説明

作業車両

【課題】減速比を大きくできてエンジンの出力軸の回転数が高い場合でも作業機に適合する回転数が容易に得られるPTO減速機構を備える作業車両を提供することを目的とする。
【解決手段】エンジン7の出力軸7aの動力がPTO減速機構26で減速されてPTO軸27を介して耕耘装置2に伝達される耕耘機100であって、PTO減速機構26は、出力軸7aとPTO軸27との間に配設される減速入力軸35と、出力軸7aの動力を減速入力軸35に伝達するベルト式伝達機構33と、減速入力軸35の動力を減速してPTO軸27に伝達する減速ギヤ列39を内装した減速ギヤケース34と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力軸の動力がPTO減速機構で減速されてPTO軸を介して作業機に伝達される作業車両の技術に関し、より詳細には、PTO減速機構の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用耕耘機等の作業車両では、エンジンの出力軸の動力がPTO減速機構で減速されて作業機に適合する回転数とされた後、PTO軸に伝達されて耕耘装置等の作業機が駆動されるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−324904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の作業車両では、PTO減速機構がプーリとベルトを用いたベルト式で構成されている。ベルト式の場合、出力軸とPTO軸との軸間距離を長くしてプーリ径の差を大きくすることにより減速比を大きくすることができるが、該軸間距離を長くすることには作業車両のスペース的に一定の限度がある。このため、エンジンの出力軸の回転数が低い範囲では作業機に適合する回転数を得ることができても、回転数が所定の範囲よりも高くなると作業機に適合する回転数を得ることが困難であった。
【0004】
本発明は以上の状況に鑑み、減速比を大きくできてエンジンの出力軸の回転数が高い場合でも作業機に適合する回転数が容易に得られるPTO減速機構を備える作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上のとおりであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
すなわち、請求項1においては、エンジンの出力軸の動力がPTO減速機構で減速されてPTO軸を介して作業機に伝達される作業車両であって、前記PTO減速機構は、前記出力軸と前記PTO軸との間に配設される減速入力軸と、該出力軸の動力を該減速入力軸に伝達するベルト式伝達機構と、前記減速入力軸の動力を減速して前記PTO軸に伝達する減速機構を内装した減速ケースと、を備えるものである。
【0007】
請求項2においては、前記減速ケースは、前記PTO軸の軸回りに回動可能に取り付けられ、該減速ケースが回動することにより、前記ベルト式伝達機構における前記出力軸と前記減速入力軸との軸間距離が変更されるものである。
【0008】
請求項3においては、前記減速ケースは、前記PTO軸に着脱可能に取り付けられるものである。
【0009】
請求項4においては、前記減速ケースは、側面視において前記PTO軸の軸回りに前傾姿勢で取り付けられるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、PTO減速機構をベルト式伝達機構と減速ケースとで構成することにより、ベルト式伝達機構のみで減速するよりも減速比を大きくできて、エンジンの出力軸の回転数が高い場合でも作業機に適合する回転数が容易に得られる。
【0012】
請求項2においては、減速ケースを回動させて出力軸と減速入力軸との軸間距離を変更することにより、ベルト式伝達機構の減速比を変更して作業機に適合する回転数が容易に得られる。
【0013】
請求項3においては、減速比の異なる減速ケースと交換することにより、作業機に適合する回転数が容易に得られるとともに、メンテナンスも容易である。
【0014】
請求項4においては、減速ケースが前傾姿勢となって減速ケースの減速入力軸側が機体前方に退避することにより、作業機が上昇する場合に作業機が減速ケースに当たるのを防止して作業機を高く持ち上げることができるため、作業車両の旋回時に作業機が畦等と接触することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は作業車両を示した側面図、図2はPTO減速機構を示した側面図、図3は減速ケースの内部構造を示した断面図、図4は軸受けパイプのフランジ部を示した側面図、図5はベルト式伝達機構の出力軸と減速入力軸との軸間距離が変化する状態を示した側面図、図6は上昇した耕耘機と減速ケースとの位置関係を示した側面図、図7はクローラ式走行装置及び耕耘装置の駆動構成を示したスケルトン図、図8は(a)クラッチ「入」位置におけるストップアーム示した側面図(b)クラッチ「切」位置におけるストップアームを示した側面図、図9は第一の変形例に係る減速ケースの駆動構成を示したスケルトン図、図10は第二の変形例に係る減速ケースの駆動構成を示したスケルトン図である。
【0016】
先ず、作業車両である耕耘機100の全体構成について、図1を用いて説明する。
図1に示すように、耕耘機100は、走行車両1の後部に作業機昇降装置3を介して作業機である耕耘装置2が装着された乗用耕耘機である。なお、以下の説明では、便宜上図1に示す矢印Aの方向を「前方」と規定する。また、本実施例においては、作業車両として乗用耕耘機を例として説明するが、作業車両は乗用耕耘機に限定するものではない。
【0017】
走行車両1では、左右一対のクローラ式走行装置4・4の左右間に機体フレーム5が配設されている。機体フレーム5上の前部には運転部6が配設され、機体フレーム5上の後部にはトランスミッション8が配設され、該トランスミッション8の上部で運転部6(座席24)の後側には、図示しない支持装置(防振装置等)を介して耕耘機100の駆動源であるエンジン7が車体カバー25で覆われて配設されている。なお、走行車両1の走行装置はクローラ式に限らず、タイヤ式であってもよい。
【0018】
クローラ式走行装置4は、駆動輪13、従動輪11・12、転動輪14・14・14にクローラベルト15が巻回されて、走行車両1を走行可能に構成している。
クローラ式走行装置4では、走行フレーム9が機体前後方向に延設され、該走行フレーム9の前端部にはアイドラフォーク10を介して従動輪(前側従動輪)11が回動可能に支持され、走行フレーム9の後端部には従動輪(後側従動輪)12が回動可能に支持されている。走行フレーム9の前側従動輪11と後側従動輪12との前後間には、転動輪14・14・14が回動可能に支持されている。走行フレーム9の後部には支持フレーム16が立設され、該支持フレーム16の上部には前記トランスミッション8から機体左右側方に突出する駆動軸8aが回動可能に支持されている。駆動軸8aの端部には駆動輪13が固定されている。
【0019】
機体フレーム5は、平面視において略矩形枠状に形成されたフレーム(図符号無し)にガードフレーム20が架設されて、走行車両1の構造体を構成している。ガードフレーム20は、丸パイプが折曲されて平面視において後方開口略コ字状、側面視において前低後高に傾斜して形成されている。
【0020】
運転部6では、前記ガードフレーム20の前端部にステップ21が形成され、該ステップ21にハンドルコラム22が立設されている。ハンドルコラム22には、支軸(図符号無し)を介してステアリングハンドル23が取り付けられている。ステアリングハンドル23の後方には座席24が配設されている。座席24の側部には主・副変速レバー(図符号無し)、PTOクラッチレバー45(図2参照)等のレバー類が配設されている。
【0021】
エンジン7は、機体側方(本実施例では左方)に突出して動力を出力する出力軸7a(カム軸あるいはクランク軸)を有している。エンジン7の出力軸7aの動力は、伝達機構31を介してトランスミッション8の伝達軸8bに伝達されるとともに、PTO減速機構26(ベルト式伝達機構33、減速ギヤケース34)を介してPTO軸27に伝達されるように構成されている。
【0022】
伝達機構31は、出力軸7a上に固定されている出力プーリ28と、伝達軸8b上に固定されている入力プーリ30と、該出力プーリ28と入力プーリ30とに巻回されているベルト32と、を備えて動力伝達可能に構成されている。
【0023】
PTO軸27は、耕耘装置2を駆動するためのエンジン7の動力を取り出す軸である。PTO軸27は、機体左右方向を軸方向として機体フレーム5の後部に配設されている軸受けパイプ56(図3参照)に回転可能に内設されている。
【0024】
トランスミッション8は、機体側方(本実施例では左方)に突出してエンジン7の動力が伝達される伝達軸8bを有し、該伝達軸8bの動力を前記駆動軸8aに伝達するように構成されている。
【0025】
作業機昇降装置3は、前記軸受けパイプ56(図3参照)に回動可能に支持される昇降アーム57と、該昇降アーム57と前記ガードフレーム20の後部との間に介設されている油圧シリンダ58と、を備えている。昇降アーム57の後部には、耕耘装置2が装着されるヒッチ60が設けられている。
作業機昇降装置3では、座席24近傍に配設されたポジションレバー(図示省略)の操作により、昇降バルブ(図示省略)が切り換えられて油圧ポンプ59(図7参照)からの圧油が油圧シリンダ58に送油されると、油圧シリンダ58が伸縮作動して昇降アーム57がPTO軸27の軸回りに回動して昇降するように構成されている。
【0026】
耕耘装置2は、機体左右方向を軸方向とする耕耘軸61と、該耕耘軸61の軸方向に所定の間隔で植設されている複数の耕耘爪62・62・・・と、該耕耘爪62・62・・・を覆うカバー76と、を備えている。
耕耘装置2では、耕耘軸61とPTO軸27との間に機体左右方向を軸方向とする入力軸63が配設されており、PTO軸27の動力が第一チェーンケース64(図7参照)、入力軸63、第二チェーンケース68を介して耕耘軸61に伝達されて複数の耕耘爪62・62・・・が駆動されるように構成されている。
【0027】
次に、PTO減速機構26について、図2及び図3を加えて説明する。
図2に示すように、PTO減速機構26は、出力軸7aとPTO軸27との間に配設される減速入力軸35と、出力軸7aの動力を減速して減速入力軸35に伝達するベルト式伝達機構33と、減速入力軸35の動力をさらに減速してPTO軸27に伝達する減速機構である減速ギヤ列39を内装した減速ケースである減速ギヤケース34と、を備えている。
【0028】
ベルト式伝達機構33は、出力軸7a上に固定されている出力プーリ36と、減速入力軸35上の右端部に固定されている入力プーリ37と、出力プーリ36と入力プーリ37とに巻回されているベルト38と、を備え、出力軸7aの動力を減速して減速入力軸35に伝達するように構成されている。ベルト式伝達機構33は、クラッチ機構42を備え、出力軸7aの動力を減速入力軸35に伝達あるいは遮断するように構成されている。
なお、本実施例に係るベルト式伝達機構33は、出力軸7aの動力を減速して減速入力軸35に伝達する構成であるが、出力軸7aの動力を等速で減速入力軸35に伝達する構成でもよい。
【0029】
減速ギヤケース34は、減速入力軸35とPTO軸27との間に介設されている減速ギヤ列39と、該減速ギヤ列39を内装するケース40と、を備え、減速入力軸35の動力を減速ギヤ列39でさらに減速してからPTO軸27に伝達するように構成されている。
【0030】
図3に示すように、ケース40は、左右半割ケース40L・40Rがボルト(図符号無し)で結合されて構成されている。
減速ギヤケース34の長手方向の一側(図3において上側)には、減速入力軸35の左端部が軸受け35a・35aを介してケース40に回転可能に支持されている。減速入力軸35の右端部にはスプライン部が形成され、該スプライン部に入力プーリ37が相対回転不能に嵌合されてボルト37a等で固定されている。ここでは、入力プーリ37が固定された減速入力軸35と、減速ギヤケース34とで一体的なユニットを構成している。
また、減速ギヤケース34の長手方向の他側(図3において下側)には、PTO軸27の左端部が軸受け27a・27aを介してケース40に回転可能に支持されている。
【0031】
減速ギヤ列39は、減速入力軸35上の左端部に固定されている駆動ギヤ39aと、PTO軸27上の左端部に固定されている従動ギヤ39bと、駆動ギヤ39aと従動ギヤ39bとに噛合するアイドルギヤ39cと、を備えている。従動ギヤ39bは、軸受けパイプ56の左側部から突出するPTO軸27上の左端部に形成されたスプライン部に相対回転不能に嵌合されている。アイドルギヤ39cは、アイドル軸41上に形成されたスプライン部に相対回転不能に嵌合されている。アイドル軸41は、軸受け41a・41aを介してケース40に回転可能に支持されている。
【0032】
次に、減速ギヤケース34を軸受けパイプ56に取り付ける構成について、図4から図6を加えて説明する。
図4に示すように、軸受けパイプ56は、PTO軸27を回転可能に内設する側面視円形状のパイプ部材である。軸受けパイプ56上の左端部には、減速ギヤケース34のケース40が取り付けられるフランジ部56aが固設されている。
フランジ部56aは、側面視円形状の鍔部である。フランジ部56aには、側面視同一円周(半径)上に等間隔で、所定の周長を有する複数(本実施例では四つ)の長孔56b・56b・・・が穿設されている。
【0033】
一方、図3に戻って減速ギヤケース34側では、フランジ部56aと対向するケース40Rの右側面に、軸受けパイプ56に取り付けられる取付部40bが形成されている。
取付部40bは、軸受けパイプ56の内周に嵌合する側面視円形状の凸部と、該凸部の周囲でフランジ部56aに面する側面視ドーナッツ状の取付面と、を有している。取付部40bの取付面上には、前記長孔56b・56b・・・の位置に合わせて側面視同一円周(半径)上に、長孔56b・56b・・・と同数(本実施例では四つ)のボルト72・72・・・が埋め込み固定されて右方に突出している。
【0034】
このような構成により、減速ギヤケース34(減速入力軸35及び入力プーリ37を含む前記ユニット)は、次のようにして軸受けパイプ56及びPTO軸27に取り付けられる。
減速ギヤケース34では、従動ギヤ39bにPTO軸27の左端部(スプライン部)が嵌入されることにより、従動ギヤ39bがPTO軸27に相対回転不能に嵌合される。そして、取付部40bの凸部が軸受けパイプ56の内周に嵌合することにより、減速ギヤケース34がPTO軸27及び軸受けパイプ56にPTO軸27の軸回りに回動可能に支持される。
そして、フランジ部56aの長孔56b・56b・・・にボルト72・72・・・を挿入してナット78・78・・・で締め付け固定することにより、減速ギヤケース34が軸受けパイプ56に固定される。この時、ナット78・78・・・を緩めた状態では、図5に示すように長孔56b・56b・・・の周長の範囲で、減速ギヤケース34をPTO軸27の軸回りに回動させることができる。こうして、ベルト式伝達機構33における出力軸7aと減速入力軸35との軸間距離Lが変更されることにより、出力プーリ36及び入力プーリ37の有効径が変更されてベルト式伝達機構33の減速比が変更される。
【0035】
ここで、減速入力軸35上の入力プーリ37を交換して減速比を変更する場合、入力プーリ37の交換に伴うベルト長の変更によりベルト38の交換が必要となるためコストアップとなる。また、テンションアーム44の回動範囲を変更して減速比を変更する場合、後述するリンク長を変更することになるため同様にコストアップとなる。
これに対して、本発明のように軸間距離Lを変更して減速比を変更する場合、ベルト38の交換や前記リンク長の変更の必要がないためコストアップとならない。また、ナット78・78・・・を外すことにより、減速ギヤケース34を軸受けパイプ56から容易に取り外すこともできる。つまり、減速ギヤケース34を軸受けパイプ56(PTO軸27)に容易に着脱できる構成となっている。
【0036】
また、減速ギヤケース34は、側面視においてPTO軸27の軸回りに前傾姿勢で取り付けられている。
図6に示すように、減速ギヤケース34は、側面視において中心線X(減速入力軸35とPTO軸27とを結ぶ線)がPTO軸27の軸回りに鉛直線から機体前方向に角度θ傾斜して取り付けられている。減速ギヤケース34では、減速入力軸35が走行車両1の後面77よりも前方に位置している。
このような構成により、減速ギヤケース34が前傾姿勢となって減速ギヤケース34の上部(減速入力軸35側)が機体前方に退避する。これにより、耕耘装置2を上昇させた時に耕耘装置2(カバー76等)の前部が減速ギヤケース34に当たるのを防止して耕耘装置2を高く持ち上げることができるため、耕耘機100の旋回時に耕耘装置2が畦等と接触することを防止できる。
【0037】
次に、クローラ式走行装置4・4及び耕耘装置2の駆動構成について、図7を加えて説明する。
図7に示すように、クローラ式走行装置4・4側へはエンジン7の動力が出力軸7a、伝達機構31(出力プーリ28、ベルト32、入力プーリ30)、伝達軸8bを介して、トランスミッション8に伝達される。トランスミッション8では、内部に備える図示しない主変速機、副変速機により伝達軸8bの動力を変速して駆動軸8a・8aに伝達するとともに、前後進クラッチにより駆動軸8a・8aの回転方向を切り替えるようになっている。また、伝達軸8bの右端部には前記油圧シリンダ58を伸縮作動するための油圧ポンプ59のポンプ軸59aが動力伝達可能に連結されている。
そして、駆動軸8a・8aの動力が駆動輪13・13、クローラベルト15等に伝達されて、クローラ式走行装置4・4が駆動される。
【0038】
次に、耕耘装置2側へはエンジン7の動力が出力軸7a、ベルト式伝達機構33(出力プーリ36、ベルト38、入力プーリ37)、減速入力軸35、減速ギヤケース34の減速ギヤ列39(駆動ギヤ39a、アイドルギヤ39c、従動ギヤ39b)を介してPTO軸27に伝達される。
そして、PTO軸27の動力が第一チェーンケース64内の駆動スプロケット65、チェーン67、従動スプロケット66から入力軸63に伝達され、該入力軸63の動力が第二チェーンケース68内の駆動スプロケット69、チェーン71、従動スプロケット70から耕耘軸61に伝達され、該耕耘軸61の動力が耕耘爪62・62・・・に伝達されて、耕耘装置2が駆動される。
【0039】
第一チェーンケース64は、PTO軸27上の右端部に固定されている駆動スプロケット65と、入力軸63上の右端部に固定されている従動スプロケット66と、駆動スプロケット65と従動スプロケット66とに巻回されているチェーン67と、を備える動力伝達手段を内装して動力伝達可能に構成されている。
【0040】
第二チェーンケース68は、入力軸63上の左端部に固定されている駆動スプロケット69と、耕耘軸61上の中央部に固定されている従動スプロケット70と、駆動スプロケット69と従動スプロケット70とに巻回されているチェーン71と、を備える動力伝達手段を内装して動力伝達可能に構成されている。
【0041】
次に、ベルト式伝達機構33のクラッチ機構42について、図8を加えて説明する。
ここで、図2に戻ってクラッチ機構42は、テンションローラ43を有するテンションアーム44と、PTOクラッチレバー45の操作によりテンションアーム44を揺動するリンク機構46と、を備えている。
【0042】
テンションアーム44は、ベルト38の下方で機体左右方向を軸方向とするアーム軸44aに一端部が回動可能に支持されている。テンションアーム44の他端部には、ベルト38に張力を付与するテンションローラ43が回動自在に支持されており、該テンションローラ43がベルト38の下面に当接するように構成されている。
【0043】
リンク機構46は、PTOクラッチレバー45とテンションアーム44との間に介設されている。リンク機構46は、PTOクラッチレバー45が操作されるとテンションアーム44を揺動するように構成されている。PTOクラッチレバー45の基部は、機体左右方向を軸方向とするレバー軸45aに回動可能に支持されている。
【0044】
リンク機構46では、リンクアーム48の一端部がテンションアーム44の端部に固定されてアーム軸44aに回動可能に支持されている。アーム軸44aと前記レバー軸45aとの間には、機体左右方向を軸方向とするリンク軸49が配設されている。
リンク軸49には、リンクアーム50及びリンクアーム51の一端部が回動可能に支持されており、該リンクアーム50の他端部と前記リンクアーム48の他端部とには、テンションスプリング47の端部がそれぞれ係止されている。
【0045】
また、図8(a)にも示すように、前記レバー軸45aには、ステー54の一端部が回動可能に支持されているとともに、リンクアーム53の一端部がPTOクラッチレバー45の基部に固定されてレバー軸45aに回動可能に支持されている。リンクアーム53の他端部と前記リンクアーム51の他端部とには、側面視ブーメラン状のテンションレバー52の端部がそれぞれ回動可能に取り付けられている。
【0046】
そして、前記リンクアーム53には、フック55の一端部が回動可能に取り付けられている。フック55は、捩りバネ(図示省略)により側面視反時計回り方向に付勢されている。フック55の他端部には、ステー54の先端において突出する係止ピン54aに係止可能な係止溝55aが形成されている。そして、リンクアーム53とステー54とが捩りバネ(図示省略)により互いに接近するように付勢されて、フック55(係止溝55a)がステー54(係止ピン54a)に係止されるようになっている。
【0047】
このような構成により、PTOクラッチレバー45が図2に示すクラッチ「切」位置からクラッチ「入」位置に回動されると、リンクアーム53が側面視反時計回りに回動されて、テンションレバー52及びテンションスプリング47が前方に引っ張られる。PTOクラッチレバー45(ステー54)は、支点越えとなってクラッチ「入」位置で保持される。
そして、テンションスプリング47が前方に引っ張られると、リンクアーム48及びテンションアーム44が側面視時計回りに回動されて、テンションローラ43がベルト38に張力を付与してベルト式伝達機構33が動力伝達状態となり、出力軸7aの動力がPTO軸27に伝達される。
【0048】
次に、PTOクラッチレバー45がクラッチ「入」位置からクラッチ「切」位置に回動されると、上記と反対の動作によりテンションアーム44が側面視反時計回りに回動されてテンションローラ43が付与するベルト38への張力が解消されてベルト式伝達機構33が動力遮断状態となり、出力軸7aからPTO軸27への動力が遮断される。
【0049】
ここで、図8(a)にも示すように、フック55の先端部には、ストップピン55bが左方に突設されているとともに、PTOクラッチレバー45の基部付近の機体側には該ストップピン55bの下側に当接するストップアーム73が回動可能に設けられている。ストップアーム73には、ストップワイヤー74を介して運転部6のステップ21上に配設されるクラッチペダル75が連動連結されている。
ストップアーム73は、側面視略L字状に形成された板状部材であって、一端部が機体左右方向を軸方向とするアーム軸73aに回動可能に支持されている。ストップアーム73の折曲部には、ストップワイヤー74の一端部が取り付けられている。
クラッチペダル75は、基部が機体左右方向を軸方向とするペダル軸75aに回動可能に支持されている。ペダル軸75aには、ペダルアーム75bの一端部が固定されており、該ペダルアーム75bの他端部には、ストップワイヤー74の他端部が取り付けられている。また、クラッチペダル75は、図示しない走行部のクラッチとも連動連結されている。
【0050】
そして、出力軸7aからPTO軸27へ動力が伝達されている状態において、クラッチペダル75を踏み込むことにより該動力を緊急的に遮断することができる。
具体的には、クラッチペダル75を踏み込むと、ペダル軸75a、ペダルアーム75bを介して、ストップワイヤー74が前方に引っ張られる。
そして、ストップワイヤー74が前方に引っ張られると、ストップアーム73は、先端部がフック55のストップピン55bに当接した状態でアーム軸73aを軸として側面視時計回り(図8(a)から図8(b)に示す状態)に回動し、これにより、フック55は係止ピン54aから外れる。
この時、テンションレバー52が支点越えとなっていないため、リンクアーム53及びPTOクラッチレバー45は、テンションスプリング47の付勢力によりレバー軸45aを中心に回動して、クラッチ「入」位置からクラッチ「切」位置に回動される。なお、係止ピン54aから外れたフック55は、前記捩りバネ(図示省略)の付勢力により再び係止ピン54aに係止される。
こうして、前述のようにしてベルト式伝達機構33が動力遮断状態となり、出力軸7aからPTO軸27へ動力が遮断される。なお、リンクアーム53が回動されると、該リンクアーム53とステー54の間に介装した前記捩りバネの付勢力により、ステー54がクラッチ「切」位置に回動されるようになっている。
【0051】
以上のように、耕耘機100は、エンジン7の出力軸7aの動力がPTO減速機構26で減速されてPTO軸27を介して耕耘装置2に伝達される作業車両であって、PTO減速機構26は、出力軸7aとPTO軸27との間に配設される減速入力軸35と、出力軸7aの動力を減速入力軸35に伝達するベルト式伝達機構33と、減速入力軸35の動力を減速してPTO軸27に伝達する減速ギヤ列39を内装した減速ギヤケース34と、を備えるものである。
このような構成により、PTO減速機構26をベルト式伝達機構33のみで減速するよりも減速比を大きくできて、エンジン7の出力軸7aの回転数が高い場合でも耕耘装置2に適合する回転数が容易に得られる。
【0052】
そして、減速ギヤケース34は、PTO軸27の軸回りに回動可能に取り付けられ、減速ギヤケース34が回動することにより、ベルト式伝達機構33における出力軸7aと減速入力軸35との軸間距離Lが変更されるものである。
このような構成により、減速ギヤケース34を回動させて出力軸7aと減速入力軸35との軸間距離Lを変更して出力プーリ36及び入力プーリ37の有効径を変更できるため、ベルト式伝達機構33の減速比を変更して耕耘装置2に適合する回転数が容易に得られる。
【0053】
また、減速ギヤケース34は、PTO軸27に着脱可能に取り付けられるものである。
このような構成により、減速ギヤケース34を減速比の異なる減速ギヤケースと交換することにより、耕耘装置2に適合する回転数が容易に得られるとともに、メンテナンスも容易である。
【0054】
そして、減速ギヤケース34は、側面視においてPTO軸27の軸回りに前傾姿勢で取り付けられるものである。
このような構成により、減速ギヤケース34が前傾姿勢となって減速ギヤケース34の減速入力軸35側が機体前方に退避することにより、耕耘装置2が上昇する場合に耕耘装置2が減速ギヤケース34に当たるのを防止して耕耘装置2を高く持ち上げることができるため、耕耘機100の旋回時に耕耘装置2が畦等と接触することを防止できる。
【0055】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように変更してもよい。
例えば、図9に示す第一の変形例に係る減速ギヤケース134のように、エンジン7の出力軸7aの回転方向によっては、減速機構をアイドルギヤを用いない減速ギヤ列139で構成することもできる。減速ギヤ列139は、駆動ギヤ139aと、該駆動ギヤ139aに噛合する従動ギヤ39bと、を備えて構成されている。
【0056】
また、図10に示す第二の変形例に係る減速チェーンケース234ように、減速機構をチェーン式減速機構239で構成することもできる。チェーン式減速機構239は、駆動スプロケット239aと、従動スプロケット239bと、駆動スプロケット239aと従動スプロケット239bとに巻回されているチェーン239cと、を備えて動力伝達可能に構成されている。
【0057】
また、図4に示す軸受けパイプ56のフランジ部56aに穿設された長孔56b・56b・・・の周長及び個数は、本実施例に限定するものではない。例えば、長孔56b・56b・・・の周長を長くすることにより、減速ギヤケース34の回動角度が大きくして減速比の調整範囲をより大きくできるとともに、長孔56b・56b・・・及びボルト72・72・・・の個数を増やすことにより、減速ギヤケース34と軸受けパイプ56とをより確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】作業車両を示した側面図。
【図2】PTO減速機構を示した側面図。
【図3】減速ケースの内部構造を示した断面図。
【図4】軸受けパイプのフランジ部を示した側面図。
【図5】ベルト式伝達機構の出力軸と減速入力軸との軸間距離が変化する状態を示した側面図。
【図6】上昇した耕耘機と減速ケースとの位置関係を示した側面図。
【図7】クローラ式走行装置及び耕耘装置の駆動構成を示したスケルトン図。
【図8】(a)クラッチ「入」位置におけるストップアーム示した側面図(b)クラッチ「切」位置におけるストップアームを示した側面図。
【図9】第一の変形例に係る減速ケースの駆動構成を示したスケルトン図。
【図10】第二の変形例に係る減速ケースの駆動構成を示したスケルトン図。
【符号の説明】
【0059】
2 耕耘装置(作業機)
7 エンジン
7a 出力軸
26 PTO減速機構
27 PTO軸
33 ベルト式伝達機構
34 減速ギヤケース(減速ケース)
35 減速入力軸
39 減速ギヤ列(減速機構)
100 耕耘機(作業車両)
134 減速ギヤケース(減速ケース)
139 減速ギヤ列(減速機構)
234 減速チェーンケース(減速ケース)
239 チェーン式減速機構(減速機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの出力軸の動力がPTO減速機構で減速されてPTO軸を介して作業機に伝達される作業車両であって、
前記PTO減速機構は、
前記出力軸と前記PTO軸との間に配設される減速入力軸と、
該出力軸の動力を該減速入力軸に伝達するベルト式伝達機構と、
前記減速入力軸の動力を減速して前記PTO軸に伝達する減速機構を内装した減速ケースと、を備える、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記減速ケースは、前記PTO軸の軸回りに回動可能に取り付けられ、
該減速ケースが回動することにより、前記ベルト式伝達機構における前記出力軸と前記減速入力軸との軸間距離が変更される、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記減速ケースは、前記PTO軸に着脱可能に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記減速ケースは、側面視において前記PTO軸の軸回りに前傾姿勢で取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−137327(P2009−137327A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312692(P2007−312692)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】