説明

作業車両

【課題】音声による運転制御により安全性を高めた作業車両を提供することである。
【解決手段】音声認識装置121は、機体Tが停止している場合又はトラクタに連結した作業機Rが作動停止している場合に、これらを動作開始する操作指令がマイク122又は送受信装置120からあると、スピーカ124などで動作開始をする旨を報知した後、機体Tの走行開始出力又は作業機Rの動作出力を実施し、動いている機体Tを停止させる操作指令又は機体Tに連結した作業機Rの作動停止指令に対しては、機体Tの走行停止又は作業機Rの作動停止用の出力をした後、音声による返答を音声認識装置121を経由して返答内容(機体Tの走行停止又は作業機の作動停止の完了)を報知する構成とした。機体T又は作業機Rが間違って走行又は作動しないときなどには安全確保できる。また、それらの場合に機体T又は作業機Rが迅速に停止する側に動くため安全である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関し、特に健常者と身体障害者共に安全運転が可能な作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクタなどの作業車両の運転時には複数の操作手段の適切な操作が必要である。近年は特にトラクタの操作機能が増えているので、トラクタの操作が一層複雑化する傾向にある。そこで音声により、操作手順を順次ガイドする制御装置を備えた作業車両が提案され始めている(特許文献1)。
また、操作者がジョイススイッチやペダルなどを操作しなくても、操縦者の発する音声により適切に稼働する作業機械の提案がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−18780号公報
【特許文献2】特開2002−49403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1、2記載の発明では、機械の操作を音声ガイダンスに従って行うので安全性が高いが、車両の場合は路上又は圃場を走行するので、さらに安全性を高くすることが望まれる。
本発明の課題は、音声による運転制御により安全性を高めた作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上記課題は次の解決手段で解決される。
請求項1記載の発明は、走行機体(T)と該走行機体(T)に連結可能な作業機(R)とを備えた走行車両の走行機体(T)及び/又は作業機(R)の動作に関する指令を出す動作指令手段(S)と、走行車両の走行機体(T)及び/又は作業機(R)の動作に関する指令内容を表す音声コマンドを認識できる音声認識装置(121)と、前記指令された走行機体(T)及び/又は作業機(R)の動作内容を音声合成する音声合成装置(123)と、該音声合成装置(123)により合成された音声を出すスピーカ(124)又は該音声内容を画面表示する表示手段(125)と、前記音声認識装置(121)により認識された前記指令内容に基づき走行機体(T)及び/又は作業機(R)を動作させるに当たって、停止中の走行機体(T)又は作業機(R)を動作させる動作指令に対しては前記スピーカ(124)又は表示手段(125)で表現した後に、走行機体(T)又は作業機(R)を停止させる動作出力を行い、動作中の走行機体(T)又は作業機(R)を停止させる動作指令に対しては走行機体(T)又は作業機(R)を停止させる動作出力を行った後に前記スピーカ(124)又は表示手段(125)で表現させる制御装置(100)を備えた走行車両である。
【0005】
請求項1記載の発明によれば、動作指令手段(S)により、走行車両の走行機体(T)及び/又は作業機(R)の動作に関する指令が出されると、制御装置(100)は、音声認識装置(121)により前記指令内容に基づき走行機体(T)及び/又は作業機(R)を動作させると共に音声合成装置(123)とスピーカ(124)又は表示手段(125)により前記指令による動作内容を音声又は表示画面で返答(表現)させることができ、また停止中の走行機体(T)又は作業機(R)を動作させる動作指令に対しては前記スピーカ(124)又は表示手段(125)で表現した後に、走行機体(T)又は作業機(R)を停止させる動作出力を行い、動作中の走行機体(T)又は作業機(R)を停止させる動作指令に対しては走行機体(T)又は作業機(R)を停止させる動作出力を行った後に前記スピーカ(124)又は表示手段で表現させることができる。
【0006】
請求項2記載の発明は、前記動作指令手段(S)が、(a)走行機体(T)の前後進操作若しくは停止、(b)走行機体(T)に搭載されたエンジン(62)の始動若しくは停止、(c)作業機(R)の作動若しくは作動停止、又は(d)作業機(R)の昇降動作若しくは昇降停止の各操作を指令することができる操作パネル(120a,b)と、該操作パネル(120a,b)で指令した操作内容を前記制御装置(100)に送受信し、前記音声認識装置(121)に接続可能にした送受信装置(120)を備えた請求項1記載の走行車両である。
【0007】
請求項2記載の発明によれば、動作指令手段(S)が、前記(a)〜(d)の各操作を指令することができる操作パネル(120a,b)を備えており、該操作パネル(120a,b)を前記制御装置(100)に送受信する送受信装置(120)を走行車両の前記音声認識装置(121)に接続及び接続しない状態で操作可能である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、動作中の走行機体T又は作業機Rを停止させる動作指令に対しては走行機体T又は作業機Rを停止させる動作出力を行った後に前記スピーカ124又は表示手段125で表現させること等が可能となり、間違って動き出すことがない等、安全確保できる。また、停止側にはすぐに対応でき安全である。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、動作指令手段Sの操作パネル120a,bを走行車両に接続した状態と非接続の状態で操作可能であるので、走行車両から離れた位置からも走行機体T及び/又は作業機Rを操作可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1には本実施例のトラクタの側面図を示す。
乗用四輪駆動の走行形態を有するトラクタ走行機体Tは、ステアリングハンドル73で前輪61を操向しながら走行運転する。走行機体Tの後部にはロータリ耕耘装置等の作業機Rを昇降可能に装着して対地作業を行うことができる。この走行機体Tは、前端部にフロントアクスルハウジングに支架させるエンジンブラケットを介してエンジン62を搭載し、このエンジン62の後側にクラッチハウジングや、ミッションケース65等を一体的に連結し、このミッションケース65の最後部にリヤアクスルハウジング75を設けて、左右両側部に後輪63を軸装する。
【0011】
図2には本実施例のトラクタの動力伝動系統図を示す。なお本実施例でトラクタの前進方向に向かって左右をそれぞれ左、右といい、前後をそれぞれ前、後ということにする。
【0012】
エンジン62は後側に突出のエンジン軸1を有し、このエンジン軸1をクラッチハウジング部の入力軸2に連結する。ミッションケース65内の伝動機構を介して後端部の出力軸3及びPTO軸14を連動すると共に、ミッションケース65の下部に設けた前輪出力軸5を連動する構成としている。この出力軸3はミッションケース65内の後部の略中央部において前後方向に沿うように軸受されて後端にドライブピニオンギヤ53を有し、リヤデフ45のデフリングギヤ46に噛合し、リヤアクスルハウジング75に沿って軸装されたリヤデフ軸10と後輪軸11を遊星減速機構16を介して連動する。また、前輪出力軸5はミッションケース65の下部からエンジン62の下部を経て、フロントアクスルハウジングの中央部に設けられるフロントデフ47の入力軸26に連結され、このフロントアクスルハウジングに沿って軸装されるフロントデフ軸12及び遊星減速機構等を介して前輪軸13へ連動する構成としている。
【0013】
本実施例のトランスミッションは、エンジン62によって駆動される入力軸2から入力ギヤ31を経由してPTOカウンタ軸9(PTO変速カウンタギヤ44を有する)を駆動する。該PTOカウンタ軸9にはPTOクラッチパック66を設けている。また入力軸2には前後進切替用の前後進切替ギヤ42、42が遊転状態に設けられ、一方の後進側の前後進切替ギヤ42には入力軸2と並列配置されたバックカウンタ軸8に設けられたバックカウンタギヤ43が噛合し、他方の前進側の前後進切替ギヤ42には主変速軸19上に固定した入力ギヤ48と該主変速軸19上に遊転自在に設けた有効径の異なる4つの主変速ギヤ33を設ける。これら4つの主変速ギヤ33は、四段変速に構成され、クラッチパック76によって切替シフトされ、4つの主変速ギヤ33から構成される変速装置を主変速装置Aということにする。
【0014】
前記主変速軸19上には、前記主変速装置Aの4つの主変速ギヤ33のうち、最も有効径の小さい主変速ギヤ33(第1速用)と3番目に有効径の小さい主変速ギヤ33(第3速用)との間にクラッチパック76を固定して設け、2番目に有効径の小さい主変速ギヤ33(第2速用)と最も有効径の大きい主変速ギヤ33(第4速用)との間にクラッチパック76を固定して設ける。前記2つのクラッチパック76には、各主変速ギヤ33を主変速軸19と一体回転するように連結する摩擦クラッチが各々設けられている。
【0015】
また、前後進切替ギヤ42の前進側のギヤと噛合可能な入力ギヤ48は、前後進切替ギヤ42の後進側のギヤともバックカウンタ軸8上のバックカウンタギヤ43と噛合っており、該前後進切替ギヤ42のうちの前進側のギヤ42と後進側のギヤ42とを、前後独立した摩擦クラッチから成る2つの前後進切替クラッチパック60の切替によって択一的に入力軸2と一体化して、前進走行と後進走行とに切替えられる構成である。後述する油圧シリンダ85(図3)を含めこれらギヤ42とクラッチパック60などからなる構成を前後進クラッチDということにする。
また、前後進クラッチDの切替を手動で行う前後進切替レバー115をステアリングハンドルのポスト部分に設けている。
【0016】
主変速軸19と同軸芯位置に設けられた副変速軸20にはクラッチパック76によって切替シフトされる有効径の異なる2つの高低速切替ギヤ34が設けられており、主変速後の駆動力を更に減速して高速と低速とに切り替えることができる。この高速と低速とに切り替え可能なギヤ構成をハイ・ロー変速装置Bということにする。
【0017】
さらに副変速軸20と同軸上には有効径の異なる3つの副変速ギヤ35を有する出力軸3が配置されている。出力軸3は副変速ギヤ35により三段変速する構成としている。この三段変速可能なギヤ35の構成を副変速装置Cということにする。
【0018】
また、副変速ギヤ35に噛合するクリープカウンタギヤ49を備えたクリープカウンタ軸21が出力軸3に並列位置に設けられている。また主変速ギヤ33や高低速切替ギヤ34等と噛合する主変速カウンタギヤ39と高低速切替ギヤ40を有する走行カウンタ軸6が主変速軸19や副変速軸20と並列位置に配置されており、主変速軸19から伝動される回転が主変速ギヤ33で変速されて、その回転が主変速カウンタギヤ39と高低速切替ギヤ40を順次経由して副変速軸20に設けられた高低速切替ギヤ34に伝達される。高低速切替ギヤ34に伝達された動力はクラッチパック76を介して副変速軸20上に設けた副変速ギヤ35による変速機構を介して出力軸3に伝達される。
【0019】
本実施例の走行動力伝達系では、PTO軸14を変速する機能とPTO軸14を正逆転する機能を設けている。
【0020】
また、前記副変速ギヤ35と噛み合う副変速カウンタギヤ38の副変速カウンタ軸27を回転自在に支持すると共に、出力軸3から前輪取出ギヤ36を介して連動される前輪連動ギヤ51を回転自在に支持するPTO連動軸4を設けている。
【0021】
このPTO連動軸4の前方延長軸芯上にはPTO正逆切替軸22を設けている。さらに、PTO連動軸4の並行位置に前輪連動軸28を設け、前記PTO正逆切替軸22に前輪連動軸28を正転と逆転に切替えるPTO正逆切替ギヤ37を設け、該PTO正逆切替軸22の前方延長軸芯上にはPTO正転ギヤ32を設けたPTO変速軸18を配置している。
【0022】
また、PTO正逆切替ギヤ37と噛合するPTO減速ギヤ50を有する減速軸23が前記PTO正逆切替軸22と並列配置されている。
PTO軸14を変速する変速シフタギヤ15がPTOカウンタ軸9に設けられ、該ギヤ15は、該ギヤ15に常時噛合するシフタ15aを備えている。また、PTO軸14の正転・逆転の切り替えを行なう正逆シフタギヤ17がPTO変速軸18に設けられ、該ギヤ17は、該ギヤ17に常時噛合するシフタ17aを備えている。
【0023】
そこで、まずPTO軸14の1速正転の場合には、シフタ15aを図2の左側にスライドさせて変速シフタギヤ15と1速正転ギヤ29を接続し、シフタ17aを図2の左側にスライドして正逆シフタギヤ17をPTO正転ギヤ32と接続する。
【0024】
エンジン動力がPTO軸14を作動させるためには、まずエンジン入力軸2からの動力は入力ギヤ31に連動されるPTOクラッチパック66を経由してPTOカウンタ軸9上の変速シフタギヤ15からシフタ15aと接続している1速ギヤ29と該ギヤ29と一体回転する2番目の1速ギヤ正転ギヤ29を経由してPTOカウンタ軸9と並列配置されたPTO変速カウンタ軸58上のPTO変速カウンタギヤ44に伝達され、該PTO変速カウンタ軸58上の第2PTO変速カウンタギヤ68が駆動される。第2PTO変速カウンタギヤ68の駆動力がPTO正転ギヤ32を経由してPTO変速軸18に伝達され、該変速軸18からPTO正逆切替ギヤ37、PTO減速ギヤ50、2番目のPTO減速ギヤ50、第2のPTO正逆切替ギヤ77及びPTO正逆切替ギヤ22を経由してPTO軸14に出力される。
【0025】
次にPTO軸14の1速逆転の場合には、PTO軸14の1速逆転の場合には、シフタ15aを図2の左側にスライドさせて変速シフタギヤ15と1速正転ギヤ29を接続し、シフタ17aを図2の右側にスライドして正逆シフタギヤ17をPTO逆転ギヤ71と接続する。この場合は、エンジン入力軸2からの動力がPTO変速カウンタ軸58上の第2PTO変速カウンタギヤ68を駆動するまでは、前記PTO軸14の1速正転の場合と同様であり、第2PTO変速カウンタギヤ68の駆動力がPTO正転ギヤ32を経由してPTO逆転軸70上のPTO逆転ギ69に伝達され、PTO逆転ギ69からPTO逆転軸70に伝達され、該PTO逆転軸70上の第2PTO逆転ギヤ74、PTO逆転ギヤ71、2番目のPTO逆転ギヤ71、シフタ17a、正逆シフタギヤ17、PTO変速軸18、PTO正逆切替ギヤ37、PTO減速ギヤ50、2番目のPTO減速ギヤ50、第2のPTO正逆切替ギヤ77及びPTO正逆切替ギヤ22を経由してPTO軸14に出力される。
【0026】
また、次にPTO軸14の2速正転の場合には、シフタ15aを図2の右側にスライドさせて変速シフタギヤ15と2速正転ギヤ30を接続し、シフタ17aを図2の左側にスライドして正逆シフタギヤ17をPTO正転ギヤ32と接続する。
【0027】
エンジン入力軸2からの動力は入力ギヤ31に連動されるPTOクラッチパック66を経由してPTOカウンタ軸9上の変速シフタギヤ15からシフタ15aと接続している2速正転ギヤ30と2番目の2速正転ギヤ30を経由してPTO変速カウンタ軸58上のPTO変速カウンタギヤ44に伝達され、該PTO変速カウンタ軸58上の第2PTO変速カウンタギヤ68が駆動される。第2PTO変速カウンタギヤ68の駆動力がPTO変速ギヤ32と正逆シフタギヤ17を経由してPTO変速軸18に伝達され、該変速軸18からPTO正逆切替ギヤ37、PTO減速ギヤ50、2番目のPTO減速ギヤ50、第2のPTO正逆切替ギヤ77及びPTO正逆切替ギヤ22を経由してPTO軸14に出力される。
【0028】
さらに、次にPTO軸14の2速逆転の場合には、シフタ15aを図2の右側にスライドさせて変速シフタギヤ15と2速正転ギヤ30を接続し、シフタ17aを図2の右側にスライドして正逆シフタギヤ17をPTO正転ギヤ71と接続する。
【0029】
エンジン入力軸2からの動力は入力ギヤ31に連動されるPTOクラッチパック66を経由してPTOカウンタ軸9上の変速シフタギヤ15からシフタ15aと接続している2速正転ギヤ30と2番目の2速正転ギヤ30を経由してPTO変速カウンタ軸58上の番目のPTO変速カウンタギヤ44に伝達され、該PTO変速カウンタ軸58上の第2PTO変速カウンタギヤ68が駆動される。第2PTO変速カウンタギヤ68の駆動力がPTO正転ギヤ32を経由してPTO逆転軸70上のPTO逆転ギ69に伝達され、PTO逆転ギ69からPTO逆転軸70に伝達され、該PTO逆転軸70上の第2PTO逆転ギヤ74、PTO逆転ギヤ71、2番目のPTO逆転ギヤ71、シフタ17a、正逆シフタギヤ17、PTO変速軸18、PTO正逆切替ギヤ37、PTO減速ギヤ50、2番目のPTO減速ギヤ50、第2のPTO正逆切替ギヤ77及びPTO正逆切替ギヤ22を経由してPTO軸14に出力される。
【0030】
また、前記出力軸3の後端部の前輪取出ギヤ36に副変速カウンタ軸27に回動自在に設けられた第1の前輪連動ギヤ51が噛合し、該第1の前輪連動ギヤ51に噛合する副変速カウンタ軸27を介して前輪連動軸28に伝達される出力軸3の駆動力は、前輪連動軸28とカップリングKを介して一体回転する前輪駆動軸7に伝達される。
【0031】
なお、カウンタ軸59と前輪出力軸5の間と前輪出力軸5と前輪連動軸25の間と前輪連動軸25と前輪入力軸26との間もそれぞれカップリングKが設けられ、それぞれ一体回転する。なお、カップリングKの内径側にスプラインと軸側のスプラインが係合して動力伝達される。
【0032】
更に、ミッションケース65内の下段部に配置された前輪出力軸5は、ミッションケース65の後部底部に軸装されて、前輪連動軸25やカップリングK等を介して前記フロントデフ47の入力軸26へ連結する。
【0033】
また前輪駆動クラッチパック67を前輪駆動軸7上に設け、この駆動軸7から前輪出力軸5へギヤ連動する。また、有効径の異なる2つの前輪駆動切替ギヤ41が前輪駆動クラッチパック67の左右に配置されており、該2つの前輪駆動切替ギヤ41は、前輪駆動軸7に並行配置されたカウンタ軸59に設けた有効径の異なる2つの切替駆動カウンタギヤ56に各々噛み合わされ、前輪駆動クラッチパック67を択一的に接続することにより、2つの減速比のうちのいずれか一方の減速比で前輪出力軸5を駆動することができる。
【0034】
前輪駆動クラッチパック67を中立位置にシフトするときは前輪61を駆動させない後輪駆動の二駆形態とし、この前輪駆動クラッチパック67を油圧操作によって切り換えて低速位置にシフトするときは前輪61を後輪63に対して約1倍の等速駆動させる四駆形態とし、また、この前輪駆動クラッチパック67を油圧操作によって切り換えて高速位置にシフトするときは前輪61を後輪63に対して約2倍に増速駆動させる四駆形態とすることによって走行することができる。
【0035】
上記構成からなる噛合式変速装置により、エンジン62の回転動力は主クラッチを構成する前後進クラッチDを経由して4段の変速段からなる主変速装置Aと2段の変速段からなるハイ・ロー変速装置B及び3段の変速段からなる副変速装置Cで合計24段のうちのいずれかの変速段に変速され、得られた回転動力はリヤデフ45を経て後輪63が駆動される。また、前記副変速装置Cで変速された回転動力は前輪駆動クラッチパック(二駆四駆切替クラッチ)67にも伝達され、該クラッチパック67により前輪61が「等速」もしくは「増速」に切り換えられた後、フロントデフ47を経て前輪61が駆動される。
【0036】
走行系の伝動は、入力軸2から出力軸3の軸芯上に配置される主変速ギヤ33、高低速切替ギヤ34及び複変速ギヤ35等を介してドライブピニオンギヤ53へ多段変速連動される。また、PTO系の変速は、PTO連動軸4の前端部に設けられるPTO正転ギヤ32を介して連動される。
【0037】
次に図3に本実施例のトラクタの油圧回路図を示す。
図3の油圧回路図では左右の後輪63を独立して制動する左右のブレーキシリンダ83、前輪61へ伝達する動力を「等速」もしくは「増速」に切り換える四駆切換クラッチシリンダ99、ステアリングハンドル73の回転操作により作動するパワーステアリング装置103、PTOクラッチシリンダ104、PTOクラッチ圧力コントロール用バルブ105,106などが設けられている。なお、一点鎖線部分の回路101はメイン油圧回路(作業機昇降・作業機水平や外部油圧取出しなど)となり、サブ回路(走行・ブレーキ・デフロック・PTO側回路)とあまり関係がないため、回路図の図示を省略している。
【0038】
油圧ポンプ80から吐出した作動油は、減圧弁81aを介して主変速装置Aの第4速用と第2速用の各ギヤ33をクラッチパック76を介してそれぞれ作動させる油圧クラッチシリンダ87と油圧クラッチシリンダ88を切り替える4−2速切替用の変速制御弁89に供給され、さらに主変速装置Aの第1速用と第3速用の各ギヤ33をそれぞれ作動させる油圧クラッチシリンダ91と油圧クラッチシリンダ92を切り替える1−3速切替用の変速制御弁93に供給される。
【0039】
減圧弁81aを経由する作動油は、前後進クラッチシリンダ85のオン・オフ制御弁129を介して前後進クラッチシリンダ85の前進側と後進側のクラッチDを切り替える切替弁86に供給される。該前後進クラッチシリンダ85の前進側と後進側のクラッチDのいずれに作動油が供給されているかは前進側クラッチ圧力センサ110と後進側クラッチ圧力センサ111で検出できる。
同様に、上記及び下記油圧クラッチシリンダに供給される作動油はそれぞれの油圧クラッチシリンダへの入口側の油路に設けた圧力センサで検知できる構成になっている。
【0040】
また、油圧ポンプ80から吐出した作動油は、減圧弁81bを介してブレーキバルブ82aを経由して左右のブレーキシリンダ83に分岐供給される。前記ブレーキバルブ82aは後輪63を選択する切替制御弁であり、該ブレーキバルブ82aはブレーキ力を調整する圧力制御弁82bと一体構成となっている。
【0041】
さらに、減圧弁81bを経由する作動油は、前記第1速〜第4速用の各ギヤ33で変速された速度を「高速」と「低速」の二つのギヤ40のいずれかにクラッチパック76を介して作動させるハイ・ロー油圧クラッチシリンダ95を切り替えるための制御弁96a,96bに供給される。
【0042】
また、減圧弁81bを経由する作動油は、デフロック制御弁97を経てフロントデフ47用の前輪デフロックシリンダ98a及びリアデフ45用の後輪デフロックシリンダ98bに分岐される。
さらに、前輪駆動クラッチパック67のギヤ41の切替用の油圧シリンダ99には切替制御弁94を経て前記減圧弁81bを経由する作動油が供給される。
【0043】
同様に、減圧弁81bを経由する作動油は、PTO用バルブ105,106を介してPTOクラッチシリンダ104に供給され、PTOクラッチの圧力を調整する。
また図3に示す油圧ポンプ80からの油圧は、パワステアリングハンドル73の操作で作動されるオービットロール107に作動油を供給する構成である。
【0044】
また、図4には本実施例の図2に示す常時噛合式変速装置の制御装置100とその入出力装置を説明する制御ブロック図を示す。図4に示すように制御装置100はエンジンECU100aと作業機昇降系ECU100bと走行系ECU100cからなり、互いにCAN2通信系により通信可能になっている。また、制御装置100はCAN1通信系により操作パネル118,メータパネル119及び音声合成装置123aとスピーカ124aと通信可能になっている。
【0045】
また、図5の専用パネル120aと追加パネル120bは遠隔操作用のパネルであり、トラクタ本機側との通信を図4に示す送受信装置120で行います。送受信装置120は、遠隔操作用パネル側と本機側の両方にある。
【0046】
トラクタ本機側の操作パネル118には各種スイッチがあり、さらに、本機側の操作パネル118には、遠隔操作用の操作パネル(専用パネル120aと追加パネル120bと同じ機能のものが設置されている。トラクタ本機のメータパネル119にはエンジン回転計、燃料計、水温計、各種警告灯等などがある。またトラクタ本機側に設けられているスピーカ124aから音声を出すためには、音声合成装置123は必需品である。さらに、マイク122aで受けた音声は音声認識装置121aで認識する。マイク122aとスピーカ124aは本機側に設けられるが、図5に示すように、遠隔操作用の専用パネル120aと追加パネル120b側にもマイク122bとスピーカ124aがある。
【0047】
また、図4に示す制御ブロック図でレール圧センサはコモンレール圧センサの略称であり、エンジン本体に取り付けられているコモンレールの中で高圧の燃料の圧力を検知するセンサであり、高圧インジェクタは、コモンレールから送られてくる高圧の燃料をシリンダ室内に噴射する燃料噴射装置のことである。本実施例のエンジは4気筒エンジンで1気筒から4気筒用の各高圧インジェクタ1−4がある。
【0048】
本実施例のトラクタは前後進操作、停止操作及びエンジン始動、停止操作又作業機Rの作動、作動停止又は昇降などの動作とその停止を、図5に示す動作指令手段Sの送受信装置120による通信で操作可能にし、さらに送受信装置120での操作内容を、音声合成装置123(本機側と遠隔操作用共通)で合成して遠隔操作用の専用パネル120aにあるスピーカ124bから報知する。また、本機側のスイッチ類で操作した場合も同様である。
【0049】
また、遠隔操作パネル側の送受信装置120にも音声認識装置121bが設けられている。遠隔操作パネル側にある専用パネル120aと追加パネル120bを操作する内容のことを、作業者が声に出して喋った場合は、専用パネル120aのマイク122bに受け付けて音声認識装置121bで認識する。そして、その返答を音声合成装置123(音声合成装置123は本機側のものであるが、本機側と遠隔操作パネル側で共用している。)で合成して本機側のスピーカ124aや遠隔操作パネル側のスピーカ124bから報知する。
音声認識装置121a,bには、それぞれマイク122a,bがあるので音声を音声コマンドとして認識してECU100に入力可能な装置である。
【0050】
遠隔操作パネル側の送受信装置120は、図5(a)と図5(b)の正面図、図5(c)の側面図及び図5(d)のそのモニタ画面を示す構成からなり、図5(a)に示すように遠隔操作パネルは専用パネル120aと追加パネル120bとからなり、これを分離した状態を図5(a)に示し、専用パネル120aと追加パネル120bを一体化した状態を図5(b)に示す。なお、図5(a)、図5(b)の送受信装置120の「A1」、「A2」、「B1」及び、「B2」の機能は選択可能であり、「A1」、「A2」、「B1」及び「B2」のいずれかを押し、右下の選択スイッチ128を押すことで選択可能な構成である。選択スイッチ128を押すと、モニタ125にリストが表示される。図5(d)がモニタ125のリストの一例である。選択スイッチ128とモニタ125の間にある上向きの矢印と下向きの矢印でリストの表示切替を行ない、再び選択スイッチ128を押すことで決定される。
【0051】
図6にはエンジン始動直後に専用パネル120aと追加パネル120b側の音声認識装置121bの作動を行うか否かを決めるためのフローチャートを示す。音声認識装置121bが制御装置100に接続されているかどうかをチェックし、音声認識装置121bが接続されている場合には音声認識装置121bが有効であることを示すフラグを立てる。またエンジン62の運転中は前記フラグが立っていると音声認識装置121bを用いる制御を優先して行い、前記フラグが立っていないと、音声認識装置121bを用いる制御を行わないで、通常のトラクタの制御を行う。音声認識装置121bを用いる制御を優先して行う場合には規定時間以上マイクが接続状態にない場合には、操縦者側又は本機側に何らかの不具合が生じている可能性があるのでエンジン62を停止させ、機体の走行と作業機(PTO)Rの作動を停止する。
【0052】
また、図7には音声認識装置121a,bを用いる制御を優先的に行う場合のフローチャートを示し、前述のトラクタの前後進操作、停止操作及びエンジン始動、停止操作又作業機(PTO)Rの作動、作動停止又は昇降とその停止などの動作の制御のフローチャートの手順に従って行う。
【0053】
音声認識装置121a,bは具体的には、トラクタが停止している場合又はトラクタに連結した作業機Rが作動停止している場合に、これらを動作開始する操作指令がマイク122bからあると、音声合成装置123で音声を合成して本機側のスピーカ124a、又は遠隔操作パネル側のスピーカ124bなどで動作開始をする旨を報知した後、トラクタ走行機体Tの走行開始出力又は作業機Rの動作出力を実施し、動いているトラクタ走行機体Tを停止させる操作指令又はトラクタ走行機体Tに連結した作業機Rの作動停止指令に対しては、トラクタ走行機体Tの走行停止又は作業機Rの作動停止用の出力を実施した後、音声による返答を音声合成装置123を経由して返答内容(トラクタの走行停止又は作業機の作動停止が完了したこと)を報知する構成としている。
前記報知するための構成は音声合成装置123で合成された音声を発するスピーカ124a,124bである。
【0054】
このように、トラクタ走行機体T又は作業機Rが間違って走行又は作動しないときなどには安全確保できる。また、それらの場合にトラクタ走行機体T又は作業機Rが迅速に停止する側に動くため安全である。
【0055】
また、図5に示す送受信装置120をトラクタ走行機体Tに設置する他に、例えば.携帯電話型の端末装置としての送受信装置120を備えておくと、2つ以上の送受信装置120を併用して操作可能となる。さらに携帯電話型の送受信装置120(の操作パネル)をトラクタ及びその他の無線基地と無線交信可能な構成とすることで、操作可能な場所へ自由に移動して操作できる。
また、送受信装置120または.前記携帯電話型の端末装置の操作パネル内のエンジン停止部、前後進・PTO停止部停止操作部は、他の操作部より面積を大きくすると操作性が良い。
【0056】
さらに、図5(a)、図5(b)に示す遠隔操作側の送受信装置120の専用パネル120aと追加パネル120bは着脱自在な構成になっている。通常操作部(本機側のスイッチ類)は各操作部の操作と連動して各々の作動部材が直ぐに反応して動作する構成としているが、遠隔操作側の専用パネル120aの各操作部の操作は、走行機体の前後進スイッチ、作業機(PTO)Rの入/切スイッチの入り操作に関しては、規定時間以上操作していないと入り判定しないように構成して安全性を図っている。
【0057】
また、図5(a)、図5(b)に示す送受信装置120の専用パネル120aの前後進・PTO停止スイッチを操作して車両を走行停止させた場合には作業機(PTO)Rの出力も停止させる構成とすることで、ロータリ作業などを作業機が行う場合には、走行のみ停止した後に作業機(PTO)Rを停止させることを行わないと、ダッシング現象など発生する不具合があり得るが、上記構成にすると、そのような不具合がない。
【0058】
図8に示す追加パネル120bに設置可能なスイッチ126には180度反対側の互いに2方向に向けて動作させる操作部(2方向スイッチなどの入/切スイッチ)(図8(a))と前記2方向スイッチと停止操作用のスイッチ(停止スイッチ)を一つの操作部内に設置した少なくとも3方向操作部(3方向スイッチ)127(図8(b))を設けることができる。
【0059】
上記図8(a)、図8(b)に示す追加パネル120bのスイッチ126、127が農業機械に設けられれると、これらのスイッチ126,127を操作する場合、作業機(PTO)Rの「伸び」と「縮み」、「上げ」と「下げ」など作業をするための調整や作業姿勢の設定・解除などを行うことができる。また、PTO動力や電源などの遮断や動作の遮断など停止動作が必要になるが、この様な場合には、前記3つの操作部があれば自由に設定できる。
【0060】
また、図5に示す追加パネル120bに図8(b)の3方向操作部(3方向スイッチ)127の機能を設けると、操作性が向上すると共に、スイッチ類の数が減少するようになる。例えば、図8(b)では作業機Rの昇降と駆動停止が一つのスイッチ127で操作可能となる。その操作部の機能選択は追加パネル120bに装備した操作部やモニタで設定可能にした構成すると、トラクタ走行機体T側のコストを低減できる。
【0061】
専用パネル120aにあるマイク122bとスピーカ124bの機能は、専用パネル120aと追加パネル120bを本機側に装着しているときのみに使用可能とする。専用パネル120aと追加パネル120bが本機側に接続状態であるかどうかの判定をする構成とし、接続判定中のみマイク122bとスピーカ124bの機能を有効とするようにした構成することで、音声送信のトラブルを防止することができる。また、音声の送受信はトラブルの原因になるので行なわないようにしている。
【0062】
また、遠隔操作側のパネル(120a、120b)側の音声認識装置121bはトラクタのエンジン始動操作時に送受信装置120の専用パネル120aと追加パネル120bを音声認識装置121aの接続部121a’に接続状態であったとき有効に機能するようにした構成にすると、安全性が向上する。
【0063】
さらに走行機体Tに設けた送受信装置120とは別に設けた、例えば携帯電話型の専用パネル120aや追加パネル120bは本機の近くにあって、電波が届く領域にあれば使用可能にすると、トラクタのエンジン始動操作時に携帯電話型の専用パネル120aや追加パネル120bが近くにあって通信可能であるとトラクタ本機側で判定したときに有効に機能するようにしたので、特別な操作が不要となる。
【0064】
遠隔操作側のパネル(120a、120b)側の音声認識による操作や、専用パネル120a、追加パネル120bなどで操作可能にしたトラクタでは、音声認識での操作や専用パネル120a、追加パネル120bなどでトラクタの走行停止操作した場合は、必ずPTOも停止するようにしているので、トラクタの走行停止時は、必ずPTO回転が停止するので、ロータリなどがダッシングするおそれがない。
【0065】
また、遠隔操作側のパネル(120a、120b)側の音声認識での操作や専用パネル120a、追加パネル120bなどの外部パネルでPTOのみを切り操作可能にしても良い。こうすることによりPTOだけを停止させたい場合に好都合である。例えば、所定区間において耕うんさせたくない場合等において有効である。
【0066】
上記構成で通常操作部(本機側のスイッチによる操作)と遠隔操作側のパネル(120a、120b)側との音声認識装置121a,bとの優先順位について、時系列的に後から変化のあった方のみを有効とすると、操作を変更する場合に新たな操作が最優先され、安全で分かり易い。
【0067】
また、本機側の通常操作部(本機側のスイッチ類による操作)と遠隔操作側のパネル(120a、120b)側のスイッチ類の操作の優先関係についても、時系列的に後から変化のあった方のみを有効とする。また、遠隔操作側のパネル(120a、120b)については、操作時のみ接点がオンするタイプの操作部とする。このようにすることで、仮に遠隔操作側のパネル(120a、120b)で操作した内容で本機側の変化がないと、電波の状態など、何らかのトラブルが容易に認識できる。
【0068】
例えば専用パネル120aが本実施例のように無線による遠隔操作用のパネルであるとき、専用パネル120aを搭載した送受信装置120の専用パネル部分の側面図を図5(c)に示すように、停止操作する操作部を他の操作部より高さを高めに設定する構成にすると、誤操作を防止できる。
【0069】
エンジン始動時等で遠隔操作側のパネル(120a、120b)が本機側から外されていない接続状態にあると、有効判定して遠隔操作側のパネル(120a、120b)を操作可能状態にする。すなわちエンジン始動時には、遠隔操作側のパネル(120a、120b)は本機側に接続しておく。そして、トラクタを運転中に、何らかの原因で遠隔操作側のパネル(120a、120b)が非接続状態であると判定した場合(作業者が遠隔操作のために意図的に外す場合など)には、一旦トラクタの走行車輪61,63、作業機Rおよびエンジン62などの駆動機器の一部あるいは全部を停止するようにする。その後、遠隔操作側のパネル(120a、120b)からの無線による遠隔操作を可能とする。これは、一旦停止側にすることで安全を図るためである。
【0070】
このとき、送受信装置120の非接続判定、即ち、遠隔操作側のパネル(120a、120b)の非接続判定は、遠隔操作側のパネル(120a、120b)のマイク122bの接続の有無で判断してもよい。
【0071】
また、エンジン始動時等で遠隔操作側のパネル(120a、120b)が本機側に接続されていると有効判定し、その後遠隔操作側のパネル(120a、120b)を外して遠隔操作可能状態でトラクタを運転中に、何らかの原因で遠隔操作側のパネル(120a、120b)からの通信が不可(電波障害など)であると判定したら走行車輪61,63、作業機Rおよびエンジン62などの駆動機器の一部あるいは全部を停止することで安全を図っている。
【0072】
遠隔操作側のパネル(120a、120b)の音声認識装置121bによる操作指令は、通常操作部(本機側の操作部)の操作指令より有効にすることで、運転者からの音声指令操作を優先する。この場合は、同時操作又は所定時間内の操作の場合である。また、本機側の音声認識装置121aによる操作と通常操作部(本機側の操作部)との優先関係においても、音声認識装置121aの音声認識を優先とする。
【0073】
このように、本機側や遠隔操作側のパネル(120a、120b)側の音声認識装置121a,bによる操作指令を通常操作部(本機側の操作部)の操作指令より優先する場合でも、運転中に通常操作部(本機側の操作部)の状態が変化した場合(操作状態を変更することなどで)には、この通常操作部(本機側の操作部)の新たな指令を有効とする。
【0074】
遠隔操作用の外部操作パネル(120a、120b)側のスイッチ操作よるエンジン停止や走行・PTOの操作指令は、通常操作部(本機側)のスイッチ操作の操作指令より有効にした。この場合でも運転中に通常操作部の状態が変化した場合、又は所定時間は過ぎている場合には、この通常操作部の新たな指令を有効とする。
【0075】
本実施例のトラクタで自動操舵装置を設けた場合には、図9に示すレーザ光線を平面状に照射して反射光をカメラで受光し地面の形状を検出し制御する。
これは、トラクタに搭載した図9(a)に示すレーザ装置130からレーザ光線を平面状に照射しその反射光をカメラ131で受光し、その反射パターンを現す認識画面(図9(b))によって地面の形状を検出できるためである。検出された地面の形状とトラクタの位置が所定の位置になる様に制御することでトラクタの位置を制御するように構成したことを特徴とする。この構成はステレオ型の画像処理装置より安価に構成できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のトラクタは農作業以外の各種作業用の車両にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施例のトラクタの左側面図である。
【図2】図1のトラクタのトランスミッション内の動力伝動図である。
【図3】図2の動力伝動図の油圧回路図である。
【図4】図1のトラクタの動力伝動系の制御ブロック図である。
【図5】図1のトラクタの送受信装置の正面図(図5(a)と図5(b))、側面図(図5(c))、モニタ画面(図5(d))である。
【図6】図1のトラクタのエンジン始動直後に音声認識装置の作動を行うか否かを決めるためのフローチャートである。
【図7】図1のトラクタの音声認識装置を用いる制御を優先的に行う場合のフローチャートである。
【図8】図1のトラクタの送受信装置の追加パネルのスイッチの平面図である。
【図9】図1のトラクタに設けた自動操舵装置の機能説明図である。
【符号の説明】
【0078】
1 エンジン軸 2 入力軸
3 出力軸 4 PTO連動軸
5 前輪出力軸 6 走行カウンタ軸
7 前輪駆動軸 8 バックカウンタ軸
9 PTOカウンタ軸 10 リヤデフ軸
11 後輪軸 12 フロントデフ軸
13 前輪軸 14 PTO軸
16 遊星減速機構 18 PTO変速軸
19 主変速軸 20 副変速軸
21 クリープカウンタ軸 22 PTO正逆切替軸
23 PTO減速軸 25 前輪連動軸
26 入力軸 27 副変速カウンタ軸
28 前輪連動軸 31 入力ギヤ
32 PTO正転ギヤ 33 主変速ギヤ
34 高低速切替ギヤ 35 副変速ギヤ
36 前輪取出ギヤ 37 PTO正逆切替ギヤ
38 副変速カウンタギヤ 39 主変速カウンタギヤ
40 高低速切替ギヤ 41 前輪駆動切換ギヤ
42 前後進切替ギヤ 43 バックカウンタギヤ
44 PTO変速カウンタギヤ 45 リヤデフ
46 デフリングギヤ 47 フロントデフ
48 入力ギヤ 49 クリープカウンタギヤ
50 PTO減速ギヤ 51 前輪連動ギヤ
53 ドライブピニオンギヤ 54 前輪連動ギヤ
55 前輪ギヤ 56 切替駆動カウンタギヤ
59 カウンタ軸 60 前後進切替クラッチパック
61 前輪 62 エンジン
63 後輪 65 ミッションケース
66 PTOクラッチパック 67 前輪駆動クラッチパック
73 ステアリングハンドル 75 リヤアクスルハウジング
76 クラッチパック 80 油圧ポンプ
81a,81b 減圧弁 82a ブレーキバルブ
82b 圧力制御弁 83 ブレーキシリンダ
85 前後進クラッチシリンダ 86 切替弁
89 変速制御弁
87,88,91,92 油圧クラッチシリンダ
93 変速制御弁 94 切替制御弁
95 ハイ・ロー油圧クラッチシリンダ
96a,96b 制御弁 97 デフロック制御弁
98a 前輪デフロックシリンダ 98b 後輪デフロックシリンダ
99 四駆切替クラッチシリンダ 100 制御装置
101 メイン油圧回路 103 パワーステアリング装置
104 PTOクラッチシリンダ
105,106 PTOクラッチ圧力コントロール用バルブ
107 オービットロール 110 前進側クラッチ圧力センサ
111 後進側クラッチ圧力センサ 115 前後進切替レバー
119 メータパネル 120 送受信装置
120a 専用パネル 120b 追加パネル
121a,b 音声認識装置 122a,b マイク
123 音声合成装置 124a,b スピーカ
125 モニタ画面 126,127 追加パネルスイッチ
A 主変速装置 B ハイ・ロー変速装置
C 副変速装置 D 前後進クラッチ
R 作業機 S 動作指令手段
T 走行機体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(T)と該走行機体(T)に連結可能な作業機(R)とを備えた走行車両の走行機体(T)及び/又は作業機(R)の動作に関する指令を出す動作指令手段(S)と、
走行車両の走行機体(T)及び/又は作業機(R)の動作に関する指令内容を表す音声コマンドを認識できる音声認識装置(121)と、
前記指令された走行機体(T)及び/又は作業機(R)の動作内容を音声合成する音声合成装置(123)と、
該音声合成装置(123)により合成された音声を出すスピーカ(124)又は該音声内容を画面表示する表示手段(125)と、
前記音声認識装置(121)により認識された前記指令内容に基づき走行機体(T)及び/又は作業機(R)を動作させるに当たって、停止中の走行機体(T)又は作業機(R)を動作させる動作指令に対しては前記スピーカ(124)又は表示手段(125)で表現した後に、走行機体(T)又は作業機(R)を停止させる動作出力を行い、動作中の走行機体(T)又は作業機(R)を停止させる動作指令に対しては走行機体(T)又は作業機(R)を停止させる動作出力を行った後に前記スピーカ(124)又は表示手段(125)で表現させる制御装置(100)と
を備えたことを特徴とする走行車両。
【請求項2】
前記動作指令手段(S)は、(a)走行機体(T)の前後進操作若しくは停止、(b)走行機体(T)に搭載されたエンジン(62)の始動若しくは停止、(c)作業機(R)の作動若しくは作動停止、又は(d)作業機(R)の昇降動作若しくは昇降停止の各操作を指令することができる操作パネル(120a,b)と、該操作パネル(120a,b)で指令した操作内容を前記制御装置(100)に送受信し、前記音声認識装置(121)に接続可能にした送受信装置(120)を備えたことを特徴とする請求項1記載の走行車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−154573(P2009−154573A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332097(P2007−332097)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】