説明

作物収穫機

【課題】収穫作業に伴って回収部にて回収された作物を作業者の労力負担の少ない状態で機体から降ろすことが可能となる作物収穫機を提供する。
【解決手段】機体の走行に伴って圃場から作物を引き抜いて機体後方に搬送することにより作物を収穫する収穫部と、収穫部にて収穫された作物を回収する回収部8とが備えられ、回収部8に備えられる収納装置28が、作物を収納するための収納空間の底部を形成する底部構成体29と、収納空間の周部を形成する周部構成体30とを備えて構成され、底部構成体29が、作物を収納空間内に収納すべく受止める作用姿勢と、収納空間の下方を開放する開放姿勢とに姿勢変更自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の走行に伴って圃場から作物を引き抜いて機体後方に搬送することにより作物を収穫する収穫部と、前記収穫部にて収穫された作物を回収する回収部とが備えられている作物収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作物収穫機において、従来では、回収部に収納袋が備えられ、収穫作業が行われるに伴って収穫部にて収穫された作物を収納袋に順次収納しながら回収するように構成され、収納袋への作物の回収が終了すると、内部に作物を収納している状態で収納袋を機体から降ろすようになっていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−268357号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、収納袋内に作物が満杯になると、多量の作物が収納されている状態で収納袋を機体から降ろす必要がある。このように収納袋に多量の作物を収納している状態では全体として大きな荷重となるから、手作業にてこのような大重量の収納袋を運搬するのは重量が大きく作業者に対する労力負担が大きいものになるという不利な面があった。
【0005】
本発明の目的は、収穫作業に伴って回収部にて回収された作物を作業者の労力負担の少ない状態で機体から降ろすことが可能となる作物収穫機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作物収穫機は、機体の走行に伴って圃場から作物を引き抜いて機体後方に搬送することにより作物を収穫する収穫部と、前記収穫部にて収穫された作物を回収する回収部とが備えられているものであって、その第1特徴構成は、
前記回収部に備えられる収納装置が、作物を収納するための収納空間の底部を形成する底部構成体と、前記収納空間の周部を形成する周部構成体とを備えて構成され、
前記底部構成体が、前記収穫部にて収穫された作物を前記収納空間内に収納すべく受止める作用姿勢と、前記収納空間の下方を開放する開放姿勢とに姿勢変更自在に構成されている点にある。
【0007】
第1特徴構成によれば、機体の走行に伴って圃場の作物を収穫する収穫作業を行うときは、収納装置における底部構成体を作用姿勢にすることにより、収穫した作物を受止めて底部構成体と周部構成体とにより形成される収納空間内に収納することができる。
【0008】
そして、回収部にて回収された作物を機外に降ろすときは、底部構成体を開放姿勢に変更することにより収納空間の底部を開放させることにより、収納空間内に回収されている作物を容易に機外に降ろすことができる。このように、底部構成体を開放姿勢に変更させることにより作物を機外に降ろすことができるので、作業者に対する労力負担は少ないものになる。
【0009】
従って、第1特徴構成によれば、収穫作業に伴って回収部にて回収された作物を作業者の労力負担の少ない状態で機体から降ろすことが可能となる作物収穫機を提供できるに至った。
【0010】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記周部構成体が、上端部に作物投入用の開口が形成されるとともに下端部に作物排出用の開口が形成された筒状体にて構成され、前記底部構成体が、前記作用姿勢に姿勢変更されると、前記周部構成体の下端縁に対して上向きに接当して作物排出用の開口を閉じて収納空間の底部を形成し、且つ、前記開放姿勢に姿勢変更されると、前記周部構成体の下端縁から離間して前記作物排出用の開口から作物の排出を許容するように構成されている点にある。
【0011】
第2特徴構成によれば、周部構成体は上下両側部が開口した筒状体に構成されるものであり、上端部及び下端部には夫々筒状体の横断面積に等しい大型の作物投入用の開口と作物排出用の開口とが形成されることになる。
【0012】
そして、収穫作業時には、収穫部にて収穫された作物を上端部に形成された作物投入用の開口から収納空間内に投入されて回収される。そのとき、底部構成体は、作用姿勢に姿勢変更され、周部構成体の下端縁に対して上向きに接当して作物排出用の開口を閉じて収納空間の底部を形成する。
【0013】
収穫した作物を機体から降ろすときは、底部構成体を開放姿勢に姿勢変更すると、底部構成体が周部構成体の下端縁から離間して作物排出用の開口から作物の排出を許容する状態となるので、収納空間に回収されている作物を周部構成体の下端部に形成された大型の作物排出用の開口を通して能率よく機体から降ろすことができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、前記底部構成体が、水平状態となる前記作用姿勢と、機体後部側が下方に位置するように後下がり傾斜状態となる前記開放姿勢とにわたり、その機体前部側の横軸芯周りで上下揺動自在に機体に支持されている点にある。
【0015】
第3特徴構成によれば、作用姿勢にあるときは底部構成体が水平状態であるから、収穫された作物を底部構成体と周部構成体との協働により確実に受止め支持しながら収納空間内に収納することができる。そして、開放姿勢では、底部構成体が機体前部側の横軸芯周りで上下揺動して後下がり傾斜状態となるので、収納空間内に収納されている作物が後下がり傾斜状態の底部構成体に沿って下方に落下案内されることになる。
【0016】
しかも、底部構成体は、機体後部側が下方に位置するように後下がり傾斜状態となるから、例えば、底部構成体を開放姿勢に変更して作物を降ろすときに、底部構成体と周部構成体との間に作物が引っ掛かり、残りの作物が機外に排出されないような場合には、走行機体を前進走行させると、収納容器内の作物が後下がり傾斜状態の底部構成体上を滑らかに案内されながら排出させることができる。
【0017】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、前記底部構成体を前記作用姿勢と前記開放姿勢とにわたり駆動操作自在な移動操作機構が備えられている点にある。
【0018】
第4特徴構成によれば、移動操作機構によって底部構成体を作用姿勢と開放姿勢とにわたり駆動操作することができるから、例えば、手作業で底部構成体を姿勢変更する場合に比べて作業労力を軽減することができ、しかも、底部構成体の姿勢変更を確実に行えるものとなって作業性に優れたものになる。
【0019】
本発明の第5特徴構成は、第1特徴構成〜第4特徴構成のいずれかに加えて、前記収穫部からの作物を前記収納装置に搬送するコンベア装置が、その搬送終端側箇所を上下位置変更操作自在に設けられ、
前記周部構成体が前記コンベア装置の上下位置変更操作に伴って上下に伸縮することにより、前記収納空間の上下高さを変更調整可能に構成されている点にある。
【0020】
第5特徴構成によれば、収穫部にて収穫された作物はコンベア装置により収納装置に搬送されて収納されるが、収納装置内に収納される作物の量が少ないうちは、コンベア装置の搬送終端側箇所を下方側に移動させておくことで、コンベア装置の搬送終端部と底部構成体との間の落差を小さくして落下により損傷するおそれを少なくすることができる。
【0021】
そして、収納装置に収納される作物の量が大となり、積載される作物の嵩が高くなってくると、コンベア装置の搬送終端側箇所を上方に移動操作するとともに、そのコンベア装置の上方移動操作に伴って周部構成体が上方に伸びて、収納空間の上下高さが高くなり、作物が溢れ出ることの無い状態で適正に収納することができる。
【0022】
従って、作物の損傷のおそれが少ない状態で且つ多量の作物を適正に収納することが可能な状態で作物を回収部に収納することができる。
【0023】
本発明の第6特徴構成は、第1特徴構成〜第5特徴構成のいずれかに加えて、前記周部構成体が、蛇腹状に折れ曲がることにより前記収納空間の上下高さを低くし、伸長することにより前記収納空間の上下高さを高くすることが可能な軟質材からなる筒状体にて構成され、
前記底部構成体が、収納空間に貯留される作物の荷重を受止め可能な底面部と、その底面部の周囲に立設された板状の漏れ出し防止部とを備えて構成され、且つ、前記漏れ出し防止部の少なくとも一部が開放可能に構成されている点にある。
【0024】
第6特徴構成によれば、周部構成体が軟質材からなる筒状体にて構成され、収納装置内に収納される作物の量が少ないうちは、蛇腹状に折れ曲がることにより前記収納空間の上下高さを低くさせておくことができる。そして、収納装置に収納される作物の量が大になると、周部構成体を伸長させて収納空間の上下高さを高くすることができるので、積載される作物の嵩が高くなっても作物が零れ出ることなく適正に収納することができる。
【0025】
又、底部構成体が底面部と板状の漏れ出し防止部とを備えているから、筒状の周部構成体の下端部から作物が外方へ漏れ出すのを防止することができ、しかも、漏れ出し防止部の少なくとも一部が開放可能に構成されていることから、漏れ出し防止部が邪魔になることなく作物を円滑に機外に降ろすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】作物収穫機の全体左側面図である。
【図2】作物収穫機の全体平面図である。
【図3】作物収穫機の後部の右側面図である。
【図4】作物収穫機の背面図である。
【図5】回収部の平面図である。
【図6】(a)は、回収部の人参回収開始時での背面図、(b)は、回収部の人参回収途中での背面図である。
【図7】人参排出時の作物収穫機の後部の側面図である。
【図8】周部構成体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明に係る作物収穫機について説明する。
図1,2に示すように、作物収穫機は、作物の一例としての人参の収穫作業を行うものであり、左右一対のクローラ走行装置1,1を備えて、搭載されたエンジン2の動力により自走するように走行機体が構成され、この走行機体に、運転座席3を有する運転部4、人参を収穫する収穫部5、人参の葉部を切断して分離する葉部切断部6、葉部が切断された人参を機体横幅方向の他端側に搬送する作物搬送部7、人参を回収する回収部8、切断された葉部を機外に排出する葉部排出部9を備えて構成されている。
【0028】
前記収穫部5は、左右一対の引起し装置10,10によって人参の葉部を引き起こし、人参の横側の土中に入り込ませた土ほぐし刃11による振動付与によって引き抜きやすくなった人参の葉部を、左右一対の無端回動ベルトで成る引き抜きベルト12,12によって挟持して機体後方向きに持ち上げ搬送することにより、人参を圃場から抜き上げて収穫するように構成されている。
【0029】
前記葉部切断部6は、引き抜きベルト12,12によって収穫した人参の葉部を、左右一対の無端回動ベルトで成る葉部除去ベルト13,13によって挟持搬送することにより収穫した人参を吊り下げ状態で機体後方向きに搬送し、回転カッター14によって葉部を切断して葉部と人参とを分離させ、人参を下方に位置する後方搬送コンベア16の搬送始端側に落下させ、葉部を葉部除去ベルト13,13によって回転カッター14よりも後方に搬送して、その葉部除去ベルト13,13から案内シュート15を介して下方の後方搬送コンベア16の搬送終端側に落下させるように構成されている。
【0030】
前記葉部排出部9は、後方搬送コンベア16の搬送終端部から排出される葉部を受止めて機体横幅方向に沿って右方向に載置搬送して、搬送方向終端部から機外に排出する葉部搬送用のベルトコンベア17を備えて構成されている。
【0031】
このように葉部搬送用のベルトコンベア17を備えることにより、葉部切断部6にて切断された葉部は、葉部搬送用のベルトコンベア17によって機体横幅方向の右方向側の端部に搬送されて機外に排出されることになるので、隣接する作物列における次回の作業行程での収穫作業の際に、クローラ走行装置1,1が圃場に排出されている葉部を踏み付けるおそれが少ないものとなり、又、葉部が収穫部5に絡み付いたりすることがなく、機体走行に伴う収穫作業を良好に行えるものとなる。
【0032】
ベルトコンベア17の搬送始端部の上部には、後方搬送コンベア16の搬送終端部から排出される葉部を受止めて、ベルトコンベア17上に案内する葉部案内体52が設けられている。図2,3,4に示すように、葉部案内体52は、機体前後方向視で略L字形に屈曲形成された板体にて構成され、下端部が前後一対のベルトコンベア17の左右両側の枠体の上端部に連結されて支持されており、上部側の縦面部52Aは搬送方向上手側端部に位置して後方搬送コンベア16の搬送作用面よりも上方側にまで延びる状態で設けられている。又、下部の傾斜面52Bは下側ほど搬送方向下手側に位置するように傾斜姿勢に設けられ、後方搬送コンベア16から落下排出される葉部をベルトコンベア17上に案内するように構成されている。
【0033】
前記作物搬送部7は、後方搬送コンベア16にて載置搬送される人参を機体横幅方向右方に送り出す斜め姿勢の横送りローラ18と、横送りローラ18により送り出された人参を機体横幅方向右方向に向けて載置搬送するコンベア装置としての横送りコンベア19とを備えて構成されている。
【0034】
図2,3に示すように、横送りコンベア19は、横幅方向に並ぶ一対の無端回動チェーン20,20が駆動回動自在に巻回されて、一対の無端回動チェーン20,20にわたって複数のコンベヤバー21が連結されたスラットコンベアにて構成されている。又、複数のコンベヤバー21のうちの一部のコンベヤバー21から搬送側に突出した搬送係止片22を備えており、この搬送係止片22によって人参の滑り止めを行なうように構成されている。
【0035】
この横送りコンベア19は、位置固定状態で設けられる搬送始端側部分19Fに対して、搬送終端側部分19Rが横軸芯X1まわりに上下揺動自在に設けられる構成となっている。説明を加えると、図4,6に示すように、横送りコンベア19の搬送始端側部分19Fを支持する搬送始端側のフレーム体23に、横送りコンベア19の搬送終端側部分19Rを支持する搬送終端側のフレーム体24が、横軸芯X1周りに上下揺動自在に枢支連結され、搬送終端側のフレーム体24と機体フレーム25とにわたり駆動機構としての昇降シリンダ26が枢支連結され、この昇降シリンダ26を伸縮操作することによって搬送終端側部分19Rを昇降操作可能に構成されている。
【0036】
ちなみに、図4に示すように、横軸芯X1は、搬送終端側部分19Rの搬送始端側箇所に位置して無端回動チェーン20を案内する中継用輪体27の回転軸芯に設定されており、搬送終端側部分19Rが昇降操作されても、搬送始端側部分19Fは位置が変更されず定位置に維持した状態となる。従って、横送りコンベア19の搬送始端側部分19Fと後方搬送コンベア16との相対位置が変化せず、後方搬送コンベア16から横送りコンベア19への人参供給に悪影響を及ぼすことがなく人参の損傷のおそれが少ない状態で回収を行なわせることができる。
【0037】
図6に示すように、昇降シリンダ26を伸縮操作することによって、横送りコンベア19の搬送終端側部分19Rを横軸芯X1周りに上下揺動させると、横送りコンベア19の搬送終端側箇所(人参排出箇所)が上下位置変更操作されることになる。
【0038】
図示はしていないが、昇降シリンダ26の上昇側の駆動操作は、運転部4に備えられた上昇操作ペダル(図示せず)によって行われ、昇降シリンダ26の下降側の駆動操作は、運転部4に備えられた下降操作スイッチ(図示せず)によって行なわれるように構成されている。
【0039】
前記回収部8は、収穫した人参を収納するための収納装置28を備えて構成され、この収納装置28は、人参を収納するための収納空間Kの底部を形成する底部構成体29と、収納空間Kの周部を形成する周部構成体30とを備えて構成されている。
【0040】
前記周部構成体30は、蛇腹状に折れ曲がることにより収納空間Kの上下高さを低くし、伸長することにより収納空間Kの上下高さを高くすることが可能な軟質材からなる筒状体にて構成されている。
説明を加えると、図8に示すように、周部構成体30は、上端部には作物投入用の上部開口31が形成されるとともに下端部には作物排出用の下部開口32が形成された角筒状に形成されている。つまり、上端部及び底部が筒状部の横断面積と略同じ大きな面積の開口となるように全体的に大きく開放された状態となっており、横送りコンベア19から供給される人参が外方に漏れることなく確実に収納空間Kに投入し易い形状となっており、又、後述するように底部構成体29が開放姿勢に切り換わると、大きく開放された下部開口32を通して人参が詰まることなく排出させることができるように構成されている。
【0041】
そして、この周部構成体30は、軟質材としての縫製された布で構成されて、吊り上げ支持するための一対の吊り上げベルト33が縫い付ける状態で一体的に取り付けられている。又、上部開口31の周囲には開口姿勢保持のための紐体34が備えられている。このような構成の周部構成体30は、蛇腹状に折れ曲がることにより収納空間Kの上下高さを低くし、吊り上げて伸長することにより収納空間Kの上下高さを高くすることが可能に構成されている(図6参照)。
【0042】
図4に示すように、収納空間Kの上下高さが略最大高さになるまで伸長させた状態で、その下端部が底部構成体30における後述する底面部40の上面が接当して少し折れ曲がる状態となる。
【0043】
前記底部構成体29は、収穫部5にて収穫された人参を収納空間K内に収納すべく受止める作用姿勢と、収納空間Kの下方を開放する開放姿勢とに姿勢変更自在に構成されている。すなわち、図3,5,7に示すように、底部構成体29は、機体フレーム25に支持される支持台35に対して機体横幅方向に沿う横軸芯X2周りで揺動自在に支持されており、横軸芯X2周りで揺動することにより、作用姿勢の一例としての水平姿勢(図3参照)と、機体後部側端部が下方に位置する開放姿勢の一例としての後下がり傾斜姿勢(図7参照)とにわたって姿勢変更自在に構成されている。
【0044】
前記底部構成体29が、作用姿勢に姿勢変更されると、周部構成体30の下端縁に対して上向きに接当して下部開口32を閉じて収納空間Kの底部を形成し、且つ、開放姿勢に姿勢変更されると、周部構成体30の下端縁から離間して下部開口32から人参の排出を許容するように構成されている。
【0045】
前記底部構成体29を水平姿勢と後下がり傾斜姿勢とにわたり駆動操作自在な移動操作機構Dが備えられている。
図3,5,7に示すように、この移動操作機構Dは、電動モータ36にて駆動されて伸縮操作されるネジ送り式の電動シリンダ37にて構成されており、支持台35に設けられている支持アーム38に基端側が支持され、シリンダ先端部が底部構成体29に固定された操作アーム39に枢支連結されている。電動モータ36を駆動して電動シリンダ37を伸縮操作することにより、底部構成体29が水平姿勢と後下がり傾斜姿勢とにわたって姿勢変更することができるように構成されている。尚、図示はしていないが、電動シリンダ37の駆動操作は、運転部4に備えられた操作具(図示せず)によって行われるように構成されている。
【0046】
前記底部構成体29は、収納空間Kに貯留される人参の荷重を受止め可能な底面部40と、その底面部40の周囲に立設された板状の漏れ出し防止部41とを備えて構成され、前記漏れ出し防止部41の一部が開放可能に構成されている。
【0047】
説明を加えると、図3〜7に示すように、底部構成体29における底面部40は平面視で矩形状の板状体にて構成され、漏れ出し防止体41は底面部40の4辺の夫々に縦向き姿勢にて設けられた縦板部材42〜45にて構成されている。
【0048】
4辺の縦板部材42〜45のうち機体後方側の辺に対応する後部側の縦板部材42が、機体横幅方向の右側端部の縦軸芯Y周りで回動することで底部構成体29の後部側を開放することができるように構成されている。つまり、図4,5に示すように、後部側の縦板部材42は、機体横幅方向の右側端部が機体右側の縦板部材45に固定されている枢支部53に縦軸芯Y周りで回動自在に支持され、図5にて実線で示すように、底面部40の後端縁に沿う作用位置に位置している状態(閉じ状態)で揺動端側箇所が上下方向に抜き差し自在なピン46を、縦板部材42に設けられた挿通部54と、機体左側の縦板部材44に固定されているピン係合部55とにわたって差し込むことにより、閉じ状態で位置保持できるように構成されている。
【0049】
図6に示すように、機体左側の縦板部材43及び機体右側の縦板部材45は、夫々、底面部40に位置固定状態で一体的に固定されて、底面部40の上面から上方に向けて延びる状態で縦壁を形成している。
【0050】
又、図4に示すように、後部側の縦板部材42は、下端縁と底面部40の上面との間に隙間が形成される状態で設けられている。このように構成することで、後部側の縦板部材42を閉じ状態から開放状態(図5の仮想線で示す状態)に切り換えるときに、底面部40に接当して操作が行い難いものになることがなく、姿勢切り換えを容易に行えるものとなる。
【0051】
図7に示すように、前部側の縦板部材44は、機体左側の縦板部材43や機体右側の縦板部材45よりも上端箇所が低い位置になるように設けられ、人参を排出させるときに、人参を無理に押すことなく排出を良好に行えるようにしている。
【0052】
そして、このような構成の周部構成体30は、横送りコンベア19の搬送終端部に備えられた収納装置支持部47により吊り下げ支持される状態で横送りコンベア19の下方に設置され、収穫された人参を横送りコンベア19の搬送終端部から収納装置28内に落下させて回収することができるように構成されている。
【0053】
図2,3,4に示すように、収納装置支持部47は、横送りコンベア19の搬送終端側のフレーム体24に連結アーム48を介して連結された機体前後向きの支持杆49と、この支持杆49の両端部に支持されるハンガー体50とを備えて構成されている。
すなわち、収納装置支持部47は、各ハンガー体50の長手方向の両側部に設けられた吊り下げ具51を収納装置28が備える一対の吊り上げベルト33に夫々係止させることにより、周部構成体30を吊り下げ支持するように構成されている。又、各ハンガー体50の係止部50aに紐体34を係止させることにより、収納装置28の上部開口31を適正な開き状態に保形することができるように構成されている。
【0054】
図6(a)は、回収部8の人参回収開始時での背面図である。この図に示すように、人参回収開始時には、昇降シリンダ26を下降側(縮退側)に駆動して横送りコンベア19の搬送終端側部分19Rが下降側に位置するように調節操作し、横送りコンベア19の搬送終端側箇所の底面部40からの高さが低くなるように調節する。すなわち、横送りコンベア19の搬送終端側箇所の底面部40からの高さを、横送りコンベア19から人参が落下しても人参の損傷を防止できる高さに調節する。このとき、周部構成体30は蛇腹状に折れ曲がって縮退した状態となっている。
【0055】
図6(b)は、回収部8の人参回収途中での背面図である。この図に示すように、収納装置28に回収された人参群Aの上面レベルaが高くなると、昇降シリンダ26を上昇側(伸長側)に駆動して横送りコンベア19の搬送終端部分19Rを回収開始時よりも上昇させるように調節する。これにより収納装置支持部47を回収開始時よりも上昇させて収納装置28の上部側箇所を上昇させるとともに、横送りコンベア19の搬送終端側箇所を人参群Aの上端レベルaから適切な高さの位置に上昇させるのである。
【0056】
その結果、横送りコンベア19からの人参が収納装置28内の人参群Aの上に落下しても人参が損傷することを回避できるようにしながら、収納装置28の上部側箇所を上昇させることにより、周部構成体30が蛇腹状に折れ曲がっている状態から徐々に伸長していき、収納空間Kの上下高さを高くすることができ、収納量が増加しても人参を溢れ出ることのない状態で収納することができる。
【0057】
このように収穫される人参の量が増加するのに伴って横送りコンベア19の搬送終端側部分19Rを上昇させて横送りコンベア19の搬送終端側箇所と収納装置28の上部側箇所を上昇させる調整操作を、収納装置28内にて人参が満杯になるまで繰り返して行うことになる。
【0058】
周部構成体30は角筒状であって下端部も開口されているが、底部構成体29は漏れ出し防止部41を備えているから、図6に示すように、人参が周方向外方に零れ出ることが阻止され、人参を収納空間K内に適切に収納することができる。
【0059】
又、上述したように、収穫される人参の量が増加するのに伴って収納装置28の上部側箇所を上昇させるが、収納空間Kに収納される人参が周部構成体30の下部側箇所に接当作用し、その人参との摩擦力によって周部構成体30の下部側箇所が連なって上昇することが阻止されることになり、人参を収納することが可能な状態で周部構成体30が伸長していくことになる。
【0060】
収納装置28内に収納される人参が満杯になると、底部構成体29を下方に開放させて収納装置28内の人参を圃場に排出させる。つまり、電動シリンダ37を伸長側に駆動して操作アーム39を横軸芯X2周りに機体後方側に揺動操作して、底部構成体29を、図7に示す如く軸芯X2周りに後下がり傾斜姿勢に下降操作させる。
そのとき、周部構成体30は、収納装置支持部47によって吊り下げ支持されているから、底部構成体29が後下がり傾斜姿勢に下降操作されると、周部構成体30の下方が開放された状態となり、収納空間K内の人参が周部構成体30の下端に形成された下部開口32を通して圃場に排出されるのである。
【0061】
このように底部構成体29を後下がり傾斜姿勢に変更するときは、それに先立って、ピン46を抜いて後部側の縦板部材42を横方向一端部の縦軸芯Y周りで回動することにより底部構成体29の後部側を開放させておく必要がある(図5参照)。
【0062】
底部構成体29を後下がり傾斜姿勢に変更させて人参を排出させる場合、機体を走行停止させた状態では、下部の出口箇所で底部構成体29と周部構成体40との間に人参が引っ掛かり、残りの人参が排出されないことがあるので、このとき、機体を前進走行させると、収納装置28内の人参を、後下がり状態の底部構成体29における底面部40上を滑らかに案内しながら順次排出させることができる。
【0063】
収納装置28に収納されていた人参の排出が終了したのちは、電動シリンダ37を短縮側に駆動することにより操作アーム39を機体前方側に戻し操作して、底部構成体29を水平姿勢に戻すことになる。その後、機体走行に伴って人参を収穫しながら収納装置28内に人参を収納する収穫作業を実行するときは、底部構成体29は水平姿勢に維持され、ピン46を差し込むことにより、後部側の縦板部材42は閉じ状態に維持されることになる。
【0064】
収納装置28から人参が圃場に排出されたのちは、作業者が目視で検査しながら良品と不良品とに選別して良品を別途回収する等の選別作業が行われることになる。
【0065】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、後部側の縦板部材42が機体横幅方向右側端部の縦軸芯周りで回動することで底部構成体29の後部側を開放する構成としたが、このような構成に代えて、次の(1−1)〜(1−4)に記載の構成としてもよい。
(1−1)後部側の縦板部材42を機体横幅方向左側端部の縦軸芯周りで回動自在に支持して底部構成体29の後部側を開放する構成。
(1−2)後部側の縦板部材42を下部の横軸芯周りで回動することで底部構成体29の後部側を開放する構成。
(1−3)後部側の縦板部材42を着脱自在に構成して、取り外すことにより底部構成体29の後部側を開放する構成。
(1−4)一部の縦板部材42だけでなく全ての縦板部材42〜45を開閉操作させたり着脱させる構成。
【0066】
(2)上記実施形態では、底部構成体30が底面部40と漏れ出し防止部41とを備える構成としたが、漏れ出し防止部41を備えない構成として、底部構成体30が、収納空間に貯留される作物の荷重を受止め可能な底面部40だけを備える構成としてもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、移動操作機構Dとして電動シリンダ37を用いるものを示したが、電動シリンダ37に代えて、油圧シリンダ等の異なる構成のアクチュエータを用いてもよく、又、手動で回転操作させて伸縮操作させる手動操作式のネジ送り機構を用いるようにしてよい。
【0068】
(4)上記実施形態では、周部構成体30が、軟質材からなる筒状体にて構成されるものを示したが、このような構成に代えて、剛性を有する材質からなる筒状体をスライド自在な二重筒状に構成する等、種々の構成を採用することができる。
【0069】
(5)上記実施形態では、周部構成体30の下端部に全体的に開放する大きな下部開口32が形成された筒状体にて構成されるものを示したが、このような構成に代えて、下端部に備えられた底部の一部に小型の開口を形成したものでもよく、又、袋状の容器の底部の形成された開口部を紐で塞ぐことにより作物を回収し、底部構成体29を開放姿勢に切り換えてから紐を引き抜いて作物を排出させる状態に切り換える構成等、種々の構成を採用することができる。
【0070】
(6)上記実施形態では、横送りコンベア19の上下位置変更操作に伴って周部構成体30が上下に伸縮することにより、収納空間Kの上下高さを変更調整可能に構成したものを示したが、横送りコンベア19は上下に位置固定状態として、一定高さから人参を排出するようにして、周部構成体30の上下高さを一定に維持する構成としてもよい。
【0071】
(7)上記実施形態では、底部構成体29が、水平状態となる作用姿勢と、後下がり傾斜状態となる開放姿勢とにわたり横軸芯X2周りで上下揺動自在に構成されるものを示したが、この構成に代えて、底部構成体29が観音開き状態で開放するものや、左右方向あるいは前後方向にスライド移動して開放する構成等、種々の構成を採用することができる。
【0072】
(8)上記実施形態では、作物の一例として人参を収穫するものを示したが、大根、玉葱、芋類など他の種類の作物を収穫対象とする作物収穫機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、機体の走行に伴って圃場から作物を収穫して回収部にて回収するように構成されている作物収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0074】
5 収穫部
8 回収部
19 コンベア装置
28 収納装置
29 底部構成体
30 周部構成体
31,32 開口
40 底面部
41 漏れ出し防止部
D 移動操作機構
K 収納空間
X2 横軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の走行に伴って圃場から作物を引き抜いて機体後方に搬送することにより作物を収穫する収穫部と、前記収穫部にて収穫された作物を回収する回収部とが備えられている作物収穫機であって、
前記回収部に備えられる収納装置が、作物を収納するための収納空間の底部を形成する底部構成体と、前記収納空間の周部を形成する周部構成体とを備えて構成され、
前記底部構成体が、前記収穫部にて収穫された作物を前記収納空間内に収納すべく受止める作用姿勢と、前記収納空間の下方を開放する開放姿勢とに姿勢変更自在に構成されている作物収穫機。
【請求項2】
前記周部構成体が、上端部に作物投入用の開口が形成されるとともに下端部に作物排出用の開口が形成された筒状体にて構成され、
前記底部構成体が、前記作用姿勢に姿勢変更されると、前記周部構成体の下端縁に対して上向きに接当して作物排出用の開口を閉じて収納空間の底部を形成し、且つ、前記開放姿勢に姿勢変更されると、前記周部構成体の下端縁から離間して前記作物排出用の開口から作物の排出を許容するように構成されている請求項1記載の作物収穫機。
【請求項3】
前記底部構成体が、水平状態となる前記作用姿勢と、機体後部側が下方に位置するように後下がり傾斜状態となる前記開放姿勢とにわたり、その機体前部側の横軸芯周りで上下揺動自在に機体に支持されている請求項1又は2記載の作物収穫機。
【請求項4】
前記底部構成体を前記作用姿勢と前記開放姿勢とにわたり駆動操作自在な移動操作機構が備えられている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作物収穫機。
【請求項5】
前記収穫部からの作物を前記収納装置に搬送するコンベア装置が、その搬送終端側箇所を上下位置変更操作自在に設けられ、
前記周部構成体が前記コンベアの上下位置変更操作に伴って上下に伸縮することにより、前記収納空間の上下高さを変更調整可能に構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の作物収穫機。
【請求項6】
前記周部構成体が、蛇腹状に折れ曲がることにより前記収納空間の上下高さを低くし、伸長することにより前記収納空間の上下高さを高くすることが可能な軟質材からなる筒状体にて構成され、
前記底部構成体が、収納空間に貯留される作物の荷重を受止め可能な底面部と、その底面部の周囲に立設された板状の漏れ出し防止部とを備えて構成され、且つ、前記漏れ出し防止部の少なくとも一部が開放可能に構成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の作物収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−205566(P2012−205566A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74915(P2011−74915)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(599118768)株式会社斎藤農機製作所 (47)
【Fターム(参考)】