説明

作業機の案内装置

【課題】 案内部を軽量化することができるようにする。
【解決手段】 本発明の作業機の案内装置5は、該作業機の進行とともに圃場Hに形成された案内溝を倣うように構成された案内部21と、案内部21及び作業機の操向機構を連結するアーム23とを備え、アーム23は、案内部21が地面の上下変動に追従可能に、作業機1に対して案内部21を左右に延びる第一軸33で上下回動可能に軸支している。そして、下端側が第一軸33よりも案内部側に対し左右に延びる第二軸45で回動自在に軸支されたレバー46と、一端側がレバー46の上端側に対し左右に延びる第三軸47で回動自在に軸支されるとともに、他端側が第一軸33よりも作業機側に対し左右に延びる第四軸48で回動自在に軸支されたリンク49と、アーム23及びレバー46間の第二軸45を中心とした開き角Bを小さくするように付勢する付勢手段50とを備えたクッション機構24を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に形成された案内溝に倣って作業機を自動的に操向する案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の作業機の案内装置としては、特許文献1記載の移植機に装備されたものを例示する。この移植機80は、図6に示すように、機体85の進行とともに該進行方向と平行に圃場Hの表面に案内溝を作溝する作溝装置(図示略)と、前行程で作溝された案内溝に倣って機体85の進行方向を案内する案内装置90とを備えている。案内装置90は、機体85の進行に伴って案内溝に沿って転動する前後一対の算盤玉形の案内車輪96を備えている。また、案内車輪96は、機体に上下回動可能に支持されたアーム部91の先端側に取り付けられている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−164202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の案内装置90は、案内溝から案内車輪96の脱輪を防ぐ目的で案内車輪96の重量を重く設定していた。このような案内装置90は、路上走行のとき重い案内車輪96を上昇支持しているため悪路の衝撃でアーム部91の支点部91aにムリが掛かる。このため、アーム部91の支点部91aを強大な構造とする必要があり、機体85にも負担がかかると同時にコスト的にも不利であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の案内装置は、
案内対象の作業機の前方に配置され、該作業機の進行とともに圃場に形成された案内溝を倣うように構成された案内部と、該案内部の左右方向への変位に応じて該作業機の操向機構を制御するように、該案内部及び該操向機構を連結するアームとを備え、
前記アームは、前記案内部が地面の上下変動に追従可能に、前記作業機に対して前記案内部を左右に延びる第一軸で上下回動可能に軸支するように構成された案内装置であって、
下端側が前記第一軸よりも案内部側に対し左右に延びる第二軸で回動自在に軸支されたレバーと、一端側が前記レバーの上端側に対し左右に延びる第三軸で回動自在に軸支されるとともに、他端側が前記第一軸よりも作業機側に対し左右に延びる第四軸で回動自在に軸支されたリンクと、前記アームの前記第一軸側及び前記レバーの間における前記第二軸を中心とした相対的な開き角を小さくするように付勢する付勢手段とを備えたクッション機構を有する。
【0006】
この構成によれば、前記クッション機構により、前記案内部が下方に付勢されるので、前記案内部の重量を重くすることなく、前記案内溝からの脱溝を防止することができる。このため、路上走行のために前記案内部を上昇支持するときの前記機体の負担を軽減することができる。
【0007】
前記移植機においては、
前記リンクはその長さを調節するための長さ調節機構を備えた態様を例示する。
【0008】
この構成によれば、前記リンクの長さをより長くなるように調節すれば、前記案内部を地面に押し付ける力を増加させることができ、前記リンクの長さをより短くなるように調節すれば、前記案内部を地面に押し付ける力を減少させることができる。また、前記案内部が地面から浮き上がるまで前記リンクの長さを短く調節すると、畝替わりや路上走行が可能になる。
【0009】
前記移植機においては、
前記長さ調節機構は、シリンダの伸縮により前記リンクの長さを調節するシリンダアクチュエータからなる態様を例示する。
【0010】
前記シリンダアクチュエータとしては、特に限定されないが、電動シリンダや流体圧シリンダ(例えば、油圧シリンダ)等を例示する。
【0011】
この構成によれば、シリンダアクチュエータを制御することにより、前記リンクの長さを適宜調節することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る作業機の案内装置によれば、案内溝に倣って機体の進行方向を案内するための案内部を軽量化することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図5は本発明を作業機としての移植機の案内装置として具体化した一実施形態を示している。この移植機1は、図1に示すように、複数条の野菜・花苗等のポット苗を圃場Hに同時に植え付けるものであり、乗用のトラクタ2と、該トラクタ2に牽引・駆動される移植装置3とを備えている。そして、この移植機1には、該移植機1の進行とともに該進行方向と平行に圃場Hの表面に案内溝を作溝する作溝装置4と、前行程で作溝された案内溝に倣って移植機1の進行方向を自動的に操向する案内装置5とが装備されている。なお、各図において、矢印Fは移植機1の前側を指し示している。
【0014】
トラクタ2は、操向ハンドル11で操向可能に設けられた左右一対の前輪13と、左右一対の後輪14と、前輪13及び後輪14によって走行自在に支持された機体15と、後輪14、移植装置3等を駆動する原動機としてのエンジン16とを備えている。
【0015】
本例の移植装置3は、図5に示すように、トラクタ2の後部に3点リンク等のリンク機構17で上昇、下降自在に連結されるとともに、トラクタ側に上下に回動可能に軸支した規制レバー18と、該規制レバー18の先端部に連結されたバネ手段19とを介して提持されている。そして、規制レバー18の下限位置から一定の範囲A(図5参照)においては、バネ手段19が引きバネとして作用し、移植装置3の接地圧を軽減するようになっている。そして、該一定の範囲Aよりも上側に回動した状態においては、バネ手段19が作用せず、規制レバー18が遊んだ状態になるように構成されている。この規制レバー18の回動の下限位置は、位置調節手段としてのストッパーボルト20の先端で規制されるようになっており、該ストッパーボルト20の先端の突出長さを調節することにより該下限位置調節(即ち移植装置3に対する荷重調節)が可能になっている。
【0016】
本例においては、トラクタ2から移植装置3を規制レバー18及びバネ手段19で提持して移植装置3の接地圧を軽減するように構成している理由は次の通りである。
(1)移植装置は圃場の土質や乾燥の状態により、圃場表面の鎮圧加減が必要(移植後の活着のため)だからである。移植装置にゲージ輪等を装備したものもあるがゲージ輪は移植表土を基準にしたものではないので移植表土に追従した植付けとならず植付状態が悪いという課題がある。
(2)仮に、規制レバー18を介さずに、トラクタ2から移植装置3をバネ手段19で直接提持するように構成することも考えられるが、そうすると、本例における規制レバー18が遊びとなる範囲においても引きバネとして作用する大容量のバネ手段19を採用する必要があり、コスト的に不利になるという課題がある。
【0017】
これに対し、本例は、トラクタ2から移植装置3をバネ手段19で提持して移植装置3の接地圧を軽減するもので、規制レバー18を介して提持し、移植装置3の接地圧を調節する必要がある範囲Aに対して主に引きバネが作用するように構成しているので、大容量のバネを使用しなくてもよいという効果が得られる。また、規制レバー18の位置調節手段としてのストッパーボルト20で前記荷重調節も容易となっている。
【0018】
案内装置5は、図2〜図4に示すように、案内対象の移植機1の前方に配置され、該移植機1の進行とともに圃場Hに形成された案内溝を倣うように構成された案内部21と、該案内部21の左右方向への変位に応じて該移植機1の操向機構(図示略)を制御するように、該案内部21及び該操向機構を連結するアーム23と、案内部21を下方に付勢するクッション機構24とを備えている。
【0019】
案内部21は、本例では、案内溝に沿って転動する前後一列に並設された一対の算盤玉形の案内車輪26を備えている。案内車輪26は、上下に延びる縦軸27に対して一体的に方向可変に支持されている。案内部21としては、本例の構成に限定されず、例えば、案内溝内に入れられて該案内溝を倣う舟形の部材とすることもできる。
【0020】
アーム23は、長さ方向における前側部31及び後側部32に分割形成されるとともに、前側部31と後側部32が左右に延びる第一軸33で相対的に上下回動可能に軸着されており、これにより、案内部21が地面の上下変動に追従可能になっている。また、前側部31には、被係止部としての被係止ピン34が設けられ、後側部32には、被係止ピン34を係止するための凹部35aが設けられた係止レバー35が回動可能に設けられている。そして、被係止ピン34を係止レバー35の凹部35aで係止すると、案内部21を地面から上方に大きく退避させた状態(図4よりも案内部21をさらに上方に退避させた状態であり、路上走行等の案内部21を使用しないときの状態)で固定することができるようになっている。
【0021】
本例のアーム23には、畝替わりのときに案内部21を地面から上方へ退避させた回数(図4の状態にした回数)をカウントするためのカウント手段40が設けられている。これにより、数十回の畝替わりごとに防除用の広い幅の畝を設ける場合のように、多数の畝替わりの回数を数える面倒をなくすることができる。このカウント手段40は、後側部32に対して前側部31を所定角度以上、上側へ回動した回数を計数し表示(41a)するカウンタ41により実現されている。このカウンタ41は、カウント表示41aがトラクタ2に乗車した作業者から見えるように設けられている。本例では、前側部31に設けられたカウンタ41のカウント値を増加させるカウントレバー41bと後側部32とをロッド42で連結することにより機械的に実現しているがこれに限定されない。例えば、後側部32に対して前側部31が所定角度以上、上側へ回動したときにONになるように電気的なスイッチを設け、該スイッチがONになった回数を電気的にカウントしモニタにカウント値を表示するようにカウント手段40を構成する等適宜変更することができる。また、カウンタ41に表示されるカウント値については、実際に、後側部32に対して前側部31が所定角度以上、上側へ回動した回数をそのままカウント値とすることの他に、該回数が所定数になるごとにカウント値を1ずつ増加させるようにしたりすることを例示する。
【0022】
クッション機構24は、下端側が第一軸33よりも案内部側に対し左右に延びる第二軸45で回動自在に軸支されたレバー46と、一端側がレバー46の上端側に対し左右に延びる第三軸47で回動自在に軸支されるとともに、他端側が第一軸33よりも移植機側に対し左右に延びる第四軸48で回動自在に軸支されたリンク49と、アーム23の第一軸側及びレバー46の間における第二軸45を中心とした相対的な開き角B(図3参照)を小さくするように付勢する付勢手段50(本例では引きバネを採用。)とを備えている。リンク49はその長さを調節するための長さ調節機構51を備えている。本例の長さ調節機構51は、シリンダアクチュエータとしての電動シリンダからなっている。
【0023】
以上のように構成された本例の移植機1の案内装置5によれば、クッション機構24により、案内部21が下方に付勢されるので、案内部21の重量を重くすることなく、案内溝からの脱溝を防止することができる。このため、路上走行のために案内部21を上昇支持するときの機体15の負担を軽減することができる。
【0024】
また、クッション機構24のリンク49は、該リンクの長さを調節するための長さ調節機構51を備えているので、リンク49の長さをより長くなるように調節すれば、案内部21を地面に押し付ける力を増加させることができ、リンク49の長さをより短くなるように調節すれば、案内部21を地面に押し付ける力を減少させることができる。また、案内部21が地面から浮き上がるまでリンク49の長さを短く調節すると、畝替わりや路上走行が可能になる。
【0025】
また、長さ調節機構51は、シリンダの伸縮によりリンク49の長さを調節するシリンダアクチュエータとしての電動シリンダからなっているので、該電動シリンダを制御することにより、リンク49の長さを適宜調節することができる。
【0026】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)作業機を、移植機1以外のものに変更すること。
(2)シリンダアクチュエータを、電動シリンダ以外のものに変更すること。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る案内装置を装備した移植機を示す側面図である。
【図2】同案内装置の平面図である。
【図3】同案内装置の側面図である。
【図4】同案内装置の案内部を地面から上方に退避させた状態を示す側面図である。
【図5】同移植機におけるトラクタと移植装置の連結部を示す側面図である。
【図6】従来の移植機の案内装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 移植機
2 トラクタ
3 移植装置
4 作溝装置
5 案内装置
21 案内部
23 アーム
24 クッション機構
31 前側部
32 後側部
33 第一軸
45 第二軸
46 レバー
47 第三軸
48 第四軸
49 リンク
50 付勢手段
51 調節機構
B 開き角
H 圃場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内対象の作業機の前方に配置され、該作業機の進行とともに圃場に形成された案内溝を倣うように構成された案内部と、該案内部の左右方向への変位に応じて該作業機の操向機構を制御するように、該案内部及び該操向機構を連結するアームとを備え、
前記アームは、前記案内部が地面の上下変動に追従可能に、前記作業機に対して前記案内部を左右に延びる第一軸で上下回動可能に軸支するように構成された作業機の案内装置であって、
下端側が前記第一軸よりも案内部側に対し左右に延びる第二軸で回動自在に軸支されたレバーと、一端側が前記レバーの上端側に対し左右に延びる第三軸で回動自在に軸支されるとともに、他端側が前記第一軸よりも作業機側に対し左右に延びる第四軸で回動自在に軸支されたリンクと、前記アームの前記第一軸側及び前記レバーの間における前記第二軸を中心とした相対的な開き角を小さくするように付勢する付勢手段とを備えたクッション機構を有する作業機の案内装置。
【請求項2】
前記リンクはその長さを調節するための長さ調節機構を備えた請求項1記載の作業機の案内装置。
【請求項3】
前記長さ調節機構は、シリンダの伸縮により前記リンクの長さを調節するシリンダアクチュエータからなる請求項2記載の作業機の案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−82088(P2009−82088A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258173(P2007−258173)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】