを重畳する信号処理部を備えるブロック図である。
【図4】(A)は絶対位置検出信号の波形図、(B)は相対位置検出信号の波形図、(C)は、図3に示す構成で振幅変調と増幅により生成された位置検出信号の波形図である。
【図5】差動増幅により相対位置検出信号の直流レベルを変化させて位置検出信号を生成する信号処理回路4の他の構成例を示す回路ブロック図である。
【図6】(A)は絶対位置検出信号の波形図、(B)は相対位置検出信号の波形図、(C)は、図5に示す構成で差動増幅により生成された位置検出信号の波形図である。
【図7】ピーク検出方法を模式的に示す図である。
【図8】各検出信号をそれぞれ増幅した後にCPU内の別のA/D変換ポートに入力する比較例を示すブロック図である。
【図9】実施例において、移動ユニットを移動させる駆動系および位置検出のための構成を示す図である。
【図10】実施例で用いたフォトインタラプタの等価回路図である。
【図11】(A)はフォトインタラプタから出力される相対位置検出信号の波形図、(B)は絶対位置検出信号の波形図である。
【図12】(A)は絶対位置検出信号の波形図、(B)は相対位置検出信号の波形図、(C)は差動増幅により生成された位置検出信号の他の波形図である。
【符号の説明】
【0048】
1…信号処理回路、2…絶対位置検出センサ、3…相対位置検出センサ、4…信号処理部、4A…差動増幅器、4B…増幅器、5…CPU、5A…A/D変換部、10…被測定物、11…移動ユニット、11A…遮蔽尺、12…駆動軸、12A…駆動軸プーリ、13…モータ、13A…モータ側プーリ、14…モータドライバ、15…回転盤、16,17…フォトインタラプタ、Sa…絶対位置検出信号、Sr…相対位置検出信号、Sd…複合位置検出信号、Lp,Lph…検出レベル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサと、
被測定物の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサと、
前記絶対位置検出センサの出力信号である絶対位置検出信号と、前記相対位置検出センサの出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部と、を有し、
前記複合位置検出信号が所定レベル以上又は以下に変化した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する
位置検出装置。
【請求項2】
被測定物が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサと、
被測定物の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサと、
前記絶対位置検出センサの出力信号である絶対位置検出信号と、前記相対位置検出センサの出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部と、を有し、
前記複合位置検出信号のピークレベル、ボトムレベル又は前記ピークレベル及びボトムレベルにより特定される所定のレベルの変化を検出した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する
位置検出装置。
【請求項3】
前記複合位置検出信号はアナログ信号であり、
前記複合位置検出信号をA/D変換するA/D変換部を有し、
前記A/D変換部により変換されたデジタル信号に基づいて、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する
請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記相対位置検出信号と前記絶対位置検出信号とを差動増幅処理することにより前記一の信号である前記複合位置検出信号を生成する
請求項1〜3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記相対位置検出信号を搬送波として、前記絶対位置検出信号により該搬送波の振幅変調を行うことにより前記一の信号である前記複合位置検出信号を生成する
請求項1〜3に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記複合位置検出信号のダイナミックレンジをX(V)、
前記絶対位置検出信号の振幅範囲をA(V)、
前記相対位置検出信号の振幅範囲をB(V)、
前記相対位置検出信号のノイズレベルをWn(V)とした場合に、
下記(1)及び(2)を満たす、
(1)X>A+B
(2)A>B+Wn
請求項1〜5に記載の位置検出装置。
【請求項1】
被測定物が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサと、
被測定物の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサと、
前記絶対位置検出センサの出力信号である絶対位置検出信号と、前記相対位置検出センサの出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部と、を有し、
前記複合位置検出信号が所定レベル以上又は以下に変化した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する
位置検出装置。
【請求項2】
被測定物が所定位置に移動したことを出力信号のレベルの変化として出力する絶対位置検出センサと、
被測定物の移動量を出力信号のパルス数で出力する相対位置検出センサと、
前記絶対位置検出センサの出力信号である絶対位置検出信号と、前記相対位置検出センサの出力信号である相対位置検出信号とから一の出力信号を複合位置検出信号として生成する信号処理部と、を有し、
前記複合位置検出信号のピークレベル、ボトムレベル又は前記ピークレベル及びボトムレベルにより特定される所定のレベルの変化を検出した位置を基点に該複合位置検出信号のパルス数を計測することにより、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する
位置検出装置。
【請求項3】
前記複合位置検出信号はアナログ信号であり、
前記複合位置検出信号をA/D変換するA/D変換部を有し、
前記A/D変換部により変換されたデジタル信号に基づいて、前記被測定物の前記所定位置からの相対距離を検出する
請求項1又は2に記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、前記相対位置検出信号と前記絶対位置検出信号とを差動増幅処理することにより前記一の信号である前記複合位置検出信号を生成する
請求項1〜3に記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記相対位置検出信号を搬送波として、前記絶対位置検出信号により該搬送波の振幅変調を行うことにより前記一の信号である前記複合位置検出信号を生成する
請求項1〜3に記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記複合位置検出信号のダイナミックレンジをX(V)、
前記絶対位置検出信号の振幅範囲をA(V)、
前記相対位置検出信号の振幅範囲をB(V)、
前記相対位置検出信号のノイズレベルをWn(V)とした場合に、
下記(1)及び(2)を満たす、
(1)X>A+B
(2)A>B+Wn
請求項1〜5に記載の位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−234697(P2006−234697A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52148(P2005−52148)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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