説明

作業車両

【課題】変速レバーに操作力をスプリング荷重を低くせずに安全にアシストすることができる変速レバー操作力のアシスト装置を備えたコンバイン等の作業車両の走行変速装置を提供すること。
【解決手段】変速レバー6が中立位置にあるときに、前記移動体7の支持軸7aと制動装置29の移動体側の作用位置と作業車両1の機体の固定部材25,26側の作用位置とが一直線上に並ぶように変速レバー6の移動体7と制動装置29などを作業車両の機体に取り付けているので、変速レバー6の中立位置と圧縮スプリング29が最も押圧力を発揮する位置がずれなく、また、制動装置29などにより変速レバー6の全ストローク範囲の中間位置までは中立位置に戻ろうとする不具合を押し留めることができ、さらに変速レバー6が中間位置より先に移動すると変速レバー6を中立位置に復帰させる押圧力が発生しないので、変速レバー6はフリーの状態で操作できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等の作業車両の走行変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンバインで立毛穀稈を収穫するときは、走行車台の下側の左右一対の走行クローラを回転駆動させて圃場面をこれら各走行クローラを走行させ、穀稈を刈取り、刈取穀稈を脱穀し、脱穀済みで選別済みの穀粒をコンバインの所定位置に一時貯留する。
【0003】
このコンバインの走行装置として、例えば特許文献1には、走行クローラ回転駆動用の走行ミッションケース内に設けた変速機構を変速操作する副変速レバーと、該走行ミッションケースに設けた油圧式無段変速装置(以下、HSTということがある。)を変速操作する変速レバーとを設ける技術が記載されている。このコンバインで立毛穀稈の収穫作業を行なう時には、これら両レバーを所定位置へ回動移動操作して、穀稈の収穫作業を開始する。そして前記主・副変速レバーに操作力をアシストするスプリングなどを用いる機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−49962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の主・副変速レバーに操作力をスプリングを用いるアシスト機構は、コンバインの旋回負荷が増加すると変速レバーが操作位置から押し戻され、中立位置まで自動で戻ってしまう問題があった。また、変速レバーを一定量以上操作すると、該レバーを操作した位置に固定しておくブレーキ装置が無ければ、軽負荷時に自動で意図しない方向に変速レバーが動く可能性があった。
【0006】
本発明の課題は、変速レバーに操作力をスプリング荷重を低くせずに安全にアシストすることができる変速レバー操作力のアシスト装置を備えたコンバイン等の作業車両の走行変速装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために次の構成を有する。
すなわち、請求項1記載の発明は、エンジン(E)によって駆動される走行装置(3)と走行装置(3)の変速操作を行うための変速レバー(6)を機体に設けた走行車両の走行変速装置であって、エンジン(E)によって駆動される油圧ポンプ(22)と、走行装置(3)を駆動する油圧モータ(23)との間を、高圧側油路および低圧側油路で環状に接続して油圧閉回路(C)を形成し、前記油圧ポンプ(22)に該油圧ポンプ(22)内に設けられる斜板(36)を外部から角度調節するトラニオン軸(35)を設け、該トラニオン軸(35)を回動操作する変速レバー(6)を機体側の固定部に支持軸(7a)で回動自在に軸支し、該変速レバー(6)の基部と機体側の固定部との間に、変速レバー(6)が中立位置に減速操作された状態では、この変速レバー(6)を中立位置に保持するべく付勢し、変速レバー(6)が中立位置から増速操作された状態では、この変速レバー(6)を増速側に付勢する付勢手段(K)を設けたことを特徴とする作業車両の走行変速装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記付勢手段(K)が、変速レバー(6)の基部に一体的に設けた回動体(7)と、該回動体(7)の下端部の軸(7c)に一端部を軸着し、他端部を機体側の固定部に支持部(24)で摺動自在に支持したロッド(28)と、該ロッド(28)の外周部に設けた、ロッド(28)の一端部を支持軸(7a)側へ弾発するスプリング(29)とを備え、変速レバー(6)が中立位置にある状態で、前記支持軸(7a)と軸(7c)と支持部(24)とが支持軸(7a)の軸芯方向から見て略一直線上に並ぶと共にスプリング(29)が最圧縮状態となるように配置した構成を備えていることを特徴とする請求項1記載の作業車両の走行変速装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記付勢手段(K)が、変速レバー(6)の基部に一体的に設けた、カム部(7e)と、該カム部(7e)の外周面の中央部に設けた凹部(7b)と、該凹部(7b)を挟んだ両側には凹部(7b)から離れるほど支持軸(7a)からの距離が小さくなる傾斜面(7d)を形成した回動体(7)と、機体側の固定部に設けた保持部(63)によって前記支持軸(7a)に向かう方向へ摺動自在に保持され、先端部をカム部(7e)の外周面に当接させたロッド(28)と、保持部(63)とロッド(28)との間に設けた、該ロッド(28)を支持軸(7a)へ向けて弾発する付勢スプリング(29)とを備えていることを特徴とする請求項1記載の作業車両の走行変速装置である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記付勢手段(K)が、変速レバー(6)の基部に一体的に設けた、カム部(7e)と該カム部(7e)の外周面の中央部に設けた凹部(7b)と、該凹部(7b)を挟んだ両側には凹部(7b)から離れるほど支持軸(7a)からの距離が小さくなる傾斜面(7d)を形成した回動体(7)と、機体側の固定部に取り付けた、前記支持軸(7a)に向かう方向へ伸縮自在であって、先端部をカム部(7e)の外周面に当接させたピストン(44a)を有する油圧シリンダ(44)と、前記閉回路(C)の高圧側油路から油圧シリンダ(44)へ作動油を流入させる油路(5a)とを備えていることを特徴とする請求項1記載の作業車両の走行変速装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、トラニオン軸(35)を回動操作する変速レバー(6)を機体側の固定部に支持軸(7a)で回動自在に軸支し、該変速レバー(6)の基部と機体側の固定部との間に、変速レバー(6)が中立位置から減速操作された状態では、この変速レバー(6)を中立位置に保持するべく付勢し、変速レバー(6)が中立位置から増速操作された状態では、この変速レバー(6)を増速側に付勢する付勢手段(K)を設けたので、変速レバー(6)の中立位置にあるときは、変速レバー(6)の意図しない操作位置の変化を防止し、勝手に機体が走行する不具合を解消できる。また、変速レバー(6)が中立位置から増速操作された状態では、閉油圧回路(C)における負荷変動により変速レバー(6)を中立位置に向けて押し戻す力が発生しても、変速レバー(6)を付勢手段(K)により増速側に付勢するので、操作荷重が軽減されて変速レバー(6)の操作性が改善される。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、前記付勢手段(K)は、変速レバー(6)の基部に一体的に設けた回動体(7)と、該回動体(7)の下端部の軸(7c)に一端部を軸着し、他端部を機体側の固定部に支持部(24)で摺動自在に支持したロッド(28)と、該ロッド(28)の外周部に設けた、ロッド(28)の一端部を支持軸(7a)側へ弾発するスプリング(29)とを備え、変速レバー(6)が中立位置にある状態で、前記支持軸(7a)と軸(7c)と支持部(24)とが支持軸(7a)の軸芯方向から見て略一直線上に並ぶと共にスプリング(29)が最圧縮状態となるように配置する構成としたので、変速レバー(6)を中立位置より増速操作するとスプリング(29)の弾性力によって回動体(7)を増速側へ付勢すると共に、スプリング(29)が自由長となる操作位置以上の増速側操作範囲においては付勢力を発生せず、変速レバー(6)が意図せず増速する不具合を防止できる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、前記付勢手段(K)は、変速レバー(6)の基部に一体的に設けた、カム部(7e)と、該カム部(7e)の外周面の中央部に設けた凹部(7b)と、該凹部(7b)を挟んだ両側には凹部(7b)から離れるほど支持軸(7a)からの距離が小さくなる傾斜面(7d)を形成した回動体(7)と、機体側の固定部に設けた保持部(63)によって前記支持軸(7a)に向かう方向へ摺動自在に保持され、先端部をカム部(7e)の外周面に当接させたロッド(28)と、保持部(63)とロッド(28)との間に設けた、該ロッド(28)を支持軸(7a)へ向けて弾発する付勢スプリング(29)とを備えているので、変速レバー(6)を中立位置に減速操作した場合、ロッド(28)の先端部が凹部(7b)に嵌込むうえに、ロッド(6)は保持部(63)の摺動案内によって常に支持軸(7a)に向けて付勢するので、確実に変速レバー(6)の中立を保持できる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、前記付勢手段(K)は、変速レバー(6)の基部に一体的に設けた、カム部(7e)と該カム部(7e)の外周面の中央部に設けた凹部(7b)と、該凹部(7b)を挟んだ両側には凹部(7b)から離れるほど支持軸(7a)からの距離が小さくなる傾斜面(7d)を形成した回動体(7)と、機体側の固定部に取り付けた、前記支持軸(7a)に向かう方向へ伸縮自在であって、先端部をカム部(7e)の外周面に当接させたピストン(44a)を有する油圧シリンダ(44)と、前記閉回路(C)の高圧側油路から油圧シリンダ(44)へ作動油を流入させる油路(5a)とを備えているので、高圧側油路の圧力変動に応じて変速レバー(6)を増速側に付勢するので、閉油圧回路(C)の油圧変動に関わらず常に一定の操作荷重で変則レバー(6)を操作することができ、変速レバー(6)を中立位置に減速操作した場合、ロッド(28)の先端部が凹部(7b)に嵌込むうえに、ロッド(6)は保持部(63)の摺動案内によって常に支持軸(7a)に向けて付勢するので、確実に変速レバー(6)の中立を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】農用作業車両の一例としての農用コンバインの右側面図である。
【図2】図1のコンバインで用いるHSTの油圧回路図である。
【図3】図1のコンバインの変速レバーの作動範囲を説明する操縦席部分の右側面図である。
【図4】図1のコンバインの変速レバーアームとロッドと圧縮スプリングが作用する状態を示す図である。
【図5】図1のコンバインの一実施例の変速レバーアームの変速レバーとの接続関係を説明する図(図5(a)は車両右側面図、図5(b)は車両正面図)である。
【図6】図1のコンバインの一実施例の変速レバーアームの操作荷重をアシストする構成図(図6(a)、(図6b)と変速レバーの操作のアシストによるトラニオン軸を保持するために掛ける荷重とトラニオン軸の開度(=傾斜角度)の関係を示す図(図6(c))である。
【図7】図1のコンバインの一実施例の変速レバーアームの変速レバーとの接続関係を説明する図(図7(a)は車両右側面図、図7(b)は車両正面図)である。
【図8】図1のコンバインの一実施例の変速レバーアームの変速レバーとの接続関係を説明する図(図8(a)は車両右側面図、図8(b)は車両正面図)である。
【図9】図1のコンバインの一実施例の変速レバーアームの変速レバーとの接続関係を説明する図(図9(a)は車両右側面図、図9(b)は車両正面図)である。
【図10】図1のコンバインの一実施例の変速レバーアームの変速レバーとの接続関係を説明する図(図10(a)は車両右側面図、図10(b)は車両正面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。なお、本明細書では、コンバインの操縦者がコンバインの前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前後方向を前、後という。
【0017】
図1にコンバインの左側面図を示す。コンバイン1の走行車台2の下側に走行装置3を設け、この走行装置3には、左右一対の走行クローラ3aを設け、この各走行クローラ3aを回転駆動する走行用のミッションケース4を、該走行車台2の前端部へ装着して設けている。また、前記ミッションケース4の一方側には、走行車速を変速する油圧式無段変速装置5を設け、この油圧式無段変速装置(HST)5を操作する変速レバー6と、この変速レバー6を装着する回動自在な変速レバーアーム7(図3など参照)等とを、操作装置17の近傍部に設けている。
【0018】
さらに、前記走行車台2の前方部には、立毛穀稈を刈取りする刈取装置8を設け、該走行車台2の上側面には、刈取り穀稈の供給を受けて脱穀する脱穀装置9を載置している。
【0019】
前記コンバイン1の走行車台2の下側には、土壌面を走行する左右一対の走行クローラ3aを張設した走行装置3を配設し、走行車台2の上側面に脱穀装置9を載置している。走行車台2の前方部の刈取装置8で立毛穀稈を刈取りして、後方上部へ移送し、該脱穀装置9のフィードチェン10aと挟持杆10bとで引継いで挟持移送しながら脱穀する。脱穀済みで選別済みの穀粒は、脱穀装置9の右横側へ配設した穀粒貯留タンク11内へ供給され、一時貯留される。
【0020】
前記走行車台2の前方部には、立毛穀稈を分離するナローガイド12a、及び分草体12bと、立毛穀稈を引起す引起装置12cと引起された穀稈を掻込み移送する穀稈掻込移送装置13の各掻込装置13aと掻込された穀稈を刈取る刈刃装置12dと刈取りされた穀稈を挟持移送して、脱穀装置9のフィードチェン10aと挟持杆10bとへ受渡しする穀稈掻込移送装置13の根元・根先移送装置14a、14b等からなる刈取装置8を設けている。該刈取装置8は、油圧駆動による伸縮シリンダ15により、土壌面に対して昇降する。
【0021】
前記刈取装置8の前方下部から後方上部へ傾斜する支持杆16aの上端部に設ける支持パイプ杆16bを走行車台2の上側面に設けた支持装置16cで回動自在に支持させている。伸縮シリンダ15を作動させると支持杆16aと共に、刈取装置8が上下回動する。
【0022】
前記刈取装置8の穀稈掻込移送装置13によって形成される穀稈移送経路中には、刈取られて移送する穀稈に接触作用することにより、脱穀装置9への穀稈の供給の有無を検出する穀稈センサ8aを設けている。
【0023】
前記穀粒貯留タンク11側の前部には、コンバイン1を始動、停止及び各部を調節等の操作を行う制御装置17と操縦席18とを設け、この操縦席18の下側にエンジン19を載置している。
【0024】
前記走行車台2の前端部に装架した走行用のミッションケース4内の伝動機構4aの伝動経路中には、その出力に基づいて走行車速を検出するポテンションメータ方式の車速センサ4bを設けている。更に、このミッションケース4の一側部には、走行車速を変更する油圧式無段変速装置5を装着している。
【0025】
また、前記穀粒貯留タンク11内へ貯留した穀粒を機外へ排出するこの穀粒貯留タンク11の後側には縦移送螺旋20aを内装した排出支持筒20を略垂直姿勢で旋回自在に装着して設け、この排出支持筒20の上端部には、その全長がコンバイン1の前後長に亘る機外へ穀粒を排出する排出螺旋21aを伸縮自在に内装した排出オーガ21を伸縮自在、上下回動自在、及び左右旋回自在に前後方向に配設している。
【0026】
本発明で用いるHST5の油圧回路図を図2に示す。トラニオン軸35による斜板36の傾斜角度に応じてエンジン19からの動力で作動する油圧ポンプ22から吐出したオイルは閉油圧回路Cを通って油圧モータ23に送られ、油圧モータ23は油圧ポンプ22からの吐出油圧に応じた回転数を伝動機構4aに回転動力を出力する。なお、油圧ポンプ22と油圧モータ23からリークしたオイル(破線)は油タンク(ミッションケース)4に溜まる。
【0027】
前記変速レバー6と変速レバーアーム7との装着方法及びこの変速レバーアーム7の回動機構等を図5の変速レバー6と変速レバーアーム7とミッションケース4の連結部の拡大側面図に示す。図5(a)は側面図であり、図5(b)は図5(a)の矢印A方向からみた図である。
【0028】
走行車速を変速する前記ミッションケース4の一側部には、図5で示すように、コンバイン1の走行車速を変速する油圧式無段変速装置(HST)5を設けている。このHST5を操作する変速レバー6は変速レバーアーム7の上端部に一体的に設けられている。該変速レバーアーム7は直交する2つの機体のフレーム25,26のうち、横フレーム25に取り付けられた取付片27に支持軸7aを中心に揺動自在に支持されている。
【0029】
変速レバー6の下端部に上端部が一体的に取り付けられた変速レバーアーム7は、支持軸7aを機体前後方向の回動中心として、機体の左右方向を向いた軸芯を中心として前後方向に回動自在に設けている。
【0030】
図3に操縦席18の右側面図に示すように変速レバー6は中立位置を挟んで前後に操作されることで、それぞれ前進側と後進側にコンバイン1を走行させることができる。
【0031】
また、図3に示す変速レバー6の操作により、図4(a)と図4(b)に示す変速レバーアーム7とその下端部に設けたロッド28とスプリング29の作動図のように、変速レバーアーム7と圧縮スプリング29等で変速レバー6の操作のアシストを行うことができる。
【実施例1】
【0032】
本実施例1の変速レバー6の圧縮スプリング29を用いるアシスト構成を以下に説明する。
図5には本実施例の変速レバー6の下端部に接続した変速レバーアーム7等による変速レバー6のアシスト構成を説明する図を示す(図5(a)は車両右側面図、図5(b)は車両正面図)ように、変速レバーアーム7は直交する機体の横フレーム25と縦フレーム26のうち、縦フレーム26の頂部に取り付けられた横フレーム25の取付片27に支持軸7aを揺動中心として揺動自在に変速レバーアーム7が取り付けられる。また変速レバーアーム7の上端部に変速レバー6の下端部が一体的に結合している。また、変速レバーアーム7の下端部にはロッド28の上端が回動自在に取り付けられ、またロッド28の下端部は縦フレーム26に取り付けられた取付プレート31に支持されている。
【0033】
ロッド28の外周にはロッド28を内部に通した圧縮スプリング29が配置されて、ロッド28に螺合する押付力調整用ダブルナット32で圧縮スプリング29の上端を押し付けて圧縮スプリング29の圧縮度を調整することができる構成である。
【0034】
上記構成により図3に示す変速レバー6の前後進側への操作により、図4(a)と図4(b)の作動図に示すように変速レバー6の操作のアシストを変速レバーアーム7と圧縮スプリング29等で行うことができる。
【0035】
すなわち、図3に示すように変速レバー6の中立位置Oの両側に前進側と後進側にそれぞれ対称的に変速レバー6の作動範囲A−A’と作動範囲B−B’があり、変速レバー6の中立位置Oでスプリング29が最圧縮状態となるように変速レバーアーム7とロッド28と圧縮スプリング29を機体のフレーム25,26への取り付け、圧縮スプリング29の変速レバーアーム7側への押圧力を調整する。
【0036】
前記作動範囲B−B’(作動位置Bは前進側のレバー6の最大作動位置、作動位置B’は後進側のレバー6の最大作動位置である。)は変速レバー6の前後方向の作動可能な範囲を示し、作動範囲A−A’は変速レバー6がHST5の特性に基づきトラニオン軸35(図2)からの反力で中立位置に戻ろうとするのを圧縮スプリング29の押圧力で押しとどめて変速レバー6を操作位置に留めることができる範囲を示し、作動範囲A−A’の中で作動位置Aは変速レバー6がスプリング29の押圧力で中立位置Oに戻ろうとするのを押しとどめる前進側の最大作動位置であり、作動位置A’は変速レバー6がスプリング29の押圧力で中立位置Oに戻ろうとするのを押しとどめる後進側の最大作動位置である。
【0037】
従来の変速レバー6の構成は、コンバイン1の前後進中に旋回負荷が増加すると、HST5の特性に基づき変速レバー6が操作位置から押し戻され、中立位置Oまで自動的に戻ってしまう問題があった。同時に、ある一定量以上変速レバー6を前後進側に操作すると、変速レバー6を操作した位置に留めるためには、該レバー6のブレーキ装置が必要であり、もしブレーキ装置が無ければ軽負荷時に自動的に増速側に変速レバー6が動いてしまう不具合があった。
【0038】
しかし、本発明の上記構成により、作動範囲A−A’の中で変速レバー6が作動している場合に、圧縮スプリング29を設置していないと、HST5の特性上、変速レバー6が中立位置Oに戻ろうとする不具合を圧縮スプリング29による変速レバーアーム7を経由しての変速レバー6側への押圧力で押し留めることができるようにする。前進側の作動位置Aと後進側の作動位置A’が最大の中立位置Oへの復帰を防ぐための位置となるように圧縮スプリング29の押圧力をダブルナット32のロッド28への締付位置の調整で行う。
【0039】
図4(a)は作動位置Aにおける変速レバーアーム7とロッド28と圧縮スプリング29が作用する状態を示す図であり、図4(b)は作動位置Aを通り越して変速レバー6が最大の作動位置Bにあるとき変速レバーアーム7とロッド28と圧縮スプリング29が作用する状態を示す図である。すなわち、変速レバー6が中立位置Oから図4(a)に示す作動位置Aに移動操作される範囲内で変速レバーアーム7とロッド28と圧縮スプリング29が作用して変速レバー6が中立位置Oに復帰するのを防止し、図4(a)を越して図4(b)に至る間の変速レバー6の移動範囲では圧縮スプリング29などによる変速レバー6を中立位置Oに復帰させる押圧力が発生しないので、変速レバー6はフリーの状態で操作できる。
【0040】
また、変速レバー6の中立位置Oと圧縮スプリング29が最も押圧力を発揮する位置がずれていると、圧縮スプリング29のアシスト力が意図せぬ方向に作用する可能性があるが、本実施例では変速レバー6の中立位置Oで圧縮スプリング29が最圧縮状態となるように取付プレート31の縦フレーム26への取り付け位置を調整できるように一対のボルト31a,31aの取付位置の調整と縦フレーム26を支持する孔からなる支持部61(図5)を設けた。支持部61は図5においてピン33を係止している、取付プレート31に下向き三角形状で設けられた孔である。ピン33は下向き三角形状の孔からなる支持部61によって移動を規制されるので、該支持部61の下側頂点が、変速レバー6が中立位置Oにある状態において、ロッド28の上端及び揺動軸7aと同一直線上に並ぶよう調整することで、中立位置Oにおける圧縮スプリング29の押圧力が揺動軸7a方向に向けられて中立を保持できるとともにその位置で圧縮スプリング29が最圧縮位置になる。
【0041】
こうして実施例1の構成によりHST5の特性が変速レバー6の全ストローク範囲の中間位置(作動位置A、作動位置A’)までは、中立位置Oに戻ろうとし、前記中間位置より先は前進方向又は後進方向に移動すると変速レバー6を中立位置Oに復帰させる押圧力が発生しないので、変速レバー6はフリーの状態で操作でき、変速レバー6の操作性が従来より改善される。さらに、圧縮スプリング29は変速レバー6を中立位置Oに戻した時に、常に同じ位置に戻るように取付プレート31のボルト31aの縦フレーム26に対する取付け位置の調整とロッド28の下端部に設けられたピン33の係止位置の調整で容易に行うことができる。
【実施例2】
【0042】
本実施例は変速レバー6の操作荷重をアシストする構成例であり、図6に概略を示す。図6に示す構成は、変速レバー6の操作を変速レバー6基部に接続した変速レバーアーム7の作動をアシストする引張スプリング59を変速レバーアーム7と機体の横フレーム25の間に取り付け、引張スプリング59によるアシスト特性をHST5のトラニオン軸35(図2参照)に作用する力と合わせてHST5の作動域の全域において変速レバー6の操作力が平均化するようにしたものである。
【0043】
引張スプリング59は変速レバー6の操作量に応じて伸びることができる構成とし、図6(a)に示す変速レバー6の中立位置Oでは引張スプリング59は圧縮状態であって、変速レバー6の回動支点方向に荷重が働き、変速レバー操作力のアシストは働かないようにし、例えば前進側に変速レバー6を移動操作すると、引張スプリング59は該レバー操作量に従い伸びていき、変速レバー6のある一定の操作量からは引張スプリング59が引っ張り力を発揮するようにセットしておく。
こうして、特に高速域まで自動で変速レバー6が移動して高速走行になってしまう(HSTモータの出力軸に負荷が掛かると変速レバー6が高速側に変速してしまう)ことを防止することができる。
【0044】
図6(c)は前記スプリング59を用いる変速レバー6の操作のアシストによるトラニオン軸35を保持するために掛ける荷重とトラニオン軸35の開度(トラニオン軸の回転角度でありポンプ斜板36の傾斜角度)の関係を示す図である。
【0045】
従来はアシスト用のスプリングで変速レバー6の操作初期の点でスプリング力によりアシストするが、変速レバー6の操作量が増えた高速走行時は、変速レバー6の操作荷重がフリーになるか又は荷重が小さくなっていた。この場合ではHST5のトラニオン軸35の荷重特性(操作の初期はトラニオン軸35を中立位置に戻そうとする力が働き、高速側では逆にトラニオン軸35が高速側に動こうとする荷重特性)に合っていないため、高速に近い点では勝手に増速してしまうことがあった(図6(c)参照)。
【0046】
しかし、上記図6(a)、図6(b)に示す構成を採用すると、図6(c)に示す変速レバー6の操作時のアシスト力をHST5のトラニオン軸35の荷重特性に合わせ、最適なアシスト力を持たせることができる。
【実施例3】
【0047】
図7には別実施例の変速レバー6の圧縮スプリング29を用いるアシスト構成を示す。
【0048】
図7(a)にアシスト構成の車両右側面図を示し、図7(b)にアシスト構成の車両正面図に示すように実施例1の変速レバーアーム7と同様にアシスト攻勢は横フレーム25に取り付けられているが、変速レバーアーム7の下端部は凹部7bがあり、該凹部7bにはローラ38が接触している。該ローラ38はロッド28の上端に取り付けられた回動軸を中心に回動自在に設けており、該ロッド28は前記直交する2つの機体のフレーム25,26のうち、縦フレーム26に取り付けられた側面視でコ字状取付プレート40の上下片40a,40bにより2箇所で支持されている。コ字状取付プレート40のコ字を形成する上片40aと下片40bに設けた貫通孔にロッド28を通してそれぞれ上片40aと下片40bにロッド28が支持されている。該コ字状取付プレート40の上片40aと下片40bの間にはロッド28を内部に通した圧縮スプリング29が配置されており、また圧縮スプリング29の上下のロッド28部分にはダブルナット32、42が螺合している。上側のダブルナット32はコ字状取付プレート40の上片40aと圧縮スプリング29との間に配置され、スプリング押付力調整用ナットであり、また下側のダブルナット42はコ字状取付プレート40の下片40bの下側に配置され、(付勢力の作用範囲を調整します)のストッパ位置調整用のナットである。圧縮スプリング29はダブルナット32のロッド28への取り付け位置の調整で変速レバーアーム7の凹部7bへのローラ38の押し付け力を調整できる。
【0049】
また、前記コ字状取付プレート40の上側の2箇所に設けた横長の円弧孔40c、40c(変速レバー6の回動中心でもある変速レバーアーム7の支持軸7aを中心とする円弧上にある)にボルト40dを挿入して機体の縦フレーム26で支持されているので、コ字状取付プレート40の縦フレーム26への取り付け位置を機体の前後方向に移動調整が可能であり、変速レバー6の中立位置Oで圧縮スプリング29による変速レバー6側への最大の押圧力を発揮できるような位置調整が容易となる。
【0050】
また、変速レバーアーム7の下端部に設けた凹部7bにローラ38が一部嵌り込むことができるので、この構成によっても変速レバー6の中立位置Oでの圧縮スプリング29による変速レバー6側への最大の押圧力を発揮できように変速レバー6の揺動中心とローラ38を押圧する圧縮スプリング29の作用方向が同一鉛直線上にあるように位置調整を容易に行うことができる。
【0051】
こうして実施例3の構成により図3、図4で説明した作用効果が達成され、HST5の特性が変速レバー6の全ストローク範囲の中間位置(作動位置A,A’)までは、中立位置Oに戻ろうとし、前記中間位置Oより先は前進方向又は後進方向に動こうとするものに対し、圧縮スプリング29荷重を低くせずに搭載可能となった。(この表現が分かり難いですが、記載の必要がありますか?)さらに、圧縮スプリング29は変速レバー6を中立に戻した時に、常に同じ位置に戻るように容易にコ字状取付プレート40の上側の2箇所に設けた横長の円弧孔40c、40c内でのボルト40dの係止位置の調整で行うことができ、変速レバー6の中立位置Oで圧縮スプリング29による変速レバー6側への最大の押圧力を発揮できるような位置調整が容易となる。
【実施例4】
【0052】
図8には別実施例の変速レバー6の油圧シリンダと引張スプリングを用いるアシスト構成を示す。
油圧シリンダ44には閉油圧回路の前進側、後進側それぞれの油路からの圧油を切り換える切替バルブを介して閉油圧回路に接続する。この切替バルブは、変速レバー6の傾動操作角度を検出するポテンショメーター(図示せず)によって、前進位置、中立位置、後進位置の何れの位置に操作されているかを検出し、それによって油路を切り換える。
【0053】
図8(a)に車体右側面図を示し、図8(b)に車体正面図に示すように変速レバーアーム7は機体の横フレーム25に取り付けられているが、変速レバーアーム7の下端部は凹部7bがあり、該凹部7bにはローラ38が接触している。
本実施例で、ローラ38はロッド28の上端に取り付けられたが、該ロッド28は油圧シリンダ44で変速レバーアーム7の下端部の凹部7bに向けて押圧する構成としている。
【0054】
前記油圧シリンダ44は水平方向に長手方向が配置された横長の油圧シリンダステー45に支持され、該油圧シリンダステー45は縦フレーム26に取り付けられている。横長の油圧シリンダステー45の一端には該ステー45の回動支点45aを設け、該回動支点45aの反対側のステー端部に引張スプリング46の一端が係止している。またスプリング46の他端は縦フレーム26に設けた取付片47に支持されている。
【0055】
HST5の油圧回路の高圧となる側の油路5aから油圧シリンダ44にオイルが供給され、HST5の斜板36を押戻す力に応じて付勢力を加えることができる。
また、油圧シリンダステー45の回動支点45aを中心に油圧シリンダステー45は揺動自在である。
また、油圧シリンダ44はスプリング46を介して縦フレーム26に固定され、ある一定以上の押し付け力は発生しない。油圧シリンダステー45は回動支点45aを中心に揺動自在であるので、油圧シリンダ44が変速レバーアーム7を引張スプリング46の引張力以上の力で押圧しようとすれば、引張スプリング46が伸長し、油圧シリンダステー45が揺動する。したがって油圧シリンダ44の一定以下のアシスト力で作用することになる。
【0056】
こうして実施例4の構成により図3、図4で説明した作用効果が達成され、HST5の特性が変速レバー6の全ストローク範囲の中間位置(作動位置A,A’)までは、中立位置Oに戻ろうとし、前記中間位置Oより先は前進方向又は後進方向に動こうとするものに対し変速装置の閉油圧回路内の圧力変動に応じて変速レバー6に付勢力を加えることができる。さらに、油圧シリンダ44は変速レバー6を中立に戻した時に、常に同じ位置に戻るように容易にロッド28の上端部に設けられたローラ38と変速レバーアーム7の凹部7bとの係止位置の調整で行うことができ、変速レバー6の中立位置Oで油圧シリンダ44、引張スプリング46による変速レバー6側への最大の押圧力を発揮できるような位置調整が容易となる。
【実施例5】
【0057】
図9には別実施例の変速レバー6のアシスト構成を示す。本実施例では圧縮スプリング29の代わりに電磁石51を用いる。図9(a)に車両右側面図を示し、図9(b)に車両正面図に示すように変速レバーアーム7は横フレーム25に取り付けられているが、変速レバーアーム7の下端部には電磁ブレーキ52を取り付けている。
【0058】
前記電磁ブレーキ52は、変速レバーアーム7の下端部に配置された変速レバーアーム締め付け用の一対のレバー締付材52a,52aに挟持され、該一対のレバー締付材52a,52aの下方部位には電磁石51を配置している。
【0059】
変速レバー6は回動体7と一体で支持軸7aを支点に回動自在で、変速レバー6は前後揺動支点6bを支点として先端側(グリップ側)が回動可能である。そして図9(b)において前後揺動支点6bの近傍で変速レバー6から右側に変異した位置に設けられた捻りバネ50によって変速レバー6の基端側と先端側が一直線の状態になるべく付勢されている。それによってオペレーターが変速レバー6を傾動操作すると該変速レバー6の先端側と基端側の相対角度が変化する。これをポジションセンサ53によって検知し、電磁石51への電力を遮断し、レバー締付材52a、52aを回動体7に摩擦力を付与しない状態にする。また、これに対して、変速レバー6が傾動操作されておらず、先端側と基端側が一直線の状態においては電磁石51に通電し、レバー締付材52a、52aにより回動体7を締付ける。
【0060】
該前後揺動支点6bとポジションセンサ53は変速レバー6のガイド溝18aより上側に設けることで、変速レバー6を中立位置O及び前後進の最速位置B,B’まで操作した時の変速レバーアーム7の位置が、操縦席18のレバーガイド溝18aに対して同じ位置になるため、HSTの中立を出しやすく、最高速度にも影響が出ない。
【0061】
前後揺動支点6bとポジションセンサ53は先に述べた役割を果たすので、変速レバー6の傾動操作中は、該前後揺動支点6bより先端側は基端側に対して更に操作方向に傾斜姿勢となり、非操作時には基端側と同一直線状となる。
【0062】
このため適切に中立状態を保持、或いは最大操作量まで変速レバー6を操作可能にするためには前後揺動支点6bを変速レバー6の操作範囲を規定するガイド溝18aよりも先端側に設けることが便宜であると言える。
【実施例6】
【0063】
図10には別実施例の変速レバー6のアシスト構成を示す。本実施例では伝動アシストモータ54と従動ギヤ56とブレーキ材57を用いる。図10(a)に車両右側面図を示し、図10(b)に車両正面図に示すように変速レバーアーム7は横フレーム25に取り付けられているが、変速レバーアーム7の下端部はブレーキ材57,57で挟持し、一方のブレーキ材57の外側に従動ギヤ56を取り付ける。該従動ギヤ56は縦フレーム26に支持された電動アシストモータ54で作動制御される構成である。
【0064】
また変速レバー6にはポジションセンサ53を設けておき、ポジションセンサ53は変速レバー6の先端側と基端側の相対角度を検出して、変速レバー6を操作しているか否かを検出するためだけに設けられている。電動アシストモータ54が作動して変速レバーアーム7が従動ギヤ56の回動により所定量の回動することで、変速レバー6が中立位置Oに戻ることを防ぎ、また変速レバー6がさらに操作されて、図3の作動範囲A−A’を越えると電動アシストモータ54の作動にしたがって変速レバーアーム7の下端部がフリーに移動できるようになる。
【0065】
またブレーキ材57を介在して変速レバーアーム7と電動アシストモータ54を連結することで、電動アシストモータ54にトラブルがあっても変速レバー6を操作できる。また、変速レバー6の操作荷重を増やさず、変速レバー6が自動でずれることを防止できる。本実施例は、ブレーキ材57によって変速レバー6が勝手にずれることを抑止しているが、その分、該ブレーキ材57によって重くなってしまうので、操作荷重を電動アシストモータ54によって補助するというものである。変速レバー6が操作されている時のみ、その傾動角度に依らない一定のアシスト力を加える。
【0066】
このとき、変速レバー6の操作を検出するポジションセン53は変速レバー6の回動支点6bの上側に設け、該回動支点6bとポジションセンサ53は変速レバー6のガイド溝18aより上側に設けることで、変速レバー6を中立位置及び前後進の最速位置まで操作した時の変速レバーアーム7の位置が、ガイド溝18aに対して同じ位置になるため、HSTの中立を出しやすく、最高速度にも影響が出ない。
【符号の説明】
【0067】
1 作業車両 2 走行車台
3 走行装置 3a 走行クローラ
4 ミッションケース 4a 伝動機構
4b 車速センサ 4c 駆車ブレーキ機構
5 油圧式無段変速装置 6 変速レバー
7 変速レバーアーム 8 刈取装置
9 脱穀装置 10a フィードチェン
10b 挟持杆 11 穀粒貯留タンク
12a ナローガイド 12b 分草体
12c 引起装置 12d 刈刃装置
13 穀稈掻込移送装置
28 ロッド 29 圧縮スプリング
46 引張スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(E)によって駆動される走行装置(3)と走行装置(3)の変速操作を行うための変速レバー(6)を機体に設けた走行車両の走行変速装置であって、
エンジン(E)によって駆動される油圧ポンプ(22)と、走行装置(3)を駆動する油圧モータ(23)との間を、高圧側油路および低圧側油路で環状に接続して油圧閉回路(C)を形成し、
前記油圧ポンプ(22)に該油圧ポンプ(22)内に設けられる斜板(36)を外部から角度調節するトラニオン軸(35)を設け、
該トラニオン軸(35)を回動操作する変速レバー(6)を機体側の固定部に支持軸(7a)で回動自在に軸支し、
該変速レバー(6)の基部と機体側の固定部との間に、変速レバー(6)が中立位置に減速操作された状態では、この変速レバー(6)を中立位置に保持するべく付勢し、変速レバー(6)が中立位置から増速操作された状態では、この変速レバー(6)を増速側に付勢する付勢手段(K)を設けた
ことを特徴とする作業車両の走行変速装置。
【請求項2】
前記付勢手段(K)は、
変速レバー(6)の基部に一体的に設けた回動体(7)と、
該回動体(7)の下端部の軸(7c)に一端部を軸着し、他端部を機体側の固定部に支持部(24)で摺動自在に支持したロッド(28)と、
該ロッド(28)の外周部に設けた、ロッド(28)の一端部を支持軸(7a)側へ弾発するスプリング(29)とを備え、
変速レバー(6)が中立位置にある状態で、前記支持軸(7a)と軸(7c)と支持部(24)とが支持軸(7a)の軸芯方向から見て略一直線上に並ぶと共にスプリング(29)が最圧縮状態となるように配置した構成を備えていることを特徴とする請求項1記載の作業車両の走行変速装置。
【請求項3】
前記付勢手段(K)は、
変速レバー(6)の基部に一体的に設けた、カム部(7e)と、該カム部(7e)の外周面の中央部に設けた凹部(7b)と、該凹部(7b)を挟んだ両側には凹部(7b)から離れるほど支持軸(7a)からの距離が小さくなる傾斜面(7d)を形成した回動体(7)と、
機体側の固定部に設けた保持部(63)によって前記支持軸(7a)に向かう方向へ摺動自在に保持され、先端部をカム部(7e)の外周面に当接させたロッド(28)と、
保持部(63)とロッド(28)との間に設けた、該ロッド(28)を支持軸(7a)へ向けて弾発する付勢スプリング(29)とを備えていることを特徴とする請求項1記載の作業車両の走行変速装置。
【請求項4】
前記付勢手段(K)は、
変速レバー(6)の基部に一体的に設けた、カム部(7e)と該カム部(7e)の外周面の中央部に設けた凹部(7b)と、該凹部(7b)を挟んだ両側には凹部(7b)から離れるほど支持軸(7a)からの距離が小さくなる傾斜面(7d)を形成した回動体(7)と、
機体側の固定部に取り付けた、前記支持軸(7a)に向かう方向へ伸縮自在であって、先端部をカム部(7e)の外周面に当接させたピストン(44a)を有する油圧シリンダ(44)と、
前記閉回路(C)の高圧側油路から油圧シリンダ(44)へ作動油を流入させる油路(5a)と
を備えていることを特徴とする請求項1記載の作業車両の走行変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−230622(P2011−230622A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101969(P2010−101969)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】