説明

作業機の油圧駆動ユニット

【課題】 パイロット油圧源を廃止し、油圧配管を減らせる作業機の油圧駆動ユニットを提供する。
【解決手段】 旋回体(被駆動体)2を正逆両方向に回転駆動する旋回モータ(油圧アクチュエータ)12と、この旋回モータ12に作動油を給排する第一、第二給排通路12a,12bと、第一、第二給排通路12a,12bに対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブ12cとを備える油圧駆動ユニット2uにおいて、コントロールバルブ12cの作動をコントローラ19から出力される駆動電流によって制御する構成とし、供給される油圧が低い状態で旋回体2を制動する一方、供給される油圧が高められることにより旋回体2の制動を解除する油圧ブレーキ22と、第一、第二給排通路12a,12bの高圧側に選択的に連通する高圧選択弁(高圧選択手段)32と、この高圧選択弁32を介して取り出される作動油圧を油圧ブレーキ22に導くブレーキ解除圧通路52とを備え、旋回モータ12の作動に連動して油圧ブレーキ22の作動が解除される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパワーショベル等の作業機に備えられる油圧駆動ユニットの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の作業機の油圧駆動ユニットとして、図6に示すものがある(特許文献1参照)。
【0003】
これについて説明すると、作業機はメイン油圧源の油圧ポンプ10から導かれる作動油圧によって各油圧アクチュエータ12〜17が作動し、左右のクローラ6,7を駆動して走行するとともに、旋回体2、バケット、アーム、ブームをそれぞれ動かして地面の掘削や土砂の搬送作業を行う。
【0004】
旋回体2を回転駆動する旋回モータ12には、旋回体2を制動する油圧ブレーキ22とがユニット化して設けられる。ネガティブ式の油圧ブレーキ22は、旋回体2を制動するブレーキスプリングと、旋回体2の制動を解除する油圧シリンダとを備える。
【0005】
旋回モータ12は第一、第二給排通路12a,12bとコントロールバルブ12c等を介して高圧油圧源に連通し、コントロールバルブ12cを介して第一、第二給排通路12a,12bに選択的に導かれる加圧作動油により正逆両方向に回転駆動する。
【0006】
図6において、70は運転者によって操作されるリモコン弁であり、このリモコン弁70はパイロット油圧源の油圧ポンプ71から導かれる作動油圧を各コントロールバルブ12c〜17cの各パイロット圧通路にパイロット油圧として振り分けるようになっている。
【0007】
パイロット圧式のコントロールバルブ12c〜17cはリモコン弁70を介して導かれるパイロット油圧によって切り換えられ、各油圧アクチュエータ12〜17にメイン油圧源の油圧ポンプ62から吐出される作動油を給排する。
【0008】
図6において、72は各パイロット圧通路の高圧側に選択的に連通する高圧選択弁である。高圧選択弁72から取り出される作動油圧はブレーキ解除圧通路74を介して油圧ブレーキ22に導かれる。
【0009】
ブレーキ解除圧通路74の途中には絞り弁75と逆止弁76が並列に介装され、これらが油圧ブレーキ22の作動を遅らせるタイマ回路を構成している。
【0010】
作業機が運転を停止している状態では、各油圧ポンプ62,71は停止しており、油圧ブレーキ22はブレーキスプリングの付勢力によって制動子を旋回体2側に押し付けて旋回体2を制動している。
【0011】
一方、作業機の運転時、各油圧ポンプ62,71は作動し、各パイロット圧通路の高圧側から高圧選択弁72を介して取り出される作動油圧が油圧ブレーキ22に導く。この作動油圧によって油圧ブレーキ22はブレーキスプリングに抗して制動子を引き込んで旋回体2の制動を解除する。こうして制動が解除された状態にて、運転者によってリモコン弁70が操作されると、コントロールバルブ12cがポジションを切り換え、旋回モータ12を回転作動させる。
【0012】
作業機の停止時、各油圧ポンプ62,71が停止し、旋回モータ12が旋回体2の駆動を停止するとともに、油圧ブレーキ22がブレーキスプリングの付勢力によって旋回体2を制動する。
【0013】
この制動作動時、油圧ブレーキ22の作動油はブレーキ解除圧通路74の絞り弁5を通ってタンク側に戻されることにより、油圧ブレーキ22の解除作動が遅れ、旋回体2の回転が完全に停止した後に油圧ブレーキ22が旋回体2を制動する。
【0014】
図6において、43はブームの下降時にブームシリンダ13から流出する作動油が流れを止める落下防止弁であり、45a,45bはアームの下降時にアームシリンダ14から流出する作動油が流れを止める落下防止弁である。各油圧アクチュエータ13,14の作動時、これら落下防止弁43,45a,45bは各リモコン弁70を介して導かれるパイロット油圧によって強制的に開弁される。
【0015】
また、特許文献1に開示された油圧回路は、メイン油圧源を減圧するとともに、アキュムレータに蓄圧してパイロット油圧を供給する構成とし、油圧ポンプ等で構成されるパイロット油圧源を廃止している。
【特許文献1】特開2001−263304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、図6に示す作業機にあっては、ブレーキ解除圧通路74がパイロット油圧源に連通する構成のため、作業機の運転中は常にパイロット油圧源によるエネルギの損失がある。また、油圧ブレーキ22とパイロット油圧源を結ぶ油圧配管が必要となり、構造の複雑化を招くという問題点があった。
【0017】
落下防止弁43,45a,45bのパイロット油圧を導く通路がパイロット油圧源に連通する構成のため、落下防止弁43,45a,45bとパイロット油圧源を結ぶ油圧配管が必要となり、構造の複雑化を招くという問題点があった。
【0018】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、パイロット油圧源を廃止し、油圧配管を減らせる作業機の油圧駆動ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に記載の本発明は、被駆動体を正逆両方向に駆動する油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに作動油を給排する第一、第二給排通路と、この第一、第二給排通路に対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブと、コントロールバルブを介して油圧アクチュエータに供給される油圧が低い状態で被駆動体を制動する一方、油圧アクチュエータに供給される油圧が高められることにより被駆動体の制動を解除する油圧ブレーキとを備えた作業機の油圧駆動ユニットにおいて、コントロールバルブの作動をコントローラから出力される駆動電流によって制御する構成とし、第一、第二給排通路の高圧側に選択的に連通する高圧選択手段と、この高圧選択手段を介して取り出される作動油圧を油圧ブレーキに導くブレーキ解除圧通路とを備え、油圧アクチュエータの作動に連動して油圧ブレーキの作動が解除される構成としたことを特徴とするものとした。
【0020】
請求項6に記載の本発明は、被駆動体を正逆両方向に駆動する油圧アクチュエータと、この油圧アクチュエータに作動油を給排する第一、第二給排通路と、この第一、第二給排通路に対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブと、重力によって作動する油圧アクチュエータから流出する作動油の流れを止める落下防止弁と、この落下防止弁を強制的に開弁させるパイロット油圧として導くパイロット油圧通路とを備えた作業機の油圧駆動ユニットにおいて、コントロールバルブの作動をコントローラから出力される駆動電流によって制御する構成とし、落下防止弁を第一、第二給排通路の一方に介装し、パイロット油圧通路を第一、第二給排通路の他方に接続したことを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の本発明によると、コントロールバルブは、コントローラから出力される駆動電流によって切り換え作動するため、コントロールバルブにパイロット油圧を導く配管やパイロット油圧源を設ける必要がない。
【0022】
コントロールバルブを介して油圧アクチュエータに供給される油圧が低い停止状態にて、油圧ブレーキは被駆動体を制動している。
【0023】
一方、コントロールバルブを介して油圧アクチュエータに供給される油圧が高い運転状態にて、油圧ブレーキは第一、第二給排通路の高圧側から高圧選択手段を介して作動油圧が導かれ、被駆動体の制動を解除している。これにより、コントロールバルブの作動により第一、第二給排通路から選択的に導かれる作動油圧により油圧アクチュエータが被駆動体を駆動する。
【0024】
こうして油圧ブレーキの作動油圧が第一、第二給排通路の高圧側から高圧選択手段を介して取り出される構成のため、油圧ブレーキに導かれる作動油を第一、第二給排通路との間で給排する油圧回路を油圧アクチュエータと油圧ブレーキとコントロールバルブと共にユニット化することが可能になる。この結果、油圧ブレーキの作動を解除するための油圧を導く専用の油圧配管を油圧駆動ユニットから延ばして配設する必要がなく、コントロールバルブにもパイロット油圧を導く配管やパイロット油圧源も不要とするため、油圧源の構造を簡素化するとともに、油圧源から油圧駆動ユニットに延びる油圧配管の本数を減らすことができる。さらに、パイロット油圧源によるエネルギの損失をなくすことができる。
【0025】
請求項6に記載の本発明によると、コントロールバルブは、コントローラから出力される駆動電流によって切り換え作動するため、コントロールバルブにパイロット油圧を導く配管やパイロット油圧源を設ける必要がない。
【0026】
コントロールバルブを介して油圧アクチュエータに供給される駆動油圧が低い状態にて、落下防止弁が閉弁して油圧アクチュエータから流出する作動油の流れを止めることにより、油圧アクチュエータが重力等によって作動することを止める。
【0027】
コントロールバルブを介して油圧アクチュエータに供給される駆動油圧が高い運転状態にて、落下防止弁はこの駆動油圧がパイロット油圧通路を介して導かれることによって強制的に開弁し、油圧アクチュエータが作動する。
【0028】
こうして落下防止弁のパイロット油圧として油圧アクチュエータに供給される駆動油圧が用いられる構成のため、落下防止弁のパイロット油圧通路を油圧アクチュエータと共にユニット化することが可能になる。この結果、落下防止弁を強制的に開弁させるパイロット油圧を導く専用の油圧配管を油圧駆動ユニットから延ばして配設する必要がなく、コントロールバルブにパイロット油圧を導く配管やパイロット油圧源も不要とするため、油圧源の構造を簡素化するとともに、油圧源から油圧駆動ユニットに延びる油圧配管の本数を減らすことができる。さらに、パイロット油圧源によるエネルギの損失をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
図1の(A)、(B)に示すように、作業機(パワーショベル)1は左右のクローラ6,7を駆動する左右の走行モータ16,17と、この旋回体2を駆動する旋回モータ12と、ブーム3を駆動する2本のシリンダ13と、アーム4を駆動する1本の油圧シリンダ14と、バケット5を駆動する1本の油圧シリンダ15とを備える。
【0031】
作業機1はメイン油圧源10から導かれる作動油圧によって上記各油圧アクチュエータ12〜17が作動し、左右のクローラ6,7を駆動して走行するとともに、旋回体2、バケット5、アーム4、ブーム3をそれぞれ動かして地面の掘削や土砂の搬送作業を行う。
【0032】
図2は作業機1に搭載される油圧装置の回路図である。この油圧装置は、旋回体2を駆動する油圧駆動ユニット2u、左のクローラ6を駆動する油圧駆動ユニット6u、右のクローラ7を駆動する油圧駆動ユニット7uと、ブーム3を駆動する油圧駆動ユニット3u、アーム4を駆動する油圧駆動ユニット4u、バケット5を駆動する油圧駆動ユニット5uとを備える。これら各油圧駆動ユニット2u,6u,7u,13u,14u,15uは全てメイン油圧源10から供給される作動油圧によって作動する。
【0033】
作業機1の制御系は、運転者によって操作されるジョイスティク/ペダル20とコントローラ19を備え、このジョイスティク/ペダル20から出力される電気信号に応じてコントローラ19が各油圧駆動ユニット2u,6u,7u,13u,14u,15u及びメイン油圧源10の作動を制御する。すなわち、作業機1の制御はジョイスティク/ペダル20からの指令に応じてコントローラ19から出力される駆動電流によって行われ、従来のリモコン弁やパイロット油圧源等を備えていない。
【0034】
メイン油圧源10は図示しないエンジンによって駆動される油圧ポンプ62を備え、油圧ポンプ62から吐出される加圧作動油が吐出通路63を通って各油圧アクチュエータ12〜17へと導かれる。
【0035】
油圧ポンプ62の吐出量は電磁弁66を介して作動する油圧アクチュエータ67によって変えられる。
【0036】
油圧ポンプ62から吐出される余剰作動油は吐出通路63からリリーフバルブ65を介してタンク側に戻される。
【0037】
旋回体2を駆動する油圧駆動ユニット2uは、旋回体(被駆動体)2を正逆両方向に回転駆動する旋回モータ(油圧アクチュエータ)12と、この旋回モータ12に作動油を給排する第一、第二給排通路12a,12bと、第一、第二給排通路12a,12bに対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブ12cと、供給される油圧が低い状態で旋回体2を制動する一方、供給される油圧が高められることにより旋回体2の制動を解除する油圧ブレーキ22と、第一、第二給排通路12a,12bの高圧側に選択的に連通する高圧選択弁(高圧選択手段)32と、この高圧選択弁32を介して取り出される作動油圧を油圧ブレーキ22に導くブレーキ解除圧通路52とを備え、旋回モータ12の作動がコントローラ19から出力される駆動電流によって制御され、旋回モータ12の作動時に油圧ブレーキ22の作動が解除される構成とする。
【0038】
第一、第二給排通路12a,12bは対のリリーフ弁8a,8bと対の逆止弁9a,9bを介して戻し通路68に連通している。旋回モータ12の回転作動中にコントロールバルブ12cが第一、第二給排通路12a,12bを遮断した後、慣性により旋回モータ12が回転を継続している間に、各リリーフ弁8a,8bのうち一方が開弁して第一、第二給排通路12a,12bの作動油を逃がし、旋回モータ12の回転を制動する。このとき、各逆止弁9a,9bのうち一方が開弁して第一、第二給排通路12a,12bに作動油を供給し、キャビテーションの発生を防止する。
【0039】
コントロールバルブ12cは、4つの電磁比例流量制御弁18がブリッジ回路に介装され、コントローラ19から送られる駆動電流によって第一、第二給排通路12a,12bに対して吐出通路63と戻し通路68を選択的に接続し、旋回モータ12を順方向もしくは逆方向に任意の速度で回転作動させように作動油の流量を制御する。
【0040】
ブレーキ解除圧通路52の途中には電磁弁42が介装される。この電磁弁42は高圧選択弁32を介して取り出される作動油圧を所定値以下に油圧ブレーキ22に導くブレーキ解除ポジションと、油圧ブレーキ22を戻し通路68に連通するブレーキ作動ポジションとを有し、コントローラ19からの制御信号に応じて選択的に切り換えられる。
【0041】
左のクローラ6を駆動する油圧駆動ユニット6uは、クローラ(被駆動体)6を正逆両方向に回転駆動する走行モータ(油圧アクチュエータ)16と、この走行モータ16に作動油を給排する第一、第二給排通路16a,16bと、第一、第二給排通路16a,16bに対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブ16cと、供給される油圧が低い状態でクローラ6を制動する一方、供給される油圧が高められることによりクローラ6の制動を解除する油圧ブレーキ26と、第一、第二給排通路16a,16bの途中に介装されるカウンタバランス弁(高圧選択手段)36と、このカウンタバランス弁36を介して第一、第二給排通路16a,16bの高圧側に選択的に取り出される作動油圧を油圧ブレーキ26に導くブレーキ解除圧通路53とを備える。
【0042】
このカウンタバランス弁36は第一、第二給排通路16a,16bのうち高圧側に導かれる走行モータ16の駆動圧とスプリングのバネ力とがバランスする位置に弁体が移動して第一、第二給排通路16a,16bのうち低圧側に背圧を与えるものである。これにより、駆動圧に応じた走行モータ16の回転速度を維持するようになっている。そして、カウンタバランス弁36は、ブレーキ解除圧通路53に対して第一、第二給排通路16a,16bのうち高圧側を連通させる構成とする。
【0043】
第一、第二給排通路16a,16bは対のリリーフ弁8a,8bを介して互いに連通する。走行モータ16の回転作動中にコントロールバルブ16cが中央のポジションに切り換えられたとき、慣性により走行モータ16が回転を継続している間に各リリーフ弁8a,8bのうち一方が開弁して第一、第二給排通路16a,16bの間で作動油圧を逃がし合い、油圧モータ16の回転を制動するようになっている。
【0044】
右のクローラ7を駆動する油圧駆動ユニット7uは、クローラ(被駆動体)7を正逆両方向に回転駆動する走行モータ(油圧アクチュエータ)17と、この走行モータ17に作動油を給排する第一、第二給排通路17a,17bと、第一、第二給排通路17a,17bに対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブ17cと、供給される油圧が低い状態でクローラ7を制動する一方、供給される油圧が高められることによりクローラ7の制動を解除する油圧ブレーキ27と、第一、第二給排通路17a,17bの途中に介装されるカウンタバランス弁(高圧選択手段)37と、このカウンタバランス弁37を介して第一、第二給排通路17a,17bの高圧側に選択的に取り出される作動油圧を油圧ブレーキ27に導くブレーキ解除圧通路54とを備える。第一、第二給排通路17a,17bは対のリリーフ弁8a,8bを介して互いに連通する。
【0045】
ブーム3を駆動する油圧駆動ユニット3uは、ブーム(被駆動体)3を昇降駆動するブームシリンダ(油圧アクチュエータ)13と、このブームシリンダ13に作動油を給排する第一、第二給排通路13a,13bと、第一、第二給排通路13a,13bに対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブ13cと、ブーム3の下降時にブームシリンダ13から流出する作動油が流れる第一給排通路13aに介装される落下防止弁(オペレートチェック弁)43と、第二給排通路13bの作動油圧を落下防止弁43を強制的に開弁させるパイロット油圧として導くパイロット油圧通路44とを備える。
【0046】
アーム4を駆動する油圧駆動ユニット4uは、アーム(被駆動体)4を昇降駆動するアームシリンダ(油圧アクチュエータ)14と、このアームシリンダ14に作動油を給排する第一、第二給排通路14a,14bと、第一、第二給排通路14a,14bに対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブ14cと、第一、第二給排通路14a,14bに介装される落下防止弁(オペレートチェック弁)45a,45bとを備える。
【0047】
アームシリンダ14のボトム室から第一給排通路14aを通って流出する作動油に対して落下防止弁45aが閉弁し、アームシリンダ14が重力によって収縮作動することを止める。一方、アームシリンダ14のロッド室から第二給排通路14bを通って流出する作動油に対して落下防止弁45aが閉弁し、アームシリンダ14が重力によって伸張作動することを止める。
【0048】
油圧駆動ユニット4uは、落下防止弁45aを強制的に開弁させるパイロット油圧を導くパイロット油圧通路46a第二給排通路14bに接続するとともに、落下防止弁45bを強制的に開弁させるパイロット油圧を導くパイロット油圧通路46bを第一給排通路14aに接続し、コントロールバルブユニット14cを介して導かれる作動油圧によってアームシリンダ14が伸縮作動する時に落下防止弁45a,45bをそれぞれ強制的に開弁させる構成とする。
【0049】
バケット5を駆動する油圧駆動ユニット5uは、バケット(被駆動体)5を昇降駆動するバケットシリンダ(油圧アクチュエータ)15と、このバケットシリンダ15に作動油を給排する第一、第二給排通路15a,15bと、第一、第二給排通路15a,15bに対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブ15cとを備える。
【0050】
以上のように構成されて、次に作用について説明する。
【0051】
作業機1の旋回時、油圧ブレーキ22による旋回モータ12の制動が解除された状態にてコントロールバルブ12cが第一、第二給排通路12a,12bの圧力を選択的に高めて旋回モータ12を回転作動させる。このとき、電磁弁42がブレーキ解除ポジションaに切り換えられると、旋回モータ12の作動時に第一、第二給排通路12a,12bの高圧側から高圧選択弁32を介して取り出される作動油圧を油圧ブレーキ22に導く。油圧ブレーキ22はこの作動油圧によってブレーキスプリングに抗して収縮作動し、制動子を引き込んで旋回体2の制動を解除する。
【0052】
油圧ブレーキ22の作動油圧が第一、第二給排通路12a,12bの高圧側から高圧選択弁32を介して取り出されることにより、油圧ブレーキ22の作動油を第一、第二給排通路12a,12bとの間で給排する油圧回路を油圧駆動ユニット2uに収められる。この結果、油圧ブレーキ22の作動油圧を導く専用の油圧配管を油圧駆動ユニット2uから延ばして配設する必要がない。
【0053】
作業機1の停止時、コントローラ19から制御信号によって電磁弁42がブレーキ解除ポジションaからブレーキ作動ポジションbに切り換えられ、油圧ブレーキ22を作動させる。これにより、コントローラ19は旋回体2の作動状態に応じて任意のタイミングで油圧ブレーキ22を作動させることが可能となる。例えば旋回体2の回転が完全に停止したことを判定した後に油圧ブレーキ22を解除作動させ、旋回体2や油圧ブレーキ22にかかる負荷を抑えられる。この結果、油圧回路に油圧ブレーキ22の作動を遅らせるタイマ回路の要素を設ける必要がなく、構造の簡素化がはかれる。
【0054】
作業機1の走行時、油圧ブレーキ26,27による走行モータ16,17の制動が解除された状態にてコントロールバルブ16c,17cが第一、第二給排通路16a,16b、17a,17bの圧力を選択的に高めて走行モータ16,17をそれぞれ回転作動させる。走行モータ16,17の作動時に第一、第二給排通路16a,16b、17a,17bの高圧側からカウンタバランス弁36,37を介して取り出される作動油圧を油圧ブレーキ26,27に導く。油圧ブレーキ26,27はこの作動油圧によってブレーキスプリングに抗して収縮作動し、制動子を引き込んでクローラ6,7の制動をそれぞれ解除する。
【0055】
油圧ブレーキ26,27の作動油圧が第一、第二給排通路16a,16b、17a,17bの高圧側からカウンタバランス弁36,37を介して取り出されることにより、油圧ブレーキ26,27の作動油を第一、第二給排通路16a,16b、17a,17bとの間で給排する油圧回路を油圧駆動ユニット6u,7uに収められる。この結果、油圧ブレーキ26,27の作動油圧を導く専用の油圧配管を油圧駆動ユニット6u,7uから延ばして配設する必要がない。
【0056】
ブーム3を駆動する油圧駆動ユニット3uは、落下防止弁43が閉弁してブームシリンダ13が重力によって収縮作動することを阻止する。一方、第二給排通路13bの圧力が所定値を超えて上昇するのに伴って落下防止弁43が強制的に開弁され、ブームシリンダ13を油圧によって収縮作動させることができる。
【0057】
ブーム3を駆動する油圧駆動ユニット3uは、落下防止弁43を強制的に開弁させるパイロット油圧が第二給排通路13bからパイロット油圧通路44を介して導かれることにより、落下防止弁43のパイロット油圧通路44を油圧駆動ユニット3uに収めることができる。この結果、落下防止弁43のパイロット油圧を導く専用の油圧配管を油圧駆動ユニット3uから延ばして配設する必要がない。
【0058】
アーム4を駆動する油圧駆動ユニット4uは、落下防止弁45a,45bがそれぞれ閉弁してアームシリンダ14が重力によって伸縮作動することを阻止する。一方、第一、第二給排通路14a,14bの圧力が所定値を超えて上昇するのに伴って落下防止弁45a,45bがそれぞれ強制的に開弁され、アームシリンダ14を油圧によって伸縮作動させることができる。
【0059】
アーム4を駆動する油圧駆動ユニット4uは、落下防止弁45a,45bを強制的に開弁させるパイロット油圧が第一、第二給排通路14a,14bからパイロット油圧通路44a,44を介して導かれることにより、落下防止弁45a,45bのパイロット油圧通路44a,44bを油圧駆動ユニット4uに収めることができる。この結果、落下防止弁45a,45bのパイロット油圧を導く専用の油圧配管を油圧駆動ユニット1uから延ばして配設する必要がない。
【0060】
各コントロールバルブ12c〜17cは、コントローラ19から出力される駆動電流によって切り換え作動するため、コントロールバルブ12c〜16cにパイロット油圧を導く配管やパイロット油圧源を設ける必要がない。このため、作業機1に設けられる油圧源をメイン油圧源のみとして構造を簡素化するとともに、油圧源から各油圧駆動ユニット2u〜7uに延びる油圧配管の本数を減らすことができる。さらに、パイロット油圧源によるエネルギの損失をなくすことができる。
【0061】
図3に示す他の実施の形態は、ブレーキ解除圧通路52の途中に電磁減圧弁(減圧手段)48が介装される。この電磁減圧弁48は高圧選択弁32を介して取り出される作動油圧を所定値以下に減圧して油圧ブレーキ22に導くブレーキ解除ポジションと、油圧ブレーキ22を戻し通路68に連通するブレーキ作動ポジションとを有し、コントローラ19からの制御信号に応じて選択的に切り換えられる。
【0062】
第一、第二給排通路12a,12bの作動油圧を電磁減圧弁48が所定値以下に減圧して油圧ブレーキ22の圧力室に導くことにより、油圧ブレーキ22の油圧シリンダに導かれる油圧をブレーキスプリングに抗して収縮作動するのに必要最小限の値に設定することが可能となる。すなわち、油圧ブレーキ22を旋回モータ12と同じ高圧に耐えうる強固な構造にする必要がなく、製品のコストダウンがはかれるとともに、信頼性を高めることができる。
【0063】
図4に示す他の実施の形態は、コントロールバルブ12c〜17cをスプールを介して給排通路12a〜17a、12b〜17bに対する作動油の流れを切り換える構成とし、スプールを作動させる駆動圧を取り出す高圧対応の電磁減圧弁28を備える。
【0064】
また、ブレーキ解除圧通路52の途中に電磁弁42が介装されている。
【0065】
この場合も、各コントロールバルブ12c〜17cは、コントローラ19から出力される駆動電流によって切り換え作動するため、コントロールバルブ12c〜17cにパイロット油圧を導く配管やパイロット油圧源を設ける必要がない。このため、作業機1に設けられる油圧源をメイン油圧源のみとして構造を簡素化するとともに、油圧源から各油圧駆動ユニット2u〜7uに延びる油圧配管の本数を減らすことができる。
【0066】
図5に示す他の実施の形態は、ブレーキ解除圧通路52の途中に電磁減圧弁(減圧手段)48が介装される。
【0067】
この場合、油圧ブレーキ22を旋回モータ12と同じ高圧に耐えうる強固な構造にする必要がなく、製品のコストダウンがはかれるとともに、信頼性を高めることができる。
【0068】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の作業機1の油圧駆動ユニットは、例えばパワーショベル等の作業機や他の作業機械等に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態を示し、(A)は作業機の平面図、(B)は作業機の側面図。
【図2】同じく油圧回路図。
【図3】他の実施の形態を示す油圧回路図。
【図4】他の実施の形態を示す油圧回路図。
【図5】他の実施の形態を示す油圧回路図。
【図6】従来例を示す油圧回路図。
【符号の説明】
【0071】
1 作業機
2 旋回体(被駆動体)
2u〜7u 油圧駆動ユニット
3 ブーム(被駆動体)
4 アーム(被駆動体)
6,7 走行モータ(被駆動体)
10 メイン油圧源
12 旋回モータ(油圧アクチュエータ)
12a〜17a 第一給排通路
12b〜17b 第二給排通路
12c〜17c コントロールバルブ
13 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
14 アームシリンダ(油圧アクチュエータ)
16,17 走行モータ(油圧アクチュエータ)
19 コントローラ
22 油圧ブレーキ
32 高圧選択弁(高圧選択手段)
36 カウンタバランス弁(高圧選択手段)
42 電磁弁
43 落下防止弁
44 ブレーキ解除圧通路
45a,45b 落下防止弁
48 電磁減圧弁(減圧手段)
52〜54 ブレーキ解除圧通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動体を正逆両方向に駆動する油圧アクチュエータと、
この油圧アクチュエータに作動油を給排する第一、第二給排通路と、
この第一、第二給排通路に対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブと、
このコントロールバルブを介して油圧アクチュエータに供給される油圧が低い状態で被駆動体を制動する一方、油圧アクチュエータに供給される油圧が高められることにより被駆動体の制動を解除する油圧ブレーキとを備えた作業機の油圧駆動ユニットにおいて、
前記コントロールバルブの作動をコントローラから出力される駆動電流によって制御する構成とし、
前記第一、第二給排通路の高圧側に選択的に連通する高圧選択手段と、
この高圧選択手段を介して取り出される作動油圧を前記油圧ブレーキに導くブレーキ解除圧通路とを備え、
前記油圧アクチュエータの作動に連動して前記油圧ブレーキの作動が解除される構成としたことを特徴とする作業機の油圧駆動ユニット。
【請求項2】
前記高圧選択手段として、前記第一、第二給排通路の高圧側をその圧力によって自動的に前記油圧ブレーキに連通する高圧選択弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業機の油圧駆動ユニット。
【請求項3】
前記高圧選択手段として、前記第一、第二給排通路の高圧側をその圧力によって自動的に前記油圧ブレーキに連通するカウンタバランス弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業機の油圧駆動ユニット。
【請求項4】
前記ブレーキ解除圧通路に電磁弁を介装し、運転条件に応じて電磁弁を開閉する構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の作業機の油圧駆動ユニット。
【請求項5】
前記高圧選択手段を介して取り出される作動油圧を所定値以下に減圧して前記油圧ブレーキに導く減圧手段を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の作業機の油圧駆動ユニット。
【請求項6】
被駆動体を正逆両方向に駆動する油圧アクチュエータと、
この油圧アクチュエータに作動油を給排する第一、第二給排通路と、
この第一、第二給排通路に対する作動油の流れを切り換えるコントロールバルブとを備えた作業機の油圧駆動ユニットにおいて、
前記コントロールバルブの作動をコントローラから出力される駆動電流によって制御する構成とし、
重力によって作動する前記油圧アクチュエータから流出する作動油の流れを止める落下防止弁と、
この落下防止弁を強制的に開弁させるパイロット油圧として導くパイロット油圧通路とを備え、
前記落下防止弁を前記第一、第二給排通路の一方に介装し、
前記パイロット油圧通路を前記第一、第二給排通路の他方に接続したことを特徴とする作業機の油圧駆動ユニット。
【請求項7】
前記コントロールバルブは、4つの電磁比例流量制御弁をブリッジ回路に介装し、
前記コントローラからこの電磁比例流量制御弁に出力される駆動電流によって前記第一、第二給排通路に対して油圧源側とタンク側を選択的に連通させる構成としたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の作業機の油圧駆動ユニット。
【請求項8】
前記コントロールバルブは、前記給排通路に対する作動油の流れを切り換えるスプールと、
このスプールを作動させる駆動圧を取り出す電磁減圧弁とを備え、
前記コントローラからこの電磁減圧弁に出力される駆動電流によって前記第一、第二給排通路に対して油圧源側とタンク側を選択的に連通させる構成としたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の作業機の油圧駆動ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−64139(P2006−64139A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250135(P2004−250135)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】