説明

作業機の燃料補給装置

【課題】
燃料が満タンに供給されたり補給タンクが空になると燃料の補給作業を自動停止させることにより、人が付きっきりでなくとも燃料補給作業を行うことのできる作業機を提供する。
【解決手段】
エンジン1と燃料タンク2を給油ポンプ3を有する供給回路4で連結し、供給回路4には切替バルブ5を介して燃料を供給する補給回路6を連結して、切替バルブ5を切替操作すると給油ポンプ3の駆動で給油タンク7からの燃料を補給可能に構成し、給油ポンプ3が給油の停止を検出する、または燃料タンク2の残量センサ9が燃料タンク2の満量状態を検知すると、補給ポンプ3を停止させて切替バルブ5を供給回路4側へ切替制御する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機のエンジンに燃料を補給する燃料補給装置に関するものであり、燃料補給作業を容易化するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機の燃料タンクに燃料を補給するときは、ポリタンクから燃料を漏斗を用いて注入したり、給油ポンプ等を用いて燃料を補給している。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−022290公報(第5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この燃料タンクヘの燃料補給の間、作業者は重いポリタンクを支持し続け、漏斗への燃料の注ぎ込みや給油ポンプの操作を続けねばならず、また燃料がこぼれないよう監視し続ける必要があるため、作業者の労力が増大すると共に、燃料補給中は他の作業が行えず、作業能率が低下する問題がある。
【0005】
また、作業機を小形化、軽量化するために、燃料タンクの容量を小型化していると、燃費は向上するものの容量が少ないため、結果的に燃料補給を行なう頻度が高くなり、頻繁な燃料補給作業により作業能率が低下してしまう問題がある。
【0006】
農作業機のエンジン燃料の給油操作は、燃料タンクの上側に運転席や、エンジンカバー、更には作業機の一部等が覆うように構成されて、この燃料タンクキャップを開閉して給油操作を行うための広い給油用スペースの確保が難しい形態が多い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、エンジン(1)と燃料タンク(2)を給油ポンプ(3)を有する供給回路(4)で連結し、該供給回路(4)には切替バルブ(5)を介して燃料を供給する補給回路(6)を連結して、該切替バルブ(5)を切替操作すると前記給油ポンプ(3)の駆動で給油タンク(7)からの燃料を補給可能に構成したことを特徴とする作業機の燃料補給装置とした。
【0008】
燃料タンク(2)とエンジン(1)の間に設ける供給回路4の給油ポンプ3を駆動することにより、該燃料タンク(2)の燃料は供給回路(4)を経てエンジン(1)に供給される。
【0009】
前記燃料タンク(2)の燃料が減少に伴い燃料を補給するときは、補給用燃料を収容した給油タンク(7)を燃料タンク(2)の傍に運び、前記補給回路(6)の給油通路を給油タンク(7)にセットする。そして、前記切替バルブ(5)を供給回路(4)側から補給回路(6)側へ切替操作して前記給油ポンプ(3)を駆動することにより、前記給油タンク(7)から吸入した燃料を補給回路(6)を経由させて燃料タンク(2)に供給することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記切替バルブ(5)を操作する切替スイッチ(8)を、エンジン(1)の供給回路(4)側へ切替操作すると前記給油ポンプ(3)が低速回転に切り替わると共に、補給回路(6)側へ切替操作すると前記給油ポンプ(3)を高速回転に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業機の燃料補給装置とした。
【0011】
前記のように、切替バルブ(5)を供給回路(4)側に切替操作すると、給油ポンプ(3)の駆動で燃料タンク(2)からエンジン(1)に燃料供給させることができる。また、前記燃料タンク(2)に燃料を補給するときは、切替バルブ(5)を補給回路(6)側に切替操作するが、該切替バルブ(5)の操作を行う切替スイッチ(8)が供給回路(4)側に切替操作されると、前記給油ポンプ(3)の回転が低速回転に切り替わると共に、切替スイッチ(8)が補給回路(6)側へ切替操作されると、給油ポンプ(3)の回転が高速回転に駆動される。
【0012】
上記により、エンジン(1)の駆動時は、燃料の供給量は該エンジン(1)の駆動出力に対応した量に制限されるが、燃料補給時は、前記エンジン(1)の駆動出力にかかわらず大量の燃料を燃料タンク(2)に供給することにより、能率のよい燃料の補給作業を行うも構成となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記給油ポンプ(3)による給油を検出し、且つ切替スイッチ(8)の補給回路(6)側への切替時に給油が途切れたことを検出すると、前記補給ポンプ(3)を停止すると共に、切替バルブ(5)を供給回路(4)側へ切替制御することを特徴とする請求項1または2記載の作業機の燃料補給装置とした。
【0014】
前記のように、切替スイッチ(8)によって切替バルブ(5)を補給回路(6)側へ切替操作して燃料補給状態としたとき、補給タンク(7)の燃料が無くなったことを検出すると給油ポンプ(3)を停止し、前記切替バルブ(5)を供給回路(4)側へ自動的に切り替える構成としていることにより、補給タンク(7)の燃料が無くなると補給回路(6)による補給作用が自動的に停止するため、供給回路(4)による燃料供給やエンジン(1)の運転開始に移行し易くなる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記燃料タンク(2)に燃料残量を検出する残量センサ(9)を設け、前記切替スイッチ(8)が補給回路(6)側を開通する補給状態で、且つ該残量センサ(9)が満量状態を検出すると、給油ポンプ(3)を停止すると共に、切替バルブ(5)を供給回路(4)側を開通する供給状態に切替制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業機の燃料補給装置とした。
【0016】
前記燃料タンク(2)は補給回路(6)から燃料が補給され、燃料タンク(2)に補給された燃料は供給回路(4)を経由してエンジン(1)に供給される。前記燃料タンク(2)の燃料の残量は残量センサ(9)によって常時検出されており、前記切替スイッチ(8)が補給状態であるときに残量センサ(9)が満量状態を検出すると、給油ポンプ(3)を停止すると共に切替バルブ(5)を供給状態に切り替える構成としている。
【0017】
即ち、燃料タンク(2)への燃料補給状態時に、該燃料タンク(2)が満量になったことを残量センサ(9)が検出すると、給油ポンプ(3)が停止されると共に切替バルブ(5)が供給状態に切り替えられるため、作業者がエンジン(1)を即座に駆動可能な状態とすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、前記補給回路(6)の管径(D2)を、供給回路(4)の管径(D1)よりも大径に形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の作業機の燃料補給装置とした。
【0019】
前記のように、燃料タンク(2)からエンジン(1)に亘る供給回路(4)の切替バルブ(5)を切替操作すると、補給タンク(7)の燃料を燃料タンク(2)に補給する補給回路(6)が形成されるが、該補給回路(6)の管径(D2)を前記供給回路(4)の管径(D1)よりも大径に形成したことにより、補給燃料の流量抵抗が小さくなるため、短時間で給油作業を行うことができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、前記切替バルブ(5)を操作する切替スイッチ(8)を補給状態に操作すると、前記給油ポンプ(3)及び切替バルブ(5)以外への通電を停止することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の作業機の燃料補給装置とした。
【0021】
前記切替スイッチ(8)を補給状態に切替操作すると、前記給油ポンプ(3)及び切替バルブ(5)には電力供給を続け、給油ポンプ(3)及び切替バルブ(5)以外には電力供給を停止する構成としたことにより、燃料給油作業中のバッテリ電圧の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明は、給油タンク(7)から給油ポンプ(3)で燃料を吸い上げ、この燃料を燃料タンク(2)に補充する補給回路(6)を設けたことにより、給油タンク(7)を補給回路(6)に接続して燃料の補充作業を自動的に行うことができるので、作業者は燃料タンク(2)の蓋を開け、給油タンク(7)を手で傾けて漏斗に注ぎ込んだり、携帯用の給油ポンプを用いたりして燃料を供給する必要がなくなるため、燃料の補充中に休憩を取ることができて作業者の労力が軽減される。
【0023】
また、燃料の補充作業中に苗の積み込み等、他の作業を行うことができるので、作業能率が向上する。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、切替スイッチ(8)を操作して切替バルブ(5)を切り替えて、供給回路(4)の給油ポンプ(3)の駆動回転速度を低速または高速に切替可能に構成したことにより、走行時はエンジン(1)の出力に対応する駆動回転速度により燃料の供給量を適切化して燃費の向上を図ることができる。
【0024】
また、燃料の補給時は給油ポンプ(3)を高速駆動回転とすることにより、大量の燃料を速やかに燃料タンク(2)に送り込むことができるので、燃料の補給作業にかかる時間が短縮され、作業能率が向上する。
【0025】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、給油ポンプ(3)によって補給回路(6)に燃料が供給されない状態、即ち給油タンク(7)から燃料が無くなった状態になると、給油ポンプ(3)の駆動を自動停止させる構成としたことにより、給油タンク(7)から燃料が全て放出されると自動的に燃料の補給作業が終了されるため、作業者は燃料の補給作業中に休憩したり別の作業をしたりすることができるので、作業能率が向上すると共に作業者の労力が軽減される。
【0026】
また、給油ポンプ(3)が停止すると自動的に切替バルブ(5)が切り替わり、燃料タンク(2)からエンジン(1)に燃料が供給される供給回路(4)に変更されるので、機体を動かす際に切替スイッチ(8)等を操作する必要が無く、作業能率が向上する。
【0027】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、残量センサ(9)が、燃料タンク(2)が満タンになったことを検知すると給油ポンプ(3)を停止させる構成としたことにより、給油タンク(7)から燃料が全て放出されなくとも自動的に燃料の補充作業が終了されるため、作業者は補充作業中に休憩したり別の作業をしたりすることができるので、作業能率が向上すると共に作業者の労力が軽減される。
【0028】
また、燃料が燃料タンク(2)から溢れ出すことを防止できるので、燃料が無駄になることが防止されると共に、燃料が圃場に落下して土壌や水が汚染されることが防止される。
【0029】
さらに、給油ポンプ(3)が停止すると自動的に切替バルブ(5)が切り替わり、燃料タンク(2)からエンジン(1)に燃料が供給される補給回路(6)に変更されるので、機体を動かす際に切替スイッチ(8)等を操作する必要が無く、作業能率が向上する。
【0030】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、補給回路(6)の径を供給回路(6)の径よりも大径に構成したことにより、給油タンク(7)から燃料タンク(2)への燃料の供給量を多くすることができるので、燃料の補充にかかる時間が短くなり、作業能率が向上する。
【0031】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、切替スイッチ(8)を補給回路(6)側に切り替えると送油ポンプ(3)と切替バルブ(5)以外への電力供給を停止する構成としたことにより、燃料の補充作業中にバッテリの電圧が低下して燃料の補充能力が低下することを防止できるので、作業能率が向上する。
【0032】
そして、燃料の補充を終えて機体を移動させる際に、バッテリの電圧不足で機体が起動しなくなることを防止できるので、作業能率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】エンジンの燃料補給回路図
【図2】切替バルブの側断面図
【図3】エンジンの切替制御のブロック図
【図4】エンジンの切替制御のフローチャート
【図5】苗移植機の側面図
【図6】苗移植機の平面図
【図7】整地ロータ部の側面図
【図8】整地ロータ部の平面図
【図9】整地ロータの回転制御のブロック図
【図10】整地ロータの回転制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0034】
エンジン1が使用するガソリンや軽油等の燃料を貯留する燃料タンク2は、上側に注油口10、及びこのキャップ11を有し、該燃料タンク2の内部には、燃料の液面に浮かぶフロート形態の残量センサ9を有し、底部には燃料をエンジン1側へ供給する供給回路4を連通させる流出孔12を有し、天井部にはこの供給回路4の切替バルブ5の切替えによって還元回路14を経て還元補給可能の流入孔13を形成する。前記供給回路4には、電磁ソレノイドを有して切替えられる切替バルブ5、フィルター15、及びバッテリ16によって駆動される給油ポンプ3を配置し、この給油ポンプ3を駆動することによって、この供給回路4を経て燃料タンク2の燃料を、エンジン1の燃料供給部へ送込んで、エンジン1を駆動運転させる。
【0035】
前記供給回路4の切替バルブ5は、給油ポンプ3の上手側と、下手側の二箇所に補給バルブ5Aと還元バルブ5Bとして構成し、これらの切替バルブ5ハ切替スイッチ8の操作によって供給回路4を経てエンジン1に燃料を供給する供給状態と、補給回路6を経て燃料タンク2に燃料を補給する補給状態とに切替えるものである。該補給回路6は、前記供給回路4、切替バルブ5、還元回路14、及び給油タンク7から切替バルブ5部に臨ませる補給ホース17等から構成している。
【0036】
前記切替スイッチ8を操作して、切替バルブ5を補給回路6側に開通させる補給状態に切り替え、ポリタンク等からなる補給タンク7の注油口18にこの補給ホース17をセットする。そして、この給油ポンプ3を駆動することによって、補給タンク7の燃料を補給回路6を経由させて燃料タンク2に補給することができる。
【0037】
前記切替バルブ5のうち給油ポンプ3の上手側に位置する補給バルブ5Aは、図2のような三方向形態として、バルブケース20の上端に前記補給ホース17を連結する補給口21を有し、このバルブケース20の中筒部の前後に前記供給回路4を連結する供給口22と、この上手側の燃料タンク2の流出孔12に連通する給油口23を配置し、このバルブケース20内を電磁ソレノイドによってスプリング24に抗して上下作動されるバルブピストン25は、これら前後の供給口22と給油口23の間を連通可能の給油孔26を形成している。
【0038】
そして、該バルブピストン25がスプリング24でバルブケース20の上支点位置へ戻されると、補給口21が閉鎖して、供給口22との給油口23が給油孔26によって連通されて、供給状態となる。また、切替スイッチ8により前記バルブピストン25がスプリング24に抗して下動されると、この給油孔26がバルブケース20部によって閉鎖されて燃料タンク2側からの燃料供給を停止すると共に、前記バルブピストン25の上端面側の前記補給口21を供給回路4側の供給口22に連通させて補給回路6を形成し、補給タンク7からの燃料を流入案内することができる。
【0039】
さらに、前記切替バルブ5のうち、給油ポンプ3の下手側に位置する還元バルブ5Bは、この補給バルブ5Aと略同形態として、切替スイッチ8の操作により同期して切り替えられる。該還元バルブ5Bが補給状態に切替えれられることによって、給油ポンプ3の駆動によって供給回路4側から送られる燃料は、エンジン停止時のエンジン1側へは供給されないで、補給回路6を形成する還元回路14へ送られて、燃料タンク2へ補給される。
【0040】
従って、補給タンク7からの燃料を補給するときは、エンジン1を停止して駆動しない状態として行うのが通常であり、この供給回路4の燃料はエンジン1側の端部で停止されるので、還元バルブ5Bは常時エンジン1側へ開通していてもよく、あるいは還元回路14側へ開通していてもよい。
【0041】
上記形態とすれば環元バルブ5Bの切替は不要となり、常時開通される還元回路14は、補給回路6を形成する補給状態及び供給回路4を形成する供給状態において、供給燃料が多過ぎてオーバフローし兼ねない場合、給油ポンプ3に送られる燃料を該還元回路14を経て燃料タンク2に還元して流入させる。
【0042】
なお、切替バルブ5は少なくとも給油ポンプ3の上手側の補給バルブ5Aの切替形態と同じ形態に構成すればよく、下手側の還元バルブ5Bの切替構成を省略することができる。
【0043】
前記のようなエンジン1及び燃料タンク2等を、苗移植機の運転席30下のエンジンカバー31の下側に搭載した形態を示し、車体はステアリングハンドル32によって操向する前輪33と、前記エンジン1の駆動によってミッションケース34内等の伝動機構を介して走行伝動される後輪35を配置した四輪走行形態の乗用トラクタを構成し、この車体の後部には、多条植形態の苗の植付装置36を、リフトシリンダ37の伸縮によって昇降される平行リンク形態のリフトリンク38を介して連結している。
【0044】
該苗の植付装置36は、植付ケース39の下側にセンタフロート40及び左右一対のサイドフロート41,41を配置して土壌面を滑走支持する構成とし、上方には多数のマット苗を収容して左右方向へ往復移動しながら後端部の苗取出口42へ繰出す多条植形態の苗タンク43を設け、後端下部には、苗植付爪44を側面楕円形状の植付軌跡線Dに作動させて、前記苗取出口42から分離保持した苗を、センタフロート40及び左右のサイドフロート41,41で均平にした土壌面へ植付ける多条植の植付装置45を構成している。
【0045】
前記植付装置36の伝動は、前記車体側のエンジン1からPTO軸等を介して伝動される形態である。
また、前記植付装置36の前側にはセンタフロート40及び左右のサイドフロート41,41の前側に整地ロータ46が設けられており、前記センタフロート40及び左右のサイドフロート41,41が土壌面を均平して滑走する前に、該整地ロータ46が土の盛り上がりを鎮圧したり、藁屑や雑草の切れ端等の夾雑物を圃場に押し込みながら掻き均す構造となる。
【0046】
前記整地ロータ46の伝動は、前記後輪35を軸受けするリヤアクスルハウジング47の伝動機構部から連動軸48を介して伝動する。
また、車体後部のリヤフレーム49上部には施肥装置50を搭載して、施肥ホッパ51から繰出装置52によって繰出する肥料を、ブロワー53の送風によって各施肥ホース54を通して、各フロート40、41の均平跡土壌面へ施用案内するように構成している。これら繰出装置50や、ブロワー53等も車体側エンジン1によってPTO軸を介して伝動する。
【0047】
上記構成において、エンジン1と燃料タンク2との間を、給油ポンプ3を有する供給回路4を介して連通し、この供給回路4には切替バルブ5を介して燃料を給油可能の補給回路6を連結して、この切替バルブ5の切替操作により前記給油ポンプ3の駆動で給油タンク7からの燃料を補給可能に構成したことを特徴とする作業機の燃料補給装置の構成とする。
【0048】
前記燃料タンク2とエンジン1との間に設ける供給回路4の給油ポンプ3を駆動することによって、この燃料タンク2の燃料が供給回路4を経てエンジン1に供給されて、エンジン1を駆動させる。この燃料タンク2の燃料が減少し、燃料を補給する際には、補給用燃料を収容した給油タンク7を燃料タンク2の近くに載置し、前記補給回路6の給油ホースを給油タンク7にセットする。
【0049】
そして、前記切替バルブ5を供給回路4側から補給回路6側へ切り替え、前記給油ポンプ3を駆動することにより、前記給油タンク7から吸入する燃料を補給回路6を経由させて燃料タンク2に供給することができる。
【0050】
そして、前記切替バルブ5を操作する切替スイッチ8を、エンジン1の供給回路4側へ切替えると前記給油ポンプ3を低速駆動とし、補給回路6側へ切り替えると給油ポンプ3を高速回転とする構成とする。
【0051】
前記のように、切替バルブ5を供給回路4側へ切替えて、給油ポンプ3の駆動で燃料タンク2からエンジン1に燃料供給させることができ、又、この燃料タンク2に燃料を補給するときは、切替バルブ5を補給回路6側へ切替えて行わせるが、このような切替バルブ5の操作を行う切替スイッチ8の切替が供給回路4側へ行われると、前記給油ポンプ3の回転が低速回転に駆動されると共に、切替スイッチ8が補給回路6側へ切り替えられると給油ポンプ3の回転が高速回転に駆動される。
【0052】
上記のように、エンジン1の駆動時は、燃料の供給量は該エンジン1の駆動出力に対応する量に制限されて過度の吸入の発生が防止され、燃料噴射と燃焼が効率的に行なわれることにより、燃費を向上させることができると共に、大出力を要する旋回時等にパワー不足に陥ることを防止でき、圃場内の走行が効率的に行なわれる。
【0053】
また、燃料補給時は、前記エンジン1の駆動力とは関係なく大量の燃料が燃料タンク2内に供給される構成としたことにより、燃料の補給作業に要する時間が短縮できるので、作業能率が向上する。
【0054】
また、前記給油ポンプ3による給油の継続を給油ポンプ3に内装する気泡検知センサ(図示省略)で検出し、切替スイッチ8が補給回路6側に切り替えられた状態で気泡検知センサが気泡の進入を検知すると、前記補給ポンプ3を停止させる共に、切替バルブ5を供給回路4側へ切り替える制御構成とする。給油タンク7の燃料が極僅かになると、給油ポンプ3は燃料と共に給油タンク7内の空気を吸入するため、給油ポンプ3内を気泡が通過するので、これにより気泡検知センサで給油タンク7の燃料が全て吸い上げられたことを検知できるのである。
【0055】
前記のように、切替スイッチ8を操作して切替バルブ5を補給回路6側へ切り替えて燃料の補給状態とした際に、この補給タンク7の燃料が無くなったことを検知すると、自動的に給油ポンプ3の駆動を停止し、前記切替バルブ5を供給回路4側へ自動的に切り替える構成としたことにより、給油タンク7から燃料が全て放出されると自動的に燃料の補給作業が終了されるため、作業者は燃料の補給作業中に休憩したり別の作業をしたりすることができるので、作業能率が向上すると共に作業者の労力が軽減される。
【0056】
また、給油ポンプ3が停止すると自動的に切替バルブ5が切り替わり、燃料タンク2からエンジン1に燃料が供給される供給回路4に変更されるので、機体を動かす際に切替スイッチ8等を操作する必要が無く、作業能率が向上する。
【0057】
さらに、前記燃料タンク2の内部に、燃料の液面に常に浮き続け、液面の上下に対応して上下回動することによって燃料タンク2内の燃料残量を検出する残量センサ9を設け、前記切替スイッチ8を操作して補給回路6側を開通させた補給状態としており、且つ前記残量センサ9が燃料タンク2の上面(蓋部)に接近あるいは接触した状態、即ち満量(満タン)状態を検出すると、燃料が満タンまで供給されたと判断し、給油ポンプ3の駆動を停止すると共に切替バルブ5を供給回路4側に切り替えて供給状態に切替制御する構成とした。
【0058】
前記燃料タンク2には、補給回路6から燃料補給が行われ、この燃料タンク2の燃料は供給回路4を経てエンジン1へ供給される。この燃料タンク2では残量センサ9によって燃料の残量が検出されていて、前記切替スイッチ8が補給状態で、かつこの残量センサ9が満量状態を検出することによって、給油ポンプ3を停止すると共に、切替バルブ5を供給状態に切替える。即ち、燃料タンク2への燃料補給状態時に、この燃料タンク2が満量になると、残量センサ9の検出によって、給油ポンプ3が停止されると共に、切替バルブ5が供給状態に切替えられて、エンジン1の駆動開始しうる状態となる。
【0059】
また、前記補給回路6の管径D2を、供給回路4の管径D1よりも大径に形成する。
上記構成により、燃料タンク2からエンジン1にわたる供給回路4の切替バルブ5を切り替えることにより、補給タンク7の燃料を燃料タンク2に補給する補給回路6に切り替わるが、該補給回路6の管径D2は供給回路4の管径D1よりも大径に形成されているので、補給燃料の量が多くなっても流量抵抗が上がりにくく、短時間で補給作業が行われるため、作業能率が向上する。
【0060】
そして、前記切替バルブ5を操作する切替スイッチ8を補給回路6側に操作すると、前記給油ポンプ3及び切替バルブ5以外への通電を停止する構成とする。
上記構成により、エンジン1を起動できない燃料の補給作業中に、燃料補給に必要な給油ポンプ3及び切替バルブ5にのみ電力が供給されるので、ヘッドライトや施肥装置50のブロワー53のスイッチを切り忘れていても、そちら側には電力が供給されないため、燃料給油作業中にバッテリの電圧が低下して作業再開時に機体が始動しなくなることが防止されるため、バッテリを充電し直す必要が無くなり、作業能率が向上する。
【0061】
前記切替バルブ5等を出力作動するコントローラ27の入力側には、切替スイッチ8や残量センサ9等を設け、この出力側には、この切替バルブ5を電磁的に作動するソレノイドや、各作業部の電源スイッチ28等を設ける。この作業部としては、前記施肥装置50のブロワー53を、PTO軸による駆動に代えて電動モータによって駆動回転する形態とする場合においては、このブロワー53や、作業機のヘッドライト等の電動部における電源スイッチ28が設けられる。
【0062】
作業機のキースイッチをONして、切替スイッチ8を「運転」位置にする(ステップS1)と、切替バルブ5が「運転」位置に切替えられて、供給回路4を開通する供給状態に作動し、この供給回路4の給油ポンプ3をバッテリ16からの電源によって低速域で電動回転して、燃料タンク2の燃料をこの供給回路4を通してエンジン1へ供給する。このときの供給燃料量は、作業機及びエンジン1を運転することに必要な量に設定される。
【0063】
また、前記切替スイッチ8を「給油」位置へする(S2)と、切替バルブ5が「給油」位置に切替えられて、補給回路6を開通する補給状態に作動されて、この補給回路6の給油ポンプ3をバッテリ16からの電源によって比較的高速域で電動回転して、補給タンク7の燃料をこの供給回路4の一部を共用して構成の補給回路6を通して燃料タンク2へ補給する。このときの補給燃料の流量は前記給油ポンプ3の高速回転によって多量であるから、補給時間を短縮し、作業能率を向上させることができる。
【0064】
そして、切替バルブ5が補給回路6側に切り替えられ、給油ポンプ3の駆動によって燃料補給が行われるときは、補給タンク7の燃料が減少して、燃料切れになると補給回路6内にエア(空気)が吸込まれることがある。給油ポンプ3がこのエアを吸入すると(S3)、これによって切替スイッチ8をコントローラ27からの出力によって「補給」位置から「運転」位置へ自動的に切替えて、切替バルブ5を供給回路4側へ切替制御することにより、作業機運転操作を待つ態勢となる。
【0065】
また、前記給油ポンプ3の駆動による燃料補給状態のとき、補給回路6にエアが吸込まれないで、そのまま燃料タンク2への補給が正常に行われているときは(S4)、この燃料タンク2が満量になるまで補給作用が継続される。そして、この燃料タンク2の残量センサ9が一定量(満量)以上の補給を検出すると(S5)、コントローラ2切替スイッチ8を「運転」位置へ切替えて、切替バルブ5を供給回路4へ切替えて、続く作業機運転操作を待つ。
【0066】
さらに、このとき残量センサ9が検出する残量が一定量(満量)以下であるときは(S6)、切替バルブ5は供給回路4へ切替えられないで、補給回路6を開通した補給状態を維持して燃料タンク2への補給作用を継続するものである。
【0067】
次に、図7、図8に示すように、前記センターフロート40及び左右のサイドフロート41,41の前側に配置する整地ロータ46の構成を、ロータ軸60周りに配置の代掻ラグ61が、この代掻回転による土壌面との間の代掻抵抗によってスプリング62に抗して移動退避しうる形態で、この整地ロータ46の過負荷による破損を防止する。
【0068】
該代掻ラグ61は、案内ピン64を有し他ラグアーム63を設けて、前記ロータ軸60の周りに固定配置のディスク65に形成の案内溝66に、前記案内ピン64を係合させて案内することができる。
【0069】
該案内溝66は回転方向に沿って円弧状に形成され、この案内溝66の終端部をロータ軸60側へ向けて屈曲67させている。スプリング62はこの各ラグアーム63とディスク65との間に引張圧されて、このラグアーム63の案内ピン64部をこの整地ロータ46の回転方向A側へ引っ張り、案内溝66の屈曲部67側とは反対側へ常時移動するようにスプリング62付勢している。
【0070】
通常の代掻作用時は、各代掻ラグ61は外周部に突出した状態Bにあって代掻作用を効果的に行うが、この代掻抵抗が大きくなると、スプリング62に抗して案内ピン64が案内溝66の屈曲部67へ案内移動されて、突出状態Bの代掻ラグ61をロータ軸60側へ引き込ませてC、代掻抵抗を小さくするようになり、この代掻ラグ61の過負荷を軽減して、整地ロータ46の浮上や、破損等を防止する。
【0071】
また、この代掻過負荷が小さくなるとスプリング62により元の状態Bに復帰する。
そして、図9、図10に示すように、前記整地ロータ46の駆動回転数を、この整地ロータ46に働く圧力を圧力センサ68によって検出しながら、変更制御するもので、代掻抵抗力が大きくなると、整地ロータ46の回転を上げて、この抵抗に打ち勝たせることによって、この整地ロータ46の浮上りや、破損を防止する。69はコントローラであり、圧力センサ68の検出によって前記連動軸48を出力するリヤアクスルハウジング47内の伝動機構70を、高速及び低速に切り替えて、整地ロータ46の回転数を変更するものである。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン
2 燃料タンク
3 給油ポンプ
4 供給回路
5 切替バルブ
6 補給回路
7 給油タンク
8 切替スイッチ
9 残量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(1)と燃料タンク(2)を給油ポンプ(3)を有する供給回路(4)で連結し、該供給回路(4)には切替バルブ(5)を介して燃料を供給する補給回路(6)を連結して、該切替バルブ(5)を切替操作すると前記給油ポンプ(3)の駆動で給油タンク(7)からの燃料を補給可能に構成したことを特徴とする作業機の燃料補給装置。
【請求項2】
前記切替バルブ(5)を操作する切替スイッチ(8)を、エンジン(1)の供給回路(4)側へ切替操作すると前記給油ポンプ(3)が低速回転に切り替わると共に、補給回路(6)側へ切替操作すると前記給油ポンプ(3)を高速回転に切り替わる構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業機の燃料補給装置。
【請求項3】
前記給油ポンプ(3)による給油を検出し、且つ切替スイッチ(8)の補給回路(6)側への切替時に給油が途切れたことを検出すると、前記補給ポンプ(3)を停止すると共に、切替バルブ(5)を供給回路(4)側へ切替制御することを特徴とする請求項1または2記載の作業機の燃料補給装置。
【請求項4】
前記燃料タンク(2)に燃料残量を検出する残量センサ(9)を設け、前記切替スイッチ(8)が補給回路(6)側を開通する補給状態で、且つ該残量センサ(9)が満量状態を検出すると、給油ポンプ(3)を停止すると共に、切替バルブ(5)を供給回路(4)側を開通する供給状態に切替制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の作業機の燃料補給装置。
【請求項5】
前記補給回路(6)の管径(D2)を、供給回路(4)の管径(D1)よりも大径に形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の作業機の燃料補給装置。
【請求項6】
前記切替バルブ(5)を操作する切替スイッチ(8)を補給状態に操作すると、前記給油ポンプ(3)及び切替バルブ(5)以外への通電を停止することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の作業機の燃料補給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−96580(P2012−96580A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243774(P2010−243774)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】